日本臨床外科学会雑誌
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67 巻, 8 号
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  • 鍋谷 圭宏, 青木 泰斗, 谷澤 豊, 落合 武徳
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1725-1732
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃切除術後の経口摂取熱量を増やす目的で,主・副食をともに半量にした「ハーフ食」を自由摂食とし,栄養調整食インパクト™を間食とした新しい栄養管理法を47例の開腹胃切除術周術期に行った(H群).その有用性を,従来の全量粥食で摂取量を規定して管理した23症例(C群)と比較して評価した. H群では,退院直前の経口摂取熱量(1171±147kcal/日)がC群(896±163kcal/日)に比べて有意に増加し,ハーフ食からの摂取熱量に個人差が少ない傾向を認めた.しかし, H群でも熱量充足率には個人差が大きく,胃全摘術後症例では幽門側胃切除術後症例に比べて経口摂取熱量が有意に少なかった.われわれの新しい栄養管理法は,胃切除術クリニカルパスへの導入に適した統一化された方法として期待されるが,経口摂取アウトカム・目標熱量の設定や経口摂取状況の評価は術式や個人差を考慮して個別化すべきであると思われる.
  • 榊原 巧, 原田 明生, 石川 忠雄, 小松 義直, 矢口 豊久, 中尾 昭公
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1733-1738
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    高齢者における後術癒着性イレウスに対して,イレウス管留置の功罪について検討した.術後癒着性イレウス症例234例で,イレウス管による保存的治療を行った147症例のうち,イレウス管造影を施行した97症例を年齢により75歳以上(15症例), 75歳未満(82症例)に分けた.そして,発症からの経過時間,イレウス管の造影所見,進行状況,排液量,留置期間,手術率,イレウス管留置中の合併症,死亡率に着目して比較検討した.高齢者群では非高齢者群に比してイレウス管の進行が不良であり,排液量も遷延化する傾向にあった.保存的治療継続中に合併症が有意に多く発症した(P<0.01).また保存的改善となった高齢者群のイレウス管留置期間は有意に長かった(P=0.01).高齢者の術後癒着性イレウスにおいては,イレウス管の進行が緩慢で,排液量が遷延化する傾向にある.またイレウス管留置中に肺炎などの合併症をおこす危険も高く,保存的治療の継続には柔軟な対応が必要である.
  • 鄭 充善, 清水 潤三, 池田 公正, 北田 昌之, 島野 高志
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1739-1743
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    MRSA腸炎に特徴的な下痢症状を含め,顕著な消化器症状なく急激な転帰をたどり,剖検にてMRSAによる全消化管炎を認めた症例を経験したので報告する.症例は66歳の男性. 2005年5月,右下腹部痛を主訴に来院され急性虫垂炎疑いにて緊急入院となった.保存的加療にて経観するも症状悪化し,第6病日に虫垂切除術を施行した.第11病日,突然39度の発熱,およびダグラス窩の圧痛を認めたため,同日開腹ドレナージ術を施行した.腹腔内に膿性腹水を認めなかった.第13病日,突然の呼吸苦を認め,ショックとなりICU入室となった.エンドトキシン吸着療法など施行するも著効なく,第17病日に永眠された.病理解剖にて,上気道から直腸までの全消化管に粘膜びらんを認め,特に咽頭周囲に強い炎症を認めた.生前に上気道よりMRSAが検出されており,直接死因はMRSAによる全消化管炎と考えられ,検索範囲では報告がなく,本症例は最初の報告と考えられた.
  • 保 清和, 喜島 祐子, 吉中 平次, 舩迫 和, 愛甲 孝
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1744-1749
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    卵巣転移で発見された浸潤性小葉癌を経験したので報告する.症例は53歳の女性. 2005年1月,当院婦人科にて左卵巣腫瘍の診断で,子宮・両側卵巣・大網・虫垂切除術を受け,病理組織学的にこれら全ての臓器に転移性腺癌がみられた.原発巣検索目的で当科へ紹介され,視触診・マンモグラフィ・超音波で左乳房に2.0cm大の腫瘤を認めた. 2005年3月,腋窩リンパ節郭清を伴う乳房部分切除を行い,最終的な病理組織学的診断は多数のリンパ節転移と広範な腹膜播種を伴う浸潤性小葉癌(pT2N3M1: Stage IV)であった.転移性卵巣腫瘍が先行して発見された浸潤性小葉癌は極めて稀で,本邦2例目である.
  • 岡川 武日児, 内田 達男
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1750-1753
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    ホジキン病に対し放射線治療を受け,二次癌として乳癌が発生したと思われる症例を経験したので報告する.
    症例は35歳の女性で, 20歳の時にホジキン病のためマントル照射を受けた.ホジキン病は治癒したが,平成12年に右乳房内側B領域の腫瘤に気付き,近医を受診後当院を紹介された.腫瘤は径0.8cmの大きさでエコー上境界はやや不明瞭であった.細胞診はクラスVであったが念のため術中病理検索で乳頭腺管癌であることを確認した後乳房温存手術を施行した.腋窩リンパ節に転移はなく,術後5年経過したが,再発を認めていない. 30歳以下で放射線照射を乳房近傍に受けると照射10年以後に乳癌を発症する可能性があるため,二次癌を考慮に入れた,定期的な検診が必要である.
  • 寺本 成一, 小関 萬里, 上池 渉, 畑中 信良, 石田 奈央, 谷山 清己
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1754-1757
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性. 1カ月前から左乳房腫瘤を自覚し来院した.左乳房EB領域に径2cm大の境界不明瞭な腫瘤を触知した.マンモグラフィにて微細石灰化を伴う腫瘤を認めカテゴリー4,乳房超音波では径16mm大の充実性,内部エコーは低エコー,境界明瞭粗造な腫瘤を認めた.穿刺吸吸引細胞診においてinvasive micropapillary carcinoma (IMP)を疑い悪性と診断した. IMPが考えられること,乳頭との距離がないことから胸筋温存乳房切除術並びにセンチネルリンパ節生検を施行した.術後の病理診断において腫瘍径1.2cm, IMP, ly0, v0, pN0 (sn), ER3+, PgR3+, HER2陰性(FISH法), NG3であった.術後EC療法(Epirubicin75mg/m2 Cyclophosphamide600mg/m2) 4クール施行後,アロマターゼ阻害剤にて経過観察中である.
