日本臨床外科学会雑誌
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74 巻, 10 号
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症例
  • 豊島 雄二郎, 野路 武寛, 安保 義恭, 中村 文隆, 樫村 暢一
    2013 年 74 巻 10 号 p. 2917-2923
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    鈍的腹部外傷の加療に際し,広範な腹壁欠損を生じることがある.この場合,腹腔内圧の減圧目的に急性期を開腹のまま管理を行うため,定型的な筋膜閉鎖を行えず,6-12カ月後に二期的腹壁再建を行うことがある.再建の材料としては,人工物や自家組織などを用いる方法が報告されているが,確立したものはない.今回われわれは,広範な腹壁欠損を伴う鈍的外傷救命例に対し,自家組織と人工物を組み合わせ,腹壁再建を行った症例を経験した.症例は43歳男性で,鉄管(約1t)の下敷きになり受傷した.Damage control,Vacuum pack closureを行った後,皮膚のみを閉創した.約9カ月後に残存筋膜および大腿筋膜張筋筋膜弁にComposix Kugel Patch®を用いて腹壁再建を行った.術後4年が経過したが,腹壁整容性は保たれており,同法は腹壁再建の方法として有用であった.
  • 中野 順隆, 寺島 秀夫, 塚本 俊太郎, 高橋 一広, 今村 史人, 神賀 正博
    2013 年 74 巻 10 号 p. 2924-2928
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,男性.健診で偶然腹部腫瘤を指摘され,精査目的に当院を受診した.造影CT検査にて,約5cm大,不整形状,上腸間膜動脈左縁に密接する後腹膜腫瘤が認められた.確定診断が得られないことから,鏡視下に後腹膜腫瘍摘出術を行う方針となった.上腸間膜動脈に密着した腫瘍は白色調で被膜を有し,周囲組織から慎重に剥離しつつ摘出した.病理検査にて上腸間膜動脈周囲神経叢由来の神経節神経腫と診断された.神経節神経腫は全後腹膜腫瘍の中で0.7-1.8%と比較的まれな腫瘍であり,交感神経系腫瘍のうち最も分化度が高い良性腫瘍である.一般に発育は緩徐であり経過観察となることが多いが,本症例のように確定診断を得るためには摘出が必要である.大血管に近接する後腹膜腫瘍の鏡視下手術は未だ一般的とは言えない.しかし,鏡視下手術は拡大視効果により安全な摘出が可能であり,特に確定診断目的の摘出には有益であると考えられた.
  • 畠 達夫, 渡辺 和宏, 坂田 直昭, 佐藤 好宏, 海野 倫明
    2013 年 74 巻 10 号 p. 2929-2934
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.12年前に結腸部分切除後の穿孔性腹膜炎に対し左半結腸切除術を施行した.術後19カ月目に正中創の腹壁瘢痕ヘルニアに対しComposix® Kugel Hernia Patch(CKP)を用いて修復術を施行した.ヘルニア修復術後9年4カ月目に腹痛を主訴に当科を受診し,精査の結果メッシュ感染と診断した.遅発性の感染であり,小腸との癒着による瘻孔形成も否定できないことから早期のメッシュ摘出を優先し,診断後6日目に手術を施行した.パッチと小腸に癒着はなく,小腸との瘻孔形成も認めなかった.メッシュを摘出し,腹壁は筋膜の縫合閉鎖で修復した.術後経過良好で,退院後1年経過した現在もヘルニアの再発を認めていない.腹腔内留置型の人工補強物使用例では小腸との癒着や瘻孔形成を伴わない遅発性感染が起こりうること念頭に置き,また診断後早期のメッシュ摘出は全治療期間短縮のために考慮されるべき治療法と考えられた.
  • 石村 健, 大谷 剛, 若林 久男
    2013 年 74 巻 10 号 p. 2935-2938
    発行日: 2013年
    公開日: 2014/04/25
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.約10年前から右鼠径ヘルニアを認めており,脱出のたび自己整復していた.今回,自己整復後に腹痛・嘔吐が出現したため受診した.腹部CT検査で右下腹部に壁側腹膜から連続する嚢状病変の内部に浮腫状の小腸が認められ,鼠径ヘルニア偽還納による絞扼性イレウスと診断して緊急開腹手術を施行した.嵌頓を解除して腹膜前腔にメッシュを留置してヘルニア修復を行った.腸管切除は行わなかった.術後経過は良好で第7病日に退院した.鼠径ヘルニア偽還納は非常にまれな疾患であるが,術前の十分な問診と詳細な腹部CT画像の読影により診断可能であると思われる.
支部・集談会記事
編集後記
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