日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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66 巻, 8 号
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  • 福田 直人, 和田 浄史, 高橋 茂雄, 高橋 克之, 三浦 康誠
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1817-1820
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    【目的】術後創処置法として創の消毒およびガーゼ被覆を行わず,フィルムドレッシングで創を密閉する閉鎖療法の効果に関して検討した.【方法】平成15年4月より平成17年3月までに開腹術を施行した大腸癌42例を対象 (Study群)とし,平成14年度以前の大腸癌開腹術例42例をControl群として患者背景, SSIの発生率,抜糸までの日数,創処置回数,創処置費用に関して比較検討した.【結果】 SSI発生率はControl群14.3%に対してStudy群9.5%と有意差はないものの少ない傾向を認めた.また抜糸までの日数・創処置回数・創処置費用はControl群が8.9日, 8.7回, 4,297円に対して, Study群は7.9日, 5.1回, 2,562円といずれも有意に少なかった.【結論】手術創に対する無消毒閉鎖療法は従来の消毒法と比較して,より有効な術後創処置法であると考えられた.
  • 橋本 隆, 岡田 憲幸, 正井 良和, 細谷 亮, 梶原 建熈
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1821-1826
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳癌症例においてICG蛍光測光を用いて乳腺リンパ流路を観察し,センチネルリンパ節生検 (SNB) への応用を試みた. 2004年7月から11月の乳癌初回手術39例41乳房を対象とし,乳輪皮内にICG液を注入後,励起光を照射しCCDカメラにてリンパ流路を蛍光イメージとして観察し, SNBへの応用も試みた. 1) リンパ流路:腋窩方向へのリンパ流は88%,胸鎖関節方向へは27.5%,乳腺外側方向へは30%,傍胸骨方向へは32%に認められた. 2) 35乳房でSNBを施行した.腋窩小切開部位で蛍光を発する染色リンパ節を確認しセンチネルリンパ節とした.染色が軽度で脂肪織内に埋没していても,蛍光イメージの観察から容易にリンパ節を同定でき,同定率は94.3% (33/35) であった.
    ICG蛍光測光では乳房における多方向へのリンパ流が観察されリンパ節の同定が容易であり,色素法によるSNBの欠点を補う有用な方法と思われる.
  • 池田 宏国, 安藤 陽夫, 斉藤 誠, 辻 和宏, 佐野 由文, 清水 信義
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1827-1831
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,難治性気胸に対して硬膜外麻酔と局所麻酔の併用下に胸腔鏡下手術を行い,良好な結果を得たのでその有用性について検討し報告する.対象は1993年から2002年までに経験した難治性気胸17例で男性15例,女性2例で,年齢は平均62.8歳であった.いずれの症例も重篤な呼吸器基礎疾患を有していた.手術方法は,難治性気胸のair leak部を胸腔鏡所見から3型に分類し, I型(表面平坦気瘻型), II型(表面軽度隆起気瘻型)に対してはPGAシートとフィブリン糊によりair leak部の被覆を行い, III型(表面隆起気瘻型)に対してはENDOAUTOSUTUREにより隆起部の基部を縫合しPGAシートとフィブリン糊による被覆を行った.手術成績は, 17例中16例 (94.1%) が治癒し,手術に関する合併症も認めなかったことから難治性気胸に対して本治療法は有用であると考えられた.
  • 藤本 浩一, 榎本 正満
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1832-1835
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    HIV感染症に合併したサイトメガロウイルス (CMV) による,比較的稀な小腸穿孔例を経験した. CMV腸炎は打ち抜き様の深い潰瘍を形成するためと考えられた.症例は57歳,男性.高熱を主訴に来院し,間質性肺炎の診断で抗生剤,ステロイド療法中に汎発性腹膜炎をきたした.二度に及ぶ緊急手術にても救命しえず,摘出標本から本症と診断された.社会的に,肝炎ウイルスの術前検査などは受け入れられているものの, HIV抗体の検索の是非については今後の重要な課題と思われる.
  • 石川 泰, 京極 高久, 高峰 義和, 林 雅造
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1836-1840
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性,右乳房の小腫瘤を主訴に来院. 1.0cm大の境界明瞭,可動性良好な腫瘍を認めた.乳房レントゲン撮影,超音波検査では境界明瞭な腫瘍,吸引細胞診所見では良性の細胞集塊を認めた.摘出生検では割面は淡黄褐色充実性腫瘍で,周囲に白色の被膜を認めた.病理組織所見では腺上皮細胞の増生と筋上皮細胞の増生がみられ腺筋上皮腫と診断した.乳腺の腺筋上皮腫は稀な疾患で本邦では64例の報告がみられた.本疾患はほとんどが良性腫瘍であるが,稀に局所再発例,遠隔転移例もみられ,十分な切除範囲を必要とする.一方で細胞診においてはover diagnosisに注意が必要である.
  • 尾身 葉子, 安田 秀光, 橋本 政典, 清水 利夫
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1841-1844
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Radial scarは線維性結合組織からなる中心部分を機軸として乳管が放射状に配列し,その上皮に過形成変化を伴う病変である.癌との鑑別がしばしば困難で,異型過形成を伴う場合は乳癌発生のリスクとなる.その報告例は未だ少ない.今回われわれはradial scarの1例を経験したので報告する.症例は41歳,女性.左乳房痛を認め,当科を受診.左乳房C領域,疼痛部位よりやや内側に硬結を触知した.エコーにて同部位に境界不明瞭な後方エコーの減衰を伴う低エコー領域を認めた.マンモグラフィーではdistortionが認められた.穿刺吸引細胞診を施行したところ二相性の増殖性変化のみられる上皮が採取されClass IIIaであった.針生検では二相性の保たれた乳管上皮の乳頭状増殖が認められ,乳管内乳頭腫が疑われた.悪性の可能性を考慮し,確定診断のため左乳腺腫瘤切除術を施行した.病理組織診断はradial scarであった.
  • 光山 昌珠, 阿南 敬生, 池田 由美枝, 小野 稔, 豊島 里志
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1845-1849
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.右腎細胞癌(clear cell type)の根治術術後4年で,左内下部に腫瘤を自覚し,徐々に増大のため当科紹介. 2.6cmの腫瘤に対し, core needle biopsy (CNB)施行し,腎細胞癌からの転移が強く疑われた.他部位に転移はみられず,乳房円状部分切除とセンチネルリンパ節生検(SNB)を施行した.病理診断は腎細胞癌からの転移でリンパ節転移はみられなかった.術後無治療で経過観察中である.腎細胞癌からの乳腺転移は非常に稀のため,文献的考察を加える.
