日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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67 巻, 2 号
選択された号の論文の48件中1~48を表示しています
  • 佐貫 潤一, 福間 英祐, 内田 恵博, 岡本 恭和, 木村 聖美, 田中 久美子, 坂本 尚美, 角田 ゆう子, 比嘉 国基, 和田守 憲 ...
    2006 年 67 巻 2 号 p. 271-276
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳頭異常分泌症の診断には,分泌液の細胞診, CEA測定,乳管造影,乳管内視鏡が有用とされる.しかし,時には診断に苦慮することもあり,簡便で有効な検査方法が待たれている.われわれは,乳頭異常分泌症の診断にMRマンモグラフィ(MRM)が有用ではないかと考え, MRMの画像所見と病理組織診断の対比を行った.対象はMRMを施行され,さらに手術,生検で病理組織診断の確定した乳頭異常分泌症35例とした.画像所見はMRMで造影効果のあった領域の形態・分布と,ダイナミック曲線の特徴で分類した.乳癌を示唆する画像所見の感度は93% (14/15)で,乳腺症を示唆する所見の特異度は100% (26/26)であった.本分類を用いたMRMの診断は,生検や乳管内視鏡を行う前のスクリーニング法として有用で,経過観察可能な症例と,癌を疑って速やかに的確な診断を行うべき症例の鑑別指標のひとつと考えられた.
  • 原口 秀司, 日置 正文, 山下 浩二, 織井 恒安, 山下 康夫, 川村 純, 宅島 美奈, 遠藤 直哉, 小泉 潔, 清水 一雄
    2006 年 67 巻 2 号 p. 277-280
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    「研究の目的」日本人におけるシプロフロキサシン点滴静注時の肺組織移行性を検討した.「方法」非小細胞肺癌に対して肺切除術を受ける患者10例にシプロフロキサシン300mgを1時間かけて点滴静注し,肺組織摘出時に肺実質1gと血清1mLを採取した.肺組織および血清中のシプロフロキサシン濃度は,高速液体クロマトグラフィー法で測定した.「結果」全例におけるシプロフロキサシン投与終了後肺摘出までの時間は135±55分 (75~223) で,シプロフロキサシン肺組織濃度,血清濃度,肺組織/血清中濃度比は, 4.9±2.0μg/g (2.1~7.9), 1.5±0.7μg/mL (0.8~2.7), 3.6±2.2 (1.9~8.7) であった.「結語」日本人においても点滴静注したシプロフロキサシンは肺実質への移行は極めて良好で,少なくとも投与後75分から4時間までは病原細菌に対しての最小発育阻止濃度に達していた.
  • 堤 謙二, 宇田川 晴司, 木ノ下 義宏, 上野 正紀, 峯 真司, 江原 一尚, 谷本 昭英, 鶴丸 昌彦
    2006 年 67 巻 2 号 p. 281-287
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    早期胃癌における幽門上リンパ節(以下No.5)への癌微小転移状況から,迷走神経幽門枝/右胃動脈を温存した幽門保存胃切除術(PPG)の適応拡大の可能性について検討した. D2郭清を行った中下部早期胃癌267例を対象にCytokeratin (CAM5.2)染色, HE染色によるNo.5転移状況を検討.癌細胞が1個のtumor cell micro involvement (MI)が6例, cluster形成したmicro metastasis (MM)が2例, HE染色での転移は1例. M癌ではMIが1例. SMI癌では転移を認めず, SM2癌ではMIが5例, MMが2例,HE染色で1例, SM2癌は全体の9.3% (8/86) に転移を認めた.さらにSM2の小彎病変では16.7% (5/30),非小彎病変5.4% (3/56),組織型は全例,中・低分化型で,中低分化型・小彎病変の19.2% (5/26)に転移を認めた.微小転移の臨床的意義はいまだ解明されていないが, SM2癌でのPPG適応の際には慎重を期す必要がある.
  • 北浦 良樹, 島田 和生, 鬼塚 幸治, 渡辺 次郎, 阿部 謙一, 武田 成彰
    2006 年 67 巻 2 号 p. 288-292
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.左乳頭からの血性分泌を主訴に当科を受診した.明らかな腫瘤は触知しなかったが,超音波検査で乳輪直下に8×9mmの等エコー腫瘤を認め,マンモグラフィでカテゴリー4,細胞診では悪性であった.以上より乳癌(T1bN0M0, Stage I)の診断で乳房円状部分切除,乳頭切開による区域乳管切除,センチネルリンパ節生検を行った(転移陰性のため腋窩郭清は省略).病理診断はintraductal carcinoma, solid papillary carcinoma (SPC) with endocrine differentiation, ER (+), PgR (+), HER2 (-)であった. SPCはMaiufらが初めて提唱した,高齢者に多く予後が良好な高分化の乳管内増殖主体の癌である.内分泌および神経系への分化を示し,主に細胞内への粘液の貯留を認め,粘液癌に合併することが多いため,粘液癌との関連の可能性が示唆されている.
  • 小倉 廣之, 秋山 太, 多田 隆士, 西村 誠一郎, 古川 恵子, 霞 富士雄, 坂元 吾偉
    2006 年 67 巻 2 号 p. 293-296
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回稀な乳腺cystic hypersecretory carcinomaの1例を経験したので報告する. 66歳,女性.右乳房腫瘤を主訴に当科を紹介受診した.触診上,右乳房外上領域に楕円形,弾性硬な38×28mmの腫瘤が認められ,マンモグラフィでは境界微細鋸歯状な高濃度の腫瘤とその末梢側の非対称性高濃度部が認められた.超音波検査では乳頭直下の乳管拡張と小嚢胞が集合する低エコー性腫瘤が認められた.穿刺吸引細胞診では,多量の分泌物様成分の中に異型を伴わない上皮細胞のシート状集塊が散見され, Class II.切開生検を施行.組織学的には,大小の嚢胞が集合し,その内部には好酸性の分泌物が充満し,わずかに低乳頭状に増殖した上皮細胞の一部に核クロマチンが増量した異型細胞により裏打ちされていた.断端陽性のため乳房切除術を施行した.明らかな浸潤巣は認められないが,腋窩リンパ節に1個微小転移を認め,最終的にinvasive cystic hypersecretory carcinomaと診断された.
