日本臨床外科学会雑誌
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68 巻 , 1 号
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原著
  • 最相 晋輔, 佐藤 弘, 根本 昌之, 坪佐 恭宏
    2007 年 68 巻 1 号 p. 1-7
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    目的 : 胸部食道癌手術の周術期栄養管理において, 術後早期経腸栄養 (EN) の安全性を検討し, 当科で行っている高カロリー輸液 (TPN) を用いない術後早期ENと末梢輸液による管理について報告する. 対象 : 2002年9月から2005年12月に, 胸部食道癌に対して開胸開腹食道亜全摘術を施行した90例中, ENと末梢輸液で管理した32例. 結果 : ENは25例 (78.1%) で術後1日目に, 6例 (18.8%) で術後2日目に開始した. 術後循環動態の変動をきたした症例の増加はなく, TPN症例と比較しても術後経過や合併症に差はなかった. ENの合併症は腹部膨満や下痢を認めたが, いずれも軽症であった. また, EN症例で術後体重減少が抑制される傾向にあった. 考察 : 胸部食道癌に対する開胸開腹食道亜全摘術後においても術後早期ENは安全に施行可能であった. 当科における術後栄養管理はTPNからTPN・EN併用, そしてEN・末梢輸液へ移行したが, 術後経過・合併症に差はなく, 妥当な変遷と思われた.
  • 川村 秀樹, 近藤 征文, 岡田 邦明, 石津 寛之, 益子 博幸, 秦 庸壮, 田中 浩一, 三木 敏嗣, 山上 英樹, 本間 重紀, 植 ...
    2007 年 68 巻 1 号 p. 8-13
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    合併症の早期発見, 予測を可能にするツールとしてクリティカルパスを発展させるためにバリアンスを利用した.
    バリアンスに明確な基準を設けるために2003年4月から2003年12月に施行した胃切除例で合併症のない66例の日々のバイタルサインを集積し, 各指標の90パーセンタイル値をバリアンス基準値とした. 2005年2月から2005年12月に胃切除を行った120例で実際にクリティカルパスを使用した.
    バリアンスは70/120例 (58.3%) に発生し, その内, 合併症が発生したものは31/70例 (44.3%) であった. 合併症発生例とバリアンスの関係をみると15/31例 (48.4%) は合併症発生日以前にバリアンスが発生し, 他は合併症発生日と同日に発生していた. 逆にバリアンスの発生しなかった症例では合併症が発生しなかった.
    この結果からわれわれのクリティカルパスにより合併症の早期発見, 予測が可能になると考えられた.
  • 曽我 耕次, 井川 理, 飯塚 亮二, 宮田 圭吾, 藤井 宏二, 下間 正隆, 泉 浩, 竹中 温
    2007 年 68 巻 1 号 p. 14-17
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    われわれは, 1998年6月から小児の急性虫垂炎に対して腹腔鏡下虫垂切除術を第1選択として導入し2003年6月までに49例 (LA群) を経験した. それ以前に施行した開腹虫垂切除術 (OA群) 43例と手術時間, 抗生剤, 使用期間, 発熱期間, 絶食期間, 入院期間, 術後合併症について, カタル性, 蜂窩織炎性, 壊疽性あるいは穿孔性に分け比較検討した.
    手術時間はLA群で有意に長かった. 術後経過では抗生剤使用期間, 発熱期間, 絶食期間, 入院期間, 術後合併症に関してはいずれも有意差は認められなかった. OA群では1例, LA群では2例に遺残膿瘍を認めた. LA群で生じた遺残膿瘍症例は2例とも大量洗浄を行っていた. 術後遺残膿瘍は鏡視下症例において有意に生じるとはいえないが, 洗浄の方法, 量について今後検討が必要であると考えられた. 腹腔内を十分に観察でき, 創の延長も行わないので整容性に優れており今後も選択肢の1つとして認識することが重要であると考えられた.
  • 阪本 雄一郎, 益子 邦洋, 朽方 規喜, 山本 保博
    2007 年 68 巻 1 号 p. 18-22
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    背景 : 重症外傷患者の治療戦略としてDCS (damage control surgery) の重要性が報告されているが, 当科では実践的で簡便なスコア (血圧90以下, BE-7.5以下, 体温35度以下) を用いてDCSの決断を行っている. また, 重症膵損傷の治療方針に関する本邦のガイドラインは示されていない. 目的 : III型膵損傷の治療方針を示すとともに当科のDCS決断スコアの妥当性を検討する. 対象と方法 : 12例のIII型膵損傷手術症例を対象に, DCS施行群 (A群) と非施行群 (B群) に分け転帰, 術式, 平均DCSスコア等を比較検討. 結果 : IIIa型の術式は膵体尾部切除術で良好な転帰で, IIIb型でDCSスコア2項目以下の症例も全例救命しえていた. 平均DCSスコアはA群において有意に高かった. 考察 : III型膵損傷に対しても当科のDCSの決断基準は妥当であり, 根治的術式はIIIa型で膵体尾部切除術, IIIb型は膵頭十二指腸切除術等の術式が望ましい.
症例
  • 渡辺 直樹, 大多和 泰幸
    2007 年 68 巻 1 号 p. 23-26
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    はじめに : 非反回神経は0.3~1.6%の確率で主に右側に発生する. われわれは非反回神経に加えて, 通常の反回神経も同時に存在する稀な症例を経験した. 症例 : 56歳, 女性. 家族歴, 既往歴 : 特記事項なし. 現病歴 : 人間ドックで甲状腺腫を指摘され外科受診された. 超音波検査で甲状腺右葉に4.22×1.66cmの腫瘤を認め, 外観上頸部に突出しており, サイズが大きいことから手術の方針となった. 手術所見 : 頸部横切開にて腫瘍にアプローチした. 左反回神経は通常通りの走行であった. 右側では非反回神経を認め, 上甲状腺動脈に沿って迷走神経から喉頭へ直接流入していた. 同時に通常の走行をしている, 対側と比べて明らかに細い右反回神経がこれに合流しているのを確認した. これら神経はすべて温存し, 左の上極を温存する亜全摘を行った. 術後嗄声は認めていない.