  • 宮崎 安弘, 増田 幸蔵, 山形 誠一, 志田 晴彦
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1850-1854
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の女性,主訴は左腋窩部腫瘤.左腋窩に3~5cm大の弾性硬,可動性良好な腫瘤を数個触れた.マンモグラフィ,乳房エコーでは乳腺内に腫瘤像を認めなかった.腋窩腫瘤生検で,転移性腺癌・エストロゲンレセプター陽性のリンパ節転移と診断を得た.乳房MRI, 全身精査を行ったが原発巣はみつからず,潜在性乳癌の腋窩リンパ節転移と診断し,左胸筋温存乳房切除術を施行した.切除乳腺標本の詳細な病理学的検索により外上方部に1.2×1.5mmの原発巣を認めた.術後,化学療法・放射線療法・ホルモン療法を行い2年2カ月再発なく経過している.本症例は報告されている潜在性乳癌のなかでも非常に小さい原発巣であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 広瀬 由紀, 松下 利雄, 藤井 秀則, 田中 文恵, 川上 義行, 土居 幸司, 小西 二三男
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1855-1859
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腺様嚢胞癌の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は53歳,女性で,左乳腺のC領域に腫瘤を触知し,近医より当院へ紹介された.左C領域に2cm大の弾性硬で, Dimpling sign陽性の腫瘤を認めた.マンモグラフィにて辺縁が微細分葉の高濃度の腫瘤を確認し,超音波検査では内部が不均一で低エコーの腫瘤像形成性病変を認めた. ABCにてclass Vと診断され,乳癌の診断にて乳房温存手術(Bp+Ax, level I)を施行した.病理組織所見では,腫瘍は嚢胞状の部分と充実性の部分を持ち,さらに腺上皮細胞群と筋上皮細胞群の2種類の細胞群が主体をなしていた.偽嚢胞内の粘液はAlcian blue陽性で,腺腔内はPAS陽性を示し腺様嚢胞癌と診断された.免疫組織化学染色でActinとS-100が陽性を示し,その発生には筋上皮細胞が大きく関与していることが推測された.
  • 坂田 晋吾, 高橋 裕, 山口 哲哉, 武田 亮二, 山本 道宏
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1860-1864
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腋窩腫瘤を主訴として来院した乳癌症例を2例経験した.症例1は61歳,女性で左腋窩の腫瘤を主訴に他院を受診.腋窩の粉瘤として手術を受けた際に腺癌が指摘され,その後再度生検を行うことにより異所性乳癌と確定診断をつけることができた.症例2は47歳,女性で左腋窩の腫瘤を主訴に来院.異所性乳癌と考えて腋窩郭清を行うも,異所性乳癌の確定診断がつかず,潜在性乳癌の可能性を否定できなかったため,同側乳房に放射線照射を行った.異所性乳癌と潜在性乳癌の鑑別は不可能な場合もあるが, over treatmentにならないように留意することが必要である.
  • 奥田 耕司, 清水 隆文, 柳谷 晶仁, 浜田 弘巳
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1865-1869
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹部臓器虚血を合併したStanford B型急性大動脈解離に対し,右総腸骨動脈-上腸間膜動脈 (SMA) バイパス術を行い,良好な経過を得た症例を経験した.症例は59歳,男性.腹痛と左下肢痛を主訴に救急搬送され, Stanford B型の大動脈解離,左外腸骨動脈閉塞と診断し,緊急に左大腿動脈へのバイパス術を施行した.下肢の虚血は改善したが,術翌日に血中肝酵素の著明な上昇を認め,造影CTにて腹腔動脈の閉塞と診断,緊急手術を行った.開腹時,肝全域の虚血を認め,解離は腹腔動脈から総肝動脈にまで及んでいた.大伏在静脈グラフトを用いて右総腸骨動脈-SMAバイパス術を施行し,肝血流は速やかに改善した.術後経過中,急性腎不全および十二指腸潰瘍の穿孔を併発したが,発症4カ月後に自宅退院となった.急性大動脈解離に伴う腹部臓器虚血に対して,本術式は有効な術式であると考えられた.
  • 松倉 規, 塙 健, 田村 耕一, 岡崎 強, 山下 直己, 桑原 正喜
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1870-1873
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    (症例)83歳,女性.(主訴)呼吸困難.(既往歴)肝硬変による食道静脈瘤で吐血歴あり.外傷や胸部手術なし.(入院経過)胸部X線写真で右大量胸水を認めた.胸水は白色混濁強くTG 241mg/dl (血清TG 36mg/dl) と高値であった.明らかな原因を認めず特発性乳糜胸と診断した.絶食・中心静脈栄養,胸腔ドレナージ,化学的胸膜癒着療法による保存的治療で改善なく手術を行った.(手術)術前に牛乳を飲用したが乳糜漏出部位は不明であった. PGAフェルトが癒着を促進することに着目し,乳糜漏出部位と推定された肺靱帯近傍の縦隔胸膜にPGAフェルトを貼付した.(術後経過)乳糜胸水の排液なく軽快退院した.術後1年6カ月後再発はない.(まとめ)乳糜胸の外科治療は胸管結紮や食道周囲軟部組織を一括結紮する方法があるがPGAフェルト貼付により癒着を促進させる方法も有用と考えられた.
  • 荒能 義彦, 前田 一也, 永瀬 剛司, 佐々木 正寿, 清水 淳三
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1874-1877
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.右胸部痛を主訴に近医を受診,右側肺炎と診断され本院に紹介となった.胸部CTでは中葉の無気肺と中葉気管支背側の腫瘤陰影が認められ,気管支鏡検査では中葉気管支入口部を閉塞する表面平滑で易出血性の半球形の腫瘍が認められた.中葉気管支原発の腫瘍として手術を施行した.ポリープ状の腫瘍であり迅速病理診断は腺腫であったが,低悪性度腫瘍の可能性もありとされたため右管状中葉切除を行った.術後病理組織から定型的カルチノイドと診断された.
  • 砥石 政幸, 西村 秀紀, 濱中 一敏
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1878-1881
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は36歳女性で, 31歳時に右自然気胸に対して,胸腔鏡下ブラ切除術を施行されている.妊娠第8週に左自然気胸を発症し,近医にて胸腔ドレナージを施行され軽快した.しかし,妊娠第12週に左胸痛を主訴に当科を受診し,左自然気胸再発と診断された.胸腔ドレナージを行い外来にて経過を観察したが, 1週間を経過しても肺瘻が持続したため,妊娠第14週に入るのを待ち胸腔鏡下ブラ切除術を施行した.術後経過は順調で第2病日に退院,以降再発なく経過し,妊娠第40週で自然分娩にて健児を出産した.
