日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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67 巻, 9 号
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  • 角田 ゆう子, 福間 英祐, 坂本 尚美, 比嘉 国基, 佐貫 潤一, 和田守 憲二, 角田 明良, 草野 満夫
    2006 年 67 巻 9 号 p. 1993-1999
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    手術術式の違いによるQOLの変化を術後1~3年経過した乳癌患者118名を対象に,癌専用のQOL調査票であるEORTC QLQ-C30 (version3)日本語版(C30J)と精神的なスクリーニング調査票であるHospital Anxiety Depression Scale (HADS)を用いて計量心理学的に検討した. C30では,乳房温存術の方が乳房切除術よりsocial functionが有意に良好(P=0.048)で,腋窩リンパ節郭清の方がセンチネルリンパ節生検によりFatigueで不良な傾向(P=0.052)を示し,また鏡視下手術の方が直視下手術よりcognitive functionが良好な傾向(P=0.069)を示した. HADSでは,センチネルリンパ節生検の方が腋窩リンパ節郭清よりHADS-depressionで有意に良好(P=0.039)で,また鏡視下手術の方が直視下手術よりHADS-anxiety, HADS-depression, HADS-tota1の全てで有意に良好(P=0.015, P=0.005, P=0,003)であった.以上より,乳房温存,センチネルリンパ節生検,鏡視下手術が,乳癌患者の術後QOLの向上に貢献できる可能性が示唆された.
  • 信岡 大輔, 後藤田 直人, 小西 大, 中郡 聡夫, 高橋 進一郎, 木下 平
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2000-2005
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    目的:胃全摘術後膵液瘻に対するドレーン排液アミラーゼ値(以下D-Amy値)の測定意義を検証する.対象および方法: 2003年~2005年に脾摘を伴う胃全摘術を行った128例に対し, D-Amy値と術後膵液瘻発生について検討した.膵液瘻の診断はドレーン排液の性状を基準として行った.結果: 128例中17例(13%)に術後膵液瘻が発生した.術後第1病日(以下1POD), 3もしくは4POD, 7PODのD-Amy値はいずれも膵液瘻群で有意に高値であった. 17例中10例(59%)は7PODまでにドレーン排液性状より膵液瘻の診断が可能であった.考察: 1POD, 3もしくは4PODのD-Amy値は術後膵液瘻発生の予測となりうるが,臨床的には術後管理に関与せず測定意義は低いと思われた.結論: D-Amy値は7PODにドレーン排液性状に異常が認められない症例のみ測定すれば安全かつ効率的な術後管理が可能と考えられた.
  • 中溝 博隆, 大塩 猛人, 石橋 広樹, 高野 周一
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2006-2011
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    1986年から2005年までに経験した小児上腹壁ヘルニア27例をretrospectiveに検討した.全腹壁ヘルニアの1.1%を占め,男女比は男児11例,女児16例であった.手術時年齢は2カ月から10歳9カ月であった.新生児期までに12例が発症し, 1歳までに21例が発症していた.ヘルニア門の数は1カ所が26例であり,多発症例(2カ所)が1例であり,増大傾向を5件に,自発痛,圧痛を1件に認めた. 19例に合併奇形・基礎疾患を認め,気管支喘息が6例と最多であった.ヘルニア門は平均9.0±7.6mmで,脱出臓器は腹膜前脂肪織が7件で,大網,小腸が2件ずつであった.術後再発は1例に認めた.小児上腹壁ヘルニアは成人より稀であるといわれているが,発生頻度に差はなく,男性に多いとされているが,女児に多くみられた.乳児期までに大半が発症しており,先天性疾患の可能性が高い.
  • 城田 哲哉, 弥生 恵司, 植村 守, 西 敏夫, 川崎 勝弘
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2012-2016
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    Lymphocytic mastopathyは,間質の繊維化,乳腺小葉の萎縮,リンパ球浸潤を伴う病態で,乳腺症とは別の疾患群とされている.糖尿病や自己免疫疾患を有する患者の乳腺に発生した報告は散在するが,基礎疾患がない患者に本症を生じた報告例は稀である.今回,基礎疾患のない高齢の女性患者で本症と診断した2例を経験した.症例1: 62歳,女性.検診にて右C領域に腫瘤を指摘された.超音波にて内部ほぼ均一で低エコーな腫瘤を認め,マンモグラフィでは局所的非対称陰影を認めた.症例2: 68歳,女性.右D領域に腫瘤を自覚,当科受診となる.超音波にて内部不均一の低エコーを示したが,マンモグラフィでは特に所見を認めなかった. 2症例とも悪性を否定できなかったため摘出生検を施行,本症の診断に至った.本症は臨床上,乳癌との鑑別が困難である場合があり,生検されることが多い.乳腺腫瘤の鑑別診断として本症も念頭に置く必要があると思われた.
  • 渋谷 均, 佐々木 賢一, 山本 雅明, 檜垣 長斗, 中村 幸雄
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2017-2021
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳腺髄様癌は稀な特殊型乳癌で,特異な臨床像を示す. 1975年から2004年までに経験した初発乳癌460例のうち髄様癌は12例であった.この12例をRidolfiらの3群の亜型分類(1) Typical medullary carcinoma (以下TMC), (2) Atypical medullary carcinoma (以下AMC), (3) Non-medullary carcinoma (以下NMC) に準じ再評価したところ, TMC 6例, AMC 6例であった.髄様癌の画像所見としてマンモグラフィでは境界は比較的明瞭で高濃度な石灰化のない類円形の腫瘤として描出され,超音波では境界が比較的明瞭で低エコー像を示し,内部エコーは不均一,後方エコーの増強を伴うことが特徴的であった.リンパ節転移率は33.3%で同時期の浸潤性乳管癌のリンパ節転移率と有意差を認めなかった.ホルモンレセプターの陽性率は8.3%で浸潤性乳管癌との比較で優位に低率であった. IHC法によるHER2/neu陽性率は2+以上で58%であった.平均観察期間は11年であるが,全例生存している.
  • 小島 淳夫, 小島 博文, 長 誠司, 齊藤 文良, 山下 巌, 桐山 誠一
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2022-2025
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.突然右足部の痺れと腰痛が出現し,歩行不能となり緊急入院となった.足趾に強い痺れとチアノーゼを認め,精査により腹部大動脈瘤を塞栓源としたblue toe syndromeと診断された.発症から11日目に塞栓源除去,破裂の防止を目的にY型人工血管置換術を行った.剥離や動脈遮断を慎重に行い,吻合方法や遮断解除に多少の工夫をすることで新たな塞栓症の合併はなく順調に経過し,第15病日に独歩で退院となった.
