日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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67 巻, 6 号
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  • 野口 志郎
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1175-1180
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    目的:過去40年間に甲状腺乳頭癌の外科的治療の予後がどれだけ改善されたかをみることである.対象と方法: 1960年から1999年末までの40年間の乳頭癌6,538例である.この間には患者の年齢分布,腫瘍の大きさ,検査法の進歩などがあり,それらの影響も考慮に入れて解析を行った.手術法は出来るだけ甲状腺全摘を避け,充分な手術をする様に心がけた.患者は10年を1グループとし,腫瘍の大きさは0.1mm~15mm, 16mm~25mm, 26mm以上の3群に分けた.生存率はKaplan-Meier法を用いた.結果: 40年間に15mm以下の腫瘍は1960年代と1990年代とを比較すると約20倍に増加している. 26mm以上のものは1970年代以後は11%しか増加していない.年齢のMedianは41歳, 43歳, 47.5歳, 51歳と高くなっている.結論:高齢者は一般に予後が悪く,腫瘍が大きいと予後が悪い.腫瘍の小さくなったことと年齢が高くなったことが相殺し予後を僅かしか変えていない.
  • 坂東 正, 長田 拓哉, 山岸 文範, 塚田 一博
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1181-1185
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    食道胃静脈瘤に対する開胸経横隔膜アプローチのHassab手術(TTP)と開腹によるHassab手術(AP)との比較検討を行ったので報告する. 2000年から2003年までに施行したTTP群13例を対象としてAP群22例と比較した.手術時間はTTP群で有意に延長していた.出血量と輸血量はTTP群で有意に少なかった.摘出脾重量は両群間に差はなく巨脾による経横隔膜的手技の制約はなかった. TTP群では3例23.1%に中等度の合併症が認められたが両群とも重篤なものはなく合併症発生率に差はなかった.術後在院日数は平均31日でTTP群が短い傾向であった.肝機能に与える影響を総ビリルビン値の推移で比較したが差は認められなかった.侵襲の程度の比較として白血球数とIL-6の変動を検討したが比較的軽度と考えられた.術後5年累積再発率はTTP群が9.1%でAP群の22.3%よりやや低かった.開胸経横隔膜的手技によるHassab手術は開腹による手技と比べ安全で治療効果の改善が期待できる術式と考えられた.
  • 玉川 洋, 高橋 誠, 湯川 寛夫, 利野 靖, 高梨 吉則, 山田 六平, 今田 敏夫
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1186-1192
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    はじめに:高齢者胃癌治療は術後合併症の危惧から縮小手術が行われることも少なくなく,特に80歳以上の超高齢者にその傾向が強い.今回われわれは高齢者に対して患者背景,手術術式と術後合併症の相関を明らかにし,今後の治療方針の手助けとなるべく検討を行った.方法: 2000年1月から2004年12月までに胃癌手術を施行した75歳以上の59例に対して,術前併存基礎疾患,術前検査異常と術後合併症の相関を検討するとともに, 80歳未満の35例(A群)と80歳以上の24例(B群)について術後合併症の比較検討を行った.結果:術後譫妄は術前に既往歴がある症例に有意に多く発生し, SSIは栄養状態不良,腎機能障害を併存する症例に有意に高率に発生した.手術因子の中で入院期間,食事開始日は合併症との相関は認められなかった. A群, B群間では患者背景,術後合併症に有意な差は認められなかった.結論: 75歳以上の高齢者胃癌手術症例は,術前併存疾患,術前検査異常を伴う症例が多いが,リンパ節郭清,手術時間などの手術因子と術後合併症の発生や入院期間の延長などの関連性は認めなかった.また, 80歳以上の超高齢者群との比較においても差は認められないため,充分な術前評価と術後管理下のもとに行えば,高齢者であることを理由にリンパ節郭清を手控えたり,根治手術可能例にたいして非根治手術に変更するまでの必要性はないと考えられた.
  • 篠塚 望, 岡田 克也, 鳥井 孝宏, 広岡 映治, 利光 靖子, 小澤 修太郎, 小川 展二, 宮澤 光男, 竹田 明彦, 大谷 吉秀, ...
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1193-1198
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝硬変症あるいは急性胆管炎に合併した急性胆嚢炎症例において,内視鏡的胆嚢ドレナージ術(ENGBD)および胆嚢内超音波検査(胆嚢内IDUS)を施行し有用性を検討した. ENGBDにおける挿入には先端湾曲機能を持つERCPチューブが有用で,成功例全例において炎症の消失を認めたが, 2例において胆嚢炎再発を認めた.肝硬変症例などで手術や経皮経肝的胆嚢ドレナージが施行困難な症例においては, ENGBDは有用な治療方法の一つと思われた.一方,胆嚢内IDUSは径2mmの細径プローブを経乳頭的に胆嚢管から胆嚢内に挿入し観察したが,総胆管内の管腔内超音波検査から一連の操作で施行できた.急性胆嚢炎におけるENGBDと胆嚢内IDUSの同時施行は,合併する総胆管結石のみならず胆嚢管結石や胆嚢頸部結石の確認,胆嚢内腔の観察も可能で,診断と治療を同時に施行でき今後さらに活用されうるものと思われる.
  • 山口 真彦, 廣瀬 清貴, 中村 哲郎, 奥山 隆
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1199-1202
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    47例の胆嚢癌切除症例を対象に, HER2に対する免疫染色を行い,病理診断,病期,予後と比較検討した. 47例中29例 (62%) が陽性で, 18例 (38%) は陰性であった.陽性例の病理組織診断では高分化型腺癌14例,乳頭腺癌9例,中分化型5例,低分化型1例で分化度の高い症例が多かった.陰性例では,高分化型腺癌5例,乳頭腺癌1例,中分化型4例,低分化型5例,粘液癌1例,腺扁平上皮癌1例,扁平上皮癌1例で低分化型が比較的多くみられた.予後について, Stage III, IVはHER2の染色性に関係なくほとんどが再発・死亡し, Stage IIでもHER2の染色性に関係なく,約30%が再発・死亡した. Stage Iの4例はすべて再発なく生存中であった. HER2の発現は胆嚢癌症例の60%以上にみられ,分化度の高い胆嚢癌に高く,予後との関連はなかった. HER2過剰発現マウスでの胆嚢癌発生を考えあわせると胆嚢上皮からの癌化に重要な働きをすると考えられた.
