日本臨床外科学会雑誌
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73 巻 , 2 号
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平成23年度学会賞受賞記念講演
  • 小山 靖夫
    2012 年 73 巻 2 号 p. 277-284
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    私の直腸癌手術は,恩師久留勝先生を措いてはありえない.先生のご指導は入門の1956年に始まるが,直腸癌手術に特化すれば,国立がんセンターに異動した1962年となる.当時の直腸癌根治手術後の5年生存率は,久留,梶谷(癌研)など国内トップクラスで50%台であった.久留院長の陣頭指揮のもとにスタートした国立がんセンターでは,先生は直腸固有筋膜に包まれた直腸を,きれいに骨盤壁から剥離する,流れるような手術を披露されていた.一方,外科スタッフは全国から集まった若手俊秀の集団で,各々出自の色合いを保ちつつ切磋琢磨していたので,久留流の直腸癌手術が直ちにがんセンター流とはならなかった.実際1968年頃の集計では,根治手術耐術者の5年生存率は48%であった.
    これを初期とすれば,以後の私の直腸癌手術は,根治手術術式の確立・統一と肛門機能温存(前方切除,貫通術式,腹仙骨術式など)の適応拡大.拡大根治手術(拡大郭清,合併切除,骨盤内臓全摘術),排尿・性機能と肛門機能温存術の拡大(結腸肛門吻合,腹仙骨術式,自律神経温存術),低侵襲手術(鏡下手術)などの流れで回顧してみることが出来る.併せて,陣内伝之助,梶谷環両先生方始め多々ご指導を頂く場であった大腸癌研究会,その大腸癌全国登録事業などでの掛替えない経験もご報告しご批判を頂くこととした.
原著
  • 阿南 敬生, 佐伯 俊昭, 武井 寛幸, 山本 尚人, 井本 滋, 堀口 淳, 坂東 裕子, 園尾 博司, 池田 正
    2012 年 73 巻 2 号 p. 285-292
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    医師の労働環境は診療形態,診療科,性,地域別に大きく異なり,詳細なデータは少ない.日本乳癌学会は勤務状況や生活に関する包括的な実態調査を行った.会員の9%から回答を得た.男性81%,女性19%であり基本的専門分野では92%が外科であった.乳腺診療の多くは大学医局の関連病院と大学病院を中心に,大学医局の人事で派遣された指導的立場の医師を中心に行われている構図が浮かび上がった.比較的大きな総合病院がほとんどであるがその中で乳癌診療に専従している医師は1人から3人であった.週平均勤務時間は61時間以上が男性勤務医で39%,女性勤務医で44%であった.キャリア形成の障害となっているものとして約3分の1の医師が労働条件の悪さを指摘した.キャリア形成で支援が欲しいものとして6割の医師が勤務・労働条件の明確化を挙げた.多くの女性医師は結婚・出産・育児などさまざまな困難を抱えながら働いているが,同時に乳腺診療を有意義な仕事としてプライドを持って働いていることも明らかとなった.乳腺診療に従事する医師は一般勤務医と同等かそれ以上の長時間・高密度の労働をこなしている.労働力人口が激減した超高齢化社会でも安定した医療の提供が維持できるようにするためには,勤務医の労働環境の整備と仕組みの再構築が必要である.そして,女性医師が働きやすい環境を整備して行くことは重要と思われた.
臨床経験
  • 荒井 宏雅, 乾 健二, 西井 鉄平, 湯川 寛夫, 利野 靖, 益田 宗孝
    2012 年 73 巻 2 号 p. 293-298
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    胸腔鏡補助下前側方切開によるアプローチで胸腺腫胸腺部分切除術を施行した胸腺腫(正岡分類I/II期)10例について報告する.対象は男性3例,女性7例,平均年齢58±11.0歳.他臓器合併切除は3例,術後合併症は3例.1例は合併切除に伴う横隔神経麻痺,1例は術前から存在する心房細動の症例であった.病理組織診断は,WHO分類ではType ABが5例(50%),術後正岡分類ではI期が6例(60%)と最も多かった.手術時間は92.3±39.2分,出血量は20.5±34.1ml,胸腔ドレーン留置期間は1.50±0.85日,在院期間は7.4±4.62日であった.全症例において再発を認めていない.症例を選択した上で,小開胸を併用した胸腔鏡補助下の胸腺腫胸腺部分切除術は低侵襲で安全な術式であると考えられた.
  • 若杉 正樹, 赤松 大樹, 吉留 克英, 鳥 正幸, 荻野 信夫, 西田 俊朗
    2012 年 73 巻 2 号 p. 299-303
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    慢性疼痛,違和感といった術後合併症を軽減するライトウェイトメッシュや腹腔鏡下手術の発達により,成人鼠径ヘルニア修復術式が多様化している.今回,ライトウェイトメッシュである3D Max Light®(Bard社)を使用して,拡張バルーンを用いないTEP法による鼠径ヘルニア修復術を経験した.対象は男性18例,女性2例で平均年齢は60.9歳,20例23部位であった.間接ヘルニア16部位,直接ヘルニア6部位,併存型1部位であった.平均手術時間は片側ヘルニアで81.8分,両側ヘルニアで133分であった.平均術後在院日数は3.0日であった.平均観察期間は3.2カ月であった.術後1カ月で漿液腫を1例認めたが,術後3カ月には消失した.その他合併症,ヘルニア再発を認めなかった.特別な道具を使わず経済的で,術後違和感や疼痛といった合併症を減らす可能性のある3D Max Light®を用いた本術式は従来からの鼠径ヘルニア手術法と比較して遜色なく,有用であると推察された.