  • 青山 圭, 神尾 孝子, 大地 哲也, 亀岡 信悟
    2006 年 67 巻 2 号 p. 297-300
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    47歳,女性.躯幹に紅斑,水疱が出現し当院皮膚科受診.初診時躯幹,四肢に拇指頭大までの浮腫性紅斑が多発し,中心に水疱を混じていた.水疱性類天疱瘡の診断にて皮膚科入院.内臓悪性腫瘍の合併を考え全身検索したところ左乳房に腫瘤認められ細胞診検査にてclass V, 乳癌と診断された.
    左乳房切除施行(児玉変法)した.リンパ節転移が認められ術後化学療法施行した.
    水疱症の代表疾患である天疱瘡,類天疱瘡は皮膚や口腔粘膜に水痕やびらんを形成する自己免疫疾患である.本症は悪性疾患との合併がしばしば散見される.
  • 山口 敏之, 井原 頒, 高田 学, 小松 信男, 橋本 晋一, 小山 正道
    2006 年 67 巻 2 号 p. 301-305
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.乳房検診で要精査となり,当科を受診した.理学的には左C領域に直径約2cmの境界不明瞭な硬い腫瘤を触知し,直上の皮膚に軽い陥凹を認めた.マンモグラフィでは同領域にスピキュラを伴い,中心が高濃度の直径1.5cmの腫瘤を認め,この腫瘤の頭側内側に接するように長径1.2cmの境界明瞭な腫瘤を認めた.乳房超音波検査では,縦横比が大きく形状不整な低エコーの腫瘤を認めた.乳癌が疑われたため穿刺吸引細胞診を行ったところ, class Vと診断され手術を行った.病理学的には硬癌と線維腺腫が隣接して存在し,線維腺腫への乳癌浸潤所見も認められた.
  • 二本柳 康博, 朴 英進, 加藤 良二, 山口 宗之, 蛭田 啓之, 亀田 典章
    2006 年 67 巻 2 号 p. 306-310
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    55歳,女性.右腋窩腫脹を主訴に当院初診.穿刺吸引細胞診にて腺癌のリンパ節転移が推定された.精査を勧めたが,本人希望にて転院.他院でマンモグラフィ,乳腺・腹部・子宮超音波検査,胸部X線,上部・下部消化管内視鏡検査をするも,腺癌病巣は同定されず,潜在乳癌が疑われ当院乳腺外科へ再紹介となった.当科におけるマンモグラフィ,乳房超音波検査, MRI, CT上乳癌病巣は同定されず,腫大した多数の腋窩リンパ節を認めた.腺癌転移を確定する目的でリンパ節摘出術を施行した.組織学的診断は悪性黒色腫であった. 45歳頃,右肘と眉間に自然消退した黒子の存在が再度の問診にて判明した.今回われわれは潜在乳癌が疑われた悪性黒色腫の1例を,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 徳田 貴則, 村上 貴志, 小山 裕, 黒木 慶一郎
    2006 年 67 巻 2 号 p. 311-315
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    冠動脈バイパス術 (CABG) 後の虚血性心筋症に伴う僧帽弁閉鎖不全症に対して,右開胸アプローチより僧帽弁置換術を行い,良好な結果を得たので報告する.症例はCABGおよび経皮的冠動脈形成術の既往のある70歳,男性. NYHAIV度の心不全にて再入院となった.冠動脈造影ではグラフトの開存が確認されたが,心エコー上mitralleaflet tetheringがみられ,虚血性僧帽弁閉鎖不全症 (IMR) と診断された.手術は右開胸アプローチより行った.右上腕動脈と右大腿動脈に送血管を,右大腿静脈より右心房に脱血管を挿入し,人工心肺を確立した.中等度低体温下にペーシング付スワンガンツカテーテルにて心室細動を誘発し,生体弁による僧帽弁置換術 (MVR) を施行し,経過は良好であった. CABG後のIMRに対して,右開胸アプローチによるMVRは,比較的安全で容易な方法であると考えられた.
  • 榊原 巧, 関 幸雄, 矢口 豊久, 原田 明生, 中尾 昭公
    2006 年 67 巻 2 号 p. 316-319
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は23歳,女性.胸痛,呼吸困難を主訴に当院を受診した.胸部レントゲン, CTにて多量の胸水を認め,胸腔にトロッカーを挿入したところ1日約1,500mlに及ぶ乳魔の排液をみ,乳魔胸と診断した.原因となる外傷歴,腫瘍などは認めなかった. 10日間の絶食,中心静脈栄養にて経過をみたが軽快せず,また低栄養状態となったため,胸腔鏡補助下胸管クリッピング術を施行した.術後,胸水排液は減少し, 1カ月後には食事摂取によっても乳魔の排出はなく治癒した.その後, 5年間再発を認めていない.乳魔胸は術後合併症を除けばきわめて稀であり,また治療にもしばしば難渋する疾患である.今回われわれは特発性と思われる若年女性に発症した乳靡胸を経験し,胸腔鏡補助下クリッピング術を施行したので報告する.
  • 北出 貴嗣, 小山 隆司, 栗栖 茂, 梅木 雅彦, 大石 達郎
    2006 年 67 巻 2 号 p. 320-324
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.健診で胃の異常を指摘され,精査の結果,胃癌と診断され手術目的で当院を紹介となった.上部消化管内視鏡検査で胃体下部大彎に3型の腫瘍を認め,生検の結果印環細胞癌と診断された.術前に行った腹部エコー検査で膵体部に約20mmのlow echoic massを認め, magnetic resonance angiographyにて脾動脈瘤であることが確認された.手術はD2郭清を伴う幽門側胃切除術と,脾動脈瘤に対しては瘤切除を行い端々吻合で脾動脈再建を行った.術後経過は良好で術後16日目に軽快退院となった.
    幽門側胃切除術の適応となる胃癌に脾動脈瘤を合併した場合,胃癌に対する術式としては,残胃への血流を考慮し,脾動脈再建例では通常の幽門側胃切除術が,非再建例では胃全摘の選択が,現時点では支持されると考えられた.
