日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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75 巻 , 6 号
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第75回総会会長講演
  • 前田 耕太郎
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1461-1472
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    直腸癌外科治療の対するこれまでの取り組みを概説した.自律神経温存手術の妥当性に関しては,拡大郭清標本を用いて自律神経周囲組織への微小癌を確認した.10%の直腸癌症例で微小癌が見られたが,転移が見られた症例の予後が不良であり全自律神経温存は根治性に影響ないと考えられた.直腸内には手術操作時に遊離癌細胞がほぼ全例で存在するが,直腸内洗浄により除去できる.結腸内にもこれらが見られるので術中操作に注意が必要である.直腸癌手術の体位は,大腿開脚水平位が視野の面から適切な体位であり,この体位を使用して低位の吻合ではIO-DSTによるdouble stapling techniqueは有用で,K式開肛器を使用して安全に施行できる.E式開肛器と種々の技術を併用したMITASによる局所切除はtotal biopsyの手技として低侵襲な手術であり,2012年より保険収載された.直腸癌手術では解剖を十分熟知して手術にあたる必要があり,若い外科医には臨床から出た発想で工夫されることを希望したい.
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原著
  • 三浦 光太郎, 柏木 伸一郎, 小野田 尚佳, 野田 諭, 石原 沙江, 浅野 有香, 呉 幸枝, 徳本 真央, 川尻 成美, 高島 勉, ...
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1473-1478
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    背景:甲状腺癌手術の際には丁寧な血管切離と止血操作が重要な鍵となる.LigaSureTM Small Jaw Instrument(LSJ)は,小型で操作性のよい電気式凝固切開装置であり,甲状腺手術領域においても使用されるようになった.対象と方法:甲状腺癌手術を行った149例を対象とした.LSJ使用群74例(49.7%)と非使用群75例(50.3%)を臨床的因子により後方視的解析を行った.結果:甲状腺全摘は87例(58.4%),葉切除は62例(41.6%)であった.LSJ使用群で全摘において手術時間が短く(p=0.017),ドレーン排液量が少なかった(p=0.045).また,LSJ使用により葉切除例で在院期間が有意に短かった(p=0.030).結論:甲状腺癌手術において,より剥離範囲の広い甲状腺全摘術ではLSJの使用により手術時間が短縮された.
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臨床経験
  • 吉富 誠二, 辻 尚志, 安部 優子, 賀島 肇, 宮原 一彰, 黒田 雅利
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1479-1483
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    肉芽腫性乳腺炎(granulomatous mastitis: GM)は腫瘤形成性の慢性炎症性疾患で,乳癌と似た臨床像を呈するため良性疾患として認識する必要がある.われわれが経験したGM9例(10病変)について検討した.平均年齢は35.6歳,出産歴ありが7例,両側例が1例あった.主訴は乳房腫瘤・乳房腫脹・乳房痛であり,腫瘤の大きさは平均6.4cm,多くの病変で皮膚発赤・圧痛があり,2例で下腿の結節性紅斑を合併していた.乳房超音波検査では膿瘍変化を伴う低エコー域として描出されることが多く,穿刺吸引細胞診・針生検では悪性所見はなかった.治療は切開排膿,Seton法によるドレナージ術,ステロイド治療,抗生剤治療が行われ治療期間は平均174日であった.Seton法を5病変に対し行い治療期間は平均46日で全病変が治癒に至り有用であると考えられた.
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  • 前川 陽子, 高尾 信太郎, 廣利 浩一, 三木 万由子, 吉田 佐智子
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1484-1490
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    乳癌治療後の初再発部位として骨転移は頻度が高いが骨単独転移症例に関しての報告は多くはない.1993年から2012年5月まで,当院にて初回治療された再発乳癌727例のうち骨単独再発例は110例(15.1%)であった.そのうち,検討可能な76例を対象とし,ホルモン受容体発現の有無との関係および,骨再発後に起こってくる他臓器転移について着目し臨床的特徴を後向きに検討した.骨単独再発症例は69.7%がER陽性であった.骨転移までの期間がER陽性,陰性例ではそれぞれ50.9±30.9カ月,19±42.9カ月,その後に他臓器へ転移を認めるまでの期間(中央値)はER陽性,陰性例でそれぞれ29.6カ月,19.8カ月でER陰性例では短く,また生存期間もER陰性例で短い傾向にあった.ER陰性,手術から骨転移までの期間が短いおよび肝転移がみられた症例が骨転移後の予後が不良であると考えられた.
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症例
  • 高橋 龍司, 中川 志乃, 井上 有香, 赤司 桃子, 桃崎 征也, 山口 倫
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1491-1496
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,女性.胸腔内精査の目的で施行した胸部CTにて左乳房腫瘤を指摘され,当科紹介となった.初診時,マンモグラフィと超音波検査にて左傍乳輪部に3.4×2.0×3.3cm大の分葉形腫瘤を認めたが,針生検組織では良悪性の鑑別が困難であった.乳房MRIでの造影所見は悪性パターンを呈し,粘液癌が疑われた.確定診断のために左乳房部分切除を施行した.術後病理組織所見では,乳管上皮周囲で紡錘形筋上皮細胞が増殖し,多彩な組織像を呈していた.一部に粘液産生や軟骨形成を伴い,乳腺多形腺腫と診断した.多形腺腫は唾液腺に好発する良性混合腫瘍であり,乳腺原発は極めてまれである.今回われわれは,粘液癌との鑑別が困難であった乳腺多形腺腫の1例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.
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  • 矢野 健太郎, 安藤 二郎, 水口 知香, 原尾 美智子
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1497-1500
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,女性.1991年12月,右乳癌にて胸筋温存乳房切除術施行.cT2N0M0 stage IIA術後病理では乳頭腺管癌.EIA法にてER(-) PgR(-) (後日,免疫染色にてER(+) PgR(+) HER2(3+)).1996年1月,再発(肝,局所).1996年3月,肝外側区域切除術+胸壁腫瘤切除術施行.1997年11月,残肝再発認め,AC+toremifeneを使用しCR.再度残肝再発認め,2002年6月よりtrastuzumab単独で使用開始しPR.その後,内分泌療法剤や化学療法剤をtrastuzumabとの併用療法・単独療法にて使用し,病勢の進行を抑えている.現在再発より17年経過しているが,外来通院可能な状態である.HER2陽性転移性乳癌に対するtrastuzumab継続療法と化学療法が,長期生存を得るために有効な治療法であると考えられた1例を経験したので報告する.