症例
  • 三浦 光太郎, 田中 浩明, 六車 一哉, 久保 尚士, 大平 雅一, 平川 弘聖
    2012 年 73 巻 2 号 p. 304-308
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例1:70歳,男性.食道癌に対する術前化学放射線療法(CRT)目的で入院,PICCを挿入し,術前CRT29日目に発熱を認め,PICCを抜去.4日後に頸部腫脹を生じ,CTにて左内頸静脈から上大静脈にかけて血栓を認めた.抗凝固療法開始後11日目に頸部腫脹は改善.退院後抗凝固療法継続中で,CT上血栓の増悪は認めていない.症例2:68歳,女性.進行胃癌手術予定であった.食事摂取不能のためTPN施行目的にPICCを挿入.3日目に術前精査目的に施行したCTで左内頸静脈と左鎖骨下静脈に血栓を認めた.PICCを抜去,抗凝固療法を開始し,1週間後CTで血栓縮小傾向を認め,胃全摘術を施行した.退院後抗凝固療法継続中で,5カ月後にCT上血栓は消失した.結語:消化器癌治療においてPICC関連静脈血栓症は長期留置例や低栄養状態例に生じる可能性が示唆された.
  • 平塚 寿恵, 嶋田 昌彦, 関 博章, 安井 信隆, 松本 秀年, 里 悌子
    2012 年 73 巻 2 号 p. 309-313
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.主訴は右乳房腫瘤.検診の超音波検査にて右乳房腫瘤を疑われ当院紹介受診した.診察上右乳腺A領域に48×45mmの腫瘤を触知し,超音波検査で辺縁不整のhypoehoic massを認めた.針生検にて浸潤性乳管癌の疑いであったため,乳房部分切除術を施行した.術後病理組織診検査の結果,腫瘍はややクロマチンの増した楕円核および好酸性顆粒状の胞体を有する丈の高い細胞からなり,索状構造を示しつつ多数の胞巣をなし,小腺管構造,Rossett様構造を示す部分も認められた.また,小型の細胞が充実性の増殖を示す胞巣も認められ,一部で線維血管性間質を含み,血液の鬱帯像を伴っていた.以上より神経内分泌細胞由来が疑われ,特殊染色を施行したところ,腫瘍細胞の多くがchromogranin Aおよびsynaptophysin陽性を示し,Grimerius染色でも陽性細胞の多数集族した胞巣を認め,カルチノイドと診断した.
  • 木村 俊久, 竹内 一雄, 前田 浩幸, 山口 明夫, 今村 好章
    2012 年 73 巻 2 号 p. 314-318
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性. 右腋窩のしこりを主訴に当院の皮膚科を受診した.腫瘤の一部を生検し,腺癌と診断された.潜在乳癌あるいは原発不明癌の腋窩リンパ節転移を疑い,原発巣検索目的に外科に紹介された.胸部CT検査およびFluoro deoxy glucose positron emission tomography(FDG-PET)検査で右腋窩に腫瘤を認めた.諸検査では,明らかな原発巣と考えられる病変を認めなかった.生検後の残存腫瘤切除と右腋窩リンパ節郭清術を施行した.切除腫瘤は免疫組織染色でgross cystic disease fluid protein-15(GCDFP-15)とandorogen reseptor(AR)が陽性であり,アポクリン癌と診断され,さらに腫瘍辺縁に乳管組織を認めたため,副乳内発生が疑われた.リンパ節転移はなかった.術後2年の現在,再発の兆候はない.
  • 梶浦 耕一郎, 福本 泰三
    2012 年 73 巻 2 号 p. 319-322
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    食道癌術後縫合不全による食道腕頭動脈瘻を縫合止血した際に使用したpledgetの感染が原因で5年後に難治性上縦隔膿瘍を引き起こした症例を報告する.
    71歳男性.食道癌にて食道切除,3領域郭清,頸部食道胃管吻合,左肺・横隔膜合併切除を施行した.Lt,SCC,type2,pT3N2M0IM0 stage IIIであった.第11病日に縫合不全を認め,第24病日に感染性食道腕頭動脈瘻をきたした.PTFE pledgetを用いて腕頭動脈を直接縫合した.術後縦隔炎となったが,縦隔郭清・大胸筋弁充填にて軽快した.術後5年半後に難治性上縦隔膿瘍をきたした.CTで膿瘍内に感染性異物であるpledgetを認めたため,その半年後に上縦隔膿瘍郭清術施行した.腕頭動脈損傷なく,pledgetを含む膿瘍を郭清しえた.術後経過は良好で第14病日に軽快退院し,約3年間縦隔膿瘍の再発を認めず,食道癌の再発も認めない.
  • 川井 廉之, 齋藤 雄一, 高橋 伸政, 池谷 朋彦, 村井 克己, 星 永進
    2012 年 73 巻 2 号 p. 323-327
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.胸痛を主訴に前医を受診.縦隔腫瘍が疑われ当センターへ紹介となった.胸部CT検査にて前縦隔に胸骨と大動脈に広く接し,左腕頭静脈を狭小化させる径5cmの腫瘤を認めた.浸潤性胸腺腫あるいは胸腺癌と診断し手術を行った.胸骨正中切開にて手術を開始したところ,腫瘤は胸骨後面に浸潤していたため一部切開された.このため,浸潤が疑われる胸壁を周囲の浸潤臓器とともに合併切除した.術後病理検査にて断端陽性部位があり,放射線治療を追加した.その後の経過は良好で現在に至るまで無再発にて経過観察中である.胸腺腫の胸壁浸潤は稀であるが,術前診断が困難である.本例のごとく臨床症状や画像検査で胸壁浸潤が疑われた場合は,術中に注意深く検索し術式を検討するべきである.
  • 鹿田 康紀, 桂 正和, 竹尾 貞徳
    2012 年 73 巻 2 号 p. 328-331
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    まれな肺原発の良性淡明細胞腫:benign clear cell tumorの1例を経験した.症例は65歳,女性.前医にて直腸癌(RS)に対し高位前方切除術施行された(pT3N0M0:Stage IIIB,Adenocarcinoma,well differentiated).術前より胸部CTにて左肺S3に小結節を認め肺転移も疑われたが,亜イレウス状態であったため直腸の手術を行った.術後化学療法(LV/UFT)を行うも肺病変に変化なく,肺病変の診断および治療目的に当科紹介となり,胸腔鏡補助下に左肺S3部分切除術を施行した.病理組織所見では淡明な胞体を有する細胞が増殖し,類同様血管に囲まれていた.またPAS染色陽性でかつHMB-45陽性であることより,良性淡明細胞腫と診断した.本症例はまれな疾患であり,文献的考察を加えて報告した.
