日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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ISSN-L : 1345-2843
73 巻 , 9 号
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原著
  • 西和田 敏, 高 済峯, 石岡 興平, 向川 智英, 石川 博文, 中谷 敏也, 菊池 英亮, 渡辺 明彦
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2163-2170
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    目的:大腸癌肝転移に対するラジオ波焼灼療法(radio-frequency ablation;RFA)と肝切除について比較検討した.対象と方法:2002年4月より2010年6月までに,大腸癌肝転移に対しRFAを28例,肝切除を42例に施行した.局所再発率とその危険因子について検討した.結果:局所再発は肝切群8例,RFA群15例にみられた.3年生存率は肝切群63.0%,RFA群42.2%と有意差を認めたが,5年生存率では有意差はみられなかった.腫瘍径が20mmを超える症例ではRFA群で有意に局所再発率が高かった(p<0.001).多変量解析では,局所再発危険因子は,RFA (p<0.001),原発巣の静脈侵襲;v2-3 (p=0.004),肝転移個数;2個以上(p=0.016)であった.結論:大腸癌肝転移に対するRFAは肝切除と比べ局所制御能が劣っており,適応を慎重に考慮する必要がある.
臨床経験
  • 山崎 信義, 平田 泰, 南村 圭亮, 梅村 彰尚, 真船 健一
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2171-2175
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    原発性小腸癌は頻度の少なさや検査の困難さもあり,診断時には進行癌であることが多い.今回当院で過去20年間に経験した原発性小腸癌8例を対象とし,検討を行った.7例が有症状であり,癌占拠部位は空腸6例,回腸2例であった.術前に小腸腫瘍の診断を得た症例は5例,病理組織学的診断を得ていた症例は3例であった.全例進行癌であり,治癒切除例は6例に施行.病理組織学的に壁深達度はss3例,se3例,si2例であった.リンパ節転移は5例に認めた.リンパ節転移症例および非治癒切除例の予後は不良であり,化学療法の有効例は経験しなかった.
症例
  • 和久 利彦
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2176-2180
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.以前よりSjögren症候群の乾燥症状があった.検診で胸部異常陰影を指摘され当院受診し,胸部CT検査で甲状腺右葉に石灰化を伴う腫瘤を認めた.腫瘤に対し超音波ガイド下に穿刺細胞診を行い乳頭癌と診断した.抗Tg抗体が高値より慢性甲状腺炎が疑われ,リウマトイド因子・γ-グロブリン・IgG・抗核抗体・抗SS-A抗体・抗SS-B抗体も高値を示した.手術は,胸骨甲状筋・輪状甲状筋の部分切除,気管漿膜浸潤部のshavingおよび甲状腺全摘術+D2bを行った.最終診断は,慢性甲状腺炎併存右甲状腺乳頭癌,T4a,N1b,M0,Ex2(胸骨甲状筋,輪状甲状筋,気管),StageIVAであった.術後1年頃には乾燥症状は改善し,術後3年目までには,抗核抗体価は低下,抗SS-B抗体・抗Tg抗体価の正常化が得られたことより,両者の発症機序に共通の免疫機構の異常─自己抗体の関与─が推測された.
  • 林 浩三, 川原 洋一郎, 高梨 節二, 樫山 基矢, 原 隆志, 細川 誉至雄
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2181-2185
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    孤立性肺転移をきたした甲状腺乳頭癌の2症例を経験した.症例1:73歳,女性.直腸癌術後定期検査の肺CTで左S10cに辺縁明瞭な円形の孤立腫瘤陰影を認めた.胸腔鏡下肺部分切除を行い,病理組織検査で甲状腺乳頭癌肺転移の診断.その後,甲状腺全摘術および放射性ヨード治療を行った.術後10年,無再発生存中である.症例2:52歳,女性.50歳時に甲状腺乳頭癌に対し甲状腺全摘術を受けているが,同時に発見された孤立性肺結節を2年後に胸腔鏡下で切除,病理組織学的に甲状腺乳頭癌であった.追加治療として放射性ヨード治療を行い,8年間無再発生存中.甲状腺乳頭癌の転移形式は一般的には多発結節または粟粒状で,孤立性肺転移はきわめてまれであるが,自験例のごとく非典型的な症例の存在も考慮し,粗大結節型肺転移に対しては,非切除の場合の放射性ヨード治療が期待できないことから,診断と治療を兼ねた切除が望ましいと考える.
  • 柴田 健一郎, 矢野 洋, 松本 恵, 及川 将弘, 永安 武, 安倍 邦子
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2186-2190
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.左乳房腫瘤を主訴に当院を受診.触診上,左乳房C領域に20mm大の腫瘤,同側腋窩に20mm大のリンパ節を触知した.マンモグラフィ,乳房超音波で腋窩リンパ節転移を伴う乳癌が疑われた.針生検では浸潤性乳管癌の所見とともに好塩基性細胞外基質や多核巨細胞が認められ特殊型を疑う所見であった.以上より乳癌(cT2N1M0,stage IIB)と診断し,乳房切除術,腋窩リンパ節郭清を施行した.病理組織学的に原発巣,リンパ節転移巣はともに低分化な浸潤性乳管癌成分に加え,多形性,紡錘形形態,軟骨化生を示す腫瘍成分で構成されていた.腫瘍細胞はvimentinに陽性を示し化生癌と診断した.またエストロゲン/プロゲステロンレセプター,HER2は陰性でありtriple negative乳癌であった.化生癌は稀で予後不良な疾患であるが,最近は生物学的な観点からも注目されており文献的考察を加え報告する.
  • 毛利 かの子, 横井 圭悟, 鈴木 貴久, 塚田 健次, 織畑 道宏, 尾花 正裕, 山崎 滋孝
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2191-2195
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,女性.前医で1995年に左乳癌に対し乳房切除術,腋窩リンパ節郭清を施行.その後2度の胸壁局所再発に対し腫瘤切除,放射線治療,化学療法が施行された.それ以後再発は認めず2008年前医終診となった.2010年からイレウスを繰り返し当院内科で保存的に治療されていた.2011年3月呼吸困難を主訴に受診,心タンポナーデの診断で心嚢穿刺を施行.細胞診で乳癌による癌性心膜炎と診断された.4月,再度のイレウス症状出現.小腸に狭窄部位を認めたため小腸部分切除術を施行し,乳癌小腸転移と診断された.5月に再度心タンポナーデとなったため胸腔鏡下心膜開窓術を施行した.術後よりレトロゾール内服開始し,現在まで症状再発は認めていない.
    乳癌は様々な部位に転移をおこすが,外科的治療が選択されることは多くない.今回小腸転移心膜転移にそれぞれ外科的治療を施行し,良好なQOLを得た症例を経験したのでここに報告する.