  • 稲荷 均, 孟 真, 軽部 義久, 松川 博史, 深堀 道子, 清水 哲
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2026-2030
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤による十二指腸閉塞は稀である.今回,われわれは横行結腸切除術後,腹部大動脈瘤による十二指腸閉塞をきたした症例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例86歳,女性.精査で横行結腸腫瘤,腹部大動脈瘤,右総腸骨動脈瘤と診断した.また腹部造影CT検査では腎動脈下の腹部大動脈瘤に十二指腸水平脚が圧排されているのを認めた.悪性腫瘍が疑われた横行結腸腫瘍の手術を先行させ,腹部大動脈瘤,総腸骨動脈瘤の手術は二期的に行う方針とした.しかし横行結腸切除術後, 6日目にイレウスを発症し,腹部造影CT検査で,腹部大動脈瘤と腹壁に十二指腸水平脚が前後から挟まれ閉塞していた.十二指腸閉塞解除目的に腹部大動脈瘤,総腸骨動脈瘤切除人工血管置換術を施行した.術後,十二指腸閉塞は改善した.
  • 高橋 秀和, 吉留 克英, 水谷 伸, 打越 史洋, 山上 裕子, 仲原 正明
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2031-2034
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    右腋窩,大胸筋に発生した筋肉内粘液腫の1例を経験したので報告する.症例は75歳,男性,主訴は右腋窩の腫瘤であった.初診時,右腋窩に弾性硬で周囲との境界明瞭な腫瘤を認めた.血液検査所見にて異常を認めず, CTにて脂肪より高CT値,筋より低CT値の腫瘤を右大胸筋外側に認め,浸潤傾向を認めなかった.手術は,腫瘤の辺縁を約5mmの切除marginをおき摘出した.大胸筋との間にstalkを認めたが,切離することにより摘出が可能であった.病理組織検査の結果,筋肉内粘液腫と診断した.術後10カ月の現在,再発はなく経過は良好である.
  • 酒井 章次, 青木 輝浩, 唐橋 強, 久 晃生, 橋本 光正, 細田 洋一郎
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2035-2038
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は19歳,女性,妊娠38週,特発性血小板減少性紫斑病(以下ITP) を合併した妊娠であるため,出産前の免疫グロブリン大量投与のため入院していた.入院中に突然の呼吸困難が出現し,胸部レントゲン上,右自然気胸と診断した.胸腔ドレナージを施行したが,気漏はなくならず,胸腔鏡下手術の適応と考えられた.術前に免疫グロブリン大量療法を施行し,帝王切開施行後,胸腔鏡下手術を施行した.母児ともに術後は良好に経過し,術後10日目に退院した. 4年後の現在,自然気胸の再発はなく,第2子を妊娠中である.
  • 明石 諭, 童 仁, 錦織 直人, 松山 武, 今西 正巳, 川口 正一郎
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2039-2042
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,女性で, 2005年11月にS状結腸穿孔による汎発性腹膜炎の診断で穿孔部縫縮術および腹腔ドレナージ術を施行した.ドレーンは左右横隔膜下,ダグラス窩に留置した.左横隔膜下に留置したドレーンより膿汁の排出があったため長期留置していたが,術後24日目に突然の胸痛と呼吸困難感が出現し,ドレーンより多量の排液を認めた.胸部レントゲンにて左気胸を認め,胸腔ドレナージを施行した.ドレーンの胸腔内への突出およびドレーン内排液の呼吸性移動から,気胸の原因は留置ドレーンによる横隔膜穿孔が疑われた.瘻孔造影および胸部CTにて造影剤は胸腔内に流入しているのを確認し,確定診断を得た.
    ドレーンによる臓器損傷は消化管が多く,横隔膜損傷による気胸の発症は非常に稀である.原因として炎症による組織の脆弱が考えられたが,ドレーン留置による合併症も念頭においてドレーン管理をすべきであると思われた.
  • 大成 亮次, 石本 達郎, 渡邉 雄介, 日山 享士, 西亀 正之
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2043-2047
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,男性.嗄声を主訴に近医耳鼻科を受診し,左反回神経麻痺と診断された.精査加療目的で当院を紹介され受診した.頭頸部の視触診ならびに頸部超音波検査,上部消化管内視鏡検査では異常なかった.胸部CTで右肺S4bに1.1×1.0cm大の結節影を認めたが,肺門および縦隔リンパ節の有意な腫大はなかった.頸部CTで気管に接して0.8cm大の結節影を2個認めた. FDG-PETCTで肺および頸部の結節影に一致して異常集積を認めたため,いずれも生検の適応と判断した.肺結節はVATS肺生検で乳頭状腺癌と診断されたため,右肺中葉切除 (ND2a) 施行したが,肺門および縦隔リンパ節に転移はなかった. 2個の頸部腫瘤は生検でいずれも肺癌のリンパ節転移と診断された. FDG-PETCTは結節性病変の質的診断においてだけでなく,遠隔リンパ節転移の同定という局在診断においても有用であった.
  • 坂野 尚, 加藤 智栄, 岡 和則, 原田 昌和, 河野 和明
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2048-2051
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    51歳,男性.喫煙40本/日×30年. 2004年2月の検診で胸部X線写真上,異常を指摘され, 5月に当院を受診.胸部CT上左肺S9に2.8cm,右肺S9に1.5cmの結節影を認め,増大傾向にあった.気管支鏡検査では可視範囲に異常を認めなかった. 7月,右の腫瘍に対するCT下生検により肉腫が疑われた.肺多発であり,転移性肺腫瘍が疑われたが,諸検査で肺以外の病巣は同定されなかった.原発性肺肉腫を疑い,診断・治療目的に手術を行った. 8月に右肺部分切除, 9月に左肺底区区域切除を施行し,病理検査で悪性黒色腫と診断された.術後に皮膚科,眼科,耳鼻咽喉科で検索,および上下部消化管検査を行ったが原発巣は発見されなかった.術後経過は良好で,術後抗癌剤治療が行われた.術後22カ月無再発生存中である.肺のみに病変が認められた悪性黒色腫を経験した.肺原発あるいは原発不明悪性黒色腫が考えられたが,完全切除により良好な予後が得られた.
