日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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ISSN-L : 1345-2843
75 巻, 7 号
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原著
  • 野水 整, 松嵜 正實, 片方 直人, 佐久間 威之, 菅家 康之, 伊藤 泰輔, 二瓶 光博, 山口 佳子
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1765-1771
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    BRCA遺伝子診断を実施した41家系67例の家族性乳癌および血縁者を対象に,病的変異の有無と家族歴について検討した.また,乳癌50例を対象に遺伝子変異の有無別に臨床病理学的検討を行った.病的変異を検出したのは,発端者診断では41家系中11家系26.8%で,BRCA1は4家系,BRCA2は6家系,BRCA1とBRCA2の両者の変異は1家系であった.濃厚な家族歴を有する乳癌患者での検出率が高かった.変異の有無別での臨床病理学的検討では,発症年齢・両側乳癌の頻度・組織型・術式での乳房切除(全摘)の頻度では差はなく,変異あり群では組織学的リンパ節転移陽性率が高く内分泌反応陽性率が低く,トリプルネガティブ率が高く組織学的悪性度が高かった.BRCA遺伝子診断は,遺伝性乳癌の診断や,乳癌および卵巣癌の一次予防,術式や薬物治療選択の判断に有用である.
臨床経験
  • 橋本 梨佳子, 明石 定子, 吉田 玲子, 沢田 晃暢, 中村 清吾
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1772-1776
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    近年,遺伝性乳癌卵巣癌症候群(HBOC)に対する認識が高まり,濃厚な乳癌・卵巣癌の家族歴や若年発症のトリプルネガティブ乳癌等を契機にBRCA遺伝子検査を受ける患者が増えつつある.当院では,乳癌術前にHBOCと診断された場合NCCNガイドラインに基づき乳房切除術を勧めている.2014年1月現在,当院でBRCA1/2遺伝子変異陽性と診断された患者は紹介患者を含め28人である.28人中10人は初発乳癌の診断後,術前にBRCA検査を受け,8人が乳房切除術を受けた.一方,残りの18人は術後の検査希望あるいは,温存乳房内再発などを契機にBRCA遺伝子検査を受けHBOCと診断された.乳房温存術を受けた17人中7人に温存乳房内再発が認められた.今回当院で経験したHBOCの温存乳房内再発症例を呈示し,遺伝性乳癌に対する今後の至適手術マネージメントについて考察する.
  • 豊川 貴弘, 山下 好人, 山本 篤, 清水 貞利, 寺岡 均, 西口 幸雄
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1777-1782
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    はじめに:イマチニブは転移・再発GISTに対して劇的に治療成績を改善させたが,しばしば部分耐性病変を経験する.イマチニブに部分耐性をきたした転移・再発GISTに対する外科的介入の意義については明らかにされていない.対象と方法:転移・再発GISTに対してイマチニブ投与が行われた18例のうち,部分耐性病変に対して手術を行った5例についてretrospectiveに検討した.結果:転移・再発GISTにおける部分耐性病変はすべて切除できたが,全病変の切除が得られた症例はなかった.術後の無増悪生存期間の中央値は412日で,2年無増悪生存率は20%であった.生存期間中央値は1,051日で,2年生存率は60%であった.結語:イマチニブの部分耐性症例では外科的介入によりbenefitが得られる可能性がある.
  • 小島 成浩, 坂本 嗣郎
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1783-1787
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下鼠径ヘルニア手術におけるメッシュの固定の要否に関して,海外からはtotal extraperitoneal inguinal hernia repair(TEP)法での固定の有無で再発率に有意差はないとする報告がなされているが,本邦からの治療成績に関する報告はない.当院では2004年3月よりTEP法を導入し,以後十分な症例経験を経て,2011年3月からメッシュを固定しないnon-fixation TEP法を基本術式とした.2011年3月から2013年10月までに同法で218症例の手術を施行し,平均術後観察期間20.1カ月において判明している再発は1例(0.46%)であった.確実な手術手技のもとでnon-fixation TEP法は十分継続可能な術式と考えられる.
症例
  • 吉富 誠二, 池田 英二, 宮原 一彰, 安部 優子, 高橋 友香, 大原 信哉
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1788-1793
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は50歳台,女性.頸部腫瘤と呼吸困難を主訴に当科外来を受診した.前頸部に境界明瞭,弾性硬,可動性良好で16×10cm大の巨大な腫瘤を認めた.血中サイログロブリンは2,779U/mlと高値で,CT検査では甲状腺両葉に境界明瞭な腫瘤が多発し,甲状腺は著明に腫大していた.気管は圧排され狭窄し,最狭窄部径は3.2mmであった.穿刺吸引細胞診で悪性所見はなく,多発性であることから腺腫様甲状腺腫を強く疑い手術を施行した.気管内挿管は困難と判断し,経皮的心肺補助装置を準備し局所麻酔下に気管切開を行った.続いて全身麻酔を導入し,甲状腺全摘術を施行した.病理組織検査では腺腫様甲状腺腫と診断された.腺腫様甲状腺腫の経過中でも極めて危険な状態になりうることを認識し,腫瘤の大きい症例や縦隔内に進展した症例には積極的に手術を勧めるべきであると考えた.