  • 梅岡 達生, 高田 暢夫, 山崎 泰源, 木村 真士, 柚木 茂, 渡邊 良平
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2196-2199
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    男性乳癌は全乳癌の1%程度と比較的まれな疾患であり,そのうち非浸潤性乳管癌の占める割合は4.8~7.0%である.今回乳頭異常分泌を主訴に来院し,約2年間の経過を観察した後に非浸潤性嚢胞内癌と診断した男性乳癌の1例を経験したので報告する.症例は65歳男性.左側乳頭異常分泌があり,経過観察をしていた.初診時より1年9カ月後に左乳頭の頭側に硬結が生じた.乳房超音波検査で左EAB領域に7.1×10.0×4.1mmの内部に微細点状高エコースポットのある充実性病変を伴う嚢胞性病変を認めた.穿刺吸引細胞診を施行したが陰性であった.2カ月後に局所麻酔下に腫瘤摘出術,ついで単純乳房切除術を施行した.病理組織学的検査で非浸潤性嚢胞内癌と診断した.エストロゲンレセプター陽性,プロゲステロンレセプター陽性であった.現在まで無再発生存中である.まれな症例であるので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 小野 桜子, 木村 桂子, 米山 文彦, 木村 充志, 河野 弘, 佐竹 立成
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2200-2204
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.右乳房腫瘤を自覚し当院受診.右乳房C領域に3cm大の可動性良好な腫瘤を触知した.マンモグラフィでは境界明瞭平滑な楕円形の等濃度腫瘤影を認め,超音波検査でも境界明瞭平滑,内部エコー均一な楕円形の低エコー腫瘤を認めた.CT検査では限局した境界明瞭な造影される腫瘤を認めた.針生検ではごく一部に線維肉腫の像が認められ,CD34陽性の紡錐形細胞の増殖が主体であり,隆起性皮膚線維肉腫と診断した.腫瘍直上の皮膚および直下の胸筋を含めた右乳房部分切除術を施行した.摘出標本の病理組織学的検索でも針生検組織と同様な組織像であったが,CD34陽性の範囲は狭くα-SMA陽性であったことから,粘液線維肉腫と診断した.乳腺原発粘液線維肉腫は極めて稀な疾患であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 河内 順, 荻野 秀光, 池谷 佑樹, 篠崎 伸明, 前川 貢一, 渡部 和巨
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2205-2208
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    77歳,男性.転落外傷で左第1~第5腰椎横突起骨折および後腹膜出血の診断で他院に入院し,血圧不安定なため翌日当院搬送となった.腹部造影CTでは左後腹膜腔の造影剤の漏出を認め,腰椎横突起骨折に伴う腰動脈損傷と診断した.緊急の血管造影を行い経動脈的カテーテル塞栓術を試みたがマイクロカテーテルが腰動脈に入らず,選択的腰動脈塞栓が困難であったため,大動脈へのステントグラフト内挿術に変更した.造影剤の漏出はわずかに残存したものの大幅に減少し手術終了後血圧は安定した.翌々日の造影CTでは造影剤の漏出の消失が確認された.腰動脈損傷の治療はカテーテル塞栓術が第一選択であるが,ステントグラフト内挿術も有用であることが示唆された.
  • 岩田 力, 磯谷 正敏, 原田 徹, 金岡 祐次, 亀井 桂太郎, 前田 敦行
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2209-2214
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,女性.下腹部違和感を主訴に他院受診し,右後腹膜に最大径8cmの造影効果を伴う腫瘤を認めたため,平成21年4月に開腹摘出術を施行したが一部腫瘍が下大静脈壁に遺残した.病理結果から下大静脈原発性平滑筋肉腫と診断され,以後経過観察された.術後7カ月目の造影CT検査で腫瘍の増大を認め,12月に当院にて再手術を行った.下大静脈より突出する境界明瞭で表面平滑な腫瘤を認め,下大静脈を約7cm合併切除し,ePTFEグラフト(径20mm)にて再建した.術後5カ月目に肝S8に転移を認め肝S8切除,さらにその術後5カ月目に肝S2/S3転移を認めたために肝外側区域切除術を施行した.初回手術後33カ月の時点では腫瘍の新たな再発所見は認めていない.下大静脈平滑筋肉腫の再発例において積極的な外科的治療により生存期間の延長を得ている1例を経験したので報告する.
  • 松永 壮人, 小倉 康裕, 中村 豪, 錦 建宏, 別府 樹一郎, 上田 祐滋
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2215-2218
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    肺動脈瘤破裂に対して緊急血管内治療(IVR)を施行した症例を経験した.症例は81歳,男性.C型慢性肝炎合併肝細胞癌に対して肝部分切除術,ラジオ波凝固療法(RFA),肝動脈化学塞栓療法(TACE),肝動注化学療法(TAI)を施行されていた.今回癒着腸障害で入院加療中に突然の喀血を認め,呼吸不全となり緊急気管内挿管を施行した.胸部CTにて肺動脈中葉枝の仮性動脈瘤破裂と診断し,緊急IVRによるコイル塞栓術を施行した.IVR後は後出血もなく,呼吸状態は速やかに改善し,翌日にはミニトラックを挿入し抜管された.末梢性肺動脈瘤は非常に稀な疾患であり,破裂の危険性が非常に高いとされている.本症例のようにIVRにて止血しえた症例は,本邦報告では本症例も含めて4例と極めて稀であり,若干の文献的考察を含めて報告した.
  • 本間 直健, 長 靖, 大高 和人, 川瀬 寛, 仙丸 直人, 藤田 美悧
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2219-2224
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    フィブリン糊によってアナフィラキシーを発症したと考えられる稀な1例を経験したので報告する.
    症例は74歳の女性で,右上葉原発性肺癌,臨床病期IA期(cT1aN0M0)が疑われた.胸腔鏡下肺部分切除を行い,術中迅速病理診断にて原発性肺癌と診断されたため,右上葉切除とND2a-2郭清を施行した.郭清後にポリグリコール酸シートとフィブリン糊を使用して気管支断端および葉間形成部を被覆したところ,フィブリン糊の噴霧終了後からショックとなった.全身に発赤を伴っていたことから,フィブリン糊によるアナフィラキシーショックと判断した.直ちにステロイドおよびエピネフリンを投与し,可及的にポリグリコール酸シートとフィブリン糊を除去した後,十分に洗浄を行って手術終了とした.術後は約1日にわたって昇圧薬の持続投与を要した.
    薬剤誘発性リンパ球刺激試験ではフィブリノゲン溶解液に対して著明に高値を示していた.