  • 櫻井 健一, 天野 定雄, 榎本 克久, 松尾 定憲, 根岸 七雄, 根本 則道
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1758-1762
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    破骨様巨細胞を伴う進行乳癌の1例を経験したので報告する.症例は52歳,女性. 6カ月前より右乳房腫瘤に気づくも放置していた.次第に出血を伴うようになってきたため,当科を受診した.右乳房D領域に直径7cmの腫瘤を触れ,腫瘤は皮膚より一部突出しており,易出血性であった.超音波検査では境界不整な腫瘤として描出され,同側腋窩リンパ節に腫大を認めた. CT, MRI検査では皮膚へ浸潤する腫瘍として描出された.穿刺吸引細胞診では悪性の診断であった.他臓器転移のないことを確認後,胸筋温存乳房切除+腋窩リンパ節郭清術を施行した.病理組織検査では破骨細胞様巨細胞を伴う浸潤性乳管癌と診断された. ER(-), PgR(-), HER2 score0, T4b, N1, M0=stage III Bの診断であった.術後,胸壁と鎖骨上窩に50Gyの放射線療法を施行後, CE療法を6サイクル施行した.その後,外来経過観察中であるが,術後3年2カ月目の現在,無再発生存中である.
  • 宇野 雅紀, 山田 昂, 山田 育男, 長野 郁夫, 鍵本 紀久雄, 金澤 英俊
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1763-1767
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.腹痛を主訴に外来受診した.右下腹部に圧痛を認めたが腹膜刺激症状はなかった.急性虫垂炎を疑い,入院にて保存的治療を開始した.第5病日の腹部造影CTにて,入院時CTで認めていた腎動脈下の腹部大動脈の拡張と,腹側への造影剤の突出の進行を認めた.感染性腹部大動脈瘤の切迫破裂と診断し,第11病日に手術を行った.非解剖学的再建後,大動脈瘤を切除した.切除した大動脈瘤は内膜の破壊を認め,病理組織検査で内部に好中球浸潤像を確認できたが,培養では菌は検出されなかった.術後経過は良好で,現在まで再燃を認めていない.感染性腹部大動脈瘤は比較的稀な疾患であり,本邦では最近10年間では38例の報告がある.手術時期,術式等,議論の余地が多く,自験例を加えて考察し,報告する.
  • 羽田 匡宏
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1768-1772
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は25歳,男性.下痢と咽頭痛にて当院内科を初診したところ,甲状腺腫大および甲状腺機能亢進を認めバセドウ病と診断された.抗甲状腺療法を施行したところ甲状腺機能は速やかに改善された.経過中に前縦隔腫瘍が指摘され, MRIにて胸腺腫が否定できないため手術目的に当科紹介となり,腫瘍摘出術を施行した.病理組織診断は胸腺過形成であった.バセドウ病に合併する胸腺過形成は古くから報告されているが,臨床現場ではあまり知られていない.最近では甲状腺機能を正常化することで保存的に胸腺の縮小が得られるとされている.しかし,胸腺腫が否定できない場合には摘出術も考慮すべきと考えられた.
  • 吉田 和夫, 小林 宣隆, 兵庫谷 章, 藏井 誠, 近藤 竜一, 天野 純
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1773-1776
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肺多形癌は比較的稀な疾患であり,進行が早く予後が不良とされ,中でもリンパ節転移をきたしたものの予後は著しく不良であるとの報告が多い.しかし,いまだ画像所見を含めた臨床的特徴は明らかになっていない.症例は52歳,女性.検診で胸部異常影を指摘され精査加療目的で入院した.入院時の画像所見で当初結核が疑われたが,最終的に肺癌と診断され手術施行された.病理病期はIIIA期であり,術後早期に再発をきたし死亡した.肺多形癌は早期に診断をつけ,手術による完全切除を施行することが重要である.従って,画像上炎症性疾患が疑われる症例においても,多形癌の可能性を念頭に置くべきと思われた.
  • 芝木 泰一郎, 熱田 義顕, 森本 典雄
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1777-1780
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.咽・喉頭痛と摂食障害を主訴に来院.上部消化管内視鏡検査(GIF)で胸部上部食道に巨大潰瘍が認められた.再検時の所見から食道潰瘍穿孔の診断がつき,全身麻酔下に開胸,洗浄・ドレナージを施行した.術後膿胸を併発したものの,第52病日に退院となった.本症例では組織学的診断は得られていないが,周術期から術後遠隔期にわたる血中サイトメガロウイルス(CMV)抗体価の推移から,食道潰瘍の形成と穿孔にCMVの関与が疑われた. CMVによる感染性食道潰瘍はAIDS患者における食道潰瘍(約19%にみられる)の85%を占めるが,このような背景のない患者における発症例が報告されており,健常人の食道潰瘍を診断するうえで,感染によるものも考慮して診断・治療にあたる必要があると考えられた.
  • 千堂 宏義, 今西 達也, 豊田 昌夫
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1781-1784
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性. 2000年5月に胃癌のため当科にて胃全摘,膵尾部脾合併切除術を施行した.病理診断はtub1, mp, INFβ, ly1, v0, n1, stage IIであった.術後はUFT-E顆粒300mg/日1年間内服した. 2005年2月に右側腹部腫瘤を自覚し近医受診. CA19-9が57U/ml (<37)と軽度上昇し,腹部超音波で右側腹壁に腫瘤が認められ,精査加療目的で当科紹介となった.初回手術時のWinslow孔に留置したドレーン挿入部より約5cm離れた右側腹壁に径約3.5cmの腫瘤を触知した.腹部超音波・CTでも同部に径約3.5cmの腫瘤を認め,胃癌の腹壁転移と診断し,局麻下に腫瘤摘出術を行った.病理組織では胃癌の血行性腹壁転移と診断された. tub1, mp胃癌の術後比較的長期経過後に腹壁に血行性転移をきたすことは稀で,若干の文献的,病理組織学的考察を加えて報告する.