  • 真田 克也, 柴田 稔, 長内 孝之, 杉原 健一
    2006 年 67 巻 2 号 p. 325-329
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,女性. 2週間前から右乳房痛を自覚し来院.右乳房CED領域に10cm程の境界不明瞭な腫瘤を触知.マンモグラフィにてカテゴリー3,乳房超音波検査では硬癌を疑った.穿刺吸引細胞診でclass IIIと腺癌を否定できなかったため切開生検施行.病理組織診断はリンパ管侵襲が著明な腺癌で,印環細胞の像を示すものが目立った,左乳房にも同様の超音波像を示す腫瘤を認め,病理学的所見からも他の原発癌,特に胃癌の乳腺転移が疑われたため,上部消化管内視鏡検査を施行.胃印環細胞癌と診断された.同時に施行した腹部CT検査では両側付属器腫瘍,多量の腹水が見つかり,胃癌の両側乳腺,両側付属器転移,腹膜播種と診断した.化学療法を施行したが奏効せず,当院受診後約5カ月で亡くなった.
  • 中本 博之, 箕浦 俊之, 小田 道夫, 今村 敦
    2006 年 67 巻 2 号 p. 330-333
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性. 30歳よりBehçet病にて加療中で,平成15年8月上部消化管内視鏡検査にて肉眼型2型胃癌と診断された.さらにCT検査にて最大径5cmの腎動脈下腹部大動脈瘤を認めたため9月26日腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術を, 10月10日胃癌に対し幽門側胃切除を施行した.術後経過は概ね良好で,胃癌の術後40日目に退院となったが,約1年1カ月後多発性骨転移からDICとなり脳出血により死亡した.本症例は血管Behçetとしては典型的である.しかし, Behçet病と消化管悪性腫瘍との合併は極めて稀で,本邦では本症例も含めて12例のみであった.今回の症例は2期的手術を選択し良好な術後経過を得たが,今後は個々の症例に応じ, 1期的手術か2期的手術かを厳重に検討して決定すべきであると思われた.
  • 米山 公康, 戸枝 弘之, 大山 廉平
    2006 年 67 巻 2 号 p. 334-337
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の女性.腹痛と嘔吐を主訴に来院した.腹部CTスキャンでは十二指腸下行部に3cm大の腫瘤影を認めた.さらに内視鏡検査において同部に全周性の狭窄像を認め,生検にて腺癌と診断された.以上の所見から十二指腸癌と診断し開腹手術を施行した.腫瘍は横行結腸に浸潤していたため,膵頭十二指腸切除および結腸右半切除術を施行した.肉眼では大きさ4cmの3型に相当する腫瘍で,潰瘍は比較的小さく深部での広がりが強くみられた.病理組織検査により低分化型腺扁平上皮癌と診断された.
    十二指腸癌は比較的稀な疾患であり,中でも腺扁平上皮癌の報告は非常に少ない.今回われわれはその1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 小澤 秀登, 水野 均, 位藤 俊一, 水島 恒和, 相馬 大人, 岩瀬 和裕
    2006 年 67 巻 2 号 p. 338-341
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    横行結腸軸捻転症を発症した成人腸回転異常症の1例を経験したので報告する.症例は30歳の女性.腹痛,嘔吐を主訴に来院.腹部画像検査で,横行結腸の著明な拡張を認め,腸閉塞と診断された.また腹部CT検査にて腸回転異常を指摘された.保存的治療では軽快せず,開腹手術を施行した.術中所見では,腸管はnon-rotation型の腸回転異常症であり,上行結腸とS状結腸との間の癒着が原因となり,横行結腸の軸捻転を生じていた.成人腸回転異常症の症状の多くは中腸あるいは右側結腸の軸捻転によるもので,自験例では,稀な形態を呈していたので報告した.
  • 浦田 久志, 坪内 優宜, 川本 文, 竹内 謙二, 本泉 誠
    2006 年 67 巻 2 号 p. 342-345
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は14歳,女児,消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断にて緊急開腹手術を行った.開腹所見ではTreitz靱帯より約100cmの空腸腸間膜側と対側に隣接した2個の憩室が存在し,腸間膜側の憩室穿孔であった. 2個の憩室を含めて空腸部分切除を行った.病理学的検索では腸間膜対側の憩室は粘膜,筋層,漿膜の3層構造を有していた.一方,穿孔をきたした腸間膜側の憩室では大部分の固有筋層が欠如した,いわゆる2層構造を呈する圧出性の憩室であった.すなわち腸間膜対側の憩室は先天的に存在し,腸間膜側憩室は後天的に発生したものと考えられた.腸間膜対側の憩室に炎症が生じ,その炎症が周囲に波及することで後天的な憩室が形成された後,穿孔をきたしたものと推測された.
  • 藤田 加奈子, 伊達 和俊, 楠田 慎一, 福島 正之
    2006 年 67 巻 2 号 p. 346-349
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は85歳の女性.右下腹部痛と38.5°Cの発熱を認め来院した.右下腹部全体に圧痛と筋性防御を認めたため,急性虫垂炎もしくは大腸憩室炎が疑われた.血液検査では白血球10,900/mm3, CRP22.1mg/dlと炎症反応を認めた.腹部単純X線検査で腹腔内遊離ガス像などの異常所見は認めず,腹部CT検査で回盲部腸間膜が著明に肥厚しており,内部に遊離ガス像を認めた.大腸憩室炎の腸問膜内穿破による腸間膜膿瘍の術前診断で,回盲部切除術を切除した.切除標本では,回盲弁から5cmおよび7cmの回腸に,腸間膜付着側に突出する憩室を認め,肛門側の憩室が腸間膜に穿破し腸間膜に膿瘍を形成していた.病理組織学的所見では,憩室部位は固有筋層が欠落する仮性憩室であった.
  • 吉岡 宏, 金治 新悟, 倉吉 和夫, 河野 菊弘, 金山 博友, 井上 淳
    2006 年 67 巻 2 号 p. 350-354
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性で,上腹部痛を主訴に来院した.腹部CTと腹部超音波検査にて小腸にtarget signを認め,腸重積が疑われた.経口小腸透視時に腸重積は自然解除し, Treitz靱帯から約1mの空腸に単発の有茎性ポリープがみられた.上部および下部消化管の精査では,他に病変を認めなかった.一般血液検査や腫瘍マーカー(CEA, CA19-9)は正常範囲内であった.待機的に開腹下に空腸を約10cm部分切除した.切除肉眼所見では3.0×2.0×1.8cmの有茎性分葉状ポリープで,病理組織学的にPeutz-Jeghers (以下, P-J)型の過誤腫性ポリープと診断された.本疾患には皮膚,口唇,口腔粘膜,指趾の色素沈着や遺伝性疾患を疑うような家族歴もなく,不完全型P-J症候群と考えられた.今回われわれは,稀な不完全型P-J症候群の成人症例の1例を経験したので,本邦の成人報告32例について文献的考察を加え報告する.