  • 桧垣 直純, 中根 茂, 岡 義雄, 左近 賢人, 綾田 昌弘
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2225-2230
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は29歳,男性.検診で胸部異常陰影を指摘され当院を受診した.胸部X線で右下肺野の横隔膜直上に3cm大の境界明瞭な円形の腫瘤影を認め,胸部CTでは,右肺下葉S8に胸壁に接する内部の不均一な充実性腫瘤を認めた.孤立性線維性腫瘍などを疑い,2007年4月手術となった.腫瘤は右下葉末梢より突出する赤褐色調の腫瘤で,容易に切除可能であった.術中迅速病理検査では小円形細胞からなる腫瘍で確定診断には至らなかった.永久標本で円形の核とPAS陽性の胞体を有する均一な腫瘍細胞からなり,免疫染色で,CD99・NSEに陽性で,遺伝子解析からEWS-FLI1融合遺伝子が確認された.術後の全身検索を含め,肺原発のES/PNETと診断された.2008年10月他肺葉への孤立性転移で再手術を施行した.初回および再手術後に化学療法を行い,2012年4月現在さらなる再発を認めていない.
  • 橋本 一輝, 西井 鉄平, 荒井 宏雅, 伊藤 絢子, 乾 健二, 益田 宗孝
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2231-2234
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.2002年秋より左中指先端の腫瘍を自覚し,翌年春に近医形成外科を受診した.精査の結果,エクリン汗腺癌と診断され,左中指切断および左腋窩リンパ節郭清術が行われた.経過観察中の2004年,左肺尖に結節影を指摘され,診断と治療を目的に胸腔鏡下左肺部分切除術が施行された.その結果,エクリン汗腺癌の肺転移と診断された.さらに2009年には,同じく転移性肺腫瘍の診断で胸腔鏡下右肺下葉切除術が行われた.稀な転移性肺腫瘍であるため,若干の文献的考察を交えて報告する.
  • 伊藤 淳, 江花 弘基, 蕨 雅大
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2235-2240
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.2003年右中葉S4小細胞肺癌cT2N1M0,IIBに対し早期同時化学放射線療法[cisplatin(CDDP)+etoposide(VP-16)またはirinotecan(CPT-11)×4コース,加速過分割照射(40Gy)]を施行,完全寛解を得た.2010年5月胸部CT検査にて右上葉S3に30mmの結節影を認め,右上葉非小細胞肺癌cT1bN0M0,IAの診断にて手術適応とされた.小細胞肺癌放射線治療後の影響か中葉縦隔側の癒着剥離にやや難渋したが,右上葉切除+リンパ節郭清(ND2a-2)を施行しえた.2011年12月現在,再発の徴候は認めていない.限局型小細胞肺癌完全寛解後発症非小細胞肺癌切除報告例は本邦ではまれで,第二癌であるとの確定診断も容易でないが,放射線療法後同側であっても積極的に治療すると供に小細胞肺癌の再発も考慮した経過観察計画が必要であると考えられた.
  • 安達 大史, 有倉 潤, 近藤 啓史
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2241-2244
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    まれな肺原発の腫瘍である淡明細胞腫の1例を経験した.症例は69歳の男性.血尿を認め当院泌尿器科に紹介となった.経尿道的膀胱腫瘍切除(TUR-Bt)を行い膀胱癌と診断された.全身精査のために行った胸部CTで右肺下葉に充実性の結節を認め,気管支鏡下に擦過細胞診を行ったが確定診断はつかずcT2N0M1の診断で化学療法が施行された.化学療法終了後のTUR-Btで膀胱癌の残存を認めなかった.胸部CTの再検で肺結節の腫瘍径は不変であり,診断治療目的で当科紹介となった.胸腔鏡下肺部分切除術を施行し病理組織診断にて肺原発の淡明細胞腫と診断された.
  • 杉山 聡, 小出 直彦, 奥村 征大, 竹内 大輔, 鈴木 彰, 宮川 眞一
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2245-2250
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.乳癌の術後経過観察中に胸部CTにて胸部上部食道に20mm大の腫瘤を指摘され,内視鏡検査にて胸部上部食道の粘膜下腫瘍と診断された.EUSガイド下のFNAにてS100陽性の腫瘍細胞を認めた.FDG-PETでは,腫瘍に一致してSUV max 5.28の異常集積を認めた.その後のCTにて腫瘍径25mmと増大傾向を認めたため,食道神経鞘腫の診断のもとに胸腔鏡下核出術を施行した.切除標本では腫瘍径は30×22×24mm,割面は黄白色調を呈していた.H.E. 染色では楕円形の核を有する紡錘形細胞が柵状かつ縦横に錯綜しながら増殖し,免疫染色にてvimentin(+),S100(+),α-SMA(-),KIT(-),CD34(-)の結果を得て,神経鞘腫と診断した.本邦における胸部食道の神経鞘腫の報告34例の臨床病理学的因子を,平滑筋腫のそれと比較した考察とともに報告する.
  • 熊谷 洋一, 相田 順子, 落合 高徳, 山崎 繁, 河野 辰幸, 田久保 海誉
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2251-2257
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は,61歳,女性.特に症状なく検診にて食道の異常を指摘され来院した.上部消化管透視,内視鏡検査にてLt領域に長径6cmの0-IIc病変を認めた.Lt,0-IIc,T1bN0M0 cStageIの診断にて右開胸開腹胸部食道亜全摘3領域郭清胸骨後経路胃管再建術を行った.切除標本肉眼所見では,Lt領域の長径60mm,発赤調の表層拡大型0-IIc病変であった.病理組織学的所見では,粘膜内から粘膜下層まで浸潤するSM2の食道癌であった.扁平上皮癌が上皮内で全層性に増殖し,浸潤部を中心に印環細胞様で胞体にPAS(periodic acid-Schiff)-alcian blue染色陽性の粘液を有する腺癌細胞が多数見られ粘表皮癌pT1b(SM2),pN2,pStageIIと診断した.本症例は,上皮内扁平上皮癌の成分を有しており,その発生母地は扁平上皮にあると推測された.
  • 岩崎 謙一, 三浦 昭順, 加藤 剛, 出江 洋介, 根本 哲生, 門馬 久美子
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2258-2264
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.嚥下時のつかえ感を主訴に近医受診,食道造影検査で食道の腫瘍を指摘され当科紹介となった.上部消化管内視鏡検査で,切歯列37cmの下部食道に易出血性の全周性の3型腫瘍を認め,CT検査では110,1,2番のリンパ節転移を認めたが,遠隔転移は認めなかった.以上より胸部食道癌Lt 3型T3N2M0StageIIIの診断で右開胸開腹食道亜全摘,胸骨後胃管再建,3領域郭清術を施行した.切除標本では5.3×5.2cm大の3型病変と4.2×2.6cm大の0-Ipl病変が横方向に隣接し,病理組織学検査で扁平上皮癌と神経内分泌細胞癌の衝突癌と診断した.現在,術後補助化学療法を施行中である.今回,われわれはまれな食道衝突癌の1例を経験したので報告する.
