日本臨床外科学会雑誌
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66 巻, 7 号
選択された号の論文の55件中51~55を表示しています
  • 坂本 照尚, 若月 俊郎, 野坂 仁愛, 竹林 正孝, 鎌迫 陽, 谷田 理
    2005 年 66 巻 7 号 p. 1762-1765
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    デスモイド腫瘍は組織学的には良性腫瘍とされているが,局所再発や浸潤性発育のため臨床的には良・悪性境界腫瘍と定義されている.今回,われわれは腸間膜デスモイド腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は61歳,男性で腹部腫瘤を主訴に近医を受診し,腹部超音波にて腹腔内腫瘍を指摘され,当院へ紹介された.小腸透視検査,注腸透視,腹部超音波検査, CTで後腹膜腫瘍もしくは腸間膜腫瘍が疑われ,開腹手術が施行された.腫瘍は腸間膜に位置し,横行結腸に浸潤していたため,腫瘍摘出術および横行結腸部分切除術が行われた.腫瘍は5.5×5×4cmの白色充実性腫瘍であり,病理組織検査にて腸間膜デスモイド腫瘍と診断された.本症例は家族性大腸腺腫症の合併や手術既往のない自然発症例で稀な症例である.浸潤性であり今後も経過観察の必要がある.
  • 坂東 功一, 古谷 政一, 清水 康仁, 櫻澤 信行, 柳 健, 田尻 孝
    2005 年 66 巻 7 号 p. 1766-1770
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は19歳女性.右上腹部痛,発熱を主訴に近医受診し抗生剤治療を受けるも改善なく,次第に腹痛増強し紹介来院.右上腹部中心に腹膜刺激症状認め,白血球9,900/μl, CRP 13.5mg/dl,胃内視鏡検査上異常なく,腹部超音波, CT検査で肝周囲に腹水認めたが肝,胆,膵に異常なく遊離ガスも認めなかった.原因不明の腹膜炎として緊急腹腔鏡を施行.右上腹部腹膜の高度な炎症,腹水,肝前面と腹膜間の線維性癒着が観察された.以上所見よりFitz-Hugh-Curtis症候群(以下FHCS)を考え塩酸ミノサイクリン投与による保存的治療を開始,速やかに症状改善した.後日,血清クラミジア抗体陽性を確認,確定診断した.外科臨床の場で女性の原因不明の腹膜炎を認めた際は本疾患も考慮し腹腔鏡検査を施行することは有用であると考えられた.
  • 大森 治樹, 百留 亮治, 山口 恵実, 金川 勉, 橘 球, 内田 正昭
    2005 年 66 巻 7 号 p. 1771-1775
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳男性で主訴は無痛性の右鼠径部膨隆であった.画像診断にて右後腹膜脂肪肉腫と診断.腫瘍は右腎上部から陰嚢まで達していた.腹腔内では右腎,尿管を取り巻いていたがそれらは温存した.鼠径管内の腫瘍は腹腔からのアプローチにて睾丸とともに合併切除した.摘出標本は大きさ32×25×8cm, 重量は2,800gであった.病理組織学的に分化型脂肪肉腫が主体であった.術後1カ月目の腹部CTにて右鼠径部に残存したと思われる腫瘍を認めたため再手術施行した.鼠径部腫瘤を契機に発見された後腹膜脂肪肉腫は稀であり,自験例で本邦6例目であった.このうち術前診断が不十分で複数回の手術を施行せざるを得なかった症例が3例認められた.初診時鼠径ヘルニアと思われても,無痛性で用手還納不能症例では,その内容も精査する必要がある.また手術の際,腫瘍の遺残を防ぐためには腹腔側,鼠径側の2方向からのアプローチが必要と思われた.
  • 稲垣 光裕, 吉川 大太郎, 山崎 弘貴, 斉藤 琢巳, 小原 充裕, 葛西 眞一
    2005 年 66 巻 7 号 p. 1776-1779
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,女性.左鼠径部腫瘤を主訴に来院.左鼠径ヘルニア嚢胞内水腫と診断し手術を施行.左側Gilbert分類Type 2で,ヘルニア嚢を高位結紮後に切除しProlene Hernia System (PHS)を用いてhernioplastyを施行した.ヘルニア嚢内部先端に,灰白色で径約3cm大の多胞性嚢胞が存在していた.病理組織診断はmultilocular mesothelial cystで,ケラチン,ピメンチン,カルレチニンおよびHBME-1陽性であった.経過は良好で,術後1年3カ月再発は認めていない.
    ヘルニア手術時に発見される腹膜中皮腫は稀で,本邦報告例は自験例を含め6例にすぎない.用手還納できない鼠径部腫瘤を診察した場合,本疾患も念頭に入れ術前診断・手術をする必要があると考えた.
  • 上江洲 徹, 赤崎 満, 下地 光好, 喜瀬 勇也, 伊波 潔
    2005 年 66 巻 7 号 p. 1780-1783
    発行日: 2005/07/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は18歳の男性で,交通外傷で近医へ搬送された.胸部レントゲンにて左緊張性気胸を認めトロッカーを挿入された.胸部CTで縦隔血腫と診断され当院へ紹介となった.血管造影を施行したところ,腕頭動脈瘤を認めたため,同日緊急手術を施行した.右大腿動静脈を確保した後に胸骨正中切開で縦隔に達したところ,腕頭動脈は起始部より約3cm遠位側まで拡大し,外膜のみで保たれ内膜は断裂していた.人工心肺は用いずに,人工血管にて腕頭動脈再建術を施行した.鈍的外傷による胸部大血管損傷は,受傷後病院に搬送されるまでに死亡する例が大半であるといわれているが,本症例は幸いにも外膜のみで保持されており,完全に断裂されておらず,人工心肺を使用せずに再建可能であった.
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