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  • 丸野 要, 藤野 昇三, 川本 雅司, 水口 國雄
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1501-1505
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    患者は70歳女性で,平成24年9月にMMGにて左乳房に円形の腫瘤陰影を指摘され当科を紹介された.触診では腫瘤は蝕知せず超音波検査で左乳頭直上のAB領域に径0.7cmの円形の低エコー腫瘤を,MRIとCTでは同部に0.8×0.7cmの造影される円形の結節を認めた.針生検にて腺様嚢胞癌(adenoid cystic carcinoma;ACC)と診断した.左乳房部分切除術,センチネルリンパ節生検を施行した.病理組織学的所見では充実型(Roの分類Grade III)のACC,pT1,ly0,v0,NG1,pN0(0/4),Stage I,ERは陽性,PgR・HER2は陰性であった.本邦ACCの報告71例のうちER陽性症例は自験例を含めて3例であり,本症例はJ-scoreのScore3aと最も高値であった.病理組織学的所見を参考にして悪性度を正確に診断し,術後の治療方針を決定することが重要であると考える.
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  • 松田 信介, 永井 盛太, 小林 基之, 鈴木 英明
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1506-1510
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    患者は59歳女性で,34歳時,左B領域の乳癌で乳房切除・腋窩リンパ節郭清を受けた.T1(1.0×0.8cm),N0,M0,病期I,充実腺管癌であった.乳癌術後13年,血中CEAが14ng/mlと上昇,CTで肝S4に大きさ3.5cmの多血性の腫瘤がみられた.乳癌肝転移の診断で肝左葉切除を施行した.摘出標本では5個の腫瘍がみられ,いずれも肝鎌状間膜の近傍に存在した(S4;2個,大きさ3.5cm,1.2cm,外側区域:3個,大きさ0.5-0.7cm).病理検索で肝腫瘍は乳癌の肝転移と診断され,ER(+),PgR(+)であった.術後CEF療法,エキセメスタン内服を行い,肝切除後12年再発なく健在である.原発乳癌の部位がB領域で,すべての肝転移巣が肝鎌状間膜近くに存在しており,転移経路として乳房から腹直筋を通って肝鎌状間膜近傍の肝臓へ至るリンパ路を介したリンパ行性肝転移の可能性が考えられた.
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  • 崎濱 久紀子, 大友 直樹, 植田 雄一, 牧野 裕子, 島尾 義也, 林 透
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1511-1515
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は36歳,女性.HIV感染症に対してantiretroviral therapy(ART)療法を施行されていた.2012年7月に乳癌検診で異常を指摘され当院紹介となった.針生検でinvasive carcinomaの診断であり,右乳癌T2N0Mxに対して手術を予定した.術後補助療法を考慮し,事前に抗HIV薬の変更を行ったのち乳房切除術およびセンチネルリンパ節生検を施行した.センチネルリンパ節は陰性であり,最終病理診断はpapillotubular carcinoma with predominant intraductal componentであったため術後補助療法は施行せず経過観察を行っている.HIV感染症に対する治療の進歩に伴い,近年では非AIDS指標癌(non-AIDS-defining cancer,以下NADC)が予後を規定する因子として重要な位置づけとなりつつある.本邦におけるNADC乳癌の報告例は少ないが今後増加することが予想される.今回,日本人女性のNADC乳癌の1症例を経験したので報告する.
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  • 戸田 道仁, 岩田 隆, 花田 庄司, 柄川 千代美, 沖代 格次, 三浦 拓也
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1516-1522
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    46歳,女性.右乳癌術前精査の胸部CTにて左肺門部に腫瘤像を認め当科紹介.血管造影検査で左肺底区域動脈枝の欠損と下行大動脈から左肺底区域へ流入する異常血管を認め,気管支鏡検査では気道系に異常はなく左肺底区動脈大動脈起始症と診断した.肺循環系の異常はあるものの,全身状態は良好であるため右乳癌および左肺底区動脈大動脈起始症の同時手術を施行した.まず,仰臥位にて右乳腺部分切除術を先行し,右側臥位とし胸腔鏡下に手術を行った.左S6を除く左肺下葉底区域の臓側胸膜に血管拡張を認めた.下肺靱帯内の大動脈から肺内へ流入する血管を自動吻合器にて切離した後,左肺下葉を摘出した.切除標本にて異常血管は左肺底区に拡張蛇行しながら流入し内膜の拡張と中膜の肥厚像を呈していた.乳癌は非浸潤型管状腺癌p-TisN0M0で,第7病日に軽快退院,術後残存乳腺に対し50Gyの術後照射を追加し,術18カ月後の現在無再発経過中である.
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  • 末松 義弘, 河田 光弘, 岡村 賢一, 森住 誠
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1523-1526
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は41歳,女性.2012年1月,Stanford A型急性大動脈解離を発症し,他院にて緊急上行大動脈置換術+大腿動脈-大腿動脈バイパスが施行された.同年4月のCTにて上行大動脈の人工血管中枢側吻合部の仮性動脈瘤を指摘され,当院に紹介された.仮性動脈瘤の増大および大動脈閉鎖不全の悪化にて手術目的にて入院.術中,再開胸時にワイヤーを解いたところ,ワイヤー孔から大出血をきたし,吻合部仮性瘤内に胸骨ワイヤーが埋没していたものと考えられた.その後,大腿動静脈経由にて体外循環を開始し,大動脈基部置換術+CABG×1を施行した.術後創感染にてVAC療法を要したものの第50病日に軽快退院となった.
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  • 室井 大人, 菅原 学, 井原 啓佑, 宮地 和人, 中島 政信, 加藤 広行
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1527-1531
    公開日: 2014/12/28
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    症例は76歳,女性.転倒による腰部打撲にて当院整形外科受診し,胸部レントゲン写真にて右胸腔内に異常ガス像を指摘され当科紹介となった.上部消化管造影検査,造影CT検査で食道裂孔ヘルニアに合併する胃軸捻と診断し,開腹手術にてヘルニア修復術施行した.手術所見では,臓器軸性に捻転した胃体部がヘルニア内へ陥入していたため用手的に還納すると,食道裂孔右側にヘルニア門を認めた.食道裂孔とヘルニア門の間に脆弱な右横隔膜脚の介在を認めた.ヘルニア門は約5cmと大きく,介在する横隔膜組織が脆弱であったため,パリテックスTMバイアタルメッシュ3Dにて修復を行った.術後経過は良好で現在まで再発症状は認めていない.傍裂孔ヘルニアはまれな疾患であり,右側発症の症例は本邦では1例のみと極めてまれである.今回,われわれは胃軸捻を伴う右横隔膜傍裂孔ヘルニアの1例を経験したので若干の文献的考察を含めて報告する.
