日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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71 巻 , 12 号
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原著
  • 児玉 宏, 三瀬 圭一, 菅 典道
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3031-3038
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    乳癌手術において,腋窩郭清をどこまで縮小できるかを検討するため,N0乳癌症例に対して,levelIの肋間上腕神経より下部のみを郭清する腋窩下部部分郭清を施行した.2001年1月から2008年12月の腋窩下部部分郭清施行N0 1043例を対象として,腋窩再発率,生存率と健存率,術後合併症につき,1994年から2000年のlevelI以上の郭清施行N0 1084例と比較検討した.部分郭清症例のリンパ節転移陽性は222例(21.3%),観察期間中央値72カ月,5年follow-up率99.2%で,再発症例を101例(9.7%)に認め,うち腋窩リンパ節再発は6例(0.6%)のみであった.部分郭清症例の5年生存率と健存率は95.3%,88.3%であり,以前の系統的腋窩郭清症例に劣らず良好であった.部分郭清症例の術後リンパ液貯留量は著明に減少し,術側上肢のリンパ浮腫を1例も認めなかった.腋窩下部部分郭清は乳癌患者に有益な腋窩アプローチである.
  • 島田 慎吾, 高橋 周作, 工藤 岳秋, 廣瀬 邦弘, 佐治 裕
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3039-3044
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    目的:light weight mesh(Ethicon ULTRA Pro Plug)を用いたMesh Plug法(L法)を,従来のKugel法(K法)とheavy weight meshを用いたMesh Plug法(H法)と比較検討した.
    対象と方法:対象は鼠径ヘルニアに対するL法32例.比較対象は,K法73例およびH法38例.この3群で10項目に関して比較検討を行った.
    結果:L法では有意に創部の腫脹を認める症例が少なかった(6.2%).さらに,有意差は認めなかったもののL法において,術後1カ月以降の疼痛を訴えた症例および創部の強い硬結は認めなかった.Seroma形成も少ない傾向であった.
    結論:light weight meshの使用は,創部腫脹やSeroma及び硬結形成,術後1カ月以降の創痛の頻度を減らし,術後のQOLを高めていると考えられた.
症例
  • 陸 大輔, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 前田 敦行, 高橋 祐
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3045-3053
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.近医で肝胆道系酵素異常を指摘され精査目的に当院紹介となり,画像所見より肝内胆管癌の術前診断で平成19年3月に肝左葉切除を施行した.組織学的には内分泌腫瘍であったが,他臓器に原発巣を認めず経過観察した.平成19年9月より下痢と腹痛が出現し,再度精査したところ消化管検査で多発胃潰瘍と胃カルチノイド,十二指腸粘膜下腫瘍および直腸癌があり,血液検査で高ガストリン血症と副甲状腺機能亢進症,高カルシウム血症を認めた.またCTで膵尾部に多発腫瘍と頸部超音波で副甲状腺腫瘍があり,多発性内分泌腺腫症1型(副甲状腺腫瘍,膵内分泌腫瘍,十二指腸粘膜下腫瘍)と胃カルチノイド,直腸癌の合併と診断し2期的に手術を施行した.初回手術より3年4カ月経過する現在,再発・転移所見なく生存中である.多発性内分泌腺腫症1型によるTypeII胃カルチノイドの本邦報告例は7例であった.
  • 長尾 祐一, 鶴留 洋輔, 山口 幸二
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3054-3058
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    今回,頸部に発生した悪性線維性組織球症の1例を経験したので報告する.症例は81歳,男性.感冒様症状にて近医を受診し,その際に頸部の腫瘤を指摘され,当科を紹介受診した.受診時,右側頸部に50×80mm大の可動性良好な腫瘤を触知した.頸部超音波検査,頸部CT検査,頸部MRI検査を施行したところ,右胸鎖乳突筋,舌骨下筋,浅頸筋膜に囲まれた部位に境界明瞭な腫瘍性病変を認めた.穿刺吸引細胞診にてClassVと診断され,甲状腺との明らかな連続性は認めなかったが,甲状腺未分化癌,脂肪肉腫などの軟部腫瘍を疑い,確定診断もかねて腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的検査結果はmalignant fibrous histiocytoma(MFH)であり,免疫組織化学にてビメンチン,CD34が陽性であった.MFHの悪性度の高さから追加の拡大切除術,術後化学療法を勧めたが,本人・家族の強い希望にて経過観察し,術後6年後の現在転移再発なく健在である.
  • 日野 佑美, 久松 和史, 平林 直樹, 多幾山 渉, 坂谷 暁夫, 金子 真弓
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3059-3063
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    乳房Paget病は,乳頭・乳輪の表皮内浸潤を特徴とする癌で,乳管内進展がみられ,間質浸潤が存在しても軽度なもの,と定義されている.治療方法として,乳頭・乳輪に病変が存在することと,拡がり診断が困難なために,従来は乳房切除術をすべきとする報告が多かった.今回われわれは乳房Paget病を4例経験し,CTやMRIで病巣の範囲を確認後,乳頭・乳輪くりぬき乳房温存術を施行し,良好な経過を得たので文献的考察を含め報告する.症例1は57歳,症例2は88歳,症例3は59歳,症例4は45歳で全例女性であった.全例術前CTなどで病巣の範囲を推定し,乳頭乳輪に限局していると診断後,温存療法を行った.術後療法は施行せず,外来で経過観察中であるが,いずれの症例も現時点では再発を認めていない.CTやMRIによる乳管内進展の評価がPaget病に関しても術前診断として可能であり,進展範囲を診断することで,低侵襲な乳頭部くりぬき部分切除術で治癒手術可能である可能性が示唆された.
