日本臨床外科学会雑誌
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68 巻 , 7 号
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原著
  • 貝沼 修, 山本 宏, 浅野 武秀, 永田 松夫, 滝口 伸浩, 早田 浩明, 趙 明浩
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1637-1641
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    ガーゼ遺残を防ぐためにはガーゼを使わないことが一つの解決策であり, 小ガーゼを使わず大ガーゼと吸引のみで行う手術 (小ガーゼ不使用群 : n=50) と小ガーゼ, 大ガーゼ, 吸引の全てを使う手術 (従来法群 : n=50) をprospectiveに比較検討した. 原疾患によらず出血量, 手術時間は両群間に差を認めなかった. ガーゼカウント回数は従来法群3.8回, 小ガーゼ不使用群2.4回と小ガーゼ不使用群で有意に少なかった. 数え間違いも含めたガーゼカウントの不一致は従来法群で12例 (24%) にみられたのに対し, 小ガーゼ不使用群では1例も認めなかった. 従来法群のガーゼカウントの不一致は, 出血量およびガーゼ使用枚数が多い症例に多かった. 看護師のアンケートでは小ガーゼを使わない手術はガーゼカウントが簡便, 出血量の把握が容易, 血液への暴露が少ない, ガーゼ遺残のリスクが減少と好評であった. 小ガーゼを使わなくても従来と変わらない手術が可能であり, 医療安全および業務の簡素化の面からも本法は推奨される.
  • 小松 俊一郎, 長谷川 洋, 坂本 英至, 広松 孝, 河合 清貴, 田畑 智丈, 夏目 誠治, 青葉 太郎, 岸 真司
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1642-1648
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    われわれは外科手術に対応する電子入力用のテンプレートを作成し, 診療録記載とデータベース作成を一期的に行っている. これを利用した継続的なsurgical site infection (SSI) サーベイランスの有用性につき検討する. 対象 : 2001年1月から2006年6月まで, 当科で施行された腹腔鏡下大腸切除術の待機手術症例611例. 方法 : 当院では各部署に院内local area network (LAN) の端末が設置されているが, ペーパーレスの電子カルテは導入されていない. FileMaker Pro 7.0を用い, すべての端末からサーバーにアクセス可能とした. 術前評価, 手術記録等の診療録用レイアウトを作成し, 選択型式で簡単に入力できるようにした. 診療録記載とデータベースへの入力を可能な限り一元化した. 癌取扱い規約等の一般的な項目に加え, surgical site infection (SSI) に関連する項目を盛り込んだ. 結果 : 腹腔鏡下大腸手術の件数の増加に伴い, 2003年頃より創感染等SSIの発生率が上昇した. SSIおよび創感染の発生率はサーベイランス開始後に有意な低下を認めた. 多変量解析の結果, SSI, 創感染発生の両者でSSIサーベイランスの開始時期が独立した有意な関連因子として抽出された. 結語 : 電子記載に基づくSSIサーベイランスが有用であることが示唆された.
症例
  • 冨澤 勇貴, 池田 健一郎, 新田 浩幸, 伊藤 直子, 小笠原 聡, 若林 剛
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1649-1653
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    経皮内視鏡的胃瘻造設術 (PEG) は経口摂取困難な患者の長期経腸栄養管理法として一般的に普及しているが, PEG造設が困難な場合がある. そのような症例に対して, 経皮経食道胃管挿入術 (PTEG) が行われるようになってきた. 経口摂取困難でPEG造設困難な頭頸部癌患者に対するPTEGの有用性を検討した. 2004年1月から2005年12月までに当科および関連施設でPTEGを行った37名中, 頭頸部癌患者は6名 (上顎癌1名, 中咽頭癌1名, 下咽頭癌3名, 咽頭癌1名) であった. 6名中5名で造設可能であった. 経腸栄養を開始後, 3名が退院, 2名が転院となった. 造設不能であった1名は強固な狭窄と蛇行を伴っており, バルーンカテーテルが挿入不能であった. PEG造設困難な頭頸部癌患者に対するPTEGは低侵襲かつ有用な胃管挿入法であり, 経口摂取が困難となった場合は完全狭窄となる前に試みるべき手技と考えられた.
  • 伊藤 研一, 藤田 知之, 前野 一真, 望月 靖弘, 藤森 実, 天野 純
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1654-1659
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    内頸静脈内に腫瘍塞栓を形成した甲状腺未分化癌症例で, 原発巣および腫瘍塞栓を含む内頸静脈を合併切除し, 比較的良好な予後を得ている症例を経験した. 症例は77歳, 女性. 前頸部腫脹を主訴に近医を受診し, 針生検検査で甲状腺未分化癌と診断された. 術前の超音波およびCT検査で甲状腺左葉に36×16×32mm大の腫瘍と左内頸静脈内に40×14×10mm大の腫瘍塞栓を認め, 甲状腺全摘, 左内頸静脈合併切除および頸部郭清を行った. 術後全頸部に60Gyの放射線外照射を行い, その後エピルビシン, エトポシド併用化学療法を1回施行したが, 術後現在まで23カ月再発を認めていない. 未分化癌は, 頸部から縦隔で周囲臓器への著明な浸潤を伴う急速増大を呈し, 発見時には既に切除不能となっている症例が多く, 検索しえた限りでは腫瘍塞栓を合併切除しえた未分化癌の報告は認められない. 稀有な症例と考え報告した.
  • 雄谷 慎吾, 宮田 完志, 湯浅 典博, 後藤 康友, 藤野 雅彦, 小林 陽一郎
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1660-1664
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例1は60歳, 女性. 10年前に左乳腺腫瘤摘出術を施行された. 腫瘤が再び出現し増大傾向のため受診. 5.5×5.0cm大の境界明瞭, 低エコーの腫瘤であり, 穿刺吸引細胞診にて癌陰性であった. 腫瘤摘出術を施行した. 病理組織学的診断はpseudoangiomatous stromal hyperplasia (PASH) であった. 症例2は50歳, 女性. 平成14年に当科で右乳腺腫瘤摘出術を施行した. 線維腺腫の診断であった. 2年後, 同部位に再発し摘出術を施行した. 病理組織学的診断はPASHであり, 初回摘出標本も再検討の結果線維腺腫の周囲にPASHを認めた. なお, 症例2はさらに再々発をきたした. 免疫組織学的染色では, ともに間質の紡錐形細胞はCD34一部陽性, α-SMA陽性, desmin陽性であった. われわれが経験した症例2は再発例であり, 症例1は再発した可能性があるため, PASHは術後慎重に経過観察する必要があろうと考えた.