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  • 小倉 淳司, 井上 昌也, 岡田 禎人, 林 英司, 前田 隆雄, 岸本 拓磨
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1532-1536
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    患者は42歳女性で,発熱・前胸部痛・左肩痛を主訴に受診した.精査の結果,左膿胸の診断で入院した.第7病日摂食後に胸腔ドレーンより残渣物が排出されたため外科紹介となった.胸腹部CTで左膿胸を認め,上部消化管内視鏡検査で胃穹窿部に潰瘍性病変を認めた.造影すると膿瘍腔が造影された.以上より,胃穿孔による左膿胸と診断した.感染コントロールが良好であり,癌が否定しきれなかったためPPI・抗生剤での保存治療を先行した.病理組織学検査所見では悪性所見は認めなかった.上部消化管内視鏡検査を再検すると,潰瘍底が穿通し瘻孔が太く造影されたため,第57病日に横隔膜合併胃部分切除術を施行した.術後経過は良好で術後 28日目に退院した.術後の病理組織学検査所見でも悪性所見は認めなかった.今回われわれはBochdalek孔ヘルニアに嵌頓した胃の穿孔によると思われた膿胸の1例を経験したので文献的考察を含め報告する.
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  • 和氣 仁美, 松原 毅, 平原 典幸, 百留 亮治, 木谷 昭彦, 田島 義証
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1537-1541
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は70歳台,男性.嚥下時の咽頭違和感を主訴に来院.食道入口部から胸部上部食道にかけての進行頸部・胸部食道癌の診断で,2011年4月,胸腔鏡下食道全摘,咽頭喉頭合併切除,3領域リンパ節郭清,胃管・遊離空腸再建,永久気管孔造設術を施行した.術後10日目に経口摂取を開始したが,術後23日目に永久気管孔から唾液漏出が出現し,遊離空腸-胃管吻合部から永久気管孔への瘻孔形成を認めた.絶食・経腸栄養管理を行い,直視下に瘻孔の縫合閉鎖,また,血液凝固第XIII因子製剤投与を試みたが改善は得られなかった.そこで,octyl-2-cyanoacrylate(ダーマボンド®)を瘻孔内に2度注入・充填したところ唾液の漏出は認められなくなり,その後,再発することなくリハビリ目的で転院となった.以上,難治性腸管皮膚瘻に対してoctyl-2-cyanoacrylateの注入・充填は非侵襲的で有用な治療法と思われた.
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  • 九十九 悠太, 河本 和幸, 高木 弘誠, 山口 和盛, 伊藤 雅, 小笠原 敬三
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1542-1546
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.2012年4月,朝食摂取後にむせが続くとのことで当院救急センター受診.受診時,背部痛を訴えたため胸腹部造影CT検査を施行したところ,縦隔気腫・右胸水を認めた.食道造影で気管分岐部やや尾側の中部食道より右胸腔内への造影剤漏出を認め,特発性食道破裂と診断し,緊急手術の方針となった.右開胸で手術開始,気管分岐部より約2cm尾側の食道右壁に3cm大の穿孔部位を認めた.穿孔部は単純縫合閉鎖の後,胸膜パッチで被覆し,胃瘻を造設して手術を終了した.術後縫合不全を発症したが,保存的加療で軽快した.特発性食道破裂は下部食道が90%と大部分を占め,中部食道の破裂の報告は少ない.手術に際しては縫合不全の発症率が高いことを考慮し,単純縫合閉鎖ではなく,何らかの組織で閉鎖部を被覆することが必要であり,術後栄養管理には胃瘻または腸瘻造設が有効と考える.
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  • 尾島 敏康, 中森 幹人, 中村 公紀, 岩橋 誠, 勝田 将裕, 山上 裕機
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1547-1550
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は68歳の女性,胸部食道癌に対し,食道癌根治術を行った.術後13日目より多量の胸水貯留を認め,乳糜胸と診断した.胸腔ドレナージを施行し,完全静脈栄養を開始,利尿剤やアルブミン製剤を投与するも胸水量の減少を認めなかったため,18~28日目まで,オクトレオチド・エチレフリンの持続静注を開始した.胸水量は著明に減少したため,24日目と31日目に胸膜癒着術を施行した.32日目には胸水排液は完全消失した.オクトレオチド投与に伴い,脂肪吸収を抑制し乳糜流量を減少させ,またオクトレオチド・エチレフリン投与にて胸管の平滑筋収縮を促し,乳糜の漏出が消退したとされる.さらに,胸水排液量が減少したところで胸膜癒着術を併用することで完全に治癒することが可能であった.乳糜胸に対する本薬剤治療は副作用もなく安全かつ効果の高い治療法と考えられた.
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  • 中嶌 雅之, 永末 裕友, 田中 栄治, 林 亨治, 横溝 博, 平田 稔彦
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1551-1555
    公開日: 2014/12/28
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    症例は65歳,男性.平成21年4月上旬に心窩部痛を主訴に近医受診し,上部消化管内視鏡検査で胃癌と診断され,治療目的で当院紹介受診した.6月下旬に腹腔鏡補助下幽門側胃切除,Roux-en-Y再建術を施行した.術後4日目に十二指腸断端の縫合不全と診断し,術後9日目,開腹ドレナージ術を施行した.初回手術後14日目から食事を再開した.食事摂取量は20から70%程度であり,末梢血管から輸液の補充を行った.初回手術後43日目から意識障害が出現し,48日目に頭部MRIを施行し,Wernicke脳症,Korsakoff症候群と診断した.その後,末梢静脈からビタミン剤の投与を行った.運動障害は改善を認めたが,作話や短期記憶障害の精神症状は残存した.12月中旬に自宅退院とし,以後外来で経過を観察している.非アルコール性のWernicke脳症,Korsakoff症候群はまれな病態であり,文献的考察を加えて報告する.
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  • 及川 芳徳, 村田 祐二郎, 坂東 道哉, 森 正樹, 佐藤 裕二
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1556-1561
    公開日: 2014/12/28
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    症例は30歳,男性.左背部痛・発熱で当院受診され,白血球数14,200/ul,CRP 23.09mg/dlと炎症反応高値を認め,腹部造影CTで胃体上部大弯側の胃壁内に7cm大の液体貯留像を認め胃壁膿瘍の診断で入院となった.
    PIPC/TAZ投与を開始し,CT上で胃壁膿瘍の一部が左胸壁内に連続していたため,入院後第3病日にCTガイド下経皮的穿刺ドレナージ+ピッグテール型胆管用カテーテル留置を施行し,その後は経過良好で第20病日に退院となった.穿刺排液培養からはBacteroides uniformisが検出された.胃壁膿瘍はまれな疾患で胃粘膜下腫瘍の診断で胃切除術が施行される場合もあるため,感染症状を伴う胃粘膜下腫瘤の鑑別診断として本症を念頭に置くことが重要であり,胃壁膿瘍と診断しえた場合には内視鏡的または経皮的ドレナージや抗生剤投与にて胃切除術を回避できる可能性がある.