  • 藤田 繁雄, 井上 善文, 野村 昌哉, 阪尾 淳, 廣田 昌紀, 吉川 幸伸
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1203-1207
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    先天性第XII因子欠乏症は,臨床的には出血傾向はなく,ほとんどが術前スクリーニング検査で偶然発見される,稀な疾患である.今回,本症を合併した胆石症を経験し,無輸血にて手術を安全に施行しえたので,報告する.症例は67歳,女性で,平成16年12月胆石症に対する手術目的に当科を受診した.術前検査においてAPTTが180秒以上と延長しており,凝固因子活性測定で第XII因子活性が1%以下であった.他の凝固因子活性・出血時間は正常範囲で, 2度の分娩では出血傾向を認めなかった.術中・術後経過で出血傾向は認められなかったため輸血は行わなかった.第XII因子欠乏症では,出血傾向や血栓傾向を危惧し術前に新鮮凍結血漿で第XII因子の補充を行っている報告が多いが,確実な根拠を欠き,明らかな上記傾向を有する症例以外では,術前の輸血による補正は不要であると考えられた.
  • 新宮 聖士, 千賀 脩, 平栗 学, 堀米 直人, 金子 源吾, 伊藤 信夫
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1208-1212
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Carcinoma showing thymus-like differentiation (CASTLE)は稀な甲状腺腫瘍であり,その組織学的特徴より,偏平上皮癌との鑑別が問題となる.今回われわれは,甲状腺CASTLEの1例を経験したので報告する.症例は61歳,男性.嗄声および左甲状腺腫瘤にて紹介により当科受診した.甲状腺左葉下極に1.5cm大の硬く,可動性不良な腫瘤を触知し,超音波検査ならびにCT検査では甲状腺癌が疑われた.穿刺吸引細胞診にて,低分化癌との診断を得たため,甲状腺左葉切除術,左保存的頸部郭清術を施行した.腫瘍は病理組織学的にCASTLEと診断され,左気管傍リンパ節に転移を認めた.術後頸部から上縦隔に放射線照射を行い,現在経過観察中である. CASTLEは偏平上皮癌と異なり,予後は良好であるため,本疾患に対するしっかりとした知識を持ち,正確な組織診断を導くことが重要である.
  • 鈴木 留美, 川真田 明子, 尾身 葉子, 飯原 雅季, 小原 孝男
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1213-1217
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    わが国における甲状腺髄様癌症例のうち,多内分泌腺腫瘍症2B型(multiple endocrine neoplasia type 2B, MEN2B)が占める割合は約3%と報告されている.今回われわれは甲状腺髄様癌発症後早期に外科治療を行い根治できたと思われるMEN2B型の1例を経験した.症例は15歳,男子. Marfan症候群様の体型を呈し,肥厚した口唇や舌の粘膜下神経腫,眼瞼の肥厚外反などからMEN2B型を疑われた.明らかな家族歴はなかったが, RET遺伝子検査で, exon 16 codon 918に変異を認めた.甲状腺右葉に約2.2cm,左葉に0.7cmの腫瘤を認め,血中カルシトニン値は530mpg/ml, CEA値は9.6ng/mlであり,甲状腺髄様癌T2mN0M0 (Stage II)と診断した.褐色細胞腫の発症はなく,甲状腺全摘術,両側頸部リンパ節郭清(D3a)を施行した.病理組織学的検査では甲状腺両葉に髄様癌が多発していたが,リンパ節転移はなかった.術後2年の現在,再発の徴候は認めていない.
  • 喜納 政哉, 高橋 将人, 渡邊 健一, 高橋 弘昌, 伊藤 智雄, 藤堂 省
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1218-1222
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    授乳性腺腫は妊娠または授乳中に発生する通常1~4cm程度の良性腫瘍であり,病理学的には著明な分泌傾向示す管状腺管構造を示す腺腫である.今回われわれは急速な増大傾向を示す巨大な授乳性腺腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を交えて報告する.
    症例は34歳,女性,当科紹介時妊娠30週の初産婦.妊娠後より徐々に右乳房が腫大し,妊娠20週目頃から急速に増大してきたため受診した.急速な増大傾向を示す巨大な腫瘤であることから葉状腫瘍を疑い,腫瘍摘出術を施行した.病理組織検査所見では不規則に拡張した管状ないし腺房状構造の密な増生が分葉状構造を示し増殖しており,増殖した上皮細胞内では細胞内空砲が認められ授乳性腺腫と診断された.本疾患は自然消退も期待できるが,その診断は必ずしも容易ではなく,確定診断のために外科的切除が必要とされることが多い.本症例のように急速増大する巨大例は稀である.
  • 安藤 英也, 前田 正司, 亀岡 伸樹, 藤本 克博, 坪井 俊二
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1223-1226
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Leser-Trélat徴候は,掻痒感を伴う脂漏性角化症が急速に出現して悪性腫瘍を合併するもの定義されている.今回われわれはL-T徴候を呈した乳癌の1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.症例は66歳,女性.主訴は右乳房の腫瘤と乳頭異常分泌.現病歴は以前より右乳房の腫瘤を自覚していたが,平成11年7月より乳頭異常分泌が出現したため7月上旬に外来受診.現症は右乳房全体に硬い腫瘤を触知し乳頭より黄褐色の分泌物を認めた.また胸腹部背部に多数の掻痒を伴う老人性疣贅を認めた.数カ月前より増加してきていた.穿刺吸引胞診検査は陽性であった.乳癌と診断し8月上旬に胸筋乳房切除術(Bt+Ax)を施行した.病理組織学的所見は,乳腺の病変はinvasive ductal carcinoma, f, n (-), 皮膚の病変はseborrheic keratosisであった.術後6年5カ月経過無再発生存中である.
  • 角舎 学行, 秋本 成宏, 黒田 慎太郎, 小出 圭, 先本 秀人, 土肥 雪彦
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1227-1231
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺原発扁平上皮癌は比較的稀な癌である.われわれは, epidermal growth factor receptor (EGFR)が強く発現した乳腺原発扁平上皮癌(腺癌併存)の1例を経験したので報告する.症例は66歳,女性.右乳房腫瘤を主訴として来院し,超音波検査, MRIなどで血流豊富な約4cm大の腫瘍を認めた.摘出標本のHE染色では,腫瘍の大部分は扁平上皮癌からなり,腫瘍の一部にcomedo carcinomaあるいはsolid-tubular carcinomaの混在を認め,腺癌の扁平上皮化生による変化と考えられた.免疫染色では腫瘍大部分のエストロゲンレセプター,プロゲステロンレセプターはともに陰性であり, HER2スコア0であった.抗EGFR抗体を用いた免疫染色では,腫瘍細胞の細胞膜にEGFRが強く発現していた.現在のところ術後経過は良好であり, 18カ月の経過観察中に再発は認めていない.