  • 野口 卓郎, 高橋 弘昌, 高橋 将人, 細田 充主, 佐々木 彩実, 藤堂 省
    2007 年 68 巻 1 号 p. 27-30
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は70歳, 男性. 1982年, 前頸部に約11×6cm大の腫瘤を認め, 当科を初診し, 針生検にて甲状腺乳頭癌, T3N3M0 (現取扱い規約上T4aN1bM0) と診断された. 術後の永久気管瘻がほぼ不可避との説明を受け, 手術を拒否し, 以降外来を受診していなかった. 2006年4月, 前頸部に突出する皮下腫瘤からの淡血性液の噴出を認め, 当科を受診し即日入院となった. 全身状態は良好であり, 直ちに腫瘤穿刺により嚢胞液500mlを吸引したが, 翌日には元の大きさに戻り緊急手術の方針となった. 甲状腺峡部から左葉にかけて約11×15cm大の嚢胞性腫瘤を認め, 皮下にも進展していた. 可及的に気管浸潤部を剥離し甲状腺峡部左葉切除術施行した. 術後, 嗄声, 誤飲なく経過は良好で, 第7病日に頸部ドレーン抜去後, 滲出液等貯留なく, 第12病日に退院となった. 24年間の自然経過により巨大嚢胞を形成した甲状腺乳頭癌の1切除例を経験したので報告する.
  • 山口 敏之, 井原 頌, 荻原 裕明, 高田 学, 小松 信男, 橋本 晋一, 小山 正道
    2007 年 68 巻 1 号 p. 31-35
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は64歳, 女性. 左肩腫瘤のため当科を受診した. 腫瘤は硬く境界明瞭, 可動性良好で直径1.5×1.0cm大, ドーム状に突出, 隆起しており直上の皮膚に異常認めなかった. 超音波検査において内部に一部hyperechoicな部を有する境界明瞭でhypoechoicな楕円形の腫瘤として, またMRI検査においてT1強調画像でやや高信号を呈し中央が低信号, T2強調画像で内部にリング状の高信号域を有する低信号の境界明瞭な腫瘤として描出された. 局所麻酔下に摘出を行い, 病理学的検索を行ったところ重層扁平上皮で裏装された単房性の嚢胞で, 重層扁平上皮には顆粒層はなくtrichilemmal cystと診断された.
  • 松田 英祐, 岡部 和倫, 松岡 隆久, 平澤 克敏, 東 俊考, 杉 和郎
    2007 年 68 巻 1 号 p. 36-39
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は22歳, 男性. 2005年9月中旬より嚥下困難を自覚するようになり近医を受診した. その際, 胸部CT検査にて縦隔リンパ節の腫大を指摘された. 精査, 加療を目的に当院へ紹介となった. 入院時検査所見では, CRPが1.34mg/mlと軽度上昇していた. 胸部CT所見では上縦隔と気管分岐部のリンパ節の腫大を認めたが, 肺野には異常を認めなかった. 食道造影検査では中部食道の圧排所見を認めた. 画像所見からは, サルコイドーシスまたは悪性リンパ腫が疑われた. 喀痰検査では結核菌は認めなかった. 確定診断を目的に10月, 胸腔鏡下にリンパ節生検を行った. 術中にリンパ節から膿汁の排出を認め, G7号であった. 病理組織診断にて抗酸菌病変であり, PCRにて結核菌を認めた. 以上から縦隔リンパ節結核と診断した. 現在, 結核に対する化学療法中である.
  • 辻本 雄太, 塩野 知志, 加藤 博久, 佐藤 徹
    2007 年 68 巻 1 号 p. 40-43
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    当院で経験した特発性縦隔気腫の3例について検討した. 症例は全例20歳代の男性で, 胸痛を主訴として受診し, 理学的所見上皮下気腫を触知した. また胸部単純X線写真あるいは胸部単純CTにて縦隔気腫を確認した. 治療は3例とも安静および消炎鎮痛薬投与で保存的に軽快し, いずれの症例においても現在まで再発を認めていない. 急激に発生する若年男性の胸痛では, 本疾患も鑑別に挙げる必要があると考えられる.
  • 添田 暢俊, 大石 明雄, 樋口 光徳, 山田 文彦, 今野 修, 芳賀 甚市
    2007 年 68 巻 1 号 p. 44-48
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は17歳, 男性. 既往歴に2~6歳, 肺炎にて4, 5回入院. 平成17年10月, 呼吸困難があり, 前医を受診. 胸部レントゲン写真にて左気胸と診断し, 胸腔ドレナージを施行した. 気漏が止まらず, 当院へ転院. 胸部CT検査では右肺は萎縮し, 右上葉に大きな嚢胞があった. 心陰影は右方へ偏位していた. 左肺は胸腔ドレナージされていたが充分に広がりきれなかった. また, 左肺は過膨脹し, 上前縦隔を越えて反対側に脱出していた. 胸腔造影では左上肺野に持続的に空気が漏れる部位を同定した. 以上から縦隔ヘルニアに合併した左気胸と診断した. 手術では, 左S6に気漏を伴うブラがあり, 胸腔鏡補助下にブラ縫縮術を施行した. 術後9日目, 経過良好にて退院した. 術後呼吸機能検査にて混合性換気障害があった. 現在, 術後9カ月が経過し, 気胸の再発はなく, 縦隔ヘルニアに関して経過観察中である.
  • 太田 正穂, 中村 努, 小熊 英俊, 成宮 孝祐, 工藤 健司, 山本 雅一
    2007 年 68 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    59歳, 女性. 本人希望にて全身PET検診を受診したところ, 上部食道への集積亢進を指摘された. 食道造影で食道Ut領域左壁に表面平滑な隆起性病変を認め, 食道内視鏡では上切歯より20cmの食道左壁に表面平滑で正常上皮に完全に被覆された粘膜下腫瘍を認めた. 胸部CTでは食道Ut領域で左上方に突出するように直径20mm大の造影効果に乏しい腫瘍であり, 超音波内視鏡では内部が一様な低エコーの腫瘍として描出された. 食道平滑筋腫を最も疑い腫瘍摘出術を施行した. 病理組織学的にはHE染色では卵円形の核を有する紡錘形細胞が柵状配列を示し, 免疫染色でS-100蛋白陽性, Vimentin陽性で, c-kitは陰性であり神経鞘腫と診断した. 明らかな悪性所見はなかった. 文献的考察からも神経鞘腫は良性であってもFDG-PETでの集積亢進がしばしばみられ, 悪性所見の評価は組織診断によらなければ難しいことが示唆された.