  • 我部 敦, 石川 清司, 照屋 孝夫, 花城 直次, 川畑 勉, 大田 守雄
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1665-1669
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    肺犬糸状虫症の発症過程を推察できた症例を経験したので症例を提示する. 75歳の女性. 住民検診の胸部X線写真で右下肺野の結節影を指摘され, 精査のため紹介された. 精査中に対側肺下葉に新たな浸潤影が出現し, 漸次結節影へと変化していった. 生活歴、免疫学的検査で肺犬糸状虫症が疑われた. 右肺下葉の病変を胸腔鏡下に切除し, 本症の確定診断を得た. 対側肺の画像所見は, 本症の発症過程を表現する画像として貴重な所見と考える.
  • 関 みな子, 金井 歳雄, 中川 基人, 松本 圭五, 小柳 和夫
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1670-1674
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    肺動静脈奇形 (arteriovenous malformation, AVM) の破裂により血胸をきたした症例を経験した. 患者は27歳, 男性で, 数時間継続する気分不快を主訴に来院, 一時意識消失をきたした. 胸腔内大量出血による出血性ショックと診断し緊急手術を施行したが, 出血源は不明であった. 術後改めて精査をすすめ, 肺AVMの破裂による血胸と判明し, 待機的に病巣の切除を施行した. 非外傷性血胸の症例では, 肺AVMの破裂による胸腔内出血の可能性を念頭に置いて, 適切な診断と治療を行うことが必要である.
  • 松岡 隆久, 杉 和郎, 松田 英祐, 岡部 和倫, 平澤 克敏, 村上 知之
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1675-1679
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は44歳, 男性. 前医で胸部X線写真およびCT上異常陰影を指摘され, 増大傾向を認めたため当院に紹介となった. 胸部X線写真およびCT上右下肺野横隔膜に接するように約3cm大の楕円形の腫瘤陰影を認めた. 術前診断は縦隔腫瘍あるいはSFTの診断のもと手術を施行した. 腫瘍は右中葉臓側胸膜原発で茎は広基型であり, 胸腔鏡下 (VATS) 右中葉部分切除術を行った. 摘出標本では腫瘍径φ33×23mm, 白色充実性弾性硬腫瘤で被膜を認めた. 術後病理では良性性格の孤立性線維性腫瘍 (SFT) と診断された. 現在, 術後1年になるが再発を認めず外来経過観察中である.
  • 真崎 茂法, 樫山 基矢, 吉田 信, 高木 拓実, 石後岡 正弘, 河島 秀昭
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1680-1684
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は54歳, 女性. 義歯を誤飲し当院受診. 上部消化管内視鏡検査を施行, 胃前庭部に有鈎義歯を認めた. 内視鏡的摘出を試みたが抵抗あり, 下部食道に数mmの穿孔を生じた. 縦隔炎を発症し保存的治療を開始したが縦隔膿瘍となり開腹にて胃内異物除去・食道穿孔部縫合閉鎖・大網充填・縦隔・胸腔ドレナージ術を施行した. 術後高熱, 炎症反応高値が続き食道の縫合不全を併発しドレナージに長期間を要した. 治療に難渋したが保存的治療にて軽快し, 退院となった. 今回の症例をふまえ, 消化管異物とりわけ有鈎義歯の適切な治療方針について文献的考察を加え報告する.
  • 十倉 正朗, 上坂 邦夫, 勢馬 佳彦, 藤原 澄夫, 嶋田 安秀
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1685-1689
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    われわれは食道胃接合部小彎に食道から胃にかかるZeifer分類III型の粘膜裂創と胃破裂を伴うMallory-Weiss症候群 (以下M-W症候群) を経験した. 症例は84歳, 男性で, 誘因は高位胃潰瘍の出血による吐血と考えられた.
    M-W症候群の裂創はほとんどが胃固有筋層までにとどまり, 漿膜以上に達することが少ないため特発性食道破裂と鑑別を要するが, 本症例は, (1) Zeifer分類III型の粘膜裂創を伴い, (2) CT画像上, 破裂は食道・胃接合部胃側小彎側であること, (3) CTで気腫像が下部後縦隔より後腹膜に多くみられたことから, M-W症候群に伴う胃破裂と診断した. 縦隔気腫の拡大や胸水の発生はなく, また炎症所見も少ないため保存的治療とした. 2週間余りで順調に軽快し, 退院可能となった. 特発性食道破裂に比べ経過は良好ではないかと思われた.
  • 塚原 哲夫, 山口 晃弘, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 岩田 洋介
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1690-1694
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は43歳の女性で乳癌術後の定期検査で腹部超音波検査と腹部CTで肝左葉, 胃小彎, 膵に接する最大径約4cm大の嚢胞性腫瘤を認めた. 1年半後に増大傾向を認め, 上部消化管造影検査では胃噴門部小彎側に表面平滑な隆起性病変を認めた. 超音波内視鏡検査では胃壁の第4層に単胞性で内部エコー均一な約5cm大の嚢胞性腫瘤を認めた. 以上の所見から胃筋層から発生した嚢胞性腫瘍, 特に胃リンパ管腫を最も疑い, 胃部分切除術を施行した. 切除標本では嚢胞内に充実性部分は認めず, 内容液は黄褐色で組織学的に胃筋層内に発生した嚢胞状リンパ管腫と診断した. 胃リンパ管腫は稀な疾患であり, 特に筋層内より発生した胃リンパ管腫は本邦2例目であるため, 文献的考察を加えて報告する.
  • 松山 隆生, 長谷川 誠司, 深野 雅彦, 簾田 康一郎, 江口 和哉, 仲野 明
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1695-1698
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は53歳, 男性. 腹部膨満感を主訴に受診し, 精査加療目的で入院となった. 腹部CTでは胃体部後壁に13cm大の腫瘤影を認めた. 上部消化管造影と胃内視鏡検査では, 胃粘膜の不整は認めず, 胃体部後壁に腫瘤からの圧排所見を認めた. 腹部の血管造影では左胃動脈からの腫瘍濃染像を認めた. 入院後も腫瘤は増大傾向を示した. 胃の間葉系腫瘍の診断で開腹手術を施行した. 術中所見では, 腫瘍は胃体部後壁から発生した壁外性腫瘍であった. 周辺臓器への浸潤は認めなかった. 腫瘍を含め胃を局所切除し摘出した. 組織学的に胃原発の硬化型脂肪肉腫と診断された. 術後腹膜播種再発をきたし3度の再発巣切除術を行ったが, 初回手術から80カ月の現在も健在である. 胃原発の脂肪肉腫は極めて稀な疾患であり, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 武田 佳久, 安田 誠一, 寺村 康史, 橋田 修平
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1699-1703
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は79歳の男性で, 心窩部痛を主訴に来院. 著明な貧血と腹部超音波検査にて腹水を認めたため腹腔内出血を疑った. 腹部CT, 血管造影検査により胃壁腫瘍や膵腫瘍からの出血を疑い, 緊急手術を施行した. 多量の血性腹水と胃角部より突出する3cm大の出血性腫瘤を認め, 胃局所切除術を施行した. 摘出された腫瘍は, 3.3×3.0cmで内腔に凝血塊を認めた. 腫瘍の組織診断では, gastrointestinal stromal tumor (以下GIST) などの間葉系腫瘍が疑われ, 確定診断のため免疫組織診断を行った. KIT, CD34, S-100蛋白陰性, α-smooth muscle actin陽性, MIB 1 labeling index高値により胃平滑筋肉腫と診断された. 今回の腹腔内出血により発見された胃平滑筋肉腫は, 検索した範囲内でGISTと鑑別された稀な症例と考えられた.
