日本臨床外科学会雑誌
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69 巻, 7 号
選択された号の論文の57件中51~57を表示しています
症例
  • 堀尾 卓矢, 愛甲 聡, 坂野 孝史, 熊野 勲, 金井 宣茂, 前原 正明
    2008 年 69 巻 7 号 p. 1804-1808
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性.2004年9月,小腸GIST疑いで待機手術の予定であったが,白血球数,CRPの上昇,腹部の圧痛を認め,腫瘍穿孔による汎発性腹膜炎の診断で,緊急に腸間膜腫瘍切除,空腸部分切除,腹腔内洗浄,ドレナージ術を施行した.病理組織学的検査で腸間膜デスモイドと診断された.退院後,外来で経過観察としたが,2006年5月,術後20カ月に再発を認め,当科で再切除を行った.再切除後,小腸の広範囲切除により,短腸症候群となったが,内服薬でコントロールされ,63病日に退院した.外来,近医での点滴治療で経過観察としたが,既往のパーキンソン症候群の進行と短腸症候群による栄養状態の悪化により,再手術後5カ月で死亡した.
  • 藤井 雅和, 森重 一郎, 岡崎 嘉一, 野村 真治, 友澤 尚文, 濱野 公一
    2008 年 69 巻 7 号 p. 1809-1813
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.主訴は左鼠径部腫瘤.平成19年9月上旬のCTで,胸膜の石灰化を伴う肥厚と,腹水貯留を認めた.胃十二指腸ファイバー,腹部超音波検査は異常なく,また還納不可能な圧痛を伴う左鼠径部腫瘤があり,左鼠径ヘルニアの大網嵌入と診断された.職歴で38年間のアスベストの暴露があった.癌性腹膜炎の可能性を疑われたが,術前検査で原発巣を認めず,消化器癌の腫瘍マーカーも陰性であり,腹水の精査と左鼠径ヘルニアの治療のため,手術を施行した.多量の漿液性腹水を認め,細胞診に提出した.ヘルニア嚢および腹腔内に大小多数の結節を認め,癌性腹膜炎を呈していた.定型的にヘルニア根治術を施行した.細胞診はGroupVであり,病理組織学的診断は二相性の悪性腹膜中皮腫であった.現在pemetrexed sodium hydrate(アリムタ®)+cis-diammine dichloro platinum(CDDP)の投与を施行中である.左外鼠径ヘルニアの手術によって診断された悪性腹膜中皮腫の1例を経験した.
  • 田仲 徹行, 青松 幸雄, 小林 経宏, 井上 隆, 桑田 博文, 中島 祥介
    2008 年 69 巻 7 号 p. 1814-1818
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.主訴は左側腹部膨隆.平成18年6月交通事故で多発肋骨骨折,左血胸,脾損傷,左脛骨腓骨骨折を受傷.当院整形外科にて,脛骨骨折に対し手術施行.受傷から約3カ月後,リハビリ入院中左側腹部に膨隆を訴えCTを施行したところ左腸骨頭側の腹筋断裂部から腸管の脱出を認め,外傷性腹壁ヘルニアと診断した.同ヘルニアの報告は稀で自験例を加え11例にすぎない.受傷原因は8例が交通事故でそのうち5例が肋骨または骨盤骨折を伴っていた.骨折を伴う5例はいずれも遅発性に発症し,骨折の存在とヘルニアの遅発性発症には相関関係を認めた.同ヘルニアに対しPHS(PROLENE Hernia System)による修復術を施行した例は自験例が初めてであり,同方法はunderlay patchで広範囲に腹膜を覆い,connector部でヘルニア門を閉鎖し,onlay patchを固定することにより全体の固定が可能となり腹壁脆弱部の補強,修復に有効な方法と考えられた.
  • 高見澤 潤一, 鈴木 秀昭, 久世 真悟, 柴原 弘明, 服部 正興
    2008 年 69 巻 7 号 p. 1819-1822
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    症例は97歳,女性.2003年10月に右閉鎖孔ヘルニアで緊急開腹術をうけている.その際術中に対側のわずかな閉鎖孔の陥凹が認められていた.2006年8月下旬夕方に腹痛,嘔吐を自覚しその翌日に入院となった.腹部CTで小腸の拡張,左恥骨と外閉鎖筋との間に腸管と思われる腫瘤影を認めた.左閉鎖孔ヘルニアの診断で緊急開腹術を施行した.腹腔内を観察すると,小腸の拡張とTreitz靱帯より約1mの空腸の腸間膜対側に発赤を認めたが穿孔,壊死を認めず,腸切除は施行しなかった.ヘルニア門はpreperitoneal approachでメッシュプラグ法にて修復した.術後経過は良好で術後22日目に退院した.高齢者の閉鎖孔ヘルニア治療においても,対側の閉鎖孔ヘルニアの可能性を念頭におくことが重要であろう.
  • 諸橋 一, 山田 恭吾, 松浦 修, 山崎 総一郎, 藤田 正弘
    2008 年 69 巻 7 号 p. 1823-1827
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    Fournier's gangreneは会陰部に発生する劇症型の感染性壊疽で早急に治療を施さないと予後不良な経過をたどる疾患である.直腸癌にFournier's gangreneを合併した報告は稀であり,自験例が本邦で9例目の報告である.
    症例は会陰部に広範な黒色の壊死が出現し,Fournier's gangreneと診断された60歳男性である.入院翌日に人工肛門造設術,創部のデブリードマンを施行,術後は連日創洗浄し,創の肉芽化を促した.CTで直腸Rb後方に壁肥厚像,大腸内視鏡検査では直腸Rbに全周性の隆起性病変を認められ,生検では高分化腺癌と診断された.しかし,経過中にMRSA敗血症となり,根治手術に至らずに永眠された.
    Fournier's gangreneに直腸癌を合併している場合の治療方針は感染供給源の根絶と癌の根治性の2方面からの治療を考慮する必要があると考えられた.
  • 朝子 理, 前田 武昌
    2008 年 69 巻 7 号 p. 1828-1832
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/01/06
    ジャーナル フリー
    われわれは日常臨床でよく経験する皮下腫瘤がマンソン孤虫症であった2例を経験したので報告する.
    症例1は78歳,女性.乳癌として紹介されてきたが,手術の結果,乳癌でなく乳房の皮下腫瘤の原因がマンソン孤虫症によるものであった.この症例は下肢にも皮下腫瘤を認め,そこからもマンソン孤虫症のプレロセルコイドを認めた.
    症例2は77歳,男性.鼠径部の脂肪腫と診断したが,腫瘤内にマンソン孤虫症のプレロセルコイドを認めた.
    症例1,2ともに,マムシ,生の鶏肉,スッポンの生血,タニシ,淡水魚の摂取既往歴をもっていた.われわれ外科医は,皮下腫瘤の中にマンソン孤虫症のような寄生虫疾患もごく稀にはあり得ることを考慮するべきである.
編集後記
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