日本臨床外科学会雑誌
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69 巻, 6 号
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原著
  • 土井 卓子, 田辺 美樹子
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1293-1302
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    KL-6はII型肺胞上皮細胞などに発現するシアロ糖蛋白抗原で,間質性肺炎患者血清中で高値となることが多い.悪性腫瘍で高値例が報告されており,乳癌の腫瘍マーカーとしての意義を考え,KL-6の値と乳癌の転移・再発の有無,部位,治療効果,他の腫瘍マーカーとの関連を検討した.202例の乳癌(無再発158例,進行・再発44例)を対象とし,電気化学発光免疫測定法で測定した.再発のマーカーとしての最適カットオフ値は290.5U/mlであり,進行・再発群は無再発群と比較し有意に高値で,感度75%,特異度79.1%,診断効率78.2%,陽性適中率50%,陰性適中率91.2%であった.再発時の上昇は他のマーカーと有意に連動した.治療効果判定因子としてKL-6は改善群で有意に低下,増悪群で上昇した.KL-6は乳癌の転移・再発の診断,治療効果の判定に有用と考えられた.
  • 信岡 大輔, 後藤田 直人, 小西 大, 中郡 聡夫, 高橋 進一郎, 木下 平
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1303-1307
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    目的:早期胃癌の術前検査におけるMDCTの有用性を評価し,必須か,あるいは省略可能かにつき検討する.対象および方法:2006年の1年間に当院で行った胃癌手術のうち術前診断T1の144例を対象とし,術前検査所見を手術所見および病理所見と比較検討した.結果:リンパ節転移診断の感度は7%,特異度は97%,正診率は87%であった.術前MDCTにて検出された他疾患には胆嚢結石・肝血管腫・肝嚢胞・腎嚢胞等があるも,胆嚢疾患以外は術式決定に影響を及ぼさず,またその殆どが超音波検査で検出可能であった.考察:MDCTは早期胃癌では腫瘍描出能が悪いうえリンパ節転移診断の正診率も低く,術前stagingとしての有用性は低いと考えられた.MDCTの結果で手術操作の変更・追加を要した事例は認められなかった.結論:早期胃癌の術前検査においてMDCTの有用性は低く超音波検査で代用できる可能性が示唆された.
  • 広松 孝, 長谷川 洋, 坂本 英至, 小松 俊一郎, 田畑 智丈, 夏目 誠治, 青葉 太郎, 土屋 智敬, 松本 直基
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1308-1316
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    術後創感染を伴う患者の入院期間短縮を目的に感染創の処置法を変更した.2000年1月から2006年6月までに当科で施行した大腸手術中,創感染をきたした200例を対象に,変更前の2004年9月までを前期,変更後の同10月以降を後期とし術後在院期間などを検討した.前期(n=146)では,創を開放後,消毒しガーゼで被覆した.後期(n=54)では,創洗浄しアルギン酸塩創傷被覆剤を充填した.また患者へは自己洗浄処置を指導した.創感染発症までの期間は差がなかったが,術後平均在院日数は前期44.18±29.0日vs.後期25.1±16.9日(ρ=0.0009),総医療費は前期22.6±17.1万点vs.後期13.4±4.1万点(ρ=00013)と有意に減少した.大腸・直腸手術の術後創感染において,創の開放ドレナージ・洗浄・アルギン酸塩創傷被覆剤・患者への啓蒙・指導が入院期間・入院費用削減に有用であった.
症例
  • 小林 宏暢, 村岡 曉憲, 田上 鑛一郎, 菊森 豊根, 今井 常夫
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1317-1320
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は17歳,女性.妊娠23週.2005年5月,左乳房のしこりを自覚し受診.左乳房A領域に3.5cmの境界明瞭,可動性良好な腫瘤を認めた.穿刺吸引細胞診では疑陽性.針生検でTubular adenoma.良性腫瘍と診断し経過観察.妊娠経過順調.腫瘤は徐々に増大.2005年9月出産.正常分娩.腫瘤は授乳中に最大7.3cmまで増大.その後徐々に縮小.2006年7月授乳終了.腫瘤は5.1cmまで縮小し,局所麻酔下に摘出術を施行.摘出標本は径6×5×2.5cm,楕円形,表面平滑.切開を加えると腫瘤は嚢胞性で中には白色泥状物が詰まっており,臨床的には乳瘤であった.病理組織所見は嚢胞性変化を伴ったlobular hyperplasiaであった.
  • 松隈 聰, 須藤 隆一郎, 犬尾 浩之, 倉田 悟, 中安 清, 亀井 敏昭
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1321-1325
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は60代女性.乳腺エコーにて左乳房C区に10mm大の腫瘤を認めた.穿刺吸引細胞診にて悪性の診断を得たため,手術予定となった.術前に施行した骨シンチグラフィで両側胸鎖関節,頸椎,腰椎に集積を認めた.CT上,右胸鎖関節の腫瘤は軟部陰影と胸骨右側の骨化像を伴っていた.手掌と足底に膿疱性病変があり,掌蹠膿疱症と診断され,腫瘍径からも転移は否定的であったため,骨病変はSAPHO症候群の一症状と診断し,左乳房切除術を施行した.摘出標本の病理検査では,非浸潤性乳管癌の診断であった.術後,右胸鎖関節の腫瘤も生検したが,悪性細胞は認めなかった.悪性腫瘍の術前検査において骨シンチグラフィで転移を疑う99mTcの集積を認めた場合は,全身性疾患の合併も考慮し,詳細な診察が必要であると考えられた.
  • 服部 正也, 森園 英智, 秋山 太, 蒔田 益次郎, 堀井 理絵, 岩瀬 拓士
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1326-1330
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    乳腺の腺様嚢胞癌は稀ではあるが,特徴的な細胞像を有し,その像を認めれば組織型診断まで可能である.今回穿刺吸引細胞診で組織型診断しえた乳腺腺様嚢胞癌の1例を報告する.症例は77歳,女性.左外上領域に3cm大の腫瘤を自覚し来院した.マンモグラフィ,超音波検査では辺縁不整な腫瘤として認められ,dynamic MRIサブトラクション像では早期から造影された.穿刺吸引細胞診では,異型の弱い癌細胞が極性なく粘液様間質を取り囲む様に配列する腺様嚢胞癌に特徴的な細胞像が認められ,悪性,腺様嚢胞癌と診断された.乳房部分切除とセンチネルリンパ節生検が施行され,腋窩リンパ節転移は認められず,ホルモンレセプターは陰性でHer2も0だった.乳腺の腺様嚢胞癌は稀な腫瘍であるが,その特徴的な細胞像を認識しておくことは診断精度向上や適切な治療方針の選択に役立つと考えられた.