  • 柏木 伸一郎, 石川 哲郎, 六車 一哉, 田中 浩明, 小野田 尚佳, 若狭 研一, 平川 弘聖
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2265-2271
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    画像診断の進歩に伴い,臨床症状を伴わない副腎偶発腫瘍が発見される機会が増加している.これらのうちには,原発が副腎外であることが術中に初めて明らかになる場合も散見される.症例は67歳男性で,S状結腸癌術後の経過観察中,CTにて左副腎部に約3cm大の腫瘤が認められ,経過観察中に増大を示したために当院紹介となった.MRIにて左腎頭側で腹部大動脈と脾臓との間の胃背面に約5cm大の球形の腫瘤性病変を認めた.左副腎非機能性偶発腫瘍と術前診断し,増大,転移,非機能性褐色細胞腫,稀な腫瘍などを考慮し腹腔鏡下左副腎摘出術を行った.術中所見にて左副腎腫瘍ではなく,胃体上部大彎側後壁から盲嚢内へ突出する約5cm大の管外発育型の有茎性腫瘤が確認された.最終病理診断にてGISTとの診断に至った.副腎偶発腫瘍の症例では,臨床症状に乏しい症例においても胃GISTを念頭にいれ診察をすすめるべきと考えられた.
  • 藤崎 宗春, 高橋 直人, 矢島 浩, 柳澤 暁, 矢永 勝彦
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2272-2277
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.2010年10月にタール便,全身倦怠感を主訴に近医を受診した.Hb 4.3g/dlと著明な貧血を認め当院救急搬送され入院となった.上部消化管内視鏡検査で体下部小弯に露出血管を伴う活動性潰瘍を認め止血処置を施行した.また噴門部を中心に約4cmのType3病変を認め,組織検査で高分化型管状腺癌の診断を得た.術前施行した腹部造影CT検査と腹部超音波検査で脾静脈に塞栓像を認め胃癌による腫瘍塞栓と診断した.同年11月に胃全摘(D2郭清),膵体尾部切除,脾臓摘出術を施行した.術後病理組織的検査ではly3,v3と高度のリンパ管浸襲と脈管浸襲を認め原病巣と脾静脈内腫瘍塞栓は同じ組織型であった.術後12日目に退院しTS-1による術後補助化学療法を行い現在外来にて無再発でフォロー中である.胃癌の門脈系腫瘍塞栓の中で術前に脾静脈腫瘍塞栓を伴う症例はまれであり報告した.
  • 小野 朋二郎, 平岡 優, 石畝 亨, 芳賀 紀裕, 石田 秀行
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2278-2283
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,男性.詳細不明であるが,胃の出血性病変に対して胃切除術を施行された既往があった.今回黒色便,心窩部不快感を主訴に当院内科を受診し,上部消化管内視鏡検査で胃内に多量の凝血塊を認め,同日入院した.第2病日の内視鏡再検で頂部に露出血管を伴う粘膜下隆起を認めこれをクリッピングで止血した.CTおよび血管造影で胃AVMの所見が認められ,止血が得られたことから保存的に加療されていたが,第11病日に再度多量の出血をきたし,動脈塞栓術を施行した.出血を繰り返していたことから,同日当科転科の上緊急手術を施行された.残胃を全摘しその後は現在まで良好に経過している.胃AVMの治療戦略を検討する上で貴重な症例と考え文献的考察を加えて報告する.
  • 山田 兼史, 横溝 博, 内藤 嘉紀, 中田 由紀子, 林 亨治, 福田 精二, 平田 稔彦
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2284-2289
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,女性.人間ドックで上部消化管内視鏡を施行したところ,傍乳頭憩室を認め,その口側後壁に10mm大の粘膜下腫瘍様隆起を指摘された.内視鏡検査では,中心に陥凹を伴う褐色調腫瘍で神経内分泌腫瘍が疑われたが,初回の生検で腫瘍は指摘されなかった.超音波内視鏡検査では第2,3層に主座を置く,低~等エコー性病変で第4層は保たれていた.2回目の生検の結果,十二指腸神経内分泌腫瘍の診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.腫瘍は10×8mmで病理組織学的に副乳頭部神経内分泌腫瘍と診断され,リンパ節転移はなかった.Ki-67指数と核分裂像数よりWHO分類のG1に分類された.副乳頭部神経内分泌腫瘍は非常にまれな疾患で,サイズが小さくても他の部位に比べてリンパ節転移の頻度が高く,検診時の上部消化管内視鏡検査が発見には重要である.手術としては,リンパ節郭清を伴う膵頭十二指腸切除術が必要と思われた.
  • 石橋 至, 河原 正樹, 小林 洋明, 瀧野 陽子, 児玉 俊, 高田 厚
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2290-2294
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.腹痛を主訴に来院.CTにて上腸間膜静脈血栓症が疑われ,腹膜刺激症状呈していたため緊急手術を行った.近位空腸の約30cmにわたる壊死を認め空腸部分切除術を施行し,上腸間膜静脈より術中造影を行うと上腸間膜静脈から門脈に広範な血栓を認め,Fogarty カテーテルで血栓を可及的に除去,カテーテルを留置し術後に血栓溶解療法を行った.術後24日目の造影検査では,血栓は残存するが,肝臓への血流は改善を認め,術後46日で退院となった.現在は門脈圧亢進症を呈しているが,ワーファリンを服用しながら通院中である.血清分析より,プロテインC抗原21%,活性値45%,プロテインS抗原53%,活性値58%と,ともに低値を示し,先天性プロテインCおよびS 欠損症と考えられた.上腸間膜静脈血栓症に対し緊急手術と術後の抗凝固療法にて救命しえた1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 平木 将之, 松山 仁, 橋本 和彦, 福島 幸男, 佐々木 洋
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2295-2299
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,男性.小学生時から,腹部の強い疼痛を自覚し近医を受診することが数年に一回程度あった.その度に投薬治療で保存的に軽快していた.2008年6月に臍部に鈍痛を自覚.2日後同部位に激痛が出現し,当院救急外来を受診した.臍部,右側腹部,右下腹部に圧痛を認め,WBC 11,400/μl,CRP 0.12mg/dlと軽度の炎症所見を認めた.腹部CTで右臍下部に嚢状に拡張した腸管と渦巻き状のwhirl signを認め,小腸軸捻と診断し同日緊急開腹術を施行した.回腸末端より75cm口側回腸の腸間膜付着部対側腸壁より捻れた茎部によって連続する11×10cm大の腫瘤を認め,Meckel憩室茎捻転と診断した.小腸部分切除は行わず憩室摘出術を行った.茎捻転はMeckel憩室の比較的まれな合併症である.