    母体,胎児に対する配慮の上で十分なインフォームドコンセントを得られれば,妊娠に合併した自然気胸に対する胸腔鏡下手術は,妊娠中期においては,その治療の第一選択となる可能性が示唆された.
  • 植村 守, 菰池 佳史, 元村 和由, 稲治 英生, 小山 博記
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1882-1886
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺悪性葉状腫瘍の肺転移に対する治療は未確立である.今回われわれは,乳腺悪性葉状腫瘍の肺転移に対して,肺切除術を施行した1例を経験したので報告する.症例は58歳,女性で2年前に乳腺悪性葉状腫瘍に対して腫瘍摘出術を受けた.検診時に撮った胸部X線検査にて右肺上葉に計18mm大の異常陰影指摘され当科紹介となった.胸部CT検査では右肺S1に径5mm大, S2に径18mm大の結節影を認めた.透視下気管支鏡検査施行し生検の結果,悪性葉状腫瘍の肺転移と診断され,右肺上葉切除術を施行した.術後病理診断においても悪性葉状腫瘍の肺転移であることが確認された.術後13カ月の時点で再々発は認めていない.乳腺悪性葉状腫瘍の肺転移に対する標準的治療は確立されていないが,早期発見され切除しえた症例で長期生存の報告例もあることから,孤立性または限局性の転移であれば外科的切除の適応になり得ると考えられた.
  • 宮宗 秀明, 片岡 正文, 大原 利憲
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1887-1890
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.検診時胸部X線にて右上肺野に異常陰影を指摘され受診した.画像上,右上葉S1に35×28mm大の不整形の腫瘤が認められていたが,経気管支肺生検,洗浄細胞診では悪性の診断は得られなかった.画像および臨床経過から悪性が強く疑われたため手術を行った.術中の迅速穿刺吸引細胞診,組織診でも悪性の診断はつかず,腫瘍の部分切除のみを行った.術後病理検査では,多量の粘液の中に異型の乏しいごく少量の腫瘍上皮が散見され,膠様(コロイド)腺癌と診断した.膠様腺癌の報告例は比較的稀で,緩慢な発育を示すものが多く一般的には予後良好である.粘液主体の腫瘍であるため腫瘍細胞が少なく,術前,術中の病理学的診断は困難であった.
  • 坪島 顕司, 西尾 渉, 金築 一摩, 若原 鉄平, 菊地 慶太, 樋上 哲哉
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1891-1894
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,女性.平成15年2月に肺腫瘍に対し,右第5肋間に小開胸(第5肋骨を前胸部で切離)を行い,右中葉切除術を施行された.病理診断は中分化型腺癌, stage 1 Aとの診断であった.術後経過は良好であったが,平成16年3月頃より右第5肋骨付近の前胸部痛を自覚するため胸部CTを施行したところ右第5, 6肋間に4cm大の腫瘤を認めた.生検ではspindle cellからなる腫瘍で悪性所見はなかったが,平成16年5月のCTにて腫瘍が増大したため手術を施行した.術中に肋骨,横隔膜への浸潤が疑われたため第4~6肋骨と横隔膜を合併切除した.胸壁欠損部位はMarlex Meshを用いて再建した.病理検査では周囲組織への浸潤を示す胸壁デスモイドと診断された.術後4カ月の現在,再発徴候はないが本疾患は高頻度に局所再発を認めるとされており厳重な外来経過観察中である.
  • 奥田 勝裕, 佐野 正明, 成田 洋, 加藤 克己, 早川 哲史, 田中 守嗣
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1895-1898
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.既往歴として58歳時よりパーキンソン病にて通院治療中. 5カ月前転倒にて左肋骨骨折の加療を行った.今回,パーキンソン病の病状悪化にて入院加療中,腹痛を訴え腹部単純X線写真でイレウスと診断された.その後,胸部単純X線写真にて横隔膜の挙上,胸腔内に大腸ガスと思われるairが認められた.左横隔膜ヘルニアの診断にて,開腹にて手術を施行した.開腹すると,左横隔膜に径約5cmのヘルニア門を認め,大網,横行結腸が貫通しており,嵌頓していた.腸切除を行わず,横隔膜欠損部を結節縫合閉鎖した.本症例を通じ,胸腹部外傷既往のある患者に対しては,遅発性外傷性横隔膜ヘルニアが発生することも考慮しなければならないと痛感させられた.
  • 剣持 邦彦, 佐藤 英博, 宗 宏伸, 濱田 茂, 下河辺 智久, 日野 雄二
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1899-1902
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    緑茶飲食が原因と思われる残胃胃石イレウス症例を経験した.症例は89歳,女性.嘔吐を主訴に近医受診後,当院紹介受診.胃癌にて幽門側胃切除, Billroth I法再建術の既往あり.来院当初,症状所見は軽微にて保存的に治療開始したが経過中イレウス状態に陥り,イレウス管挿入.同管よりの造影およびCT検査にて小腸に腫瘤による閉塞を認め,開腹手術施行した.長径4.5cmの茶褐色腫瘤の嵌頓を認め摘出し,嵌頓部小腸には潰瘍形成を認め部分切除施行した.腫瘤の成分はタンニンが98%を占め,緑茶の多飲,喫食歴があることより緑茶に起因する胃石と判断した.
    近年緑茶飲食を勧める健康法やタンニンを含む健康食品が普及してきており,特に胃切除術後の患者に対しては食事指導に注意が必要である.
  • 森 隆太郎, 三浦 勝, 高橋 徹也, 小尾 芳郎, 山中 研, 阿部 哲夫
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1903-1907
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.平成15年11月より便通異常が出現し,平成16年1月症状が増悪したため当院を紹介受診し,腸閉塞の診断で緊急入院した.入院後から腹痛が増強し,腹部CTでは, free airと著明に拡張した腸管,脾に多発する低吸収域を認めた.消化管悪性腫瘍による腸閉塞とこれに合併した消化管穿孔を疑い緊急手術を施行した. Treitz靱帯から160cmの小腸に2cm大の硬い腫瘤を,胃上部前壁に穿孔を認め,脾には多発する白色の結節を認めた.胃悪性腫瘍穿孔,脾転移ならびに小腸転移による腸閉塞と診断し,胃全摘,膵尾部脾合併切除,小腸部分切除術を施行した.病理組織検査では胃原発悪性リンパ腫とその小腸,脾転移と診断され,術後CHOP療法を施行したが2カ月で死亡した.胃悪性リンパ腫の自然穿孔例は極めて稀であり,小腸転移による腸閉塞を合併した報告はなく,文献的考察を加え報告した.