  • 内藤 敦, 西山 和孝, 安池 純士, 加藤 昇
    2012 年 73 巻 2 号 p. 332-335
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.自殺目的にアルカリ性漂白剤であるマイキッチンブリーチ500mlを服用し,当センター搬送となった.CTにて食道周囲の縦隔に広範な液体貯留と上部内視鏡検査で穿孔を疑う深い潰瘍性病変を認め,腐食性食道炎と診断した.これらの所見から食道穿孔の危険性が高いと考え,急性期における食道切除術を施行した.
    術中所見では上部から中部食道周囲の縦隔に炎症性の変化を認めたが,肉眼的に明らかな穿孔は認めなかった.病理組織学的検査で粘膜全体の壊死性変化を認め,粘膜下層から固有筋層にかけての炎症の波及を認めた.
    アルカリ製剤による腐食性食道炎は遅発性の穿孔を起こす場合があるが急性期の手術適応に関してのコンセンサスは得られていない.一度,穿孔を起こした場合は致命的な合併症となる為,手術時期を逸することのないように判断を行う必要がある.
  • 松本 順彦, 長田 俊一, 菅江 貞亨, 長谷川 誠司, 小尾 芳郎, 阿部 哲夫
    2012 年 73 巻 2 号 p. 336-339
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例:39歳,男性.心肺停止状態でプールに沈んでいるところを発見.発見者による心肺蘇生後に心拍再開.来院時,血圧255/107,脈拍137回/分,SpO2:70%,多量の口腔内出血と腹部膨満を認めた.腹部CTで腹腔内free air多量,胃管からの血性排液より,消化管穿孔と診断し緊急開腹手術施行.開腹時,小網内にair貯留を認め,胃内もairと出血が充満し拡張.食道胃接合部から胃小弯に約7cmの胃壁の裂創を認め,同部位を縫合閉鎖した.術後急性呼吸不全を合併したが,第30病日独歩退院となった.
    心肺蘇生時の不適切な換気による胃拡張は,胸骨圧迫を行うことで,急激な胃内圧の上昇を引き起こし,胃破裂の危険性を高める.適切な換気と胸骨圧迫が必要であり,自己心拍再開した状態で消化管穿孔を発症した場合,胃破裂を念頭に置いて,速やかに緊急開腹手術を行うべきである.
  • 村井 俊文, 山村 義孝, 稲岡 健一, 福岡 伴樹, 三輪 高也, 佐野 正明
    2012 年 73 巻 2 号 p. 340-345
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性.検診目的ため胃内視鏡検査を受けたところ,前庭部大彎の早期胃癌と診断され,精査加療目的で紹介受診した.術前CTで,縦隔から両側肺門部にかけての最大2cmに及ぶリンパ節腫大と,総肝動脈,大動脈周囲リンパ節の腫大を認めた.早期胃癌に併存した全身性リンパ性疾患を疑い,胃癌治療と腹腔内リンパ節生検の目的で手術を行った.
    病理組織検査の結果,胃癌はsig SM N0であり,郭清リンパ節すべてに乾酪壊死を伴わない類上皮細胞肉芽腫を認めた.眼科的所見やGallium-67 citrateシンチグラム,気管支肺胞洗浄検査等の結果から,最終的にサルコイドーシスと診断した.
    後治療なく術後1年半が経過した現在,胃癌の再発はなく,サルコイドーシスの進展も認めていない.
  • 杉浦 謙典, 鈴木 大亮, 秋山 貴洋, 宮崎 勝
    2012 年 73 巻 2 号 p. 346-352
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は52歳,男性.胃潰瘍にて経過観察中,2004年の上部消化管内視鏡検査で十二指腸乳頭部腫大を認めたため当院へ紹介された.超音波内視鏡検査で10mm大の粘膜下腫瘍を認め経過観察されていたが,2011年3月,30mmと増大傾向を認めたため悪性も否定できず,当科紹介となった.腹部dynamic-CT検査で,明らかなリンパ節腫脹は認めず,十二指腸乳頭部粘膜下腫瘍の診断で,経十二指腸的腫瘍摘出術を施行した.病理組織学的診断はgangliocytic paragangliomaであった.Gangliocytic paragangliomaは比較的まれな症例であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 五十嵐 隆通, 富澤 直樹, 小川 哲史, 伊藤 秀明, 須納瀬 豊, 竹吉 泉
    2012 年 73 巻 2 号 p. 353-357
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    十二指腸カルチノイドに膵癌,肝細胞癌の同時性2重複癌が併存した1例を経験したので報告する.78歳男性,平成19年6月,十二指腸カルチノイドの診断で当院に紹介され,十二指腸下行脚乳頭部対側に直径1.2cmのカルチノイドを認めた.精査でリンパ節転移,遠隔転移を認めず,十二指腸部分切除予定で手術を施行した.術中,膵鈎部に弾性硬の腫瘤を触れ,カルチノイドのリンパ節転移と診断,さらに肝S4表面に直径1cmの白色の腫瘤を認め,肝転移と診断し,膵頭十二指腸切除術,肝部分切除術を施行した.病理組織学的検査では,膵鈎部の腫瘤は膵癌で,肝腫瘤は肝細胞癌であった.リンパ節転移はなくそれぞれ治癒切除であった.一般に,消化管カルチノイドには悪性腫瘍の合併が多いとされるが,カルチノイドに重複癌が同時に発生した報告は少なく,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 中川 朋, 文元 雄一, 生島 裕文, 林部 章, 荻野 信夫
    2012 年 73 巻 2 号 p. 358-362
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.2カ月来の食後の腹痛と嘔吐で7kgの体重減少をきたした.原因検索のため下部消化管内視鏡検査が予定された.前処置の下剤を内服したところ便汁性嘔吐が出現し,当科紹介となった.左鼠径部に還納不能な膨隆を触知し,腹部CT検査にて左大腿ヘルニアを認めた.左大腿ヘルニア嵌頓と診断し,緊急腹腔鏡下ヘルニア修復術を行った.術後6日目に軽快退院したが,食後の嘔吐が再出現したため再入院となった.腹部造影CT検査にて空腸の狭窄と口側空腸の拡張を認めた.小腸狭窄の解除目的にて手術を行った.腹腔内の検索にて空腸重積を認めた.重積を整復後,小腸部分切除を行った.重積部には重積の先進部となるような腫瘍性病変を認めなかった.再手術後は食後の腹痛と嘔吐は消失し,体重は順調に回復した.大腿ヘルニア嵌頓整復術後に稀な疾患である成人小腸重積症を発症した症例を経験したので報告する.