  • 藍澤 哲也, 田中 康一, 木村 靖彦, 野口 琢矢, 野口 剛
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1331-1334
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    患者は84歳,男性.背部皮下の手拳大の腫瘤に気づいたため来院した.50年前に肺結核に対して胸郭成形術を施行され,以降とくに問題なく経過していた.疼痛・発赤などは認めなかったが,徐々に増大傾向にあるとのことで本人希望により手術を施行した.術前には診断されなかったが,術中に胸腔内にガーゼの塊を確認でき,ガーゼによる異物肉芽腫症であることが判明した.手術はガーゼの摘出と洗浄を行った.術後の経過は良好で第16病日に独歩退院となった.
    開胸術の既往があり胸部異常陰影を呈している症例,とくにレントゲン感光物の入っていないガーゼが使用されていた時代の手術症例ではガーゼによる異物肉芽腫症の可能性も考慮すべきである.
    腹腔内に比べ,胸腔内のガーゼによる異物肉芽腫症の報告は極めて少ない.過去の報告例の文献的考察を含めて報告する.
  • 黄 哲守, 高山 亘, 矢野 佳子, 菅谷 睦, 岡田 正, 小林 進
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1335-1340
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    ヒト肺犬糸状虫症は,犬糸状虫の感染幼虫が人体内に移行し,肺動脈末梢に栓塞して形成される肉芽腫で稀な肺疾患である.今回われわれは直腸癌肺転移と思われたが,切除後にヒト肺犬糸状虫症と診断した1例を経験したので報告する.症例は65歳,男性.健診にて便潜血反応陽性,胸部異常陰影を指摘され平成17年8月当院受診.精査の結果,直腸癌・同時性肺転移と診断され同年9月低位前方切除術,肺部分切除術を施行した.病理結果は,直腸が高文化型腺癌であったが,摘出された肺の結節は壊死を伴った線維性肉芽組織で,一部に犬糸状虫の虫体を認め,肺犬糸状虫症と診断した.
  • 西村 元宏, 小林 雅夫, 川合 寛治, 谷岡 保彦, 濱頭 憲一郎, 能見 伸八郎, 土橋 康成
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1341-1344
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    肺癌の大腸転移は剖検の2~3%と比較的稀である.生前に診断され手術を受けた症例の報告はさらに少ないが,予後は不良である.症例は80歳,女性.平成15年6月に肺大細胞癌に対し右上葉切除術を受けた(pT1N0M0 stage1A).平成16年3月初旬より腹痛と便秘,全身倦怠感あり腸閉塞と診断され3月下旬に当院入院となった.大腸内視鏡検査および注腸造影検査を施行したところ横行結腸に潰瘍を伴う全周性の隆起性病変を認めた.生検にて肺癌の大腸転移が疑われた.入院の約3週間後に横行結腸切除を施行したが,腹水が貯留しており細胞診にて悪性細胞を認めた.また多発性の肝転移を認めた.敗血症を併発し,術後第25病日に失った.
  • 奥村 隆志, 加藤 雅人, 安蘓 鉄平, 大城戸 政行, 一宮 仁, 中垣 充
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1345-1349
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.平成14年11月当院内科にて胃癌,食道癌の同時性重複癌と診断された.平成14年11月25日当科にて胃全摘術を施行し,術後に食道癌に対して放射線治療を施行した.平成17年12月左胸壁腫瘤が出現した.放射線化学療法を行ったが,腫瘤は増大し,左前胸部痛も増強したため,平成19年6月手術目的で当科入院となった.入院時には左前胸部に可動性不良,圧痛を伴う腫瘤を認め,左上肢には著明な浮腫を認めた.画像検査では大胸筋内に3個の腫瘤を認めた.転移性胸壁腫瘍の術前診断で左大胸筋切除術を施行した.病理検査では高~中分化腺癌を認め,胃癌の転移と診断された.術後,左前胸部痛および左上肢の浮腫は消失し,QOLの改善が得られた.胃癌の骨格筋転移は稀で,本邦報告例では自験例を含めて31例に過ぎない.大胸筋への転移は本症例のみであった.
  • 手島 伸, 斎藤 俊博, 湯目 玄, 遠藤 文庫, 菊地 秀, 鈴木 博義
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1350-1354
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.2006年12月の検診での上部消化管透視で胃に異常を指摘された.その後の内視鏡検査で胃体上部後壁にBorrmann3型腫瘍を認め胃癌(低分化腺癌)と診断された.腹部CTでは胃後壁に造影効果を伴った腫瘤,小彎側に複数の腫大リンパ節を認めた.膵臓に転移は確認できなかった.2007年1月に手術を施行,リンパ節はNo.1,3,4d,7,11pが腫大し一部膵への浸潤を認めた.さらに膵尾部に径15mmの孤立性腫瘤を触知した.S-T3,N2,H0,P0,CY0,M1(panc)StageIV,術式は胃全摘兼膵脾合併切除(D2郭清)とした.
    病理診断では胃原発巣は中分化型管状腺癌,壁深達度SS,N3(4sb,11p,11d,16a2計4/94),膵実質内の腫瘍も胃と同様の組織像を示す中分化型管状腺癌で胃壁,リンパ節との連続性はなく単発性の膵転移と診断した.
    術後14カ月,再発の徴候はなく外来通院中である.
