日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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68 巻, 8 号
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原著
  • 田中 俊行, 小川 哲史, 池谷 俊郎, 竹吉 泉
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1891-1895
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    当院悪性腫瘍患者への告知率は78%である. 告知を受けていないがん患者と主治医の立場から当院の告知のあり方を検討した. 2005年4月から2年間にチームが介入した患者566例を依頼時のがん告知で「告知なし」「原疾患まで (以下, 原疾患) 」「転移まで (以下, 転移) 」「予後まで (以下, 予後) 」の4群に分けた結果, 「告知なし」11%, 「原疾患」28%, 「転移」52%, 「予後」9%であった. 「告知なし」の平均年齢 (77歳) はその他の群に比べ有意 (p<0.01) に高い値であった. 「告知なし」は, 男性19例, 女性41例と女性が多かった. 「告知なし」のチームの関与日数は16日で, 「原疾患」や「転移」に比べ有意 (それぞれp<0.01) に短かった. 死亡の割合は, 「告知なし」が明らかに高かった (67%). 主治医の医療従事年数は「告知なし」12年で, 「転移」や「予後」に比べ有意に (p<0.05) に短く, 一方10年以下の割合は一番高かった (42%). アンケートで, 全医師は告知が必要と考えているが, がん患者を受け持つ医師は「患者に聞いてから告知をする」を含めても患者主体の告知は41%であった. がんを受け持つ医師は経験年数が少ないほど家族にゆだねる傾向にあった. 高齢の患者に, 医師 (特に医療従事年数の比較的短い医師) と家族で告知を決めている傾向があるかもしれない. 今後医師への教育が必要になってくる.
  • 廣川 慎一郎, 渡邊 智子, 大西 康晴, 塚田 一博
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1896-1902
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    小児鼠径ヘルニアに対する短期滞在手術 (short stay surgery (SSS)) の妥当性について, 医療安全, 医療経済, 患者QOLのバランスを考慮し総合的に評価する目的で検討した. 当科で施行したSSS (日帰り手術および1泊2日入院) 236例を臨床的指標 (安全性・リスク管理, 手術合併症, 満足度) および医療経済的指標 (標準化, 病床利用率, 診断群分類 (DPC) 包括医療) から従来手術 (2泊3日入院) 329例と比較検討した. SSSは安全性・リスク管理, 手術合併症では差を認めず, 患者家族の満足度が得られ安全, 円滑に行い得た. 医療経済ではクリニカルパスを用いた標準化により病床利用の合理化が得られた. 外来診療への指向傾向のあるDPC医療では, 1日入院クリニカルパスSSSが妥当と判断された. 社会的需要に応じた医療サービスに寄与するために, 効率の良いシステムを構築することが望まれる.
症例
  • 山本 裕, 田中 克浩, 三宅 晶子, 廣納 麻衣, 野村 長久, 園尾 博司
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1903-1907
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 男性. 2006年1月に胃癌 (4型) に対し, 当院消化器外科で幽門側胃切除+R-Y吻合を施行. 病理は低分化腺癌T3 N0 P1 H0 M0 CY1 Stage IV. 術前からかゆみ, 関節痛も存在し, さらにCa, intact-PTHの高値を指摘されており, 術後に当科紹介となった. 腎結石の既往が3回あり. 頸部に明らかな腫瘤を触知しない. 血液検査ではCa 10.2mg/dl, intact-PTH 128pg/mlと高値を示した. 頸部超音波検査では左下副甲状腺嚢胞を疑う所見であった. 2006年2月に手術. 術中病理検査で, 左下の副甲状腺 (PT) だけでなく, 左上のPTも嚢胞性腫瘤であったため, 過形成の可能性を考慮し, 対側の検索を行った. そこで右下のPTも腫大していたため, 4腺全摘を行った. 術後経過は良好で, Ca, intact-PTHは速やかに低下した. 永久病理検査では, 左下PTは嚢胞であり, 他は過形成であった. その後当院消化器外科で胃癌に対して化学療法を行ったが, 胃癌術後3カ月で永眠された.
  • 中野 基一郎, 丹黒 章
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1908-1913
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    今回われわれは甲状腺乳頭癌の肝・骨転移をきたした症例に対してI-131内用療法が奏効した1例を経験した。症例は34歳, 女性. 10歳頃より頸部腫瘤を自覚し20歳代より徐々に増大傾向を示した. 甲状腺右葉に約9cm大の石灰化を伴わない嚢胞内乳頭状~カリフラワー状の腫瘍と左葉下部に境界不明瞭な多房性病変を認めた. 共に細胞診class IIであったが血清サイログロブリン値が3,670ng/ml (≤32.7ng/ml) と著明に上昇していた. 頸胸部CT検査ではその他明らかな腫瘍性病変は認めず, 術前診断は腺腫様甲状腺腫疑いとし2002年3月手術を行った. 甲状腺亜全摘後術中迅速診断を行ったが悪性所見を認めず, 術後病理診断にて甲状腺癌 (濾胞型乳頭癌) の診断を得た. 術後血清サイログロブリン値が正常化し追加治療を行わず経過観察してしたが, 術後1年4カ月で血清サイログロブリン値が134ng/mlと再上昇傾向を示し2005年7月には4,370ng/mlまで上昇した. 転移・再発精査を続けていたところ肝転移を認め, 残存甲状腺全摘後I-131シンチグラフィを実施し多発性骨転移も認めた. これらに対してI-131内用療法を2回施行し, 血清サイログロブリン値の低下と肝転移巣の著明な縮小と骨転移巣の硬化性変化およびPET-CTでの集積の低下という良好な結果を得た.
  • 伊藤 勅子, 草間 律, 五十嵐 淳, 藤森 芳郎, 山岸 喜代文, 春日 好雄
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1914-1917
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    15歳, 女性に発症し, 術前に乳腺線維腺腫と診断された乳腺管状腺腫の1例を経験した. 症例は15歳, 女性. 右乳房腫瘤を主訴に当科外来を受診した. 初診時, 右乳房AB領域に25×23mmの腫瘤を触知し, MRI検査ではT2強調画像で高信号を呈する境界明瞭な腫瘤性病変を認めた. 穿刺吸引細胞診にて正常あるいは良性で, 乳腺線維腺腫と診断された. 経過観察にて増大傾向を認めたため, 腫瘍摘出術が施行された. 病理組織学的検査所見では二層構造が保たれた均一な腺管の増生がみられ, 乳腺管状腺腫と診断された. 乳腺管状腺腫は上皮性良性腫瘍で稀な疾患であり, 本邦報告例では15歳以下は本症例を含めて3例のみで全体の6.7%と稀であった.
  • 館花 明彦, 太田 智彦, 前田 一郎, 福田 護
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1918-1922
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    乳腺非浸潤性アポクリン癌は稀な疾患で, 現在のところ乳癌取扱い規約では分類されていない.