  • 市橋 匠, 木船 孝一, 原田 憲一
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1794-1798
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    われわれは皮膚への穿刺経路播種を伴った甲状腺低分化癌の70歳女性例を報告した.卵殻状石灰化を伴った2cmほどの甲状腺腫瘤に対しFNAを行いclass IIであった.3年後に患者は左側頸部の皮膚結節に気付くも老人性の疣とみなしていた.その3カ月後の経過観察CTで甲状腺腫瘤はやや増大し,同日の診察でFNA刺入部に3mmほどの皮膚結節を認めた.甲状腺左葉切除とその皮膚結節切除を同時に行った.どちらの結節も組織学的には甲状腺低分化癌であった.術後3年の現在患者は再発なく健在である.甲状腺低分化癌のFNA穿刺経路皮膚播種例で原発巣と同時に切除した報告としては国内初と思われる.FNA陰性の甲状腺腫瘤の経過観察では頸部のFNA刺入部の視触診も重要である.
  • 大久保 啓史, 宮薗 太志, 青木 大, 三枝 伸二, 福元 俊孝, 夏越 祥次
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1799-1802
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,男性.主訴は頸部腫脹,嚥下時違和感.7年前から頸部腫脹を自覚,2012年9月上旬より嚥下時の違和感が出現したため,当院受診した.CT・エコーで甲状腺右葉癌の診断で甲状腺右葉切除術を施行した.術後第1病日から経口摂取開始,術後第3病日よりドレーンから乳糜の流出を認めた.頸部腫脹・呼吸困難など認めず,絶食・完全静脈栄養にて経過観察していたが,乳糜の流出は改善せず,術後第7病日からオクトレオチドの皮下投与を開始した.投与3日目より乳糜の流出は減少し,計7日間の投与で中止した.その後,術後第19病日から経口摂取再開,乳糜漏の出現なく退院となった.術後乳糜漏の治療は難渋することがあるが,今回オクトレオチドが著効した1例を経験したので,文献的考察を加え報告する.
  • 林 諭史, 北田 正博, 石橋 佳, 松田 佳也
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1803-1806
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    非触知で微細石灰化を伴う乳癌に対し,超音波装置の石灰化検出モード(MicroPureTM)とペルフルブタン(ソナゾイド®)による造影超音波検査(contrast-enhanced ultrasonography:CEUS)で切除範囲を決定した.症例は70歳女性.マンモグラフィで右乳房に不明瞭~多形性・区域性の石灰化を認めた.非触知かつ通常の超音波検査や造影MRIで病変を認めず,マンモトーム生検で非浸潤性乳管癌(ductal carcinoma in situ: DCIS)の診断となった.全身麻酔導入後,MicroPureTMで石灰化を同定し,CEUSで周囲に造影効果を認めた.これをもとに乳房温存手術を施行し,組織軟線撮影で石灰化部分を確認した.病理は13mmのアポクリンDCISで,乳頭側にのみ小範囲でDCISを認めた.両検査の併用で非触知石灰化病変に対し安全・確実に手術を施行できた.
  • 佐塚 哲太郎, 木村 正幸, 太田 拓実, 今西 俊介, 福長 徹, 菅本 祐司
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1807-1812
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    乳癌術後に乳糜漏を認め,保存的加療にて軽快した2症例を経験したので報告する.
    症例1:52歳,女性.前医にて左乳房の浸潤性乳管癌と診断され,当科を紹介受診された.乳房部分切除術+腋窩郭清を施行した.第1病日に留置ドレーンから白濁色の排液を300ml認め,乳糜漏と診断した.第7病日より絶食,中心静脈栄養を開始した.その後,排液は淡血性に変化し,第25病日にドレーンを抜去し,退院とした.
    症例2:63歳,女性.2012年7月頃から左乳房に腫瘤を自覚し,当科を受診された.精査にて浸潤性乳管癌と診断し,乳房部分切除術+腋窩郭清を施行した.第2病日にドレーンから白濁色の排液を680ml認め,乳糜漏と診断した.食事摂取は中止せずに経過観察を行ったところ,ドレーン排液量は漸減し,第10病日にドレーンを抜去し退院とした.
    乳癌術後の乳糜漏は稀な合併症であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 長谷川 聡, 原田 郁, 大田 洋平, 福島 忠男, 泊 咲江, 池 秀之
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1813-1817
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.多発肺骨転移を伴う再発乳癌に対するトラスツズマブとゲムシタビン併用療法を施行中,息切れ・動悸が出現した.トラスツズマブによる心不全を疑った.心電図ではV3-6でSTの上昇および陰性T,V1-3で平坦Tから陰性Tを認めた.心エコーでは心尖部はsevere hypokinesisでEFは47%と低下していた.冠動脈造影では有意狭窄なく,左室造影では心基部のみ収縮し心尖部は高度低収縮であった.以上から,たこつぼ型心筋症と診断した.ハンプ・ヘパリン・フロセミドによる治療を行い,第19病日壁運動は正常化しEF66.6%となり,第26病日に退院となった.化学療法中のたこつぼ型心筋症の報告はまれである.乳癌診療における化学療法では心筋障害を起こしうる薬剤が多いが,鑑別疾患の一つとして,たこつぼ型心筋症も念頭に置く必要がある.