  • 大森 征人, 中込 博, 古屋 一茂, 日向 道子, 小林 惠子, 小山 敏雄
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3064-3069
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    乳癌放射線治療後の二次発癌として胸壁に発生した線維肉腫の症例を経験した.症例は44歳時に左乳癌で胸筋温存乳房切除術を受け,胸壁および領域リンパ節に放射線治療を施行され,前胸部の皮膚に強い放射線性皮膚炎を生じたが再発無く経過していた.55歳時,左胸筋間リンパ節領域に3cmの腫瘤が出現した.乳癌局所再発の診断で周囲組織を含めて切除したところ,病理診断は軟部組織より発生した線維肉腫であった.さらに2年後,前胸部に腫瘤出現し,胸骨肋骨を含めた胸壁切除,ゴアテックスシートおよび腹直筋皮弁による胸壁再建を行った.前回と同様の組織型であり,放射線照射野を発生母地に多発したことより放射線治療後二次発癌による病変であることが確診された.
  • 和田 秀之, 大野 耕一, 鈴木 善法, 長谷 龍之介, 高田 実, 関下 芳明
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3070-3074
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.左乳房腫瘤を主訴に来院.マンモグラフィ,乳腺超音波検査で左乳房E領域に約2cm大の腫瘤を認めた.穿刺吸引細胞診,針生検で悪性が疑われ,免疫染色を施行しカルチノイド腫瘍,あるいは神経内分泌癌と診断された.ホルモンレセプターはER(+),PgR(-),HER(+)であった.左乳房切除,腋窩リンパ節郭清を施行し,病理組織学的検査ではLarge cell neuroendocrine carcinoma(LCNEC)と診断,リンパ節転移は認めなかった.術後補助療法としてEC療法を施行後,Letrozoleの内服を行っており,術後1年11カ月経過し無再発生存中である.男性乳癌,LCNECはともに稀な疾患であり,特にLCNECは本邦で自験例を含め6例と少ない.今後は症例を蓄積し,治療や予後に関して検討する必要があると考えられた.
  • 野上 真子, 増野 浩二郎, 田代 英哉, 坂田 久信
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3075-3079
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.頭痛と見当識障害を主訴に近医を受診し,頭部CT上多発脳腫瘍を指摘され,当院脳神経外科を紹介受診した.頭部MRI上転移性脳腫瘍疑いにて胸腹部CTを施行した.左乳腺内の粗大石灰化および多発性の骨硬化像を指摘され乳癌疑いで当科へ紹介となった.触診上左乳腺内に5mm大の結節を認めたが,穿刺吸引細胞診にて良性の診断であり退縮性線維腺腫と判断した.他に乳腺内および腋窩に触知可能な病変なく,MMGおよびUS上で右側腋窩のリンパ節腫脹を認めた.同部の穿刺吸引細胞診はpositiveであり,他のmodalityによる全身精査では明らかな原発巣を指摘できず,穿頭脳生検を施行した.免疫染色にて脳組織内に乳腺由来組織を認めたため潜在性乳癌の多発脳転移と診断した.放射線および化学療法による治療開始後,脳転移の進行により7カ月後に死亡した.
  • 笠原 勝彦, 鎌田 聡, 岡山 尚久
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3080-3083
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性.主訴は労作時呼吸困難.心エコー検査上,左室駆出率は42%と低下,大動脈弁口は0.9cm2と狭小化し弁尖の可動は右冠尖のみに限定され,大動脈弁圧較差は12mmHgでAdvanced stage of aortic stenosisと診断された.ドブタミン負荷心エコー検査を施行し,圧較差の上昇とstroke volumeの増加を認めたため手術適応ありと判断し生体弁による大動脈弁置換術を施行した.術後,心機能の改善を認めた.
    低心機能,低圧較差の大動脈弁狭窄症の手術成績は不良であり,その手術適応に関してドブタミン負荷心エコー検査は有用である.
  • 高橋 和裕, 黒木 則光, 文園 豊, 寺岡 恵
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3084-3087
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,男性.検診にて初めて胸部レントゲン上異常陰影を指摘され,精査加療目的に当科受診.既往歴に特記すべきことなし.胸部CT検査上,右S10に径3cm大の腫瘤陰影を認めた.腫瘍マーカーはCYFRA21-1,CEA,CA19-9,SCC,NSE,Pro-GRPいずれも正常範囲内.喀痰細胞診は陰性.気管支洗浄液における好酸菌培養は陰性.TBLBではsuspect of epithelioid granulomas,悪性所見なし,であった.FDG-PETにて先のCTで認める右肺S10の腫瘤影に一致して,RIの集積の増強を認め,同部のSUVmax=3.753と高値を示しており,悪性を示唆する所見であった.このため肺癌を疑い,胸腔鏡下右下葉部分切除術を施行.術中迅速病理診にて器質化肺炎と診断し,下葉切除術は行わず手術を終了した.
  • 野竹 剛, 中山 中, 大野 康成, 竹内 信道, 辻本 和雄, 伊藤 憲雄
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3088-3092
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    今回われわれはpress through package(PTP)誤飲による食道穿孔に膿胸を合併した1例を経験したので報告する.症例は79歳,男性.心窩部痛と発熱を主訴に他院を受診.当初原因が特定できず,抗生剤投与による治療が開始されたが,呼吸困難と皮下気腫が出現してきたため精査加療目的で当院に転院となった.胸部CTにて左膿胸,縦隔炎と診断され,縦隔気腫を伴っていたことから膿胸の原因として食道損傷の可能性を考え,上部消化管内視鏡を行った.歯列より35cmの胸部食道にPTPが嵌頓し,深い潰瘍を形成していた.以上より,本人の自覚のないままPTPを誤飲し発見が遅れた結果,食道穿孔から膿胸を合併したものと考えられた.まず内視鏡的にPTPを摘出し,その後,胸腔ドレナージと洗浄を継続したことで膿胸は軽快し,穿孔部は自然閉鎖した.誤飲の自覚が無い場合PTP異物症は診断が困難である.本症例のように診断が遅れると重篤な合併症をきたすことがあるので注意を要する.