  • 村上 智洋, 松本 圭五, 深澤 貴子, 落合 秀人, 鈴木 昌八, 北村 宏
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2300-2305
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は34歳,女性.心窩部痛,嘔吐にて来院した.腹部CTで上腹部にmultiple concentric ring signを呈する,腸重積による腫瘤像と口側の腸管拡張を認めた.嵌入腸管は造影不良であり,先進部と考えられる器質的異常は不明であった.腸重積症による絞扼性イレウスと診断し,緊急手術を行った.Treitz靱帯から90cmの部位から空腸が35cm重積している所見を確認した.摘出した重積腸管長は105cmであり,嵌入腸管に虚血性変化を認めた.口側腸管切断端付近には径34mmの0-Isp型腫瘍が存在した.病理組織学的には腫瘍は,深達度smの高分化型腺癌で,静脈侵襲を認めたが,リンパ節転移はなかった.術後18カ月経過した現在,無再発生存中である.成人腸重積の診断,治療では小腸癌の存在を念頭に置く必要がある.
  • 佐藤 純, 伊東 藤男, 大谷 聡, 佐藤 佳宏, 三浦 純一
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2306-2310
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,男性.上腹部痛出現し翌日右下腹部痛となり当院救急搬送され入院となった.入院時血液検査にてWBC 15,200/mm3,CRP 7.56mg/dlと炎症所見を認めた.腹部造影CT検査上回盲部の腸管壁に肥厚と腫瘤を,虫垂周囲には膿瘍腔を認めた.腫瘤を形成した急性虫垂炎と診断しlaparoscopic interval appendectomy(以下lapIA)を施行した.虫垂基部の腸間膜側に約1cmの腫瘤が存在し,病理組織学的検査で筋層を有した真性憩室の診断を得た.術翌日には食事を開始し,経過良好につき術後3日で退院となった.虫垂真性憩室は稀な疾患で本邦報告は自験例を含め12例となる.虫垂憩室は一度炎症を起こすと穿孔率が高いため初診時には回盲部膿瘍を形成していることが多く回盲部切除など侵襲の大きな術式となることが多い.lapIAはこれらを回避するための有用な術式であると考えられた.
  • 村瀬 秀明, 眞田 克也, 小郷 泰一, 椙田 浩文
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2311-2315
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は25歳,男性.幼少時より発達の遅れが見られ,皮膚関節の過伸展や皮膚の脆弱性等の身体所見から,5歳時にEhlers-Danlos症候群(EDS)と診断された.某年10月検診にて貧血を指摘され当院受診.便潜血反応陽性にて下部消化管内視鏡を施行した.S状結腸に亜全周性の2型の腫瘍を認め,生検にて高~中分化型腺癌と診断した.S状結腸切除術(D3郭清)を施行し,一期的に吻合した.術後縫合不全を認めたが,保存的に改善し,術後35日目に退院した.病理組織学的診断はSS,N1,H0,P0,M0,StageIIIaであった.術後イレウスにて3度入院したが,術後3年の現在まで再発なく経過観察中である.EDSは結合組織成分の先天性代謝異常により全身に多彩な臨床症状を呈する稀な遺伝性疾患であり,EDS合併大腸癌においては疾患の特徴を踏まえた術式選択,周術期管理,経過観察が重要である.
  • 藤川 幸一, 寺澤 無我, 長谷川 圭, 久保 浩一郎, 渡邊 英二郎, 齋藤 隆明
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2316-2319
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,男性.2009年8月に直腸癌で低位前方切除術を施行した.その後外来でフォローしていたが2010年11月に排便時の出血の訴えあり,診察したところ肛門上皮に2つの隆起性腫瘍を認めた.直腸癌の肛門管転移を疑い,経肛門的に局所切除を施行した.病理所見は原発巣と類似した組織像の高分化腺癌で,腫瘍辺縁部の粘膜上皮は扁平上皮に被覆されており,直腸癌の肛門管転移と診断した.
  • 竹内 信道, 久保 直樹, 荻原 裕明, 中山 中, 芳澤 淳一, 伊藤 憲雄
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2320-2323
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    筋層浸潤を伴った直径5mmの肛門腺由来粘液癌を報告する.症例:55歳,女性.子宮頸癌,甲状腺癌の手術既往がある.排便時に肛門腫瘤を自覚して他院を受診し,軽快せず当院を受診した.直腸指診で肛門管中部に長径7mm短径5mmの一部硬結を伴った腫瘍を触知,CTで同部に造影される腫瘍を認め,経肛門的に腫瘍切除を行ったところ直径5mmの筋層浸潤を伴った低分化型粘液癌を扁平上皮下に認めたので,直腸切断術を施行した.切除標本の検索ではリンパ節転移はなく,局所にも残存悪性細胞を認めなかった.考察:肛門管癌は出血など症状のある症例が多いにもかかわらず,早期の発見はまれである.また本症例のように非常に小さい腫瘍として発見されても,筋層浸潤を伴った進行癌であったことから,肛門腫瘍の診察においては大きさによらず本疾患の存在を意識すべきであると考えられた.
  • 鈴木 俊裕, 鈴木 秀昭, 林 英司, 井上 昌也
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2324-2328
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    卵巣様間質を伴う肝内胆管嚢胞腺腫は,全例女性に発症する比較的まれな肝嚢胞性疾患である.症例は44歳,女性.2003年に近医で腹部超音波検査を行い,肝に2.5cmの腫瘤を指摘され当院紹介受診となった.血管腫と診断し,経過観察していたが,2007年に7cmと増大を認めたため再び精査となった.腹部CTでは,肝S4に最大径78mmの多房性嚢胞性腫瘍が認められ,ERCPでは腫瘍と肝内胆管との交通は認められなかった.腫瘍マーカーは正常であった.胆管嚢胞腺腫または腺癌の診断で肝左葉切除術を施行した.摘出標本は多房性嚢胞で明らかな充実性部分は認めなかった.病理組織学的検査では悪性所見はなく,卵巣様間質を伴う肝内胆管嚢胞腺腫の診断であった.本疾患は術前に癌と鑑別するのは困難とされ,悪性化の可能性もあるので外科的に全切除することが望ましい.