  • 細川 優子, 小倉 廣之, 瀧 由美子, 松沼 亮一, 井手 佳美, 椎谷 紀彦
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1818-1823
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.1987年,他院で左乳癌に対し乳房切除,腋窩郭清を施行された.病理診断は浸潤性乳管癌で,術後タモキシフェンを2年内服.1997年,胸部単純レントゲンにて右肺結節影を指摘され当院呼吸器外科にて右上葉切除施行.病理学的には乳癌肺転移と診断された.術後は経過観察のみで10年間再発所見なく経過した.2011年,労作時呼吸苦が出現し当院耳鼻科にて喉頭鏡を施行.下咽頭に腫瘤が認められ,声帯麻痺を伴ったため,気管切開を施行.精査にて乳癌の下咽頭・左頸部リンパ節転移(ER陽性,PgR陽性,HER2陰性)と診断.アロマターゼ阻害薬投与にて転移巣は縮小し,現在も外来通院中である.
  • 黒田 晶, 武藤 潤, 山村 喜之, 村川 力彦, 大竹 節之, 大野 耕一
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1824-1829
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    降下性壊死性縦隔炎は深頸部の感染症が筋膜間隙を通り縦隔に至る,稀で致死率の高い疾患である.われわれは,膿胸を合併した降下性壊死性縦隔炎に対し胸腔鏡下にドレナージ手術を行い良好な経過を得た.症例は70歳台女性.発熱と咽頭痛を主訴に近医を受診し扁桃周囲炎の診断で加療を行われたが軽快せず,6日後のCTで降下性縦隔炎および右膿胸の診断に至り当院へ搬送された.耳鼻咽喉科と合同で緊急手術を行った.頸部経路上縦隔ドレナージ術・気管切開術の後,右胸腔鏡下に縦隔ドレナージ術および醸膿胸膜切除術を施行した.術後1日目にCTを撮影し非ドレナージ領域がないことを確認した.敗血症に至ることなく経過し,術後55日目に軽快退院した.速やかで的確なドレナージは降下性壊死性縦隔炎の治療において最も重要であり,術前CTでドレナージ経路を計画しておくことと,術後CTで非ドレナージ領域の有無を確認することは有用と考えられた.
  • 竹林 三喜子, 草塩 公彦, 安冨 淳, 松本 正成, 鈴木 大, 宇田川 郁夫
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1830-1835
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は87歳,女性.平成24年9月,排便後より持続する腹痛を主訴に当院救急外来を受診.来院時,酸素飽和度の低下と間欠的な強い腹痛を認めていた.血液検査では貧血と脱水,およびLDHとCKの上昇を認めていたが,代謝性アシドーシスはなかった.各種画像検査で右大量胸水および縦隔の左方偏移を伴った右横隔膜ヘルニアと診断し,緊急開腹手術となった.術中所見では肝右葉直上の右横隔膜にφ3cm大の横隔膜破裂部を認め,同部位より約150cmの小腸が右胸腔内へ脱出し嵌頓していた.小腸は容易に還納でき,胸腔内には凝血塊を含む血性胸水2,100mlを認めた.横隔膜破裂部には脆弱箇所はなかったが全層性に破裂していた.明らかな外傷のエピソードなく,非外傷性右横隔膜破裂と診断した.
    今回,われわれは比較的まれな非外傷性右横隔膜破裂を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 氏家 直人, 菊池 寛, 渡辺 徹雄, 大江 大
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1836-1839
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性.右鎖骨下動脈起始異常を伴う胸部中部食道癌に対して,右開胸開腹食道亜全摘・2領域郭清・高位胸腔内食道胃管吻合(pT1b,pN1(2/31),sM0,fStage II)を施行した.術後化学放射線療法を施行し,明らかな再発を認めず経過していた.術後6年2カ月経過時,大量吐血をきたし当院を受診した.来院時はショック状態であり,上部消化管内視鏡検査で食道胃吻合部からの噴出性出血を認めた.右鎖骨下動脈造影にて右鎖骨下動脈より消化管への造影剤の流出を認めたため,右鎖骨下動脈瘻孔部にステントを留置し止血を得たが,ショック状態の遷延による全身状態の悪化に伴い死亡した.右鎖骨下動脈起始異常を伴う食道癌手術例では,本例のように右鎖骨下動脈再建消化管瘻を発症しうる可能性があるため,再建経路を胸壁前または胸骨後とするか,血管と再建臓器との間に大網などの組織を介在させる必要があるのではないかと考える.
  • 春木 茂男, 滝口 典聡, 伊東 浩次, 有田 カイダ, 松本 日洋
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1840-1845
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は65歳の男性で,2010年2月よりつかえ感を自覚し当院を受診.精査にて胸部食道扁平上皮癌,Lt,2型,cT3N1M1(肝),Stage IVbと診断された.肝転移はS8に直径4cmの単発であった.同年4月より,5-FU/Cisplatin療法を4コース行い,肝転移巣は縮小効果をえたが,原発巣には効果を認めなかった.一方で,Grade4の貧血などの有害事象を呈した.原発巣,転移巣ともに切除可能と判断し食道切除再建術を先行する二期的手術を予定した.9月に右開胸開腹食道亜全摘術を,2011年4月に肝部分切除術をそれぞれ施行した.その後は無治療で経過観察中であるが,治療開始後4年3カ月現在,無再発生存中である.限られた症例ではあるが,一定の条件の下では同時性肝転移に対する集学的治療に外科治療が有用となる可能性が示唆された.