  • 宇井 崇, 宮倉 安幸, 笹沼 英紀, 関口 忠司
    2006 年 67 巻 2 号 p. 355-359
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    盲腸外側の後腹膜窩より傍結腸溝に沿い小腸が嵌入し,従来の分類とは若干異なる盲腸周囲ヘルニアの1例を経験したので報告する.症例は82歳,女性.腹痛,嘔吐にて近医受診し腸閉塞の診断にて当院紹介となる.腹部CTでは盲腸を内側へ偏位させる拡張した腸管を盲腸外側に認めた.腹部超音波では右下腹部に約3cmのto-and-froを伴う低エコー濃度腫瘤陰影を認めた.減圧目的のイレウス管挿入後の小腸造影では,右下腹部の小腸に強度の狭窄像を認めた.盲腸周囲ヘルニアによる腸閉塞と診断し,病変直上の小開腹による緊急手術を施行した.盲腸外側傍結腸溝に直径約1cmの腹膜陥凹部を認め,約10cmの小腸が嵌頓していた.腸管を整復後ヘルニア門を縫合閉鎖して手術を終了した.内ヘルニアには,盲腸外側の傍結腸溝に嵌入する盲腸周囲ヘルニアもあり,特徴的な画像診断により早期診断に努め,侵襲を最小限に抑えた治療を目指すことが肝要である.
  • 佐野 佳彦, 山川 知洋, 佐々木 学
    2006 年 67 巻 2 号 p. 360-364
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれはChilaiditi症候群を伴うイレウスで発症した巨大虫垂粘液嚢腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.症例は41歳の男性.腹痛,下痢,嘔吐で入院した.胸腹部単純X線検査ではChilaiditi症候群を伴ったイレウス像を呈し,腹部CTでは下腹部に嚢胞性病変を認めた.イレウス管挿入によりイレウスは改善したが,腹部超音波検査で長径13cmの巨大嚢胞がみられ,腹腔内巨大嚢胞性病変と診断し,入院7日目に手術を施行した.巨大虫垂粘液嚢腫と診断し回盲部切除を行った.切除虫垂はサイズ17.2×7.7cmで,ゼリー状の粘液で充満していた.病理組織学的所見では,虫垂粘膜および固有筋層はほとんど消失し,壁は線維化していた.検索した範囲では腫瘍性病変は認められなかった.本症例は移動性盲腸を合併しており,嚢腫の捻転によりイレウスおよびChilaiditi症候群をきたしたと考えられた.
  • 岡本 信彦, 山藤 和夫, 朝見 淳規, 竹島 薫, 林 憲孝, 馬場 秀雄
    2006 年 67 巻 2 号 p. 365-368
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は76歳の女性で,食欲不振および体重減少を認め当科内科受診した.骨盤造影CT検査にて骨盤腔内に約10cm大の腫瘤を認めた.注腸造影検査では, S状結腸から上部直腸の壁不整を認め腫瘍の浸潤が疑われた.また,上行結腸から盲腸にかけて隆起性病変の存在が疑われた.大腸鏡は癒着のため挿入困難であった.原発巣確認のため上腸間膜動脈造影を行い,回結腸動脈領域に腫瘍濃染像を認めた.以上より骨盤腔内で発育し, S状結腸へ浸潤した回盲部原発腫瘤と診断し手術を施行した.骨盤腔の腫瘤は回腸末端,上行結腸,S状結腸と一塊になっていたがen blocに切除可能であった.組織学的に盲腸原発の粘液癌であり,盲腸の漿膜側よりバウヒン弁背側で上行結腸への直接浸潤を認めた.術後22カ月経過し無再発生存中である.瘻孔を有する大腸癌でも内瘻臓器の合併切除により良好な予後が得られることから,積極的な外科的切除が必要であると考えられた.
  • 水沼 和之, 中塚 博文, 藤高 嗣生, 中島 真太郎, 谷山 清己
    2006 年 67 巻 2 号 p. 369-372
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性.右下腹部痛を主訴に当科入院となった.腹部CT検査にて,虫垂内腔の拡張の程度に比べ,壁肥厚や周囲脂肪織の変化が少なく,超音波検査では虫垂体部に不整な壁肥厚を認めた.虫垂癌と術前診断し,一期的に回盲部切除術を施行した.病理診断は虫垂粘液嚢胞腺癌であった.原発性虫垂癌は比較的稀な疾患で術前診断は困難であるとされるが,今回,術前に診断可能であった原発性虫垂癌の1例を経験したので報告する.
  • 寺岡 均, 竹内 一浩, 西居 孝文, 松永 伸郎, 新田 敦範
    2006 年 67 巻 2 号 p. 373-375
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は67歳の男性で嘔吐を主訴に当院紹介となった.腹部単純X線写真で小腸の拡張像を認め腸閉塞の診断で入院となった.腹部CTで腹水はなく,また小腸の拡張像を認めたが明らかな腫瘍病変は認めなかった.保存的加療にて腸閉塞は軽快しなかったため内ヘルニアを疑い手術を施行した.開腹所見では回腸が約5cm傍上行結腸窩に嵌頓しており,傍上行結腸窩ヘルニアと診断した.嵌頓した小腸は一部脆弱化していたため小腸部分切除術施行し,ヘルニア門は縫合閉鎖した.傍上行結腸窩に発生した内ヘルニアは極めて稀であり興味ある症例と考えられたので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 小野里 航, 高橋 禎人, 平井 俊男, 西 八嗣, 八十川 要平, 本告 匡
    2006 年 67 巻 2 号 p. 376-381
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.肛門左側腫瘤を主訴に近医受診し,肛門腫瘍を指摘され当院紹介受診となった.肛門左側に5.5×3.5cm大の楕円形で弾性軟な腫瘤を認め,超音波, CT, MRI検査で脂肪成分と嚢胞成分が混在する腫瘍を認めた.肛門周囲脂肪肉腫を疑い,腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は肛門左側皮下から肛門挙筋に接するように存在し,周囲との境界は比較的明瞭で容易に剥離摘出可能であった.術後の病理組織診断では侵襲性血管粘液腫(aggressive angiomyxoma)の診断であった.侵襲性血管粘液腫は,本邦では自験例を含め35例ほど報告されているが,若い女性の外陰部に発生することが多く,自験例のように肛門腫瘍の形態を呈し壮年男性に発生することは稀である.
