症例は59歳,女性.既往歴は特にないが,元来胃腸が弱いと自覚しており,数十年間軽度の腹痛を繰り返していた.今回2週間程度胃痛が持続し,右下腹部,側腹部痛も出現し受診.発熱なく,腹部は軟であるが膨満.右側腹部から臍周囲まで自発痛,圧痛著明だが,反跳痛はなかった.CT上,臍下部レベルで小腸はwhirl signを呈しており,同部位で少なくとも2箇所の閉塞部位が認められ,closed loopを形成.また腹水貯留も認められた.絞扼性イレウスの疑いで発症から約19時間後に緊急手術施行.腹水は血性腹水であり(約1,000ml),広範囲に小腸は変色壊死していた.約11cm×9cmの腸間膜欠損を回腸末端に認め,欠損孔に小腸が複雑に捻じれながら陥入し,絞扼していた.約190cmの小腸切除施行,端々吻合にて腸管再建を行った.成人における小腸間膜裂孔ヘルニアの報告は少なく,文献的考察を含め報告する.
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