  • 齋藤 裕人, 岡本 浩一, 二宮 致, 伏田 幸夫, 藤村 隆, 太田 哲生
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1846-1852
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性.胸部食道癌に対して胸腔鏡下食道切除術を施行された.組織型は低分化型扁平上皮癌で,pT3(Ad),pN4,M0,pStage IVaであり,リンパ管侵襲・静脈侵襲ともに高度であった.高齢につき,術後補助化学療法は施行しなかった.術後6カ月目に右下腹部痛を自覚し,同部位に腫瘤を触知した.精査の結果,上行結腸に所属リンパ節腫大を伴う2/3周性の3型腫瘍を認めた.生検では既往の食道癌と類似する低分化型扁平上皮癌を認め,腹水貯留やイレウス像,他臓器に明らかな転移や再発を疑わせる所見は指摘できなかった.食道癌上行結腸転移と診断し,結腸右半切除術を施行した.肝転移・腹膜播種はなく,腹腔洗浄細胞診は陰性であった.転移様式は,リンパ行性あるいは血行性転移の可能性が高いと考えられた.非常に稀な食道扁平上皮癌術後大腸転移の1切除例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 蔦保 暁生, 大野 耕一, 齋藤 崇宏, 山村 喜之, 鯉沼 潤吉, 平野 聡
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1853-1856
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    重症心身障害児においては,様々な理由で経皮内視鏡的胃瘻造設術(PEG)が困難な症例が存在する.今回われわれは,高度側彎を伴う重症心身障害児に腹腔鏡下胃瘻造設術を行った1例を経験した.症例は11歳女性.蘇生後低酸素脳症・痙性四肢麻痺にて経過観察していた.外来にて経鼻胃管交換を行っていたが側彎の増悪を認め,挿入困難となってきたため胃瘻造設を予定した.手術は腹腔鏡下に行い,胃の左上方への変位が強く,胃の挙上に伴う変形が危惧されたため,肝円索を臍部近傍にて離断,授動し腹壁から胃まで長さを確保し,肝円索内部を通過するように12Fr胃瘻チューブを挿入した.術後3カ月目に行った胃瘻チューブ交換では,スムーズな交換が可能であった.定期的な胃瘻チューブ交換を長期間必要とする重症心身障害児においては,体型や発育による変位を考慮し,スムーズなチューブ入れ換えの経路を作成することが重要であり,肝円索の利用は有用と考えられた.
  • 鈴木 浩輔, 平下 禎二郎, 内田 博喜, 松本 敏文, 折田 博之, 矢野 篤次郎
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1857-1861
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.統合失調症に対し前医入院加療中で過食傾向があった.頻回の嘔吐および上腹部膨満を認め当科紹介となった.初診時,軽度の上腹部膨満を認めたが腹膜刺激症状は認めなかった.腹部CT検査では著明な胃拡張と多量の胃内残渣,さらに胃壁内気腫を認めたが,腹腔内遊離ガスは認めなかった.緊急手術を念頭に置き経過観察を行ったところ,翌日の腹部CT検査において胃壁の血流低下,胃壁内気腫の増悪とその近傍に腹腔内遊離ガスを認め,壊死性胃気腫症と診断し緊急手術を施行した.開腹すると,血性腹水を認め,胃は穹隆部から前庭部にかけて暗赤色調を呈しており,漿膜面には多数の裂傷を認めたため,胃壊死の診断で,胃全摘術を施行した.病理組織学的検査では,血管炎や動脈硬化・血栓などの血管病変や,穿孔は認めなかった.腹膜炎所見に乏しくとも,胃拡張を伴った胃気腫像を認めた場合には厳重かつ迅速な対応が必要である.
  • 藤井 一博, 亀田 久仁郎, 森 康一, 宮本 洋, 長嶺 弘太郎, 久保 章, 竹川 義則
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1862-1866
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性で,食思不振を主訴に当院受診された.52年前に十二指腸潰瘍にて胃切除術(B-II法再建)を施行した既往があった.精査の腹部CTにて輸入脚の著明な拡張を認め,上部消化管内視鏡検査では吻合部の輸入脚側に3型腫瘍を認め,腫瘍の浸潤により輸入脚は完全に閉塞していた.残胃癌による輸入脚閉塞症と診断し手術を施行した.術中所見にて播種巣を認め,腫瘍の周囲への浸潤も著明であり,根治切除不能と判断した.輸入脚の閉塞を解除する目的でBraun吻合を作成し手術を終了した.術後経過は良好で第13病日に退院となった.
  • 前田 孝, 平松 和洋, 加藤 岳人, 柴田 佳久, 吉原 基, 夏目 誠治
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1867-1871
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は61歳の男性で,検診の上部消化管内視鏡検査にて十二指腸に腺腫を認め,紹介となった.内視鏡所見では十二指腸下行脚後壁の乳頭近傍に約1cm大の0-IIa型隆起性病変を認め,生検で細胞異型を認めた.肛門側にも小隆起性病変を認めたが,生検でBrunner腺腺腫と診断され,悪性像はなかった.
    開腹手術で十二指腸部分切除を行う方法と内視鏡的に十二指腸腺腫を切除する方法を提案し,十二指腸部分切除を行う方針となった.
    手術では,術中内視鏡により病変をマーキングした後,壁外から内視鏡光を透見して切離予定線を確認し,十二指腸を約6×3cmの楕円形に全層部分切除した.切除部は縫合閉鎖した.病理結果は十二指腸腺腫とBrunner腺過形成であった.
    十二指腸乳頭近傍の病変に対して,術中内視鏡を併用することで,低侵襲かつ機能温存に配慮した手術を行うことが可能であったため,報告する.