  • 安田 里司, 山田 貴, 平尾 具子, 池西 一海, 細井 孝純, 今川 敦史
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1704-1708
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は93歳の女性. 80歳時に胃穹窿部に8mm大の胃粘膜下腫瘍 (以下SMT) を指摘されたが87歳時まで大きさに変化を認めず, それ以降の精査は拒否されていた. 食欲不振, 黒色便を認めたため来院し, 上部消化管内視鏡検査 (以下GIF) を施行したところ穹窿部のSMTは50mm大と著明に増大していた. 外科的治療は拒否されたため経過観察していたが, 1カ月後に摂食が困難となり腹痛が出現した. GIFにて穹窿部のSMTが十二指腸球部に陥入しており, 内視鏡の通過は可能であったが内視鏡的整復は不可能であり, 開腹下に整復し穹窿部の胃局所切除を施行した. 病理組織学的所見では粘膜下から筋層に紡錘型で細胞密度の高い腫瘍細胞を認め, 免疫染色ではc-kit, CD34ともに強陽性であり, SMAおよびS-100は陰性であった. 細胞増殖能を示すKi-67は2%と低値であり組織学的には低リスクのgastrointestinal stromal tumor (GIST) と診断した. 術後1年目の現在, 再発を認めない.
  • 工藤 淳三, 岸川 博隆, 谷脇 聡, 成田 清, 柴田 孝弥, 高木 大輔
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1709-1713
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    今回われわれは壁外腫瘤部分は高分化型扁平上皮癌, 胃内腫瘤部分は中分化型腺癌であった巨大壁外性胃癌の1例を経験した. 症例は70歳, 男性. 腹部巨大腫瘤を主訴に当科入院となった. 臍~右側にかけ直径約20cmの腫瘤を触れ, CTでは胃に連続して16×12cmの腫瘤および多数の肝転移巣を認めた. 胃内視鏡所見では3型の腫瘍を認め, 生検にて腺癌であった. また注腸では横行結腸が下方に圧排されており, 直接浸潤を示唆する狭窄像を認めた. 平成16年5月中旬, 胃局所切除, 横行結腸切除, 人工肛門造設術施行した. 切除した腫瘍は18×17×13cm, 重量約2kgであった. 病理検索では胃内腫瘤部分は中分化型腺癌, 壁外腫瘤部分は高分化型扁平上皮癌であり, 両者は胃の筋層で明瞭に境界されていて連続性は認められなかった. 組織型が壁内と壁外で異なることは興味深く, 考察を加え報告した.
  • 北野 義徳, 川崎 誠康, 酒井 健一, 林部 章, 船井 貞往, 亀山 雅男
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1714-1717
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は74歳, 女性. 突然の心窩部痛を主訴に来院. 腹部CTにて十二指腸下行脚~水平脚に線状の石灰化像と後腹膜にガス像を認めた. 異物による十二指腸穿通と診断し, 腹膜刺激症状を認めることから緊急開腹術を施行した. 十二指腸下行脚背側に膿の貯留を認め, 水平脚後壁に穿通する異物を確認した. 異物除去, 十二指腸縫合閉鎖術を施行し, 良好な経過を得た. 摘出した線状異物は55mm大で, 鰤の摂取歴があったことおよび成分分析の結果から魚骨と診断した. 魚骨による十二指腸の穿孔・穿通例は本邦においてこれまでに6例の文献報告しかなく, 非常に稀な症例と考えられた.
  • 川崎 誠康, 亀山 雅男, 船井 貞往, 林部 章
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1718-1722
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    肝転移を伴う十二指腸原発巨大GISTに対し, 膵頭十二指腸および右半結腸切除にて原発巣を一括に摘出し, 肝転移巣にラジオ波焼灼術 (RFA) を施行した1例を経験した. 症例は69歳, 女性. 主訴は摂食不能. 1カ月前より症状認め, 腹部腫瘤を指摘され入院. 十二指腸下降脚原発の巨大GISTで, 肝S7の転移巣を伴うものと診断し, 手術を施行した. 摘出標本は13×11×8.5cmの暗紫色の弾性軟な腫瘍で, 免疫組織染色にてGISTと診断された. 術後40日にて退院し, 6カ月現在再発なく外来通院中である. 本症例は十二指腸GISTに対する一括切除としては, 最も広範囲におよぶものであると認識している. 肝転移の治療に関しては手術侵襲を軽減するという意味においてもRFAは有効な選択肢のひとつであると考えられた. ただGIST肝転移腫瘍は形態・血流などで通常の肝細胞癌とは条件が異なり, その適応は今後さらに検討する必要があると思われた.
  • 森川 充洋, 泉 俊昌, 藤岡 雅子, 林 泰生, 恩地 英年, 山口 明夫
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1723-1726
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は79歳, 男性. 脳梗塞による嚥下障害のため空腸瘻を造設し, ラコール®1,200kcal/24hr, 食塩3g/分3の投与にて管理されていた. 経腸栄養開始2カ月後, 腹痛が出現し, CTにて空腸瘻カテーテル周囲の腸管の壁肥厚と壁内ガス像, 多量の腹水を認めた. 腹腔穿刺を施行すると, 腹水は混濁しグラム陰性桿菌を認めたため緊急手術となった. 空腸瘻カテーテル周囲の腸管に限局性の腸炎を認めるも穿孔は認められなかった. 腸炎の原因として, 空腸瘻のカテーテル自体による影響は考えにくく, 食塩の投与方法が疑われた. 食塩1gを20mlに溶解すると浸透圧は1540mOsm/mlであり, 腸管内が高浸透圧となり腸炎を引き起こしたのではないかと考えられた. 空腸瘻より食塩を投与する際は, 食塩を多くの水分で希釈し浸透圧を下げて投与するか, あるいは経静脈的に投与するような工夫が必要であると考えられた.