  • 森脇 義弘, 荒田 慎寿, 小菅 宇之, 豊田 洋, 山本 俊郎, 杉山 貢
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1785-1790
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    高齢重症急性膵炎,腸壊死多発穿孔,穿通に対し発症第46病日まで待期し手術を施行,術後管理を容易とし得た.症例は80歳,女性.重症急性膵炎(重症度スコア13点)で3病日に転送, 25病日に消化管出血(第1空腸動脈出血)を認め,経カテーテル的動脈塞栓術を施行したが出血は続き, 46病日に緊急手術とした.小腸,腸間膜の腹壁への面状で強固な癒着と分節状,非連続性の多発腸壊死穿通で,病変部小腸粘膜は融解壊死,海苔状に脱落していたが,内腔は肉芽形成が認められ筋層以下は保たれていた.罹患部以外の小腸は浮腫硬化も軽度で伸展性や柔軟性,色調は正常であった.腹腔内,後腹膜の脂肪融解壊死は疲痕繊維化し乾燥状態で,粘調な浸出液や感染性膿汁はなかった.腸管壁筋層以下を一部残存させ健常な部分で切離,人工肛門,腸瘻造設術を施行した.切除部の腹壁への挙上,閉腹は容易であった.術後はショックが遷延したが容易に安定し, 15病日に集中治療室を退室, 121病日に転院となった.
  • 内海 方嗣, 津村 眞, 立本 昭彦, 小林 正彦, 木村 圭吾, 國土 泰孝
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1791-1795
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.脳梗塞と高血圧症の既往があった.腹痛,嘔吐を主訴に近医受診.急性腹症と診断され当科紹介となり精査加療目的にて入院となった.入院翌日に右下腹部痛,反跳痛出現.急性虫垂炎を疑い虫垂切除術施行した.しかし術後3日目より腹痛,嘔吐が再び出現.腹部X線写真にてニボーを認めイレウスと診断した.保存的治療を行うも症状軽快せずイレウス解除目的にて手術を施行した.回腸に狭窄部位を認めたため回腸部分切除を行った.狭窄部位に潰瘍性病変を認め,組織学的にはコレステロール結晶塞栓症による虚血性腸炎と診断された.術後は経過良好で14日目に退院となった.コレステロール結晶塞栓症は抗血栓療法,血管内カテーテル操作を誘因として多臓器に発症しうるが,消化器病変の本邦報告例は自験例を含めて5例と非常に稀であるため,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 佐藤 隆宣, 岩崎 晃, 岩間 毅夫
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1796-1799
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Crohn病において消化管大量出血を起こして緊急に外科的治療を必要とすることは比較的稀である.今回われわれは術中小腸内視鏡により出血部位が同定できたCrohn病小腸出血の1例を経験したので報告する.症例は31歳,男性.平成6年4月, Crohn病を発症し某大学病院にてfollow upされていた.平成16年4月,突然大量の下血を生じショック状態となり当院で緊急手術となった.手術では術中内視鏡を行い小腸の観察を行ったうえで拍動性の出血部位を直接確認することができた.一般的に開腹時に管腔外から出血部位を同定することは非常に困難であると言われている.特に複数の病変を伴うCrohn病の切除すべき出血部位の特定には,術中内視鏡検査が有効であり,しかも切除範囲を必要最小限にどめることができ有効な方法であると考えられた.
  • 添田 暢俊, 伊東 藤男, 木村 直美, 木村 隆, 三浦 純一, 井上 仁
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1800-1804
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性. 3週間前から下腹部膨満感,嘔吐を認め,平成15年5月当院受診.下腹部に腹膜刺激症状を認め,腹部単純CT検査では腹腔内遊離ガス像を認めた.消化管穿孔による汎発性腹膜炎の診断にて緊急手術を施行した. Treitz靭帯より約1m肛門側小腸の腸間膜対側に約3cmの管外発育型の小腸腫瘍を認めた.腫瘍の先端が約5cm口側の小腸壁へ癒着して形成されたヘルニア門に大部分の肛門側小腸が入り込み内ヘルニア嵌頓となっていた.腫瘍先端と癒着した口側小腸壁が,嵌頓した腸管によって牽引され損傷し,汎発性腹膜炎を呈していた.腫瘍,損傷部の小腸を含めた小腸切除を施行した.病理組織学的所見では紡錘形の腫瘍細胞が束状に配列し密に増殖していた.免疫染色ではKIT陽性, CD34陽性, α-smooth muscle actin陽性, S-100蛋白陰性であり,小腸gastrointestinal stromal tumorと診断した.術後2年10カ月が経過し,無再発生存中である.
  • 森 周介, 岸本 浩史, 田内 克典
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1805-1809
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,女性.腹痛,発熱,水様便につづく下血を主訴に来院した.下血は最終月経初日から6日目に起きた.下部消化管内視鏡検査および注腸造影で虫垂開口部に壁外性の圧迫像をみとめ,腹部CTおよびMRIで同部に21×18mm大の造影効果のある辺縁平滑な腫瘤を描出した.虫垂腫瘍の診断で回盲部切除術を施行したところ,虫垂根部に白色の充実性腫瘍をみとめ,内部に出血斑と思われるヘモジデリン沈着を伴った.病理組織検査の結果,固有筋層から漿膜下にかけて子宮内膜間質組織と内膜腺の増生をみとめ,虫垂子宮内膜症と診断した.
  • 浜井 洋一, 山口 佳之, 右近 圭, 田辺 和照, 檜原 淳, 吉田 和弘
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1810-1814
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性,腹痛,発熱を認め,当科紹介となった,当科入院時には下腹部に軽度の圧痛を認め,直腸診で直腸子宮窩に母子頭大の結節を触知した.血液生化学検査で白血球, CRP, CEA, CA19-9の上昇を認めた. CTでは膵尾部に5cm大の腫瘍と肝S6に1cm大の腫瘤,腹水貯留を認め,膵癌の腹膜播種,肝転移と診断した.入院後3日目より腹痛は増強し,腹膜炎の診断で緊急手術を施行した.開腹すると膵癌播種結節の虫垂転移のため,穿孔性腹膜炎を発症していた.虫垂切除,腹腔ドレナージ術を施行した.