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  • 堅田 朋大, 桑原 史郎, 登内 晶子, 眞部 祥一, 須藤 翔, 片柳 憲雄
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1562-1567
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    患者は48歳,男性.検診にて異常を指摘され,上部消化管内視鏡検査にて胃体下部後壁に径20mm大の粘膜下腫瘍を認めた.腫瘍頂部のびらん面の生検では,類円形核と好酸性細胞質を有する細胞が胞巣状に増生する所見を認めた.免疫染色にてchromogranin A,synaptophysin陰性であり,胃グロムス腫瘍と診断した.外科的切除の方針とされ,内視鏡的胃全層切除術(CLEAN-NET)を施行した.術後,現在まで再発所見なく,経過観察中である.CLEAN-NETは腫瘍を腹腔側に露出することなく切除可能であり,びらん面を伴う粘膜下腫瘍に対して有効な術式と考えられた.
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  • 松本 亮一, 林田 良三, 田尻 健亮, 吉山 康一, 尾崎 邦博, 西村 寛
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1568-1572
    公開日: 2014/12/28
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    症例は68歳,女性.噴門部胃癌の診断にて胃全摘術を行った.術後病理診断はT4a,sci,ly3,v1,pPM1,pDM0,N2,M0,pStage IIIBであった.術後補助療法として,テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム(以下TS-1)内服を開始したが高度の食欲不振を認めたため,服用後4カ月で内服中止した.以降は定期的な画像診断にて経過観察を行ったが,術後18カ月の腹部超音波検査にて胆嚢に不整な壁肥厚を認めた.胆嚢癌疑いにて胃全摘術から20カ月後に,胆嚢摘出術を行った.術中肉眼所見では胃癌の腹腔内再発は認めなかった.術後病理診断は胆嚢粘膜に病変を認めず,粘膜下層から筋層主体の印環細胞癌であり,胃の印環細胞癌と病理組織像は同一であった.以上より胃癌の胆嚢転移と診断した.今回われわれは,極めて稀な胃癌の胆嚢転移の1症例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.
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  • 澤田 尚人, 星野 敢, 藤城 健, 河野 世章, 阿久津 泰典, 松原 久裕
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1573-1576
    公開日: 2014/12/28
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    症例は74歳,男性.51歳で食道癌に対し,他院で胸部食道亜全摘胸骨前胃管再建術を施行.術後23年後に腹部違和感を主訴に近医受診し,胃管癌の診断で当科紹介受診となる.内視鏡検査では胃管下部大弯側に1.5cmの不整隆起性病変を認め,sm浸潤が疑われた.CTで原発巣は不明瞭であり,転移所見を認めず.腫瘍に対して分節部分切除を施行した.病理結果では低分化型腺癌を主体とした腫瘍であり,胃管癌,type 0-I,SM2,ly2,v2,N0,stage IAの診断となった.退院後8カ月目のCT検査で多発肝転移が指摘された.AFPが1,798ng/mlと上昇を認めた.改めて原発巣の免疫組織学染色を行ったところ,AFP免疫染色にて管状腺癌成分にびまん性の強陽性を呈した.肝動注療法と全身化学療法にてPRとなり,AFPも157ng/mlと低下した.その後も全身化学療法を継続するが,術後2年3カ月で永眠となった.
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  • 豊川 貴弘, 六車 一哉, 田中 浩明, 久保 尚士, 大平 雅一, 平川 弘聖
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1577-1582
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は76歳の男性で,68歳時に左前胸部皮膚悪性黒色腫に対して摘出術が施行されている(T3aN0M0:Stage IIA).黒色便,貧血の精査加療目的で紹介された.上部消化管内視鏡検査で胃体上部後壁に2型腫瘍を認め,生検で悪性黒色腫と診断された.また,同時に多発皮膚転移も認めた.胃の転移巣から出血を認めたため,胃部分切除術,膵尾部・脾臓合併切除術を施行した.病理組織検査で転移性胃悪性黒色腫と診断された.術後,ダカルバジン単独療法を2コース行ったが,小脳転移からの出血を発症し,胃切除術後5カ月で永眠された.転移性胃悪性黒色腫の切除例の報告は少なく,若干の文献的考察を加えて報告する.
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  • 鈴木 敏之, 若山 昌彦, 松本 裕史
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1583-1587
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,男性.食欲不振を主訴に受診した.精査の結果,後腹膜気腫・縦隔気腫・頸部の皮下気腫を伴う十二指腸潰瘍穿孔を疑った.症状は軽微であったので,プロトンポンプ阻害剤と抗生剤による保存的療法を実施後,N/Gチューブから造影剤と上部消化管内視鏡検査で確定診断した.その後,経口摂取を開始し,20日目に退院となった.十二指腸潰瘍穿孔による,広範囲な後腹膜気腫・縦隔気腫・頸部の皮下気腫の症例は比較的少なく,まれな症例である.縦隔への炎症の波及は,重症化の可能性もあるため注意が必要であるが,保存的療法が有効な症例も存在する.
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  • 金子 博和, 加藤 岳人, 鈴木 正臣, 柴田 佳久, 平松 和洋, 吉原 基
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1588-1592
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は28歳,女性.右膝痛を主訴に当院を受診した.精査の結果,右膝から後腹膜に及ぶガス壊疽の診断で,デブリードマンと後腹膜ドレナージを施行した.術後7日目に後腹膜のドレーンより食物残渣が排出され,ドレーン造影で十二指腸が造影された.全身状態は比較的落ち着いていたので,まずは保存的にドレーン管理を行ったが,術後10日目より高熱が出現し後腹膜ドレーンより便汁様排液を認めたため,十二指腸液による上行結腸穿孔の疑いで緊急手術となった.十二指腸下行脚右側壁に憩室穿孔と思われる穴を認め,単純縫合と大網被覆を行った.上行結腸は外部からの炎症で色調が悪かったので右半結腸切除も併せて施行した.経過は概ね良好で術後27日目で右大腿部創処置とリハビリのため整形外科転科となった.十二指腸穿孔において大腿部ガス壊疽と初期診断されることは比較的まれであり若干の文献的考察を加えて報告する.
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  • 日景 允, 井上 宰, 臼田 昌広, 加藤 貴志, 水井 崇浩, 望月 泉
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1593-1596
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    患者は73歳,男性.S状結腸癌・直腸腺腫に対し,腹腔鏡下低位前方切除術を施行した.S状結腸癌と直腸腺腫が距離的に離れていて切除範囲が広かったため,脾弯曲部まで結腸を広範に授動し,吻合再建した.骨盤左側よりドレーンを留置し,骨盤右側のみ腹膜を縫合閉鎖した.術後5日目より腸閉塞を発症し,保存的治療で改善しないため,術後15日目に腹腔鏡下腸閉塞解除術を施行.小腸が左骨盤腔の腹膜欠損部に入り込んでいたため,小腸を整復後,骨盤底左側の腹膜修復を行った.腹腔鏡下低位前方切除では骨盤底での腹膜欠損部からの腸管脱出に伴う腸閉塞発症を予防するため,可能な限り腹膜修復を行うべきと考えられた.