  • 西川 勝則, 山形 哲也, 川野 勧, 鈴木 英之, 羽生 信義, 岩渕 秀一
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2052-2056
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    食道癌術後の再建胃管潰瘍による膿胸を呈した1例を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は55歳,男性.胸部中部食道癌で2年前に胸部食道全摘術後縦隔経路胃管再建術を施行した.今回,突然の呼吸困難で受診,胸部X線, CT検査で右膿胸と診断され入院となった.入院後のCT, 上部消化管X線造影,内視鏡検査から胃管下部の巨大な消化性潰瘍穿孔と診断された.治療は至適抗生剤の投与とともに連日の側孔付胸腔ドレーンによる洗浄ドレナージを行い同時に栄養改善目的に中心静脈と経管栄養も併用した.入院後2カ月後には胃管潰瘍も癒痕期まで治癒し同時に栄養状態の改善に伴い膿胸,肺炎も消退し第119病日に軽快退院となった.本症例は食道癌術後から欝病を発症し,また入院1カ月前に胆石.胆嚢炎で手術を受けた既往もあることから外的および心的ストレスに胆石術後に投与されたNSAIDが潰瘍発生を助長し穿孔を起こしたものと推測された.
  • 石井 博道, 坂東 悦郎, 森本 幸治, 小島 則昭, 川村 泰一, 米村 豊
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2057-2060
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    62歳,男性.特記すべき既往なし. 1999年に他院で早期胃癌に対して噴門側胃切除・D1+α・食道残胃前壁吻合再建を施行され外来で経過観察されていたが術後早期より胸焼けを訴え,内服薬投与を継続的に受けていたが軽快せず,経口摂取困難な状態が続いていた. 2003年12月に当センターを紹介され精査したところ,上部消化管内視鏡検査で下部食道に逆流性食道炎とこれに伴う食道潰瘍を認めた.保存的に経過観察していたが,自覚・他覚所見ともに軽快せず, 2004年12月に手術を施行,左開胸開腹下部食道残胃全摘術・Roux-en Y再建を行った.術後合併症はなく,症状も軽快し経口摂取も良好で術後21日目に退院した.術後1年の現在でも症状なく,内視鏡所見も改善した.噴門側胃切除後の難治性逆流性食道炎に対して食道下部残胃全摘術施行がよい治療法であることが示唆された.
  • 原田 栄二郎, 榎 忠彦, 野島 真治, 濱野 公一
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2061-2065
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    内臓悪性腫瘍の皮膚転移は比較的稀であり,一般に終末期患者に認められることが多い.今回われわれは,早期胃癌術後17カ月目に皮膚転移により初めて再発を指摘された1症例を経験した.症例は78歳,女性.初回手術は噴門直下の胃癌に対して,胃全摘出術を施行した.病理組織ではpapillary adenocarcinoma (sm2, ly2, v1, n2, H0, P0, M0: stage2) であった.術後補助化学療法としてTegafur/Uracil 300mg/bodyを投与していたが,術後17カ月目に右前胸部の多発皮膚結節を主訴に受診した.皮膚生検ではリンパ管内に腫瘍塞栓像を認め,胃癌の皮膚転移と診断した.診断後は化学療法を施行したが奏効せず,皮膚転移診断から3カ月後に死亡した.原発巣の病理組織はpapillary adenocarcinomaであり深達度smであったが,その細胞学的特性からリンパ行性に上行性・逆行性に右前胸部皮膚に着床したと考えられた.
  • 中村 幸生, 弓場 健義, 山崎 芳郎, 籾山 卓哉, 伊藤 章, 春日井 務
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2066-2069
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.平成16年11月ころより食欲低下出現.平成17年5月上部消化管内視鏡検査で胃弩隆部から胃体部大鷺側におよぶ15cm大の周堤を伴う2型病変を認め胃癌と診断された.腹部CT検査で主病変のほかに脾静脈から門脈にかけ腫瘤を認め,血栓または腫瘍栓が疑われた.同年6月胃全摘術,脾臓摘出術,横行結腸部分切除術,膵体尾部切除術を施行し,門脈本幹から脾静脈内に及ぶ腫瘍栓に対し,門脈を切開し腫瘍栓を摘出,門脈形成を行った.主腫瘍の病理組織診断はpoorly differentiated adenocar-cinoma (solidtype) INFβ, pT4 (SI), ly3, v3, pN2, sM0, sP0, pCY0, sH0, fStage IVであった.門脈および脾静脈内の腫瘍からも癌細胞が検出された.術後TS-1 (100mg/日)の内服を継続し,術後12カ月に至る現在まで再発,転移を認めていない.
  • 伊藤 元博, 國枝 克行, 北村 文近, 近石 登喜雄
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2070-2073
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は90歳,女性.肺炎にて当院紹介入院した.入院後食欲低下,嘔吐が出現し,上部消化管内視鏡にて球部内反転法で幽門前部から十二指腸球部に脱出する4cm大の顆粒結節状隆起性病変を認めた.腫瘤の胃内への還納は困難であった.上部消化管造影では球部に脱出する4cm大の分葉状腫瘤陰影を認め,幽門前部から十二指腸球部に胃粘膜が牽引されていた.術前呼吸訓練,完全静脈栄養 (TPN) 管理を施行し,全身状態を改善させた後に幽門側胃切除術+D2リンパ節郭清を行い, Roux-en-Y法で再建した.腫瘍は幽門前部後壁に存在する7.5×4.5×4.Ocm大の亜有茎性隆起性病変で,病理組織検査ではtub1, m, ly0, v0, INFα, n0, stage I Aであった.術後経過良好で術後10日目に退院した.十二指腸球部に脱出した超高齢者(85歳以上)胃癌の本邦報告例は自験例を含め5例のみと非常に稀であった.
  • 柴田 裕, 中川 康彦, 小玉 雅志, 南條 博
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2074-2078
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    胃原発の小細胞癌は稀な腫瘍であり,一般型腺癌に比べ転移および浸潤傾向が強く予後不良である.今回われわれは胃原発小細胞癌と術前診断し,手術を施行した1例を経験したので報告する.症例は85歳の女性.平成17年2月,心窩部痛を主訴に受診,上部内視鏡検査で胃体上部に2型病変を認めた.同部位の生検および免疫組織学的検査で,胃原発の小細胞癌と術前診断し,平成17年3月手術を施行した.開腹所見は, T2, N0, H0, P0, M0, StageIBで,胃全摘・D2郭清を施行した.切除標本で病変は36×36mmの2型腫瘍で,割面では粘膜下腫瘍様に増殖していた.病理診断は, small cell car-cinoma, medullary type, INFβ, T2(MP), 1y2, v3, nl, PM(-), DM(-), Stage IIであった.免疫組織学的にCD56, NSE, synaptophysin, chromogranin Aが強陽性を示した.術後化学療法は年齢を考慮して施行しなかった.術後10カ月目に多発性肝転移再発が確認されたが,現在外来にて経過観察中である.