  • 兼清 信介, 北原 正博, 多田 耕輔, 久保 秀文, 長谷川 博康, 宮下 洋
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1355-1358
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.脳出血を発症し当院脳外科にて入院加療中であった.入院後12日目より少量のタール便を認め,翌日に大量となりショックをきたした.緊急の上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部前壁に出血性の潰瘍を認めた.内視鏡的に止血が試みられたが深達度がかなり深く,止血困難であると判断された.同日外科紹介となり,緊急手術を施行した.腹腔内に汚染腹水はなく,十二指腸潰瘍が胆嚢壁に穿通しており,胆嚢壁より動脈性に十二指腸内に出血している状態であった.まず,出血部位を縫合止血し胆嚢を摘出したのち,十二指腸潰瘍の穿通部閉鎖ならびに大網被覆を行った.十二指腸狭窄をきたすと考えられたため,胃空腸吻合を追加した.術後経過は良好で,合併症は認められなかった.今回,胆嚢壁に穿通し出血性ショックをきたした十二指腸潰瘍の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 岡屋 智久, 川辺 晃一, 伊藤 博, 鈴木 裕之, 諏訪 敏一, 宮崎 勝
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1359-1363
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は41歳,男性.コーヒー残渣様嘔吐を主訴に来院.上部消化管内視鏡検査で十二指腸球部に露出血管からの出血を伴う潰瘍を認めた.同血管周囲は壁硬化著明でクリッピング不能でありエタノールを局所注入した.その後も吐血と貧血増悪を繰り返したため,経カテーテル動脈塞栓術(Transcatheteric arterial embolization;TAE)を目的に腹部血管造影を施行.血管造影において造影剤の血管外漏出は認めず,責任動脈の同定を確実にするため内視鏡検査を併施した.注目していた潰瘍露出血管よりガイドワイヤーが十二指腸内腔に露出するのを内視鏡で確認でき,同動脈に対してTAEを施行した.術後の内視鏡検査では潰瘍病変の消退を認めた.血管造影と同時に内視鏡検査を併施することにより責任動脈を正確に同定し,塞栓後の組織阻血による合併症を併発することなくピンポイントで安全にTAEを施行しえた.
  • 鳥越 貴行, 宮下 薫, 福田 進太郎
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1364-1367
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    von Recklinghausen病に合併した十二指腸副乳頭部カルチノイドの1例を経験したので報告する.症例はvon Recklinghausen病を有する51歳,女性.近医での上部消化管内視鏡検査にて十二指腸下行脚に粘膜下腫瘍を指摘され,当院内科に紹介となった.生検で十二指腸カルチノイドと診断され,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理組織学的検査にてリンパ節転移を伴う十二指腸副乳頭部カルチノイド腫瘍と診断した.von Recklinghausen病は悪性腫瘍の合併頻度が高く,定期的なサーベイランスが必要であり,稀ではあるが十二指腸カルチノイド合併の可能性も考慮しなければならない.
  • 徳久 元彦, 亀田 久仁郎, 遠藤 和伸, 盛田 知幸, 久保 章, 竹川 義則
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1368-1372
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.検診の上部消化管内視鏡検査で,幽門輪近傍の十二指腸球部小彎前壁に発赤調,表面平滑,立ち上がりの急峻な1cm大の隆起性病変が指摘された.生検で中~高分化型腺癌であり十二指腸早期癌と診断した.視野の確保が困難であり,内視鏡的切除不能と判断し,幽門側胃切除術を施行した.病理組織診断では十二指腸に0.7×1cm大の腺窩上皮と胃底腺を有する異所性胃粘膜を認め,その一部に2mm大の高分化型腺癌を認めた.異所性胃粘膜から発生した腺癌と考えられた.極めて稀な症例であるため,若干の文献的考察を加えてこれを報告する.
  • 下國 達志, 青木 貴徳, 大黒 聖二, 奥田 耕司, 高田 譲二, 浜田 弘巳
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1373-1377
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は30歳,女性.左腹部の激痛を訴え当院受診.帝王切開と子宮筋腫核出術の既往あり.左腹部に腹膜刺激症状があり,腹部CTで左上腹部の限局性小腸ガス像を認めたことから,絞扼性イレウスの診断で緊急手術施行となる.Treitz靱帯より60cm肛門側の小腸間膜にリンパ節様結節性病変が付着し,そこから伸びる索状物で小腸の一部が絞扼されていた.索状物と結節性病変の切除によりイレウスは解除された.病理所見で,結節性病変は変性壊死と多量の好中球,組織球,好酸球浸潤を背景とする1mm径程度の好酸性構造物から成り,アニサキス虫体の一部との結果を得た.アニサキス症は大部分が胃・小腸を主とする消化管壁の急性炎症として発症するが,自験例は消化管外アニサキス症により絞扼性イレウスを生じた稀な症例であり,同様の報告は本邦で僅か6例である.非常に頻度は低いが,絞扼性イレウスの原因疾患として,本症を理解しておく必要がある.
  • 大城 望史, 山崎 浩之
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1378-1382
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は103歳,男性.88歳時に壊疽性胆嚢炎に対して胆嚢摘出・胆管結石採石術の既往あり.腹痛,腹部膨満を主訴に当院に救急搬送された.諸検査にて癒着性イレウスと診断し入院したが,2日後炎症反応の増悪,腎機能低下を認め,腹部X線でイレウスの増悪を認めたため,絞扼性イレウスと診断し同日緊急開腹術を施行した.小腸の一部が絞扼していたが,腸管壊死は認めなかったので,癒着剥離術を行った.術後の経過は良好で,21病日に療養型病床に転棟し,35病日に退院した.
    100歳以上の超高齢者手術の報告は稀であるが,重症基礎疾患を認めず,低侵襲な手術であれば,安全な手術が可能であると考えられた.
  • 千堂 宏義, 白川 幸代, 西村 透, 金田 邦彦, 藤原 英利, 和田 隆宏
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1383-1386
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    鈍的腹部外傷後41年目に腸閉塞をきたした1例を経験したので報告する.症例は53歳,男性.12歳時に腹部を強打した既往があった.2007年7月下旬に腹痛で近医を受診し,投薬のみで軽快した.8月上旬に再び腹痛を認め近医を再受診,精査加療目的で当院紹介受診し,腸閉塞の診断で緊急入院となった.腹部造影CTおよびイレウス管造影検査で小腸の狭窄を認めたため開腹手術を施行した.開腹所見では小腸間膜はひきつれて広範囲に線状の線維性瘢痕を認め,その一部に索状物が形成されて腸間膜同士が癒着し,同部の小腸が屈曲,狭小化していた.索状物の切離と癒着剥離のみで小腸の狭窄は解除したため腸切除は行わず,術後経過は良好であった.鈍的腹部外傷後,稀に遅発性の腸閉塞をきたすことがあるが,そのほとんどが受傷から1カ月以内に発症するとされている.自験例は受傷後41年という非常に長い期間を経過して腸閉塞を発症したきわめて興味深い症例と思われた.