  • 住吉 一浩, 芝山 雄老, 野原 丈裕, 小林 稔弘, 田中 覚, 谷川 允彦
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1232-1236
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺invasive micropapillary carcinoma (IMP)は,リンパ管侵襲やリンパ節転移を高率に伴う生物学的悪性度の高い浸潤性乳管癌の-亜型である.穿刺吸引細胞診にて術前診断しえた2症例を経験した.症例1は, T2N1M0, stage IIBで胸筋温存乳房切除術を施行した. IMP成分80%, n(+) 23個陽性, ER(+), PgR(+)で化学療法(CAF, weekly paclitaxel)施行後,放射線照射,内分泌療法施行中である.症例2は, T2N0M0, stage IIAで胸筋温存乳房切除術を施行した. IMP成分60%, ly(+), v(-), n(-), ER(+), PgR(+)で内分泌療法施行中である. 2症例とも, IMPに特徴的な細胞所見がみられ術前に診断しえた. IMPの細胞像を念頭におき診断することが重要である.
  • 金子 和弘, 冨田 広, 牧野 春彦, 畠山 勝義
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1237-1242
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳癌の消化管転移,なかでも大腸への転移は臨床では極めて稀である.われわれは乳腺浸潤性小葉癌術後で大腸転移をきたした1例を経験したので報告する.症例は45歳,女性.腹痛,嘔吐を主訴に来院し,腸閉塞と診断された.消化管造影,大腸内視鏡検査で下行結腸に完全狭窄が認められ,生検では悪性所見は認められなかったが,原発性または転移性大腸癌を考え,手術を施行した.下行結腸以外にも複数の腫瘍があり,さらにリンパ節転移や播種性病変も認められ,根治性なしと判断した.腸閉塞解除目的に腸管切除を施行し,病理組織学的検査で乳癌の転移と診断された.ゴセレリン・タモキシフェン併用療法を施行し,術後9カ月経過しSDを継続中である.乳癌患者において腹部症状の訴えの際には消化管転移の可能性を考える必要がある.また,消化管転移をきたした状態でもホルモン療法,化学療法の効果が期待できるため手術でのQOLの改善は有用である.
  • 藤解 邦生
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1243-1247
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Unroofed coronary sinus (URCS)は比較的稀な疾患であり,その診断はしばしば困難とされる.今回,術中に診断されたURCSにNYHA IV度の重症心不全と心原性肝硬変を合併した1例を経験した.症例は74歳,女性.三尖弁逆流,僧帽弁逆流,心房細動の術前診断にて僧帽弁,三尖弁置換術,肺静脈口隔離を施行.術中所見にて,冠静脈洞(CS)が左房に開口するURCSが診断された. CSが開口する部位には右房と交通する3.5×2.0cmの欠損孔を認めた.欠損孔は冠静脈血が右房還流となるように左房側より自己心膜にて閉鎖した.長年放置されたURCSがTR, MR増悪の要因の1つと考えられた.後方視的には,心エコーにて冠静脈洞の拡大と右房へ流入する増大した冠静脈血流を認めた.同様の所見を認めた際には,本症を念頭においた精査が必要であると思われた.
  • 山口 敏之, 井原 頌, 荻原 裕明, 高田 学, 小松 信男, 橋本 晋一
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1248-1251
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,男性.腰痛のため近医受診し,腹部超音波検査で腹部大動脈瘤が認められたため当院に紹介された.腹部造影CTでは腎動脈下腹部大動脈に最大径74mmの腹部大動脈瘤を認めた.血管外への血液漏出はなく,マントルサインも認められなかったが,第3腰椎々体前方の破壊を伴っていた.腰痛が強いため緊急手術を行った.瘤破裂や炎症性腹部大動脈瘤を示唆する所見は認められなかったが,瘤を切開すると椎体破壊部と一致する部位に鶏卵大の壁欠損を認めた.手術はY型人工血管置換術を行った.術後腰痛は消失し第17病日に退院した.
  • 杉本 琢哉, 鬼束 惇義, 片桐 義文, 飯田 豊, 宮原 利行, 古川 舞子
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1252-1256
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性. 2005年4月初旬の起床時に胸部不快感と呼吸困難を自覚し,当院を受診した.血液ガス分析でPO2は45.5mmHgであった.肺血流シンチで両肺に欠損像を認め肺塞栓症と診断し,直ちに血栓溶解療法,抗凝固療法を開始した.これにより徐々に症状は軽快し, PO2は97.3mmHgに改善した.しかし,経過中腹痛と黄疸が出現し,血液検査で白血球, CRPの上昇,肝機能障害を認めた.腹部US, CTで急性胆嚢炎と診断し,経皮経肝胆嚢ドレナージを施行した.その後腹腔鏡下胆摘予定とし,術前のため抗凝固療法を中止した.肺塞栓の既往は,静脈血栓塞栓症の最高リスクであるため,術前に一時的下大静脈フィルターを留置した.その後腹腔鏡下胆摘を施行し,術後経過は良好であった.術後抗凝固療法を再開し,一時的下大静脈フィルターを抜去し退院した.現在外来で経過観察中であるが,深部静脈血栓や肺塞栓は再発していない.
  • 足立 孝, 川島 雅之, 青島 宏枝, 鬼島 宏
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1257-1260
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    病例は62歳,男性.脳梗塞の診断で入院,加療中に縦隔影拡大を認め当科紹介となる.画像診断から胸腺嚢腫が考えられ, informed consent後に胸骨正中切開による手術を施行したが,嚢胞壁も厚く充実性な部分も触知したため胸腺腫合併も考慮して拡大胸腺胸腺腫全摘術を施行した.術後病理で胸腺嚢胞壁より胸腺癌が発生したと診断され,正岡の臨床病期分類でII期と判断した.術後経過は良好でシスプラチンを中心とした化学療法と放射線療法を追加施行した.本来,胸腺嚢腫は良性疾患であるが本例のごとく胸腺嚢腫壁から胸腺癌が発生しうる可能性があり,胸腺嚢腫でも積極的な手術療法が必要と考えられた.
  • 上里 昌也, 篠原 靖志, 圷 尚武, 千葉 聡, 二宮 栄一郎, 福長 徹
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1261-1265
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性.約1カ月前から嚥下困難を自覚し,近医にて食道憩室症の診断となり紹介された.当院での食道造影検査では食道胃接合部より10cm口側右側に径9×6cm大の嚢状の憩室があり,基部は径3.5cmであった.悪性所見はなく,中部食道巨大憩室症の診断で右側より胸腔鏡下食道憩室切除術を施行した.病理組織学的には固有筋層の欠損を伴っていることから仮性憩室で,内圧性憩室であると思われた.
    食道憩室はしばしばみられる疾患であるが,ほとんど無症状で外科的適応となる症例は少ない.その中で,近年食道憩室症外科的適応例に対する胸・腹腔鏡下切除術の報告が散見される.われわれは中部食道巨大憩室症に対し,太径上部内視鏡を併用することで安全に胸腔鏡下憩室切除を施行できた1例を経験したので報告する.