  • 藤田 正一郎, 和田 亜美, 渡辺 康則, 中口 和則, 塚原 康生, 甲 利幸
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3093-3097
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    Barrett潰瘍は,食道腺癌の前癌病変として知られるBarrett食道の24%にみられるとされている.今回われわれは逆流性食道炎経過中に完全閉塞をきたし切除したBarrett潰瘍の1例を経験したので報告する.症例は82歳,女性.主訴は食思不振と嘔吐.平成20年10月頃より嘔吐を繰り返すため11月当院を受診した.上部消化管造影で下部食道に閉塞性病変を認め,造影剤の肛門側への流出は全く認めなかった.上部消化管内視鏡検査にて門歯列より30cmに全周性のびらん・狭窄を認めた.胸部CTでは下部食道に全周性の壁肥厚を認め,MRI拡散強調像では高信号を示さなかった.閉塞部はガイドワイヤーが通過せず,拡張術やステント留置が困難であり,悪性疾患の否定ができないため,右開胸開腹胸部食道切除術を施行した.病理組織像では狭窄部に一致して潰瘍形成が認められ,粘膜表面は炎症細胞浸潤を伴う肉芽層に覆われていた.また閉塞部位の肛門側粘膜表面はspecialized columnar epitheliumに覆われていた.
  • 赤堀 浩也, 清水 智治, 村田 聡, 山本 寛, 横田 徹, 谷 徹
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3098-3102
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    感染性心内膜炎(IE)は,菌血症や血栓を生じて多臓器障害を引き起こすため,その予後は迅速な診断と適切な治療に左右される.われわれは食道癌術後低栄養状態下にIEを発症した1例を経験した.症例は55歳食道癌術後男性.抗癌剤治療2カ月後に下痢や味覚障害を認め内服中止,その後も味覚障害に伴う低栄養を認め,約半年後に入院となった.入院1カ月後にMRSA菌血症に伴うIEに,敗血症性ショックとDICを併発したため,集中治療を行ったが多発脳出血で失った.免疫低下患者に発症したMRSAによるIEであったため抗菌薬治療が奏効しなかった.より迅速で的確な診断と治療の必要性を痛感した.
  • 山口 直哉, 弥政 晋輔, 澤崎 直規, 東島 由一郎, 後藤 秀成, 松田 眞佐男
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3103-3107
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.腹痛,嘔吐,血便を主訴に来院,精査の結果,腸管壊死を伴わない上腸間膜動脈閉塞症と診断した.抗凝固療法を開始し症状の改善を認めたが,低アルブミン血症が増悪し,アルブミン製剤の頻回投与が必要であった.小腸内視鏡検査や蛋白漏出シンチグラムなどから小腸からの蛋白漏出胃腸症と診断し,小腸中央部から上行結腸の約200cmの腸管を切除した.正常粘膜の脱落を広範囲に認め,白苔が付着し円状潰瘍が多発していた.術後は血清アルブミン値の改善を認めた.上腸間膜動脈閉塞症は重篤な腸管壊死を伴い致命的になることも少なくないが保存的に治療しうることもある.保存的治療後に蛋白漏出胃腸症を併発することはまれで,本邦3例目である.自験例の原因は粘膜のみの壊死と考えられ,緊急での大量腸管切除は回避できたが,蛋白漏出胃腸症の併発により結果的に腸管切除せざるをえなかった.
  • 木村 研吾, 堀 明洋, 森岡 淳, 岡本 哲也, 芥川 篤史, 浅羽 雄太郎
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3108-3112
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,女性.原因不明の腹痛で当院受診歴があった.2008年7月同様の腹痛と発熱が出現し再診.腹部造影CTでは内部に低吸収域を伴う胃壁の肥厚を認め,胃壁内膿瘍と診断し入院となった.上部消化管内視鏡検査では,胃幽門部大弯側に粘膜下病変を認めた.抗生剤投与により腹痛は消失,退院となった.2009年4月再び腹痛が出現し,再診.CTでは前回入院時と同様の所見を認め,上部消化管内視鏡検査では,同病変頂部に潰瘍と膿の排出を認めた.以上より再燃性の胃壁内膿瘍と診断,手術を施行した.病変は直径3cm大の境界不明瞭な硬結として触知し,胃部分切除術を施行した.病理組織学的検査では病変部に膵腺房細胞と拡張した導管を認め,膿瘍部では高度慢性炎症の像を呈しており,異所性膵に併発した胃壁内膿瘍と診断した.症状を伴う異所性膵は稀であり,文献的考察を加え報告する.
  • 森 隆太郎, 簾田 康一郎, 佐々木 真理, 長谷川 誠司, 江口 和哉, 仲野 明
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3113-3118
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.慢性関節リウマチ(RA)に対しメソトレキセート(MTX)による治療中であった.2008年9月突然の吐血があり近医を受診し,上部消化管内視鏡検査で巨大雛壁と多発する出血性胃潰瘍を認め,生検で胃原発悪性リンパ腫と診断された.当院に化学療法目的で入院したが,再度吐血し,内視鏡的止血も奏効しなかったため,緊急で胃全摘術を施行し,病理組織検査で胃原発T細胞性悪性リンパ腫(PGTL)と診断した.胃原発悪性リンパ腫のほとんどはB細胞由来で,PGTLは極めてまれである.また,PGTLはB細胞性に比べ予後不良といわれ,外科的切除のみならず化学療法も含め集学的に治療すべきと考えられるが,症例が少なく定まった治療法がないのが現状である.また,近年RAに対するMTX治療と悪性リンパ腫発症との関連が指摘されており,発症要因からも示唆に富む症例と考え文献的考察を加え報告した.