  • 日高 英二, 石田 文生, 久保 かずえ, 遠藤 俊吾, 田中 淳一, 工藤 進英
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1387-1391
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.多量飲酒による急性膵炎で入院となった.重症度IIで,nafamostat mesilateの動注療法,抗生剤投与,持続的血液濾過透析を施行し,経過良好であった.入院後17日目に食事開始し,特に問題なかったが,入院後44日目に腹痛・腸閉塞症状が出現した.腹部CT検査で回腸末端部の壁肥厚,大腸内視鏡検査では回腸末端部に全周性狭窄が認められ,小腸造影検査では,回腸末端部に2カ所の高度狭窄像が認められた.回腸狭窄による腸閉塞に対して,回腸部分切除術を行った.切除標本では,2カ所に全周性の狭窄を認めるのみで,肉眼的には腫瘍性病変などは認めなかった.病理組織学的には,炎症性線維化による瘢痕狭窄の所見であった.重症急性膵炎治癒後の小腸狭窄は稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 辻本 浩人, 安村 幹央, 立山 健一郎, 森 美樹, 阪本 研一
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1392-1396
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は92歳,男性.平成14年8月,平成16年10月,イレウスで入院加療をうけている.平成17年1月3日,嘔吐,腹部膨満感で当院を受診した.腹部X線撮影でイレウスと診断され内科に入院した.注腸造影検査で横行結腸にapple core signを認め,大腸内視鏡検査で横行結腸に2型様の狭窄病変を認めた.横行結腸癌によるイレウスと診断され,2月2日に当科へ転科した.2月10日に手術を施行した.横行結腸腫瘍とは別に,回腸末端より110cm口側の小腸に順行性の腸重積を認め,先進部に腫瘍を認めた.手術は小腸腫瘍部腸管切除および横行結腸切除を行った.小腸腫瘍は病理組織学検査でspindle cellよりなる腫瘍を粘膜下に認め,免疫染色でc-kit(+),CD34(+),S-100(-),SMA(-)でGISTと診断された.本例で度重なるイレウスの原因は,小腸に発生したGISTによる腸重積で,また腸重積の原因としては管内より管外に連続した腫瘍がダンベル型であったためと考えられた.
  • 大井 健太郎, 中村 泰啓, 西村 興亜
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1397-1402
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    63歳,男性.平成18年9月,十二指腸潰瘍にて当院内科入院中に腸閉塞を発症.腹部CT検査および小腸造影検査にて回腸に壁肥厚を伴う紡錘状の拡張部を認めた.イレウス管挿入にて腸閉塞はいったん改善したが,平成19年3月に再度腸閉塞を起こし再入院.この時もイレウス管挿入にて症状は改善したが,腸閉塞を繰り返す原因はこの拡張部小腸にあると考え,待機的に手術施行.切除回腸に紡錘状に拡張した限局性病変と,その近傍の腸間膜に線状の瘢痕ならびにリンパ節腫大を認め,病理組織学的に濾胞性リンパ腫およびその転移と診断された.腸閉塞を繰り返していた機序として,腫瘍の自重により回腸が腸間膜ごと捻転し,腸管内減圧に伴ってその捻転が解除されていたものと推察された.小腸腫瘍において,腸捻転を発症機序とした腸閉塞の報告例はMeckel憩室より生じた腫瘍による2例のみであり,本症例は稀な回腸捻転の症例と考えられた.
  • 山田 好則, 加藤 雄治, 中村 理恵子, 浅沼 史樹, 斉藤 雅俊, 森永 正二郎
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1403-1407
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    乳癌根治術後7年目の再発に対する化学療法中に,小腸転移巣の穿孔による急性腹症を発症した54歳の女性の症例を報告する.肺転移に対するdocetaxelの投与開始後約1カ月,突然の腹痛を伴って汎発性腹膜炎を発症した.緊急手術で空腸に孤立性の1.5cm大腫瘍と同部の穿孔が認められ,腸管切除術を行った.病理組織学的に,腸管壁全層にわたるsolid tubular carcinomaの転移が認められた.術後創感染を起こしたものの回復したが,術後約1カ月に肺梗塞を発症して死亡した.
    乳癌の消化管転移は稀ではないが,穿孔を伴う小腸転移の報告例は極めて少ない.穿孔の原因は,腸壁への腫瘍浸潤であると思われるが,本例では化学療法との関連性も考えられた.乳癌は再発後の薬物療法などによる長期生存例が多く,日常診療においても,本例のように腹部救急の対象となる病態の発症も念頭においておくべきものと思われた.
  • 田口 誠一, 泉 俊昌, 森川 充洋, 杉森 順二, 林 泰生, 山口 明夫
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1408-1412
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.右下腹部痛,嘔吐にて来院した.腹部CT検査にて上行結腸内に多重構造を示す重積腸管を認めた.回腸悪性腫瘍を先進部とする腸重積を疑い,重積腸管を整復せず,回結腸動脈根部までの郭清を伴う回盲部切除術を施行した.腫瘍は回盲弁から30cmの回腸に存在しIIa型高分化腺癌であった.深達度はmでリンパ節転移は認めなかった.早期小腸癌は稀な疾患であり,文献的考察を加え報告する.
  • 神谷 和則, 岩重 弘文, 唐沢 学洋, 唐沢 洋一, 河野 透, 葛西 眞一
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1413-1417
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,女性.黒色便を認め,精査目的に当院へ紹介された.大腸内視鏡検査で回盲弁に30mm大の腫瘤を認め,回盲部粘膜下腫瘍の診断で回盲部切除術を施行した.腫瘍は回盲弁上に存在し,35×25×20mmの大きさであった.病理組織検査では,カルチノイド腫瘍,漿膜下層浸潤,リンパ節転移陽性であった.術後2年経過した現在,再発を認めていない.
    回盲弁カルチノイドは稀であり,本邦報告例は15例であった.また,回盲弁近傍例を含めても50例であった.今回,回盲弁カルチノイドの1切除例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 内野 基, 池内 浩基, 松岡 宏樹, 中村 光宏, 中埜 廣樹, 冨田 尚裕
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1418-1422
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    潰瘍性大腸炎では,回盲弁をこえて炎症が進展し,back wash ileitis(BI)を引き起こすことがある.今回,BIを合併している3症例を経験したので報告する.症例1:21歳,女性.発症1カ月の全大腸炎,急性激症型.ステロイド強力静注の効果なく,穿孔性腹膜炎を呈した.回腸末端穿孔のため,約30cmの回腸切除となったが,肛門温存手術が可能であった.症例2:48歳,男性.発症2カ月,全大腸炎,急性激症型.ステロイド,LCAP無効で,中毒性巨大結腸症,多発穿孔を合併.回腸末端に穿孔はなかったが,浮腫,潰瘍形成を認め,回腸末端約40cm切除した.肛門温存手術は不可能であった.症例3:57歳,女性.発症12カ月.全大腸炎,再燃緩解型.再燃し中毒性巨大結腸症を合併.回腸末端約15cmに浮腫,潰瘍形成を認めたが温存し,肛門温存手術可能であった.いずれもサイトメガロウイルス陰性で,BIによる炎症と思われた.