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  • 川越 勝也, 濵崎 景子, 石川 啓, 角田 順久, 福岡 秀敏, 稲村 幸雄, 岩崎 啓介
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1597-1601
    公開日: 2014/12/28
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    症例は20歳男性で,全身の紫斑および下腿浮腫を認め,近医を受診した.腹痛も認め,Schönlein-Henoch紫斑病を疑われ,当院皮膚科に紹介となった.同日よりステロイド療法が開始され,翌日より安静目的に入院となった.入院2日目に腹痛の増強および血便を認めた.造影CT検査で回腸―回腸型の腸重積を認め,手術目的に当科紹介となった.全身麻酔下に腹腔鏡下整復術を予定するも,腸管浮腫・肥厚および腸間膜の出血斑を認めるのみで腸重積は解除されおり,試験開腹となった.術後,腹痛および血便が再度出現し,Schönlein-Henoch紫斑病の増悪と判断した.
    Schönlein-Henoch紫斑病と腸重積症は腹痛,血便といった同様の症状を認めることから鑑別に苦慮する.手術を検討する場合,腹腔鏡下手術は低侵襲であり,診断と治療が同時に可能であり有用である.
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  • 水野 文, 園田 寛道, 清水 智治, 石田 光明, 谷 徹
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1602-1606
    公開日: 2014/12/28
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    症例は22歳,男性.39度の発熱,腹痛と下痢を認め,急性腸炎と診断され,他院にて抗菌薬の投与を受けたが,2週間以上改善を認めなかった.腹部造影CT検査で上腸間膜動静脈および回腸枝周囲の腫大した最大径36mmのリンパ節が集簇していた.診断と治療目的に当科にて開腹下に回腸末端の腸間膜リンパ節を生検し,病理組織学的検査にて壊死性リンパ節炎と診断された.術後,予防的抗菌薬を7日間投与した.術後10日目の腹部造影CTにて最大リンパ節は28mmまで自然縮小し,発熱も認めなかったため退院した.術後5週間の腹部造影CTにてリンパ節は10mm程度まで縮小し,以後再発は認めていない.本症例は,確定診断までに長時間を要し,結局開腹リンパ節生検を要したが,当初から本疾患が念頭にあれば手術を回避できた可能性もある.抗菌薬等に反応しない遷延する発熱を認めた場合には壊死性リンパ節炎を念頭において診断,治療を行うべきであると考えられた.
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  • 河内 順, 磯貝 尚子, 下山 ライ, 三宅 克典, 荻野 秀光, 渡部 和巨
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1607-1610
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,女性,検診の腹部エコーで下腹部腫瘍を指摘された.MRIで約11cmの骨盤内腫瘤を認め,漿膜下子宮筋腫の診断で本人希望で経過観察となったが頻尿が出現し,初診から1年7カ月後に手術となった.開腹所見は回腸間膜基部の腫瘍であった.腫瘍を核出して間膜を閉鎖し,手術を終了とした.術後の病理組織診断はaggresseive angiomyxomaであった.本疾患は若い女性の外陰部から骨盤に好発するが,それ以外の部位に発生すことは稀である.再発の多い腫瘍でもあり,今後も慎重な経過観察が必要と思われた.
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  • 矢澤 貴, 大木 進司, 門馬 智之, 鈴木 聡, 中村 泉, 竹之下 誠一
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1611-1615
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は70歳台の男性.発熱,咳嗽,下痢を主訴に当院救急搬送となった.腹部CT検査にて膿瘍を伴う虫垂炎と回結腸静脈からSMVに進展する静脈血栓を認め,SMV血栓症と診断された.虫垂炎に対し,同日,回盲部切除・洗浄ドレナージ術が行われ,術後はSMV血栓症に対し抗凝固療法と抗菌薬治療を行った.術後経過は良好で,ワーファリンコントロールの安定した17病日に退院,外来で血栓の消失を確認後にワーファリン内服を中止した.虫垂炎に併発したSMV血栓症の報告は本邦では9例と比較的少なく,一部では重症化する症例も報告されている.若干の文献的考察を加え報告する.
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  • 西尾 康平, 渋谷 雅常, 永原 央, 大谷 博, 前田 清, 平川 弘聖
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1616-1620
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は46歳,男性.急性骨髄性白血病の診断の下,化学療法を施行.治療開始後3日目より右下腹部痛が出現し,4日目の精査で急性虫垂炎と診断した.白血球200/μl,好中球132/μlと低値であったが,右下腹部に限局する腹膜刺激症状を認め,腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.術後白血球は100-200/μlと低値が続き,CRPは17-22mg/dlと炎症反応の上昇が遷延した.術後6日目に腹部CTを施行し,創部に蜂窩織炎を認めるものの明らかな膿瘍形成は認めないため,抗生剤による保存的治療を継続した.術後14日目頃より白血球の上昇とそれに伴ってCRPの低下および蜂窩織炎の改善を認め,術後28日目軽快退院となった.今回われわれは白血病患者の骨髄抑制期に発症した急性虫垂炎に手術を施行し,術後炎症所見が遷延したが骨髄機能の回復に伴い炎症反応の改善をみた1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
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  • 藤井 一博, 亀田 久仁郎, 森 康一, 三宅 益代, 宮本 洋, 久保 章, 竹川 義則
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1621-1626
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は41歳,男性.受診前日の夕方より左側腹部痛が出現した.症状が徐々に増悪したため,近医を受診したところ急性腹症と診断され,当院救急搬送となった.腹部所見では心窩部に筋性防御を伴う腹膜刺激徴候を認めた.精査の腹部CTでは横行結腸近傍の腸管外にair densityを認め,同部位周囲の脂肪織濃度は著明に上昇していた.腹部所見・CT所見より横行結腸穿孔と診断し,同日,緊急手術を施行した.開腹所見から横行結腸憩室炎に伴う腸間膜内穿通と診断し,横行結腸部分切除術を施行した.切除標本で粘膜面から腸間膜内へ交通する2mm大の穿通部位を認めた.術後経過は良好で第10病日に退院となった.