    本邦報告例および自験例を含め文献的考察を加え報告する.
  • 鹿野 敏雄, 越川 克己, 谷口 健次, 桐山 幸三, 和田 応樹, 末永 裕之
    2006 年 67 巻 2 号 p. 382-386
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    近年, Crohn病の増加と共にCrohn病に併発した大腸癌の報告も増加してきている.今回, 4型大腸癌による腸閉塞の診断で2期的に手術を行い,その後の病理所見にてCrohn病を発生母地とした大腸癌と推察された症例を経験したので報告する.症例は46歳の女性で,他院より大腸狭窄の診断で当院に紹介,その精査中に腸閉塞をきたし2期的にS状結腸切除を行った.肉眼的には4型大腸癌の様相を呈するものの,中央にはpolypoid病変を認め他はびらん性粘膜と敷石像を認めた.組織像にて高分化腺癌の他に非乾酪性肉芽腫を有しており, Crohn病を発生母地とした大腸癌と考えられた.
  • 山本 秀和, 金城 洋介, 加藤 滋, 清水 謙司, 小西 靖彦, 武田 惇
    2006 年 67 巻 2 号 p. 387-391
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は42歳,男性.内視鏡でRs直腸に大きな2型直腸癌を認めた. CTでは骨盤腔に,右尿管近傍への浸潤が疑われる大きな腫瘍を認め,上直腸動脈に沿うリンパ節腫脹も認められたが,遠隔転移はみられなかった. T4N2M0のRs直腸癌であり,剥離面陽性が危惧されることから,術前化学放射線療法を行った.放射線療法は骨盤腔全体に総量46Gy (1日2Gyを23回),化学療法はホリナート・テガフール・ウラシル療法を用い,放射線療法日に合わせて通常量内服した.治療後のCTでは腫瘍は著明に縮小し,リンパ節腫脹も消失,内視鏡検査でも瘢痕潰瘍を残すのみであった.著効と判断して手術を行ったが,摘出標本の病理検査では癌組織の遺残を認めず,組織学的CRであった.局所進行Rs直腸癌に対して,ホリナート・テガフール・ウラシル療法を用いた後前化学放射線療法は有効な治療法の選択肢になりえると考えられた.
  • 鈴木 直人, 角田 明良, 中尾 健太郎, 山崎 勝雄, 高梨 秀一郎, 草野 満夫
    2006 年 67 巻 2 号 p. 392-395
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.肛門部痛,左鼠径部痛を主訴にて平成16年4月当院初診となった.直腸指診にて2時から4時方向に圧痛を伴う弾性硬の腫瘤を触知した.大腸内視鏡検査では歯状線部に発赤を伴う顆粒状隆起を認め,生検では低分化腺癌であった. CT検査では左鼠径部に径2cm大のリンパ節腫大を認め,リンパ節転移と考えられた.以上より肛門管癌,鼠径リンパ節転移と診断し,平成16年5月,側方郭清および鼠径リンパ節郭清を伴う腹会陰式直腸切断術(D3)を施行した.組織学的には主に充実性増殖をしめすbasaloid cell carcinomaが浸潤性に増殖しており,類基底細胞癌と診断した. a1, ly3, v2, n2 (+), stage IIIbであった.術後良好にて6月退院となった.外来にて放射線療法(総線量54.0Gy)および化学療法施行し,その後再発の兆候はなく経過観察中である.本疾患において術後放射線化学療法は推奨されるべきと思われた.
  • 湯浅 浩行, 山碕 芳生, 伊藤 史人, 井戸 政佳, 三枝 庄太郎, 大倉 康生
    2006 年 67 巻 2 号 p. 396-401
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例: 63歳,女性.既往歴: 44歳時,直腸癌にて腹会陰式直腸切断術施行.腹部USにて肝の多発結節性病変を指摘され,精査加療目的に当科入院となった.腹部CTでは,肝両葉に低吸収を示す多数の結節を認め,転移性肝癌あるいは肝細胞癌を疑い,開腹生検を施行した.病理組織学的には,大きな好酸性の細胞質と異型性に富む核を有する上皮性細胞からなり,免疫組織学検査では第VIII因子関連抗原とCD34が陽性で,類上皮性血管内皮腫と診断した.
  • 久下 博之, 森田 敏裕, 中島 祥介
    2006 年 67 巻 2 号 p. 402-407
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.全身倦怠感を主訴に入院となった.入院時,発熱・腹痛などの症状はなく,血液検査でも炎症反応上昇を認めなかった. HCV抗体陽性のため,定期検診目的に施行された腹部CT検査で肝前区域に低吸収域を認めた.腹部血管造影とMRI検査を行い肝内胆管癌と診断した.転移性肝癌との鑑別目的に消化管精査を行ったところ,注腸検査でS状結腸ポリープを認め,生検で腺癌が検出された.早期S状結腸癌を合併した肝内胆管癌(転移性肝癌の可能性も否定できず)と術前診断し,肝部分切除術, S状結腸部分切除術を行った.病理組織検査で肝はIPT, 大腸癌はm癌と診断した.悪性疾患が併存,または既往を有する肝ITPの診断には慎重を要すると考え,文献的考察を加え報告する.
  • 長谷川 潤, 高野 征雄, 武者 信行, 小向 慎太郎, 須田 和敬, 藤田 加奈子, 斎藤 謙
    2006 年 67 巻 2 号 p. 408-413
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    本邦での報告例は少ないfibrolamellar hepatocellular carcinoma(以下, FLHCC)を経験したので報告する.症例は48歳,男性. HBs抗原, HCV抗体ともに陰性.検診にて肝機能障害を指摘され,近医を受診.肝腫瘍を認め当院にて精査を行った. AFP578.5ng/ml, PIVKA-II 47MAU/mlとともに高値を示した.腹部超音波(以下, USと略記)にて後区域に径約4cmの腫瘍が認められた.腹部単純CTで腫瘍は低吸収域, dynamic CTでは腫瘍は不均一で辺縁から徐々に造影された.血管造影では腫瘍血管に乏しかった. USガイド下生検にてFLHCCと診断され肝右葉切除術を施行した. FLHCCは特殊型の原発性肝細胞癌(以下HCC)で肝硬変のない若年成人に発症し予後は比較的良好であるといわれている.