  • 桂 守弘, 上田 真, ぐし宮城 正典
    2012 年 73 巻 2 号 p. 363-368
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    消化管出血にて小腸多発GISTが診断されたvon Recklinghausen病(R病)の症例を2007年に経験した(症例1).過去の症例を調べたところ1994年に同様の症例を認めたため報告する(症例2).症例1は46歳男性,腹痛,黒色便精査で入院.大量下血あり血管造影施行した.小腸に多発性の腫瘍濃染像あり,コイル塞栓術後に小腸部分切除術施行した.症例2は62歳男性,腹部不快感精査にて入院.黒色便と貧血の進行あり血管造影施行した.十二指腸および小腸に多発性腫瘍濃染像あり,小腸部分切除施行した.選択的血管造影やIVRが診断・治療に有用であった.小腸腫瘍は共に免疫染色においてc-kit(+),CD34(+)を示しGISTと診断された.症例1ではc-kit/PDGF-Rα遺伝子変異を認めなかった.今後,R病合併GIST症例におけるc-kit overexpressionと遺伝子変異との関係解明と分子標的薬の適応を含めた治療法の理解が望まれる.
  • 片橋 一人, 鈴木 昌八, 神藤 修, 落合 秀人, 谷岡 書彦, 北村 宏
    2012 年 73 巻 2 号 p. 369-374
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性.2001年11月に径7cmの嚢胞性空腸腫瘍に対し,空腸部分切除による腫瘍摘出術を施行した.腫瘍内容は褐色血性であり,嚢胞壁には充実成分を認めた.免疫組織化学染色と核分裂像の結果から,病理組織学的に,中リスクのGISTと診断された.
    2009年4月の腹部CT検査で肝S8に2個の小嚢胞性病変の出現をみた.2010年8月には腫瘍径の増大とともに嚢胞性腫瘍周囲に造影効果を認め,空腸GISTの肝転移と診断した.原発巣切除後8年以上経過後に肝S8部分切除術を施行した.嚢胞性腫瘍の壁の一部に充実性成分が確認でき,空腸GISTと一致する病理組織像を呈していたため,最終的にGIST肝転移と診断された.GIST切除後の遠隔期に肝転移が顕在化する場合があり,長期にわたり経過観察を行う必要性が示唆された.
  • 富沢 賢治, 花岡 裕, 戸田 重夫, 森山 仁, 的場 周一郎, 黒柳 洋弥
    2012 年 73 巻 2 号 p. 375-380
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.黒色便を認めたため近医を受診し,貧血を指摘され消化管出血が疑われた.上下部内視鏡を施行するも,明らかな出血源は同定できず紹介受診となった.小腸内視鏡で上部空腸に30mm大の粘膜下腫瘍を認めGISTが疑われたため,マーキングを施行し腹腔鏡手術の方針とした.腹腔鏡下に観察すると点墨のために腫瘍部位の同定は容易であり小開腹創から小腸部分切除術を施行した.病理結果はlow grade GISTの診断であった.小腸原発のGISTに対して,術前の小腸内視鏡は腹腔鏡下手術時において正確な診断と適切な治療法のために非常に有用である.
  • 高木 秀暢, 愛甲 聡, 五十嵐 直喜, 小山 恭正, 緒方 謙太郎
    2012 年 73 巻 2 号 p. 381-384
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は20歳,男性.腹痛,食思不振,下腿浮腫を自覚し近医受診したところ高度の貧血を認め当院紹介受診.CTで小腸粘膜の肥厚,穿孔と多発肝転移,多発リンパ節転移を認め緊急入院とし手術施行した.原発巣は40×50mm大,Treitz靱帯より約10cmの空腸を完全に巻き込み背側に癒着し可動性不良となり同部で穿孔も確認された.小腸間膜,大網,膀胱直腸窩に大小の播種巣と傍大動脈,胃小弯中心に多数のリンパ節転移を認めた.病理組織学的検討の結果Chromogranin A,CD56染色陽性であり空腸原発の神経内分泌細胞癌と最終診断した.術後補助化学療法としてカルボプラチン(以下CBDCA)+エトポシド(以下VP-16)を計4クール施行し一旦縮小効果を認めたが再度増悪し術後5カ月目に死亡した.空腸原発神経内分泌細胞癌は本邦で24例しか報告されておらず非常にまれな疾患であり若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 山口 拓也, 平林 邦昭, 戸口 景介, 外山 和隆, 吉村 昌記, 吉川 健治, 木野 茂生
    2012 年 73 巻 2 号 p. 385-389
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    40歳,女性.検診で便潜血陽性および貧血を指摘され,大腸内視鏡検査を施行.上行結腸に潰瘍を認めた.組織の結核菌培養検査で結核菌が認められたため,腸結核と診断.抗結核薬による治療を開始した.内服治療中,右側腹部痛を主訴に外来を受診.腹部CT検査にて拡張,壁肥厚を伴う上行結腸を認めた.病変部の瘢痕収縮による狭窄が原因と考えた.CT所見,理学所見から剥離受動可能と考え腹腔鏡下右半結腸切除術施行した.病理結果では潰瘍瘢痕による線維性肉芽組織の増生が認められるものの肉芽腫性病変は認められなかった.総合判断では腸結核性潰瘍の瘢痕収縮であると考えた.退院後は当科外来に通院中であるが抗結核薬は投与せず経過観察中である.腸結核に対し抗結核薬治療を行った場合,腸管狭窄を生じ,その結果イレウスとなることがある.そうした腸結核の腫瘤および狭窄に対して腹腔鏡下手術は可能であることが示唆された.