  • 岩崎 渉, 小棚木 均, 佐藤 公彦, 最上 希一郎, 吉楽 拓哉, 小棚木 圭
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2329-2333
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    86歳女性,心房細動があり,抗凝固薬を内服していた.就寝中に腹痛が出現し,当院救急外来を受診.右季肋部を中心に圧痛,筋性防御を認め,腹部単純CTで胆嚢の著明な腫大と内部に血腫を認めた.造影CTの動脈相では胆嚢動脈の末梢に5mm大の円形の高吸収域を認め,動脈瘤が疑われた.胆嚢出血の診断で緊急手術を行った.開腹すると,暗赤色に腫大した胆嚢を認め,胆嚢周囲に血性膿性腹水を認めたため胆嚢摘出術を施行した.切除標本では胆嚢内に大量の凝血塊と血液を認めたが,結石なく,動脈瘤・露出血管も不明であった.病理所見では胆嚢壁に中等度のリンパ球浸潤と線維化,びまん性の出血を認めた.本症例では炎症により出血が起きやすくなっていた状態に,抗凝固薬を内服していたことが加わり胆嚢出血が引き起こされたと推測された.今後高齢者の増加に伴い本症例のように抗凝固薬内服により胆嚢出血を来たす症例が増えてくることが示唆される.
  • 下村 治, 益子 一樹, 阿竹 茂, 河野 元嗣, 大河内 信弘
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2334-2338
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    外傷に伴う胆嚢内出血を手術的に加療した症例を経験したので報告する.症例は36歳男性.飲酒後の交通外傷で当院へ救急搬送された.来院時,右前胸部痛から季肋部の痛みを訴えており,造影CTで緊満した胆嚢の中に明らかな造影剤の漏出があり,胆嚢内の出血性損傷と診断した.右季肋部痛を除いて全身状態は安定していたが,凝血塊による胆嚢管の閉塞,胆嚢炎などの可能性を踏まえ,第8病日に胆嚢摘出術を施行した.胆嚢内には大量の凝血塊を認めていた.胆嚢内出血の報告例は散見されるが,外傷に伴う胆嚢内出血の報告は,われわれが検索しえた範囲では本邦で23症例とまれな病態である.経過観察のみで治癒した症例が5例あり,その損傷形態,程度によっては経過観察も可能であると言えるが,症状改善後に急性胆嚢炎をきたし緊急手術になった症例もあることから,明らかな活動性の出血を認める場合は手術を考慮すべきであると考える.
  • 上松 孝, 関野 誠史郎, 阪本 研一
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2339-2344
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は33歳,男性.腰痛,右季肋部痛で前医を受診し下行結腸癌,多発肝転移と診断され当科を受診した.化学療法(FOLFOX4 5コース)を施行後,下行結腸切除,肝部分切除術を施行した.術後に胆汁瘻を生じ,経皮的ドレナージとENBD留置を行ったが治癒せず残肝再発を認めた.FOLFOX4を3コース施行し初回手術後9カ月目に拡大肝左葉切除術+尾状葉部分切除術+右肝管空腸吻合術をを行い,胆汁瘻に対して瘻孔部の直接閉鎖,大網被覆を施行した.しかし,胆汁漏は持続し肝切離面より新たな胆汁漏を形成したため経皮的腹腔ドレナージを行った.再肝切除後117日目から胆汁様喀痰を認め胆管気管支瘻を合併した.胆道ドレナージを行うため胆管空腸吻合に用いた拳上空腸に空腸瘻を造設し経空腸瘻的に内視鏡的胆道ドレナージを行ったところ胆管気管支瘻は治癒し空腸瘻造設術後88日目に退院した.
  • 八木 康道, 前多 力, 吉光 裕, 佐久間 寛
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2345-2351
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.主訴は左肩痛と左胸部痛.経過で腹膜炎が疑われ近医より紹介.著明な炎症反応の上昇と上腹部の腹膜刺激症状を認め,CTで網嚢腔に膿瘍を認めた.同時に胆管拡張も認め胆管癌が疑われたが,肝機能障害もなく腹腔内膿瘍に対する緊急開腹ドレナージを優先した.開腹所見で網嚢腔より多量の胆汁様液体の排出を認めたが,消化管に穿孔部位は同定できず腹腔洗浄ドレナージを施行した.術後,ドレーンより胆汁漏出を認め閉塞性黄疸も出現した.MRCPにて下部胆管癌と診断し,胆管内圧上昇に伴う肝左葉三角靱帯内の細胆管穿孔およびspontaneous bilomaと診断した.PTBDにより胆汁漏は治癒し,胆管癌治療として膵頭十二指腸切除術を施行したが術後4カ月で腹膜再発をきたした.胆管癌に併発したspontaneous bilomaにおいては,胆汁漏出による腹膜播種のリスクを念頭に置いて加療する必要性がある.
  • 平島 浩太郎, 沖野 哲也, 田上 弘文, 木村 有, 小澄 敬祐, 松川 哲也, 八木 泰志
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2352-2356
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.心窩部痛,体重減少を主訴に近医を受診.腹部超音波検査にて膵頭部に約6cmの腫瘤を認め,手術目的に当科紹介となった.全身状態は良好で,黄疸や肝機能異常を認めず.腹部は平坦・軟で腫瘍は触知せず.腹部CT・MRIでは膵頭部に約6cm大の多房性・嚢胞性腫瘤を認めた.血液中腫瘍マーカーは正常であった.膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)の悪性化を疑い,膵頭十二指腸切除術(PD)を施行した.術後病理にて膵は正常組織であり,膵周囲のリンパ節腫大を認め,乾酪壊死,Langhans巨細胞,類上皮細胞からなる肉芽腫の出現により結核性リンパ節炎の診断に至った.本邦での腹腔内の結核性リンパ節炎は稀であり,多くは免疫不全患者に発症すると報告があるが,本症例は結核の既往もなく生来健康であった.今回膵IPMNを疑い,鑑別が困難であった結核性リンパ節炎の1例を経験したため,文献的な考察を加え報告する.
  • 古山 貴基, 伴 大輔, 工藤 篤, 田中 真二, 岸野 充浩, 有井 滋樹
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2357-2362
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.2cm大の膵頭部癌に対し膵頭十二指腸切除術を行った.術前CT検査で腹腔動脈起始部の狭窄を認め,正中弓状靱帯症候群を疑った.術中に弓状靱帯の切離を行ったが腹腔動脈の血流は改善せず,動脈血行再建を要した.胃十二指腸動脈は腫瘍の浸潤があり温存できなかったため,肝血流維持のため右大伏在静脈グラフトを用いて右外腸骨動脈から胃十二指腸動脈断端をバイパスし血行再建を行った.術後2回にわたりグラフトからの出血を認めたが,いずれもグラフト内にカバードステントを留置し,止血と同時に肝血流を温存した.以後再出血なく軽快退院した.本症例は腹腔動脈閉塞症例に対する膵頭十二指腸切除術の血行再建術式,および術後出血に対するInterventional Radiologyの手技の点から示唆に富む症例であり,文献的考察を加え報告する.