  • 竹内 謙二, 浦田 久志, 坪内 優宣, 藤川 裕之, 川本 文, 本泉 誠
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2079-2082
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,女性.突然右胸痛が生じ,徐々に増強するため当院に救急搬送された.胸部単純X線検査では右胸水を認めた.胸部CT検査で縦隔右側に空気を含む腫瘤像と胸水,気胸を認めた. 2年前の胸部単純X線写真で鏡面形成像のある腫瘤像が縦隔右側に認められていた.横隔膜ヘルニアによる嵌頓腸管の穿孔を疑い手術を施行した.開腹すると,十二指腸下行脚後壁より十二指腸と交通のある管状の重複腸管が膵後面の後腹膜を上行し,横隔膜を越えて,後縦隔に向かっていた.引き続いて,右開胸すると,胸部の重複腸管は癌化し穿孔していた.重複腸管を切除し,胸腔ドレナージを施行した.
    十二指腸に生じ,横隔膜を越え胸部に及ぶ管状の重複腸管は極めて稀で,さらに本症例のように癌化したものは文献上認められなかった.
  • 神保 健二郎, 清水 一起, 立石 晋, 三輪 博久
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2083-2086
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は85歳の男性で左前胸部痛,嘔吐にて当院を受診した.胸腹部CTにてLarrey孔ヘルニアによる絞扼性イレウスと診断し緊急手術を施行した.経腹的にアプローチしたところ,左横隔膜中央やや内腹側におよそ5×4cm大のヘルニア門を認め,左胸腔内に小腸および大網が嵌頓していた.還納した腸管は腸管壊死を呈しており,腸管切除を合併施行.ヘルニア門は非吸収糸にて直接閉鎖した.術後は大きな合併症なく,軽快退院した.横隔膜ヘルニアは新生児期に緊急手術となる頻度の高い疾患であるが,成人後ヘルニア嵌頓にて発症するケースは極めて稀である.本症例は85歳と高齢であり,本邦の報告例では過去最高齢であった.長年無症状であっても絞扼性イレウスの危険性を有するため,横隔膜ヘルニアに対しては原則全例手術適応があると思われる.
  • 水沼 和之, 中塚 博文, 藤高 嗣生, 中島 真太郎, 谷山 清己
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2087-2090
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    急性期虚血性小腸炎の手術症例を経験したので報告する.症例は61歳,男性.腹痛,嘔吐を主訴に当科紹介入院となった.腹部CT上,絞扼性イレウスが疑われたため緊急手術を行った.開腹時,絞扼の所見はなかったが,小腸の虚血性変化を認めたため小腸部分切除術を行った.一般的に急性期虚血性小腸炎は保存的加療が行われるが,特徴的所見に乏しいため診断が難しく,特に自験例のような絞扼が疑われる症例に対しては緊急手術の適応であると考えられた.
  • 斎藤 健一郎, 黒川 勝, 天谷 奨, 芝原 一繁, 八木 真悟, 長谷川 洋
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2091-2096
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.腹部膨満感,嘔気を主訴に受診した.上部消化管内視鏡で十二指腸下行脚より肛門側に連続するびらん,潰瘍,出血を認めた.腹部CTでは広範囲の小腸炎を認めた.十二指腸粘膜からの生検では特異的な所見は認めず,診断確定には至らなかった.保存的加療を行うも2度の大量下血を認め, 3度目の大量下血の際に血管造影検査を施行し,回結腸動脈の回腸末梢枝からの出血を確認しえたためTAEを施行した.しかし4度目の下血を生じたため同部回腸の部分切除を施行した.切除標本にて中~小動脈を主体の壊死性血管炎を認め,結節性多発動脈炎の診断を得た.ステロイドパルス療法を開始し,併発した腎不全にはCHDFを行い治療したが,下血は治まらず,入院36日目(術後11日目)に永眠された.治療抵抗性の出血性腸炎に遭遇した場合,結節性多発動脈炎などの血管炎の可能性を念頭におき,より早期の診断および治療が肝要と考えられた.
  • 福原 研一朗, 大杉 治司, 竹村 雅至, 李 栄柱, 西川 隆之, 岩崎 洋
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2097-2100
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.右下腹部に疼痛と腫瘤を触知し,腹壁腫瘍の診断で生検を行ったところ,転移性腺癌と診断された.原発巣精査と加療目的に入院となった.上部・下部消化管内視鏡および小腸造影では異常所見は認められなかった. PET-CTにて左中腹部に集積を認め,空腸と推定されたため,小腸内視鏡検査を行ったところ, Treitz靭帯より約15cmの部位に全周性狭窄を伴う2型病変を認め,生検で中分化腺癌と診断された.他に多発性肺転移,腹壁転移も認められたが,腸閉塞の危険性があったため,小腸部分切除を施行した.術後順調に回復し,術後17日目よりTS-1による化学療法を開始した.原発巣精査にPET-CTは有用であり,術前に小腸内視鏡で確定診断が可能であった空腸癌の1切除例を経験したので報告する.
  • 中山 智英, 長谷川 直人, 小西 和哉, 阿部島 滋樹, 市村 龍之助, 金古 裕之
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2101-2104
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は3歳,男児. 2005年8月6日午後7時20分,自宅で玩具にて遊んでいる際,単5乾電池2個にて動いていた玩具の電池カバーがはずれており,そのうち1個を飲み込んだのを母親が目撃した.同日7時30分に当院救急外来を受診.救急外来到着時,呼吸苦や腹部症状はみられなかったが,腹部単純X線写真にて上腹部に誤飲した乾電池と思われる1×3cm大の陰影を確認.母親からの病歴聴取とあわせ乾電池の誤飲と診断した.透視下造影検査を行ったところ上部小腸まで乾電池が進んでいたため,緊急手術を施行した.下腹部正中切開にて開腹し,直視下に小腸まで進んでいた乾電池を確認.用手的に回盲部まで進め,虫垂切除術を施行し,虫垂切除断端より乾電池を摘出した.小児の筒型乾電池誤飲症例は報告が少なく,治療法も確立されていない.われわれは小児の筒型乾電池誤飲症例に対し,虫垂切除術を施行し摘出しえた1例を経験したので報告する.