  • 谷口 正展, 北村 直美, 長門 優, 岡内 博, 中村 誠昌, 下松谷 匠
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3119-3122
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.以前より筋硬直性ジストロフィー症にて通院していた.検診目的で上部消化管内視鏡検査を施行したところ,胃体下部後壁にIIb型早期胃癌を認め手術予定となった.術前より拘束性換気障害とI度の房室ブロックを認めていた.手術は幽門側胃切除術を施行した.術中麻酔は静脈麻酔薬を使用し,筋弛緩薬は導入時のみ使用した.術後無気肺を合併し人工呼吸管理を要した.その後呼吸状態は改善し,術後第5病日に人工呼吸管理より離脱した.第17病日に退院となった.本例は胃癌が併存した筋硬直性ジストロフィー患者に対し,全身麻酔管理下での手術を行った稀な1例と考えられたので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 大田 浩平, 三方 彰喜, 根津 理一郎, 金 鏞国, 長谷川 順一, 吉川 澄
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3123-3127
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は61歳女性で50歳時,胃癌に対し胃全摘(根治度A)を施行,再発なく,術後5年の経過観察を終了した.60歳頃より左下腹部に腫瘤を自覚し,増大するために近医を受診,精査加療目的に当科紹介となった.左下腹部腹壁に3×4cmの弾性硬の腫瘤を触知し,可動性は良好であった.CT・超音波検査にて同部腹直筋内に径3cm大の腫瘍を認めた.穿刺細胞診でclassIV,adenocarcinoma疑いと診断された.他臓器には明らかな転移を認めなかったため,胃癌の孤立性腹直筋転移と診断し腫瘍切除術を行った.病理組織学的には前回の胃癌切除組織と同様の低分化腺癌であり,転移と考えられた.胃癌根治術後10年以上経過後の,孤立性筋肉転移はまれであり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 中江 史朗, 山本 将士, 大嶋 勉, 岡崎 太郎, 豊田 昌夫, 仙崎 英人, 常見 幸三
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3128-3133
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.2003年6月,胃癌に対し幽門側胃切除を施行した(stageII).UFTの補助化学療法を5カ月施行したが,中耳炎と肝機能障害で中止した.2カ月休薬後,5FU錠に変更し,化学療法を再開したが,再開2カ月後の2004年5月の超音波で膵頭部表面に径13mmの腫瘤を認めた.同化学療法を継続し,腫瘤は超音波上確認できなくなり,2005年6月化学療法を終了した.しかし,2006年2月超音波で再び以前と同様の膵腫瘤が指摘され,PETでは同部位以外異常集積を認めなかったので2006年4月に切除術を施行した.病理学的には胃癌の転移でリンパ節の構築はなく,腫瘍の70%は膵臓で囲まれ,胃癌の膵転移と診断した.術後S-1による化学療法を施行し,再発腫瘍術後4年間,無再発生存中である.胃癌の膵転移は,手術適応となることが少ないが,他臓器に転移がみられない場合,外科的切除の適応も検討すべきであると思われた.
  • 大谷 弘樹, 久保 雅俊, 宇高 徹総, 水田 稔, 白川 和豊, 宮谷 克也
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3134-3139
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.3カ月前より継続する腹部膨満と嘔気,嘔吐のため当院紹介入院となった.上部消化管内視鏡検査では幽門狭窄を呈しており粘膜面に異常所見を認めなかった.腹部CT検査では胃幽門付近で壁外より圧排する腫瘍を認めた.血液検査ではCA19-9が1,333U/mlと異常高値を示した.術前,確定診断に至らず幽門側胃切除術を施行.術中迅速病理検査にて高分化型腺癌と診断されD2リンパ節郭清を施行した.術後病理組織検査で,腫瘍は粘膜下主体に存在し,粘膜面に腫瘍の露出を認めなかった.また,固有筋層内には癌病巣と混在して膵導管を有するHeinrichIII型の異所性膵組織がみられ,CA19-9免疫染色にても癌への移行像を認め胃異所性膵組織より発生した腺癌と診断された.胃異所性膵からの癌化の報告例は稀である.今回,われわれは術前にCA19-9高値を呈した胃異所性膵原発腺癌の1例を経験したので報告する.
  • 中野 志保, 渡邉 純, 薮野 太一, 望月 康久, 杉田 昭, 林 宏行
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3140-3143
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,女性.2日前から心窩部痛を自覚し,増悪したため来院.CT検査で回腸に限局した腸管壁の肥厚,腹水を認め,手術の方針となった.腹腔鏡下に観察したところ,血性腹水,回腸の限局した浮腫,漿膜面の発赤を認めたため,小開腹下に小腸部分切除術を施行した.病変部は著明な壁の浮腫と,粘膜面に多発する潰瘍,びらんを認めた.術後3日目,背面および両下肢に紫斑が出現.また,小腸の病理所見でleukocytoclastic vasculitisを認め,Schönlein-Henoch紫斑病と診断した.術後4日目よりステロイド内服を開始し,徐々に皮疹は軽快した.Schönlein-Henoch紫斑病は,急性腹症の鑑別すべき疾患の一つであるが,紫斑を伴わない場合,診断が難しく,手術を選択せざるを得ない場合がある.低侵襲な腹腔鏡下手術は,その特徴的な所見を把握しておくことで,診断に有用となる可能性がある.