  • 尾辻 英彦, 塩見 正哉, 水野 敬輔, 東島 由一郎, 杉浦 禎一, 神谷 順一
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1423-1427
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    胆嚢結腸瘻は稀な疾患であり,遺残胆嚢結腸瘻症の報告例は本邦で1例に過ぎない.胆嚢摘出の37年後に発症した遺残胆嚢横行結腸瘻の1例を報告する.症例は62歳,男性.発熱・黄疸・心窩部痛で前医を受診し,pneumobiliaを伴う総胆管結石と診断された.胃切除後であり経皮経肝的な治療を目的に当院を紹介された.切石中の胆道造影検査では,遺残胆嚢から腸管が造影された.結石はビリルビンカルシウム結石であった.注腸造影X線検査所見で遺残胆嚢結腸瘻と確定診断し,瘻孔切離および縫合閉鎖術を行った.経過は良好である.
  • 松井 芳文, 牧野 治文, 成島 道樹, 早野 康一, 谷口 徹志
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1428-1431
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    S状結腸憩室炎に起因する結腸膣瘻に腹腔鏡下S状結腸切除術および瘻孔切除,膣壁瘻孔閉鎖術を施行した1例を経験したので報告する.
    症例は82歳,女性.既往歴:40歳時に子宮全摘.現病歴:平成18年8月ごろより,着色帯下,膣よりの便汁の流出があり,当院受診.大腸内視鏡および画像にてS状結腸憩室炎による結腸膣瘻と診断された.腹腔鏡下に手術を施行し,瘻孔部周囲は癒着が強固であったが,超音波メスにて瘻管を遊離切離し,瘻孔部を含めその前後約10センチのS状結腸を切除し再建した.膣よりイジンジゴカルミンにて瘻孔部を確認し,縫合閉鎖した.瘻孔部周辺のS状結腸は炎症が高度で,術後経過は順調にて術後10日に退院した.文献的に結腸憩室炎の腹腔鏡手術の適応について考察した.腹腔鏡補助下でのS状結腸膣瘻根治術は治療法の選択の一つに考慮してもよいかと考えられた.
  • 川口 清, 瀬尾 伸夫, 太田 圭治, 浦山 雅弘, 渡邊 利広, 藤本 博人
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1432-1436
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    消化管手術後の虚血性腸炎は文献検索にて散見される程度であり,腹腔鏡手術後の報告はほとんどない.今回,腹腔鏡補助下低位前方切除後に一過性虚血性腸炎を発症した症例を経験した.症例は50代,男性.糖尿病,高血圧があった.直腸RaのSM癌に対し,平成18年1月下旬,手術を施行した.上直腸動脈は左結腸動脈分岐直後で切離(中枢側D2),直腸は腹膜飜転部の約2cm肛門側で切離,小開腹下に腸管を摘出した.切離部の血流に問題のないことを確認し,Double stapling techniqueで吻合した.手術時間は351分.第8病日の透視で,吻合部に狭窄や縫合不全なく,口側腸管にも異常なく,第13病日に退院した.しかし,その20日後,イレウス症状で再入院.精査の結果,吻合部直上から口側10cmにわたる虚血性大腸炎であったが,保存的治療で軽快した.腹腔鏡下手術・手技に原因があった可能性もあり,今後本術式の合併症として注意を要するかもしれないと考えた.
  • 須浪 毅, 雪本 清隆, 澤田 隆吾, 阪本 一次, 山下 隆史
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1437-1441
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.血便を主訴に当院を受診.注腸造影X線検査にてS状結腸に約2cm大の亜有茎性の隆起性病変を認めた.大腸内視鏡検査では頂部に潰瘍を有する隆起性病変を認め,Isp型のS状結腸癌を疑った.数か所の生検を行ったがいずれも肉芽組織との結果であった.Endoscopic mucosal resectionを試みたがlifting不能であったため断念.しかし,悪性腫瘍の可能性を否定しきれず,腹腔鏡補助下S状結腸切除術を施行した.切除標本では1.4×1.2cm大のIsp腫瘤を認め,組織学的には線維細胞,膠原線維などの結合織の増生や毛細血管の増生,リンパ球,形質細胞,好酸球などの炎症細胞の浸潤を認め,inflammatory fibroid polyp(以下.IFP)と診断された.IFPは消化管の粘膜下に発生する炎症性腫瘤であり,胃に発生することが多く,結腸に発生することは稀である.われわれは稀な結腸IFPの1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 名波 竜規, 島田 長人, 本田 善子, 石井 紀行, 栗原 聡元, 杉本 元信
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1442-1446
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    グリセリン浣腸施行時に,誤って直腸を損傷し溶血をきたした1例を経験したので報告する.症例は63歳,男性.他院で胆石胆嚢炎の診断で腹腔鏡下胆嚢摘出術を予定していたが,術前のグリセリン浣腸後から肛門周囲の痛みと血尿が出現した.グリセリン浣腸による直腸損傷が疑われ当院に転院となった.直腸診では直腸粘膜に損傷を認め,血液検査で炎症所見と溶血所見を認めた.尿検査では潜血反応が強陽性であった.腹部CT画像では直腸周囲の脂肪織濃度が上昇し,腸管外のガス像も認めた.以上より,グリセリン浣腸による直腸損傷とそれに伴う溶血と診断した.直腸損傷部には,ドレナージ目的でloose setonを留置し,溶血に対しては腎機能障害の回避のため強制利尿を行うとともに,ハプトグロビンを投与した.経過中に腎機能障害は認めず第22病日に退院となった.本邦報告例の文献的考察を加え報告した.
  • 岡村 修, 鈴木 玲, 中平 伸, 三木 宏文, 杉本 圭司, 田村 茂行
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1447-1451
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.めまいを主訴に来院し,腹部CT検査により小脳梗塞と診断され入院となった.貧血および便潜血陽性のため大腸内視鏡検査を施行し,上行結腸に進行癌および結腸全体に平坦型ポリープを多数認め,右結腸切除術を施行した.術後3カ月に残存大腸内視鏡検査を施行し,残存結腸に2個の粘膜下層浸潤癌および約10個の平坦型腺腫を認めた.上部消化管内視鏡検査では食道・胃・十二指腸に病変を認めなかった.初回手術の半年後に残存結腸全摘,回腸─直腸吻合を施行した.結腸病変の個数,形状,偏在から家族性多発性大腸腺腫(APCMYH遺伝子の変異)もしくは遺伝性非ポリポーシス性大腸癌(hMLH1hMSH2hMSH6遺伝子の変異)を疑ったが,患者血液より抽出したDNAの解析ではいずれの遺伝子にもgermline mutationは検出されなかった.2回の切除標本を合計すると,進行癌1個,早期癌4個,腺腫15個を結腸に認め,家族性大腸腫瘍が疑われた1例を経験したので報告する.