  • 市川 剛, 上西 崇弘, 山本 隆嗣, 竹村 茂一, 田中 宏, 久保 正二
    2006 年 67 巻 2 号 p. 414-418
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.C型慢性肝炎の経過観察中,右季肋部痛を主訴とし,超音波検査により肝内に占拠性病変を指摘された. AFP, PIVKA-IIは正常範囲内であったが, CEA, CA19-9, CYFRA21-1の上昇が認められた.造影CT像上,辺縁のみが造影効果を受ける径8cmの形状不整な低吸収域が認められ,消化管精査では異常所見がなかったため,肝内胆管癌と診断,拡大前区域切除を施行した.病理組織検査により腺扁平上皮癌と診断された.術後早期の経過は良好であったが,術3カ月後に残肝再発がみられ,術6カ月後に癌死した.一般に肝原発腺扁平上皮癌は発見時すでに進行癌であることが多く,その予後は極めて不良である.本症はC型慢性肝炎を伴うことがあることから,C型慢性肝炎患者において腺扁平上皮癌を含めた肝内胆管癌を念頭に置いた経過観察が必要で,腫瘍マーカーとしてCYFRA21-1が有用ではないかと考えられた.
  • 家田 淳司, 谷 眞至, 伊奈 志乃美, 川井 学, 内山 和久, 山上 裕機
    2006 年 67 巻 2 号 p. 419-423
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆嚢原発平滑筋肉腫は非常に稀な疾患である.患者は78歳,女性で,心窩部圧迫感を主訴に近医受診し,肝臓・胆嚢の腫大を指摘された.腹部超音波検査,腹部CT検査にて胆嚢は最大径約8.5cmの不整な腫大を呈し,肝浸潤と十二指腸浸潤,中心壊死を有する胆嚢腫瘍であったが,所属リンパ節の腫大は認めなかった.上部消化管内視鏡検査で腫瘤の十二指腸下行脚への直接浸潤を認め,管腔の約3分の2周を占める潰瘍性病変を認め,大きな偽腔を形成していた.手術は肝,胃・十二指腸と横行結腸への浸潤も認められたため,肝S4a・S5切除,胆嚢摘出術,十二指腸部分切除術,幽門側胃切除,横行結腸部分切除術を施行し, Roux-en-Y法により再建した.免疫染色ではα-SMA, vimentinが陽性であり,病理組織学的にleiomyosarcomaと診断された.胆嚢原発平滑筋肉腫は予後不良な疾患であり,予後の改善のためには今後,有効な補助療法が必要であると考える.
  • 佐々木 剛志, 平 康二, 中村 豊, 福田 直也, 竹内 幹也, 菱山 豊平
    2006 年 67 巻 2 号 p. 424-428
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膵損傷症例において,膵液の膵外への漏出を評価することは治療方針決定に非常に重要である. Endoscopic retrgrade pancreatography (ERP)が,その他の上部消化管に損傷がなく,全身状態が許せばという条件で,最も有用な検査とされてきた.最近他の膵臓疾患で有用性が認められるようになったmagnetic resonance cholangiopancreato-graphy (MRCP)も膵損傷の診断法のひとつとして注目を集めている.今回われわれは膵損傷にてERP, MRCPともに施行した2例を経験したので,両検査を比較した.その結果,MRCPは主膵管の断裂を診断することが可能であったが,分枝膵管の損傷は描出できず,また損傷の質的診断が困難であり単独では治療方針決定の材料として,現時点ではERPに劣ると考えられた.
  • 宮原 利行, 飯田 辰美, 水谷 憲威, 安村 幹央, 山田 卓也, 竹村 博文
    2006 年 67 巻 2 号 p. 429-433
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    非機能性膵島腫瘍は比較的稀な疾患であり,ホルモン過剰分泌による症状を呈しないため,早期発見が困難な場合が多く,また術前診断が困難であることが多い.本腫瘍は切除により良好な予後を得られることから,早期発見かつ術前診断を得ることが重要である.今回,最大径1.5cmで発見し,超音波内視鏡下吸引細胞診で術前診断を得た非機能性膵島腫瘍を経験したので報告する.症例は68歳,女性.肝硬変に対する治療のため通院中,精査のため腹部MRI・CTを施行された時に,膵腫瘍を指摘され,精査加療目的で入院した.身体所見では大きな異常はなく,内分泌機能検査ではガストリンの軽度上昇とグルカゴンの軽度低下認めた.画像診断では,典型的な膵島腫瘍の像を呈し,超音波内視鏡下吸引細胞診にて病理組織学的診断を得ることができた.術前診断を得るために,安全でかつ簡便な超音波内視鏡下吸引細胞診は極めて有効な検査である.
  • 竹下 洋基, 神谷 勲, 禰宜田 政隆, 徳永 裕, 佐藤 成憲, 松崎 正明
    2006 年 67 巻 2 号 p. 434-438
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回,各検査所見が非典型的であったため,術前の質的診断が困難であった膵内分泌腫瘍の1例を経験したので報告する.症例は66歳,男性.時折の上腹部膨満感を主訴に内科受診.腹部超音波検査にて膵管拡張像を指摘された.造影CT検査では,造影後期相にわずかに造影される膵頭部腫瘍を認め, ERCP検査では膵管狭窄像とそれより尾側の拡張像が認められた.血管造影検査では腫瘍濃染像など異常所見なく,血中腫瘍マーカーは正常範囲内で,血中ホルモン値もガストリンの軽度上昇のみで,上部内視鏡検査でも消化性潰瘍などは認めなかった.以上より,膵癌,膵内分泌腫瘍,腫癌形成性膵炎などのいずれにも合致しない所見であったが,悪性も否定できず, PPPDを施行した.病理検査では,比較的異型の乏しい円柱上皮細胞が索状に配列・増殖する像がみられ,免疫染色でシナプトフィジン, NSE陽性であり,膵内分泌腫瘍と診断した.