  • 熊谷 健太, 柏木 宏之, 門間 英二, 野末 睦
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1872-1876
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    患者は62歳男性で尿の黄染を主訴に受診した.腹部CTで十二指腸下行脚に3cm大の腫瘤を認め,ERCPで十二指腸下行脚に不整な潰瘍を認めた.十二指腸癌の疑いで幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.肉眼的病理所見で十二指腸下行脚に31×28×32mmの充実性腫瘍を認め,病理組織所見でN/C比の高い腫瘍細胞の充実性増殖を認めた.免疫組織染色ではsynaptophysin(+)であり,十二指腸神経内分泌細胞癌と診断した.術後47日目に肝転移再発をきたし,CDDP/VP-16療法を4コース行った.一時的にCRとなったが,化学療法終了後に肝転移再発したため,肝部分切除術を行った.術後10カ月目に3度目の肝転移再発を生じたため,再びCDDP/VP-16療法を4コース行ったが,今回は奏効することなく術後19カ月目に永眠された.
  • 九十九 悠太, 山口 和盛, 内田 雄一郎, 河本 和幸, 伊藤 雅, 小笠原 敬三
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1877-1881
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    コレステロール塞栓症(cholesterol crystal embolization:CCE)は血管内粥腫の破綻, 飛散による稀な全身性塞栓症である.症例:77歳,男性.腹部激痛があり当院搬送.腹膜刺激症状を認め,CT上free airと腹水を認め消化管穿孔の診断で緊急手術となった.小腸3箇所に穿孔部を認め小腸部分切除施行.病理組織所見でCCEによる小腸多発潰瘍穿孔の診断.術後3日目に胃管より黒色排液があり,上部消化管内視鏡にて胃・十二指腸にも多発潰瘍を認めた.術後4日目にドレーンより腸液様排液があり小腸再穿孔が疑われたが,術後より意識障害と痙攣重積があり,頭部CTで多発脳梗塞が確認されていたため再開腹術は断念し,術後8日目に死亡した.CCEの症状は,腎機能障害・皮膚症状・消化管症状などがあるが消化管穿孔に至ることは稀である.CCEによる消化管穿孔について過去の症例を踏まえ報告する.
  • 森本 浩史, 森田 高行, 楢崎 肇, 中山 智英, 加藤 健太郎, 藤田 美芳
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1882-1886
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.腹痛,嘔吐を主訴に当院内科を受診した.CTで小腸壁肥厚と口側腸管の拡張,多数の腸間膜リンパ節腫大を認め,小腸内視鏡検査で空腸に腫瘍性病変を認め生検を施行した.病理組織学的検査で異型リンパ球の増殖を認め,免疫染色でCD3(+),CD4(-),CD8(+),CD20(-),CD56(+).以上より,腸管症型T細胞リンパ腫(以下EATL)と診断されCHOP療法を8コース施行したが,腫瘍の残存を認めたためDeVIC療法を6コース施行した.評価の小腸内視鏡検査で腫瘍の残存と高度の腸管狭窄を認めたため,小腸部分切除術を施行した.術後3カ月後頃から恥骨上の痛みが出現し,精査の結果,S状結腸リンパ腫再発の診断でHartmann手術を施行した.術後,SMILE療法を2コース施行したが,治療効果はNCであり,現在Gemcitabineベースの化学療法を施行中である.今回,われわれは悪性リンパ腫の中でもまれなEATLに対し2回の切除を施行した1例を経験したので,若干の文献的考察も含めて報告する.
  • 木内 純, 梅原 誠司, 中島 晋, 福田 賢一郎, 藤山 准真, 増山 守
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1887-1892
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    Solitary fibrous tumor(以下,SFT)は主に胸膜から発生する軟部腫瘍であり,胸膜外発生は稀とされる.今回われわれは小腸間膜原発SFTの1例を経験したので報告する.
    症例は61歳女性.近医で腹部腫瘤を指摘され,精査・加療目的に当院紹介となった.腹部造影CT検査で骨盤内に分葉状で小さな嚢胞性変化を含む充実性腫瘤を認めた.MRIではT1で低信号,T2で淡い高信号で,腸間膜または小腸壁由来の間葉系腫瘍と診断し,手術による腫瘍摘出を施行した.
    術中所見にて腫瘍は小腸間膜から発生しており,周囲臓器への明らかな浸潤は認めなかった.手術は,腫瘍部位を含む小腸部分切除術を行った.病理組織学的検査所見ではCD34(+),CD99(+),c-kit(-),Ki-67 index 10~15%であり,小腸間膜原発SFTと診断した.
    術後経過は良好であり,術後10日目に退院となった.術後31カ月現在,再発所見は認めていない.
  • 辻 敏克, 芝原 一繁, 羽田 匡宏, 竹原 朗, 野崎 善成, 佐々木 正寿, 前田 宜延
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1893-1898
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は71歳の男性.2012年に下部消化管内視鏡検査を施行され,大腸ポリープを切除された.1年後の定期検査目的に当院を受診されたところ,Bauhin弁より約15cmの回腸に1cm大の発赤調の隆起性病変を認めた.腫瘤は全体的に緊満し,頂部にびらんを認めた.生検で神経内分泌腫瘍(neuroendocrine tumor;NET)と診断された.腹部CT検査では,回結腸動静脈周囲にリンパ節転移が疑われたが,遠隔転移は認めなかった.D3郭清を伴う腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行した.病理組織検査では,NET(G2),pT4a(SE),INFb,PN1b,pN(+),ly2,v2,Stage IIIbと診断された.本邦ではNETは比較的稀な疾患であるが,発生頻度の高い終末回腸を観察することは重要であると考えられた.また,根治手術を行う上で低侵襲な腹腔鏡下手術は有用であると考えられた.