  • 直居 靖人, 村田 幸平, 横山 茂和, 米田 光里, 丸山 憲太郎, 衣田 誠克
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1908-1912
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔内出血をきたした胃原発の巨大なGISTの手術例を報告する.症例は61歳,男性. 10年以上前より腹部に腫瘤を自覚し,近日当院受診予定であった.平成16年11月,急な腹痛にて当院救急外来を受診し, CTにて多量の腹水貯留と原発不明の腫瘤を認めたことから消化管穿孔や腫瘍破裂を疑い緊急手術を施行した.腹腔内には約20cm大の嚢腫様病変が,頭側端を胃に癒着させ横行結腸間膜に載るようにして存在しており,腫瘍からは静脈性出血が続いていた.胃壁を一部合併切除して腫瘍を摘出した.摘出標本の免疫染色ではc-kit, CD34がともに陽性でGISTと診断した. GIST破裂による腹腔内出血は比較的稀な病態であり術前診断に難渋することが多い.文献的には(1) 原発不明の腹部腫瘤, (2) 急な腹痛, (3) 腹水貯留の三徴候を有する症例に対しては本疾患を視野に入れて開腹手術を検討すべきであると考えられた.
  • 坂本 照尚, 木島 寿久, 水田 誠, 和又 利也, 菅澤 章, 宮野 陽介
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1913-1917
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌全体の約0.1%を占め,予後不良疾患である胃神経内分泌細胞癌の1例を経験したので報告する.症例は72歳,男性で食欲不振を主訴に当院内科を受診した.上部消化管内視鏡で2型胃癌と診断し,手術目的に当科紹介となった.理学的所見および術前精査にてVirchow転移を認めStage IVと判断したが,症状改善傾向なく,姑息的に胃全摘術を施行した.切除標本では胃体中部後壁に2型腫瘍として,また,同腫瘍に連続するよう粘膜下腫瘍を認めた.病理組織所見においてN/C比の高い腫瘍細胞が索状配列し胞巣を形成していた.免疫組織化学的にChromogranin A染色陽性, neuron-specificenolase (NSE)染色弱陽性であり,胃神経内分泌細胞癌と診断した.粘膜下腫瘍は粘膜下層に強く浸潤した胃神経内分泌細胞癌であった.高度の脈管侵襲ゆえ,リンパ節転移,肝転移の頻度が高く,早期よりの集学的治療が望ましいと考える.
  • 宮澤 智徳, 冨田 広, 牧野 春彦
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1918-1921
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性.突然の腹痛を主訴に当院を受診した.右下腹部に限局した圧痛,反跳痛および筋性防御を認めた.腹部CT検査所見上小腸内に高吸収の線状構造物が存在していた.患者は発症当日に魚類を摂取していたことから魚骨穿通による限局性腹膜炎と診断し,抗生物質投与による保存的治療を開始した.入院3日目に腹部所見は劇的に改善し, CT上魚骨は描出されず体外に排泄されたと考えられた.以後,経過は良好であり入院後13日目に退院となった.自験例のように誤嚥した魚骨による小腸穿通に対し保存的治療が成功し手術を回避しえた論文報告例は,われわれが検索した限りではなかった.
  • 益澤 徹, 池永 雅一, 三嶋 秀行, 平尾 素宏, 藤谷 和正, 辻仲 利政
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1922-1926
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,女性.平成5年よりBehcet病と診断された.平成15年6月,イレウス症状出現したため入院となった.内科的治療を行うも改善せず,穿孔性腹膜炎と診断し,緊急手術を施行した.穿孔は回腸末端から口側へ約200cmにわたる部位に多発して認められた.穿孔を認めた回腸・盲腸のみを切除した.術後経過は良好で再発もなく,経過観察中である. Behcet病の穿孔の場合,再燃・再穿孔を想定し,穿孔部よりさらに追加して広範囲の小腸切除することを推奨されていたが,内科的治療を有効に使うことで穿孔部までの切除で十分可能であると考える.
  • 徳毛 誠樹, 村上 正和, 田尾 裕之, 藤山 敏行, 内藤 稔, 清水 信義
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1927-1930
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の女性で虫垂切除術,肺気腫の既往があった.右下腹部の虫垂切除術創部に瘢痕ヘルニアを生じ,疼痛が生じたために前医で修復術を受けた.摂食開始後より発熱と下腹部から左大腿に及ぶ広範な皮下気腫が出現し,消化管穿孔の疑いで当院に緊急搬送された.緊急手術を施行し,遅発性の小腸穿孔の診断で腹腔内洗浄と小腸ドレナージを施行した.皮下気腫部の左大腿も切開を加え検索したが,同部には悪臭や膿の貯留は認めず気腫のみを認めた.術後2週間目に小腸の再穿孔をきたしたが,持続小腸ドレナージと創部洗浄の保存的治療で救命しえた.慢性呼吸不全に伴う咳嗽・努力呼吸により創部の安静が保ち難く,全身のエネルギー消費も高まっていたことが創傷治癒遅延および消化管穿孔のリスクになったと思われた.
  • 蛭川 浩史, 多田 哲也, 天白 典秀
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1931-1935
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は75歳男性.軽度の腹痛を主訴に入院したが,徐々に腹痛が増悪し緊急手術を施行.開腹所見では回腸に約30cmの散在性の壊死がみられこれを切除した.経過は良好で第12病日に退院した. 2カ月後,わずかな腹痛を主訴に再入院したが,徐々に腹痛が増悪し,急激に血圧が低下したため緊急手術を施行.開腹所見では前回吻合部の肛門側回腸に約60cmに渡る散在性壊死を認め,この部位の回腸を切除した.術後,エンドトキシン吸着を要したが改善し第12病日に退院した. 2度の切除標本の組織学的検索で腸間膜の動脈に器質的な閉塞はなく血管攣縮による虚血と考えられた.術前に全身の低灌流状態を呈していなかった自験例は非閉塞性腸管虚血症ではなく壊死性虚血性腸炎と診断された.壊死性虚血性腸炎の再発例は稀であるが,人口の高齢化に伴い増加が予想される疾患であり,その予防法については今後検討されるべき問題と考えられた.