    症例は51歳, 女性. 平成15年1月, 乳癌検診における超音波検査にて, 右乳房腫瘤を指摘され当院受診. 視触診, マンモグラフィにて異常所見を指摘できず, 超音波検査にて右AC領域に不整低エコー領域を認めた. 針生検で非浸潤性アポクリン癌の病理診断となり, 皮下乳腺全摘術を施行. センチネルリンパ節生検にて転移所見なく, 腋窩郭清は省略. 病理組織検査にて非浸潤性アポクリン癌, ホルモン受容体は陰性と診断. 補助療法は施行せず術後4年を経過し, 現在まで転移・再発所見を認めていない.
    本例につき, 本邦における既報告例を合わせ考察し報告する.
  • 原 祐郁, 高野 徹, 小島 一人, 蛭田 啓之
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1923-1927
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は56歳, 女性で生来健康であったが, 数年前より検診にて胸部異常陰影を指摘されており, 今回精査加療目的に紹介された. 画像上, 右心臓横隔膜角前方に最大径10cmの嚢胞性病変を認め, 心膜嚢胞を疑い胸腔鏡補助下手術を行ったが, 摘出した標本には胸腺腫の腫瘍成分が含まれる, いわゆるcystic thymoma (嚢胞状胸腺腫) であった. 組織学的にはmicronodular thymoma with lymphoid hyperplasia (MNT) でその一部が大きな嚢胞を形成したと思われる. 通常cystic thymomaと報告されているものは, 充実性部分が明瞭でその中に多胞性の嚢胞を有するが, 自験例のような薄壁の嚢胞を有するケースは極めて稀である. 縦隔の嚢胞性病変が疑われる場合は, 本疾患も念頭におく必要がある.
  • 松田 英祐, 岡部 和倫, 松岡 隆久, 平澤 克敏, 東 俊孝, 杉 和郎
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1928-1931
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の男性. 2006年8月, 肺癌にて右上葉切除 (ND2a), 胸壁合併切除術を行った. 術後の病理組織学的検査にて肺大細胞癌 (p-T3N0M0 Stage IIB) であった. 術後の化学療法は患者本人の希望でUFTの内服を行っていた. 外来にて経過観察中の2006年12月, 腰痛と血液検査上で白血球増多を認めた. 精査にて血清G-CSFの上昇と骨転移を認め, 除痛目的に放射線治療を行った. 再発巣が増大し2007年5月, 死亡した. G-CSF産生腫瘍は比較的稀であり, また治療に抵抗性の疾患である. 多くは原発巣切除前に白血球増加を生じるが, 自験例では, 原発巣切除時の白血球増加は軽度であり, 再発時に白血球増加をきたした. 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 橋田 秀明, 小室 一輝, 岩代 望, 大原 正範, 北畠 滋郎, 近藤 哲
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1932-1936
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性で, 心窩部痛のため近医で上部消化管内視鏡検査を施行, 門歯より32~34cm, 6~7時方向に2型腫瘍を認め, 生検の結果, 扁平上皮癌と診断され, 当院にて右開胸開腹胸部食道亜全摘, 胸骨後経路胃管再建術を施行した. 術後の病理検査では小細胞癌と診断されたため, VP-16, CDDPによる補助化学療法を3クール施行, その後, ネダプラチンに変更し10クール施行した. 術後6年2カ月経過した現在も再発なく経過中である. 食道小細胞癌は比較的早期より全身転移を生じるため予後不良であり, 5年生存は稀であるため若干の文献的考察を交え報告した.
  • 山中 秀高, 小野 要, 佐藤 達郎, 神谷 諭
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1937-1942
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は飲酒歴 (ブランディー50ml/日×20年) を有する39歳の女性. 左反回神経麻痺による嗄声で入院し, 食道造影および上部消化管内視鏡で径6cm大, 気管背側へ浸潤する3型の胸部上部食道癌を認めた. また, 胸部中部食道に0-II bの中分化扁平上皮癌, 胃中下部に0-II cの印環細胞癌を3個認めた. また, 胃の非癌部でピロリ菌感染を認めた. 多発食道癌と多発胃癌の重複癌と診断した. 化学放射線療法による胸部上部食道癌の消失後に, 残存する食道癌と胃癌に対し食道亜全摘+胃全摘術を施行した. 摘出標本で胃には計5個の0-II cの印環細胞癌を認めた. 術後, アルデヒド脱水酵素 (ALDH2) のDNA検査にてヘテロ欠損と判明した. 自験例はALDH2のヘテロ欠損や変異によるfield cancerizationが関連した多発食道癌例であるが, 多発胃癌に関してもfield cancerizationが, ピロリ菌感染と共に要因である可能性が考えられた.
  • 神崎 憲雄, 石井 俊一, 箱崎 半道
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1943-1947
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は80歳, 女性. 食欲不振あり, 上部消化管内視鏡検査施行. 噴門部に3型腫瘍あり, 生検にてgroup V, 高分化型管状腺癌の診断であった. 胃癌の診断にて胃全摘術 (Roux-en Y) を施行. 腫瘍は噴門部を中心に120×100mmの3型と, それに接して大小の1型腫瘍が計5個存在していた. 病理所見は高分化型管状腺癌と低分化腺癌さらに大細胞型びまん性悪性リンパ腫 (T細胞) の3腫瘍による衝突腫瘍であった. 衝突腫瘍は比較的稀な疾患であり, 本邦では腺癌と悪性リンパ腫との2腫瘍の衝突腫瘍はこれまで16例の報告があるが, 3腫瘍の衝突腫瘍の報告はない. また胃原発T細胞性悪性リンパ腫は稀であり, 衝突腫瘍報告例はすべてB細胞性リンパ腫で, T細胞性リンパ腫の報告はなかった. 予後は悪性リンパ腫に進行例が多く, 生命予後を左右しているものが多く, さらに胃原発T細胞性悪性リンパ腫はB細胞性に比べ予後不良であるといわれている.
  • 中嶌 雅之, 牧野 洋知, 永野 靖彦, 藤井 正一, 國崎 主税, 嶋田 紘
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1948-1952
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    血友病Aは, 血液凝固第VIII因子活性の先天的欠乏により出血傾向を呈する比較的稀な疾患である. 今回われわれは血友病Aの患者に対し, 周術期に第VIII因子製剤を補充しながら腹腔鏡補助下噴門側胃切除術を安全に施行できたので報告する. 症例は58歳の男性. 1964年に血友病Aと診断されている. 貧血の検査目的のために行われた上部消化管内視鏡検査により, 胃体上部胃癌と診断され腹腔鏡補助下噴門側胃切除術を施行した. 術前APTTは48.0秒と延長を認め, 第VIII因子活性は12%と低下していた. 第VIII因子製剤補充は, 2,500U/回を術前, 術中, 術後各1回行い, その後は術後21日目まで行う予定とした. 経口摂取は術後9日目から開始したが, 術後12日目に吻合部出血が疑われたため一時中止し, 第VIII因子製剤を増量し術後25日目まで追加投与した. 経口摂取は術後21日目に再開しその後は出血を認めなかった. 術後26日目に軽快退院となった.