  • 久保 直樹, 小松 大介, 鈴木 一史, 大町 俊哉, 黒田 孝井
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2105-2108
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の男性. 1日前より右下腹痛を主訴に当院を受診し右下腹部に圧痛と腹膜刺激症状を認めた.腹部単純X線写真で右下腹部に金属異物を認め, CT上も虫垂の拡張とその内部に同様の異物を認めた.金属異物の原因として2カ月前に誤飲した義歯が疑われ,これによる急性虫垂炎の診断で緊急手術を施行した.虫垂根部は拡張して内部に義歯を認め一部穿孔しており虫垂切除術,腹腔内洗浄ドレナージを施行した.虫垂内異物の迷入による虫垂炎は非常に稀で,今回われわれは誤飲した義歯が原因となった急性虫垂炎を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 吉田 達也, 増渕 正隆, 三森 教雄
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2109-2113
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は59歳, 50歳の女性,右鼠径部の腫瘤を自覚,徐々に同部の疼痛増強してきたため当科外来受診.術中所見では,虫垂が先端から2cmのところで大腿輪で絞扼され,そこより末梢の虚血性変化を認めた.同一創より虫垂切除術+大腿ヘルニア根治術(症例1: Moschcowitz法+iliopubic tract repair,症例2: McVay法)を施行.病理学的所見は,絞掘部より中枢は正常構造で,絞扼部より末梢では細菌性虫垂炎の所見はなく,絞扼のための循環不全による細血管の拡張像と全層性びまん性出血を認めた. 2例とも回盲部が後腹膜に固定されておらず,そのため虫垂先端が大腿輪付近まで接近し嵌頓したものと思われた.虫垂が嵌頓した場合でも腸内容の通過障害は起こりにくく,腸閉塞の合併が少ないのが特徴である.またその治療においては,虫垂切除というclean-contaminated operationを伴う手術であることからmeshの使用は可能な限り避けるべきと考える.
  • 田中 友香里, 森浦 滋明, 小林 一郎, 服部 弘太郎, 大城 泰平, 槇尾 真理
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2114-2116
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    虫垂のカルチノイドや粘液嚢胞腺腫は稀な疾患である.これらは虫垂切除術時に偶然発見されることが多い.今回虫垂のカルチノイドと粘液嚢胞腺腫の併存症例を経験したので報告する.症例は22歳,女性.過去3回,右下腹部痛の既往がある.再発性虫垂炎と考え虫垂切除術を施行し,病理組織診断にて,虫垂カルチノイドと虫垂粘液嚢胞腺腫と診断した.本邦3例目の症例報告である.
  • 茶谷 成, 前田 佳之, 田原 浩, 布袋 裕士, 三好 信和
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2117-2121
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,女性.慢性便秘があり, 3日前より排便がなかった.めまいを主訴に当院救急外来を受診.めまいの原因は不明であった.腹部は左下腹部圧迫時に軽度の不快感を訴えるのみであったが, CT検査にて腹腔内遊離ガス,後腹膜気腫,縦隔気腫,頸部皮下気腫を認めたため,消化管穿孔を疑い,緊急手術となった.開腹時,腹腔内および後腹膜腔内に汚染を認めなかったが,直腸に穿孔部位を認めた. Hartmann手術を行い,術後は重篤な経過をたどることはなかった.病理では穿孔部に憩室や悪性所見はなく,宿便性直腸穿孔と診断された.本症例は高度の硬便であるがゆえに直腸穿孔部からの糞便の漏出がなかったため,特記すべき腹部症状を認めず,術後も重篤な経過をたどることはなかった.
  • 間宮 規章, 大沼 淳, 千里 直之, 海老沢 良昭, 河野 透, 葛西 眞一
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2122-2126
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    後腹膜偽粘液腫を呈した右側結腸癌を経験したので報告する.症例は68歳,女性.右腰部の腫脹と熱感を主訴に,近医を受診し,右腰背部膿瘍の診断で当院に紹介となった. MRIでは右後腹膜腔から背筋にT2高信号域を認めた. CTでは,腹壁筋層を含む後腹膜腔右側に不整な造影効果を伴う壁をもつ低吸収域を認めた.膿瘍腔造影では,腔と上行結腸の交通が認められた.大腸内視鏡検査では粘液の豊富な2型病変として観察されたが,生検では明らかな腺癌の所見はとらえられなかった.注腸造影では盲腸から上行結腸にかけての2型病変が描出された.上行結腸粘液癌の穿通およびそれによる腰背部膿瘍を疑い手術を施行した.後腹膜に穿通する回盲部の腫瘤と後腹膜膿瘍を確認,膿瘍腔には膿汁とともに粘液が充満しており後腹膜偽粘液腫と考えられた.結腸右半切除・回腸人工肛門造設を行い,膿瘍は筋層とともに切除し筋層の欠損部に大網を充填した.
  • 村田 年弘, 荒田 尚, 中川 仁志, 田中屋 宏爾, 金川 泰一朗, 竹内 仁司
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2127-2131
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性. 60歳時, S状結腸癌,肝転移,胆嚢結石症の診断にて, S状結腸切除術,肝部分切除術,胆嚢摘出術を施行された.術後5カ月目に50歳時より繰り返していた肛門部痛を主訴に近医を受診,肛門周囲膿瘍の診断にて切開排膿を行われた.壊死組織の一部を病理検索したところadenocarcinomaと診断され,精査加療目的に当科紹介となった.肛門部には9時方向に不整な皮膚潰瘍,発赤腫脹を伴った鶏卵大の腫瘤を認めた.S状結腸癌の痔瘻内転移を考え手術を行った.手術は肛門周囲の皮膚の発赤部位も含め,腹会陰式直腸切断術を行った.肛門部の皮膚の欠損は大殿筋皮弁にて再建を行った.切除標本の病理組織所見では,痔瘻の腫瘍はS状結腸と同一の組織型であり, S状結腸癌の痔瘻内再発と考えられた. S状結腸癌の痔瘻内への転移は稀であり検討を加え報告する.
  • 平木 将紹, 森 倫人, 伊山 明宏, 米満 伸久
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2132-2135
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.約5年前に4型の進行胃癌に対し胃全摘術を施行.組織型は印環細胞癌を含む低分化腺癌で, pT3 (se), pN0, H0, P0, M0, Stage II, scirrhous type, ly1, v0,であった.術後補助化学療法として経口抗癌剤5'-DFURを2年間内服した.今回,下腹部痛,腹部膨満感を主訴に当院を受診.下部消化管造影で横行結腸脾彎曲部にapple core signを呈し,下部消化管内視鏡では全周性の高度狭窄を認め,粘膜は発赤浮腫状,易出血性であった.組織生検では印環細胞癌を含む低分化腺癌の診断で,原発性もしくは転移性大腸癌と診断し手術を施行した.術後病理診断は印環細胞癌を含む低分化腺癌であった.免疫組織検査では, CK7, CK19, MUC5ACは陽性で, CK20, MUC1, MUC2は陰性であった.原発巣と考えられる胃癌標本を再検討すると両者の組織型,免疫組織学的染色の結果が一致しており,胃癌の結腸転移と診断した.