  • 飯田 あい, 眞部 紀明, 浦上 淳, 山下 和城, 平井 敏弘, 畠 二郎
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3144-3147
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    手術や腸回転異常に起因しない原発性小腸軸捻転症は極めてまれな疾患であり,術前に診断されることは少ない.今回腹部超音波検査にて診断した原発性小腸軸捻転症を経験したので文献的考察を加え報告する.症例は74歳,男性.2007年某月,突然の腹痛を主訴に近医を受診した.X線検査でイレウスと診断され当院へ紹介された.腹部超音波では,上腸間膜動脈根部を中心として捻転している小腸が観察された.カラードプラ上,腸間膜の血流は保たれており小腸の浮腫も比較的軽度であった.開腹所見ではSMA根部付近で小腸が時計回りに360°捻転していたが,癒着などの器質的疾患は見られなかった.術後経過は良好であった.手術既往のない高齢者のイレウス症例において腹部超音波検査は診断に有用であると思われた.
  • 清水 健, 野口 明則, 伊藤 忠雄, 谷 直樹, 岡野 晋治, 山根 哲郎
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3148-3152
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.間歇的な腹痛を主訴に受診した.腹部CT検査では小腸腫瘤を先進部とする腸重積を,またダブルバルーン小腸内視鏡ではBauhin弁の口側70cmの回腸に腫瘤をみとめた.以上より,小腸腫瘍による腸重積と診断した.腹腔鏡補助下手術を施行し,腫瘤部位を含む小腸部分切除術を施行した.病理組織学的所見から腫瘤は内翻した真性憩室で,異所性胃組織を含むことからMeckel憩室の内翻による腸重積と診断した.成人腸重積症の原因としてMeckel憩室の内翻はまれであり,その術前診断は困難である.今回,Meckel憩室の内翻による腸重積の本邦報告例を集計し,その成因・診断・至適治療方針などを検討したので併せて報告する.
  • 内藤 雅人, 山之口 賢, 政野 裕紀, 吉村 玄浩
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3153-3157
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は27歳,女性.第1子妊娠前に初回の虫垂炎を発症し保存的加療にて軽快した.第1子分娩後,6カ月間に3回の虫垂炎を繰り返した.手術適応と判断したが,乳児がいるため保存的加療にて軽快することを繰り返した.出産後3回目,通算4回目の虫垂炎が軽快後,手術を希望されたが,手術直前に第2子妊娠が判明.妊娠中期での待機的虫垂切除を予定したが,妊娠6週に再度虫垂炎を発症.幸い保存的加療にて軽快したため,予定通り妊娠中期14週に気腹下での腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.経過良好であり産科的にも問題なく術後4日目に退院した.その後,妊娠40週0日に正常分娩にて第2子を無事出産した.妊婦に対し,気腹下に腹腔鏡下虫垂切除術を施行した報告は本邦ではまだ少ない.若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 藤井 康, 高木 格
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3158-3161
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は,脳梗塞発症後胃瘻造設目的で当院に転院した84歳の男性.来院時MRSA腸炎を発症しており,前医よりVCM経管投与開始3日目であった.初診時腹部単純X線写真および超音波検査にて,上行~横行結腸にかけての腸管気腫と,腹腔内遊離ガス,さらに門脈内ガス像を認めた.ただし腹水は無く,理学所見および血液生化学所見から,消化管穿孔や腸管壊死は否定的であったため,MRSA腸炎に併発した病態と考え,TPN管理下に保存的に治療を行い,軽快した.本例は,その後MRSAによる菌血症,およびCVカテ感染も合併したが軽快.遊離ガスと腸管気腫の消退を待ち,PEGを施行し,転院となった.腹腔内遊離ガスを伴った腸管嚢腫様気腫症および門脈ガス血症は,近年報告例が増加しつつあるが,MRSA腸炎に併発した報告例は今回われわれが検索しえた範囲では見いだせなかったため,若干の考察を加え,報告する.
  • 西村 健志, 関岡 清次
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3162-3165
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.主訴は下腹部痛.2009年6月下旬の午後4時半頃,畑仕事をしていて突然下腹部に痛みを自覚し,午後7時に当院受診.受診時,発熱はなく,腹部の圧痛は軽度であり,反跳痛,筋性防御認めなかった.受診時の採血結果ではWBC 6,900/μl,CRP 0.1mg/dlと正常範囲内であった.腹部造影MDCT検査で,肝内門脈ガス(portal venous gas以下PVG),S状結腸憩室を認めた.同日,総合病院の外科紹介入院.絶飲食,補液,抗生剤(IPM/CS)投与で,症状軽快,第1病日施行したCT検査で,門脈ガスは消失した.その後の経過も問題なく,第13病日退院となった.以後再発もなく経過良好で,2010年7月現在当院外来通院中である.今回,保存的治療にて軽快した門脈ガス血症を合併したS状結腸憩室炎の1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 井澤 伸一郎, 三村 耕作, 松田 啓, 丸山 敦, 藤井 秀樹, 河野 哲夫
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3166-3170
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    稀な疾患である多発性大腸リンパ管腫が原因となった腸重積症の1例を経験したので報告する.
    症例は17歳,女性.腹痛を主訴に来院.腹部超音波検査および腹部造影CT検査で上行結腸に腸重積を認めた.徒手整復後に下部消化管内視鏡検査を施行したところ,上行結腸に20mm大の嚢胞性粘膜下腫瘤を多数認め,それらが先進部となって腸重積症が発症したと考えられた.嚢胞性腫瘤が多発していること,数カ月前より同様の腹痛症状を繰り返していることより,結腸右半切除術を施行した.切除標本の肉眼的所見では,上行結腸に多発する嚢胞性病変を認め,免疫染色を含めた病理組織学的診断は多発性大腸リンパ管腫であった.