  • 十川 佳史, 藤原 英利, 安田 健司, 酒井 健一, 野村 秀明
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1266-1269
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性. 1カ月前より食欲不振,タール便を認めるも放置していた.その後,頻回の嘔吐に引き続いて,突然強い腹痛と腹部膨満を訴えたため救急搬送された.腹部CTにて多量の腹腔内遊離ガスと腹水を認めた.上部内視鏡検査にて胃潰瘍による幽門狭窄を確認した.胃潰瘍穿孔を疑い,緊急開腹手術を施行した.手術所見では胃潰瘍の穿孔はなく,胃体上部小彎前壁よりに約30mmの破裂部を認めた.破裂部に壊死は存在せず,縫合閉鎖した後に,幽門側胃切除術を行い, Billroth II法にて再建した.胃潰瘍による幽門狭窄があり,嘔吐により胃内圧が過度に上昇したため,胃破裂に至った稀な症例と考えられた.
  • 加納 幹浩, 栗栖 佳宏, 赤木 真治, 田川 公平, 渡谷 祐介, 仁井谷 尚美
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1270-1273
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    出血性胃潰瘍にて発見された胃横行結腸瘻について1症例を経験したため報告する.
    症例は60歳,男性.突然黒赤色の吐物を嘔吐し,当院受診した.以前より胃潰瘍を指摘されており,数カ月前より,激しい下痢が飲酒をすると生じていたが放置していた.血液検査にて血色素量5.8g/dlと高度貧血を認めたため,緊急胃内視鏡検査を施行した.小彎側に潰瘍をみとめ,辺縁の潰瘍からの出血の可能性を考え,全身状態管理,貧血改善目的入院となった.瘻孔が疑われ施行した胃透視造影にて,胃角部小彎後壁よりに横行結腸との間に瘻孔形成がみられ,注腸CTにて横行結腸より胃に流入する造影剤を確認した.全身状態の改善後,外科にて,潰瘍切除と瘻孔閉鎖を目的に手術を施行した.
    手術は選択的迷走神経切離を付加した胃部分切除,横行結腸部分切除を施行した.術後病理検査にて悪性所見は認められなかった.
    胃結腸瘻の原因は胃癌や結腸癌など悪性腫瘍によるものが多く,良性疾患によるものとして最も多いのは胃切除後の吻合部潰瘍である.本症例は胃非切除例の出血性胃潰瘍によるものであり,瘻孔の稀な一原因として考慮が必要と考えた.
  • 高橋 亮, 金子 猛, 伊藤 達雄, 鷲田 昌信, 中山 昇, 井上 章
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1274-1278
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.吐血にて救急搬送された.上部消化管内視鏡検査にて,胃体中部前壁に潰瘍形成を伴う粘膜下病変をみとめた.上部消化管造影X線検査では胃小彎側ほぼ全長にわたり壁外性圧排所見をみとめ,腹部造影CT検査では最大径13cmの境界明瞭で内部不均一な腫瘤がみられた.胃内外発育型の胃原発GISTと診断し,開腹胃局所切除術を施行した.腫瘍切除に際し,腫瘍近傍において胃壁の漿膜筋層を切開して胃内発育部分を胃壁外に誘導した後,自動縫合器で全層切離を行った.病理組織検査で切離断端に腫瘍細胞みとめず,また術後上部消化管造影検査で残胃変形や通過障害はみられなかった.本術式は,胃GISTに対して根治性と術後QOLを両立させ,かつ特別な器具や技術を必要としない,有用で普及が期待されるものと考えられた.
  • 小牧 孝充, 長岡 眞希夫, 山辺 和生, 道浦 俊哉, 藤井 亮知, 中野 昇
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1279-1284
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    PIVKA II産生胃癌の報告は稀である.今回肝転移を伴ったPIVKA II産生胃癌の1例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する.症例は77歳,男性. 2004年7月の検診で胸部大動脈瘤を指摘され9月10日に当院を受診した. CT検査で胸部大動脈瘤以外に肝S6に腫瘍も認めたため,消化器臓器も精査した.血液検査でHCV抗体陽性を認めるも,肝機能異常は認めなかった.また腫瘍マーカーはAFP, PIVKA IIのみ上昇を認めた.上部消化管内視鏡検査で胃幽門後壁に3型様腫瘍を認め,胃生検検査でAFP産生胃癌と診断された.術前診断はAFP産生胃癌と,転移性または原発性肝癌と考え11月2日に幽門側胃切除術と肝右葉切除術を行った.病理学的診断は胃,肝腫瘍ともに管状組織と胞巣状増殖から構成される腺癌であった.また免疫染色ではAFP, PIVKA II染色ともに陽性であったため, PIVKA IIおよびAFP産生胃癌と診断した.
  • 緒方 健一, 菊池 暢之, 土居 浩一, 石本 崇胤, 古橋 聡, 大地 哲史
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1285-1289
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Dieulafoy潰瘍様出血を呈し,経過観察中急速に増大,膨隆した1型胃癌の1例を経験したので報告する.症例は80歳,男性.吐血され,当院救急外来受診.緊急内視鏡で噴門直下に動脈性の出血をしており, Dieulafoy潰瘍と考えられ,クリッピングによる止血術を施行した. 1週間後の内視鏡検査で,出血はなく,粘膜の異常は明らかではなかった.以後,再出血はなかったが,止血部位が次第に膨隆し,約5カ月後,乳頭状の隆起が著明であったため生検を行ったところ,乳頭状腺癌であった.開腹による胃局所切除施行した.手術標本で深達度はMPであった.緊急内視鏡でDieulafoy潰瘍様出血を認めたとき,内視鏡的止血操作を行うが,その後の内視鏡検査にて癌の存在を念頭にいれ,丹念な粘膜の観察が必要と思われる.
  • 二村 浩史, 山下 重雄, 小山 友己, 高橋 直人, 三森 教雄, 矢永 勝彦
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1290-1293
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    残胃癌に対するsentinel node navigation surgery (SNNS) の報告はまだない.今回Billroth II法再建 (B-II) 後の早期残胃癌患者にSNNSを施行したので報告する.患者は58歳,女性, 43年前,十二指腸潰瘍にて幽門側胃切除+B-IIが施行され,健診の上部消化管内視鏡にて早期残胃癌と診断された.赤外線内視鏡システム (IREE) とアイソトープ (RI) の併用でSNNS+残胃全摘術を施行した.センチネルリンパ節の分布はNo.3, J1, J2リンパ節で8個で,病理学的にリンパ節転移は認めなかった.リンパ節数はインドシアニングリーン (ICG) 陽性かつRI陽性が3個, ICG陽性かつRI陰性が2個, ICG陰性かつRI陽性が3個であった.本法は肉眼では観察できなかったICG陽性リンパ節やリンパ管がIREEで明瞭に観察でき,空腸の切離線設定に有用であった.残胃癌においてもSNNSの応用が可能と考えられた.