  • 真田 克也, 柴田 稔, 杉原 健一
    2007 年 68 巻 1 号 p. 54-57
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は48歳, 男性. 前日夕方より嘔気出現し食事が摂取できなかった. 翌朝トイレで意識レベルが低下しているところを発見された. 血液データで貧血を認め, 上部消化管出血によるショックを疑い胃内視鏡検査施行. 胃内に黒色の凝血塊を多量に認めたが, 明らかな出血源は不明だった. 翌日胃内視鏡検査を再度施行した所, 胃角部対側に中心に潰瘍がある腫瘤を認め, 粘膜下腫瘍の潰瘍形成による出血と診断した. 腫瘤切除のため腹腔鏡補助下胃部分切除術を施行. 腫瘤の大きさは3×2cmで中心に陥凹を形成されていた. 粘膜下層から漿膜下層に相当する部位にランゲルハンス島, 腺房細胞, 導管を有するHeinrich I型の異所性膵組織を認めた. 悪性所見はなかった.
    胃の迷入膵は稀に出血性ショックをおこす程出血することを考慮して治療に当たらなければならないと考えた.
  • 桐山 茂久, 谷 眞至, 勝田 将裕, 岩橋 誠, 中村 公紀, 山上 裕機
    2007 年 68 巻 1 号 p. 58-61
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は38歳, 男性. 食物通過障害を主訴に近医を受診したところ上腹部嚢胞性病変を指摘されたため, 精査加療目的にて当科紹介となった. 腹部CTでは胃噴門部に5.5cmの嚢胞性病変を認めた. 食物通過障害があり, 血清CA19-9が367.8U/mlと高値を示したため, 胃噴門部の消化管重複症の診断で下部食道・噴門側胃切除術, 空腸間置再建を施行した. 病理組織学的検査所見で胃病変は線毛円柱上皮で被覆され外側に筋層を伴う嚢胞であり, 胃重複症と診断した. 悪性化の所見はなかった. 消化管重複症は稀な疾患であり, 組織学的にも発生学的にも多彩であるといわれている. 今回われわれが経験した胃嚢胞性病変は通常の消化管粘膜ではない線毛円柱上皮で覆われており, いわゆる前腸嚢胞と考えられ, 消化管重複症の原因が原始前腸の分離異常や呼吸器原基の迷入によるものであることを示唆する1例と考えられた.
  • 村上 茂樹, 磯崎 博司, 庄 達夫, 石原 清宏, 酒井 邦彦, 山本 泰久
    2007 年 68 巻 1 号 p. 62-66
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は75歳, 女性. 右乳房腫瘤の精査加療目的にて来院. 術前検査にて右乳房腫瘤は乳癌と診断した. また胃潰瘍治療中であったため内視鏡検査を行ったところ, 体上部に約5cm大の潰瘍性病変を認めた. 生検では診断できなかったが, 胃原発悪性リンパ腫を疑い, 右乳房切除と同時に胃全摘術, 脾合併切除術を行った. 胃病変は粘膜下に広がっており全径12×10.5cmで, さらに体中部前壁漿膜面に径4.5×4cmの白色扁平隆起があり, 乳腺腫瘤径は2.5×2.3cmであった. 病理診断は, 各病変ともにdiffuse mixed type NHL, peripheral T cell lymphomaと診断された. 胃所属リンパ節および腋下リンパ節に転移は認めなかった. 他院にて化学療法を施行した. 術後9カ月目右胸壁と肝に再発したが, 高容量化学療法にて寛解した. 術後3年10カ月目の脳髄膜腫術後にMRSA感染による敗血症にて死の転帰をとるまで, 再発は認めなかった.
  • 森藤 雅彦, 中井 志郎, 藤本 三喜夫, 宮本 勝也, 横山 雄二郎, 中村 浩之
    2007 年 68 巻 1 号 p. 67-71
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の男性. 平成13年11月, 胃体上部後壁に周堤を伴う潰瘍病変を認めたが, 生検では悪性所見は認めなかった. 抗潰瘍剤内服で経過観察していたが, CT, MRI, 超音波検査でも粘膜下腫瘍様に隆起した病変は依然として認められ, 発症から約6カ月後にEMR併用生検を施行したところ, Epstein Barr virus (EBV) 感染関連のlymphoepithelioma (LE) like carcinoma of stomach (group V) と診断された. 手術適応と診断され, 幽門側胃切除, D2郭清を施行, 再建はBillroth I法で行った. 術後経過は良好で第20病日目に退院となった. 現在術後4年経過しているが, 再発所見は認められない.
  • 森田 泰弘, 高見 実, 松本 潤, 足立 健介, 南 智仁
    2007 年 68 巻 1 号 p. 72-75
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, 胃癌を合併した皮膚筋炎の4例を経験したので報告する. 症例1は皮膚筋炎診断後, 9年目に検診で発見された早期胃癌で, 術後皮膚筋炎の病状変化なく, 無再発生存中である. 症例2は間質性肺炎を契機に診断された胃癌合併皮膚筋炎で, 術後間質性肺炎の増悪を認めるも, ステロイドにて軽快し, 現在無再発生存中である. 症例3, 4はともに皮膚症状にて診断された胃癌合併皮膚筋炎で, 症例3は術後に皮膚筋炎症状の改善なく, 術後160日目に死亡, 症例4は術後皮膚筋炎の症状軽快するも, 術後2カ月で多発性肝転移出現し, 術後248日目に死亡した. 悪性腫瘍合併皮膚筋炎は悪性腫瘍切除後に症状軽快するという報告が多いが, 症例によっては手術の意義が乏しい場合もあり, 皮膚筋炎の症状を改善させるために, 安易に手術をするのではなく, 十分に適応を検討する必要がある.
  • 大森 浩志, 大沼 秀行, 仁尾 義則, 佐藤 仁俊, 田窪 健二, 武田 博士
    2007 年 68 巻 1 号 p. 76-80
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は62歳, 男性. 2004年6月検診の胃透視で異常を指摘, 胃内視鏡にて胃体中部に2型腫瘍を認め, 低分化腺癌の診断で10月幽門保存胃切除を行った. 術直後の病理診断も同様であり, 補助療法としてTS-1 100mg/日を開始したが, 術後2カ月目に横紋筋肉腫への分化傾向を伴う胃癌肉腫に診断が訂正された. 術後2.5カ月目に, 多発性肝転移と腫瘍からの腹腔内出血を認めたため動脈塞栓療法に続いてドセタキセル60mg/body DIVとサイクロフォスファミド50mg/日の内服による化学療法を開始, その後エプルビシン30mg/body DIVを追加した. 化学療法によって一時的には腫瘍マーカーとしてのCK-MB値に反応がみられたが, CT画像ではほとんど効果はなく, 手術より7カ月目に永眠された. 胃癌肉腫は非常に稀な疾患であり, 悪性度の高い疾患である. 術後の迅速な病理診断はもとより, 症例の蓄積によって有効な化学療法を検索することが急務である.