  • 大川 由美, 三澤 一仁, 田口 和典, 菊地 一公, 武田 佳佐, 佐野 秀一
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2136-2141
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    乳癌消化管転移は初回転移では稀であり,消化管原発性腫瘍と鑑別が困難である.腹腔鏡下生検で鑑別可能であった乳癌大腸転移症例を報告する.症例は72歳,女性,腎結核による腎不全で透析中である.右乳癌(浸潤性小葉癌, T2N2MO: stage III) で胸筋温存的乳房切除術後9カ月目に右下腹部痛,便秘が出現した.注腸造影,消化管内視鏡,腹部CT検査で横行結腸転移が疑われたが確定診断は得られなかった.腹腔鏡で横行結腸脾彎曲部付近の壁硬化,腸間膜硬結,近傍リンパ節腫大を認め,腸問膜一部とリンパ節を採取した.組織検査から乳癌転移と診断した.乳癌大腸転移は初回診断が困難であり,内視鏡的生検でも鑑別不能な症例が多い.腹腔鏡下の漿膜側生検で診断確定できれば,速やかに化学療法を開始し侵襲が大きい手術を避けることが期待できる.
  • 中村 吉貴, 金田 邦彦, 和田 隆宏
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2142-2146
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    患者は57歳,女性.便潜血を主訴に当院内科を受診し,精査加療目的にて入院となった. 22年前の35歳時,卵巣癌手術を受け,その後,化学療法を施行されている.大腸内視鏡検査でRsに2cm大の, Raに1cm大の隆起性病変を認め,生検でいずれも腺癌と診断され,直腸癌の診断のもとに,手術目的にて外科転科となった.腫瘍はRsに一塊として触れ, D2郭清を伴う低位前方切除術を行った.摘出標本では腫瘍は漿膜側から浸潤しており,粘膜面に2カ所polypoid lesionを形成し,両者は深部で連続していた.病理組織所見では嚢胞変性を伴う乳頭状増殖を示す高分化型腺癌であった. 22年前の卵巣癌手術時の大網転移と組織像が一致したため卵巣癌の大腸転移と診断した.術後化学療法を施行し,現在,術後1年7カ月であるが,無再発生存中である.
  • 安井 隆晴, 沖野 秀宣, 鬼塚 幸治, 庄野 正規, 渡辺 次郎, 武田 成彰
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2147-2151
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の女性で,超音波検査で肝外側区域に径3cm大の腫瘤を指摘された.術前に肝細胞癌と診断し肝外側区域切除を行った.術後の病理診断で悪性リンパ腫 (MALT type) と診断された.肝以外には病変を認めず肝原発悪性リンパ腫と診断した.本邦での肝原発悪性リンパ腫報告例44例を集計し検討したところ,男女比は1対1, 年齢は29~87歳(平均59.2歳), HBVは5例, HCVは10例で陽性,全例がNon Hodgkin Lymphoma (B細胞型, 39例; T細胞型, 3例)であった.画像診断では超音波検査でhypoechoic,単純CTでlow density, MRIでT1強調画像でlow intensity, T2強調画像でhigh intensityとして描出される症例が多かった.治療方針に関して統計学的有意差は得られなかった(切除群n=20, 21.8±20.6m, vs非切除群, n=10, 18.8±17.3m; log rank test: p=0.5024). 化学療法,術後補助化学療法,放射線療法は症例数が少なくその治療効果に関して検討不能であり適切な治療方針を決定するためにはさらなる症例の蓄積が必要である.
  • 渋谷 和人, 坂東 正, 大西 康晴, 長田 拓哉, 山岸 文範, 塚田 一博
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2152-2156
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    自然壊死をきたした稀な肝細胞癌症例を経験したので報告する.症例は71歳の男性. C型慢性肝炎の診断で近医通院中であった.肝S5領域に腫瘤性病変を認め,肝細胞癌の診断で当科へ紹介入院の後,肝S5の部分切除術を施行した.肉眼的に病変は線維組織で取り囲まれた黄色の結節であり,病理学的所見では内部の組織は完全に壊死に陥っていた.術前の画像所見と腫瘍マーカーの推移に加え,標本の鍍銀染色に細網線維の残存が観察されたことや,抗ヘパトサイト抗体の陽性像などより,この壊死組織は自然壊死をきたした肝細胞癌であると考えられた.その機序として,血管造影に伴う内膜損傷による肝への血流の低下,免疫学的反応の関与が考えられた.文献上,同様な症例は6例であった.
  • 目黒 英二, 木村 聡元, 入野田 崇, 早川 善郎, 小林 慎, 高金 明典
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2157-2161
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    肝原発腺扁平上皮癌の1例を経験した.症例は61歳の男性で,右側腹部痛を主訴に来院.血液検査上Alp 1,140IU/ml, CEAが20.6ng/mlと上昇, CA19-9が10,000以上U/mlと高度上昇, AFPは1.4ng/mlと正常範囲内であり,肝炎ウイルスマーカーは陰性であった.腹部超音波,腹部CTにて肝右葉に径90mm大の腫瘤影を認め肝癌の診断で肝右葉切除術を施行.病理組織上,肝原発腺扁平上皮癌と診断した.術後3カ月目に骨転移再発にて死亡した.本症は腺棘細胞癌,腺扁平上皮癌,粘(液)表皮癌などの表現があり過去の報告を集計すると本疾患は1982年以降本邦で127例の報告がある.本疾患の組織発生については異所性扁平上皮由来説,腺上皮の扁平上皮化生説,腺癌の扁平上皮化生説などがあげられているが定説は確立されていない.本疾患は予後不良でいまだ手術術式や集学的治療に課題は多く,今後症例の集積検討が必要と考えられた.
  • 橋本 真治, 中郡 聡夫, 小西 大, 高橋 進一郎, 後藤田 直人, 木下 平, 落合 淳志
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2162-2167
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳の男性で,主訴はなし.検診で肝機能異常を指摘され,当院紹介受診.血液検査では肝胆道系酵素の軽度上昇を認めるのみで腫瘍マーカーは正常範囲内であった.画像検査にて門脈右枝と右肝管に直接浸潤を伴う後区域主座の5cm大の肝内胆管癌と診断し,門脈合併切除を伴う拡大肝右葉切除を施行した.切除標本の肉眼的検査所見は腫瘤形成型肝内胆管癌として矛盾しないもので,病理組織学的には腫瘍細胞は類上皮形態を呈する細胞と肉腫に類似した紡錘状形態を呈する細胞から構成され,一部に腺管構造成分を有した.免疫組織学的に腺癌様成分は上皮系マーカー,肉腫様部分は間葉系マーカーにより染色されたことから,肉腫様変化を伴う肝内胆管癌と診断した.第29病日に退院したが,術後10カ月目のCTで肝門部と傍大動脈リンパ節に再発を認め,術後16カ月目に死亡した.本邦報告14例と比較的稀な本疾患について若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 松本 壮平, 上山 直人
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2168-2171
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の女性.腹部腫瘤を主訴に近医より紹介となった.血液検査では特に異常を認めず, CT, MRI,血管造影などの画像診断より胆嚢癌の診断で手術を行った.術中所見で腫瘍は約10cm大であり横行結腸,横行結腸間膜,肝床部,十二指腸下行脚,膵鉤部に直接浸潤しており,根治手術は断念し胆嚢摘出術のみを行った.病理組織では紡錘形,類円形の腫瘍が充実性に配列し,免疫染色ではKeratin, EMAに陽性Vimentinに弱陽性を示し,胆嚢未分化癌と診断した.術後一旦退院したが,約2カ月で癌死した.胆嚢未分化癌は本邦では比較的稀な疾患であり,巨大に発育することが多く早期発見が困難である.根治手術の対象になるものが少なく,予後は非常に不良であり,1年以内に死亡する例が多数を占めている.