  • 廣岡 映治, 篠塚 望, 小山 勇
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1727-1730
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    22歳, 妊娠32週6日の妊婦. 平成17年10月19日午前2時ごろ腹痛を主訴にかかりつけの産婦人科を受診. 腸閉塞の疑いで当院産婦人科へ搬送された. 徐々に腹痛が増悪し児心拍の低下 (rate decelaration) を認めたため緊急手術となった. 帝王切開後に腹腔内を検索すると回腸末端から口側10cmに回腸のループが形成され, さらに口側40cmにMeckel憩室を認めいずれも右卵巣・卵管に癒着しておりその口側腸管は著明に拡張していた. 癒着を剥離しMeckel憩室を切除した. 術後経過は良好であり12病日に退院した. 妊娠中のイレウス症状は妊娠に伴う諸症状と紛らわしいため診断に苦慮することも多い. しかし診断・治療の遅れは母児双方の生命予後に大きく影響するため絞扼性イレウスと診断されれば手術治療が原則である. 妊娠中にMeckel憩室によるイレウスを発症した症例は稀であり若干の文献考察を加え報告する.
  • 斎藤 健一郎, 芝原 一繁, 黒川 勝, 森山 秀樹, 長谷川 洋
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1731-1735
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性で, 突然の腹痛で受診した. CTで腹腔内出血を伴う10cm大の骨盤内腫瘤を認め開腹手術を施行した. 回盲弁より30cmに自壊した腫瘤を認め, 小腸腫瘍破裂による腹腔内出血と診断し小腸部分切除術を施行した. 切除標本は最大径5cmの粘膜下腫瘍が漿膜面で破綻し, 4cm大の腫瘍が半球状に残存した状態であった. 免疫染色でc-kit, CD34陽性でありgastrointestinal stromal tumor (以下GISTと略記) と診断した. 術後7カ月後のCTで20cm大のGISTの局所再発, 腹腔内出血と診断し, 再手術を施行した. 腫瘍は血腫と混在して巨大な腫瘤を形成し, 周囲の腸間膜, 大腸に浸潤しており, 腫瘍と血腫を掻把する形で切除した. 術後よりイマチニブを投与したが局所再発, 肝転移を認め, 初回手術より9カ月後に永眠された.
  • 中村 雅憲, 妙中 直之, 山本 篤, 森本 純也, 松村 雅方, 西村 重彦
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1736-1739
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    28歳, 男性. 平成15年7月下旬頃より時々の腹痛を自覚していたが放置していた. 8月19日強い腹痛を訴え救急受診. 腹部超音波検査・CT検査で臍部やや右側腹部寄りに層状構造を呈する腫瘤を認め, 上行結腸の腸重積症と診断し緊急手術を施行した. 開腹時, 腸重積は自然解除されていたが, 触診上回盲部にピンポン球大の弾性硬の腫瘤を認め回盲部切除術を施行した. 病理組織検査にてinflammatory myofibroblastic tumor (IMT) と診断された. 術後経過良好で第10病日に退院となった. IMTは従来inflammatory pseudotumorと呼ばれていたものの一部で, 現在腫瘍性病変と考えられている. Low grade malignancyのため遠隔転移は比較的稀であるものの局所再発を伴うことがあるとされ, 充分な経過観察が必要であると思われた. 今回, 腸重積にて発症した比較的稀なIMTの1例を経験したので報告する.
  • 塩井 義裕, 下沖 収, 皆川 幸洋, 阿部 正, 上杉 憲幸, 中村 眞一
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1740-1743
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は72歳, 女性. 排便後の左下腹部痛で発症し, 当院を受診した. 筋性防御を認め, 腹部CT検査で左腸腰筋に沿った気腫像を認めたため, 下部消化管穿孔の診断で緊急手術を行った. 下行結腸の後腹膜側で3cmの穿孔を認め, 下行結腸部分切除および人工肛門造設術を行った. 病理組織像では粘膜, 筋層の急峻な断裂があり, 急性炎症所見のみを認め, 憩室, 腫瘍, 炎症性腸疾患, 虚血性変化などの所見は認めなかった. 以上から特発性下行結腸穿孔と診断した. 術後に創感染や腹腔内膿瘍を併発したが, 術後68日目に退院した. 特発性下行結腸穿孔は稀ではあるが, 予後不良であり, 迅速な診断および治療が必要である.
  • 米沢 圭, 中村 誠昌, 白石 享, 藤野 光廣, 下松谷 匠, 丸橋 和弘
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1744-1749
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は保存期腎不全のため泌尿器科通院中の89歳の女性で, 突然の腹痛で当院救急外来を受診した. 腹部所見は板状硬で腹部全体の圧痛, 反跳痛を認めた. 胸部・腹部単純写真で大量のfree airを認めた. 上部消化管内視鏡で胃十二指腸穿孔が否定できたので, 下部消化管穿孔の診断で緊急開腹手術を施行した. 腹腔内全体に黄褐色の汚染腹水を多量に認め, SD-junction近傍のS状結腸前壁に7mm径の穿孔を確認した. 結腸全体に硬い宿便を認めた. 結腸憩室は確認されず, また異物・腫瘍も認めなかった. 腹腔洗浄ドレナージを行った後, 穿孔部のS状結腸を挙上し左下腹部に人工肛門を造設した. 術後は敗血症・急性肺障害のために長期間にわたる集中治療が必要であった. 慢性腎不全患者は水分制限や投薬ために恒常的に便秘になることが多く, 宿便性大腸穿孔の高リスク群と考えられる. 腹部症状に十分な注意を払う必要があると考えられた.