  • 上田 祐華, 呑村 孝之, 寺岡 義布史, 有田 道典, 岡本 有三, 吉岡 伸吉郎
    2007 年 68 巻 1 号 p. 81-85
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は56歳, 男性. 急性腹症で発症し上腸間膜動脈 (superior mesenteric artery : 以下SMAと略す) 解離と診断され, 同時に総肝動脈瘤も指摘されていた. 保存的治療で軽快し2年間, 経過観察中であったところ, 下血により胃癌が発見された. 今回, われわれは, 胃癌に対しては幽門側胃切除術を, 総肝動脈瘤に対しては瘤切除および血行再建術を行った. SMA解離は血栓化しているためそのままとした. 大動脈解離を伴わない孤立性のSMA解離は極めて稀な疾患である. また, 近年, 画像診断の進歩により総肝動脈瘤の発見は増えつつあるものの症状に乏しいため診断されにくく, 破裂時には救命率が低いと報告されている. われわれは, 孤立性上腸間膜動脈解離や, 総肝動脈瘤といったその一つのみを有していても稀な疾患を重複併存した胃癌手術症例を経験したので報告する.
  • 高田 英輝, 佐藤 榮作, 所 隆昌, 折原 明, 松永 研吾
    2007 年 68 巻 1 号 p. 86-90
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳, 男性. 食欲不振を主訴に受診. 胃内視鏡検査で胃体上部から前庭部に腫瘍を認め胃癌と診断された. 画像検査では肝転移と膵への直接浸潤を認め根治手術不可能と判断し化学療法を優先した. 採血検査では感染症を合併していなかったが白血球の高値を示したためG-CSF産生腫瘍を疑った. 抗癌剤治療開始後白血球の減少を認めたため, 血清G-CSFを測定したところ87pg/mlと高値を示していた. その後, 化学療法が著効しそれに伴ってG-CSFも低下して行った. 化学療法を2クール行い, 血液検査ではCEAの低下を認め, また画像検査でも腫瘍の縮小を認めPRと判断した. しかし, 3クール目をおこなった時点にて, CEAの上昇を認めたため, 手術を施行した. 切除した胃腫瘍の病理組織学的検査では腫瘍細胞がG-CSF免疫染色にて陽性であることよりG-CSF産生胃癌と診断した.
  • 久世 真悟, 北村 宏, 伴野 仁, 中澤 秀雄, 林 英司, 伊藤 靖
    2007 年 68 巻 1 号 p. 91-94
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 男性. 腹痛を主訴に近医受診. ショック状態となり当院救急紹介. 来院時収縮期血圧66mmHgで上腹部を中心に腹部全体に圧痛および筋性防御を認めた. 腹部CTにて膵頭部背側, 小腸間膜に広がる後腹膜血腫を認め, 膵頭部下方に造影剤のextravasationを認めた. 血管造影にて膵十二指腸動脈瘤の破裂と診断しコイルによる塞栓術を施行した. TAE後, 血腫の圧迫による十二指腸狭窄が出現し, 絶食, 経鼻胃管, 高カロリー輸液にて保存的に治療していたが, 深在性真菌症を発症した. 抗真菌剤による治療とともに, 十二指腸狭窄も保存的に軽快した.
  • 沖野 哲也, 古谷 政一, 清水 康仁, 松田 明久, 新井 政男, 田尻 孝
    2007 年 68 巻 1 号 p. 95-98
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    残胃全摘後の小腸穿孔に対しT-tube留置が有効であった稀な1例を経験したので報告する. 症例は69歳, 男性. 上腹部痛を主訴に当院受診した. 胃潰瘍にて胃切除術 (Billroth II法) の既往歴あり. 胃内視鏡検査にて胃空腸吻合部に2型腫瘍を認め, 残胃癌の診断で残胃全摘術 (Roux-en-Y法), 脾摘, 胆摘術を施行した. 術後第7病日, 腹腔内に留置したドレーンより混濁した黄色の排液を認め, 縫合不全の診断で再手術となった. 縫合不全は認めず, Y吻合より約3cm十二指腸断端側の空腸に直径15mmの穿孔を認めた. 穿孔部は炎症が強く, Treitz靭帯とY吻合からの距離が短く腸切除, 縫合閉鎖できないため, drainage目的でT-tubeを留置し, 再手術後第50病日に抜去した. 検索した範囲では, 本邦においてT-tube drainageで対処できた小腸穿孔の報告はなかった. 一期的な縫合閉鎖が困難な小腸穿孔においてT-tube留置法は有用な方法であると考えられた.
  • 石引 佳郎, 根上 直樹, 北畠 俊顕, 藤澤 稔, 浦尾 正彦, 児島 邦明, 江口 正信
    2007 年 68 巻 1 号 p. 99-102
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は35歳の女性. 平成17年8月13日より腹痛を自覚するようになり, さらに8月17日より嘔吐も出現するため, 当院を受診した. 腸閉塞と診断され緊急入院となった. イレウスと診断し, 入院後イレウス管を挿入した. イレウス管造影検査で回腸末端の狭窄像と腹部CT検査で回盲部の腫瘤像を認めたため, 回腸子宮内膜症による腸閉塞と診断し開腹手術を施行した. 開腹所見では黄色透明の腹水を少量認め, ダグラス窩左側は子宮, チョコレート嚢胞およびS状結腸が癒着するfrozen pelvisの状態であった. 回腸末端が盲腸に強固に癒着しており, 剥離不可能であったため回盲部切除術を施行した. 回腸子宮内膜症は術前に診断を確定することは非常に困難とされているが, 今回, イレウス管造影検査と腹部CT検査で術前の診断が可能であったので報告した.