  • 青柳 治彦, 樋口 哲郎, 吉村 哲規, 小林 宏寿, 有井 滋樹, 杉原 健一
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3171-3176
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.既往歴は糖尿病で内服治療中.現病歴では,便潜血陽性のため近医で下部消化管内視鏡検査を受けた.S状結腸癌の診断で,手術目的のため当科に入院した.CTとMRIにてS7,S8に中心部壊死を伴う肝腫瘤を認めた.以上より,肝転移を伴うS状結腸癌と診断した.腹腔鏡補助下S状結腸切除術,肝後区域・尾状葉切除術,S8部分切除術を施行した.病理組織学的所見では,S状結腸癌は1型の高分化腺癌で,肝腫瘤には悪性所見はなく,炎症性病変であった.
    近年大腸癌の増加に伴い,大腸癌に合併した肝膿瘍の報告が散見される.肝転移との鑑別が困難なことが多く,また肝膿瘍の原因には大腸癌肝転移の感染もあげられる.今回われわれは術前診断で肝転移を否定できない肝膿瘍に対し,大腸癌原発巣切除と同時に肝切除術を施行した症例を経験した.大腸癌に合併した肝膿瘍は治療方針も諸家により異なっており,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 金谷 欣明, 奥本 龍夫, 藤井 徹也, 丸山 修一郎, 横山 伸二
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3177-3182
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,男性.上腹部痛,食思不振,体重減少,下痢により当院内科を受診し,上部消化管内視鏡検査の結果印環細胞癌による4型進行胃癌と診断された.術前腹部CT検査で上行結腸から下行結腸にかけてびまん性の壁肥厚を認めた.注腸造影および大腸内視鏡検査で腸管の広範な狭窄やcobble stone appearanceと思われる所見を認め,Crohn病を合併した進行胃癌との診断で手術を施行した.手術は胃全摘術と,回腸末端から下行結腸までの結腸亜全摘術を行った.病理組織検査結果では胃・大腸ともに低分化腺癌および印環細胞癌の混在を認め,同時性大腸転移をともなう進行胃癌と診断した.極めて特異な画像を呈しCrohn病との鑑別が困難であった胃原発転移性大腸癌を経験したので報告する.
  • 竹井 陽, 松田 健司, 堀田 司, 瀧藤 克也, 横山 省三, 山上 裕機
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3183-3186
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    今回われわれは同時性9大腸多発癌症例を経験したので報告する.症例は72歳,男性.便秘・貧血を主訴に当院紹介受診,下部消化管内視鏡検査にて左側結腸に4大腸多発癌を疑わせる病変を認めた.手術は拡大左半結腸切除術D3郭清を施行した.病理検査では癌は横行結腸に3病変,下行結腸に5病変,S状結腸に1病変を認めた.主病変近傍のリンパ節1個のみ転移が認められpN1であった.腫瘍の組織型は全て管状腺癌であり,腺腫内癌も4病変認められ,adenoma-carcinoma sequenceの関与が示唆された.
  • 檀 信浩, 天道 正成, 手塚 健志, 堀 武治, 西野 裕二, 伊倉 義弘
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3187-3190
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.便通異常を主訴に来院.既往歴に33年前に子宮癌にて放射線根治照射(線量など詳細不明)による治療を受けている.15年前から定期的に便通異常に対し下部消化管内視鏡検査を受診していたが今回初めて直腸潰瘍部の生検にて高分化型腺癌の直腸癌と診断し,腹会陰式直腸切断術を施行した.病理結果は粘液癌(MP・ly1・v0)であった.今回われわれは放射線誘発直腸癌を経験した.放射線治療後の経過観察では2次癌を考慮に入れながら観察することが必要であると考えられた.
  • 坂口 孝宣, 鈴木 昌八, 稲葉 圭介, 福本 和彦, 森田 剛文, 今野 弘之
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3191-3196
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.早期胃癌に対する幽門側胃切除術後6年目,転倒による右大腿骨骨折を契機に時々意識障害が出現,以後慢性期病院での寝たきり生活を送っていた.平成19年5月,Mallory Weiss症候群による吐血精査中にアンモニア高値(258μg/dl)および肝内門脈静脈短絡路が発見され,当科に紹介入院.諸検査にて肝前区域に2つの門脈静脈短絡路と上行結腸周囲静脈――下大静脈間の肝外短絡路が同定された.精査中の尿路感染症による敗血症をエンドトキシン吸着療法等で治療し,肝前区域切除および肝外短絡路結紮術を施行した.切除肝組織には炎症や繊維化の所見を認めなかった.術後血清アンモニア値は120μg/dl未満で変動したが,意識障害は生じなくなり,良好に経過した.本症例は病態,治療等示唆に富む症例で,今後,肝内門脈静脈短絡路症例は肝外短絡路の存在に留意すべきである.
  • 林 直美, 石榑 清, 加藤 公一, 山村 和生, 二宮 豪, 黒田 博文
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3197-3201
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.肝嚢胞出血の診断で内科通院中であった.出血を繰り返したため精査したところ,肝細胞癌が疑われ当科紹介となった.腹部ダイナミックCTでは,動脈相・門脈相ともに肝実質より低吸収域を示し,S5,6には造影剤の漏出を認めた.腹部MRIでは,T1強調で不均一低信号,T2強調で不均一高信号を示した.腹部血管造影検査では,腫瘍濃染像はなく,動脈・門脈圧排像もみられなかった.腫瘍マーカーは,PIVKA-ECが11,206mAU/mlと上昇していた.乏血性肝細胞癌を疑い,肝右葉切除術を行った.開腹所見では,肝腫瘍が破裂し,血性腹水を認めた.病理組織学的診断は,中分化型肝細胞癌で,腫瘍内にはCD34染色検査陽性の毛細血管が多数みられた.多血性肝細胞癌と比較して差はなく,腫瘍内血管密度と腫瘍造影効果の直接的な関連はないと考えられた.