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  • 井上 亨悦, 林 啓一, 佐瀬 友彦, 井伊 貴幸, 山並 秀章, 富永 剛
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1627-1631
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,女性.80歳時に虚血性大腸炎で保存的加療を受けている.大腸内視鏡検査前処置のピコスルファートナトリウム内服直後に腹痛と腹部膨満が出現し,翌日,症状の増悪と共に38℃の発熱を生じた.腹部CT検査でS状結腸捻転を疑い整復目的に大腸内視鏡検査を施行し,S状結腸粘膜は暗青紫色を呈したため,S状結腸捻転による腸管壊死と診断し開腹手術を施行した.開腹時S状結腸捻転はなかったが,S状結腸は壊死しており,S状結腸を切除し人工肛門を造設した.腸管の主要血管に閉塞はなく,ピコスルファートナトリウムで誘発された壊死型虚血性大腸炎と診断した.下剤で虚血性大腸炎が発症することは知られており,大抵の症例は保存的加療で軽快する.しかし,本症例のように腸管壊死に至る症例もあり,特に便秘症や腸管の癒着狭窄が疑われる場合は大腸内視鏡検査前処置の下剤使用に留意が必要と考えられた.
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  • 平木 咲子, 石井 亘, 飯塚 亮二, 榊原 謙
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1632-1635
    公開日: 2014/12/28
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    症例:58歳,男性.現病歴:進行S状結腸癌・多発肝転移にてbevacizumab併用化学療法を施行していた.S状結腸癌より口側に狭窄を認めイレウス症状を呈したため,最終投薬日より13日後,腸管ステント留置.留置後7日目に下腹部痛を認め軽快しないために搬入.経過:腹部CT検査にて,腹腔内遊離ガスと少量の腹水およびステント留置の腸管壁に壁肥厚を認めたために腸管ステントによる穿孔と診断し,同日,緊急開腹手術を施行.手術所見:腹腔内には多量の便汁を認め,腸管ステントの口側に穿孔部を認めた.腸管ステントと狭窄部を含む腸管を合併切除しHartmann手術とした.考察:切除不能な悪性腫瘍による大腸狭窄に対して,近年,狭窄部に対するステント留置術の有効性が報告されている.しかし,bevacizumab併用化学療法中に腸管ステントの留置は,腸管穿孔の危険を増大させる可能性があり,慎重に検討する必要がある.
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  • 三島 圭介, 塩谷 猛, 渡邉 善正, 南部 弘太郎, 小峯 修, 内間 久隆
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1636-1641
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は87歳,男性.腹部膨満を主訴に他院を受診し,S状結腸癌イレウスと診断されself-expandable metallic stent(SEMS)を留置された.4日後に左下腹部痛が出現したため救急要請し,同院にて消化管穿孔と診断され手術目的で当院紹介となった.同日緊急手術となり,SEMSの口側端に接した腸管に穿孔を認め,S状結腸切除・吻合術と横行結腸に人工肛門造設術を施行した.術後経過は良好だったが,術後64日目に既往の心筋梗塞が悪化し,心不全のため死亡した.
    大腸癌狭窄に対するSEMS療法は2012年から本邦でも保険適応となり,標準治療の一つとして急速に認識されてきた.しかし,SEMS留置は必ずしも安全な手技ではないため,目的に合わせて経肛門的イレウスチューブと使い分けることが肝要であると考えられた.
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  • 笠原 桂子, 山本 聖一郎, 藤田 伸
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1642-1646
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の女性で,会陰部不快感を主訴に前医を受診した.精査にて下部直腸癌,膣浸潤と診断され,当院での治療を希望し来院した.直腸診では肛門縁より1.5cm口側に左側前壁を中心とした半周性の易出血性の2型腫瘤を触知し,内診では膣前庭部に2cm大の隆起性病変を認めた.直腸および膣の両病変から生検を施行し,腺癌の診断であった.直腸診,内診およびCT/MRI所見では直腸と膣の病変には連続性は認めず,膣病変は直腸癌の孤立性膣転移と診断した.腹会陰式直腸切断術,膣部分切除術,左側方リンパ節郭清術を施行した.術後補助療法として骨盤腔に60Gyの放射線療法を行い,術後4年を経過し無再発生存中である.大腸癌の孤立性膣転移の報告はまれであり,その臨床病理学的特徴について文献的考察を加えて報告する.
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  • 升田 貴仁, 早田 浩明, 滝口 伸浩, 外岡 亨, 山本 宏, 宮崎 勝
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1647-1652
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,女性.29歳時に左尺骨骨肉腫,32歳時に左乳癌,37歳時に右乳癌,39歳時に左乳癌局所再発,40歳時に左乳癌皮膚転移に対して手術を施行.父に胃癌,平滑筋肉腫,食道癌を認めていた.遺伝性腫瘍症候群であるLi-Fraumeni syndromeと診断されていた.肛門部痛にて精査の結果,肛門管癌と早期胃癌の診断となった.肛門管癌と早期胃癌に対して腹会陰式直腸切断術および胃部分切除術を同時に施行した.肛門管癌は病理検査でpagetoid spreadを伴うmucinous adenocarcinomaの診断であった.断端陽性となり後日追加切除術を施行した.Pagetoid spreadを伴う肛門管癌およびLi-Fraumeni syndromeは共に稀な疾患である.われわれが検索した限りでは両疾患を認めた報告は認めなかった.非常に稀な症例を経験したので報告する.
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  • 細野 知宏, 川村 統勇, 川村 武, 佐々木 邦明
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1653-1658
    公開日: 2014/12/28
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    症例は72歳,女性.総胆管結石にて治療中,外来のCT検査にて内視鏡的逆行性胆道ドレナージステント(endoscopic retrograde biliary drainage stent:以下,ERBD stentと略す)が逸脱し回腸末端に存在していることが判明した.逸脱発覚後9日目に37.7度の発熱と下腹部痛が出現し入院した.下部消化管内視鏡検査にてERBD stentがS状結腸憩室に嵌頓していた.内視鏡下にstentの抜去が可能であったが,抜去後に腹痛が増悪し,S状結腸憩室穿孔による腹膜炎が生じた.保存的治療が困難と判断し緊急手術を施行した.手術はS状結腸憩室穿孔部位の楔状切除術,単純閉鎖術を施行した.Stent留置に伴う合併症はしばしば経験されるが,逸脱したstentが原因で消化管穿孔をきたした症例はまれであるため報告する.
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  • 井ノ口 健太, 貝原 聡, 阪本 裕亮, 木下 裕光, 岡田 和幸, 山本 健人, 市川 千宙, 今井 幸弘
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1659-1663
    公開日: 2014/12/28
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    症例は67歳,女性.黄疸を主訴に近医受診,磁気共鳴胆道膵管造影にて下部胆管閉塞を認め当院消化器内科に紹介.CTで下部胆管に20mm大の腫瘍を認め,胆管は閉塞していた.膵頭部背側に腫大したリンパ節を認めた.内視鏡的逆行性胆道膵管造影では胆管内に突出する内部不均一,境界明瞭な腫瘤を認めた.ポジトロンCTでは下部胆管の腫瘤にSUVmax=5.6の集積を認め,CTで指摘されたリンパ節も軽度集積を認めた.下部胆管癌の診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行したところ,膵頭部に白色腫瘤を認め,その上流の胆管は著明に拡張していた.またリンパ節#13に転移を認めた.組織像では腫瘍細胞は胞巣状~シート状に配列し,周囲組織に浸潤していた.免疫染色に加え,MIB-1 indexおよび核分裂像から,2010年WHO分類においてNET G2に相当する胆管原発の神経内分泌腫瘍と診断した.