  • 大嶋 勉, 池内 浩基, 外賀 真, 野田 雅史, 柳 秀憲, 山村 武平
    2007 年 68 巻 1 号 p. 103-106
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    今回われわれは, Crohn病の診断のもと手術を行ったが, 術後に回腸原発のsignet ring cell carcinomaと確定診断された極めて稀な症例を経験したので報告する. 症例は45歳, 男性. 腹痛・嘔吐出現し近医にて腸閉塞の診断のもと保存的加療されるも改善傾向なく, 小腸造影検査にてCrohn病を疑われたため当院転院となった. Crohn病に伴う小腸狭窄の診断のもと開腹手術を施行. 回腸末端に約15cmにわたる壁の硬化と著明な狭窄を認め, 回盲部切除術を施行した. 切除標本にても縦走潰瘍を認め, Crohn病が最も考えられたが, 病理組織学的検査にてsignet ring cell carcinomaと診断された. 術後に全身検索するも原発巣と考えられる病変を認めず, 回腸原発と診断した. 術後化学療法を施行したが2年後に腹膜播種をきたし, 2年3カ月後に死亡した. 症例の集積による適切な術式・化学療法の確立が望まれる.
  • 橋口 忠典, 石引 佳郎, 松村 理史, 大坊 昌史
    2007 年 68 巻 1 号 p. 107-110
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は88歳, 女性. 腹痛と嘔吐を主訴に救急外来を受診した. 来院時に腹部全体が膨隆し下腹部に圧痛を認めた. 腸閉塞と診断し, 腹部刺激症状がなかったためイレウス管を挿入し保存的に治療を行った. 腹部所見は改善したが, 腹部単純X線では拡張した小腸は残存していた. 腹部CT上, 拡張した小腸は盲腸の背側に位置していたため, 盲腸周囲ヘルニア嵌頓によるイレウスと診断し緊急手術を行った. 手術所見では回腸末端から口側180cmの部位で約5cmの小腸が盲腸後窩に嵌頓していた. 嵌頓していた小腸を部分切除後, ヘルニア門を閉鎖した. 盲腸周囲ヘルニアは比較的稀な疾患であり術前診断は困難であるとされている. 今回われわれは, 術前診断が可能であった盲腸周囲ヘルニアを経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 茶谷 成, 前田 佳之, 加藤 楽, 田原 浩, 布袋 裕士, 三好 信和
    2007 年 68 巻 1 号 p. 111-115
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は71歳, 男性. 下顎歯肉腫瘤を主訴に来院し, 諸検査にて胃癌術後に下顎歯肉癌と食道癌の同時性重複癌が発見された3重複癌と診断された. 左頸部および右鎖骨上窩には有意なリンパ節腫大を認めた. 下顎歯肉癌は生検時に取りきれていた. 右半結腸再建を伴う胸部食道亜全摘を施行後, 病理組織診断で, 食道は進達度smの扁平上皮癌であったが, 再建の際に切徐された虫垂の病理診断で好銀性カルチノイドが発見された. カルチノイドは粘膜固有層に限局しており, 断端陰性で, 予後良好な好銀性カルチノイドと診断されたことから, 追加切除は行わない方針とした. その後左頸部および右鎖骨上窩のリンパ節郭清を行い, 右鎖骨上窩のリンパ節残存部に放射線照射を施行した. 術後1年2カ月後の現在, 食道癌, 下顎歯肉癌, 虫垂カルチノイドそれぞれの再発や新たな転移巣の出現は認められていない. また, 残存した右鎖骨上窩リンパ節の増大傾向もなく経過している.
  • 長山 裕之, 中尾 健太郎, 林 征洋, 有吉 朋丈, 角田 明良, 草野 満夫
    2007 年 68 巻 1 号 p. 116-120
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    成人に発症した大腸重複症の1例を経験した. 症例は37歳, 男性, 腹痛を主訴に来院. 腹部レントゲン, CTにて大腸重複症を疑い, 注腸造影にて限局管状型で交通性のS状結腸重複症と診断した. 重複腸管を遊離し, 正常大腸の辺縁動脈を温存, 自動縫合器にて重複腸管のみを切除した. 最近15年間の本邦報告例を検討すると, 管状型の大腸重複症は全て交通性であり, 本疾患を念頭において検査を進めることにより術前診断は可能と考えられた. また同形態の大腸重複症は自動縫合器で切除可能であった. 限局管状型で交通性の大腸重複症は術前診断が可能で自動縫合器にて切除できることから, 腹腔鏡下手術が可能と考えられた.
  • 岡本 信彦, 山藤 和夫, 松井 淳一, 馬場 秀雄, 秋好 沢林, 及川 太
    2007 年 68 巻 1 号 p. 121-124
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    患者は68歳の男性で, 胃癌精査中にS状結腸憩室炎をきたし保存的に治療した. 憩室炎は改善し, 胃癌に対し幽門側胃切除術を行った. 術中所見では下腹部正中にS状結腸が強く癒着していたがあきらかな膿瘍形成は認めなかった. 胃切除後の経過は順調で術後7日目にガストログラフィンによる注腸造影を施行し, 狭窄, 瘻孔を認めなかった. 術後13日目に軽快退院したが, 退院3週間後より下腹部の疼痛を認めた. 炎症反応が高値であったことから抗菌剤で経過観察したが, 下腹部正中の皮膚発赤を認めるようになり, 再入院の上切開排膿した. 排膿後, 創は瘻孔化し洗浄を行ったが保存的に閉鎖は困難であった. 瘻孔を含めS状結腸切除を施行した. 術後経過は良好で, 術後10日目に軽快退院した. S状結腸憩室炎が前腹壁へ瘻孔を形成することは非常に稀であるが, 保存的瘻孔閉鎖は困難で, 手術による切除が有効であると考えられた.
  • 重川 崇, 石黒 めぐみ, 上野 秀樹, 橋口 陽二郎, 望月 英隆
    2007 年 68 巻 1 号 p. 125-130
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    悪性線維性組織球腫 (malignant fibrous histiocytoma ; MFH) は四肢に好発する軟部腫瘍で, 大腸原発例は極めて稀である. 今回われわれは, S状結腸より発生し, イレウスの原因となったMFHの1切除例を経験した. 症例は55歳, 女性. 体重減少, 下腹部膨満感を主訴に当院内科初診後, 当科紹介受診. 腹部X線にてイレウス所見を呈しており, 同日緊急入院となった. 大腸内視鏡下にて経肛門的に減圧チューブを挿入し口側腸管を減圧後, 開腹手術施行. S状結腸を主座とした可動性のある, 表面平滑な腫瘤を完全に摘出した. 病理診断はS状結腸粘膜下原発のMFHで切除断端は陰性あった. 大腸原発のMFHはわれわれが検索しえた範囲ではこれまでに本症例も含めて22例の報告があるのみである. 化学療法および放射線療法の有用性は不明であるため補助療法は施行していない. 現在術後5カ月であるが、無再発生存中である.