    癌の虫垂転移によって2次性虫垂炎を発症することは稀である.今回,われわれは膵癌の腹膜播種により穿孔性虫垂炎を発症した症例を経験したため,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 細野 俊介, 小坂 博久
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1815-1819
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.歩行時の右腰背部痛と右大腿部痛を主訴に当院整形外科を受診し,湿布薬,鎮痛剤にて経過観察されていたが,約3カ月後に発熱が出現し腰背部痛が急性増悪した.腹部CTにて右腰背部膿瘍を認めたため,当科へ紹介,同日入院となった.右腰背部膿瘍に対し,局所麻酔下に切開ドレナージを施行したところ便臭を伴う褐色の膿汁が噴出したため,消化管との交通が示唆された.大腸内視鏡検査時に虫垂開口部前からガストログラフィン造影を施行したところ,虫垂と膿瘍腔の交通が確認されたため,虫垂炎に続発した筋膜後腔膿瘍と診断し,虫垂切除術を施行した.術中所見では虫垂が後腹膜に癒着し,〓孔を形成していた.虫垂炎に続発した筋膜後腔膿瘍は腹部所見に乏しく診断に苦慮する場合も多いが,自験例では膿瘍ドレナージにて症状が軽快し,術前に原疾患を診断することができたため,経過・治療につき若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 山田 恭吾, 杉山 譲, 小堀 宏康
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1820-1823
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,上行結腸間膜内に穿通し,膿瘍を形成した上行結腸憩室炎症例に対して,根治手術を施行した1例を経験した.症例は53歳,男性.平成11年より右下腹部痛を自覚し,発熱をくり返していたが放置していた.平成14年8月末より右下腹部痛・便秘・発熱が出現,圧痛を伴う手拳大の腫瘤を触知したため当院を受診,精査目的に入院となった.腹部US, CT所見では,右下腹部,上行結腸に一致して腫瘤像を認めた.腹壁および横行結腸との境界が不明瞭で,悪性腫瘍も否定できなかった. CF所見では,腸管内腔に腫瘍を認めず,憩室が散見された.以上の結果から,上行結腸憩室の結腸間膜内穿通による膿瘍の診断で,右半結腸切除術を施行した.摘出標本では,上行結腸憩室から結腸間膜内への穿通が認められた.
  • 宮本 正之, 河野 透, 大沼 淳, 海老澤 良昭, 間宮 規章, 葛西 眞一
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1824-1827
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,男性. 1989年に潰瘍性大腸炎(UC)と診断され投薬治療を受けていた. 1998年より投薬なしで寛解を維持していたが, 2001年12月に再燃し当院内科入院となった.ステロイド投与,白血球除去療法(LCAP)にて症状は軽快したが, 2002年1月血小板減少をきたし特発性血小板減少性紫斑病(ITP)と診断された.ステロイド,シクロスポリン投与によりUC, ITPとも寛解が得られていたが, 2002年10月に再燃し下血を認めたため入院となった. UCに対しステロイド投与, LCAPを行うも治療に抵抗性であった.その経過中, ITPに関しての病態は安定していた. 2002年12月13日大腸全摘術,回腸嚢肛門吻合,回腸双孔式ストーマ造設,脾臓摘出術を行った.術後経過は良好であった.術後血小板数は正常範囲を維持している. UCとITPは共に免疫学的機序がその発症に関与していると考えられているが,両疾患の合併は稀である.
  • 山川 俊紀, 小野田 裕士, 大橋 龍一郎, 泉 貞言, 鈴鹿 伊智雄, 塩田 邦彦
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1828-1831
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,男性.ヒステリー性神経症・頭部外傷性癩癇・不眠にて内服治療を受けていた.当科にて平成17年6月8日,特発性直腸穿孔に伴う汎発性腹膜炎の診断でHartmann手術施行.第4病日より39°Cの稽留熱,四肢筋のfasciculation,硬直を認めた.第5病日に40°Cの発熱,意識障害,振戦を認め,第6病日には循環動態不安定, CPK1,308IU/lの上昇にて悪性症候群を疑った. ICU入室,全身管理の上Dantrolene sodiumの投与開始となった.第8病日には尿中ミオグロビン定性陽性, CPK122,370IU/lと上昇したが,その後全身状態改善し術後56日目に転科となった.死亡率約10%の悪性症候群に対して, Dantrolene sodiumの投与にて救命することが出来た特発性直腸穿孔を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 佐藤 正幸, 椎葉 健一, 藤谷 恒明, 三國 潤一, 山並 秀章, 井上 寛子
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1832-1837
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    直腸GISTの4症例を経験し, 1例が再発死したので,その臨床像と再発形式,その予防について文献的考察を加えて報告する.主訴は血便3例,便柱狭小・便秘が1例で, 3例に生検を行い, 2例にGISTの診断を得たが, 1例は古い症例で平滑筋腫瘍が示唆されたが悪性像は認めなかった.この症例に患者の強い希望もあり経仙骨的切除術を施行した.摘出標本では最大腫瘍径は78mmで一部に壊死を認めたがリンパ節転移,周囲臓器への浸潤は認めなかった.病理学的には切離断端への腫瘍浸潤は認めなかったが核分裂像は13/HPFで術後18カ月後に吻合部付近に局所再発,再切除するも再発を繰り返し死亡した.他の3例は,腫瘍径は52~85mmであったが核分裂像は2/HPF以下で再発は認められなかったが, 2例は他病死した.
  • 吉田 泰, 井上 克彦, 大佐古 智文, 永本 展英, 中原 修, 栗脇 一三, 種子田 岳史
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1838-1842
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は36歳,女性. 31歳時(平成11年3月)に上行結腸癌に対し,結腸右半切除術を施行され,術後補助療法として5-FU系内服薬を内服した.平成15年9月にFDG-PETにて骨盤内リンパ節の異常集積を指摘され,単発巣であったため切除術を施行した。病理学的検査所見は31歳時の大腸癌とは異なる所見であった.全身検索にて明らかな原発巣を認めず,原発不明癌リンパ節転移の診断であった.術後paclitaxel+carboplatinによる化学療法を施行した.同患者は平成16年11月にFDG-PETにて肝動脈周囲リンパ節転移を指摘された.またしても単発巣であり,また, CT上,左卵巣に嚢胞性病変を認めたため,肝動脈周囲リンパ節郭清術+単純子宮全摘術+両側附属器切除術を施行した.病理学的検索にてリンパ節は原発不明癌リンパ節転移,子宮および卵巣には悪性所見は認めなかった.平成17年ll月のPET検査では異常を指摘されておらず,原発不明癌としては良好な経過をたどっている.
  • 三澤 俊一, 小澤 昭人, 石橋 久夫
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1843-1847
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳の男性.下痢,急性腹症にて入院した.経過中糞尿,膀胱炎症状合併し,結腸膀胱瘻が疑われた.注腸検査,膀胱造影では瘻孔は描出されず,大腸内視鏡検査ではS状結腸の癒着が強く病変を確認できなかった.腹部CT検査にてS状結腸壁の肥厚と周囲の炎症所見を認めたが, MRI検査にても瘻孔を証明できなかった.絶食,膀胱バルーン留置による保存的治療にても症状持続したため,開腹手術を施行した. S状結腸に膀胱に穿通する潰瘍性病変認め,瘻孔含むS状結腸切除,人工肛門を造設した.病変は結腸癌であった.