  • 宮谷 知彦, 鷹村 和人, 東島 潤, 吉田 金広, 前田 智治, 河崎 秀樹
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1953-1956
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は56歳, 女性. 嘔気, 嘔吐を主訴に当院内科受診し, 上部内視鏡検査で十二指腸下行部後壁に直径約5cmのほぼ内腔全体を占める易出血性の隆起性病変を認め, 精査目的で入院となった. 上部消化管造影検査では十二指腸下行部に直径5cmの境界ほぼ明瞭な腫瘍を認めた. 腹部CT検査では十二指腸下行部に直径5cm大, 内部不均一で小さなcystic partをいくつか含む腫瘤を認めた. 以上の画像所見と入院後, 大量の下血を認めた為, 開腹手術を施行した. 十二指腸下行部に弾性軟な腫瘤を触知し, 前壁を切開した際, 幽門輪に接した十二指腸より発生した2cm長の茎を有する十二指腸腫瘍を認めた. 良性の腫瘍と判断し, 茎を切離し, 腫瘍を摘出した. 病理組織学的にはBrunner腺の過形成, 導管様管腔を認めた. 直径4cmを超える十二指腸腺腫は非常に稀で, 若干の文献的考察を加え報告した.
  • 中山 中, 辻本 和雄, 伊藤 憲雄, 竹内 信道, 斉藤 学, 高砂 敬一郎
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1957-1960
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は69歳, 女性. Stage II十二指腸乳頭部癌の膵頭十二指腸切除術後1年6カ月目に計6個の肝転移が出現, 肝部分切除を施行した. 転移巣の病理診断はpapillary adenocarcinomaで十二指腸乳頭部癌の肝転移と診断された. 原発巣術後5年3カ月目に右肺に単発の転移が出現し, 転移性肺癌の診断で, 右肺中葉切除を施行した. 病理診断上papillary adenocarcinomaで十二指腸乳頭部癌の肺転移と診断された. 現在, 原発巣術後6年9カ月を経過したが, 再発なく通院中である. 十二指腸乳頭部癌の術後再発の予後はきわめて不良であるが, 当症例のように切除可能な場合は積極的切除を行うことが予後の延長につながることが示唆された.
  • 木村 光誠, 平松 昌子, 野原 丈裕, 住吉 一浩, 高城 武嗣, 谷川 允彦
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1961-1965
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    中腸軸捻転を伴う腸回転異常症は多くが新生児期に発症し, 1歳以降は稀である. 今回年長児中腸軸捻転を伴う腸回転異常症の2例を経験したので報告する. 症例1は6歳, 男児. 症例2は12歳, 男児. いずれも腹痛, 胆汁性嘔吐を主訴に来院した. 腹部カラードプラ超音波検査にてWhirlpool signがみられ中腸軸捻転を伴う腸回転異常症と診断した. 症例2は3D-CT検査も行い診断の一助となった. 過去15年間に当科で経験した本症は4例と稀ではあるが, 1歳から15歳児での嘔吐, 腹痛の原因疾患として虫垂炎, 腸重積についで3番目であった. また4例のうち新生児は1例のみであった. 小児専門病院以外では年長児の症例に遭遇することが多く, 嘔吐, 腹痛症例に際して本症も念頭におくべきと考えられた.
  • 境澤 隆夫, 中山 中, 大野 康成, 竹内 信道, 伊藤 憲雄, 辻本 和雄
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1966-1969
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は36歳, 男性. Duchenne型筋ジストロフィーによる呼吸不全があり在宅で人工呼吸器管理が行われていた. 腹痛, 腹部膨満感, 嘔吐を主訴に当科へ紹介受診となり, 腹部単純X線検査で急性胃拡張と診断され入院となった. 上部消化管内視鏡検査では十二指腸水平脚に狭窄を認め, 腹部CT検査では上腸間膜動脈と腹部大動脈の間に挟まれた十二指腸が認められ, 上腸間膜動脈症候群 (superior mesenteric artery syndrome : 以下SMA症候群) に伴う急性胃拡張と診断した. 保存的療法では改善しないため, 入院後第35病日に胃空腸吻合術を施行した. 術後から約1年半が経過したが再発を認めず経過は良好である. 自験例のように胃蠕動低下を伴うSMA症候群に対して, 胃空腸吻合術は有効な術式の1つと考えられた.
  • 前田 剛志, 廣瀬 太郎, 山下 由紀, 吉田 一成, 梁 英樹
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1970-1973
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    今回, われわれは絞扼性イレウス解除術後に発症した虚血性小腸狭窄の1例を経験したので報告する. 症例は68歳の男性. 腹痛, 嘔吐を主訴に, 腸閉塞と診断され当院紹介受診. CTで小腸の拡張と腹水を認め, 腹水穿刺にて血性腹水であり, 絞扼性イレウスの診断で同日緊急手術施行した. 手術所見では回腸末端にバンドを認め, 約1mにわたり小腸の虚血性変化を認めた. 絞扼解除後, 経時的に観察すると, 腸管の血流改善, 蠕動再開が認められたため腸切除を行わず手術終了とした. 術後25日目腹痛, 嘔吐出現しCTにて腸閉塞を認め, イレウス管挿入するも症状増悪. そのため術後26日目再手術施行した. 術中所見で回腸末端の前回手術時の虚血部に瘢痕狭窄を認め, 回盲部切除術を施行した. 組織学的検査では虚血性小腸狭窄の診断であった. 絞扼解除後の腸管切除の適応について考えさせられた症例であり, 文献的考察を加えて考察する.
  • 葉 季久雄, 長島 敦, 土居 正和, 林 忍, 江川 智久, 吉井 宏
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1974-1979
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    患者は脳梗塞, 高血圧症に対し薬物治療が行われていた76歳の男性で, 前医入院中に誘因なく腹痛を訴え, 腹部CT検査にて腹腔内遊離ガス像を認めたため転院となった. 初診時の腹部所見は板状硬で, 反跳痛, 筋性防禦を認めた. 腹部CT検査上, 腹腔内全体にわたる腹腔内遊離ガス像, ダグラス窩に腹水を認めたため, 消化管穿孔, 汎発性腹膜炎の診断にて緊急開腹手術を施行した. 回盲部から口側50cmの回腸に穿孔部位を認め, 同部位からPTPの角を視認できた. 穿孔部からさらに口側10cmのところにMeckel憩室を認めたため回腸・Meckel憩室合併切除術, 腹腔ドレナージ術を施行した. PTP誤飲による消化管穿孔症例はいまだ散見される. 特に60歳以上の高齢者に多く, PTPを誤飲したことを認識していない症例も少なくない. 高齢者に対する処方の際には, 医療従事者側の薬剤包装に対する配慮が必要であると考えられらた.