  • 千堂 宏義, 西村 透, 中村 吉貴, 金田 邦彦, 和田 隆宏
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1750-1753
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 男性. 2006年6月下旬に発熱, 心窩部痛を認め, 当院救急外来を受診し, 精査にて総胆管結石による胆管炎, 急性膵炎と診断され, 内科緊急入院となった. 内視鏡的乳頭切開術を施行され, 臨床症状は軽快したが, 経過観察の腹部造影CTにて上行結腸に濃染される, 全周性壁肥厚像を認め, 上行結腸癌と考えられた. 大腸内視鏡検査にて上行結腸に2型の腫瘍を認め, 生検にて中分化腺癌と診断された. 9月上旬に手術目的で当科再入院し, 上行結腸癌, 胆石症の診断にて, 結腸右半切除術, 胆嚢摘出術を施行した. 病理組織学的検査にて上行結腸腺扁平上皮癌と診断された. 今回われわれは, 腹部CT検査にて偶然発見された, 無症状の上行結腸腺扁平上皮癌の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 中山 吾郎, 小寺 泰弘, 小池 聖彦, 藤原 道隆, 野垣 正樹, 中尾 昭公
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1754-1759
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例 : 38歳, 男性. 既往歴 : 1歳時にHirschsprung病に対し根治手術が施行された. 現病歴 : 半年程前より会陰部痛出現し, 近医で処置を受けるも改善傾向なく, 難治性直腸周囲膿瘍の診断で肛門科専門病院を紹介受診した. Duhamel手術後の盲端化した直腸内糞石による直腸肛門周囲膿瘍の診断で経会陰的ドレナージ術が施行され, 精査・根治手術目的で当院へ入院となった. 病因・病態として, (Duhamel手術の直腸隔壁除去不十分+癒合による隔壁再形成) → (盲端化した残存直腸内に巨大糞石形成) → (直腸壁穿破) → (直腸周囲膿瘍・直腸膀胱瘻形成) と診断し, 開腹下に直腸口側断端・S状結腸を切開し, 隔壁をEndo-GIAを用いて切離し, 糞石を摘出した. Duhamel法においては, 確実な隔壁除去と術後早期の縫合線癒合の診断, さらに術後長期にわたるフォローアップが重要であると考えられた.
  • 木下 浩一, 高林 有道
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1760-1764
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は49歳の男性で, 平成14年9月に胆嚢底部の約2cm大の胆嚢腫瘍に対して, 肝部分切除 (S4a, S5) を伴う胆嚢摘出術を受けた. 術後経過は良好で, 術後18日目に退院となった. 退院後3日目 (術後21日目), 突然の吐血を認め, ショック状態で救急搬送された. 緊急上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚よりの動脈性出血を疑われたが内視鏡的止血が困難と判断され緊急腹部血管造影検査が施行された. 右肝動脈造影にて出血部位と同十二指腸内への造影剤の漏出を確認したため, 肝動脈の仮性動脈瘤の十二指腸穿破と診断した. 直ちに漏出部の近位より右肝動脈を金属コイルで塞栓することにより止血し救命しえた. 術後経過良好であった胆嚢癌術後に発生した肝動脈仮性動脈瘤であること, さらにこの動脈瘤が十二指腸へ穿破, 出血したことはともに稀であると考えられた.
  • 紺谷 忠司, 嶋田 浩介, 岩倉 伸次, 堂西 宏紀, 田村 耕一, 青木 洋三
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1765-1769
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    脂肪肉腫は, 軟部悪性腫瘍の中では5~30%をしめ, 好発部位は四肢, 特に大腿および臀部や後腹膜で, 肝臓に発生するのは極めて稀である. 今回われわれは肝外側区域に発生した脂肪肉腫の1例を経験した. 症例は71歳の女性で, 心窩部痛を主訴に受診し, 右肋骨弓下に20cmにおよぶ腫瘤を触知したため入院となった. 精査の結果, 肝原発の腫瘍と判断し肝左葉切除を行った. 病理組織診断の結果, myxoid liposarcomaで免疫染色は陰性であった. 一般的に脂肪肉腫の治療は外科的切除が第一選択とされるが, 肝原発脂肪肉腫は非常に稀な疾患で, 報告例もほとんどないため, 治療法や予後については明確にされていない. 本症例を含め, 若干の文献的考察を加えて報告した.
  • 小島 大望, 佐藤 雅之, 吉岡 晋吾, 冨田 昌良
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1770-1774
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性. 2004年8月肝細胞癌破裂に対し, 他院にて肝外側区域部分切除術を施行された. その後左下腹部に徐々に増大する腹腔内腫瘍を自覚するも放置. 2005年6月, 腹痛を主訴に地域急患センターを受診. 左下腹部に圧痛を伴う硬い小児頭大の腫瘍を認め当院入院となった. 腹部CTで腹腔内遊離ガス, 肝内門脈ガス像を認め, 穿孔性腹膜炎の診断で緊急手術を施行した. 開腹所見では血性腹水, 腹腔内腫瘍破裂, 下行結腸浸潤を認めた. 腹腔内腫瘍摘出術, 下行結腸合併切除術, 人工肛門造設術を施行した. 術後肝不全, 腎不全, 門脈ガス残存, DIC遷延を認め, エンドトキシン吸着療法, ビリルビン吸着療法を施行するも術後13日目に死亡した. 門脈ガス血症は腸管壊死を示唆する予後不良の兆候とされる. 今回, 肝細胞癌腹腔内再発腫瘍に伴う門脈ガス血症の稀な1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 大西 顕司, 石田 誠, 飯田 敦, 片山 寛次, 山口 明夫, 今村 好章
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1775-1780
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 男性. 近医にて肝左葉の嚢胞状病変を指摘され精査目的に紹介入院した. 腹部超音波検査, CTにて肝左葉グリソンに沿った嚢胞性病変の多発と, 末梢胆管の拡張を認めた. 内視鏡的逆行性胆管造影にて左肝管の狭窄と末梢胆管の不整な拡張蛇行を認めたが, 嚢胞性病変との交通は認めなかった. 画像上明らかな腫瘤性病変は認めなかったが, 肝内胆管癌などの悪性腫瘍を否定できず, 肝左葉切除術を施行した. 嚢胞性病変はグリソン領域内に限局し最大1.5cmまでの大小様々な嚢胞の集簇からなっていた. 組織学的には一層の立方上皮に裏打ちされ, 周囲に胆管付属腺の増生と線維化を認めたが腫瘍性変化は認めずpeibiliary cystと診断された. peibiliary cystは比較的稀な疾患であるが, 本症例のように胆道狭窄をきたす報告もあり, 肝内胆管の疾患の鑑別診断の1つとして念頭に置く必要がある.