  • 渡辺 一裕, 遠山 洋一, 柏木 秀幸, 矢永 勝彦
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1294-1297
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は85歳の男性で,進行胃癌による幽門狭窄の術前診断で手術となったが,術中所見でむしろ十二指腸癌の胃浸潤が強く疑われた.超高齢者ではあったが耐術能に問題なく,根治性も十分に期待できると判断したため,膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本所見から幽門部の亜有茎性進行胃癌が十二指腸下行部に嵌頓していたものと判明した.病理組織学的所見ではT2N1M0, stage IIで,十二指腸漿膜下への3cmにおよぶリンパ行性の壁内転移が認められた.術前の診断に関しては反省すべき点もあり,また他術式も考えられるが,本術式の選択は病理学的所見からも妥当であったと思われた.超高齢者に対する手術は低侵襲を心がけるべきであるが,一方で膵頭十二指腸切除術の安全性は確立されたと言っても過言ではなく,例え超高齢者であっても耐術,根治性の両面を充分考慮した上で適応があれば施行されるべき術式と考える.
  • 柴田 良仁, 梶原 啓司, 清水 輝久, 重政 有, 國崎 忠臣
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1298-1301
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腸管嚢腫様気腫症は腸管壁,腸間膜に多数の含気性嚢胞を形成する稀な疾患である.今回,十二指腸潰瘍穿孔に腸管嚢腫様気腫症を合併した1例を経験したので報告する.患者: 56歳,男性.主訴:上腹部痛,嘔吐.現病歴: 2005年5月中旬より食思不振認め,その後,上腹部痛,嘔吐で近医受診,当院紹介となる.既往歴: 20年前より十二指腸潰瘍の既往あり.入院時現症・検査所見:腹部は板状硬.血液検査で炎症所見は認めず.腹部CTで遊離ガス,腹水を認めた.消化管穿孔の診断で緊急手術施行.手術所見:十二指腸球部前壁に穿孔部位を認め, Treitz靱帯から約1m肛門側の空腸から上行結腸にかけて腸間膜,腸管壁に多数の嚢胞性病変が存在した.幽門側胃切除術を施行.腸管嚢腫様気腫症の発生機序には,機械説,細菌説,肺原説,化学説などがあり本症例は機械説によるものと考えられた.腸管嚢腫様気腫症の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 河野 修三, 別府 理智子, 酒井 憲見, 白日 高歩
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1302-1306
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    (症例1) 51歳,男性.腹痛にて救急搬送された.絞扼性イレウスを疑い緊急手術を施行したが, Treitz靱帯より270cm肛門側の小腸に腸内容物による閉塞が判明した.用手的に肛門側へ異物の移動を試みたが,困難であり切開をいれイレウスバッグを挿入し大量のピーナッツ片を認めた. (症例2) 43歳,男性.腹痛,嘔吐を主訴に来院.問診, CT画像にてピーナッツによる食餌性イレウスを疑い手術を施行.回腸末端より180cmの小腸が腹壁に癒着しており,同部から口側の腸管拡張あり豆のようなものを透見した.癒着剥離後,用手的に結腸まで移動させた.イレウス症例に対するCT画像で,含気を有する液体像を認めた場合はピーナッツによるものも念頭におく必要があり,加えて詳細な問診が有用であると考えた.
  • 長谷川 康弘, 菊池 淳, 竹村 真一
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1307-1310
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,男性.平成14年1月に高血圧を指摘され,以後内服薬で加療されていた.平成16年8月15日より間歇性の腹痛あり,近医を受診した.鎮痛剤でも症状軽快しないため, 8月19日当科紹介,同日当科入院となった.保存的治療を行い,一時腹痛の頻度は減少したが8月23日再び強い間歇性の腹痛を認め,腹部CTで腹水および右側小腸腸管壁の連続性浮腫性肥厚を認めたため, 8月23日緊急手術を施行した.約40cmにわたる壊死性変化を伴った回腸を認め,同部位を切除した.病理組織学的診断で壊死型虚血性小腸炎と診断された.術後経過は良好で術後17病日に退院した.虚血性小腸炎は比較的稀な疾患であり,術前診断も難しい.本症例でも若年で基礎疾患に乏しかったことから術前には虚血性小腸炎の診断がつかず,術後に診断が確定した.
  • 神崎 憲雄, 星野 豊, 木暮 道彦, 寺島 信也, 野沢 佳弘, 後藤 満一
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1311-1314
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    特異な形態および経過を示した,多発する小腸潰瘍の1例を経験した.症例は48歳,男性.腹痛,下血を主訴に当科紹介.腹部全体に膨満と筋性防御が認められ,画像上小腸の拡張と腹水あり,汎発性腹膜炎疑いにて緊急手術を施行.開腹するに, Treitz靭帯から60~100cmの小腸に多発する鮮赤色の縞状斑が存在し,同部位腸間膜側に非連続性に多発する浅い潰瘍が存在,約50cmを切除.病理は粘膜と粘膜下層の出血,壊死が顕著で,小血管特に細静脈の血管炎と循環障害に基づく変化であった.術後,食事開始にて発熱,下血,下痢,腹痛などの症状が出現.成分栄養投与,プレドニゾロン20mg/dayの内服を開始したところ改善し,術後3カ月で退院した.血管炎が小血管にみられたことより,全身性血管炎に伴う小腸病変を検索したが,原疾患は特定できなかった.非特異性小腸潰瘍の一因として,今回のような微小な血管炎の関与が示唆される1例であった.
  • 北原 弘恵, 林 賢, 横山 隆秀, 小山 佳紀, 森川 明男
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1315-1320
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.主訴は下血. 1年前より特発性血小板減少性紫斑病(ITP)にて経過観察されていた.腹痛および下血による出血性ショックにて緊急入院し,下部消化管内視鏡検査にて回腸悪性リンパ腫と診断された.手術に際しITPにステロイド投与を行うもコントロール不良であった. ITPおよび回腸悪性リンパ腫に対して腹腔鏡下用手的手術 (HALS)にて一期的に摘脾および結腸右半切除を施行した.術後は良好に経過し術後第19病日に退院した.その後も血小板数は良好に維持され,悪性リンパ腫の再発も認められていない. ITP経過中に悪性リンパ腫を併発した報告例は少なく, HALSにて一期的に脾摘および結腸右半切除術を施行した.ステロイド投与中などのhigh risk症例に対しても安全性と低侵襲性の観点からHALSは有用であると考えられた.