  • 石崎 康代, 池田 聡, 高橋 信, 岡島 正純, 浅原 利正
    2006 年 67 巻 2 号 p. 439-442
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    15歳男子.発熱と腹痛のため近医を受診した際に腹部CT検査で左上腹部に9cm大の腫瘤を指摘された.血液検査上,白血球数とCRPの上昇を認め,感染性膵嚢胞を疑い手術を行ったところ病理組織学的にsolid-pseudopapillary tumor (SPT)と診断された. SPTは比較的稀な膵腫瘍であり,一般的に若年女性に好発するとされている.また近年β-cateninの細胞内への異常蓄積やβ-catenin遺伝子の異常が存在することが明らかになってきており本症例に対して免疫染色を行ったところβ-catenin, cyclin D1ともに陽性であった.術後経過は良好であり2年間の経過観察期間中に再発や転移は認めていない.
  • 小倉 芳人, 大塚 綱志, 貴島 文雄, 愛甲 孝, 前之原 茂穂, 西島 浩雄
    2006 年 67 巻 2 号 p. 443-447
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回,腎孟癌に合併し,転移性腫瘍と鑑別が困難なため脾摘出術を施行した脾過誤腫の1切除例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.症例は60歳,男性.前立腺癌の経過観察中の2002年11月CTにて腎孟腫瘍・脾腫瘍を指摘された. CTにて脾臓下極に径約2cm大の腫瘍を認め,単純にて等吸収域を呈し,造影早期に造影効果は認められず,後期に軽度の造影効果が認められた. MRIでは脾腫瘍はT1強調像で低信号・T2強調像で等信号を呈していた.腎孟癌の転移も疑われたため脾摘出術を施行した.摘出標本にて脾臓に暗赤色調の被膜を有する24×21mmの腫瘍が認められ,病理組織学的検査では,赤脾髄を主体にした組織増生が認められ赤脾髄型の過誤腫と診断された.脾過誤腫は特異的な画像所見に乏しく,術前の診断は困難で,有症状や悪性疾患が疑われる症例には手術を施行し確定診断を得ることが重要であると考えられた.
  • 河野 文彰, 松田 俊太郎, 種子田 優司, 市成 秀樹, 峯 一彦, 柴田 紘一郎
    2006 年 67 巻 2 号 p. 448-451
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    子宮広間膜ヘルニアは,子宮広間膜に生じた異常裂孔に起因する内ヘルニアであり非常に稀な疾患である.今回イレウス症状にて発症した子宮広間膜ヘルニアの1手術例を経験したので報告する.症例は52歳,女性.突然発症した激しい腹痛を主訴に当科受診し緊急入院となった.腹部単純X線およびCTにて骨盤内に拡張した小腸と腹水を認め,腹水穿刺にて血性腹水を認めたため,絞扼性イレウスの診断にて緊急手術を施行した.開腹すると骨盤底は拡張した小腸と中等量の腹水を認めた.さらに検索すると左子宮広間膜に母指頭大の異常裂孔を認め,その裂孔に回腸末端部から約50cmにわたり回腸が嵌頓していた.子宮広間膜ヘルニア嵌頓の診断にて嵌頓した回腸を還納し裂孔部を縫合閉鎖し手術を終了した.本疾患の本邦報告例を集計しその臨床学的特徴を考察した.
  • 調 憲, 脇山 茂樹, 祇園 智信, 徳永 正則, 近藤 潤也, 長家 尚
    2006 年 67 巻 2 号 p. 452-456
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    下大静脈腫瘍栓を伴う巨大副腎皮質癌を安全に切除できたので報告する.症例は36歳,男性.径18cmの右副腎腫瘍と肝部下大静脈の腫瘍栓を認めた.手術所見で巨大な後腹膜腫瘍は肝右葉,下大静脈,右腎,膵頭部の周囲臓器を強く圧排していたが,容易に剥離可能であった.肝右葉切除を行い,肝部下大静脈を露出した後,人工心肺は使用せず,下大静脈の8分間のクランプ下に腫瘍栓を摘出した.術中の経食道エコーによる腫瘍栓のモニタリングは極めて有用であった.術後ミトタン,エトポシド,ドキソルピシン,シスプラチンによる補助化学療法を行い,術後1年無再発生存中である.文献的考察を加え,報告する.
  • 添田 暢俊, 星野 豊, 大谷 聡, 木暮 道彦, 寺島 雅典, 後藤 満一
    2006 年 67 巻 2 号 p. 457-461
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性. 2日前から持続する腹痛および嘔吐を主訴に当院受診.血液検査にて貧血を認め,腹部造影CT検査では腸間膜血腫および腹腔内出血が疑われた.腹部外傷の既往は認めなかった.同日は全身状態が安定していたため経過観察入院とした.翌日,貧血の進行を認め,腹部血管造影検査を施行した.中結腸動脈左枝に狭窄・蛇行・造影剤の血管外漏出を認めたため,腸間膜血腫の診断にて同日緊急手術を施行した.横行結腸間膜内に手拳大の血腫を認め,中結腸動脈左枝に広汎な血栓を認めた.動脈性に出血していた中結腸動脈左枝の辺縁動脈を止血し,横行結腸切除を施行した.病理組織学的検査にて中結腸動脈左枝の辺縁動脈に連続した血栓を認めた.術後精査にて抗カルジオリピン抗体が2回陽性となり,抗リン脂質抗体症候群に合併した腸間膜血腫と診断された.現在,血栓症の再発予防としてアスピリンを内服中であるが,再発を認めていない.
  • 廣川 高久, 小林 建司, 早川 哲史, 田中 守嗣, 真辺 忠夫, 伊藤 誠
    2006 年 67 巻 2 号 p. 462-467
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性. 2004年7月中旬より腹部腫瘤を自覚するも放置,その後全身倦怠感が出現し9月17日当院内科受診,入院となる.血液検査にてCRP 31.6mg/dl,白血球12,800/μlと高度の炎症所見を認めた.各画像診断にて腹腔内の直径約20cmにおよぶ多嚢胞性腫瘤であったが確定診断はつかず, 10月14日手術施行した.手術所見は,上行結腸,胆嚢,肝下面とは剥離困難な大網から連続する直径約30cm大の腫瘍で,離れた大網にも小結節を認めた.胆嚢,肝,右半結腸とともに切除した.術後の病理学的検査にて大網原発の悪性線維性組織球腫と診断された.術後経過良好で, 10月27日退院. 2005年1月15日腹膜内再発を確認,急激に全身状態悪化し1月27日死亡された.病理解剖にて腹腔内腫瘍が穿破し,汎発性腹膜炎の状態であった.肝,肺など遠隔転移はなかった.