  • 鳥口 寛, 崎田 展子, 中島 康夫, 浮草 実
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1452-1455
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性.近医にてMRI上,子宮肉腫を疑われ,精査中に上行結腸腫瘍を指摘された.結腸切除,および子宮全摘術目的に入院.2004年10月に手術施行された.上行結腸中央部に後腹膜に一部強く浸潤する腫瘍を認め,結腸右半切除,後腹膜合併切除をおこなった.子宮肉腫と思われた腫瘍は後腹膜に存在し腹膜に覆われ,周囲に腫瘍血管の造生を認め,子宮と一部癒着していたものの,子宮との連続性はない腫瘍であった.総合所見は結腸腫瘍は中分化管状腺癌でA,circ,2型,70×60mm,pSE,pN2(8/12),sH0,sP0,pM1,fStageIVであり,後腹膜腫瘍は平滑筋腫で子宮原発のparasitic leiomyomaの可能性が高く,一部に腺癌の転移を伴っているとされた.術後12カ月目に原病死した.Parasitic leiomyomaは比較的稀な疾患であり,これに大腸癌が転移した例はわれわれが検索しえた限り報告がなく,文献的考察を加え報告する.
  • 小山 剛, 松村 雅方, 小島 隆司, 松岡 順子, 道上 慎也, 矢田 克嗣
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1456-1460
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.1999年1月直腸癌のため近医にてMiles手術をうけた(tub1,MP,N1,H0,P0,M0,Stage3A,D2+a,CurA).2003年7月,腰痛が強く歩行困難となり,当院へ救急搬送された.精査にて,第一腰椎の病的骨折,直腸癌骨転移疑いであり,脊髄圧迫と脊椎の不安定性が高度なため,整形外科手術を施行した.術中の生検では高分化腺癌であり,直腸癌骨転移と診断された.術後化学療法を行うも,PDであった.その後再び腰椎の不安定性が出現し,座位保持も不能となり,2005年5月再度腰椎後方固定術を施行した.2006年7月には,骨転移は径約26cm大の巨大な腫瘤を形成し,2006年9月永眠された.大腸癌骨転移の頻度は,臨床的には8.6~10.7%,剖検例では21.4~23.7%と報告されている.しかし,その報告はけっして多くなく,本例のような巨大な骨転移を形成した報告はなかった.大腸癌術後においては骨転移も念頭におき診療にあたることが重要であると思われた.
  • 前田 好章, 内藤 春彦, 濱田 朋倫, 篠原 敏樹, 宮城 久之
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1461-1464
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    今回われわれは,放射線化学療法にて完全寛解(CR)後に局所,遠隔再発をきたした肛門直腸扁平上皮癌症例のsalvage治療を経験し,良好な経過を得たので報告する.症例は59歳,女性.肛門─下部直腸の進行扁平上皮癌に対し放射線化学療法(44Gy+CDDP 30mg×8)が施行され,CRを得た.3カ月毎の定期検査にてフォローされたが,9カ月後の定期検査にて局所再発,遠隔リンパ節転移が判明した.Salvage治療として腹会陰式直腸切断術,リンパ節郭清,追加放射線化学療法が施行され,salvage治療から15カ月経過し無再発健存中である.肛門機能温存が可能な放射線化学療法は,肛門扁平上皮癌に対し標準治療となったが,腹会陰式直腸切断術などによるsalvage治療を前提としている.約30%の症例が,放射線化学療法無効,局所再発などに対しsalvage手術を要しており,肛門扁平上皮癌の治療において外科手術の役割は重要である.
  • 三宅 岳, 中根 恭司, 由井 倫太郎, 井上 健太郎, 里井 壮平, 上山 泰男
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1465-1469
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.悪寒,下痢,右眼の視力低下を認め当院緊急入院となった.血液検査の結果,白血球数増加,CRP値の著明な上昇,肝・胆道系酵素の上昇を軽度に認めた.腹部造影CT検査で肝左葉に円型の内部に造影効果を認めないlow densityの腫瘤を認めた.一方肝右葉には内部は造影効果を伴う充実性の腫瘤を認めた.左葉の病変は肝膿瘍の診断のもと超音波ガイド下経皮的ドレナージ術を施行した.右葉の病変については,本例は進行胃癌術後であり転移性肝腫瘍の可能性も否定できず経過観察としたが,経過観察中に肝膿瘍であることが判明した.右眼は細菌性眼炎の診断のもと摘出となった.経過中,腸腰筋膿瘍,骨髄炎も続発した.多臓器にわたり続発した感染症の原因として,起炎菌(Klebsiella pneumoniae)と宿主の抵抗性の低下(高齢・進行癌術後・糖尿病の既往)が考えられる.
  • 小原 啓, 青木 貴徳, 矢吹 英彦, 稲葉 聡, 新居 利英, 浅井 慶子
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1470-1474
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    胆管との交通を認めたため肝切除術を施行した感染性肝嚢胞の1例を経験した.患者は82歳,女性.平成14年7月感染性肝嚢胞に対する経皮的ドレナージ術を施行している.平成17年11月発熱,右季肋部痛を主訴に当院救急外来を受診,CT検査で多発肝嚢胞を認め,1カ所がair densityを伴い鏡面像を形成していた.感染性肝嚢胞の再発と診断し入院,同日経皮経肝的ドレナージ術を施行した.症状は軽快したが,造影検査で肝内胆管と嚢胞の交通を認めたため肝切除術を施行,病理診断は単純性嚢胞であった.術後,肝切除断端に膿瘍を形成し経皮的ドレナージを行ったが,その後は問題なく現在外来通院中である.