  • 右田 和寛, 大山 孝雄, 坂本 千尋, 石川 博文, 山本 克彦, 渡辺 明彦
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1980-1984
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    術中内視鏡検査で出血部位の同定が可能であった小腸angiodysplasiaの2例を経験したので報告する. 症例1 : 76歳, 男性. 2004年3月17日出血源不明の消化管出血のため当院を紹介された. 腹部血管造影でも出血源を認めず, 緊急開腹術を行った. 術中内視鏡検査で, 空腸に拍動性出血を認め, 同部位を含む約10cmの空腸部分切除を行った. 病理組織学的検査でangiodysplasiaと診断した. 現在まで再出血を認めていない. 症例2 : 28歳, 男性. 2005年9月7日黒色便を主訴に当院内科を受診した. 上部内視鏡検査, 大腸内視鏡検査, 腹部血管造影で出血源を同定できず, 緊急開腹手術を行った. 術中内視鏡検査で, 空腸に出血を伴う隆起性病変を認め, 病変を含む約10cmの空腸部分切除を行った. 病理組織学的検査でangiodysplasiaと診断した. 現在まで再出血を認めていない.
  • 奥川 喜永, 毛利 靖彦, 大井 正貴, 田中 光司, 登内 仁, 楠 正人
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1985-1989
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性で2カ月前より左側腹部腫瘤を自覚し, 当科受診となった. 入院時現症では表面平滑で可動性のある腫瘤を触知し, 腹部CTで嚢胞性部分と充実性部分の混在する20cm大の腫瘍を認めた. 術前検査から確定診断には至らないものの, 上部小腸由来の腫瘍が考慮され, 開腹術を施行した. 腫瘍は上部空腸から発生し, 空腸部分切除を伴う腫瘍摘出術を施行した. 腫瘍の嚢胞内容は凝血塊を伴う褐色血性であり, 腫瘍の腸管壁付着部には充実性成分を認めた. 病理組織検査では, 紡錘形細胞が錯綜配列をとって増生し, 免疫染色でCD34陽性, c-kit陽性であり, 空腸より発生した間葉系腫瘍と診断した. 自験例を含めた嚢胞成分を伴った間葉系腫瘍の本邦報告37例について若干の文献的考察を加え報告する.
  • 木川 雄一郎, 仲本 嘉彦, 古川 公之, 池田 宏国, 小縣 正明, 山本 満雄
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1990-1993
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    66歳, 男性. 40年前に急性虫垂炎にて手術を受けた. 糖尿病のために10年前からインスリンを使用していた. 約半年前から間欠的な腹痛が頻回にあるため, 近医で胃カメラなどを受けたがはっきりした原因は不明であった. 1カ月前, 同様の腹痛が出現し, 救急外来を受診した. 臨床症状と画像所見より小腸イレウスと診断され緊急入院となった. 入院後, 絶食と補液にて速やかに症状は改善した. 明らかな原因は不明だが, 診断もかねて腹腔鏡手術を施行した. 臍上部よりカメラポートを挿入. 5mmのワーキングポート右側腹部より2箇所挿入し, 腹腔内を観察したところ, Treitz靱帯より約40cmの空腸に漿膜浸潤を伴う全周性の小腸癌を認めた. 4cmの小開腹を行い, 小腸部分切除を施行した. 今回, 原因不明のイレウスの診断と治療に対し腹腔鏡が有用であったので報告する.
  • 横尾 直樹, 北村 好史, 竹本 研史, 重田 孝信, 和形 隆志
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1994-1998
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    バリウムによる検診胃透視後5時間で発症した急性虫垂炎の1例を経験した. 症例は75歳, 男性. 検診胃透視終了5時間後より左側腹部痛と嘔気を自覚し当科受診. 臍左下部中心に下腹部全体の軽度圧痛を認め, 腹部X線写真にて結腸全域にわたる多数の憩室と共に虫垂全長がバリウムで満たされていた. S状結腸憩室炎の診断で即日入院の上保存的治療を開始したところ, 徐々に症状・所見の改善を認めた. しかし, 30時間後から腹痛が再度増強し, 48時間後には腹膜刺激症状を呈するに至り, この時の腹部X線写真にて虫垂からのバリウム漏出および虫垂壁の不整像が明らかとなった. 上記所見より緊急開腹術を施行したところ, 糞石を有する急性虫垂炎による穿孔性腹膜炎と判明した. 虫垂が完全にバリウムで描出されていようとも, 虫垂内糞石がある限り急速に虫垂炎へと進展しうることを銘記する必要があると考え, 若干の文献的考察を加え報告する.
  • 千堂 宏義, 西村 透, 中村 吉貴, 金田 邦彦, 和田 隆宏
    2007 年 68 巻 8 号 p. 1999-2003
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は31歳, 男性. 2004年11月下旬に下腹部痛を認め, 当院泌尿器科にて前立腺炎の診断で抗生剤を投与され軽快した. その後も同様の症状を繰り返していたが, 抗生剤の内服で軽快していた. 2006年12月下旬に気尿を自覚, 2007年1月9日に当院泌尿器科を受診し, 尿検査で糞尿を認めたため, 同日, 当科紹介受診となった. 腹部CT検査にて多数のS状結腸憩室を認め, 膀胱内にガス像も認めたため, S状結腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻と診断し, 手術を施行した. 膀胱壁は切除せず, S状結腸部分切除術のみ施行した. 病理組織学的にも悪性所見は認めず, S状結腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻と診断された. 今回われわれは, 非常に稀な若年発症のS状結腸憩室炎によるS状結腸膀胱瘻の1例を経験したので, 若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 古元 克好, 水野 礼, 森 友彦, 元廣 高之, 小切 匡史
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2004-2008
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は76歳, 女性. 右側腹部痛と血便を主訴に救急搬送された. 血液検査上は白血球の上昇のみであったが, 腹部CT検査上肝左葉外側区域に門脈ガスを認め, 回腸末端から横行結腸にかけて全周性壁肥厚と周囲脂肪組織濃度の上昇をみた. 全身状態は安定しており腹部所見の増悪がないため保存的加療を選択した. 下痢はあるものの血便は止まり, 入院2日後の腹部CT検査で門脈ガスの著明な減少を認めた. 圧痛が右下腹部に限局したため, 入院後3週間目に下部消化管内視鏡検査を行ったところ上行結腸中央に狭窄部を認め, その口側の観察は不可能なため造影し, 盲腸, 回腸末端の著明な狭窄をみたので腹腔鏡補助下結腸切除術を行った. 術後経過は良好で術後9日目に退院した. 病理組織診断は, 潰瘍型虚血性腸炎による腸管狭窄であった. 門脈ガス血症を伴う虚血性腸炎に対する手術適応について検討した.
  • 吉村 文博, 檜垣 賢作, 下西 智徳, 松山 悟, 那須 賢司, 白水 和雄
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2009-2013
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は96歳, 女性. 排便時下血を認め, 近医受診した際, 直腸指診で腫瘤指摘され, 直腸癌の疑いで当科紹介受診となった. 当科初診時, 直腸指診で肛門縁より約3cmに腸管粘膜反転とその先端に硬い腫瘤を触知し腹部CTの所見とあわせS状結腸腫瘍の下部直腸内重積と診断した. 臨床的にも, 画像上もイレウスの所見を認めず, 注腸造影で重積の整復が可能であった.
    手術は腰椎麻酔, 硬膜外麻酔下にS状結腸部分切除術, D1郭清施行し, 術後経過良好であった.