  • 池田 直哉, 飯塚 育士, 市村 由佳子, 高垣 俊郎, 大河内 信弘
    2012 年 73 巻 2 号 p. 390-394
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.胃癌に対する腹腔鏡下切除術の約半年後の腹部CT検査で,複数の傍大動脈リンパ節の腫大と下行結腸腫瘍を認めた.臨床症状の訴えは乏しかったが,高度の体重減少と低栄養状態であった.胸部CTや上部消化管内視鏡検査で異常なく,下部消化管内視鏡検査では,粗大隆起を密に伴う全周性病変により下行結腸は完全狭窄をきたしていた.注腸検査で回盲部病変を認めなかった.悪性リンパ腫や炎症性腸疾患などを念頭に置いたが,組織学的診断は得られず,全身状態の改善を優先し腹腔鏡下下行結腸部分切除術を施行した.術後病理学的に活動性腸結核と診断された.高齢化の進行する本邦では,潜在性結核の再燃が危惧されている.呼吸器病変を伴わない肺外結核症の早期診断は,特異な症状がなく困難なことが多いが,低栄養状態を伴う高齢者の腹部腫瘍においては,肺外結核症を考慮することが必要と思われた.
  • 山本 誠士, 奥田 準二, 田中 慶太朗, 近藤 圭策, 茅野 新, 内山 和久
    2012 年 73 巻 2 号 p. 395-399
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    虫垂粘液嚢腫は,破裂や粘液の漏出により腹膜偽粘液腫となる疾患である.過去16年間に当科で経験した9例(虫垂粘液嚢胞腺腫7例,虫垂粘液嚢胞腺癌1例,過形成1例)について検討を行った.年齢は35~65歳で,男性3例,女性6例であった.主訴は右下腹部痛が2人,腹満感が1人,その他6人は無症状で検診から発見された.9例中6例に術前診断が可能であり,1例は腹膜偽粘液腫の術前診断が可能であった.術式は虫垂切除が1例,盲腸部分切除が4例,回盲部切除が4例であり,5例に腹腔鏡手術を安全に行えた.9例全例が生存中で,腹膜偽粘液腫を伴った虫垂粘液嚢胞腺癌の1例が,13カ月後に再発し再手術を施行しているが,その他の症例で再発は認めていない.自験例を含む本邦報告411例の臨床病理学的検討を加え,治療戦略を考察した.
  • 櫛田 正男, 木暮 道彦, 鈴木 弘行, 金澤 幸夫, 根本 剛, 後藤 満一
    2012 年 73 巻 2 号 p. 400-405
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は60歳,女性,既往歴は10年前に虫垂切除術.右下腹部痛を主訴に入院,下部消化管内視鏡検査にて盲腸に2型腫瘍を認め生検にて印環細胞癌が示唆された.血液検査にて血清抗p53抗体が上昇していた.開腹に際し腹腔内全域に広がる播種を認めたため回盲部切除術を施行,病理診にて虫垂原発の杯細胞型カルチノイド(goblet cell carcinoid)p53の免疫染色陽性と診断された.術後5-FUを中心とする化学療法を継続,血清抗p53抗体が低下した,経過一年現在外来通院中である.虫垂の杯細胞型カルチノイドは比較的稀な疾患で腺癌類似像を有し予後不良とされる,本邦報告は99例であった.p53の免疫染色例は11例で陽性6例,血清抗p53抗体の既報告は無く本例が初回と思われた,腫瘍マーカーを中心に若干の文献的考察を加え報告する.
  • 飯田 善郎, 宗本 義則, 笠原 善郎, 三井 毅, 三浦 將司, 宮山 士朗, 須藤 嘉子, 斉藤 英夫
    2012 年 73 巻 2 号 p. 406-410
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,男性.2004年4月当院人間ドックにおいて下腹部腫瘤を指摘され紹介される.画像診断では骨盤内,下腹部が巨大腫瘤にて占拠されていた.腫瘤は直腸,S状結腸を粘膜外性に圧排していた.エコーガイド下に経皮的針生検を施行したところ,solitary fibrous tumor(SFT)が疑われた.2004年6月開腹下に手術を施行した.腫瘤は巨大であり,骨盤内を占拠していたが,剥離可能であった.腫瘤はS状結腸,直腸の腸間膜より発生したものと考えられた.直腸低位前方切除術にて完全摘除可能であった.病理組織学的診断は,径25cmのSFT,low-grade malignancyであった.術後経過は良好で,約7年後の2011年現在,再発徴候なく健在である.
  • 自見 政一郎, 佛坂 正幸, 山縣 元, 松木 康真, 品川 裕治, 堤 宣翁
    2012 年 73 巻 2 号 p. 411-415
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    57歳,女性.主訴は下血,貧血.副腎シンチの前処置としてsennoside 24mgを内服し腹痛,ショックが出現したが,ループ式のS状結腸人工肛門を造設しショック状態を脱した.術前に内視鏡検査を行ったところ人工肛門の口側に潰瘍性病変を認めた.人工肛門造設後32日目に左結腸切除を行った.直接浸潤のため子宮合併切除と小腸部分切除を行った.切除標本では,3分の2周性のS状結腸癌の20cm口側から25cmの3本の縦走潰瘍を認め,閉塞性大腸炎と診断した.全周性でなくても左側の大腸狭窄の疑われる症例に下剤を投与する場合は注意が必要である.
  • 山梨 高広, 半田 寛, 西 知彦, 鳥海 史樹, 赤松 秀敏, 向井 清, 下山 豊
    2012 年 73 巻 2 号 p. 416-421
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は41歳,男性. 健診腹部USで肝腫瘤を指摘され,精査加療目的にて当院受診となった.腹部CT上,肝左葉外側区域から内側区域尾側にかけ,多房性嚢胞状構造を含む境界明瞭な腫瘤を認めた.胆管嚢胞腺癌や肉腫を疑い,肝左葉切除術を施行したが,切除標本の免疫組織化学染色にて孤立性線維性腫瘍(solitary fibrous tumor;以下SFT)と診断された.核異型や核分裂像はほぼ認められなかったが,一部に壊死像や胆管壁内への浸潤像を認めた.術後9カ月経過し,無再発生存中である.SFTは比較的まれな腫瘍であり,多くは胸膜に関連した胸腔内病変として発生する.なかでも肝臓原発のSFT報告例は極めてまれである.SFTの大部分は臨床的に良性の経過をたどるが,ときに悪性の転帰をたどる報告例もあり,今後も慎重な経過観察が必要と考えられた.