  • 高瀬 恒信, 原田 明生, 矢口 豊久, 梶川 真樹, 中山 茂樹
    2007 年 68 巻 1 号 p. 131-135
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    直腸間質腫瘍 (gastrointestinal stromal tumor : 以下GISTと略記) の切除1年7カ月後に閉鎖リンパ節再発を生じメシル酸イマチニブが奏効した1例を経験した. 症例は62歳の男性で, 主訴は肛門部痛. 腹部CT, MRIで下部直腸, 肛門管に管腔を圧排する径7cmの腫瘍を認めた. 経肛門的生検にて紡錘形細胞の発育を認め核分裂像が散見されることよりGISTを疑い2001年2月に腹会陰式直腸切断術を施行した. 切除標本の免疫染色にてc-kit陽性, 直腸原発のGISTと診断した. 1年7カ月後に右臀部から大腿内側に放散する閉鎖神経圧迫症状が出現しMRIにて右閉鎖リンパ節再発と診断した. 2003年4月よりメシル酸イマチニブ400mg/日を投与開始したところ6カ月後に腫瘍は縮小し自覚症状も改善した. 直腸GISTのリンパ節再発は稀であるがメシル酸イマチニブが有効であると考えられた.
  • 大西 顕司, 上田 順彦, 千田 勝紀, 中川原 寿俊, 吉光 裕, 澤 敏治
    2007 年 68 巻 1 号 p. 136-141
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は21歳, 女性. 主訴は下腹部痛, 下痢. 血液検査では若干の貧血を認めたが, 腫瘍マーカーは正常であった. 下部消化管内視鏡検査にて横行結腸に全周性の3型の腫瘍を認め, 生検で印環細胞癌と診断された. 手術所見では, 腫瘍は漿膜面に露出し, P2の状態であった. 直腸低位前方切除を伴う大腸亜全摘, 子宮・付属器合併切除, 脾部から骨盤内の壁側腹膜切除後, 持続温熱腹膜灌流療法 (42℃60分) を施行した. 病理組織診断はsignet ring cell carcinoma, se, ly3, v2, n (+) で, 腹膜および両側卵巣に転移を認めた. 術後はLV+5-FUによる全身化学療法を1年間, その後TS-1の経口を1年間施行した. しかし術後25カ月頃より, 腰痛, 両下肢痛を認めるようになった. 血液検査で播種性血管内凝固症候群 (DIC) の所見と, MRIのT2強調像では腰椎から仙椎, 腸骨に多発性に骨転移を認め, 播種性骨髄癌症と診断した. MTX+5-FUによる化学療法をするも著効せず, 術後27カ月で死亡した.
  • 坂本 千尋, 石川 博文, 右田 和寛, 大山 孝雄, 山本 克彦, 渡辺 明彦
    2007 年 68 巻 1 号 p. 142-145
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は50歳代の男性. 上腹部痛を主訴に近医を受診し下部消化管内視鏡検査にて横行結腸肝彎曲に腫瘤を指摘された. 精査加療目的に平成17年4月当科に入院した. 腹部CTにて傍大動脈リンパ節の腫大を認め, 傍大動脈周囲リンパ節転移を伴う横行結腸癌の診断にて横行結腸切除術, リンパ節郭清を施行した. 腫瘍は境界不明瞭で潰瘍形成を伴わない5型を呈していた. 病理組織診断では腺扁平上皮癌であり, 郭清したすべてのリンパ節に転移を認めstageIV (SE, H0, P0, M1) であった. 術後は早期より一日20行以上の下痢を認め, 縫合不全から消化管皮膚瘻を形成したが保存的に軽快し, 術後75日目に退院した. 現在は外来にて化学療法を施行中である. 腺扁平上皮癌は結腸での発生は稀であり, 悪性度が高く予後不良であるとされる. 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 大場 大, 松木 伸夫, 鰺坂 秀之, 伊井 徹, 三輪 晃一
    2007 年 68 巻 1 号 p. 146-150
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は67歳, 女性. 主訴は下血, 便秘. 平成17年6月下旬頃より上記症状を認め, 近医を受診. 注腸X線検査にてS状結腸領域にapple-core signを認め当科に紹介. 術前の血清CEA値が372.1ng/mlと異常高値を示し, 再検でも402.7ng/mlであった. 明らかな転移所見, 重複癌の所見は認めず, 進行直腸S状部癌に対し腹腔鏡補助下低位前方切除術 (D3) を施行. 総合所見はRS, type3, 60×50mm, tub2, SS, ly1, v0, N0, H0, P0, M0, Stage II. 術後補助化学療法は, 再発高リスクstage IIとしてS-1療法を選択. CK7/CK20免染ではCK7-/CK20+, CD10, MUC発現はCD10 (-), MUC5AC (-), MUC1 (-), MUC2 (++). 術後1年経過した現在, 血清CEA値は正常化し再発はみられていない. 大腸癌では, 術前の血清CEA値が独立した予後因子とされているが, 本症例のように異常高値を示しても, 癌の形質発現の観点から良好な予後が期待できる場合もある.
  • 高橋 由至, 田中 宣威, 瀬谷 知子, 寺田 淑恵, 田尻 孝
    2007 年 68 巻 1 号 p. 151-155
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は82歳, 女性. 掻痒を伴う外陰部靡爛を主訴として来院した. 直腸肛門管に腫瘍は認められなかったが, 生検組織による免疫組織化学染色にてサイトケラチン (CK) 20が陽性だったため肛囲から外陰部に進展した直腸肛門管癌によるPaget様進展と診断し骨盤内臓器全摘術を行った. 摘出標本にてCK7, CK20陽性, gross cystic disease fluid protein15 (GCDFP15) 陰性を示すも, 直腸肛門管癌を認めず臨床経過から肛囲から外陰部へと進展した乳房外Paget病を最終診断とした. 肛囲Paget病でCK20陽性/GCDFP15陰性の場合, 直腸肛門管癌を合併する続発性が極めて多く原発性は稀である. CK20陽性/GCDFP15陰性で直腸肛門管に腫瘍が認められない場合, その術式を決定することは非常に困難であり, 根治性, 患者の全身状態, そしてQOLを考慮し適応を決定すべきである.