  • 塩盛 建二, 秋月 英治, 高橋 潔, 柴田 和哉
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1321-1324
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.めまい・呼吸苦あり,当院を受診した.入院後下血を認めた.ヘモグロビン値7.3g/dlと著明な貧血あり,緊急上部・下部消化管内視鏡検査を施行したが出血源は同定されなかった.下血が持続し,緊急手術を施行した. Treitz靱帯から140cmの小腸に管外性に発育した4×3cmの腫瘍を認め,腫瘍を含む小腸の部分切除術を行った.術後経過は良好で退院となった.病理・免疫組織学的検索でGISTと診断された.
    小腸は質的診断が困難なため,消化管出血の際には小腸腫瘍の可能性を念頭に置き精査加療を行う必要があると考えられた.
  • 竹村 真一, 菊池 淳, 安藤 敏典, 長谷川 康弘
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1325-1328
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は55歳,女性.主訴は右下腹部痛.右下腹部に限局した圧痛,筋性防御を認め,腹部超音波検査で膿瘍形成も疑われたため,急性虫垂炎の診断で緊急手術を施行した.術中所見では虫垂突起は蜂巣炎性虫垂炎の様相を呈しており,虫垂切除術を施行した.切除標本で虫垂末梢側に35×30mm大の隆起性病変を認めた.病理組織学的検査で核および核小体の腫大を伴う異型細胞のびまん性増殖を認め,免疫染色にてB細胞マーカーCD79α陽性, T細胞マーカーCD3陰性であり,虫垂原発悪性リンパ腫 (non Hodgikin lymphoma, diffuse large B-cell type) の診断となった.虫垂根部の切除断端は陰性,深達度は粘膜下層までであった.悪性リンパ腫の確定診断後,追加手術および補助化学療法は施行せず経過観察中であるが,術後3年6カ月経過した現在,再発の徴候は認めない.
  • 加藤 滋, 荒木 吉朗, 清水 謙司, 山本 秀和, 小西 靖彦, 武田 惇
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1329-1332
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡補助下結腸手術において腸管切除によって生じる腸間膜欠損部については,閉鎖しないことが多く当院でも腸間膜の閉鎖は行っていない.今回われわれは腹腔鏡補助下結腸切除術後,腸間膜欠損部に腸管が嵌頓して絞扼性イレウスをきたした2例を経験したので報告する.症例1は71歳,男性で腹腔鏡補助下S状結腸切除術後,イレウスの診断で第31病日に緊急手術を行った.腸管近傍の腸間膜欠損部に小腸が嵌頓し絞扼されていたが,壊死には至っておらず腸管の切除は不要であった.症例2は79歳,女性で腹腔鏡補助下回盲部切除術後,第59病日にイレウスの診断で緊急手術を施行した.腸管近傍の腸間膜欠損部に小腸が嵌頓して絞扼されており,壊死腸管を含め約160cmの小腸切除を必要とした.腹腔鏡補助下結腸切除術でも腸管が嵌頓して絞扼性イレウスをきたす可能性があるため,腸管近傍の腸間膜欠損部は開腹創から閉鎖するべきである.
  • 玉木 雅子, 曽山 鋼一, 橋本 拓造, 神戸 知充, 亀岡 信悟
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1333-1337
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    21歳,男性.右下腹部痛を主訴に来院した.腹部単純X線,腹部造影CTによる精査の結果,腸管壁に沿って多発する気腫様変化とmultiple concentric ring signを伴う腸重積を認めた.ガストログラフィンを用いた高圧浣腸により腸重積を整復した.直後に行った大腸内視鏡検査では,上行結腸に粘膜下腫瘍に類似した表面平滑な隆起性病変が多発していた.以上の所見より腸重積を合併した腸管嚢腫様気腫症と診断した.気腫が大きく腸重積整復後も腹痛が持続していることから手術適応と判断し結腸右半切除術を施行した.
  • 佐々木 省三, 道輪 良男, 黒阪 慶幸, 竹川 茂, 桐山 正人, 小島 靖彦
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1338-1341
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は87歳,女性.脳梗塞,認知症にて近医に入院中であった平成17年1月1日頃より嘔吐が出現し,下痢と便秘を繰り返していた. 1月20日のCT検査で腸重積症と診断され当院に紹介となった.腹部は緊満し腹膜刺激症状を認め,右側腹部には手拳大の腫瘤を触知した.入院時検査所見では貧血,低アルブミン血症を認め,炎症反応が高値であった.当院で施行したCT検査では腹水を伴う回盲部型の腸重積とfree airを認め,腸重積に伴う腸管穿孔と診断し緊急手術を行った.開腹時,腹腔内には粘液が貯留し,横行結腸肝彎曲部よりの穿孔部から強い浮腫を伴った重積腸管の粘膜面が腹腔内に露出していた.横行結腸内に先進部となった1型悪性腫瘍を認め, D2郭清を伴う結腸右半切除術を行った.術後経過は良好で術後25日目に転院された.成人の腸重積は慢性の経過をたどることが多いが,高齢者では穿孔の可能性も考慮して加療する必要があると考えられた.
  • 奥川 喜永, 井上 靖浩, 尾嶋 英紀, 小林 美奈子, 三木 誓雄, 楠 正人
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1342-1346
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.血尿を主訴にて発見された膀胱腫瘍にて当院入院.術前精査にてS状結腸癌,膀胱浸潤と診断された.骨盤壁への浸潤傾向も強く横行結腸人工肛門造設後,術前補助療法として放射線療法(45Gy/25Fr)ならびに併用化学療法(Pharmacokinetic Modulating Chemotherapy: UFTE 400mg/day×7daysと5-FU 600mg/m2/24hriv/weekの併用)を施行した.補助療法に対し,腫瘍は著明に縮小したため開腹術施行.膀胱との剥離は可能であり,大腸亜全摘術並びに上行結腸人工肛門造設術を施行した.術後外来化学療法を施行しているが術後8カ月,無再発生存中である.切除不能大腸癌においては切除率を向上させるための治療を第一選択とし,またその機会を逃さずvolumere ductionを施行することが予後に寄与すると思われた.
  • 横井川 規巨
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1347-1350
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは根治手術不能な狭窄型大腸癌に対してステント治療が有効でQOLの改善が得られた1例を経験したので報告する.症例は90歳の男性.嘔気,嘔吐,腹部膨満感にて当院受診し腸閉塞の診断で入院となった.腹部CT検査で直腸からS状結腸にかけて腫瘍性病変を,さらに肝両葉に結節性陰影,腹腔内に多量の腹水貯留を認めた.腹部膨満感が著明であり,まず腹水穿刺を行った.腹水の細胞診はclass Vであり, carcinomatous peritonitisと考えられた.大腸内視鏡検査では直腸(Rs)に全周性の腫瘍を認め生検結果はpoorly differentiated adenocarcinomaであった.以上より,直腸からS状結腸にかけての狭窄型大腸癌による腸閉塞,多発性肝転移,癌性腹膜炎と診断し根治手術不可能と判断した.姑息的治療目的で大腸ステントを留置しQOLの改善が得られ退院となった.