  • 村田 嘉彦, 神谷 里明, 山中 秀高, 松永 宏之, 川井 覚, 松崎 安孝
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1899-1903
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は80歳の男性で,既往歴は24歳時に胃潰瘍で胃切除術,42歳時に脊髄動静脈奇形で手術を受け,その後,下半身不全麻痺と膀胱直腸障害がある.今回,発熱と腹痛を主訴に受診し入院した.腹部CTで骨盤部に長径7cm大の造影される充実性腫瘍を認め,小腸GISTが疑われた.小腸造影検査施行後からイレウスとなり,保存的治療で改善がないため手術を施行した.虫垂先端が回盲弁の高さの上行結腸に癒着し,輪状のバンドとなり回腸末端から20cmの回腸がループ状に入り込み,そこに虫垂炎が加わったことによって絞扼され拡張していた.虫垂切除術により絞扼は解除され,腸管壊死もなかった.また,小腸GISTに対して回腸部分切除術を施行した.本症例は虫垂がバンドとなり回腸を絞扼したイレウスで,本邦報告例は少ない.しかも,今までの報告例の全例は粘液嚢腫を背景にしており,虫垂炎を背景にしたものはなく非常にまれな症例であった.
  • 甫喜本 憲弘, 藤島 則明, 谷田 信行, 大西 一久, 山井 礼道, 笹 聡一郎
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1904-1908
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は28歳,男性.生来健康であったが,突然の下痢・血便を主訴に来院した.上腹部に軽度の腹痛を認めるのみであった.血液生化学検査で異常なかったが,CT検査にて動脈相で虫垂出血を認めた.虫垂腫大などの急性虫垂炎を疑う所見は認めなかった.下部消化管内視鏡検査では,回腸末端から盲腸部に新鮮血を認めるものの,憩室や潰瘍,血管性病変は認めなかった.詳細に観察すると虫垂口から血液が滲み出てきた.虫垂出血(原因不明)の診断で,単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.視診上は正常虫垂と思われた.回腸末端から口側に確認したがMeckel憩室も認めなかった.病理組織検査結果はAcute phlegmonous appendicitisであり,動脈性出血をきたすような潰瘍形成や露出血管は認めなかったが,糜爛や膿瘍形成などに伴う毛細血管の増生を認めた.術後は下血や貧血の進行を認めず,術後4病日で軽快退院となった.
  • 深田 真宏, 横山 伸二, 奥本 龍夫, 藤井 徹也, 金谷 欣明, 丸山 修一郎
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1909-1914
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例1:51歳,男性.急性虫垂炎の診断で虫垂切除術を施行した.術後組織診断にて杯細胞カルチノイド(goblet cell cartinoid,以下GCC)と診断され,腹腔鏡下回盲部切除を施行した.症例2:43歳,女性.両側卵巣悪性腫瘍の疑いにて単純子宮全摘+両側付属器切除術施行となる.術中に腫大した虫垂を認め同時に切除術を施行した.術後組織診断にて虫垂GCC・卵巣転移と診断され,結腸右半切除を施行した.症例3:73歳,男性.急性虫垂炎の診断で虫垂切除術を施行した.術後組織診断にてGCCと診断された.術後に施行したCTで直腸を圧排する結節性病変が指摘されたため,回盲部切除+Hartmann手術を施行した.GCCは腺癌の一亜型とされ,悪性度の高い疾患である.術前診断は困難であり,追加治療を考慮する必要がある.虫垂切除後にGCCと診断し再手術を施行した3例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 宮城 良浩, 金城 達也, 狩俣 弘幸, 下地 英明, 西巻 正
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1915-1918
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は20歳,男性.0歳時,髄膜瘤に対する手術の際に,脳室腹腔シャント(VPシャント)を造設.8歳時に水頭症発症し,シャント入れ替えが施行されていた.3カ月前より右前胸部シャント挿入創に肉芽形成を認め,1カ月前に同部位から排膿を認めるようになり,シャント感染が疑われた.シャント抜去術が予定されたが,術前腹部CTでチューブの腸管内迷入所見を指摘.腹部に圧痛はなく,腹膜刺激症状はみられなかった.腹腔鏡による腹腔内観察では,チューブ先端が横行結腸内へ迷入していたため,小開腹にてチューブを抜去し腸管を修復した.術後抗生剤投与により前胸部創感染は改善し,今後は経過観察し,水頭症が出現した場合にシャント再造設を予定することとなった.VPシャントチューブの消化管穿通はまれな合併症であるが,本症例では診断および治療に腹腔鏡下手術が有用であった.