  • 中山 健, 松尾 亮太, 池田 治, 奥田 洋一, 大河内 信弘
    2012 年 73 巻 2 号 p. 422-426
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    今回,われわれは亜全胃温存膵頭十二指腸切除(SSPPD)術後に胆管空腸吻合部狭窄による肝内胆管結石,閉塞性黄疸および慢性胆管炎を併発し,ビタミンA欠乏による夜盲を発症した1例を経験したので報告する.
    症例は73歳,女性.3年前に膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)に対してSSPPDを施行された.2年前より,多発肝内胆管結石,閉塞性黄疸および慢性胆管炎を繰り返し,今回,胆管炎の急性増悪のため入院となった.経皮経肝胆道ドレナージ,肝内胆管結石切石と胆管空腸吻合部バルーン拡張により,胆管炎および閉塞性黄疸は改善した.入院時,ビタミンA欠乏による夜盲を認め,ビタミンAを筋注投与した結果,夜盲も速やかに改善した.
    胆汁流出障害に伴う吸収障害,閉塞性黄疸や胆管炎に伴う肝での貯蔵能低下がビタミンA欠乏の原因として考えられた.
  • 宮本 好晴, 林 道廣, 内山 和久
    2012 年 73 巻 2 号 p. 427-431
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は12歳,女児.上腹部痛を主訴に近医受診し消化剤を処方されるも症状改善せず,本学小児科紹介となった.精査にて膵尾部に直径約50mmの類円形の腫瘤性病変を指摘され,手術目的で当科紹介入院となった.腹部CTにて膵尾部に径50mm大の類円形の腫瘤性病変を認めた.内部は大部分が嚢胞性成分で,一部隔壁を伴い辺縁部には造影にて濃染する充実成分を伴っていた.T1強調MRIでは,腫瘤内部は不均一で辺縁に高信号を認め腫瘍内出血が疑われた.出血を伴う膵solid pseudopapillary tumorの診断のもと腹腔鏡下脾温存膵尾部切除術を施行した.術後経過は良好で,第13病日に退院となった.膵の良性,あるいは本症例のようなborderlineの腫瘍は腹腔鏡下膵切除のような低侵襲性手術の良い適応であると考えられた.
  • 須貝 歩, 福永 正氣, 李 慶文, 菅野 雅彦, 永仮 邦彦, 勝野 剛太郎
    2012 年 73 巻 2 号 p. 432-435
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は39歳,女性.主訴は意識消失発作.平成22年11月頃より意識消失発作を繰り返すようになり当院受診.精査の結果,低血糖による意識消失であった.Whippleの3主徴を認めるが,インスリノーマの診断基準をすべて満たしてはいなかった.造影CTでは膵尾部に多血性腫瘤を認め,インスリノーマを強く疑った.平成23年4月,診断と治療を兼ね膵腫瘍に対し単孔式腹腔鏡下膵尾部腫瘍核出術を施行した.手術時間は150分,出血量は10gであった.病理組織診断はWell differentiated endocrine tumor(insulinoma compatible)であった.術後は膵液漏などの合併症や低血糖発作を起こすことなく軽快退院.単孔式腹腔鏡下膵腫瘍核出術は整容面において優れており,腫瘍の局在が判明し,技術的に切除可能な部位であれば有用な術式と思われた.
  • 金城 達也, 土屋 嘉昭, 野村 達也, 梨本 篤, 西巻 正
    2012 年 73 巻 2 号 p. 436-441
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.2008年に他院にて上行結腸癌に対して右半結腸切除術を施行された.経過観察中,2010年にCTで3.0cm大の膵腫瘤を認めたため当院へ紹介された.腫瘍マーカーは正常範囲内で,膵腫瘍はUSでは膵頭部に内部低エコー,CTでは後期相で遅延性に造影効果を有する腫瘤像を呈し,胃後壁およびSMVへの浸潤を伴っていた.MRIではT1およびT2強調画像で低信号を呈する腫瘤であり,MRCPでは主膵管の途絶および末梢での拡張像を認めた.PET-CTでも同部位にFDGの異常集積を認めた.通常型膵癌の診断にて膵頭十二指腸切除,左腎静脈グラフトによるSMV再建術を施行した.病理組織学所見では原発巣の上行結腸癌と類似した高分化型管状腺癌であった.免疫染色ではCK7陰性,CK20陽性であり最終診断は結腸癌膵転移とされた.大腸癌膵転移の切除症例はまれであり,既報告例よりR0の切除が可能であれば通常型膵癌に準じた手術が予後に寄与すると考えられた.若干の文献的考察を含めて報告する.
  • 菊川 利奈, 佐藤 正幸, 山並 秀章, 藤谷 恒明, 伊藤 しげみ, 佐藤 郁郎, 椎葉 健一
    2012 年 73 巻 2 号 p. 442-447
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.S状結腸癌の術前CTで主膵管の拡張がみられたため経過観察していたところ,切除1年後の腹部CTで3cm大の膵頭部腫瘍を認めた.内視鏡的逆行性膵胆管造影(ERCP)では膵頭部で主膵管が完全閉塞しており,膵癌の診断で膵頭十二指腸切除術(PD)を行った.病理検査で退形成性膵管癌(紡錘細胞型)Stage IIIと診断された.術後経過は良好であったが,腫瘍後面の剥離断端陽性のため,ゲムシタビンを投与した.PD後8カ月目にS状結腸癌の肺転移を認め,右肺上葉・中葉切除術を施行した.術後S-1を投与していたが,食欲不振のため10カ月で中止し経過観察とした.現在まで再発なく術後4年生在中である.退形性膵管癌には長期生存例の報告は少なく,紡錘細胞型では3年以上の生存例の報告は本邦でこれまでにない.本症例の長期生存を可能にした臨床的また組織学的特徴を推察し,文献的考察を加えて報告する.