  • 須納瀬 豊, 竹吉 泉, 小川 哲史, 富澤 直樹, 伊藤 秀明, 森下 靖雄
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1848-1852
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は48歳,男性で,便通異常と肛門痛で近医を受診し,直腸腫瘤として紹介された. CFで直腸に巨大な粘膜下腫瘍を認め, CTとMRIで,骨盤壁浸潤を伴う12cm大の腫瘤を認めた. AGでは,上腸間膜動脈と内腸骨動脈の末梢枝から腫瘍が栄養されていた.生検より,内分泌細胞癌と診断して腹会陰式直腸切断術を施行した.摘出標本では,中心部壊死を伴う充実性腫瘍で,梨状筋浸潤を認めた.組織学的には核密度の高い類円形腫瘍細胞がびまん性に増殖し,内腸骨動脈領域のリンパ節転移があった.免疫染色ではNSE, CD56が陽性であった.術後4カ月で骨盤内再発と肝転移をきたし,局所に放射線照射,肝にTACEを行い, CDDPとCPT-11, およびL-OHPを始めとする全身化学療法を行った.間もなく腫瘍が縮小し,再発後20カ月無増悪で経過中である.巨大な内分泌細胞癌の再発に対し集学的治療を行い,縮小後長期間無増悪で経過中の症例を経験したので報告する.
  • 稲垣 大輔, 熊本 吉一, 片山 清文, 白石 龍二, 田邉 浩悌, 谷 和行
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1853-1857
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    巨大肝嚢胞自然破裂に対して腹腔内ドレナージと肝嚢胞天蓋切除術を施行し治療した1例を経験したので報告する.症例は73歳,女性.抗血小板薬を内服中であった.起床時に腹部全体に広がる激しい腹痛を自覚し来院.腹部CT検査では肝右葉後区域に径12cmの肝嚢胞を認め,嚢胞壁は不連続であった.肝嚢胞自然破裂による汎発性腹膜炎の状態と診断し,緊急手術を施行した.腹腔内には暗赤色の血性腹水が多量に貯留し,肝右葉後区域に肝嚢胞を認めた.抗血小板薬内服中のため腹腔内ドレナージのみ施行した.術後,肝嚢胞は再び増大し,腹痛や呼吸苦が出現した.肝嚢胞は17cmまで増大していた.経皮的肝嚢胞ドレナージ施行して肝嚢胞を縮小したのちに,開腹下に肝嚢胞天蓋切除術を施行した.術後経過は良好であり,手術より1年後の腹部CT検査では,肝嚢胞の再発は認めなかった.
  • 中崎 隆行, 阿南 健太郎, 進藤 久和, 田村 和貴, 谷口 英樹, 中尾 丞, 高原 耕
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1858-1862
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性で上行結腸癌の診断にて当院入院となった.注腸検査では上行結腸に40×35mmの腫瘍を認めた.腹部CT検査で肝S6に境界不鮮明な低吸収域を認め,造影では不均一に染まり,その末梢胆管は拡張していた. MRCP検査では肝後区域枝の閉塞と未梢胆管の拡張がみられた.以上より上行結腸癌と肝後区域の胆管細胞癌の疑いにて手術(右半結腸切除術と肝右葉切除術)を行った.病理所見では大腸癌は高分化腺癌, ss, ly2, v2であった.肝の腫瘍も高分化腺癌であり,免疫染色でCK20陽性, CK7陰性, CEA陽性で,結腸,肝とも同一の染色性を示し大腸癌の転移と考えられた.転移性肝癌の胆管内進展は稀である.今回,大腸癌の術前検査で,胆管細胞癌と鑑別が困難であった大腸癌肝転移の1例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 松井 芳文, 貝沼 修, 浦島 哲郎, 大平 学, 碓井 彰大, 谷口 徹志
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1863-1867
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    左側胆嚢・右肝円策を伴う症例は稀であり,肝切除は容易でない場合も推定される.われわれは左側胆嚢・右肝円策を伴った肝門部胆管癌に肝切除術を行った症例を経験した.症例は57歳,女性. 2004年2月,検診にて肝機能の異常を指摘され精査目的にて入院.左右からの胆管造影にて,上部胆管から左肝内胆管および右肝内胆管にかけて狭窄を認めた.また, enhanced CTなどにて左側胆嚢・右肝円索を認めた.左葉切除,胆管切除術および肝内胆管空腸吻合術を施行した.左門脈枝のtrunkは極めて短くsleeve resectionが必要であったほか,長い右門脈のtrunk, 右胆管一次分枝を認めた.
    左側胆嚢・右肝円策例では肝内の解剖学的破格を伴うことが多いとされている.本症例では内側区域および肝静脈に破格がみられ,文献的検討を含め報告する.
  • 岡崎 太郎, 味木 徹夫, 藤田 恒憲, 松本 逸平, 鈴木 康之, 黒田 嘉和
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1868-1872
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.前医にて胆石胆嚢炎の診断で緊急手術を施行された.胆嚢は横行結腸と癒着し,摘出困難であったために,胆嚢切開後排石・外瘻術が施行されたが,退院後に発熱,右季肋部痛などを認め,当科紹介入院となった.腹部単純X線検査で右横隔膜下にガス像を,注腸検査では結腸肝彎曲部が右横隔膜下に入り込んだ像を認め, Chilaiditi症候群と診断した.また,腹部CT検査では肝内側区域形成不全を認め,胆嚢は肝前面に位置し(suprahepatic gallbladder),結石を伴い全周性の壁肥厚を認めた.これに対して,開腹胆嚢摘出術を施行した.肝葉形成不全は稀な病態であり, Chilaiditi症候群やsuprahepatic gallbladderの成因となりうると考えられた.