    大腸癌に起因する腸重積の場合, 重積部を整復するか否かは議論の余地がある. 本症例では術前整復することで, 待機手術が可能であり, 重積腸管のうっ血に伴う浮腫を予防でき過度な腸管切離を回避できた. また, 合併症を有する高齢者では, 全身状態の改善のためにも整復は有用であると思われた.
  • 安岡 利恵, 園山 宜延, 藤木 博, 森田 修司, 満尾 学, 門谷 洋一
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2014-2018
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は75歳, 男性. 生来便秘症. 65歳頃より糖尿病に対してα-グルコシダーゼ阻害剤の投与を受けていた. 74歳で右肺癌, 直腸カルチノイド, 脳梗塞を指摘された. 右肺癌は放射線治療にて加療され, 直腸カルチノイドについては経過観察中であった. 右肺癌加療後の定期検査のため他院を受診し, 腹部膨満を指摘され, 腹部CT検査で腹腔内遊離ガスを認めたため, 消化管穿孔との診断で当院に紹介された. 血液検査および身体学的所見に乏しく, CT検査では腹腔内遊離ガスと小腸と上行結腸に腸管壁内ガスを認めたが, 積極的に消化管穿孔を示す所見は認めなかったため, 気腹症を伴う腸管気腫症と診断した. その成因はα-グルコシダーゼ阻害剤が関与した腸管内圧上昇と考えられ, 内服中止などの保存的治療を行い軽快した. 本邦における気腹症を伴う腸管気腫症へのα-グルコシダーゼ阻害剤が関与した論文報告は本症例を含めて5例であり, 稀な症例である.
  • 柴崎 信一, 小松 英明, 長谷場 仁俊, 生田 安司, 山口 広之, 飛永 晃二
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2019-2023
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は76歳, 女性. 主訴は食欲不振. 胃内視鏡にて胃体下部から前庭部にかけて3型腫瘍を認め, 生検で印環細胞癌を含む低分化腺癌と診断され当科紹介となった. 注腸造影にて横行結腸に隆起性病変を認めた. 大腸内視鏡にて上行結腸から直腸にかけて多彩な肉眼形態を示す5mmから15mm大の隆起性病変が多発していた. 生検で印環細胞と低分化腺癌が混在し, 胃癌の大腸転移が示唆されたが, 胃病変は貧血, 狭窄症状を生じており, 幽門側胃切除術を実施した. 肝転移, 腹膜播種はなく, 病理診断は印環細胞癌を含む低分化型腺癌であり, se, ly3, v3, CY0であった. 大腸病変は胃癌の大腸転移と診断された. 今回の大腸への転移形式は, リンパ行性転移がもっとも考えられた. 進行胃癌症例においては, 大腸転移を念頭においた検査が必要と思われた.
  • 若山 顕治, 前田 好章, 篠原 敏樹, 濱田 朋倫, 内藤 春彦
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2024-2027
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は74歳, 女性. 前医でS状結腸癌 (中分化腺癌) に対しS状結腸切除, D3郭清, 機能的端々吻合再建を施行された. 術後20カ月, 血便, 便線の狭小化の精査のために施行された大腸内視鏡検査で吻合部のstaple line上に2型腫瘍を認め, 手術加療目的に当院紹介となった. CT検査で右肺上葉腫瘍も認めた. 初回手術時の吻合部を含めた高位前方切除, D1郭清を施行し, 2期的にVATS右上葉切除も施行した. 病理組織検査で, S状結腸吻合部の病変は中分化腺癌と診断され, 初回手術時の吻合操作による腫瘍細胞のimplantationによる再発が示唆された. 右肺上葉の腫瘍も中分化腺癌, S状結腸癌肺転移と診断された. 術後FOLFIRI療法を施行し, 術後8カ月経過した現在再発を認めていない.
  • 茶谷 成, 田原 浩, 加藤 楽, 布袋 裕士, 前田 佳之, 三好 信和
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2028-2032
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は81歳, 女性. 6年前に本態性血小板血症と診断され, ヒドロキシウレアとアスピリンを内服していた. 下血を主訴に他院を受診し, 内視鏡にて直腸S状部癌と診断され, 当院紹介となった. 当院の諸検査にて多発肺転移を伴う直腸S状部癌と診断され, 手術を施行することとなった. 一旦ヒドロキシウレアとアスピリンを休薬したのち, 血小板数46.9×104/μlの時点で高位前方切除, 虫垂切除術を施行した. 術後13日目に血小板数71.6×104/μlとなり, ヒドロキシウレアとアスピリンの内服を再開した. 出血症状や血栓症状をきたすことはなく, 経過良好であった. 術後は5-fluorouracil (5-FU), levofolinate calcium (1-LV), irinotecan hydrochloride (CPT-11) による化学療法を9クール施行し, 12カ月後現在, 再発や新たな転移巣の出現はなく, 肺転移巣の縮小を認め, PRと判定されている.
  • 松本 日洋, 有田 海舵, 黒川 敏昭, 滝口 典聡, 平沼 進, 真田 勝弘
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2033-2039
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    皮膚筋炎を合併した直腸癌の1例を経験したので報告する. 症例は52歳, 男性. 全身の倦怠感と脱力感を認め入院. 顔面と胸部の紅斑, ヘリオトロープ疹を認め, LJDH, CPK, ALD, 抗核抗体の異常高値にて皮膚筋炎と診断され, ステロイドの投与を受けた. 同時に行われた注腸検査, 大腸内視鏡検査にてRaの直腸癌が発見されたため腹腔鏡補助下で低位前方切除術を施行した. 病理組織学的検査の結果はmp, ly3, v2, nl (251), stage IIIa, 根治度Aであった. 術後皮膚筋炎の症状は一時軽快し, 筋原性酵素の値も低下した. 術後1年経過した現在再発はなく生存中である. 悪性腫瘍と皮膚筋炎との間に何らかの因果関係を示すものと思われた. また, 本疾患は予後が比較的不良とされ, 患者のQOLを重視した腹腔鏡補助下術式も治療法選択肢の1つとして考慮されるべきであると思われた.
  • 目黒 誠, 古畑 智久, 西舘 敏彦, 岩山 祐司, 石山 元太郎, 平田 公一
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2040-2044
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は57歳の女性. 2005年8月頃より肛門周囲に硬結を触知していたが放置していた. 2006年6月頃よりの排便困難と疼痛を主訴に近医受診となった. 会陰部皮下に硬い腫瘍を触知し, 生検にて顆粒細胞腫の診断となり, 2006年9月下旬に手術目的に当科入院となった. 術前精査にて腫瘍は肛門管を取り囲むように会陰部に存在した. 左側では一部, 外肛門括約筋への浸潤が疑われた. 術前に良性と診断されたことから可及的に周囲組織の損傷を最小限におさえて腫瘍を摘出した. 左側の外肛門括約筋は合併切除とした. 自験例では良性腫瘍であったため可能な限り肛門機能温存を念頭においた手術を行った結果, 切除断端近傍にまで腫瘍は存在した. 腫瘍の悪性化は約2%に生じるとされ慎重な経過観察が必要である. 自験例の腫瘍径は65mmで, これまでの報告の中では最大であり, 肛門部に発生した稀な顆粒細胞腫であった. 肛門診察の際に皮下や粘膜下に硬結を認めた時には稀であるが本腫瘍も念頭におくべきであると思われた.