  • 河合 清貴, 堀 明洋, 森岡 淳, 松葉 秀基, 三輪 知弘, 松村 卓樹
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2363-2366
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性で,17カ月前に結腸粘液癌術後再発に対して膵頭十二指腸切除術,Child変法再建を施行された.術後化学療法施行中に腹腔内再発と肺転移を認め,悪液質の進行もあり緩和治療中であったが再発巣の増大に伴う挙上空腸狭窄と閉塞性黄疸,胆管炎を発症した.化膿性胆管炎や凝固障害など急速に重篤化する可能性があるため,経皮経腸ドレナージを行った.膵管胆管チューブ抜去瘢痕部より拡張したWitzel式固定空腸内に12Frアスピレーションキットを挿入した.ドレナージによる合併症を伴うことなく胆管炎は収束し,腸管減圧により上腹部痛消失と食思不振の改善を認めた.膵頭十二指腸切除術後再発による挙上空腸狭窄に惹起される閉塞性黄疸や胆管炎に対し,全身状態不良な患者でも安全かつ迅速にドレナージが可能な本手技は有効な一手段と考えられた.
  • 大和田 洋平, 松尾 亮太, 池田 治, 中山 健, 田野井 智倫, 大河内 信弘
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2367-2371
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は54歳,男性.食欲不振と黄疸の精査目的に入院した.腹部CT検査で膵鈎部に径30mm大の腫瘍を認め,十二指腸は下十二指腸曲付近で屈曲・閉塞していた.十二指腸水平脚は存在せず,小腸は左側に偏位した上行結腸の右側に存在し腸回転異常症と診断した.減黄後に膵頭十二指腸切除術を施行した.手術所見ではNonrotation typeの腸回転異常症であり,腫瘍による引きつれを軸として十二指腸が屈曲・閉塞していた.再建は上行結腸右側の小腸を挙上しChild変法で行い,腸回転異常に対する腸管固定術は行わなかった.術後の経口摂取は良好で術後14日目に退院した.腸回転異常を合併した症例に対する膵頭十二指腸切除術の報告は非常に稀であり報告する.
  • 坪井 美樹, 堀口 淳, 時庭 英彰, 内田 紗弥香, 前村 道生, 竹吉 泉
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2372-2376
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.咳嗽を主訴に近医を受診し,胸部CTで偶然右上腹部の腫瘤を指摘され当院に紹介された.腹部CTでは右副腎近傍に石灰化を伴う約5cm大の境界明瞭な腫瘤を認めた.腹部MRIでも右副腎頭側にT2で高信号,T1で低信号を呈する腫瘤を認めた.MIBGおよびアドステロールシンチグラフィでは異常集積を認めず,副腎髄質および皮質のホルモン検査でも測定値はほぼ正常範囲内であった.以上より非機能性副腎腫瘍もしくは後腹膜腫瘍との診断で開腹し,右副腎より発生していた腫瘍を切除した.摘出標本の割面は凝血を混じえた暗赤色調を呈し,病理組織学的には高度な出血や石灰化などの変性を伴った副腎皮質腺腫であった.副腎出血はまれであり,その原因は多くが外傷によるとされている.外傷の既往のない皮質腺腫に伴った副腎出血は極めてまれであるので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 大割 貢, 米倉 竹夫, 小角 卓也, 太田 善夫
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2377-2382
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は2歳,女児.出生後に髄膜瘤,水頭症と診断され,V-P(ventriculo-peritoneal)シャントチューブが留置された.2歳時に突如,腹部膨満,頻回の嘔吐が出現したため当科を紹介された.受診時の腹部CT検査にて左上腹部を中心に巨大な嚢胞を認めた.V-Pシャントチューブの先端は右下腹部にあり,頭部CTには異常を認めなかった.髄液仮性嚢胞を疑いV-Pシャントチューブ挿入創部を小開腹し,嚢胞内にS.A.N.D.バルーン®を挿入し無色透明な髄液を吸引した.腹腔鏡下に腹腔内を精査したところ,V-Pシャントチューブが大網内に穿通し,髄液の吸収不全による大網内髄液仮性嚢胞を形成したと診断し,腹腔鏡下大網開窓術を施行し,シャントチューブの再留置を行った.しかし患児はその後も髄液仮性嚢胞を繰り返したため,術後5カ月目にV-Aシャントに変更し,現在は合併症無く経過観察中である.
  • 山田 正樹, 佐藤 雅彦, 渡部 英, 根上 直樹, 齋藤 徹也, 石戸 保典
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2383-2386
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    大腸癌手術時に偶然発見された小腸間膜異所性膵の1例を経験したので報告する.
    症例は60歳男性.直腸,S状結腸の重複癌による腸閉塞で入院し人工肛門を造設.退院後に癒着性の腸閉塞で再入院となり,2期的に根治術を施行した.術中Treitz靱帯から約40cmの空腸に索状物を形成し,この間隙に小腸がすべりこむことでイレウスを生じていた.近傍の小腸間膜に25mm大の固い結節を触知し播種を疑い摘出し,術中迅速病理診断を行ったところ異所性膵の診断であった.手術は癒着剥離術と低位前方切除術を施行した.術後の病理組織学的検査で結節はHeinrich I型の異所性膵と診断された.
  • 寺井 志郎, 廣澤 久史, 吉川 朱実, 福島 亘, 泉 良平
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2387-2391
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    腸間膜原発平滑筋腫はまれな疾患である.われわれは前立腺癌の術前検査で偶然発見され,病理組織学的に横行結腸間膜原発の平滑筋腫と診断された1例を経験したので報告する.症例は62歳の男性.症状はなく,前立腺癌の術前検査として施行された腹部CT検査で左下腹部に著明な石灰化を伴った12cm大の腫瘍を指摘された.FDG-PETでSUVmax3.4と軽度の集積亢進を呈していたため,横行結腸間膜由来の低悪性度腫瘍を疑い,腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は横行結腸間膜から発生していたが腸管と密に接しており,辺縁動脈の温存が困難であったため,腫瘍とともに横行結腸を合併切除した.病理組織学,免疫組織学的に横行結腸間膜原発の平滑筋腫と診断された.FDG-PETで集積亢進が認められた腸間膜原発の平滑筋腫はまれと考えられたため,文献的考察を加え報告する.
  • 東郷 望, 蒔田 富士雄, 小林 光伸, 須納瀬 豊, 竹吉 泉
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2392-2398
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,男性.両下肢の浮腫が出現したため近医を受診し,超音波検査で下大静脈(IVC)を圧迫する肝下面の腫瘍を指摘され,当科に紹介された.腹部CTおよびMRIでは最大径11cmの低濃度充実性腫瘤を右腎頭側に認め,さらに左腹腔内の大半を占める最大径37cmの巨大な嚢胞様の腫瘤を認めた.両側の後腹膜腫瘍に対し手術は二期的に施行した.初回は左側の巨大腫瘤切除を行い,約1カ月後に右側腫瘤の手術を行った.右側腫瘤はIVCに強固に癒着していたため,腫瘍の一部を残存する形で摘出した.左は4,780g,右は291gであった.割面は,左は薄い線維性の被膜に被われ分葉状,黄色調の柔らかい脂肪腫様の腫瘤で,右は白色充実性で硬い腫瘍であった.病理組織学的にはともに分化型脂肪肉腫であった.IVCに癒着した腫瘍の残存部は放射線治療を行い,術後1年まで明らかな残存部の増大や転移は認めなかったが,他病死した.