  • 和田 義人, 宮崎 亮, 鳥巣 要道
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1873-1878
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性.上腹部痛を主訴に2002年3月,当院に精査加療目的で入院された.血液生化学検査で進行性の貧血と腹部超音波検査,腹部CTで胆嚢内に腫瘤を指摘された.消化管出血を疑い,上部消化管,大腸内視鏡検査,選択的内視鏡的逆行性胆管造影を行ったところ,十二指腸乳頭部より断続的な出血,胆嚢内に腫瘤陰影を認めた.胆嚢腫瘍による胆道出血の診断で拡大胆嚢摘出術を行った.摘出胆嚢は著明に腫大し,内腔に血塊と白色隆起病変を認めた.組織学的に不規則な腺管構造を有した腺癌を背景に紡錘形の異型細胞と巨細胞が混在していた.免疫染色の結果,上皮性マーカー陽性,非上皮性マーカー陰性で,胆嚢未分化癌と診断した.術後急速に再発転移したこと, P53やMIB-1が強陽性であったことなどから極めて予後不良な生物学的悪性度の高い癌と考えられた.
  • 常深 聡一郎, 原 章倫, 山本 誠士, 徳原 孝哉, 泉 信行, 岩本 伸二
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1879-1883
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.下部胆管癌に対して膵頭十二指腸切除術(胃膵吻合)+リンパ節郭清(D1)を施行した.術後1日目,高熱に伴い白血球数の急激な減少(0.7×103/μl)を認めたため,血球貧食症候群を疑い骨髄穿刺を施行した.骨髄像にてマクロファージによる血球貪食像を認めたので,血球貪食症候群(以下HPS)と診断した.同日,ステロイドパルス療法を開始することで,血液像は改善し全身状態は良好となり軽快退院された.退院前に骨髄像を再検討したが正常に改善していた.術後発症のHPSの早期診断には,同疾患を念頭に置くことが重要である.今回,膵頭十二指腸切除術後にHPSが発症したが,骨髄穿刺を行うことにより早期診断,早期治療を行うことができHPSが軽快しえた症例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 岩槻 政晃, 山下 眞一, 芳賀 克夫, 村山 寿彦, 池井 聰, 馬場 秀夫
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1884-1888
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.平成13年11月頃より,心窩部痛を自覚していた.近医を受診したところ,腹部超音波検査にて,膵頭部腫瘍を指摘された.平成13年12月,精査加療目的で当科受診となった.腹部造影CTでは,膵頭部に径4cmの境界明瞭,辺縁整の嚢胞性病変を認め,一部乳頭状にenhanceされる壁在結節様の所見を認めた. MRIでは,腫瘤内部はT2WIでほぼ均一な高信号であり, CTと同様,一部乳頭状にenhanceされる壁在結節様の所見を認めたが,隔壁は明らかではなかった. ERPでは,主膵管の拡張はなく膵管分枝の腫瘤による圧排像を認め,嚢胞との交通は認めなかった.画像上,膵粘液性嚢胞腺癌が疑れ,平成14年1月,幽門輪温存膵頭十二指腸切除を施行した.病理組織検査は,膵神経鞘腫の診断であった.膵神経鞘腫は稀な疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 阿南 勝宏, 森山 初男, 野口 剛, 川原 克信
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1889-1893
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.意識消失発作および低血糖発作のため来院,精査のため当科へ入院.腹部CTにて膵尾部に長径30mmの嚢胞性腫瘤を認めた.内分泌学的検査,選択的カルシウム動注後肝静脈サンプリングなどにより膵インスリノーマと診断され,手術を施行した.術前診断では多発病変の可能性も完全に否定できなかったが,術中所見では膵尾部の嚢胞性腫瘤の他に病変を認めなかったため膵尾部切除術を施行,良好な結果を得た.膵インスリノーマは通常充実性の腫瘍であり,内部に嚢胞性変化をきたすことは稀であるため,若干の文献的考察を加えて報告する.また,選択的カルシウム動注後肝静脈サンプリングの判定基準,膵インスリノーマに対する術式についても文献的考察を加えた.
  • 位田 歳晴, 吉田 正史, 内藤 恵一, 飯塚 恒
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1894-1897
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性. 1994年11月左肺癌にて左肺全摘術を施行した.病理診断は中分化型扁平上皮癌であった.その後1997年11月,超音波検査で膵体部に腫瘤を発見,内視鏡的膵胆管造影,腹部CT検査,腹部血管造影検査などにて膵癌と診断した.肺癌の他の部位への再発所見はなかったので, 12月門脈合併,膵全摘術を施行した.術後病理診断では肺の扁平上皮癌の膵臓転移であった.肺癌の膵転移は稀ではないが切除例は少ない.本邦報告例は自験例を含め13例であり,本症例は転移巣切除後8年以上の無再発長期生存がえられている.
  • 北田 浩二, 榎 忠彦, 八木 健之, 原田 栄二郎, 野島 真治, 濱野 公一
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1898-1901
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は70歳の男性で, 68歳時に急性膵炎を発症し,以後膵炎の急性増悪を繰り返していた.平成16年11月,飲酒を契機に,腹痛をきたしたため緊急入院となった.造影CT上,膵尾部に動脈相,門脈相ともに周囲の膵実質より造影効果の低い直径12mmの腫瘤と,尾側の主膵管拡張,膵尾部実質の萎縮を指摘された. MRI-T1強調画像では病変部は高信号を呈した.浸潤性膵管癌または粘液性嚢胞腫瘍の疑いで膵体尾部切除術が施行された.腫瘍細胞は腺房状で,腫瘍内に嚢胞の形成を認めその被覆細胞質内には好酸性内容物が認められた.また,腫瘍細胞,嚢胞内容液はジアスターゼ抵抗性PAS染色に弱陽性を示すとの所見から膵腺房細胞癌と診断した.本症例は稀な腫瘍に属する膵腺房細胞癌で,嚢胞形成を伴ったものであった.
  • 橋田 秀明, 小室 一輝, 岩代 望, 大原 正範, 石坂 昌則, 近藤 哲
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1902-1906
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.平成7年1月に右肺癌のため右上葉切除術施行(pT4N0M0 stage III B),平成9年2月に右第1肋骨転移のため放射線照射60Gyを受けている.平成11年9月,腹部造影CT検査で肝後区域および右副腎に径4.5×5.0cm大の低吸収域を認め,右副腎転移,肝浸潤と考え右副腎切除・肝後区域部分切除術を施行した.平成13年6月の腹部造影CT検査では前回切除部と思われる肝後区域と右腎に低吸収域を認め,前回切除の断端再発と考え,肝右葉切除・右腎摘術を施行した.患者は初回副腎切除より6年経過した現在まで新たな病巣の出現なく,生存中である.