  • 山下 俊, 田中 信孝, 野村 幸博
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3202-3205
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,男性.肝酵素高値にて腹部超音波検査が行われ肝外側区域に径50mm大の嚢胞性腫瘍を認めた.胆管嚢胞性腫瘍が疑われ外科にて肝外側区域切除術が施行された.標本造影にて嚢胞から連続して胆管が描出されこれらの交通性が示された.病理組織学的検査では5.5×4.8×4.5cmの範囲で胆管が嚢胞状に拡張し壁は線維性に肥厚するが充実性成分はなく上皮に異型性はなくCaroli病と考えられた.本邦では1983年以降で片葉限局性のCaroli病は本例を含め15例しか報告がない.Caroli病は背景肝の線維化の有無で線維化合併型と純型に分類されるが本例は線維化を認めず純型に相当した.本症例は無再発生存中だが片葉限局性症例でも約10%に胆管細胞癌を合併するとされ肝切除術は適切であったと考える.片葉限局性Caroli病に対し肝切除術を施行した1例を経験したため報告する.
  • 太田 英樹, 小棚木 均, 佐藤 勤
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3206-3209
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,男性.2年前に急性膵炎を発症し,その後に形成された仮性膵嚢胞を経過観察されていた.1年半前に右胸痛を主訴に来院し,胸部単純X線写真で右胸水貯溜が認められたため胸腔穿刺を施行.血性胸水の性状から右膵性胸水と診断した.CTとMRCP所見より肝-胃間の仮性膵嚢胞が胸腔内穿破したものと考えられた.胸腔ドレナージのみで膵性胸水は軽快し退院した.3カ月後,左胸痛を主訴に再来院し,胸部単純X線写真で左胸水貯溜を認めたため胸腔穿刺を施行.血性胸水の性状から左膵性胸水と診断した.CT所見より膵体部主膵管破綻部から左胸腔へ交通する膵胸腔瘻が膵性胸水の原因と考えられた.急性膵炎の再燃を契機として膵性胸水が生じていたため,膵体尾部切除術を行い治癒しえた.稀な経過と考えられたので報告する.
  • 大島 奈々, 江口 礼紀, 吉利 賢治, 新井 俊文, 藤田 泉
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3210-3215
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,男性.心窩部痛を主訴に来院した.高熱と炎症反応高値を認め,腹部所見は軽微であったが,CT上,肝内門脈にガス像を認め緊急入院となった.CTでは胃脾間膜の炎症性変化と脾内,肝内門脈にガス像を認めたが,腸管の虚血を疑う所見は認めなかった.入院後DICを併発,保存的治療でDICは改善するも再び熱発し,CTにて脾膿瘍を認めたため脾臓摘出術目的で緊急手術を施行した.術中,結腸病変の脾穿通による脾膿瘍と診断し,脾臓摘出術・結腸部分切除術を施行した.標本では結腸癌の脾穿通および脾膿瘍が確認された.術後は縫合不全を認め,人工肛門を造設し,その後の経過良好で化学療法を開始し退院となった.現在も定期化学療法を継続中である.結腸癌の穿通により脾膿瘍を形成した症例は本邦報告10例目にあたり稀である.脾膿瘍は急激な悪化をたどることがあり若干の文献的考察を加え報告する.
  • 坂元 克考, 馬場 慎司, 間中 大, 上原 正弘
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3216-3218
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.原因不明の肝硬変で前医通院中であった.2008年昼頃,階段で転倒し,左腰部を打撲した.前医受診し,血液検査などにおいて明らかな異常は認めなかったが,疼痛と血圧低下を認めたため,経過観察で入院した.翌朝起立時に意識消失と貧血の進行を認めたため,精査を施行したところ外傷性腹腔内出血と診断され,当院搬送された.当院搬送後,ショック状態となり,緊急開腹手術を行った.開腹時に約2,500mlの血性腹水を認め,左卵巣静脈瘤破裂による出血と診断し,刺通結紮にて止血した.肝硬変症例においてはしばしば異所性静脈瘤として卵巣静脈瘤がみられる.これまで本邦において外傷性卵巣静脈瘤破裂の報告はないため若干の考察を加え,報告する.
  • 鬼塚 幸治, 伊藤 重彦, 田上 貴之, 山内 潤身, 山吉 隆友, 木戸川 秀生
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3219-3222
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    Fournier壊疽は会陰部や陰嚢周囲に発症する壊疽性筋膜炎であり,死亡率が比較的に高く早期の診断と適切な治療を必要とする疾患である.今回,当科で経験したFournier壊疽3例について報告する.年齢は各々55歳,40歳,55歳で,全症例男性だった.基礎疾患として症例1で直腸癌,症例3で関節リウマチがあった.全症例とも病変部にCTにてガス像を認めた.検査所見では著明な白血球,CRPの上昇を認めた.起炎菌は多種多様であった.治療は全ての症例でドレナージおよび抗菌薬投与を行った.症例1,3は創部の安静のために人工肛門造設術を行った.全症例で救命可能であった.