  • 五味 邦之, 丸山 起誉幸, 島田 宏, 三原 基弘, 梶川 昌二, 中村 智次
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2399-2403
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    患者は71歳,男性.貧血精査の下部消化管内視鏡検査でS状結腸に2型病変が認められ生検にてS状結腸癌と診断された.CTでは播種を疑う腫瘤や腹水は認められず臨床病期Stage IIの診断にて腹腔鏡下S状結腸切除術を施行.術中所見で小腸間膜を中心に腹腔内に白色小結節をびまん性に認め,S状結腸癌の腹膜播種と考え一部を診断目的に採取し,予定通りS状結腸切除術のみ施行して手術を終了した.腹膜小結節の病理組織診断は高分化型乳頭状中皮腫(WDPM)との診断であり,S状結腸癌がStage IIIaであったため術後補助療法としてmFOLFOX6を施行した.高分化型乳頭状中皮腫はまれな低悪性度の腹膜中皮腫の一種で女性に好発する.発育は緩徐であり術後補助療法なしでも良好な経過をたどることが多いが,まれに高悪性度に転化することがあるため厳重な経過観察が必要と考えられた.
  • 崔 聡仁, 北出 貴嗣, 山崎 茂樹, 若狭 基見, 園山 輝久
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2404-2408
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    腹膜中皮腫は胸膜中皮腫よりも症例数が少なく,治療法も確立していない予後不良の疾患である.今回,われわれはイレウスのため手術となった腹膜中皮腫の1例を経験したので報告する.
    症例は61歳男性,23年前のアスベスト被曝歴があった.腹痛を機に受診し,各種検査にて横行結腸の閉塞性イレウスおよび脾腫瘤を認めた.確定診断に至らずイレウス解除のため開腹手術を施行したところ,横行結腸と小腸の一部が一塊となり狭窄,また胃壁や大網に小結節が散見された.結腸,小腸の部分切除術を施行した.病理診断は結腸,小腸,胃壁および大網のいずれも異型細胞の増生を認め,カルレチニン免疫染色陽性,CEA陰性等の結果から腹膜中皮腫と診断された.
    腹膜中皮腫は根治的手術は困難で,化学療法を施行されることが多いが,治療法は確立しておらず予後不良である.今後,中皮腫は増加傾向が予想され,早急な症例の集積と集学的治療の検討が必要である.
  • 山下 達也, 鈴東 昌也, 東本 昌之, 小倉 修
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2409-2414
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    原発性腹膜腺扁平上皮癌の症例を経験したので報告する.本症例において,手術前精査により,原発巣を指摘し得なかった.
    腹水細胞診で,腺癌診断の後,試験開腹術の結果,腹膜に多発性腫瘤結節を認めた.病理組織学所見で,未分化な異型性の強い核を有する腫瘍細胞を認めた.免疫組織化学的検討の結果,腫瘍細胞で上皮性マーカーであるKeratin,epithelial membrane antigen,CA19-9,calretinin,CAM5.2が陽性であった.さらに,扁平上皮への分化を示す34βE12,CK5/6も陽性であった.以上より,原発性腹膜腺扁平上皮癌と診断された.手術後,paclitaxel,carboplatinによる癌化学療法を施行も,術後275日に死亡する.原発性腹膜腺扁平上皮癌は,極めて稀な疾患であり,本症例の画像診断,病理組織学的所見,治療経過に関して文献的考察を加えて報告する.
  • 山内 慎一, 小林 宏寿, 石川 敏昭, 杉原 健一
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2415-2420
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例1は80歳,女性.盲腸癌の術後14カ月目に腹壁再発をきたし,腹壁再発巣切除およびコンポジットメッシュによる腹壁再建術を施行した.術後3カ月でメッシュ感染が合併し,保存的治療を行ったが改善しないため,メッシュ除去術を施行した.症例2は82歳,女性.直腸S状部癌の術後17カ月目に腹壁瘢痕ヘルニアをきたし,コンポジットメッシュによるヘルニア修復術が行われた.術後8カ月目にメッシュ感染が合併した.保存的治療にて改善せず,感染の発生から12カ月目にメッシュ除去術を施行した.比較的稀な遅発性メッシュ感染の2例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 中野 順隆, 寺島 秀夫, 清水 義夫, 朴 秀吉, 今村 史人, 神賀 正博
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2421-2425
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    症例は92歳,男性.以前より右鼠径ヘルニアを認めていたが,医療機関にはかからず,市販のヘルニアバンドを着用し,脱出時は自己還納を繰り返していた.右鼠径ヘルニアを自己還納した直後より激烈な腹痛が発現し,当院救急外来を受診した.腹部CT検査でfree airは認めなかったが,中等量の腹水と部分的に腸管壁の肥厚を認めたことから消化管穿孔が疑われ,緊急手術となった.開腹すると,消化液と食物残渣が腹腔内へ流出しており,小腸の腸間膜対側に穿孔部を認めた.穿孔部の腸管に絞扼による血流障害の痕跡が認められないこと,および自己還納直後から腹痛が突発した経緯から,自己還納操作に伴う外力によって腸管壁が瞬時に破綻・穿孔したことが推定された.今回の検討でヘルニアバンドを用いた保存的治療にはエビデンスが皆無であることが改めて確認された.鼠径ヘルニアは年齢を問わず手術を考慮すべきと考えられた.
  • 山村 智美, 三輪 高也, 高見 秀樹, 松井 隆則, 藤光 康信, 小島 宏
    2012 年 73 巻 9 号 p. 2426-2430
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/25
    ジャーナル フリー
    閉鎖孔ヘルニアの嵌頓により小腸が穿孔し,大腿部膿瘍をきたした1例を経験したので報告する.症例は94歳女性.肺炎で入院治療中にイレウス症状が出現し,外科に紹介された.腹部CT検査を実施したところ,右閉鎖孔ヘルニアと右大腿に波及する膿瘍を認め,緊急手術を施行した.術中所見で小腸は,右の閉鎖孔にRichter型に嵌頓し穿孔をきたしており,ここから右大腿深部に連続した膿瘍を形成していた.手術は小腸部分切除術・ヘルニア門修復および右大腿部膿瘍ドレナージ術を行った.術後経過は良好で術後第71病日に退院となった.閉鎖孔ヘルニアが大腿深部膿瘍を形成したまれな症例を経験したので報告する.
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