  • 野尻 和典, 池 秀之, 齊藤 修治, 今田 敏夫, 山腰 英紀, 嶋田 紘
    2007 年 68 巻 1 号 p. 156-160
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性. 25年来の痔瘻を有し, 2004年6月痔瘻根治術目的に近医受診. 術前の大腸内視鏡検査で下行結腸, S状結腸, 直腸に腫瘍を認め生検の結果中分化腺癌と判明. 同年8月3日結腸左半切除, 直腸部分切除術を施行した. 術後外来経過観察中肛門部の硬結が増大したため痔瘻部の穿刺吸引細胞診を施行したところadenocarcinoma group Vと診断された. 手術は画像上明らかな側方・鼠径リンパ節転移を認めなかったことおよび患者が直腸切断術を拒否したため, 肛門部腫瘍の局所切除術を施行した. 病理組織学的には中分化腺癌であり結腸癌の管腔内転移による転移性痔瘻癌と診断した. 大腸癌患者に痔瘻を有する場合には, 転移性痔瘻癌の発生も考慮に入れた経過観察が必要である.
  • 濱津 隆之, 楠本 哲也, 福田 篤, 中島 明彦, 松浦 弘
    2007 年 68 巻 1 号 p. 161-165
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は56歳, 女性で, 3カ月で1cmから9cmまで急速に増大した左乳腺葉状腫瘍に対して2003年11月左乳房単純切除術を施行し, その2カ月後の2004年1月のCTで左肺下葉転移 (3個, 4.5cm, 1cm, 1cm) を認めたため2004年2月6日に左肺下葉切除術を追加した. その後は1カ月ごとにCTを行ったところ, 2004年6月 (初回手術より7カ月) には腹腔内転移 (肝前面) を示唆する所見を認めたため2004年6月15日に開腹術を追加した. 術中所見として腫瘍は5cm大で, 表面平滑, 辺縁不整であり内部は出血・壊死も認めた. 腫瘍は肝円索より発生しており一部腹壁に浸潤していたため腹壁も合併切除した. 肝円索転移術後現在まで20カ月間, 再発を認めない.
  • 工藤 真司, 吉見 富洋, 朝戸 裕二, 加藤 容二郎, 井村 穣二
    2007 年 68 巻 1 号 p. 166-171
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は46歳, 男性. 平成15年7月, 黄疸が出現し近医に入院となった. 膵頭部近傍に6cm大の腫瘤が認められた. 門脈への浸潤が疑われ, 手術適応はないと判断された. 8月にセカンドオピニオンで当院に紹介入院となった. 精査の結果, 門脈浸潤を伴う十二指腸粘膜下腫瘍と診断され, 開腹手術が実施された. 門脈背側約3cmにわたり腫瘍の浸潤が疑われたため, 門脈合併切除を伴う幽門輪温存膵頭十二指腸切除術が実施された. 病理組織診断はparagangliomaであった. その後の画像検査で肝転移が疑われたため, 平成16年1月, 肝S6およびS5部分切除術が実施された. 病理組織診断はparagangliomaの肝転移であった. 現在, 第2回目手術から1年10カ月を経て再発なく生存中である.
  • 太田 英夫, 永野 浩昭, 梅下 浩司, 若狭 研一, 門田 守人
    2007 年 68 巻 1 号 p. 172-178
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は52歳, 男性. 1999年2月, 門脈内腫瘍栓を伴う進行肝癌に対し, 肝前区域切除, S4, S7部分切除術, 門脈内腫瘍栓摘出および肝動脈内挿管術を施行した. 術後組織学的診断は, 混合型肝癌 (Combined hepatocellular and cholangiocarcinoma) で, vp4, b1, im1, t4, n0, m0, stage IV-Aであった. インターフェロン受容体 (IFN-R) の発現は, 肝細胞癌成分で陽性, 胆管細胞癌で陰性であった. 術後2カ月目よりIFN併用動注化学療法を施行したが, 術後8カ月目にCA19-9の再上昇と腹部CTより, 残肝多発再発が指摘されたため, 再発巣に対し, IFN併用化学療法から, 三剤併用の動注化学療法に変更したところ, PIVKA-IIの上昇も認め, 最終的に癌死した. 本症例の術後経過と病理像より, IFN併用化学療法の治療効果とIFN-Rの発現との相関に関する興味深い知見を得た.
  • 太田 竜, 黒木 信善, 古賀 浩木, 田中 聡也, 北原 賢二
    2007 年 68 巻 1 号 p. 179-183
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は73歳, 男性. 腹痛あり近医を受診. CEA, CA19-9高値を指摘され, 精査目的にて紹介となった. 腹部超音波, 腹部CT検査にて肝左葉に8cm大の腫瘍を認めた. MRCPでは, 左肝管が腫瘍により狭窄し, 末梢の肝内胆管は拡張していた. 血管造影では明らかな腫瘍濃染像はなく, 門脈左枝に浸潤が疑われた. 以上より左肝内胆管癌の診断にて肝左葉切除術, リンパ節郭清を施行した. 腫瘍は8×6cm大, 白色調で硬く比較的境界明瞭であった. 内部不均一で被膜の形成はなかった. 病理組織診では, PAS陽性の淡明な胞体を持つ腫瘍細胞を認め, 明細胞型肝内胆管癌の診断であった. 免疫組織染色ではCA19-9, cytokeratin19およびSudan IIIが陽性であった. 明細胞型肝内胆管癌は極めて稀な肝腫瘍であり, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 増田 亨, 濱口 哲也, 寺邊 政宏, 藤岡 正樹
    2007 年 68 巻 1 号 p. 184-187
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    胆管癌の術後再発は, 予後不良である. われわれは胆管癌切除後に異時性に胸壁転移と腹膜転移をきたし, 2度の切除後6年経過で無再発例を経験しえた. 症例は70歳, 女性. 主訴は発熱, 右季肋部痛. 平成10年当院に入院し, PTCD施行後胆汁細胞診の結果, 胆管癌と診断され, 平成11年2月膵頭十二指腸切除術を施行した. 高分化管状腺癌でリンパ節転移はなかった. 同12月PTCD挿入部の右胸壁に転移再発きたし, 胸壁腫瘍切除を行った. 病理結果は胸壁転移と診断された. 平成12年3月右腹部痛をきたし, 腹部CTで右下腹部に3カ所の腹膜転移を指摘された. 同4月右半結腸切除を行った. 病理結果は腹膜転移であった. 胆管癌の術後再発例でも切除にて本例のように予後良好なものがある.