  • 梶原 麻里, 森本 芳和, 赤丸 祐介, 藤井 眞, 弓場 健義, 山崎 芳郎
    2012 年 73 巻 2 号 p. 448-453
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術(PD)を施行した同時性重複膵癌3例を経験したので報告する.症例1は51歳,男性.主訴は黄疸.膵頭部に3cm大,右腎に6cm大の腫瘍を認め,PDおよび右腎摘出術を同時に施行した.膵癌はStage IV b,腎はStage IIであった.症例2は72歳,男性.主訴は黄疸.膵頭部に3cm大,胃体部に0-II cの早期胃癌を認めた.広範胃切除により胃癌の郭清範囲をPDに含め,一括切除した.膵癌はStage IV a,胃癌はStage I Aであった.症例3は77歳,男性.主訴は血糖の異常高値.膵頭部の1.5cm大の腫瘍は門脈に浸潤していた.右腎に5.5cm大の腫瘍を認めた.門脈合併切除を伴うPDと右腎摘出術を行い,門脈再建には右腎静脈を使用した.膵癌はstage IV a,腎癌はStage IIIであった.全例において,過度の侵襲なく,同時性重複膵癌に対し一期的切除が可能であった.
  • 佐伯 隆人, 松野 剛, 宮本 章仁, 石井 龍宏, 井口 利仁, 藤澤 憲司
    2012 年 73 巻 2 号 p. 454-459
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    癌肉腫は上皮性悪性腫瘍の癌と非上皮性悪性腫瘍の肉腫が混在する腫瘍で,胆嚢原発の報告は45例しかなくまれな腫瘍である.症例は71歳の女性で,胆嚢内に3cm大の腫瘍を認め,胆嚢癌の診断で肝床切除術およびD2リンパ節郭清を施行した.病理組織検査では腺癌と紡錘形を呈する肉腫様の腫瘍細胞が混在し,両者の間に移行像を認めた.移行部付近の紡錘形腫瘍細胞の一部に上皮性マーカーが陽性であり「いわゆる癌肉腫」と診断した.文献的には乳頭状,結節状の形態を呈することが多く,自験例も有茎性の結節型腫瘍であり,浸潤性を示すことが多い通常の胆嚢癌との違いと考えられた.通常の腺癌より予後不良とされていることが多く,化学療法等は効果が期待できないとの意見が多い.しかし,自験例はS-1療法を選択し術後24カ月間継続投与し再発なく経過している.
  • 倉田 研人, 小野田 尚佳, 石川 哲郎, 川尻 成美, 高島 勉, 塩井 淳, 若狭 研一, 平川 弘聖
    2012 年 73 巻 2 号 p. 460-465
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    ACTH非依存性大結節性副腎皮質過形成(ACTH-independent macronodular adrenocortical hyperplasia : AIMAH)に対し片側副腎摘除にて良好な経過を得た2例を報告する.症例1は51歳男性,治療抵抗性の高血圧精査にてAIMAHと診断.プレクリニカルクッシング症候群(PC)を伴っており,腹腔鏡下右副腎摘除術を施行した.症例2は61歳女性,40歳より高血圧に対し投薬されていたが偶然両側副腎腫大を認め,PCを伴うAIMAHと診断,腹腔鏡下右側副腎摘除術を施行した.術後2症例とも血圧は安定,ACTH,Cortisolも正常化した.従来AIMAHの治療は両側副腎全摘除であったが,生涯ステロイド補充を要した.自験例を含め片側摘除報告例では,両側全摘の欠点を補う安全性と妥当性が示されており,片側摘除はAIMAHに対する標準術式となり得るものと考えられた.
  • 治田 賢, 徳毛 誠樹, 泉 貞言
    2012 年 73 巻 2 号 p. 466-470
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は,70歳,女性.平成7年1月に右腎摘出術を施行され,腎細胞癌と診断された.平成22年4月に腹部CT上肝S8に約4cm大の腫瘤を指摘され,当院内科にて肝生検施行された.その結果,肝カルチノイドと診断され,同年7月当科にて肝S8部分切除施行した.摘出腫瘍は,約4×3cmの皮膜を有する境界明瞭な結節性病変で,肝被膜への浸潤もなく,ごく一部でわずかな血管侵襲を認めるのみであった.転移性肝カルチノイドを疑い,原発巣検索のため,平成7年の摘出腎の再検討を行った結果,腎カルチノイドであったことが判明した.腎カルチノイドは非常に稀で1),その異時性肝転移の切除報告は,われわれの調べ得る限りでは無かった.また,カルチノイド腫瘍は,経過観察期間を過ぎて再発・転移をきたす可能性もあると考えられた.
  • 中島 洋介, 山崎 慎太郎, 中山 壽之, 檜垣 時夫, 東風 貢, 高山 忠利
    2012 年 73 巻 2 号 p. 471-474
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.脳梗塞後の右片麻痺があり老健施設に入所中であった.プラスチックスプーンの破片を誤飲し,緊急内視鏡を施行され破片は内視鏡の観察範囲内に認められなかったが,後日便中に確認された.1週間後腹部膨満と食欲不振を主訴に受診した.腹部X線で左右の横隔膜下に大量の腹腔内遊離ガスと腹部広範に腸管の気腫像を認めた.CT検査では腹腔内遊離ガスと小腸壁内に腸管気腫像を認めた.炎症反応および理学所見は弱かったが腸管穿孔を否定できず開腹術を施行した.手術所見はTreitz靱帯の30cm肛門側から,回腸末端手前20cmまでの広範囲の小腸に握雪感を伴う壁内気腫を認めたが,穿孔部を認めなかった.腸管気腫症と診断し,腹腔内を洗浄後閉腹した.術後経過は良好で第19病日に退院した.
    気腫像の変化をCTで経時的に観察した症例報告は検索した限りでみつからず興味ある症例として報告する.