  • 甲斐沼 尚, 水島 恒和, 位藤 俊一, 水野 均, 相馬 大人, 岩瀬 和裕
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1936-1939
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.悪性リンパ腫に対する化学療法施行中,大量の下血が出現した.上部ならびに下部消化管内視鏡検査にて明らかな異常を認めなかったが,消化管出血シンチグラフィーにて小腸出血が疑われた.保存的治療が奏効せず緊急手術を施行した.Meckel憩室を認め,憩室周囲に凝血塊が貯留していた.憩室の楔状切除を行った.憩室の粘膜面には約20×5mmの潰瘍が存在し,潰瘍面には露出血管を認めた.病理組織所見では,粘膜下層に達する潰瘍形成を認め,同部において著明な炎症細胞の浸潤を認めた. HE染色で,潰瘍の深部において核内封入体を認めた.免疫組織化学にてCMV陽性細胞を確認した. CMV感染を合併したMeckel憩室症と診断し,術後にganciclovirの投与を行った.術後は下血を認めず,術後37日目に退院した.免疫不全状態にある症例では,消化管にCMV感染を合併する可能性を念頭に置く必要があると考えられた.
  • 塩入 利一, 濱邊 祐一, 北村 正次
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1940-1944
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は33歳の女性で,下腹部痛を主訴に近医を受診し,腹膜炎の疑いで当院を紹介受診した.腹部膨満および中下腹部に圧痛・筋性防御・反跳痛があり, CT検査で腹部全体に腹水が存在し,下腹部の小腸に拡張と壁肥厚がみられた.汎発性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.ループ状に癒着・拡張した回腸の腸間膜付着側に穿孔がみられ,穿孔部を含む癒着した回腸を部分切除・端々吻合した.切除標本では線状・島状の潰瘍形成および瘻孔形成がみられ,病理所見では腸管の全層性の炎症細胞浸潤および間質の浮腫・線維化および類上皮性肉芽腫・多核巨細胞を認め, Crohn病と診断した. Crohn病は,腸管穿孔,大量出血,腸閉塞,中毒性巨大結腸症,膿瘍,痔瘻などに対し外科的治療が適応となる.穿孔で発症したCrohn病は稀であるが,穿孔性腹膜炎の鑑別疾患の1つとして重要である.
  • 菅野 雅彦, 新村 光司, 柳沼 行宏, 渡部 智雄, 坂本 一博, 鎌野 俊紀
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1945-1949
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    完全内臓逆位症に穿孔性腹膜炎で発症した小腸悪性リンパ腫の1例を経験した.
    症例は70歳,女性.主訴は,腹痛.既往歴は,幼少時より完全内臓逆位症を指摘されていた.現病歴は,数年前の9月15日,腹痛出現にて当院受診.腹部単純X線検査で腹腔内遊離ガス像を認め,同日,消化管穿孔の診断で緊急手術を施行.穿孔部は,回腸末端部より80cm口側の回腸に認められ,穿孔部および小腸壁の脆弱した部位を含めた小腸切除と腹腔洗浄ドレナージを施行した.術後病理組織学的検査により非ホジキン悪性リンパ腫, diffuse large B-cell typeと診断された.腹膜炎の侵襲から脱却し同年11月18日,退院.全身状態の回復を待ち,術後多剤併用化学療法を8クール施行した.経過良好であったが,手術3年後の10月上腸間膜動脈血栓症にて死亡した.
    完全内臓逆位症に併存した小腸悪性リンパ腫の報告例はなく,本症例が本邦初発例と思われ報告した.
  • 後藤 順一, 北 健吾, 河合 朋昭, 赤羽 弘充, 中野 詩朗, 高橋 昌宏
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1950-1954
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例1:72歳の男性で小腸gastrointestinal stromal tumor (GIST) に対し空腸部分切除術および横行結腸切除術を施行した. 1年3カ月後,肝転移が出現し,肝切除術およびマイクロウェーブ凝固療法を施行した.その半年後,多発肝転移が出現し,メシル酸イマチニブを400mg/dayで投与開始した.投与1カ月のCTで腫瘍は液状変性を示し,腫瘍径は縮小した.開始後2年経過し, PR維持中である.症例2:59歳の男性で小腸GISTに対して空腸部分切除術および結腸右半切除術を施行した.術1年2カ月後に多発肝転移を認めた.その3カ月後,イマチニブを400mg/dayで開始したが,皮疹などの副作用が強く,投与を中止.初回投与から2カ月後, 100mg/dayに減量して投薬を再開.副作用は軽度で投与可能であった.再開後3カ月のCTで腫瘍は液状変性を示し,約半年間, SDを維持した.イマチニブは小腸GIST肝転移に対し有効な治療法であると考えられた.
  • 辻 俊明, 木下 博之, 椿原 秀明, 山口 和哉, 植阪 和修, 嶋田 浩介
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1955-1959
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は21歳,男性. 2001年6月,嘔吐と下腹部痛を主訴に近医受診した.腹部X線写真でイレウスを認めイレウス管留置され,当院に転院となった.下部消化管内視鏡検査で回盲部に腫瘍を認め,回盲部Burkittリンパ腫の診断で結腸右半切除術(D3)を施行した.病理組織学的検査でstarry sky像,染色体検査でt (8;22) (q24;q11)の転座を認めるBurkittリンパ腫であった.化学療法目的に術後7日目に転院となり,化学療法・骨髄移植を施行して完全寛解中である.
    大腸原発のBurkittリンパ腫は自験例を含めて8例の報告があり,ほとんどの症例は予後不良であるが自験例のように腫瘍切除および術後化学療法により良好な予後が得られることがあり,腫瘍切除の有効性を示唆する症例と考えた.
  • 大谷 真二, 清水 康廣, 杉山 悟, 宮出 喜生
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1960-1963
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.腹部膨満,腹痛を主訴に外来受診した.頻回の開腹歴と問診から食餌性イレウスを疑い,入院後に保存的治療を開始した.腹部CT所見および腫瘍マーカーから肝転移を伴う進行大腸癌による腫瘍性イレウスと診断して手術を行った.手術所見では回盲弁付近の盲腸と肝彎曲のやや口側の上行結腸にそれぞれ4cm大の腫瘤を触れ, D2郭清を伴う結腸右半切除術を施行した.切除標本では上行結腸に全周性の腫瘍と盲腸に柿の種子5個を認めた.経過は良好で,術後26日目に退院となった.柿の種子はCTでは三日月状から楕円状の高吸収域として認めるが,本症例は柿の種子が誘因となって発症した大腸癌イレウスであった.本邦で食餌が原因となった腫瘍性イレウスの報告はほとんどされていないが,柿の種子もイレウスの原因となることがあり,詳細な問診とCTによる診断が有用であると考えられた.