  • 吉田 信, 真崎 茂法, 高木 拓実, 樫山 基矢, 石後岡 正弘, 河島 秀昭
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1781-1785
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    胆管原発の腺扁平上皮癌は比較的稀な疾患で, その予後は極めて不良である. 症例は75歳, 男性. 閉塞性黄疸を発症し当院紹介入院. 腹部CTおよび超音波検査で胆嚢内結石, 肝外および肝内胆管拡張, 下部胆管に結石や腫瘍の存在を疑った. ERCPで下部胆管に高度狭窄を認め, 内視鏡的経鼻胆道ドレナージを施行. 胆管擦過細胞診で腺癌あるいは扁平上皮癌, 胆管生検で扁平上皮癌の所見を認め, 胆管腺扁平上皮癌と診断. 膵頭十二指腸切除およびリンパ節郭清D2を施行. 胆管周囲組織の硬化が著明で, 可及的に肝側で胆管切離を行うも断端の迅速組織診では, 上皮下間質の一部に神経浸潤を伴う扁平上皮癌を認めた. 病理所見では, 大部分が低分化型扁平上皮癌の成分で占められ, 一部に腺癌の成分を認めた. 両者の移行部分を認め腺扁平上皮癌と診断. 術後3カ月でリンパ節および肝転移再発を認め, 術後198日目に癌死した.
  • 酒田 和也, 伊豆蔵 正明, 西嶌 準一
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1786-1790
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    患者は72歳, 男性. 白血球の異常高値から慢性骨髄性白血病 (CML) と診断され, 当院血液内科に紹介された. まずインターフェロンαなどでCMLの治療を開始したが, 肝障害および黄疸が出現し, 薬剤性肝障害を疑った. しかし, 腹部CTにて総胆管の拡張と下部胆管の腫瘍性狭窄を認め, ERCPによる胆汁細胞診で腺癌と診断された. 一般的に下部胆管癌の方がCMLよりも予後が悪く, CMLの病状も安定していたため, 膵頭十二指腸切除術 (PD-II) を施行した. 手術後の経過は, 白血球増加が長く続いた他には, 通常と変わらず良好であった. しかしながら, 術後3カ月で急速に増大する肝転移が出現し, 術後6カ月で死亡した. なお, CMLに合併した胆管癌の手術例は, 検索した限り自験例の他には認めなかった.
  • 内海 方嗣, 國土 泰孝, 小林 正彦, 木村 圭吾, 村岡 篤, 影山 淳一
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1791-1794
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は74歳, 男性. 突然の上腹部痛を主訴に当院救急外来に搬送された. 来院時, 上腹部に自発痛と圧痛を認めた. 血液検査所見は軽度の貧血を認めるのみであった. 腹部CTでは膵頭部背側から上腸間膜動脈右側の後腹膜腔内に血腫を認め胃十二指腸動脈またはその周辺の分枝からの出血が疑われた. そのため緊急血管造影を施行したところ, 下膵十二指腸動脈に動脈瘤を認めその部位から血管外漏出像が描出された. 同部位を出血源と考え経カテーテル的コイル塞栓術 (TAE) を施行し止血を行った. 術後16日目に軽快退院となった.
    膵十二指腸動脈瘤破裂による治療は診断につづけて施行でき, 低侵襲性であることから現在ではTAEが第一選択となっている. TAEで治療しえた膵十二指腸動脈瘤破裂の1例を経験したので報告する.
  • 栗栖 泰郎, 本城 総一郎, 玉井 伸幸, 五明 良仁, 石倉 孝訓, 岩永 幸夫
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1795-1799
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代, 男性. 発熱と腹部膨満感で当院を受診した. 悪性リンパ腫を疑い, 開腹下リンパ節生検を施行し, 小腸間膜根部から尾側の後腹膜の硬化を認めたが, 悪性リンパ腫は否定された. 経過中, 出血性胃潰瘍を合併し, 治療抵抗性であった. さらに, 壊疽性胆嚢炎を合併したため, 再開腹術を施行し, 後腹膜の硬化は膵表面から胃小彎にまで及び, 胆管造影では膵内胆管の狭窄と主膵管の狭細化を認めた. 膵尾部表面の硬化した後腹膜を切除生検し, 著明な線維化を認めた. その後も胃潰瘍が治癒せず, 胃切除術, 胆管十二指腸吻合術を施行した. 臨床経過と病理組織所見から, 最終的に後腹膜線維症と自己免疫性膵炎の合併, および膵炎の波及に伴う胃潰瘍の続発と診断した. CTで, 後腹膜の肥厚, 硬化を認めた場合には, 後腹膜線維症や自己免疫性膵炎を疑い, 確定診断後は早期にステロイドによる治療を開始することが重要であると思われた.
  • 阿保 貴章, 七島 篤志, 角田 順久, 木下 直江, 安武 亨, 永安 武
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1800-1805
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    退形成性膵管癌は膵癌の中でも比較的稀な癌腫であり, 巨細胞型, 多形細胞型, 紡錘細胞型に分類され, 予後不良とされる. 今回われわれは術前診断に難渋した紡錘形細胞型退形成性膵管癌の1例を経験した. 症例は84歳, 女性. 主訴は腹部違和感. 腹部超音波, CTにて十二指腸下行脚背内側に45mmの類円形腫瘤を認め, 内部に一部壊死様の所見を伴っていた. 十二指腸GISTもしくは十二指腸癌の診断にて手術となった. 術中エコーの所見から十二指腸浸潤を伴う膵原発性腫瘍と判断し膵頭十二指腸切除術を施行した. 組織学的には紡錘形の異型細胞の胞巣状増殖からなる低分化腺癌を伴う紡錘形細胞型退形成性膵管癌と診断された. 術後は比較的順調に経過し術後42日目に軽快退院となったが, 術後8カ月目に肝転移を来たし10カ月目に癌死した.
  • 金森 淳, 金井 道夫, 桐山 宗泰, 濱口 桂, 山口 竜三, 矢野 孝
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1806-1810
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は57歳, 男性. 2005年9月健診にて左腎腫瘍を指摘され, 当院受診した. 各種検査の結果, 膵転移を伴う左腎細胞癌と診断し, 12月8日左腎摘出術, 膵体尾部脾摘出術を施行. 膵体尾部の腫瘍は40mmで割面は境界明瞭な結節が癒合した外観を呈していた. 左腎上極には内部壊死を伴う60mmの腫瘍を認めた. 組織学的には左腎のClear cell carcinomaで, 膵尾部腫瘍は腎細胞癌の単発膵転移と診断した. 転移経路として腎静脈系から脾静脈系への直接経路を介した血行性転移と思われた.
  • 安藤 晴光, 加藤 岳人, 鈴木 正臣, 柴田 佳久, 平松 和洋, 吉原 基
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1811-1815
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は43歳, 男性. 脱水症にて内科入院中, 腹部CT検査で約11cmの骨盤内腫瘍を認めた. MRI検査では腫瘍内部は高信号と低信号が混在していた. 注腸検査にて直腸を壁外性に圧排する所見を認めた. 経皮的針生検を施行し, solitary fibrous tumor (SFT) と診断された. 直腸損傷なく腹仙骨式に腫瘍を摘出した. 摘出標本では腫瘍は大きさ11×7×6cm, 重量280gの充実した多結節な弾性硬な腫瘍であった. 組織学的検査では紡錐形細胞が増殖しており, 免疫組織化学検査でCD34が陽性であった. 術後経過良好で合併症なく退院術後4カ月無再発生存中である.