  • 馬野 泰一, 永井 祐吾, 林堂 元紀, 白井 康嗣, 前田 恒宏, 高井 昭洋
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1907-1910
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,女性.虫垂切除術,子宮筋腫手術,および3回の帝王切開術の既往があった.下腹部痛があり,産婦人科で右付属器炎と診断,入院時腹部CT検査で小腸の拡張を認め,外科紹介となった.イレウス管を挿入し,症状は緩快したが,造影検査で骨盤内小腸に狭窄像を呈した. 5度の開腹既往のため今回の手術を拒んでいたが,腹腔鏡下手術を優先するとの方針に納得し,手術を行った.盲腸側より回腸を検索し,約20cmの部位が子宮右側の異常裂孔に嵌入しているのを確認した.腸管損傷なく整復でき,裂孔を縫合閉鎖した.本疾患は,先天異常,妊娠,手術などにより子宮広間膜に生じた異常裂孔をヘルニア門とした内ヘルニアである.近年,内ヘルニアに対する腹腔鏡下治療報告が増加しているが,腹腔鏡下手術は,本疾患を含めた内ヘルニアに対して有用な場合があり,考慮すべき治療法である.
  • 日比野 正幸, 千木良 晴ひこ, 亀岡 伸樹, 小川 明男
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1911-1915
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性. 7年前に他院で盲腸癌に対して結腸右半切除術(D3)を施行された. por, se, n1 (+), stage III aであった. 2004年11月頃より肛門部掻痒感を主訴に近医を受診した.直腸診で下部直腸前壁に可動性不良の粘膜下腫瘍を触知したため精査となった.直腸・前立腺に浸潤する40×50mmの腫瘍を認めた.経直腸生検では低分化腺癌であった. PET検査では他に遠隔転移は認めなかった.盲腸癌が孤立性転移をしたものと考え骨盤内臓器全摘術を施行した.術中ダグラス窩部腹膜にひきつれを認めたが腫瘍は腹腔内に露出していなかった.他に転移は認めなかった.術後4カ月目に陰茎転移が判明した.その後,再発は認めていない.骨盤内臓器全摘術は過大な侵襲を伴い慎重な手術適応の判断が必要となるが,本症のように根治切除可能なものに対しては積極的外科治療を行うべきと考えられた.
  • 安田 武生, 藤野 泰宏, 孝橋 道敬, 上田 隆, 鈴木 康之, 黒田 嘉和
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1916-1920
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Gastrointestinal stromal tumor (以下GIST) は消化管における間葉系腫瘍のうちもっとも頻度の高いものであるが,大網,小網などの腸管外に生じたGISTは稀である.今回われわれは小網原発のGISTの1切除例を経験したので報告する.症例は75歳,男性. 18年前他病の精査中に腹腔内腫瘍指摘されるも放置.以後定期的にフォローされるも今回腫瘍増大傾向認めたため当科紹介入院となった.入院時の腹部CT・MRI検査にて膵頭部領域に直径9cmの腫瘍認め,腹部血管造影にて左胃動脈からの栄養枝を認めたため膵浸潤をきたした胃原発のGISTの診断にて腫瘍摘出術および分節膵切除術施行.切除標本の病理検査では胃・膵には浸潤なく,原発腫瘍は免疫組織化学的にc-kit, CD34陽性であり小網原発のGISTと診断された.小網原発のGISTは稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 水上 博喜, 吉澤 康男, 宇山 亮, 根本 洋, 笹屋 昌示, 真田 裕
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1921-1925
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,男性.昼食後に,右下腹部痛がみられ,症状が増悪したため近医を受診し,急性腹症の診断で当院救命センターに搬送入院となった.腹部CT検査で横隔膜下から腹腔右側骨盤内と脾臓周囲に腹水貯留および回盲部内側に約3cmの腫瘤を認め,腫瘤形成性虫垂炎による腹膜炎と診断され,同日緊急手術が行われた.手術所見では,腹腔内全体に約800mlの血液貯留と右下腹部に3cmほどの大網腫瘤が認められ,大網部分切除が行われた.病理組織検査では腫瘤は大網内に小さな出血巣を多数認めたが,血管に異常はなく,特発性大網出血と診断された.本症例は極めて稀であり,本邦31例を集計し,その臨床病理学的検討を加えたので報告する.
  • 佃 和憲, 古谷 四郎, 高木 章司, 池田 英二, 平井 隆二, 辻 尚志
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1926-1928
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    上行結腸間膜に発生した腸間膜裂孔ヘルニアを経験したので報告する.症例は80歳,男性,開腹歴なし.右下腹痛のために病院受診し腸閉塞症と診断された.イレウス管を挿入し保存的加療を行うが,イレウス管造影において回腸がループ上になりその根部を索状物で狭窄された所見を認めたため,内ヘルニアと診断し開腹術を行った.回腸が15cmに渡り,上行結腸内側に存在した約3cmの異常裂孔に嵌入しており,還納後腸切除を行い,裂孔部は縫合閉鎖した.一般的に内ヘルニアの術前診断は困難ではあるが,今回はイレウス管造影で手術適応を決定することができた.
  • 児玉 章朗, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 亀井 桂太郎
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1929-1932
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は25歳の男性で,平成2年に高度の盲腸炎を合併した急性壊疽性虫垂炎に対する回盲部切除術の既往があった.平成14年7月に頸部リンパ節が腫脹し近医を受診した.スクリーニングの腹部CT検査で,動脈と同濃度に造影される最大径2.7cmの腫瘤性病変を認めた.回結腸動静脈瘻と診断され,平成14年8月16日に当科を紹介された.来院時自覚症状はなく,血液生化学検査も正常であった.瘻孔径が大きく経カテーテル的治療は危険性が高いと考え8月26日手術を施行した.前回手術時の回結腸吻合部の近傍に存在する回結腸動脈と回結腸静脈の拡張を認め,おのおのを結紮切離し,回結腸動静脈瘻切除術を施行した.組織学的には,炎症はなく縫合糸も認めなかった.術後経過は順調で術後第8病日に退院した.自験例は血管性病変や外傷歴がなく,回盲部切除術時の集簇結紮に起因する医原性動静脈瘻と考えられた.
  • 庄中 達也, 田口 和典, 武田 圭佐, 大川 由美, 三澤 一仁, 佐野 秀一
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1933-1936
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,女性.腸管Behçet病による回盲部潰瘍の増悪にてステロイドパルス療法を施行中であった.経過中消化管穿孔を認め緊急開腹術施行.回腸末端の穿孔があり回盲部切除・洗浄ドレナージ術を行った.病理診断にてサイトメガロウイルス感染による回腸穿孔と判明した.術後下血によりプレショック状態に陥ったが,ガンマグロブリン・ガンシクロビル投与後,下血が改善した.ステロイド加療中の膠原病患者における消化管穿孔・消化管出血症例においては,サイトメガロウイルス感染も念頭に置く必要がある.
