日本臨床外科学会雑誌
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74 巻, 5 号
選択された号の論文の57件中51~57を表示しています
症例
  • 白田 力, 永岡 栄, 風間 義弘, 酒井 敬介
    2013 年 74 巻 5 号 p. 1392-1396
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.既往歴は特にないが,元来胃腸が弱いと自覚しており,数十年間軽度の腹痛を繰り返していた.今回2週間程度胃痛が持続し,右下腹部,側腹部痛も出現し受診.発熱なく,腹部は軟であるが膨満.右側腹部から臍周囲まで自発痛,圧痛著明だが,反跳痛はなかった.CT上,臍下部レベルで小腸はwhirl signを呈しており,同部位で少なくとも2箇所の閉塞部位が認められ,closed loopを形成.また腹水貯留も認められた.絞扼性イレウスの疑いで発症から約19時間後に緊急手術施行.腹水は血性腹水であり(約1,000ml),広範囲に小腸は変色壊死していた.約11cm×9cmの腸間膜欠損を回腸末端に認め,欠損孔に小腸が複雑に捻じれながら陥入し,絞扼していた.約190cmの小腸切除施行,端々吻合にて腸管再建を行った.成人における小腸間膜裂孔ヘルニアの報告は少なく,文献的考察を含め報告する.
  • 坂本 良平, 橋本 恭弘, 佐藤 雅之, 吉岡 晋吾, 冨田 昌良, 山下 裕一
    2013 年 74 巻 5 号 p. 1397-1403
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.右下腹部の鈍痛を主訴として近医より紹介入院となった.手術や外傷の既往はなく,血液検査も明らかな異常はなかった.エコー,CT,MRI検査の所見から被膜を伴った特発性後腹膜血腫を疑ったが鑑別診断として,後腹膜嚢胞や嚢胞変性を伴った傍神経節腫,神経原性腫瘍,筋原性腫瘍などの腫瘍性病変の可能性が否定できなかった.平成20年3月下旬(発症後約6週)に,確定診断と治療を目的として後腹膜腫瘤摘出術を行った.術後診断は,特発性後腹膜血腫であった.画像診断では,MRI検査が血腫の経時的変化をとらえた特徴的な所見を示していた.過去の報告例を含めて検討したところ,被膜を伴った特発性後腹膜血腫は,摘出術によってその診断を確定したものが多かった.すなわち特発性後腹膜血腫では,術前に確定診断を得ることが困難な場合もあるが,MRIによる鑑別診断の有用性が示唆された.
  • 渡野邉 郁雄, 塚田 暁, 吉田 範敏, 渡辺 心, 丸山 俊朗, 井原 厚
    2013 年 74 巻 5 号 p. 1404-1407
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル フリー
    症例は31歳,男性.右下腹部痛を主訴に受診.腹部骨盤CT検査で仙骨前部に長径4cmのlow densityな嚢胞性腫瘤を認めた.MRIではT1強調でlow intensity,T2強調でhigh intensityな嚢胞性腫瘤であった.仙骨前面に発生したepidermoid cystと判断し,腫瘤が比較的小さく直腸Ra中心に存在し,明らかな周囲組織への浸潤がないことより腹腔鏡下腫瘤切除術を施行した.腫瘤は40×30×35mmで内容物は粥状であった.病理組織学的にepidermoid cystと診断した.術後経過は良好で6病日目に退院し術後2年再発なく経過している.前仙骨部は発生学的に胎児性組織の集中する部位であり,その遺残物により様々な腫瘍が発生しやすい.治療は感染や癌の合併例も報告されており,完全摘出が原則である.
  • 渡辺 洋平, 小林 祐介, 菊地 大輝, 中山 浩一, 浦住 幸治郎, 竹之下 誠一
    2013 年 74 巻 5 号 p. 1408-1412
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル フリー
    症例は腹部手術歴のない60歳男性.下腹部痛,腹部膨満を主訴に来院した.腹部レントゲン検査,CT検査では小腸イレウスを認め,数年前から時々右鼠径部の膨隆を自覚していたことから,鼠径ヘルニア嵌頓を疑ったが,認めなかった.入院し保存的加療を行うもイレウスは改善せず,内ヘルニアの診断で手術を施行した.開腹所見では回腸が右膀胱上窩に嵌頓しており内膀胱上窩ヘルニア嵌頓によるイレウスと診断した.腸管壊死は認めず,腸切除は要さなかった.内膀胱上窩ヘルニアはまれな疾患であり,本邦報告例は自験例が21例目である.さらに,自験例では鼠径部に膨隆を形成する外膀胱上窩ヘルニアの所見も有していたと考えられた.内膀胱上窩ヘルニアはまれな疾患であるため,術前診断は非常に困難であるが,特徴的なCT像を呈するなど,認識を深めれば術前診断は可能である.原因不明のイレウスの診療の際には念頭に置くべき疾患の一つと考えられる.
  • 松本 亮一, 清松 和光
    2013 年 74 巻 5 号 p. 1413-1416
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/11/25
    ジャーナル フリー
    症例1:89歳女性,開腹歴なし.当院受診3日前より心窩部痛の訴えあり近医受診.入院の上,経過観察されるも改善無く当院紹介となった.CTにて絞扼性イレウスと診断,同日緊急手術となった.術中所見では大網が小腸間膜に癒着し索状を呈しており,同部位に回腸が陥入し絞扼していた.症例2:80歳男性,開腹歴なし.右下腹部痛にて当院受診し,内服加療されるも症状改善無く,翌日当院救急搬入.CTにてイレウスの所見を認め,腹水穿刺にて血性腹水を認めた為,絞扼性イレウスの診断で同日緊急手術施行.術中所見では大網が後腹膜に癒着し索状を呈しており,同部位に回腸が陥入し絞扼していた.内ヘルニアは比較的稀な疾患であり,術前診断や手術適応に苦慮することも多い.本症例は開腹歴の無い,大網索状物と腸間膜,後腹膜との原因不明の癒着により生じたイレウスであり,極めて稀な症例であると考えられたため報告する.
支部委員会報告
編集後記
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