  • 李 栄柱, 大杉 治司, 竹村 雅至, 西川 隆之, 福原 研一朗, 岩崎 洋
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1351-1355
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.切除不能胃癌に対し通過障害を有するためバイパス術のみを施行し,外来にて経口抗癌剤による化学療法を施行していた.術13カ月後に胃癌Schnitzler転移による直腸狭窄を発症.肛門括約筋機能が温存されていることより人工肛門造設術ではなくステント留置を行った. Ultraflex食道ステントを, Cook-Z stentのデリバリーシステムを用いることにより,逸脱防止目的のフレアー部が口側となるように工夫して留置した.留置後ステント逸脱は認めず,留置6カ月後に小腸での通過障害を発症するまで経口摂取および自己排便は可能であった. Schnitzler転移などの腹膜播種による直腸狭窄例では,人工肛門を造設してもより上部の消化管で早期の再狭窄を発症することは珍しくなく,人工肛門造設術より精神的負担が小さく且つ簡便で低侵襲なステント留置術が有用である.
  • 法水 信治, 小林 英昭, 渡辺 治, 中山 隆, 鈴木 勝一
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1356-1359
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は51歳,男性.肝機能異常で検査中, US, CTで外側区胆管の拡張とそれに連続するように門脈臍部付近に腫瘍を指摘された.またCA19-9は>500U/mlと高値を示した. MRCPで外側区胆管の拡張と下流側での閉塞を認めた.肝内胆管癌の術前診断で肝左葉・左尾状葉切除,肝外胆管切除,胆管空腸吻合術を施行した.標本割面で左肝内胆管と接して境界明瞭な黄白色充実性腫瘍を認めた.病理組織所見ではリンパ球・形質細胞浸潤を伴う線維性結合織の増生がみられ,病変は肝炎症性偽腫瘍と診断された.本例は肝内胆管の拡張を伴う腫瘤像を呈し,腫瘍マーカーも高値を示したことから,肝内胆管癌との鑑別が極めて困難であった.
  • 八木 隆治, 竹中 博昭, 折田 雅彦, 林 雅規, 守田 信義, 濱野 公一
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1360-1363
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は76歳の男性で,貧血の精査の目的で入院した.大腸内視鏡検査で横行結腸に10mm大のIsp型ポリープが認められEMRが施行された.病理組織検査で大腸腺扁平上皮癌,深達度はsmと診断された.脈管侵襲があり,先進部が低分化癌であったことより,横行結腸部分切除術を追加した.切除標本内に癌の遺残はなく,リンパ節転移も認めなかった.術後1年目の精査では無再発であったが, 1年半後のCTで多発肝腫瘤を認め,肝腫瘤の生検により大腸腺扁平上皮癌の肝転移と診断された.転移成分が低分化癌,扁平上皮癌であったためTS-1+シスプラチンによる化学療法を開始した. 2クール終了後,肝のlow density areaは一部縮小傾向を示した. sm癌であっても扁平上皮癌・低分化癌の成分を認める場合,慎重な経過観察が必要であると考えられた.
  • 七島 篤志, 角田 順久, 阿保 貴章, 安武 亨, 永安 武
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1364-1368
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ラパロリフトシステムによる腹壁全層吊り上げ法を用いて腹腔鏡補助下肝外側区域切除を施行した1例を報告する.患者はC型慢性肝炎を伴う76歳,男性で,肝外側区域に6.5cm大の肝癌を認めた. 4孔式で気腹操作下に肝外側区域周囲間膜を超音波凝固切開装置で剥離した後,上腹部正中に7cm小切開をおいた.臍部のポートより10cm長のラパロファンを挿入し, V字型に開脚した.ラパロリフトに装着し正中創周囲の腹壁全層を広く吊り上げた.視野は良好に展開され,容易に肝外側区域切除を施行し得た.ラパロリフト・システムを使用することで吊り上げ操作がさらに容易でかつ良好な視野が得られ,腹腔鏡補助下肝切除に有用な手技と思われた.
  • 橋本 真治, 後藤田 直人, 小西 大, 中郡 聡夫, 高橋 進一郎, 木下 平
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1369-1374
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,男性で主訴は下痢,全身倦怠感などの感冒様症状であった.画像にて肝右葉を占拠する25×20cm大の腫瘍と肝左葉にも散在性に数個の肝内転移を認めた.また,門脈内腫瘍栓を門脈右枝本幹に認めた.術前画像から肝外病変は認めず, Stage IV Aの肝細胞癌と診断した.血液学的検査所見では肝機能良好で,減量切除目的にて肝右葉切除,横隔膜合併切除を施行した.肉眼像は塊状型肝細胞癌であり,門脈右枝本幹に腫瘍栓を認めた.術後全身状態と肝機能の回復を待ち,術後第25病日に1回目の肝動脈塞栓術(TAE)を行った.治療後合併症なく開腹手術から第34病日に退院した.さらに2回目のTAEを1カ月後に追加し,肝内に治療対象となる病変が消失した.全身状態,肝機能ともに良好に改善し,腫瘍マーカーも著明に減少した.現在,定期的な外来通院のもと経過観察中である.高度進行肝細胞癌に対する減量切除とその後のTAEが非常に奏効した1例であった.
  • 山本 孝夫, 森内 博紀, 池松 禎人, 西脇 由朗, 木田 榮郎, 脇 慎治
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1375-1379
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆嚢炎波及による十二指腸球部狭窄の1例を経験した.症例は72歳,女性.嘔吐を主訴に紹介され,上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部前壁に易出血性の腫瘤と狭窄を認めた.腹部CTでは胆嚢壁が全周性肥厚し十二指腸球部との境界が不明瞭で,また胆嚢周囲に腹膜播種を疑う小結節がみられた.以上より胆嚢癌の十二指腸浸潤を疑った.術前は根治切除の可能性は低いと考え胃空腸吻合術を予定したが,術中迅速病理で胆嚢が癒着した壁側腹膜および大動脈周囲リンパ節に悪性所見を認めなかったため,肝床切除兼膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本の病理組織診断でも悪性所見なく,胆嚢と十二指腸球部に炎症細胞浸潤,膿瘍ならびに肉芽腫形成を認め,慢性胆嚢炎の十二指腸への波及に伴う球部狭窄と診断された.時として胆嚢炎と胆嚢癌の鑑別に難渋することがあるが,十二指腸狭窄をきたすほどの胆嚢炎の報告例は稀であるため報告する.