  • 水野 克彦, 吉田 和世, 西崎 大輔, 武田 亮二, 高橋 滋, 安井 寛
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1919-1923
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は80歳女性,左下腹部痛を主訴に近医を受診した.白血球の上昇,腹部単純CTで脾彎曲部周囲の脂肪識濃度の上昇を認め,腸管壊死の疑いで当院へ搬送となった.当院施行の腹部造影CTで上行結腸から下行結腸までの造影効果は不良であった.結腸壊死の診断により緊急手術を施行した.開腹時,粘稠性腹水および盲腸からS状結腸までの腸管漿膜の虚血性変化を認め,全結腸型と診断した.上下腸間膜動脈の拍動を触知し閉塞がないことを確認した.回腸末端より直腸S状結腸部まで全結腸を切除し,回腸人工肛門を造設した.術後,ICU管理し血液透析を行った.血液透析から離脱し術後42日目に退院となった.虚血性大腸炎の中にはまれではあるが,全結腸にわたる壊死へと進行する症例があることを認識し,診断・治療にあたることが必要である.
  • 清田 正之, 軸原 温, 小川 龍之介, 中川 浩一, 橋本 雅明
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1924-1927
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は87歳,女性.過去に子宮脱に対して経膣的子宮全摘術が施行されていた.今回,整形外科で大腿骨頸部骨折の入院加療を行っていたところ,帯下への便混入の訴えがあり,外科紹介となった.CT検査でS状結腸の憩室を多数認め,結腸と膣断端との間に瘻孔と思われる内部にガスを混じた管腔構造物を認めた.下部消化管内視鏡検査時にガストログラフィンを注入したところ,S状結腸から膣に向かう瘻孔が確認された.以上から,S状結腸憩室炎によると考えられる結腸膣瘻と診断して,S状結腸部分切除および瘻孔部の縫合閉鎖術を施行した.術後経過は良好で術後15日目にリハビリ病棟へ転棟となった.憩室炎の合併症として結腸膀胱瘻は比較的よく見られる病態であるが,結腸膣瘻の報告は非常に少ないため,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 川口 保彦, 池田 宏国, 塩津 聡一, 多田 陽一郎, 原田 武尚, 山本 満雄
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1928-1932
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.腹痛・嘔吐を主訴に当院に来院し,回盲部大腸癌による閉塞性イレウスと診断された.術前検査で施行したCTで右肺動脈・両側大腿静脈に血栓が認められ,深部静脈血栓症・肺塞栓症と診断された.周術期に抗凝固療法を中止せざるを得ないこと,再塞栓により重症化する可能性があることから術前に下大静脈フィルターの留置を行った.手術は回盲部切除術および回腸人工肛門造設術を施行した.術後経過は良好であった.自験例を通して,大腸癌による閉塞性イレウスは,担癌状態に加え脱水をきたしていることが多く,血栓症のハイリスク症例であるという認識をすることが重要であると考えられた.今回,大腸癌に深部静脈血栓症・肺塞栓症を合併した症例に術前下大静脈フィルター留置を行い良好な結果を得た1例を経験したので若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 斎藤 健一郎, 宗本 義則, 高嶋 吉浩, 鈴木 勇人, 飯田 善郎, 三井 毅, 須藤 嘉子
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1933-1937
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,男性.76歳時に直腸癌で手術,79歳時に肝細胞癌でTAEの既往があり,CT・MRIを定期的に行っていたが,2011年3月のMRIでは新病変の出現はなかった.同年5月に腹痛を主訴に当院を受診し,腸閉塞の診断で入院した.腹部CT検査で回盲部腫瘤による腸管拡張と多発肝転移・多発遠隔リンパ節転移を認め,腸閉塞の解除のために回盲部切除術を施行した.病理診断は,type3,8.0×6.0cm,se,n+,ly2,v3で低分化腺癌が主体で,粘液癌成分・印環細胞癌成分・肝様癌様成分・神経内分泌癌成分・ラブドイド腫瘍様の腫瘍成分を含む多彩な組織像が混在していた.術後19日目の腹部CT検査で,肝転移・リンパ節転移の著明な増大を認め,mFOLFOX6を開始したが,全身状態が急速に悪化し,術後第27病日に死亡した.多彩な組織像を呈し,急速な転機をとった興味深い症例であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 田村 温美, 宮本 幸雄, 高浜 佑己子, 梅北 信孝
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1938-1943
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    内臓悪性腫瘍の臍転移はSister Mary Joseph's Nodule1)2)と呼ばれ,稀であるが,予後不良徴候とされている.今回,われわれは臍腫瘤を契機に発見されたS状結腸癌に対し治療を行い,長期生存を得ている症例を経験したので報告する.症例は62歳男性.主訴は臍腫瘤の出血.臍の生検で腺癌が検出され,全身検索により原発巣のS状結腸癌が発見された.S状結腸切除術・D3リンパ節郭清,臍腫瘤切除を行った.腫瘍は2型,SE,N1,H0,M1(臍),P0,Stage IVであった.術後,化学療法を行い,再発なく3年以上の生存を得ているので報告する.