  • 江藤 孝史, 石川 浩一, 白下 英史, 猪股 雅史, 白石 憲男, 北野 正剛
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1964-1967
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    特発性大腸穿孔の中でも稀な横行結腸穿孔の1例を経験した.症例は壊疽性膿皮症で加療中の65歳,女性.平成15年10月22日に出現し経過観察していた腹痛が28日夕方に突然増強し当科紹介となった.腹部所見とCT検査にて,穿孔性腹膜炎と診断し緊急手術となった.横行結腸中央に約3cmの穿孔を認めたため,横行結腸部分切除,腹腔内洗浄ドレナージ,および人工肛門造設を行った.病理組織像では,穿孔部に粘膜と筋層の急峻な断裂像を認めるのみで,潰瘍,腫瘍,憩室などの所見はなかった.特発性横行結腸穿孔は,比較的稀であるが,穿孔性腹膜炎の鑑別疾患の一つとして念頭に置く必要がある.
  • 森田 剛文, 中島 亨, 小路 毅, 平井 優, 深沢 智基, 後藤 秀樹
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1968-1971
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は22歳,男性.腹痛,便秘を主訴に当科受診.生後2週間目で腸穿孔に対して手術施行.その後人工肛門造設・閉鎖術施行されているが詳細は不明.原因精査のため注腸造影施行し,嚢状に拡張したS状結腸を認めた.下部消化管内視鏡および内視鏡下造影にて同部位の管腔内に郭壁様の構造を認め,隔壁に2箇所の瘻孔を認めた.先天性巨大結腸症の可能性も考慮し拡張部分のendscopic mucosal resection (EMR) 施行したが, acetylcholinesterase (Ach-E) 染色では神経叢の分布に異常を認めなかった.以上よりS状結腸重複症を疑い, S状結腸切除術を施行.病理組織学検査では,拡張部分の粘膜に円柱上皮を認め,正常腸管と連続する平滑筋組織を認めた.消化管重複症は多くが幼少児期に発見され,成人(15歳以上)で発見されるのは比較的稀である.
  • 北島 政幸, 瀧田 尚仁, 山口 浩彦, 笠巻 伸二, 坂本 一博, 鎌野 俊紀
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1972-1975
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    神経鞘腫はSchwann細胞より発生する腫瘍であり,消化管,特に大腸より発生するものは稀である.症例は80歳,男性.検診で施行された注腸造影検査でS状結腸に20mm大の腫瘍を認めた.大腸内視鏡検査で腫瘍は粘膜下腫瘍であったため,腫瘍頂部の粘膜をEMRの手法で切除し,腫瘍深部の生検を試みたが確定診断を得ることはできなかった. GISTを疑い,腹腔鏡下S状結腸切除術を施行した.腫瘍は被膜に覆われ,粘膜筋板直下から筋層を貫き,漿膜下層まで及んでおり,紡錘形細胞が索状配列を呈していた.免疫染色ではc-kit陰性, S-100蛋白陽性, GFAP陽性を示し, S状結腸原発神経鞘腫と診断した.組織学的診断が得られない場合は, GISTなどのmalignant potentialを有する間葉系腫瘍も考慮し,診断的切除を選択することも必要と思われた.
  • 倉本 正文, 蓮尾 友伸, 石原 光二郎, 池嶋 聡, 岩槻 政晃, 島田 信也
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1976-1979
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性で, 2型S状結腸癌に対してS状結腸切除術を施行した.吻合はコロンキットユニバーサル® (Tyco Healthcare) を使用しfunctional end-to-end吻合を行った.病理診断はmoderately differentiated adenocarcinoma, mp2, aw-, ow-, n1, stage IIIaであった.経過は良好で術後11日で退院となった.その後,術後1年目の内視鏡検査で吻合部のstaple lineに沿って吻合部再発を認めたため,吻合部を含めた結腸部分切除術施行した.経過は良好で14日後に退院となった. Functional end-to-endanastomosisは手技的にも簡単で,時間効率も良く,術野の汚染も少なく,優れた吻合法といえるが,遊離癌細胞のimplantationによる再発防止の為に,何らかの対策を講じる必要があると思われた.
  • 桃井 寛仁, 石川 稔晃, 大澤 和弘, 福本 学
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1980-1984
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳癌の臓器転移は多様であるが消化管,特に大腸への転移は稀である.われわれは腋窩リンパ節転移陰性(病期IIA) の乳癌の根治術後早期に,大腸への転移がみつかった1例を経験したので報告する.症例は77歳,女性.右側乳癌にて治癒切除術施行.術後約7カ月に定期検査のため腹部CT検査を行ったところ,大動脈周囲リンパ節の腫大を認めた.まもなく,左頸部リンパ節が急速に増大してきたため,切除生検したところ癌の転移であった.原発の検索のため精査を行った結果,大腸内視鏡にてS状結腸に隆起性病変を認め,生検では悪性と診断された.原発性大腸癌の疑いで腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行したが,摘出標本の病理組織像で乳癌の大腸転移と判明した.
  • 亀田 久仁郎, 松田 悟郎, 中鴬 雅之, 久保 章, 竹川 義則, 加藤 弘一, 長谷川 信吾
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1985-1989
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性.健康診断で血清CEA値が20.4ng/mlと上昇しているのを指摘された.精査目的で施行した大腸内視鏡検査で肛門縁から約4cmに下縁を有する直腸粘膜下腫瘍を指摘され,当院を紹介受診した.骨盤造影MRIでは直腸左側から背側にかけて,長径約10cmの不均一に造影される境界明瞭な卵型の腫瘤が認められた.悪性粘膜下腫瘍を疑い平成17年2月17日に直腸切除術(ハルトマン法)を施行した.病理所見では腫瘍の主座は筋層に存在するが,腫瘍は明らかに上皮性の悪性腫瘍であり,粘液癌の診断であった.全身検索の結果他に原発巣は認められずまた腫瘍と粘膜の間には距離が在り過ぎることから,何らかの機序で筋層に迷入した粘膜から発生した粘液癌と思われた.直腸原発の粘膜下腫瘍様の形態を示す癌の報告は少なく,本症例を含めて本邦報告例は13例にすぎない.文献的考察を加えてこれを報告する.
  • 肥田 侯矢, 矢内 勢司, 清水 謙司, 山本 秀和, 小西 靖彦, 武田 惇
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1990-1993
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肺・脳転移をきたした, Prevotellaによる肝膿瘍の1例を経験した.
    症例は特に既往歴のない51歳,男性. 2004年12月初めより下痢, 39度台の発熱が持続し,急性腸炎の診断で入院.抗生剤治療を開始したが症状改善せず,入院5日目の胸腹部CTにて肝膿瘍を指摘され,同時に両葉に多発する肺膿瘍も認めた.肝膿瘍は開腹ドレナージを行い,肺は保存的に治療を行った.解熱し炎症所見も改善したが解熱後も軽度のふらつきが持続し,術後18日目に頭部CTを施行したところ,脳膿瘍が確認されたため穿頭術を行い症状は改善した.肝膿瘍の膿汁よりPrevotellaが検出され,腸管の炎症から経門脈的に肝臓に膿瘍を形成し,さらに肺・脳への転移性膿瘍を生じたものと考えた.