  • 北川 敬之, 金子 源吾, 堀米 直人, 平栗 学, 千賀 脩, 金井 信一郎
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2172-2176
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.ドックの腹部超音波検査で膵尾部に腫瘍性病変を指摘された. 4年前の腹部CTでは認められない,脾門部に近い膵尾部に存在する嚢胞性病変であった.これは充実性部分を伴い膵実質より強い造影効果を認めた.超音波内視鏡検査では肥厚が著明で不整な壁を有する嚢胞性病変であった.嚢胞変性を伴う無症候性膵内分泌腫瘍と診断し脾合併膵尾部切除術を施行した.病理診断では膵内副脾に生じたepithelial cystと診断された.膵尾部の嚢胞性疾患として比較的稀な疾患であるため,若干の文献的考察を含め報告する.
  • 林 伸洋, 杉本 琢哉, 仁田 豊生, 近藤 哲矢, 山本 淳史, 尾関 豊
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2177-2181
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性. 1994年8月に十二指腸下行部の粘膜下腫瘍に対し幽門輪温存膵頭十二指腸切除(以下, PPPD)およびChild変法による消化管再建術を施行した. 2年後から, CTで主膵管の拡張を認めるようになり, 6年後には主膵管径3cm, 9年後には4cmと拡張が増強した.粘液産生膵腫瘍も考えられたため10年後に再手術を施行した.膵空腸吻合部の癒着は容易に分離され,膵と空腸の両者に吻合口は認められなかった.主膵管を切開すると黄白色混濁液が貯留していた.迅速組織診で膵腫瘍性病変は存在しなかったため膵空腸再吻合術を施行し経過は良好であった.
  • 吉田 泰, 稲吉 厚, 八木 泰志, 有田 哲正
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2182-2185
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.上腹部不快感にて近医を受診.上部消化管内視鏡検査にて胃癌の診断であり,手術目的にて紹介受診された.上部消化管内視鏡検査にて胃癌は4型病変であり,生検にて印環細胞癌であった.腹部CT検査,超音波検査にて膵体尾部に腫瘤性病変を認めた. MRCPでは総胆管結石を認めるのみであったが, 3D-CT angiographyでは脾動静脈の途絶像を認めた.以上より胃膵重複癌の診断にて胃全摘+膵体尾脾合併切除術および総胆管切開術を施行した.病理学的検査にて膵病変は腺扁平上皮癌であった.胃癌の他臓器癌重複率は全悪性腫瘍のなかでも高いといわれているが,膵臓の重複率は低く,なかでも膵腺扁平上皮癌の合併は検索しうる限り本症例が初めてである.今回,われわれは極めて稀な症例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.
  • 田中 覚, 平松 昌子, 岩本 充彦, 住吉 一浩, 谷川 允彦
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2186-2190
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    化学療法後に孤立性に再燃した,卵巣癌術後脾転移の1例を報告するとともに, 2005年11月までの卵巣癌孤立性脾転移の本邦報告例と自験例を含めた14例について検討した.
    70歳,女性, 2002年7月,当院産婦人科にて左卵巣癌に対し準広汎子宮全摘術, CDDPによる抗癌剤腹腔内投与(IP)および術後化学療(Paclitaxel+Carboplatin: TJ療法)が施行された.術前の腹部CTで脾転移および腹膜播種性病変を認めていたが,術中,術後の化学療法によりそれらは一旦消失した. 2003年9月よりCT上再度脾転移が顕性化し,次第に増大した.しかし,他に再発病変を認めず脾に限局していたため手術適応と判断し, 2005年1月に脾摘術を施行した.脾の転移巣の抗癌剤感受性検査において, Paclitaxelは0%であった.
    本症例では,播種巣はIPおよびTJ療法により完全にコントロールされていたが, Paclitaxeiに抵抗性をもった脾の転移細胞が再燃したものと考えられた.
  • 木村 真五, 櫻井 直樹, 山内 淳一郎, 渋間 久, 池田 栄一
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2191-2195
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    内臓動脈解離は稀であり,中でも,特発性腹腔動脈解離の報告例はわずかである.今回,長期間経過観察が可能であった2例の自験例について報告する.症例1は50歳男性.突然の左側腹部痛を自覚し,当院を受診した.腹部CTで脾梗塞をみとめ入院となったが,その後のCTで,腹腔動脈からはじまり総肝動脈・脾動脈・左胃動脈にかけて動脈解離をみとめ,これによる脾梗塞と診断した.症例2は46歳男性.昼食後,突然上腹部に激痛が出現した.鎮痛剤の内服で症状が軽快したため精査を受けなかったが,発症から18日目に施行された結腸癌術後のfollow up CTで,腹腔動脈から脾動脈に解離腔を発見され腹腔動脈解離と診断された. 2症例とも経過観察とし,現在まで,腹痛などの症状はなく,解離腔の縮小傾向を認めている.これまで,腹腔動脈解離に関して,長期間観察しえた報告はなく,また,その過程を画像上で確認することができたことから興味深い症例であると考えられる.
  • 渡辺 正明, 高橋 周作, 広瀬 邦弘, 佐治 裕
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2196-2201
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は認知症のため他院に入院中であった85歳,女性. 2004年6月21日腹痛が出現.腹部X線写真で腸閉塞の所見を認めた. 23日下血が認められたため,精査加療目的に当院外科に紹介された.身体所見では腹部は膨隆し,著明な腹膜刺激症状を認めた.腹部CT検査で,門脈内のガス像を認め,腹水を認めた.汎発性腹膜炎の診断で,発症からおよそ53時間後に緊急手術を施行した.開腹所見ではTreitz靭帯から結腸脾彎曲までの広範囲の腸管壊死を認め,門脈内ガス血症を伴う上腸間膜動脈閉塞症であった.小腸全切除術,拡大結腸右半切除術,空腸瘻造設術を施行した.術後経過は良好で,術後20日で他院に軽快転院した.門脈内ガス血症を伴う上腸間膜動脈閉塞症は救命率が非常に低く,予後不良である.われわれの検索しえた限り本邦での救命例は,本症例を含め9例の報告のみである.文献的考察を加え報告する.