  • 池上 徹, 島田 光生, 森根 裕二, 居村 暁, 金村 普史, 新居 章
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1475-1480
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    肝細胞癌全体の治療成績は近年改善されたものの,その一方で肉眼的脈管侵襲を伴う高度進行肝細胞癌の治療成績は依然極めて不良である.症例は36歳,男性.B型肝炎キャリアー,CT検査にて肝左葉に3cm程の腫瘍と門脈臍部に腫瘍栓を認めた.肝左葉切除(肉眼的治癒切除)を施行,術後1週間目より,IFN/FP療法を1カ月間(4クール)行った.初回手術より6カ月後,肝S8に1cm大の単発肝細胞癌再発を認め,経皮的ラジオ波焼灼療法を行った.さらに初回手術より9カ月後,salvage生体肝移植術(他施設)を行った.初回手術より4年9カ月後の現在,肝癌の再発はみとめていない.高度門脈侵襲と肝内転移を伴う高度進行肝癌に対して,IFN/FP療法と肝移植を含む集学的治療を施行,長期無再発生存を得た症例を報告した.
  • 亀山 眞一郎, 伊志嶺 朝成, 蔵下 要, 長嶺 義哲, 古波倉 史子, 新里 誠一郎, 内間 久隆
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1481-1489
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.アルコール性肝硬変のため近医に通院中,AFP上昇と肝腫瘤を指摘され,平成18年10月に当院消化器内科に紹介となった.腹部エコーで肝S8に3.8×2.7cm,S5に3.4×2.5cmの腫瘤を認め,AFP 536.7ng/ml,PIVKAII 141mAU/mlと腫瘍マーカーが高値であったため,HCCの診断で当科紹介となった.腹部CTでは,S8の腫瘤は被膜を有する典型的なHCCの所見であったが,S5の腫瘤には明らかな被膜を認めず,造影後期相でwash outがやや悪かったため,血管腫やCCCを疑った.同年11月に肝部分切除術を施行した.病理組織検査結果は,S8の腫瘤はHCC,S5の腫瘤はCCCであった.非常に稀なHCCとCCCの同時性重複癌切除例を経験したので報告する.
  • 吉田 勲, 中村 毅, 石川 泰, 新関 亮, 西村 公志, 河村 貴
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1490-1493
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は3歳,男児.2歳2カ月時より腹痛を訴えていた.腹部超音波検査およびCT検査にて胆嚢結石症と診断した.基礎疾患を有さず,1年6カ月間経過観察したが消失しないため腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.3孔式に安全に施行することができ,術後3日目に軽快退院した.以後患児の症状も消失した.小児であっても成人と同様に胆嚢摘出術には腹腔鏡下胆嚢摘出術が第一選択になるべきである.
  • 衣笠 章一, 小田 直文, 伊藤 章, 吉川 幸伸
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1494-1498
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.結節性多発性動脈炎で通院中に黄疸が出現し,精査のため入院となった.ERCPおよびPTBD時の造影にて下部胆管に2.5cm長の狭窄を認めた.結石は認めず,細胞診で悪性細胞を認めなかった.CT,MRCP,血管造影より下部胆管癌と診断し膵頭十二指腸切除術を施行した.術後の病理診断では,悪性所見は認めず,狭窄部に全周性の強い線維化とリンパ球および形質細胞浸潤を認めた.炎症は周囲の膵組織にも及んでおり,限局型の原発性硬化性胆管炎(Primary sclerosing cholangitis;以下PSC)と診断された.結節性多発性動脈炎に特徴的な所見はみられなかった.限局型のPSCは稀な疾患であり癌との鑑別が困難な場合が多いが,確定診断と進行を抑えるために切除手術が必要である.
  • 中川 和也, 長嶺 弘太郎, 杉浦 浩朗, 亀田 久仁郎, 久保 章, 竹川 義則
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1499-1503
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.平成19年1月血便,下腹部痛を主訴として当院に受診した.精査の結果,S状結腸癌と胆嚢結石症と診断され手術を施行した.術中,肝S8表面に径7mmの固い白色結節を認め,同時性肝転移を疑い,肝部分切除術を施行した.術後の病理組織学的検査では肝内の結節は周囲の肝組織とは境界明瞭で,被膜を形成せず,小型の腺管あるいは索状胞巣の構造を呈した胆管上皮細胞の増生と,その周囲の膠原線維の増生を伴い,肝内胆管腺腫と診断された.肝内胆管腺腫は胆管細胞由来の稀な良性上皮性腫瘍であり,本邦での報告例は自験例を含め検索しえた限りでは28例と稀な疾患であった.
  • 大高 和人, 森田 高行, 藤田 美芳, 岡村 圭祐, 山口 晃司, 阿部 元輝
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1504-1508
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性.平成19年1月に胸痛を認め他院を受診し急性膵炎と診断された.保存的治療後,精査加療目的で転院となった.CT,MRCPにて膵胆管合流異常(非拡張型),胆嚢壁肥厚を伴う胆嚢結石症を認めた.胆管ブラッシング細胞診でclass III,胆汁内アミラーゼは389800IU/Lであった.平成19年2月,胆嚢・肝外胆管切除,胆管空腸吻合を施行した.摘出した検体で胆嚢底部に30×40mmの乳頭状の隆起性病変を認めた.同部位の病理組織学的所見は胆嚢癌でss,pN1,Stage IIIであった.免疫組織化学染色ではchromogranin A(+),synaptophysin(+)であり胆嚢腺内分泌細胞癌と診断した.
  • 牧本 伸一郎, 冨田 雅史, 坂本 一喜, 新保 雅也, 米村 豊
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1509-1513
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.上腹部痛にて来院し胃炎の診断で内服加療していたが改善なく,徐々に食欲低下,タール便も伴うようになり10日後に救急来院した.眼瞼結膜に貧血,上腹部に圧痛を認めた.腹部造影CTにて膵頭部に著明に濃染する病変を認めた.上部消化管内視鏡ではVater乳頭部の口側に潰瘍性病変を認め,副乳頭部より血液や膿が流出していた.腹部血管造影では膵頭部において網状の血管増生と動脈相早期より門脈の描出がみられた.ERCPではVater乳頭部からの造影で副膵管を介して膵頭部の腫瘤が造影された.膵頭部動静脈奇形と診断し,十二指腸からの出血が持続したので経動脈的塞栓療法を考慮したが複数の流入血管を有し根治的な塞栓術は困難であり膵頭十二指腸切除術を施行した.膵動静脈奇形は比較的稀な疾患であるが消化管出血や腹痛を起こすことがあり,その場合には適切かつ迅速な治療を要する.全身状態が良好であれば積極的な切除術が有効と思われた.