  • 長田 真二, 八幡 和憲, 棚橋 利行, 坂下 文夫, 杉山 保幸
    2005 年 66 巻 8 号 p. 1994-1999
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    高度脈管浸潤により切除不能と判断した腫瘤形成型胆管細胞癌に対し,局麻下穿刺式凍結治療とpolysaccharide-Kurehaおよび全身化学療法により広範な腫瘍壊死を誘発した症例の治療経過の概要を報告する.症例は74歳,男性で来院時血清ビリルビン値は13.0mg/dLであり,画像上肝内側区域から前区域にかけてリング状濃染部分と低吸収域の混在する腫瘍を認めた.経皮経肝胆管ドレナージによる減黄後に週1回のペースで局麻下経皮的凍結治療を施行した所, 4回目で腫瘍は一部の残存箇所を残してほとんどが壊死に陥った.またCEAは18.4ng/mLが1.4ng/mLに, CA19-9は1792.5U/mLから43.4U/mLへと低下した.一方,免疫関連系の血液因子としては,血清amyloid A値がピーク値615.0μg/mlまで上昇を続け, Th1/Th2バランスは2回目治療後の30.2%を最高値として以降漸次減少傾向であったが施行前より下がることはなく,各治療毎に後値は前値に比べ高かった.今回の症例では,腫瘍免疫賦活作用による効果で腫瘍の縮小が誘発されたものと推察された.
  • 原 隆志, 石後岡 正弘, 樫山 基矢, 加藤 久昌, 田尾 嘉浩, 細川 誉至雄
    2005 年 66 巻 8 号 p. 2000-2003
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下胆嚢摘出術中の胆管損傷に対して施行した胆管胆管吻合術後8年目に発症した,胆管断端神経腫の1切除例を経験したので文献的な考察を加えて報告する.
    症例は53歳,男性, 1996年胆嚢内結石症にて腹腔鏡下胆嚢摘出術施行中に胆管損傷が発生し胆管胆管吻合術が施行された.その後順調に経過していたが, 2004年腹痛と眼球黄染を主訴に当院受診となり,超音波検査, MRCP,腹部CT検査などにて著明な肝内胆管の拡張と肝外胆管の狭窄,総胆管結石を発見された. PTCSでは瘢痕様狭窄で生検でも腫瘍細胞は検出されず良性胆道狭窄の診断で肝外胆管切除,総胆管結石の除去,肝管空腸吻合術を施行した.病理組織学的検査では狭窄部に一致して神経線維の増生を伴う瘢痕組織が認められ胆管断端神経腫と診断された.腫瘍性変化は認められなかった.胆管胆管吻合術後には本症の発生も念頭におき,長期的な画像診断を含めた経過観察が必要である.
  • 加藤 公一, 金住 直人, 伊藤 不二男, 鈴木 祐一, 木村 次郎, 石井 正大
    2005 年 66 巻 8 号 p. 2004-2007
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脾類表皮嚢胞の自然破裂により急性腹症を呈した1例を報告する.症例は29歳,女性.心窩部から腹部全体におよぶ激痛,嘔吐を主訴に当院救急外来を受診.腹部全体に圧痛とBlumberg徴候を認めた.腹部CT検査にて脾嚢胞と多量の腹水貯留を認め,腹腔穿刺にて褐色の混濁した腹水が採取された.脾嚢胞破裂による汎発性腹膜炎と診断し,緊急開腹手術を施行した.脾臓には大小の嚢胞が多発しており,このうち10cm径の嚢胞の1カ所に破裂を認めた.脾の温存は不可能であり,脾臓摘出術を施行した.病理組織学的所見より,脾臓に生じた上皮性真性嚢胞-類表皮嚢胞と診断した.
  • 阿部 裕, 鈴木 一史, 戸田 央, 亀岡 信悟
    2005 年 66 巻 8 号 p. 2008-2012
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    脾原発悪性腫瘍は稀な疾患ではあるが,このうち悪性リンパ腫の頻度は比較的高い.今回われわれは, 6例の脾原発悪性リンパ腫を経験したので報告する. 1994年2月から2002年9月までに当科にて手術を施行した脾悪性リンパ腫症例は7例であり,そのうちSpierらの診断基準を満たす脾原発悪性リンパ腫症例は6例であった.組織分類は全例Bcell typeであり, CD20抗原は陽性であった.全例に術後化学療法を施行したが, 1例を除きCRが得られている. 2002年6月からの2症例にはCD20をターゲットとする分子標的抗悪性腫瘍薬であるRituximabの投与を行っている.脾原発悪性リンパ腫は予後不良な疾患であるとされているが,脾摘および術後化学療法による集学的治療で良好な予後が得られる可能性が示唆された.
  • 西村 公男, 八木 誠, 中村 敏夫, 梶浦 耕一郎, 福井 康雄, 谷木 利勝
    2005 年 66 巻 8 号 p. 2013-2017
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性. 7年前左乳癌にて乳房切除術を受け当院でフォローされていた. 3年半前腹部膨満を自覚して腹部CTが施行され,脾周囲および脾内部に低吸収域を認め,脾嚢胞と診断された.手術は拒否していたが,腹部愁訴が強くなってきたので手術の同意を得た.手術所見では,脾周囲にはゼリー状黄色透明の液体が大量に貯留し,腹腔内全域にも同様の粘液貯留を認めて,腹膜偽粘液腫と診断された.虫垂に硬い腫瘤と粘液腫を認め,虫垂,大網,脾臓を摘出した.病理組織学的検査で,虫垂に粘液嚢胞腺癌,脾内部の粘液貯留部に上皮細胞を認め,腹膜偽粘液腫が脾内部に転移したものと考えられた.術後8カ月の現在, CT上再発なく, CEAも正常化している.脾転移をきたした腹膜偽粘液腫は極めて稀で,医学中央雑誌で検索しえた限り, 10例のみであった.