  • 砂川 真輝, 加藤 岳人, 鈴木 正臣, 柴田 佳久, 平松 和洋, 篠原 剛
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1816-1820
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は21歳, 女性で, 13歳時右卵巣原発の奇形腫に対して腫瘍切除が行われた. 病理組織診断は未熟奇形腫であり術中腹膜播種を認めたため, 術後carboplatin及びVP-16による化学療法を2クール施行した. 化学療法後血清AFP値は正常化し, その後外来にて経過観察を行っていた. 術後血清AFP値の再上昇は認められなかったが, 8年後健康診断にて腹部腫瘍を指摘された. CT検査にて右横隔膜下に10cm大の腫瘤を認め, 奇形腫の再発と診断し, 腫瘍及び横隔膜を一部合併切除した. 病理組織診断では成熟奇形腫であった.
    未熟奇形腫では化学療法後血清AFP値が正常化しても, 成熟成分が残存し増大することがあり, このような病態はgrowing teratoma syndromeと呼ばれている. そのため腫瘍マーカーだけでなく定期的な画像検査による経過観察が必要である.
  • 駄場中 研, 小林 道也, 岡本 健, 岡林 雄大, 吉岡 龍二, 花崎 和弘
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1821-1825
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    Stage IV下行結腸癌術後16年経過し, 骨盤腔内腹膜外再発を来した症例を経験した. 症例は, 51歳, 男性で, 1990年7月, 下行結腸癌で左半結腸切除術および腹膜播種の部分切除術が施行され (根治度C), 術後診断はD, II型, 3.5×2.5cm, pSE, pN2, fH0, pP2, cM0, stage IVで, 術後5年間の経口抗癌剤による補助化学療法の既往歴があった. 2006年9月, 血尿を認め近医受診し, 腹部CTにて骨盤内腫瘤を指摘され当科紹介となった. 上部下部消化管内視鏡検査では異常を認めなかった. 腹部CT/MRIで直腸左側の後腹膜に腫瘤を認め, PET-CTで同部にFDGの集積を認めた. 経肛門的針生検でadenocarcinomaを認め, 術前放射線照射後, 手術を施行した. 術後病理組織学的検査の結果, 下行結腸癌術後の骨盤腔内腹膜外再発と診断した. Stage IV大腸癌術後の長期生存症例で, 術後15年以上経過しての再発は極めて稀であり, 文献的考察を加え報告する.
  • 笹田 伸介, 池尻 公二, 江見 泰徳, 上杉 憲子, 朔 元則
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1826-1830
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は50歳, 男性. 10年前, 盲腸癌に対し右半結腸切除術を施行された. 8カ月前より右下腹部異和感を自覚し, PET-CTにて石灰化を伴う後腹膜腫瘍を指摘された. 入院時所見では右側腹部から右鼠径部にかけて15cm大の硬い腫瘤を触知し, 骨シンチにて骨化した腫瘤と判断された. 骨外性骨肉腫を疑い, 開腹手術を施行した. 手術所見では後腹膜に骨化した腫瘍を認め, 右精巣静脈に腫瘍栓を形成していた. 右外腸骨静脈と強固に癒着しており, 右精巣動静脈, 右外腸骨静脈を合併切除した. 病理所見では腫瘍細胞が不整な骨, 類骨組織を産生しており, 骨外性骨肉腫と診断された. 腫瘍中央部では成熟骨と骨髄形成を認めた. 脈管浸潤のある骨肉腫の予後は非常に不良と言われている. 本症例は免疫療法を施行されていたが, 術後3カ月目に局所, リンパ節再発を認めた.
  • 塩澤 秀樹, 岸本 恭, 安達 亙
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1831-1834
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    直腸が特発性に後腹膜側に穿孔し当初腹膜炎症状を示さなかった症例を報告する. 症例は87歳, 女性で血便, 下腹部痛を主訴に来院した. 初診時下腹部痛はあるも腹膜刺激症状は認めなかった. 体温は36℃, 白血球増加はなく, 腹部単純写真でも異常を認めなかった. 入院し経過をみていたが, 入院後3日目の腹部CTで後腹膜気腫の増加を認め緊急手術を施行した. 腹腔内に汚染は認められなかったが, 直腸が後腹膜側に穿破して手拳大の糞便貯留腔を形成していた. 直腸を切除し一期的に吻合した. 大腸穿孔は稀に腸間膜内, 後腹膜に穿孔することがあるが, この診断には腹部CT検査が有用である.
  • 須浪 毅, 澤田 隆吾, 雪本 清隆, 阪本 一次, 山下 隆史
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1835-1839
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    総肝動脈神経叢に発生した神経鞘腫の1例を経験したので報告する.
    症例は63歳, 女性. 肺炎にて加療中に, CTにて肝門部に約4cm大の腫瘤を認め, 超音波検査では嚢胞性部分を伴う低エコーの腫瘤であった. 造影CTでは腫瘤の造影効果は乏しいものの, 後期相にて腫瘤内部の隔壁様構造に淡い造影効果が認められた. MRI検査ではT1強調像にて低信号, T2強調像にて高信号の腫瘤として認められた. 肝十二指腸間膜内に発生した神経鞘腫やリンパ管腫を疑い手術を施行した. 肝門部に被膜を有する表面平滑な腫瘤が認められた. 腫瘤は総肝動脈との癒着が強く剥離, 摘出に難渋した. 術中迅速病理検査にて神経鞘腫の診断であり, 総肝動脈神経叢から発生したものと考えられた. 病理組織学的所見では, 良性神経鞘腫, AntoniA型とB型の混合型であった. 術後3年経過したが, 再発兆候は認めていない.
  • 東海林 安人, 菱山 豊平, 平 康二, 中村 豊, 真名瀬 博人, 国本 正雄
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1840-1843
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は26歳, 女性. 平成17年1月より肛門部痛が出現し, 2月に近医を受診したところ, 肛門左側に手拳大の巨大な嚢胞性腫瘤を認め, 穿刺にて毛髪を伴う皮脂様成分を認めて奇形腫が疑われ, 内容物の摘出・掻爬を行った. その後, 感染を併発し, 切開・排膿を行うも腫瘤の増大, 浸出液の持続的漏出がみられるため, 腫瘤の摘出目的に6月に当院紹介となった. 画像上, 直腸左側壁と左坐骨の間に嚢胞性病変を認め, 前医の所見から仙尾部奇形腫の術前診断で腫瘤摘出術を施行した. 病理組織学的所見では毛根などの外胚葉成分や平滑筋などの中胚葉成分を認め, 成熟嚢胞性奇形腫の診断であった. 術後1年9カ月の現在, 再発は認めていない.