  • 竹内 聖, 藤田 博崇, 近藤 昭宏, 岡田 節雄
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1514-1518
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    原発巣切除後17年目に再発した非機能性膵島細胞癌の1例を経験した.患者は79歳,男性.17年前に膵頭部の悪性内分泌腫瘍の診断で膵頭十二指腸切除を受けた.術後16年目までCT検査等で再発所見を認めなかったが,17年目に全身倦怠感と下腿浮腫が出現し,CT検査で多発性肺腫瘍と多発性肝腫瘍,傍大動脈リンパ節転移を認めた.残膵に異常はなく,原発巣不明のため開腹肝腫瘍生検を施行した.病理検査で非機能性膵島細胞癌の再発と診断した.術後はストレプトゾシン+S-1による化学療法を施行し,縮小効果を認めたが69日目に死亡した.非機能性膵島細胞癌の再発までの期間としては最長であった.膵内分泌腫瘍の術後は長期にわたるfollow upが必要と考えられた.
  • 安部 智之, 調 憲, 祇園 智信, 辻田 英司, 梶山 潔, 長家 尚
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1519-1523
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,女性.既往歴に甲状腺機能亢進症があり,内服加療中であった.平成18年12月に嘔気・左下腹部腫瘤自覚し,近医受診した.腹部CTで脾門部~左腎腹側に8cm×10cm大の腫瘤性病変があり,2月1日に左腎摘出術を施行した.手術所見は,12cm大の左腎腫瘍を認めた.副腎動・静脈を処理し,腫瘍と膵尾部・脾との癒着を剥離した.副腎と腫瘍は強固に癒着していたため,一塊として摘出した.出血量は40mlであった.肉眼的所見では,腫瘍の一部は嚢胞状であり,多数の石灰化を伴っていた.白色調充実性で均一であった.病理組織所見でカルチノイド腫瘍と診断された.PET,上部・下部消化管精査で,他の原発巣を認めなかった.原発性腎カルチノイドは稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 岡崎 雅也, 丸森 健司, 福沢 淳也, 今村 史人, 神賀 正博, 間瀬 憲多朗
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1524-1527
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.腹痛,嘔吐にて近医を受診し,イレウスを疑われ,当院に紹介となった.腹部CT検査にて小腸広範囲の拡張像と下行結腸を内側に偏位させる小腸の集簇像を認めた.内ヘルニアによるイレウスと診断しイレウス管を挿入したが,イレウスは改善せず入院翌々日手術となった.開腹所見では下行結腸外側に径約2.5cm大のヘルニア門が存在し,下行結腸の背側に小腸が嵌頓している状態であり,傍下行結腸窩ヘルニアと診断した.ヘルニア門を開放し,陥入腸管を還納したが,小腸は約20cmにわたり壊死し,小腸部分切除を施行した.ヘルニア門は閉鎖せず,ドレーンを留置し,閉腹した.内ヘルニアはさまざまなタイプが報告されているが,傍下結腸窩ヘルニアの報告は稀であり,本邦報告例は自験例を含めて3例である.今回われわれは,傍下行結腸窩ヘルニアの1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 久保田 康彦, 水島 恒和, 水野 均, 中川 朋, 今北 正美, 伊豆蔵 正明
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1528-1532
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.主訴は腹部膨満感.腹水による腹部緊満を認め,右側腹部に手拳大,弾性硬の硬結を触知した.腹部CT検査にて,上行結腸から横行結腸周囲に多数の腫瘤と回盲部の後腹膜に石灰化を伴う腫瘤を認めた.入院後第14病日に試験開腹を施行した.多量の血性腹水および腹膜表面と結腸間膜に多数の結節を認め,12cm大の腫瘤を1個摘出した.病理組織検査では骨形成を伴う紡錘形の腫瘍細胞を認め,骨肉腫と診断された.術中所見および術後に施行した骨シンチの結果から後腹膜原発骨外性骨肉腫と診断した.術後はPerformance statusが非常に悪かったため,Best supportive careのみを行った.腹膜播種増悪のため,術後第78日目に永眠された.骨外性骨肉腫はきわめて稀な疾患であり,その予後は不良である.症例の集積による病態の解明が必要であると考えられた.
  • 久米 修一, 高橋 将史, 橋本 大輔
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1533-1536
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    患者は61歳,男性.虫垂切除後の炎症性偽腫瘍のため摘出術を受け,その際の腹壁の欠損に対し,メッシュを使用されていた.今回,創近傍の皮膚からの膿性排液が改善しないため,手術となった.感染を伴っていたため,最初,大腿筋膜張筋弁を用いた再建を行ったが,腹壁瘢痕ヘルニアを生じたため,Bard Composix meshによる再建を行った.
    汚染手術に伴う腹壁再建における非吸収性メッシュの使用について,文献的考察を加え報告する.
  • 平田 貴文, 木村 正美, 西村 卓祐, 川田 康誠, 松下 弘雄, 岡村 茂樹
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1537-1540
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,男性.41歳時に繰り返す上行結腸憩室炎に対し,腹腔鏡補助下結腸切除術を行った.術後1年目に腹壁瘢痕ヘルニアを認めたため,腹腔鏡下ヘルニア手術を行った.ヘルニア手術後2年目に,誘引なく手術創に感染を認めた.抗生剤投与による保存的治療およびメッシュ温存処理にて軽快しなかったため,最終的にメッシュ摘出を行った.腹壁瘢痕ヘルニア術後早期のメッシュ感染報告はあるが,本例のように術後2年経過した遅発性感染の報告例は少ないため文献的考察を加え報告する.
  • 松岡 翼, 延原 泰行, 揚 大鵬
    2008 年 69 巻 6 号 p. 1541-1544
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/12/05
    ジャーナル フリー
    鼠径ヘルニア内容が虫垂であることは比較的稀であり,Amyand's herniaと言われている.今回,われわれはAmyand's herniaの1例を経験したので報告する.症例は54歳,男性.右鼠径部痛を主訴に近医を受診し,精査目的で当院紹介受診された.精査にて右鼠径ヘルニア嵌頓と診断されたが,嵌頓内容は断定しえなかった.用手還納を行った後,待機手術を施行した.術中所見では外鼠径ヘルニアであり,ヘルニア内容は虫垂および滑脱した虫垂間膜であった.Amyand's herniaと診断し,同一創にて虫垂切除術を行い,盲腸を腹腔内へ還納し,mesh plug法にて鼠径ヘルニア根治術を施行した.経過は順調で,術後6日目に軽快退院された.鼠径ヘルニア内容が虫垂であることは稀であり,文献的考察を加え報告する.
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