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  • 佐原 八束, 加藤 祐一郎, 本多 正幸, 後藤田 直人, 高橋 進一郎, 小西 大
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1664-1669
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.心窩部痛を主訴に近医受診.胆管・膵管拡張を指摘され当科紹介.腹部CTで早期相から造影され,後期相で膵実質との境界が不明瞭となる下部胆管の壁肥厚を認め,膵浸潤を伴う下部胆管癌の所見であった.混合型IPMNの合併も疑われた.亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本では,下部胆管を主座とする長軸方向49mm大の比較的境界明瞭な隆起性病変で,組織学的に,腫瘍細胞は胞体内にPAS(+),Alcian-blue(+)の粘液を含有し,類円形~不定形の核が偏在して認められ,印環細胞癌の所見であった.びまん性の浸潤傾向を呈し,膵前面の脂肪織や十二指腸固有筋層まで浸潤を認めた.IPMNを合併しており,膵頸部で浸潤癌成分を認めた.印環細胞癌は大半が胃に発生し,胆管に発生するものは非常にまれである.びまん性に浸潤傾向を示し,予後不良な疾患とされている.本症例も術後13カ月で再発死亡した.
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  • 佐藤 洋, 土屋 嘉昭, 野村 達也, 梨本 篤
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1670-1673
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.32歳時に先天性胆道拡張症に対して肝外胆管切除・肝管空腸吻合術の既往あり.食思不振を主訴に他院受診し,膵頭部腫瘤を指摘され当院紹介.CTで膵頭部に拡張した総胆管および同部に接する40mm大の腫瘤性病変あり.MRCPでは腫瘍近傍に拡張膵内胆管が描出された.先天性胆道拡張症術後の残存膵内胆管癌と診断し,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理検査結果では,No. 16リンパ節に転移を伴う進行下部胆管癌であった.現在補助化学療法中であり,術後5カ月現在再発はみられていない.本邦の先天性胆道拡張症の術後発癌報告を検討すると,戸谷分類I型の発癌例では残存膵内胆管からの発癌例が4例中3例を占めていた.初回手術時の残存膵内胆管長を短くすることで発癌抑制できると考えられるため,膵管直上での胆管切除の順守が重要である.
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  • 奈良 昌樹, 大石 晋, 室谷 隆裕, 野崎 剛, 吉原 秀一, 舘岡 博
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1674-1677
    公開日: 2014/12/28
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    膵癌術後7カ月目に遅発性乳糜腹水を契機に診断された腹腔内局所再発の症例を経験したので報告する.症例は73歳男性で腹痛の精査にて膵頭部癌と診断され,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行された.病理組織学的には低分化型腺癌,T3,N2,Stage IVaであった.術後S-1による補助化学療法を施行されていたが副作用のため4クールで終了.術後6カ月目のCTでは少量の腹水を認めるのみであった.術後7カ月目に腹部膨満が強くなり腹腔穿刺施行したところ,乳白色の腹水を認め乳糜腹水と診断.オクトレオチド300μg/日を開始したところ,3日後には腹水の減少,排液の中性脂肪値の低下を認めた.その後のCTで上腸間膜動脈周囲に再発所見を認めたためgemcitabineによる化学療法を開始した.乳糜腹水は術後早期の発症の報告が多いが,腹腔内局所再発などにより遅発性に発症する可能性が示唆された.
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  • 沖 豊和, 福留 惟行, 金川 俊哉, 秋森 豊一, 上岡 教人, 花崎 和弘
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1678-1683
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は60歳女性で交通事故による受傷で当院を受診.CTでは右被殻の軽度出血と脾損傷(日本外傷学会脾損傷分類IIIa型)を認めた.入院の直前になって収縮期血圧が50台まで低下.急速補液を行いながらCTの再検査を行ったが脾周囲の血腫増大なく,血液検査でも貧血の進行は認めなかった.入院後は保存的治療を行い,経過順調であったが入院15日目に腹痛と呼吸苦が出現.血圧低下と意識レベルの低下,血液検査での貧血の進行も認めたのでCTを行ったところ,脾周囲の血腫増大を認め遅発性の再出血と診断.血管造影を行い脾動脈の仮性動脈瘤からの出血を認めた.脾下極動脈より塞栓を行い仮性動脈瘤への血流と脾外へ造影剤が漏出していないことを確認した.全身状態は少しずつ改善し入院43日目に退院した.
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  • 家田 敬輔, 沖 彰, 中村 純一, 大曽根 勝也, 佐々木 滋, 桑野 博行
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1684-1689
    公開日: 2014/12/28
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    症例は37歳,男性.左季肋部の腫瘤を自覚し受診.腹部超音波検査・造影CT検査などにより脾下極に連続する長径13cm大の嚢胞性病変を認めた.脾嚢胞と診断し大きさ,有症状であること,悪性の可能性を否定できないことから腹腔鏡補助下脾嚢胞切除術を施行した.脾嚢胞内容物を吸引し,小切開部より脾嚢胞を引き出した.脾の正常部分でソフト凝固と超音波凝固切開装置を使用し脾部分切除術を行い,腫瘤を摘出した.切除した脾嚢胞の大きさは15×15cmであり,病理組織検査で仮性脾嚢胞と診断された.術後経過は良好で第8病日に軽快退院した.脾嚢胞に対してソフト凝固と超音波凝固切開装置を使用した腹腔鏡補助下による脾部分切除は有用な選択肢の一つと考えられた.
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  • 山村 喜之, 斎藤 崇宏, 蔦保 暁生, 鯉沼 潤吉, 村川 力彦, 大野 耕一
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1690-1694
    公開日: 2014/12/28
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    症例は64歳,男性.便潜血陽性を指摘された.精査の結果,直腸癌と診断されたが腹部造影CTで脾臓に約2cm大の腫瘤を認め,直腸癌の転移は否定できなかった.以上より,直腸癌(Rb)並びに転移性脾腫瘍疑いにて腹腔鏡下直腸切断術および脾臓摘出術を施行した.病理診断では直腸癌はtub2>tub1,pMP,ly0,v0,pN0,Stage Iで脾腫瘍は高度のリンパ球・形質細胞浸潤を背景とし紡錘形細胞が束状に増殖していた.免疫染色ではCD21,CD35,CD23すべて陽性でありEBER-1陽性であったため,EBV関連炎症性偽腫瘍様樹状細胞肉腫と診断した.