  • 坂本 照尚, 本城 総一郎, 五明 良仁, 栗栖 泰郎, 岩永 幸夫, 長崎 真琴
    2007 年 68 巻 1 号 p. 188-190
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    慢性膵炎を背景に生じたと思われる特発性脾破裂の1例を経験したので報告する. 症例は40歳代, 男性で突然の下腹部痛を主訴に当院救急外来を受診した. 腹部CTで脾臓に多数の低吸収域と腹腔内出血を認めた他, 膵体尾部に嚢胞性病変を認めた. 脾腫瘍破裂による腹腔内出血と診断し緊急手術を施行した. 腹腔内に2,600mlの出血および凝血塊が貯留していた. 脾は腫大し下極に破裂が生じていた. 膵は肉眼的に慢性膵炎の所見で, 膵尾部の嚢胞壁を脾臓につけて脾臓を摘出した. 摘出標本および割面所見では大小多数の血腫があるのみであった. 病理組織学的所見では脾門部に強い炎症があり, 脾全体に被膜炎を呈していた. 腫瘍性病変はなかった. 外傷の既往はなく, 慢性膵炎の脾臓への波及により生じた特発性脾破裂と診断した. 脾臓摘出後敗血症を懸念すると, 可能であれば脾を温存し, 後に脾腫瘍と診断した場合, 脾臓摘出術を追加するのが望ましいと考えられた.
  • 冨田 広, 金子 和弘, 牧野 春彦
    2007 年 68 巻 1 号 p. 191-195
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は59歳, 男性. 体重減少の原因精査目的で腹部CT施行. 腹部大動脈の左側, 胃の背側, 膵の頭側に境界明瞭, 辺縁がわずかにエンハンスされる直径5cmの腫瘤を指摘された. 腹部エコー, GTF, ERCP, エコー内視鏡, 腹部血管造影などの検査を施行したが, 確定診断には至らなかった. 胃GISTが最も疑われ, 手術を施行した. 術中所見にて胃原発腫瘍ではなく, 膵由来の腫瘍と考え, 膵体尾部切除術, 脾摘出術を施行した. 切除標本の検索により脾動脈瘤の診断となった. 動脈瘤内は凝血塊が充満し, 器質化しており, 脾動脈との血流は途絶していたものと推測され, そのため腹部血管造影でも診断できなかったものと考えられた. 脾動脈瘤は比較的稀な疾患であるが, そのほとんどは腹部血管造影で確定診断される. 腹部血管造影で診断できない脾動脈瘤は稀である. 脾動脈近傍の腫瘤はたとえ腹部血管造影で造影されなくても脾動脈瘤の可能性を考慮する必要がある.
  • 湯浅 康弘, 石川 正志, 一森 敏弘, 沖津 宏, 木村 秀, 阪田 章聖
    2007 年 68 巻 1 号 p. 196-200
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性. 2006年2月背部痛, 冷汗を伴うショック症状のため当院に救急搬送された. 腹部エコー, CTで上腸間膜静脈から肝内に広汎な門脈ガスを認めた. 腸間膜血管の血流障害による壊死を疑い, 腹部血管造影を行ったが, 特記事項はなかった. ショックから離脱し理学所見にも乏しく, 保存的加療を選択した. 入院翌日のCTで門脈ガスは減少したものの, 回腸から上行結腸にかけての浮腫や腹水が出現したため緊急開腹術を施行した. 回腸末端から50cm程度口側に斑状に壊死した回腸を認め, 病変部位を含めた結腸右半切除を行った. 術後経過は良好で, 術後第12病日軽快退院した. 術後病理組織でも血管内に血栓形成を認めず, 非閉塞性腸間膜虚血症 (NOMI) と診断した. 門脈ガス血症は予後不良の徴候であり, 本例のような著明な門脈ガスを呈したNOMIで経時的変化を追えた症例は稀であり文献的考察を加え報告する.
  • 小林 慎二郎, 大橋 正樹, 天満 信夫, 矢川 陽介
    2007 年 68 巻 1 号 p. 201-204
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は20歳, 女性. 11年前に慢性虫垂炎にて虫垂切除術を施行されていた. 平成18年1月, 右下腹部痛を主訴に当院を受診した. 虫垂切除後の創部に強い圧痛と反跳痛を認め, 同部の筋膜下に腹部超音波検査でlow echoic space, 腹部CT検査でlow density areaを認めた. 画像所見から腹壁膿瘍と診断し, 手術を施行した. 膿瘍が腹腔内に穿破しないように腹腔鏡で確認しながら経皮的にドレナージを行った. 術後7日目に退院, 現在までに膿瘍の再発は認めていない. 虫垂切除から10年以上経過後に発症した希少な腹壁膿瘍の1例を経験したので報告する.
  • 斉藤 拓康, 小出 直彦, 鈴木 彰, 浅野 功治, 宮川 眞一
    2007 年 68 巻 1 号 p. 205-209
    発行日: 2007/01/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は50歳, 男性. 平成17年1月頃より便柱の細小化を自覚した. 同年9月に近医を受診し, 直腸腫瘍疑いにて当科紹介となった. 直腸指診では直腸後壁から両側方にかけて表面平滑, 弾性硬の腫瘤を触知した. 骨盤部CTで前仙骨部に7cm×7cmの嚢胞性病変を認めた. 骨盤部MRIでは腫瘍はT1強調像で低信号, T2強調像で高信号であった. 前仙骨部のdevelopmental cystを疑い, 経仙骨的腫瘍摘出術を施行した. 病理組織学的検査では, 嚢胞壁は異型に乏しい重層扁平上皮で覆われており, 内容物は角化物であった. 嚢胞壁には明らかな皮膚付属器の構造を認めず, epidermoid cystと診断された. 前仙骨部の嚢胞性腫瘤はdevelopmental cystと定義され, そのうちのepidermoid cystは, 扁平上皮癌の発生が報告されており外科的切除する必要があると考えられた.
Letters to the Editor
編集後記
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