  • 河内 雅年, 福田 三郎, 秋本 修志, 中島 一記, 先本 秀人, 江藤 高陽
    2012 年 73 巻 2 号 p. 475-480
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例1は77歳,男性.平成18年に胸部X線写真で腹腔内遊離ガスを指摘され入院.腹部症状や炎症所見なく,保存的治療で画像上改善したため退院とし,経過良好であった.症例2は85歳,女性.平成21年に胸部X線写真で腹腔内遊離ガスを指摘され入院.この患者は平成6年にも同様に腹腔内遊離ガス認め,試験開腹するも穿孔部位は確認できず,特発性気腹症と診断されていた.腹部症状や炎症所見を認めないため保存的治療のみで退院とし,経過良好であった.症例3は85歳,男性.平成23年に胸部X線写真で腹腔内遊離ガスを指摘された.この患者は平成19年にも腹腔内遊離ガスを指摘され入院.腹部症状や炎症反応認めず,特発性気腹症と診断され保存的治療で改善していた.前回同様に画像所見以外の症状を認めないため外来経過観察とし,経過良好であった.腹腔内遊離ガスを認めるにも関わらず腹部症状に乏しい場合は,本症の可能性を念頭に置き,十分な観察のもと保存的治療が可能と考えられる.
  • 飯島 信, 大山 健一, 武田 雄一郎, 小松 正代, 若林 剛
    2012 年 73 巻 2 号 p. 481-485
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.腹満感,腹痛を主訴に近医を受診.腹部超音波,腹部CTにて小腸間膜に数珠状に連なった腫瘤を認め,悪性リンパ腫の疑いにて当科を紹介された.腹腔鏡下に生検を施行したが,確定診断には至らなかった.そのため診断・治療目的に手術を施行.小腸間膜に15cmにわたり,大小嚢胞が連なる腫瘤を認め,腸間膜腫瘤を小腸とともに切除した.病理組織学的検査では,多嚢胞性病変は大小血管の増生で構成されており,大きく拡張した血管内には血腫の形成があり,海綿状血管腫と診断された.
    小腸間膜血管腫は,術前に確定診断が得られないことも多い.自験例も含め本邦報告例は11例とまれな腫瘍であるため若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 岡田 尚也, 中村 文隆, 中村 透, 鈴木 温, 安保 義恭, 樫村 暢一, 大森 優子, 篠原 敏也
    2012 年 73 巻 2 号 p. 486-491
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.2008年11月巨大腹部腫瘍の診断にて精査加療目的に当科入院となった.CT・MRI検査にて,腹腔内全体に存在し腹腔内臓器を著明に圧排している巨大脂肪肉腫を第一に考えた.腫瘍が巨大であり,術前から切除不能の危惧があった.また予後は不良と考えられた.手術適応の判断に苦慮したが,完全切除とQOLの改善を目指して腫瘍摘出術を施行した.完全切除は不可能であったが,手術は安全に行うことができ,QOLは改善した.標本は重量15.1kg,病理組織は粘液型脂肪肉腫の中に多型細胞が混在していた.本症例における手術適応の妥当性に関して,本邦における巨大脂肪肉腫報告例と比較検討し,文献的考察を加えて報告する.
  • 畠 達夫, 鶴田 好彦, 高森 繁
    2012 年 73 巻 2 号 p. 492-496
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.2004年10月に両側鼠径ヘルニアに対して他院にて両側ヘルニア修復術を施行された.2011年4月に突然右鼠径部から排膿を認め,保存的治療で軽快しないため同年6月に当院を受診した.前回の手術創部から2横指離れた右鼠径部に瘻孔形成と排膿を認め,腹部CTと瘻孔造影検査の結果遅発性メッシュ感染と診断した.遅発性感染であり,かつ瘻孔からの排膿が持続するため手術の方針とし,メッシュ摘出と瘻孔切除を施行した.術後経過良好で術後7日目に軽快退院した.その後明らかなヘルニアの再発は認めていない.遅発性感染例では保存的治療で治癒を期待するのは困難で,手術によるメッシュ摘出が有効な治療であると考えられた.
  • 久保 孝文, 佃 和憲
    2012 年 73 巻 2 号 p. 497-501
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.検診目的に下部消化管内視鏡検査を施行.内視鏡の先端が下行結腸半ばまで到達した際,急な左鼠径部痛と左鼠径部隆起を訴えた.CT検査において内視鏡が挿入されたS状結腸をヘルニア内容とした左鼠径ヘルニアの嵌頓を認めた.内視鏡の抜去も体外からの用手還納も不可能であったため即日緊急手術を施行した.前方到達法にてヘルニア門を開放し,嵌頓を解除した.ヘルニア分類はType II-2であった.嵌頓S状結腸に壊死所見は認めなかったため非切除で腹腔内に戻した.ダイレクトクーゲル法にてヘルニア修復術を施行した.下部消化管内視鏡検査中に鼠径ヘルニア嵌頓が起こることは非常にまれであるが,起こり得る合併症の1つであるという認識をもつことがのちの迅速な対応に必要である.
  • 河合 朋昭, 砂原 正男, 長佐古 良英, 小林 清二, 高橋 学, 小笠原 和宏
    2012 年 73 巻 2 号 p. 502-508
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/08/25
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.骨髄異形成症候群に対して経過観察中であった.腹痛を契機に行われた消化管検査で胃前庭部小彎前壁寄りに10mm大の0-IIc・ul(+)病変と上行結腸に10mm大の0-Is病変が認められた.骨髄異形成症候群に合併した胃癌と上行結腸癌の同時性重複癌と診断され,幽門側胃切除術(D1+α),および結腸右半切除術(D2)を施行した.病理組織学的検査で胃の病変は高分化腺癌,深達度M,ly0,v0,N0,Stage I Aであった.上行結腸の病変は中分化腺癌,深達度SM2,ly1,v1,N0,Stage Iであった.術後合併症はなく,第15病日に退院した.本邦における骨髄異形成症候群に合併した消化器癌の報告は少なく,特に胃癌と大腸癌の同時性重複癌合併例は自験例を除いて1例のみと極めて稀である.骨髄異形成症候群の重複発癌リスク,本病態の手術侵襲への影響について若干の考察を加え,報告した.
支部・集談会記事
編集後記
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