  • 高橋 孝行, 藤崎 真人, 平畑 忍, 前田 大, 戸倉 英之, 大山 隆史
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1937-1941
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃癌術後,カンジダ感染による真菌性腹膜炎を呈した症例を経験したので報告する.患者は51歳,女性. 8カ月間続く上腹部痛を主訴として近医より紹介受診. 3型進行胃癌の診断で2004年1月,胃全摘,膵体尾部・脾・胆嚢・横行結腸間膜合併切除術を施行した.病理診断は非充実型低分化腺癌で,膵と後腹膜に浸潤していた.術後5日目の消化管造影では縫合不全を認めず,経口摂取を開始したが, 10日目に下腹部痛が出現し,腹部CT上,腹水貯留を認め,腹腔穿刺では白色細粒状塊を含む腹水を認めた.汎発性腹膜炎の診断で術後11日目に緊急開腹術を施行した.吻合部や腸管には異常を認めず,腹腔内に白苔を含んだ腹水を多量に認め,洗浄ドレナージを施行した.洗浄液培養よりCandida albicansが検出され,真菌性腹膜炎の診断でミカファンギン(MCFG)を14日間投与し,初回手術後44日目に軽快退院した.外科的ドレナージとMCFG療法はカンジダ腹膜炎に対して有用と考えられた.
  • 衣笠 章一, 木村 聡宏, 吉川 幸伸, 明渡 寛
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1942-1945
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の男性.平成16年9月進行度III b, Rb領域の直腸癌に対して腹腔鏡下腹仙骨式直腸切断術を施行.術後3カ月目より仙骨部の膨隆を自覚し次第に増大した. 7カ月目には立位で常時手拳大の膨隆を認めるようになり手術目的で入院となった.手術は,腹臥位で開始.ヘルニア門の直径は5cm, ヘルニア嚢は長さ7cmであった.嚢を骨盤腔内へ還納しXLサイズのプラグを挿入固定しonlayメッシュを被覆した.さらに右大腎筋回転弁を形成し被覆した.術後創感染なく退院しヘルニアの再発なく外来通院中である.
    経仙骨式手術後の仙骨部創に発症した稀なヘルニアを経験したので治療法を検討し報告した.
  • 宮崎 真一郎, 中川 基人, 金井 歳雄, 高林 司, 坂田 道生, 松本 圭五
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1946-1949
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    閉鎖孔ヘルニアの整復法として,閉鎖孔内のヘルニア嚢に水圧をかける方法(水圧法)の有用性が報告されている.われわれは2002年以降,牽引による従来の方法(牽引法)の代わりに,水圧法を積極的に施行している.当院において,過去6年間で10例の閉鎖孔ヘルニア手術があり,うち5例に水圧法の整復を試みた.腸切除は, 2例に必要であった.牽引法では死亡症例や長期入院症例があったが,水圧法では全例20日以内に軽快退院していた.水圧法は,愛護的な腸管整復によって腸切除,術野汚染,術後創感染を回避し治療成績を向上させる可能性があると推察された.
  • 森田 圭介, 中村 賢二, 江口 雅人, 永田 直幹
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1950-1953
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の男性.無痛性上腹部腫瘤を主訴に来院.開腹歴はなく,身長138cm,体重81kg (BMI 42.5)と高度な肥満を認めた.触診では上腹部に手拳大で弾性硬の腫瘤が認められた.腹部CT検査では腹腔内より突出した脂肪組織を認めたため,白線ヘルニアの診断で手術を施行した.ヘルニア門は4cm大で上腹部白線に存在し,ヘルニア内容は大網であった.ヘルニア嚢を切除し, Bard Composix Kugel Hernia Patch®を用いた修復術を行った.術後経過は良好で再発は認めていない.今回の症例のように,高度肥満による腹腔内圧の上昇などが原因で白線組織の脆弱化がみられる場合は,ヘルニア門の単純閉鎖では再発の可能性が高い.そのため,腹壁に緊張がかからず,また,手術侵襲も比較的少ないBard Composix Kugel Hernia Patch®を用いたtension free hernioplastyが有用であると思われた.
  • 石田 敬一, 増田 政久, 山本 海介
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1954-1957
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    膝窩動脈瘤は頻度の低い疾患であるが,血栓閉塞により下肢虚血症状を呈することが多い.今回われわれは膝窩動脈瘤に血栓閉塞を合併し下肢虚血となった2症例を経験したので若干の文献的考察を加え報告する. 1例は急性下肢虚血のため瘤切除および膝窩-膝窩動脈バイパス術を, 1例は突然発症した間欠性跛行のため瘤空置および膝窩-膝窩動脈バイパス術を行った.下肢虚血症状を呈する症例においてはCT検査,超音波検査により膝窩動脈瘤血栓閉塞を鑑別する必要がある.また,手術方法は瘤の位置やバイパス様式により決定されるが後方到達法による瘤切除を選択すべきであり,内側到達法で瘤空置をする場合には長期にわたる瘤の観察が必要であると考えられる.
  • 松田 明久, 古谷 政一, 清水 康仁, 沖野 哲也, 新井 政男, 田尻 孝
    2006 年 67 巻 8 号 p. 1958-1962
    発行日: 2006/08/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    内視鏡的乳頭切開術(EST)により著明な全身性皮下気腫を呈した1例を経験したので報告する.症例は56歳,女性で総胆管結石による急性胆管炎,急性胆嚢炎の診断で入院となった.除石目的のEST後に後腹膜気腫,縦隔気腫および頸部から大腿にわたる著明な皮下気腫を認め,傍乳頭十二指腸の後腹膜への穿孔を疑い緊急手術を行った.しかし癒着が高度であり,穿孔部の同定には至らず,経過観察としたが約1週間で気腫は改善した.
    本邦においてESTの偶発症として十二指腸穿孔により全身性皮下気腫にまで進展した症例の報告はない. ERCPおよびESTは侵襲的手技であり,偶発症の発生を予防するためには,膵炎,出血だけでなく十二指腸穿孔の可能性も念頭に置き慎重な操作を心がけることが肝要であると思われた.
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