  • 八木 斎和, 高橋 清嗣, 奥田 直人, 市川 健次
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2202-2206
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は48歳の女性で, 2006年1月初旬に腹痛,嘔吐,下痢が出現したため当院を受診した.右下腹部に軽度圧痛を認めたが,腹膜刺激症状は認めなかった.腹部単純X線・腹部CTでイレウス像を呈しており,イレウス管を挿入し保存的治療を開始した.イレウス管造影で右下腹部に回腸の狭窄部を認め,内ヘルニアを疑って入院9日目に開腹術を施行した.回腸末端より約2m口側の回腸が回腸終末部背側の腸間膜にRichter型に嵌頓・癒着していた.腸管に色調不良や器質的狭窄を認めなかったため癒着剥離のみ施行した.剥離後に観察すると小腸間膜後葉に3.5×2.0cmの欠損部を認めたが,前葉には穿通していなかった.腸間膜欠損部は縫合閉鎖した.手術所見からRichter型の小腸間膜内ヘルニアと診断した.術後経過は良好で,術翌日より経口摂取を開始し術後8日目に軽快退院した.
  • 北山 佳弘, 余田 洋右, 岡本 信洋
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2207-2210
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は94歳,女性.嘔吐と腹部膨満を主訴に来院.血液検査で軽度の炎症所見と画像検査で小腸の拡張に加え腸管壁の肥厚を認めた.また来院時よりショック状態であり急性腹症の診断のもと緊急開腹術を施行した.手術所見ではTreitz靭帯より50cmの空腸から約150cmに渡って壊死しており,空腸壊死部を全切除し残存回腸と側々吻合術を施行した.病理組織所見では壊死部腸管周囲血管内に血栓やフィブリノイド変性はなく血管炎や腸間膜動・静脈血栓症は否定的で非閉塞性腸間膜虚血症(non-occlusive mesenteric ischemia;以下NOMI)と診断した.術後は敗血症性ショック,多臓器不全の診断にて人工呼吸管理に加え,エンドトキシン吸着療法(PMX-DHP),血液濾過透析(HDF)の集中治療を行った.その後順調に回復し,術後第7病日より食事を開始,第48病日に退院した.
  • 松原 猛人, 幡谷 潔, 桜井 修, 小池 康, 町田 宏, 吉澤 康男
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2211-2214
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,男性.平成15年1月下旬,腹部膨満感,上腹部痛を主訴に近医受診し,腸閉塞と診断され当院紹介入院となった.腹部CT検査にてWinslow孔ヘルニアと診断された. long tubeを挿入し,自然整復を期待したが改善せず,翌日緊急手術を行った.手術所見では,Treitz靭帯より約200cm肛門側の小腸がWinslow孔から網嚢内に50cmにわたり嵌入し絞扼されていた. long tubeを嵌入部まで誘導し,腸管内容物を吸引することにより容易に用手整復がなされた.腸管壊死はみられず腸切除は不要であった. Winslow孔は2横指と軽度開大していたが,縫縮は行わなかった.その他の異常は認められなかった. Winslow孔ヘルニアは内ヘルニアの約8%と極めて稀な疾患であり,自検例を含めた本邦報告例39例を集計し,その臨床的特徴について検討した.
  • 北東 大督, 岡山 順司, 久下 博之, 小川 護仁, 辰巳 満俊
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2215-2219
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    非常に稀な大網原発デスモイドが鼠径ヘルニアの内容として発症した1例を経験したので報告する.症例は70歳,男性. 67歳時に前立腺癌に対し前立腺全摘術を施行され当院泌尿器科通院中,右鼠径部に手拳大の膨隆を認め当科に紹介された.膨隆部は全体的に軟であったが,内部に3cm大の弾性硬の腫瘤を触知した.腹部CT検査では腹腔内から内鼠径輪を通り陰嚢に達する脂肪の脱出とその内部に2.5×2.5cm大のisodensityな腫瘤像を認め,非還納性鼠径ヘルニアの診断で手術を行った.ヘルニア内容は大網であり,大網原発の白色腫瘤を伴っていた.脱出した大網と腫瘤を切除し,メッシュプラグ法を行った.腫瘤は組織学的にデスモイドであった.大網原発デスモイドは本邦では2例が報告されているのみである.
  • 横井 一樹, 森 俊明, 完山 泰章, 伊藤 不二男, 鈴木 祐一, 木村 次郎
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2220-2224
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は21歳の女性,右下腹部痛にて当科を受診した.腹部CT, 超音波検査にて右下腹部に長径5cmの脂肪成分を主体とする腫瘍を認め,奇形腫を疑った.捻転による血行障害や感染も否定できなかったため,緊急手術を施行した.盲腸の外側に大網に発生した腫瘍を認め,大網を茎として捻転していた.大網の一部を付けて腫瘍を切除した.両側卵巣には異常を認めなかった.病理組織検査にて内部には卵巣白体や毛髪,嚢胞壁には角化成分を認め,成熟した組織からなる成熟嚢胞性奇形腫と診断した.極めて稀な大網成熟嚢胞性奇形腫の捻転の1例を経験したので報告する.
  • 藤岡 憲, 石榑 清, 岡村 行泰, 堀場 隆雄, 平井 敦, 伊藤 洋一
    2006 年 67 巻 9 号 p. 2225-2227
    発行日: 2006/09/25
    公開日: 2009/01/22
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.平成17年11月,直腸癌 (Rs) に対し低位前方切除術を受けた.術後1カ月で下腹部痛と腰痛が出現した.さらに突然の乏尿とBUN,クレアチニンの上昇,腹部CT上両側水腎症を認めた.逆行性腎盂造影検査では,両側尿管の全周性狭窄像と,内側への圧排像を認めた.後腹膜線維症の診断で,プレドニゾロン10mg/day内服を開始し,右尿管にステントを留置したところ,尿量増加, BUN,クレアチニンの正常化が速やかにみられ,腰痛も改善した.後腹膜線維症は後腹膜に慢性炎症性の線維組織の増殖が生じたものであり,尿管,血管の狭窄・閉塞をきたし,水腎症を契機に発見されることが多い.約70%は原因不明であるが,悪性腫瘍や感染,薬剤などとの関連も示唆されている.原因不明の両側水腎症に対して本疾患を疑い,早期に治療することが重要と思われた.
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