  • 徳毛 誠樹, 溝尾 妙子, 伊賀 徳周, 鈴鹿 伊智雄, 塩田 邦彦, 中村 聡子
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3223-3226
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.多発骨転移を伴う前立腺癌に対してホルモン療法施行中であったが,治療効果評価目的の腹部CT検査で偶然に腹腔内腫瘤が指摘された.ホルモン療法開始前に施行された腹部CT検査で腫瘤は指摘されておらず,前立腺癌のリンパ節転移を疑いしばらく継続加療された.しかし,骨転移の悪化はないものの同腫瘤のみが徐々に増大傾向を示したために,他疾患を考慮して当科紹介となった.上部・下部内視鏡検査で異常所見は指摘されず,小腸間膜内に発生した間葉系腫瘍を疑い手術を施行した.病理組織検査でデスモイド腫瘍と診断されたが,家族性大腸腺腫症などの遺伝性疾患や開腹手術の既往はなく,前立腺癌に対するホルモン療法による性ホルモンのバランスの乱れが本腫瘍発生・増大に寄与しているのではないかと推察された.
  • 青木 義朗, 亀田 彰, 宮原 栄治, 野宗 義博
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3227-3231
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.心窩部痛および嘔吐を主訴に当科受診.腹部CTでは,十二指腸下行脚内側および膵後面にabscess様のfree airを認め,膵頭部から十二指腸下行脚後外側~右前腎傍腔に炎症性変化と思われる濃度上昇を認めた.十二指腸下行脚の穿孔に伴う後腹膜膿瘍が強く疑われ,緊急手術を施行した.上腹部正中切開にて開腹し十二指腸の受動を行うと,下大静脈前面から右腎下極にかけて浮腫状の後腹膜腔を認めた.また,十二指腸下行脚の内側には壊死した憩室が存在し,その憩室内に2.5cm大の結石を認めた.憩室内結石に起因する十二指腸穿孔と診断し,憩室を剥離した後自動縫合器にて切離し,腹腔ドレナージを行った.術後の経過は良好で,術後27日目に退院となった.十二指腸憩室穿孔は非常にまれな疾患であるが,CTにて特徴的な所見を呈することが多く,本疾患を念頭に置き治療方針を決定する必要がある.
  • 奥村 直樹, 野中 健一, 高橋 孝夫, 山口 和也, 長田 真二, 広瀬 善信, 吉田 和弘
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3232-3236
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,女性.左下腹部に認められた皮下腫瘤が隆起性皮膚線維肉腫(dermatofibrosarcoma protuberans:以下DFSP)と診断され,皮膚と皮下組織の広範囲切除術および植皮術を施行した.7年後の経過観察時のCTにて後腹膜再発を指摘され,開腹による切除術を施行した.術前の血管造影で左深腸骨回旋動脈と左腸腰動脈を栄養動脈と判断し,それらを塞栓し,術中出血は95mLであった.病理組織像はCD34(+),vimentin(+),bc1-2(-),desmin(-)であり原発巣と類似した染色性を示しDFSP再発と診断された.術後1年8カ月経過した現時点で再発は認めていない.DFSPは,皮下組織に生じる結節性の隆起性腫瘤であり,中間悪性群に分類される比較的稀な軟部腫瘍である.自験例のごとく,術後長期経過したのちに再発する報告もあるため注意を要すると考えられた.
  • 白石 謙介, 安留 道也, 鈴木 修
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3237-3241
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.食欲不振のため平成21年7月に当院内科を受診.上部・下部消化管内視鏡検査では異常を認めず,腹部造影CT検査で左骨盤壁に51×48mmの境界明瞭な軟部腫瘤を認め,内部に石灰化を伴っていた.腹部MRI検査では腫瘍の辺縁が一部不整であった.術前には確定診断はつかず骨盤内腫瘍の診断で外科へ紹介,手術を施行した.腫瘍は骨盤内後腹膜,左外腸骨動静脈の背側に存在しており,左外腸骨静脈との癒着を認めたが,剥離可能であり腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的にCastleman病,plasma cell typeと診断した.Castleman病はリンパ節の巨大な腫瘤性病変を特徴とする原因不明の疾患である.本邦における骨盤内発生例は自験例もあわせると11例と非常に稀である.今回われわれは骨盤内に発生したCastleman病の1例を経験したので文献的考察も含めて報告する.
  • 高嶌 寛年, 佐々木 明, 佐々木 薫
    2010 年 71 巻 12 号 p. 3242-3245
    発行日: 2010年
    公開日: 2011/06/25
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,女性.左鼠径部から左大腿部に放散する痛みを主訴に受診した.受診時,骨盤部CTを行い左恥骨筋と外閉鎖筋との間に卵円形の腸管を認め左閉鎖孔ヘルニアと診断した.ヘルニアは自然還納したため待機的に経鼠径的腹膜外アプローチにて手術を行った.鼠径ヘルニアと同様の皮切でアプローチし左閉鎖孔に陥入したヘルニア嚢を認めた.ヘルニア内容はなくヘルニア嚢を用手的に還納した.ヘルニア門の大きさは直径1cmであり4×3cmの長方形のMarlex meshを閉鎖神経動静脈に注意し閉鎖孔を覆うように恥骨上枝と内閉鎖筋に縫着し,ヘルニア門を被覆した.術後経過は良好で8日目に退院した.経鼠径的腹膜外アプローチは最小限の侵襲で,周囲臓器に全く緊張をかけずにまた閉鎖神経動静脈を圧迫することなく安全確実に修復できる術式であり,本症の如く腸管壊死の危険性のない待機手術例では極めて有用であると考えられた.
支部・集談会記事
編集後記
第72回 日本臨床外科学会 総会 演題:取下げ,訂正,変更,追加
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