  • 長谷川 泰介, 吉谷 新一郎, 斎藤 人志, 小坂 健夫, 高島 茂樹
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1380-1385
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胆管内に乳頭状増殖を示した肝S4原発の結節型胆管細胞癌の1例を経験したので報告した.
    患者は67歳の女性.心窩部痛を訴え来院.腹部CT検査で肝S4に径4.5cm大の腫瘍陰影と左肝内胆管の拡張を認めた. ERCPおよびMRCPで左肝内胆管の拡張と肝門部胆管内に径2.5cmの透亮像を認め,血管造影では同部に一致して濃染像を認めた.原発性肝癌およびその胆管内乳頭状増殖と診断し手術を施行した.手術は肝左葉切除,胆嚢胆管切除術を行い,右肝管空腸吻合術にて再建した.病理組織学的所見では腫瘍は中分化腺癌を示す胆管細胞癌で,内側区域胆管内に連続性に乳頭状増殖をきたしていた.術後経過は良好で39病日に退院し,術後8年1カ月の現在,再発徴候なく健在である.結節型胆管細胞癌が肝門部胆管内に乳頭状増殖を示した本邦報告例は本例を含め6例のみと極めて稀である.
  • 堀口 明彦, 石原 慎, 伊東 昌広, 永田 英生, 浅野 之夫, 宮川 秀一
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1386-1389
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.心窩部痛を認め近医受診,腹部超音波検査で膵頭部に嚢胞を指摘され紹介となった.各種画像診断で下頭枝領域に限局した径3.5cmの膵管内乳頭粘液性腫瘍の診断であった.術中主膵管損傷を予防するため,術前日に内視鏡的経鼻的膵管ドレナージチューブを主膵管から副膵管に挿入した.触診と超音波で主膵管を確認しつつ,膵切離を行い,最後に責任膵管分枝である下頭枝を切離し,病変を摘出した.切除後の術中膵管造影で主膵管損傷なく,造影剤の漏出のないことも確認した.
    膵管ドレナージチューブを留置し,主膵管を確認しながら,下頭枝領域のみを切除する膵頭下部切除術を行い良好な経過を得ることができた膵管内乳頭粘液性腫瘍の1例を報告する.
  • 長井 和之, 和田 道彦, 寺嶋 宏明, 細谷 亮, 梶原 建熈
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1390-1394
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.血清アミラーゼ値上昇の原因精査のため当院へ紹介となった.腹部超音波検査,腹部造影CT検査,超音波内視鏡検査にて膵体部に約1cmの腫瘤性病変とその尾側の膵管拡張を認めた.内視鏡的逆行性膵管造影検査では,膵管は膵体部にて途絶していた.膵体部癌の診断のもと,尾側膵亜全摘を行った.病理組織学的検査では,高分化型管状腺癌, intermediate type, INFβ, ly1, v0, ne0, mpd(+)14mm, Pb, TS1: 9mm, nodular type, RP(+), T3, N1 (11p, 1/16個), M0, Stage IIIであった.主膵管内進展は膵頭部の方向へ14mmに及んだ.小膵癌症例に対しても,リンパ節郭清を伴ったいわゆる標準手術によりR0を目指し,膵切離に際しては術中迅速病理検査による膵管断端の確認が必要と思われる.
  • 深見 保之, 寺崎 正起, 坂口 憲史, 村田 透, 大久保 雅之, 西前 香寿
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1395-1399
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は47歳の女性で,10年前からの右背部痛が増強し当院を受診した.腹部造影CTでは,膵頭部に40×80mmの内部不均一な充実性腫瘍を認め,主膵管は体尾部で著明に拡張していた. MRCPでは膵頭部腫瘍内に多房性嚢胞を認め, EUSでは腫瘍は主膵管内で乳頭状に隆起していた.主膵管型膵管内乳頭粘液性腫瘍 (IPMT) の診断で,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理診断はIPMT由来浸潤癌で,膵外浸潤・脈管浸潤は認めなかった.また,免疫染色ではMUC2陰性であった.化学療法 (Gemcitabine) 施行中で再発徴候を認めていない.
  • 箕畑 順也, 望月 能成, 伊藤 誠二, 山村 義孝
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1400-1404
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    血清CA19-9が高値を示した巨大な脾類表皮嚢胞の1例を経験した.症例は16歳,女性.左上腹部の膨隆を主訴に来院.腹部エコー・CTでは脾に境界明瞭で内部が均一な約15cmの大きな腫瘍を認めた.腫瘍マーカーはCA19-9が159.0U/ml(基準値50以下)と高値を示していた.脾類表皮嚢胞の診断で手術を施行した.摘出標本では15×13×7cmの単一の嚢胞であり,その内容は灰白色の混濁した液体であった.病理診断は内腔を異型に乏しい扁平上皮が覆っている上皮性嚢胞であり,類表皮嚢胞と診断した.脾摘後CA19-9は速やかに正常化した.
  • 沖野 哲也, 古谷 政一, 清水 康仁, 松田 明久, 佐々木 順平, 田尻 孝
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1405-1408
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.自動車の間に腹部を挾まれる交通事故で来院した.受診時,下腹部痛を訴えるのみで特に胸腹部に外傷を認めなかった.腹部CT検査にて肝表面に腹腔内液貯留を認めると同時に,左腎は骨盤内に認め異所性腎であった. 1時間後,腹痛が増強し,ショック症状が出現したため再度腹部CT検査施行し,腹腔内液貯留の増強があった.腹腔内出血による出血性ショックの診断で受傷約2時間後に開腹術を行った.腹腔内に約1,100mlの出血を認め,回腸末端から約60cm口側の小腸間膜が8cmの長さにわたり断裂していた.小腸は一部血流不良のため部分切除した.左腎は骨盤内に確認できた.異所性腎は,ほとんどが無症状で経過するため,認識されずに経過される症例が多い.本邦で転倒による腹部外傷により腎破裂を呈した異所性腎の報告はあるが,腸間膜損傷を契機に異所性腎が発見された報告はされていないため,文献的考察を加え報告した.
  • 浅井 陽介, 中村 利夫, 倉地 清隆, 林 忠毅, 中島 昭人, 今野 弘之
    2006 年 67 巻 6 号 p. 1409-1412
    発行日: 2006/06/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは31歳の女性で右鼠径部の痛みと腫脹を主訴に受診し,緊急手術を行い子宮円索血栓性静脈瘤と診断した1例を報告する.
    腫瘤は妊娠20週に現れ,正常分娩4日後に,急速に増大して,落痛が出現した.鼠径ヘルニア嵌頓を疑い,緊急手術を施行した.術中に血栓性静脈瘤を鼠径管内に認めた.妊娠後期・産褥期の鼠径部腫脹,痔痛などの症状がみられた場合,子宮円索血栓性静脈瘤は念頭に置く必要があると思われる.
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