  • 加藤 公一, 野本 周嗣, 杉本 博行, 金住 直人, 竹田 伸, 榊原 綾子, 中尾 昭公
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2045-2050
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は40歳, 女性. 39歳時 (14カ月前) 早期胃癌に対して, 2群リンパ節郭清を伴う胃全摘・脾摘術を施行後, 経過観察中に画像検査にて肝S8に転移性腫瘍を疑う所見があり当科へ紹介された. 腹部CT検査では肝S8に1.4cm径, 境界不明瞭な造影効果の乏しい領域を認めた. MRI検査では病変はT1強調画像で低信号, T2強調画像で淡い高信号を呈した. SPIO造影MRIでは病変はT2*強調画像で周囲肝より高信号を示し, ダイナミック検査にて動脈相で低信号, 遅延相で等信号を呈した. CTHA, CTAPでは病変部は不明瞭な低吸域を示した. 転移性肝腫瘍を疑い手術を施行したが, 術中肝に腫瘤を触知せず, 術中USで高・低エコーの混在する領域を認め, 同部を切除した. 病理組織学的検査にて標本に腫瘍は認めず, 類洞拡張と結節性再生成過形成様の所見がみられ, 本例は肝画像診断上の偽腫瘍であった.
  • 尾上 俊介, 片山 信, 小倉 豊, 白井 量久, 高 勝義, 横井 太紀雄
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2051-2055
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳の男性で, 健診にて肝腫瘍を指摘された. 腹痛, 黄疸はみられず, 血液生化学検査では肝機能, 腫瘍マーカーに異常はなく, 肝炎ウイルスマーカーも陰性であった. 腹部超音波検査, CTでは肝S4に直径40mmの境界明瞭な腫瘍がみられた. 腫瘤を生検し, 肝血管筋脂肪腫と診断された. 1年の経過観察の後, 腫瘍は直径55mmまで増大したため, 出血や肝破裂, 悪性化の可能性を否定できず, 肝内側区域切除術を施行した. 腫瘍は肉眼的に充実性で, 被膜を有し, 組織学的検索にて血管筋脂肪腫と診断された. 術後12カ月経過した現在, 再発などの兆候はみられない. 最近7年間の肝血管筋脂肪腫本邦報告例は43例みられ, そのうち7例に腫瘍の増大がみられた. 肝血管筋脂肪腫は原則経過観察となるが, 短期間に腫瘍径が増大する症例では切除の検討が必要であろう.
  • 猪狩 公宏, 東海林 裕, 熊谷 洋一, 山崎 繁
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2056-2060
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は72歳, 男性. 65歳頃より検診で肝機能異常を指摘され, スクリーニングの腹部超音波検査にて肝に腫瘤性病変を認めたことより肝生検術を施行した. 生検結果で肝細胞癌と診断されたことから肝亜区域切除術を施行した. 切除標本からも高分化型の肝細胞癌と診断されたが, 背景肝は肝細胞の腫大や脂肪沈着, 周囲への線維化などを認めたことから, 非アルコール性脂肪肝炎 (nonalcoholic steatohepatitis ; NASH) と診断した. 近年飽食の時代をむかえた本邦でもNASHは増加傾向にあると考えられている. 報告例はまだ少ないもののNASHからの肝細胞癌発癌のリスクは高く, NASHにおいては肝細胞癌発癌を念頭においた診療が必要となってくる.
  • 大澤 岳史, 塩澤 俊一, 土屋 玲, 金 達浩, 成高 義彦, 小川 健治
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2061-2066
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    患者は67歳の女性, 黄疸と右季肋部痛を主訴に入院した. 精査の結果, Dubin-Johnson症候群 (DJS) に合併した肝細胞癌 (HCC) と診断した. 術前のT. Bil値は3.8mg/dlであったが, 他の肝予備能が保たれていたため肝S5亜区域切除術を施行した. 術後, T. Bil値は5.2mg/dlまで上昇したが漸減し, 第17病日に軽快退院した. 術後13カ月で多発性の肺転移をきたしたがfluorouracil, doxorubicin, cisplatinによるFAP療法を計14コース施行し, 術後5年経過した現在, PRの状態にある. 本邦でDJSにHCCが合併し肝切除が施行された症例は, 今までに8例報告されている. いずれも術前に高ビリルビン血症を伴っていたが肝不全に至らず耐術していた. しかし, 体質性黄疸患者に肝切除を施行する場合, T. Bil値は肝障害度を直接表わす指標でないものの, 高度黄疸下の大量肝切除は黄疸が遷延することがあり注意が必要である.
  • 南 一仁, 津谷 康大, 鈴木 崇久, 宮原 栄治, 亀田 彰, 野宗 義博
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2067-2071
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    術前multi-detector computed tomography (MDCT) のみにて胆嚢十二指腸瘻および胆石イレウスが診断しえた1例を経験した. 症例は86歳, 女性, 認知症を合併. 右下腹痛を主訴として当科受診. 受診時MDCTにて25mm径の胆嚢結石を認めたが, 主訴の原因となる病変は指摘できなかった. 入院後, 症状は軽快していたが4日目に再度臍部痛および嘔吐が出現した. 緊急MDCTを施行したところ, 胆嚢十二指腸瘻および小腸へ落下した胆嚢結石がイレウスを引き起こしている像が得られた. 超高齢で認知症を合併していたためイレウス解除術のみ施行した. MDCTを用いた“胆石イレウス+内胆汁瘻”の診断は, 低侵襲で, 簡単・迅速に施行でき, 胆石イレウスのような急性腹症例を全身状態が良好なうちに一期的根治術 (イレウス解除術+胆嚢摘出術+瘻孔閉鎖術) に導ける可能性があると思われる.
  • 藤野 光廣, 光藤 悠子, 中村 誠昌, 白石 享, 下松谷 匠, 丸橋 和弘
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2072-2076
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は70歳代の男性, 平成18年4月呼吸苦, 上腹部痛の出現あり, 当院紹介となった. 急性胆嚢炎および穿孔性胃潰瘍と診断されたが, 喘息による重度呼吸不全のため, 全身麻酔下手術は危険と判断され, 保存的治療が優先された. 経皮的胆嚢ドレナージは, 呼吸停止が困難で, 穿刺ルートが確保できず断念した. 保存的治療の反応も不良であったため, 小開腹下に胆嚢外瘻を造設したところ, 著明な改善を認め, 全身麻酔下の待機的腹腔鏡下胆嚢摘出術が施行可能となった. 近年小開腹下胆嚢外瘻造設術の適応はほとんど認められなくなっているが, 一部の高リスク急性胆嚢炎では, 小開腹下胆嚢外瘻造設術が現在においても有用であることが再認識された. 若干の文献的考察をまじえて報告する.