    成人の仙尾部奇形腫はまれで本症に対する認識は低いが, 治療においては腫瘍の局在に応じた, 遺残のない完全な切除が重要であると考えられた.
  • 南 盛一, 山本 康弘, 坂東 敬介, 紀野 泰久, 河野 透, 葛西 眞一
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1844-1848
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は77歳の男性で, 平成18年9月, 乗用車を運転中に操作を誤り路外へ転落し, 当院搬送となった. 左肋骨, 左橈骨, 左中手骨骨折をみとめ当院整形外科に入院. 腹痛が出現し右鼠径部痛が増悪したため当科に転科した. 下腹部を中心に筋性防御, 反跳痛が出現し, 右鼠径の膨隆部には発赤も出現したため腹部CTを施行した. 肝表面に遊離ガス像, 腹水を認め, 消化管穿孔による汎発性腹膜炎, 右鼠径ヘルニアの診断にて緊急手術となった. 回腸末端より約50cmの回腸に径約1cmの穿孔部を認め, 右鼠径部のヘルニア嚢より膿汁が腹腔内に流出していた. このことから, 鼠径部ヘルニア嚢に脱出した回腸が穿孔したものと考えられた. 手術は回腸穿孔部を縫合閉鎖し, 右鼠径ヘルニアを修復した. 腹腔内圧上昇による鼠径ヘルニア嚢内消化管穿孔の本邦報告例は自験例を含めて17例と稀で, 鼠径ヘルニアの合併症として一般には知られていない病態であり報告する.
  • 金城 洋介, 加藤 滋, 清水 謙司, 山本 秀和, 小西 靖彦, 武田 惇
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1849-1852
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    72歳男性. 主訴は下腹部痛. 強い腹膜刺激症状, 白血球の低下および腹部CTにて遊離ガスを認め, 消化管穿孔の診断で緊急開腹したところS状結腸の破裂を認めた. 同時に術前に左鼠径ヘルニアも認めたが待機的に手術することとし, 腹腔洗浄ドレナージ, S状結腸切除を施行した. 敗血症を合併し人工呼吸管理を要したが術後7日目に抜管しえた.
    覚醒翌日に左鼠径部に疼痛と強い緊満を認めたためヘルニア嵌頓と判断し, 用手還納を試みたが腫脹が残り緊急手術となった. ヘルニア嚢内は膿苔が付着し腹腔内には混濁腹水を認め, 原因は前回手術時にヘルニア嚢内が十分洗浄されなかったために発生した遺残膿瘍であり, それを腹腔へ圧出したため再度腹膜炎になったと考えられた. ヘルニア嚢の処理, 腹腔洗浄ドレナージを施行したが術後再び敗血症を合併し集中治療を要した. ヘルニア合併の腹膜炎手術の際はヘルニア嚢内も確実に洗浄し個別にドレナージを行うべきである.
  • 江口 大彦, 島袋 林春, 森山 初男, 石川 浩一, 岸原 文明, 松股 孝
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1853-1857
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は66歳, 糖尿病と慢性関節リウマチで内服治療中の男性. バイクで転倒し左膝に小挫創を受傷した. 4日後から創痛が強くなり翌日近医を受診し左膝蜂窩織炎の診断で入院となった. 抗生剤投与と局所の小切開が行われたが炎症所見は改善せず, 当院へ紹介転院. 左膝の小切開創周囲から大腿外側に発赤・熱感・硬結があり著明な圧痛を認めた. 前医での創培養でA群β型溶連菌が検出され, 壊死性筋膜炎の診断で外科的デブリドマンを行った. 局所の感染兆候が落ち着いた切開後11日目よりvacuum-assisted closure (VAC) を開始した. 欠損部の肉芽は良好に成長したため15日後にVACを解除し, その後は洗浄・ドレッシングを継続した. VAC適用後2カ月で創は完全閉鎖した. 壊死性筋膜炎治療後の広範開放創に対してVACを行い良好な結果を得たのでここに報告する.
  • 柏木 慎也, 齋藤 智尋
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1858-1861
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    減張切開により患指を救済したマムシ咬傷の1例を経験した. 症例は55歳, 男性. 野外作業中マムシに咬まれ受傷. 受傷後約2時間で当院受診. 来院時にGrade IIIであったため, 直ちにマムシ抗毒素血清を投与した. 来院後30分で腫脹は上腕まで達したため, 受傷後4時間で手術を施行した. 咬まれた示指の橈側を側正中切開し開放したところ, 指尖部に血行が再開した. 咬傷部の皮下は, 組織内の溶血変化がみられた. 手背の切開部より間質液を大量に排出した. 腫脹している前腕の筋膜も切開した. 術後に腎不全等の臓器障害を認めなかった. 機能面では, 縫合閉鎖後に患指の腫脹は徐々に減少し, 術後8カ月で受傷前と同等になり, 瘢痕拘縮もなく, 手指の可動域はfullで, 日常生活, 仕事に支障なく, 機能障害は全く認めなかった. 減張切開による組織液の排出が臓器障害予防と患指温存に有効であったと思われた.
  • 中島 麻衣子, 久米 真, 佐藤 勤, 萱場 広之, 浅沼 義博, 山本 雄造
    2007 年 68 巻 7 号 p. 1862-1867
    発行日: 2007/07/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    結腸手術の前処置として施行されたグリセリン浣腸によって溶血, 血色素尿を呈した1症例を経験した. 症例は74歳, 女性. 盲腸癌の診断で入院した. 手術予定日早朝, グリセリン浣腸120mlを施行後少量の下血, 気分不快感が出現. 血圧, 脈拍は安定していたが血液検査で溶血を認めたため手術を延期した. その後血色素尿を認め, グリセリン浣腸による溶血と判断してハプトグロビンを投与した. 軽度の貧血を呈したが腎機能障害を伴うことなく回復したため, 2週間後に浣腸処置を行わず回盲部切除術を施行した. 頻度は低いがグリセリン液が血中に入ると重篤な溶血・血色素尿・腎障害が発生することをわれわれは認識する必要がある. グリセリン浣腸は安全な基本手技を厳守して行うと共に浣腸施行後は尿の色調変化に注意し, 溶血が認められた場合は迅速にハプトグロビンを投与して腎障害を予防することが重要と考えられた.
編集後記
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