    EBV関連炎症性偽腫瘍様樹状細胞肉腫は非常に稀で,報告例は検索しうる限り本邦・海外で11例のみであった.今回われわれは,直腸癌術前精査中に発見された脾原発EBV関連炎症性偽腫瘍様樹状細胞肉腫の1例を経験したので文献的考察を加えて報告する.
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  • 池田 宜孝, 加藤 智栄, 吉田 久美子, 小野田 雅彦, 古谷 彰, 河野 和明
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1695-1701
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    患者は81歳,男性.脾原発悪性リンパ腫,Ahmann分類stage 3の診断で化学療法(R-CHOP)が施行されていた.化学療法開始3カ月後の経過観察CTで偶然に胃脾瘻孔が発見された.胃脾瘻孔に対し手術が考慮されたが,1)瘻孔による症状が無い,2)脾原発悪性リンパ腫の予後が極めて不良のため化学治療を優先した.
    胃脾瘻孔発見から3カ月後,突然の出血・ショックのため,緊急で脾臓摘出+胃部分切除+膵尾部および横隔膜合併切除を施行した.術後ショックからは離脱できたが,悪性リンパ腫の急速な進行増悪のため術後33日目に死亡した.脾原発悪性リンパ腫に合併した胃脾瘻孔の外科手術は,以前の報告から腫瘍が限局したAhmann分類のstage 1・2は有効と思われるが,本症例のようにstage 3に進行した症例では極めて困難と考えられた.
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  • 茶木 良, 木村 雅美, 孫 誠一, 長谷川 格, 水越 常徳, 明石 浩史
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1702-1706
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は85歳,男性.糖尿病治療中,スクリーニングで施行された腹部CT検査において多発性肝嚢胞と診断された.内科で経過観察されていたが,嚢胞の増大と腹痛を認めたため,手術目的に外科転科となった.腹腔鏡下に肝嚢胞開窓術が施行されたが,嚢胞壁の病理組織検査で腎細胞癌の肝転移と診断された.患者は22年前に腎癌で右腎摘出手術を受けており,病理組織学的検査においてこの腎癌の再発と考えられた.腎細胞癌は晩期再発をきたしやすい腫瘍であるが,術後20年以上を経て再発することは稀であり,また,嚢胞状肝転移も稀な転移様式であるため,文献的考察を含め報告する.
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  • 島田 拓, 諸橋 一, 渡邉 伸和, 村田 暁彦, 袴田 健一, 平井 秀明
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1707-1711
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    子宮体癌の大腸転移はまれであり,初回手術から転移が発見されるまでの期間も数年以内が大半である.今回われわれは術後15年目に下行結腸浸潤を伴って発症した子宮体癌再発の症例を経験したので報告する.
    症例は50歳台の女性,15年前に子宮内膜癌のため子宮全摘術が施行され,術後は骨盤と大動脈周囲に放射線照射が施行された.術後15年目に左側腹部痛を主訴に近医を受診し,下行結腸近傍に径約8cmの腫瘤が認められた.
    手術目的に当科へ紹介となり,結腸左半切除術が施行された.病変は下行結腸の壁外に主座を有し,組織学的にも子宮内膜癌の像を呈しており,子宮内膜癌大腸転移の診断がなされた.
    極めてまれではあるが,子宮体癌の術後症例では起こりうる病態として注意が必要であり,今後は長期予後を含めた更なる症例の蓄積が必要と考えられた.
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  • 藤井 美緒, 藤田 文彦, 虎島 泰洋, 井上 悠介, 黒木 保, 江口 晋
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1712-1716
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性.全身性エリテマトーデス(systemic lupus erythematosus:SLE)に対し内服加療中であった.2007年頃より腹水による腹部膨満感を訴えるようになり,また2011年12月以降,イレウス症状を反復し,次第に食事摂取困難となった.外科的治療の適応と判断し,2013年2月,手術目的に当科入院となった.身体所見ではBMI 17.9とるい痩を認め,臍下にmass様の腸管を触知した.腹部CT画像では多量の腹水と,偏在し浮腫性変化を伴う小腸を認め,被嚢性腹膜硬化症(encapsulated peritoneal sclerosis:EPS)と診断し手術となった.腹腔鏡を挿入し腹腔内を観察したところ,腹膜は肥厚し一部白色調で,壁側から臓側へ腹腔全体を覆っていた.開腹手術へ移行し,肥厚した膜様組織を剥離・除去を行った.膜様組織の下にはほぼ正常な,浮腫のない小腸が存在した.術後の経過は比較的良好で,創部感染を認めたものの,保存的加療にて軽快した.
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  • 須井 健太, 青木 秀樹, 重安 邦俊, 田中屋 宏爾, 竹内 仁司
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1717-1720
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は42歳,男性.腹痛,腹部膨満感を主訴に近医を受診.投薬を受けたが,症状が改善しないため当院紹介となった.既往歴は特になかった.受診時の腹部CTにて,拡張した上行結腸・横行結腸を認め,胃の小彎側に嵌頓している腸管を認めた.小網裂孔への横行結腸の嵌頓の診断で,同日,緊急手術を行った.術前の診断どおり横行結腸が小網裂孔に嵌頓しており,嵌頓した腸管を引き出した後に,小網裂孔を縫合閉鎖した.小網裂孔ヘルニアは稀な疾患であり,そのうち腸回転異常の奇形を伴わずに結腸が嵌頓した症例は本邦での報告はなかった.内ヘルニアは術前の診断が難しいことが多いが,画像診断技術の進歩に伴い術前の診断が可能となってきており,術前に正確な診断ができれば腹腔鏡による対応も可能と考えられた.
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  • 清水 康博, 上田 倫夫, 林 茂也, 國崎 主税, 遠藤 格
    75 巻 (2014) 6 号 p. 1721-1725
    公開日: 2014/12/28
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.突然の下腹部痛を主訴に当院外来受診した.開腹手術の既往はなく,来院時身体所見は下腹部正中付近の強い圧痛と筋性防御を認めた.腹部超音波検査で圧痛部位に一致して拡張した小腸を認め,腹部CTで下腹部正中付近でclosed loopを認めた.以上より絞扼性イレウスを強く疑い,発症6時間後に腹腔鏡下イレウス解除術を施行した.腹腔内を観察すると,大網から突出するように暗赤色に変色した長さ約20cmにわたる腸管のループを認め,大網が左側腹部に癒着して形成された索状物により絞扼をきたしていた.索状物を切離し絞扼を解除すると腸管の血流は回復し腸切除は行わずに終刀とした.術後経過は良好で第6病日に退院となった.開腹歴のない大網癒着による絞扼性イレウスは稀であり,さらに腹腔鏡手術によりイレウス解除を行い得た症例は稀である.今回われわれは,希少な症例を経験したので文献的考察を含めて報告する.
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