  • 坂元 克考, 待本 貴文, 波多野 悦朗, 猪飼 伊和夫, 上本 伸二
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2077-2081
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は60歳代, 女性. 発熱, 右季肋部痛を主訴に前医受診し, 急性胆嚢炎, 肝膿瘍を伴う胆嚢癌の診断で入院された. 保存的治療にて炎症所見の改善が認められなかったため, 当科転院された. 造影CTにて胆嚢体部から肝前区域, 内側区域に及ぶ長径7cm大の低吸収域とその周囲に円形の低吸収域を多数認め, さらにその一部にリング状濃染を認めた. 急性胆嚢炎と肝膿瘍を併発した肝浸潤・肝転移を伴う胆嚢癌と考えられた. 広範肝切除を安全に行うために, 経皮経肝的胆嚢ドレナージを施行したが, 炎症所見の改善はみられず, また原因菌も同定されなかった. 保存的治療による炎症所見の改善は困難と判断し, 開腹手術に踏み切った. 肝浸潤・肝転移を伴う胆嚢癌と診断し, 肝右三区域切除を施行した. 切除標本では肝内に膿瘍は存在せず, 組織学的には胆嚢腺扁平上皮癌との診断であった. 術直後より発熱・炎症所見は劇的に改善した.
  • 仲田 和彦, 河合 庸仁, 阪井 満, 吉田 滋, 菱田 光洋, 奥村 徳夫, 森 良雄
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2082-2086
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は48歳, 男性. 膵頭部癌および同時性肝転移 (S8, S1R) の診断にて2003年4月23日幽門輪温存膵頭十二指腸切除術, 肝転移巣に対してはラジオ波焼灼術施行, 術後から2004年6月までの約14カ月間, ゲムシダビン1,400mg/bodyによる化学療法を計21回施行した. その後通院にてフォローアップ中, 2006年1月, 肝S8, S2に再発巣と思われる低吸収域を認めたため, 再びゲムシタビン投与再開, CTによる経過観察を行っていたが, 増悪傾向もないため, 2006年3月14日, S2の転移巣切除, S8転移巣に対してはラジオ波焼灼術 (以下RFA) を施行した. 初回, 再手術いずれの肝病変の病理組織学検査結果においても, 膵癌の転移巣であることが確認されている. 術後はゲムシタビンによる化学療法への本人の忌避あり, TS-1を投与中である.
  • 渡邉 克隆, 神谷 順一, 塩見 正哉, 水野 敬輔, 東島 由一郎, 神谷 諭
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2087-2091
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    脾破裂をきたした悪性リンパ腫は稀な病態であり, 医学中央雑誌で検索したかぎり14例目である. 症例は34歳, 男性. 打撲等のエピソードがないにもかかわらず, 左肩痛, 心窩部痛が1週間続き, 増強してきたため, 近医受診した. 初診時の血液検査で軽度貧血を認め, 脾周囲に液体貯留と9cm大の脾腫瘍を認めた. 脾腫瘍からの出血と診断され, 当院へ転院となり, 開腹術を施行した. 腹腔内には凝血塊を含む大量の出血を認め, 脾摘出術を施行した (750g). 切除標本を検索すると, 脾臓内部に淡赤色の腫瘤があり, 腫瘤を取り囲む脾臓実質内に血腫を認めた. 脾門で被膜が裂けて出血をきたしたものと診断した. 腫瘍の病理組織診断は悪性リンパ腫 (non-Hodgkin, diffuse large cell type) であった. 術後経過は良好で補助化学療法施行後, 術後12カ月無再発生存中である.
  • 金子 直征, 三浦 康, 小林 照忠, 木内 誠, 小山 淳, 佐々木 巌
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2092-2098
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は58歳, 男性. 4カ月間にわたり増悪と軽快を繰り返す右下腹部の腫瘤を主訴に近医を受診し, desmoidが疑われ当科紹介となった. 生検標本について免疫組織化学検査を追加したところ, 炎症性筋線維芽細胞性腫瘍 (inflammatory myofibroblastic tumor : 以下IMTと略記) が疑われ, 腫瘤摘出術を行った. 腫瘤は下腹部正中やや右寄りの皮下に認め, 腹直筋にも浸潤していたため, 周囲脂肪組織, 腹直筋と共に腫瘍を切除した. 腫瘍の大きさは50×55×30mmで, 切除標本では, 境界不明瞭で黄色調と白色調の部分が混在していた. 病理組織診断では, 紡錘形細胞の束状配列, 形質細胞やリンパ球などの炎症細胞や組織球が混在し, 免疫染色でHHF-35陽性, α-SMA陽性, β-catenin核染色性陰性であり, IMTと診断した. IMTは束状に増生する筋線維芽細胞にリンパ球, 形質細胞, 好酸球など種々の炎症細胞浸潤を伴い, 近年その発症機序が注目されている炎症性かつ腫瘍性の病変である.
  • 元宿 めぐみ, 種田 靖久, 森川 五竜, 向井 正哉, 幕内 博康
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2099-2102
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の男性. 夕方より突然心窩部痛が出現し, 徐々に症状が増強してきたため当院救急外来を受診した. 理学所見では, 心窩部から右下腹部にかけての圧痛を認める以外に異常を認めなかった. 腹部CTでは, 肝・脾周囲からダグラス窩に至るまで広範に腹水貯留を認めた. 右下腹部腹壁直下では腸管を背側に圧排するように限局性の低吸収域を認め, 内部には一部造影剤の漏出と思われる高吸収域がみられた. 腹腔穿刺で腹水は血性で, さらに血管造影検査で大網動脈の末梢枝から造影剤の漏出を認め, 大網出血による腹腔内出血と診断した. 同日緊急手術を施行, 腹腔鏡下で腹腔内全体を観察すると, 右下腹部の大網上に多量の血腫を認めた. 出血部近傍の正中に小切開を加えて大網を体外に引き出し, 出血点を同定, 結紮止血した. 原因が不明な特発性大網出血は稀な疾患である. 突発性の腹腔内出血においては本症も鑑別診断として念頭に置く必要があると考えられた.
  • 佐藤 嘉紀, 太田 信次, 中村 康孝
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2103-2106
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は50歳, 女性. 腹痛, 背部痛にて受診後, 腹部CTにて上腸間膜動脈根部周囲に軟部組織の肥厚を認め, 入院した. 同部はMRIのT2強調画像にて高信号を示した. 血液検査では腫瘍マーカーや抗核抗体, 免疫グロブリン, IL-2レセプターなどに異常は認められず, その他の画像検査では上部および下部消化管内視鏡, FDG-PETにても悪性病変は認められなかった. 後腹膜線維症と診断し, プレドニゾロン30mg/日投与開始した. その後腫瘍は縮小し, 症状も軽快した. プレドニゾロンは漸減し, 休薬した現在のところ腫瘍の増大は認めていない. 後腹膜線維症は通常腎門部から仙骨部に発生することが多く, 進行例は無尿, 水腎症を生じるが, 上腸間膜動脈根部周囲に生じた報告例は少なく, 文献的考察を加えて報告した.