  • 小川 利久, 三村 芳和, 神森 眞, 島田 正, 上西 紀夫
    2005 年 66 巻 8 号 p. 2018-2022
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Cushing症候群として発症した左副腎皮質癌の1切除例を報告する.症例は52歳,男性.平成14年1月より顔面のむくみを自覚.平成15年5月,腰背部痛にて近医受診し,諸検査にて巨大な左後腹膜腔腫瘍が疑われたため当院紹介入院となった.満月様顔貌,耐糖能異常,骨密度低下とともにCTにて左後腹膜腔に径約20cmの腫瘍を認め,血中CA19-9濃度の上昇およびcortisol過剰産生を認めたため,副腎皮質癌と診断し,平成15年6月,外科的切除を施行した.術中傍大動脈リンパ節の転移を認めたため,腫瘍とともに可及的にリンパ節を摘出したが,術1カ月後に多発肝転移が出現. TAEの後TS-1, CDDPおよびop'-DDDの投与を行うも, 6カ月後,腫瘍塞栓の遊離による肺硬塞と思われる症状にて急死した.以上,内分泌活性を持つ大きな副腎皮質癌症例を報告した.
  • 篠田 雅央, 高橋 遍, 植田 貴徳, 北山 卓, 佐藤 俊, 新谷 史明
    2005 年 66 巻 8 号 p. 2023-2027
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    子宮広間膜裂孔ヘルニアは内ヘルニアの中でも非常に稀な疾患である.今回われわれは術前CTにて診断し腹腔鏡下に治療しえた症例を経験したので報告する.症例は54歳,女性.左下腹部痛を主訴に近医受診後,当科紹介となった.腹部CTで子宮が右側へ偏位し,子宮の左背側に拡張した小腸ループを認め,この腸間膜が子宮左側へ収束していたため左子宮広間膜裂孔ヘルニアによる腸閉塞と診断して腹腔鏡下に手術を施行した.径2cmの裂孔をヘルニア門として腹側から背側へ約30cmの小腸が嵌頓していたが腸管切除を行うことなく,ヘルニア門を4-0モノフィラメント吸収糸にて縫合閉鎖した.本疾患を術前に診断し腹腔鏡下に治療した報告はないが,女性腸閉塞症例での鑑別診断の1つとして念頭に置けば, CTでの診断は比較的容易であり,そのほとんどが腹腔鏡下手術にて対応可能と考えられた.
  • 矢野 将嗣, 杉野 圭三, 川口 康夫, 西原 雅浩, 新原 亮, 浅原 利正
    2005 年 66 巻 8 号 p. 2028-2032
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    臍部子宮内膜症は稀な疾患であり,その組織由来に関しても確定的なものはない.症例は49歳,女性.月経時に出血を伴う臍部の結節を主訴に当科を受診した.臍窩に径13mm大の褐色調,表面平滑,弾性硬の隆起性腫瘤を認めた.手術は臍部切除術,臍部再建術および腹腔鏡下骨盤内観察を行った.骨盤内にも子宮内膜症を認め,組織学的には,真皮から皮下脂肪組織にかけて子宮内膜組織がみられ,硝子様結合織の増生を伴っていた.女性の臍部腫瘤をみた場合は,臍部子宮内膜症を考慮する必要がある.
  • 丸山 浩高, 三尾 寿樹, 高木 大志, 木下 敬史, 中山 裕史, 関谷 正徳
    2005 年 66 巻 8 号 p. 2033-2037
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は33歳の男性で,下腹部痛を主訴に来院した.家族歴,既往歴に特記事項なし.下腹部に軽度の圧痛を認めたが,平坦であり腹膜刺激症状はなかった.腹部X線で小腸ガス像を伴う鏡面像を認め入院となった.イレウス管造影では,回腸のループ状になった5センチの正常部分の根元の位置に狭窄を認めた.大腸ファイバーで同部を観察したところ,狭窄部はスムースであり上皮性の変化は認めなかった.腹部CTでは,この病変部を骨盤内に指摘できたが,明らかな腫瘤は認めなかった. S状結腸間膜関連の内ヘルニアと診断し,腹腔鏡下に手術を施行した. S状結腸間膜窩に回腸が嵌頓しており, S状結腸間膜窩ヘルニアと確定診断した.嵌頓解除後,腸管の色調は不良で炎症も著明であったため, 5センチの小開腹を加え直視下で病変部を確認したところ,色調血流などは良好であった.小腸切除は行わず,ヘルニア門を縫合閉鎖して手術を終了した. S状結腸間膜窩ヘルニアの診断,治療などについて文献的考察を加えて報告する.
  • 小倉 修, 野間 秀歳, 今村 芳郎, 前田 昭三郎
    2005 年 66 巻 8 号 p. 2038-2042
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    びまん性腹膜悪性中皮腫は比較的稀な疾患とされ,極めて予後不良な疾患であり,長期生存例は稀とされている.今回,積極的な外科的治療と化学療法の組み合わせで長期生存が得られた症例を経験した.症例は44歳の女性で,腹部膨満感を主訴に1990年に当院外科を受診した.検査上,白血球およびCRPの上昇を認めた.腹部CTおよび注腸検査にて,腫瘤の上行結腸への浸潤像および腹水の貯留を認めた.結腸右半切除,大網切除および腹腔内散布チューブ造設術を施行した.術後, CDDP(腹腔内投与)および5-FU(静脈内投与)併用による化学療法を施行した. 1992年2月に腸閉塞により再開腹したが,生検にて腫瘍細胞の消失が確認された. 1994年8月に吻合部再発を認め,再手術・化学療法(CDDPおよび5-FU)を施行した. 1996年3月に右腹直筋内に再発し,化学療法(CDDPおよび5-FU)を施行するが, 12月に悪液質にて死亡した.びまん性腹膜悪性中皮腫は予後不良な疾患とされているが,自験例においては5年11カ月の長期生存が得られた.積極的な外科療法と化学療法の組み合わせにより延命効果が得られる可能性が示唆された.
  • 森川 孝則, 和田 靖, 坂田 直昭, 横山 智, 有明 恭平, 富永 剛
    2005 年 66 巻 8 号 p. 2043-2048
    発行日: 2005/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腰部における抵抗減弱部位は腰三角として知られているが,稀に同部位にヘルニアが生じることがある.今回われわれは,上腰ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は86歳,男性.左腰背部腫瘤を主訴に当院外来を受診した.左腰背部に軟らかく圧痛のない4cm大の腫瘤があり, CTにて左上腰ヘルニアと診断し手術を施行した.手術所見では2.5×3cm大の腹横筋腱膜の断裂がヘルニア門となっており,腎周囲脂肪織および下行結腸の脱出がみられた.周囲組織が脆弱であったため, Kugel patchを留置しヘルニア門を閉鎖した.患者は術後2日目に退院され, 3カ月を経過した現在再発を認めていない.
    上腰ヘルニアの本邦報告例は自験例を含めて35例である.治療は外科的修復が基本であるが,上腰ヘルニアに対しKugel patchを用いた報告は本例が初めてであり,早期退院を進める上で有用であると考えられた.
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