  • 神崎 憲雄, 石井 俊一
    2006 年 67 巻 2 号 p. 468-472
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は15歳,男性.発熱および右大腿部痛あり.歩行困難となり,当院搬入された.来院時,右大腿部は著明に腫脹し,激しい疼痛あり.さらに右側腹部を中心に圧痛を認めた.腹部CT上,右腎の高さから右後腹膜に膿瘍を形成し,大腿部も膝上まで鏡面像を伴った膿瘍を形成していた.大腿部および背側より後腹膜ヘドレナージを施行したところ,便汁様の膿汁が約1,000ml排出された.腸管が後腹膜への穿孔し,後腹膜および大腿にガスを伴った膿瘍を形成したものと診断し,開腹手術を行った.虫垂先端が直腸右側の後腹膜に癒着,穿通し,後腹膜から大腿へ広範に膿瘍を形成していた.後腹膜を開放すると約500mlの便汁様の膿が排出された.また大腿へは大腿輪にて交通し膿瘍を形成していた.術後は,敗血症性ショックの状態であったが,順調に回復し,後術8カ月後退院となった.早期に診断,開腹ドレナージを施行できたことが,救命できた要因と考えた.
  • 名和 正人, 土屋 十次, 浅野 雅嘉, 立花 進, 川越 肇, 熊澤 伊和生
    2006 年 67 巻 2 号 p. 473-477
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性, 55歳時にB型慢性肝炎の既往があった.上腹部不快感を主訴に受診し,腹部超音波検査にて肝尾状葉に腫瘍像を指摘され入院となった.腹部CT検査では下大静脈を外方へ圧排し辺縁が強く造影された径約6cmの充実性病変を認めた. MRI検査では腫瘍は下大静脈と大動脈間を占拠し,肝実質を腹側に圧排し, T1で低信号, T2で高信号を示した.腹腔および上腸間膜動脈造影では腫瘍濃染像認めなかった.肝腫瘍マーカーはいずれも陰性で,消化管や女性器にも異常所見はなかった.肝尾状葉原発腫瘍の診断で開腹したが,腫瘍と尾状葉は一部が連続しているのみで腫瘍は肝外性に発育していた.尾状葉肝実質を一部鋭的に合併切離し,さらに下大静脈を鈍的に剥離し腫瘍を摘出した.病理学的検査にてAntoni A型の良性神経鞘腫と診断され,また,肝~腫瘍移行部は互いの被膜が介在していた.病理所見と画像,開腹所見より後腹膜原発神経鞘腫と診断された.
  • 岡山 順司, 堀川 雅人, 中辻 直之, 辰巳 満俊, 杉原 誠一
    2006 年 67 巻 2 号 p. 478-482
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後腹膜粘液嚢胞腺腫の1例を経験したので報告する.症例は42歳,女性.主訴は,左下腹部痛および左下腹部腫瘤触知.腹部超音波検査および腹部CT, MRI検査で左後腹膜腔に嚢胞性腫瘤を認め,手術を施行した.摘出標本の大きさは7×6×5cmで単胞性,内容物は,黄褐色透明でやや粘調性の液体であった.病理組織学的には,高円柱上皮で被われた核異型を伴わない粘液嚢胞腺腫であった.また,嚢胞内容液の腫瘍マーカーのCEA, CA19-9, CA125を測定したところ著明な高値を示した.後腹膜粘液嚢胞腺腫は非常に稀な疾患で,本邦で検索する限り8例であった.さらに内容液の腫瘍マーカーの高値を認めた報告は2例にとどまる.後腹膜に他臓器との連続性のない嚢胞性疾患を認めた場合,良悪性の鑑別には,摘出生検以外の手段では困難と考えられる.これらの症例について若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 藤井 雅和, 平田 健, 古川 昭一, 濱野 公一
    2006 年 67 巻 2 号 p. 483-487
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.主訴は下腹部痛. 2005年2月に,左尿管結石症で当院泌尿器科を受診し,その際に施行された腹部CTで,骨盤内腫瘍を指摘された.泌尿器科で,経直腸的に生検を施行された.生検後に下腹部痛を認めるようになった.腫瘍切除の目的で, 2005年4月に当科紹介となった.開腹時所見は,腹膜翻転部が発赤しており,炎症性変化で硬化していた.摘出標本は肥厚した壁に囲まれ,内部には角化物様の物質を認めた.また壁内側は表皮様組織で覆われていた.病理組織学的診断は,角化物と表皮を認め,表皮には毛髪や皮脂腺などの付属器,および軟骨成分などは認めず, epidermoid cystと診断された.術後経過は良好で,術後13日目に軽快退院した.仙骨前部に発生したepidermoid cystは,無症状のことが多く発見されにくいものの,感染や悪性化の可能性があるため,診断後は摘出術を施行するべきであると考えられた.
  • 佐伯 俊宏, 清水 良一, 前田 祥成
    2006 年 67 巻 2 号 p. 488-493
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    同時性に認められた食道,胃,大腸の3重複早期癌を根治的に切除しえた症例を経験したので報告する.症例は60歳の男性で,検診にて便潜血を指摘され,近医受診し,胃内視鏡検査にて,胃癌と診断された.手術目的で当科に紹介された.術前検査として他病変の有無を精査した結果,食道癌および大腸癌の重複が判明した.治療は,いずれも早期癌であり,食道癌と大腸癌に対しては,内視鏡的粘膜切除術を行い,胃癌に対しては,胃全摘術を選択した.組織学的には,各腫瘍とも深達度mもしくはsmの早期癌であり,発生部位と発生時期から同時性3重複癌と考えられた.術後経過は良く,第49病日に退院した.術後2年7カ月を経過した現在,再発を認めていない.食道,胃,大腸の3重複早期癌は1990年から2004年までに本邦報告は,自験例を含め20例であった.癌症例では重複癌を常に念頭においた術前全身精査と術後長期にわたる検査加療が必要である.
  • 安達 洋祐
    2006 年 67 巻 2 号 p. 494
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
  • 豊田 暢彦
    2006 年 67 巻 2 号 p. 495
    発行日: 2006/02/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
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