  • 田中 顕一郎, 雨宮 剛, 西尾 秀樹, 小田 高司, 梛野 正人, 二村 雄次
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2107-2112
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は65歳, 男性. 平成18年1月に腹部腫瘤を自覚し, 2月に近医で巨大肝腫瘍を疑われて当科に紹介された. 腹部に直径25cmの可動性不良な腫瘤を触知し, 腹部造影CT検査で肝右葉の尾側, 上行結腸の腹側に径24×16×9cmの不整形腫瘤を認め, 胆嚢, 膵, 十二指腸は圧排されていた. 腹腔内GISTあるいは脂肪肉腫を疑い3月14日手術を施行した. 腫瘍は後腹膜由来で肝S6, 横行結腸と強く癒着していたため, 腫瘍切除, 肝S6部分切除, 横行結腸切除術を行った. 術中・標本所見からは脂肪肉腫を疑ったが病理組織学的に腫瘍内に脂肪肉腫や軟骨肉腫といった多彩な肉腫成分を認め, 悪性間葉腫 (malignant mesenchymoma) と診断された.
  • 稲葉 基高, 赤在 義浩, 野崎 哲, 木村 秀幸, 筒井 信正
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2113-2119
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    仙骨前epidermoid cystの2成人例を経験したので報告する. 症例1は51歳, 女性. 主訴は排便困難. CTにて仙骨前面に7cm大で一部充実性の不整形腫瘤を指摘された. 症例2は36歳, 女性. 排尿困難を主訴として受診し, MRIにて17cm大の嚢胞性仙骨前腫瘤を指摘された. 両者とも鑑別診断としてはdermoid cystやtail-gut cystが考えられた. 腫瘍摘出術を施行. 病理学的には両者とも角化物と扁平上皮を認め, 毛髪や皮脂腺などの付属器および軟骨成分などは認めず, epidermoid cystと診断され, 悪性所見は認めなかった. 仙骨前部のepidermoid cystは成人では稀だが悪性腫瘍や感染の合併も報告され, 診断後は腫瘍摘出術をすべきと考える. 今回, 自験例に加え過去の本邦報告例を集計し若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 檜垣 栄治, 岡田 禎人, 佐伯 悟三, 広松 孝, 会津 恵司, 新井 利幸
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2120-2125
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は31歳, 女性. 子宮筋腫疑いで近医より当院に紹介となった. 腹部造影CTでは右総腸骨動静脈の背側に全体が造影され一部に嚢胞成分をともなう53×72mmの腫瘤性病変を認めた. 血管造影では右総腸骨動脈起始部近傍に腫瘍濃染像を認めたが, 同血管のencasementは認めなかった. 術前には確定診断はつかず骨盤内腫瘍の診断で腫瘍摘出術を行った. 腫瘍は被膜を有し大血管など周囲の組織から容易に剥離された. 切除標本の病理組織診断はCastleman病hyaline vascular typeであった. 術後の経過は良好で合併症なく退院した. 本邦報告例によるとCastleman病は縦隔, 頸部に好発し, 骨盤内に発生することは稀である. また, 大きな腫瘤を形成しても主要血管に浸潤することは少なく切除可能なことが多い.
  • 大原 守貴, 三宅 洋, 菊池 剛史, 原 順子, 君塚 圭
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2126-2129
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は63歳, 女性. 平成13年12月他医で結腸癌の診断で右結腸半切除術を施行, 術後腸閉塞を併発したが保存的治療で軽快した. 平成15年5月頃より腹壁瘢痕ヘルニアを認め, 平成15年7月当院でコンポジックスメッシュを用いた修復術を施行した. 外来経過観察中, 発熱を伴う腹痛を主訴に平成18年6月救急外来を受診した. 腹部広範囲に圧痛があり, 腹部X線CT検査で腹壁内に小ガス像を伴う低吸収域を認めたため, メッシュ感染, 腹壁膿瘍と診断した. 即日加療目的に入院, 切開排膿及びドレーン挿入を行った. 膿培養でStrep tococcus intermediusを検出した. 連日洗浄を行ったが, 感染が遷延したために, メッシュ除去術及び洗浄ドレナージ手術を施行した. 術後ヘルニアの再発, 感染の再燃は認めていない.
    腹壁瘢痕ヘルニアの術後3年を経過してメッシュ感染を発症した1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 稲垣 大輔, 片山 清文, 白石 龍二, 田邉 浩悌, 谷 和行, 安田 章沢
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2130-2134
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    白線ヘルニアは腹壁ヘルニアの1つで, 本邦では稀な疾患である. 腎不全増悪による腹水貯留が契機と考えられた白線ヘルニアの嵌頓の1例を経験したので報告する. 症例は45歳, 女性. 体重103kg. 以前より上腹部正中に鶏卵大の腫瘤を指摘されていたが放置していた. 糖尿病性腎症による腎不全が進行したため入院. 急激に腹水貯留が増悪し, 同時に上腹部の腫瘤も増大した. その後, 嘔吐と腹痛を訴え, 上腹部の腫瘤には圧痛が出現した. 白線ヘルニア嵌頓によるイレウスと診断し, 緊急手術を施行した. 上腹部には白線の欠損部位より突出するヘルニア嚢を認めた. ヘルニア内容は小腸で, 腸管に虚血による損傷を認めたため, 腸管切除を施行した. ヘルニア門は縫合閉鎖した. 術後12カ月を過ぎた現在再発を認めていない. 本症例は, 腹水貯留による異常な腹圧が加わったために, ヘルニア嵌頓を発症したと考えられた.
  • 米沢 圭, 谷口 正展, 下松谷 匠, 丸橋 和弘
    2007 年 68 巻 8 号 p. 2135-2139
    発行日: 2007/08/25
    公開日: 2008/08/08
    ジャーナル フリー
    症例は61歳, 男性. 2年前より右鼠径部の膨隆に気付くが還納可能にて放置. 平成18年10月に急に膨隆が大きくなり疼痛も生じたため2日後に当科受診. 右鼠径部から右陰嚢が5×10cm大に膨隆しており右外鼠径ヘルニア嵌頓と診断とした. 内容は固形で徒手還納は不能であった. 腹部症状はなく, 腹部CTにても大網の嵌頓が疑われた. 緊急手術を勧めたが, 本人の希望にて翌日に待期的手術を施行した. 鼠径管を解放しヘルニア嚢を切開したところ, 腫大した虫垂と虫垂間膜が嵌頓していた. 虫垂根部を創外に引き出し定型的に虫垂切除術を施行した. 病理所見では蜂巣織炎性虫垂炎で局所的膿瘍が認められた. 汚染創となるので十分に洗浄した後, 後壁補強はBassini法を行った. 術後は, 皮下・鼠径管の感染が認められ, 創部洗浄を励行した. 退院後も外来にて創部管理を行い4カ月後に治癒した. 鼠径ヘルニアの虫垂嵌頓は珍しく, 文献的考察を加えて報告する.
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