  • 那須 亨, 小林 康人, 吹上 理, 山本 基, 寺澤 宏, 出口 真彰
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1944-1948
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.1カ月以上続く便柱狭細化と便秘を主訴に前医を受診し,下部消化管内視鏡検査(colonoscopy,以下CS)で直腸粘膜の全周性浮腫と狭窄を指摘された.以前よりCEA高値を指摘されており,精査目的で当院紹介.内視鏡下生検組織診断で悪性所見は認めなかったが,継続する全周性直腸狭窄とCEA高値より直腸癌を否定できず,開腹術を施行した.しかし,直腸および骨盤内に腫瘍を認めなかった.術中にCSをしたところ,直腸の狭窄は改善していたため直腸切除は行わず,保存的に経過をみることとした.一週間後に再びCSを行ったところ,軽度の直腸狭窄を認めたのみであり,直腸狭窄型虚血性大腸炎と診断した.直腸狭窄型虚血性大腸炎は比較的まれであり,さらにCEA高値を伴った症例はこれまでにほとんど報告がなく,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 柏原 秀也, 島田 光生, 栗田 信浩, 佐藤 宏彦, 吉川 幸造, 東島 潤
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1949-1954
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は50代,男性.腹部膨満・排便困難を主訴に前医を受診した.直腸癌による腸閉塞,肝転移(S2,6,8)と診断され当科紹介となった.同日,緊急にS状結腸人工肛門造設術を施行し,一週間後,腹腔鏡補助下肝部分切除術+腹腔鏡下低位前方切除術(D3)+人工肛門閉鎖術を施行した.摘出標本による病理組織学的検査では,主腫瘍は高分化腺癌で膀胱への直接浸潤を認め,腫瘍の壊死部近傍には骨形成を認めた.肝転移巣には骨形成を認めなかった.外来補助化学療法を行っていたが,術後10カ月に残肝再発をきたし,術後3年2カ月,外来にて化学療法継続中である.
    骨形成性大腸癌の発生頻度は約0.4%であり,腫瘍内部に壊死を伴い,低悪性な癌とされているが,自験例では膀胱浸潤・肝転移を認め,必ずしも低悪性ではないことが示唆された.骨形成性大腸癌の肝転移は比較的稀であり,腹腔鏡下に同時切除した報告は本邦で初であるため報告する.
  • 矢部 信成, 村井 信二, 尾戸 一平, 吉川 貴久, 北里 憲司郎, 清水 裕智
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1955-1960
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は35歳,女性.健診の上部消化管造影検査と上部消化管内視鏡検査にて径15 mmの胃粘膜下腫瘍と診断された.精査加療目的で当院を紹介受診となった.腹部超音波検査で肝外側区域と胃底部の間に肝実質と同エコーの類円性腫瘤を認めた.腹部造影CT検査で腫瘤内部は均一に造影され遅延期には造影効果がなく辺縁は明瞭整であり,肝臓との連続性も疑われた.MRI検査はT2強調像で淡い低信号を呈し肝悪性疾患を否定できなかった.術前にGISTや肝悪性腫瘍を考慮し手術に臨んだが,腹腔鏡下所見で主肝とは離れ肝被膜に含まれた孤立性腫瘤を確認し,腹腔鏡下腫瘍切除術を行った.病理組織診断は限局性結節性過形成(FNH)であった.肝三角間膜に孤立するFNHは国内外で最初の報告である.
  • 三宅 隆史, 鈴木 正彦, 浅羽 雄太郎, 佐藤 智仁, 松山 温子, 水上 泰延
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1961-1965
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は67歳,女性.右季肋部痛を主訴に当院を受診し,CT上肝右葉を占拠する最大径19.9cmの巨大な肝嚢胞を認めた.単純性肝嚢胞と診断し,reduced port surgeryによる腹腔鏡下嚢胞開窓術を施行した.グローブ法にて臍より術者右手用ポートとカメラ用ポートを設置し,ドレーン挿入予定部に術者左手用ポートを設置して腹腔内操作を行った.術後右季肋部痛は消退し第12病日に退院.15カ月後の現在まで症状の再燃無く経過している.ドレーン挿入予定部に操作ポートを設置することで,単孔式よりも操作性の良いreduced port surgeryを実現でき,合理的な術式と考えられた.
  • 鈴木 崇之, 鈴木 大亮, 清水 宏明, 宮崎 勝
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1966-1971
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodenectomy:PD)後に良性胆管空腸吻合部狭窄をきたし,肝内胆管結石症を合併した2例を経験したので報告する.症例1は74歳,女性.9年前に他院でserous cystadenomaに対しPDを施行された.術後胆管炎を繰り返し,肝内胆管結石症を続発したため当科転院となった.症例2は79歳,男性.5年前に当科で十二指腸乳頭部癌に対しPDを施行した.経過観察中,肝機能異常を認め精査にて肝内胆管結石症の診断で入院となった.両症例ともPTCSLを施行し,吻合部生検で悪性所見がないことを確認後,ステントチューブを留置し退院となった.それぞれPTCSL後,4カ月・3カ月現在再発を認めていない.近年,PD後の長期生存例は増加傾向にあるため,晩期合併症として肝内胆管結石を認めることがあり,長期的な経過観察が必要であると考えられた.
  • 三宅 益代, 杉田 光隆, 茂垣 雅俊, 福島 忠男, 舛井 秀宣, 長堀 薫, 津浦 幸夫
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1972-1978
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は79歳,男性.糖尿病,肝機能障害で近医通院中であった.全身倦怠感,食思不振が出現し当院受診.黄疸があり,血液検査でHCV抗体陽性,軽度肝機能障害,PIVKA-II上昇を認めた.腹部超音波検査・CT・MRIを施行したところ,肝S6および肝S8に早期濃染される腫瘤性病変を認め,肝細胞癌の診断で腹腔鏡補助下肝S6部分切除術,肝S8腫瘍マイクロ波凝固療法施行した.切除標本では腫瘤は肉眼的に厚い線維性被膜を有していた.内部は隔壁を有し充実性であった.病理組織学的には,出血,ヘモジデリン沈着を伴った肉芽組織,壊死組織巣のみで,腫瘍細胞は認めなかった.腫瘤外血管には内腔の狭小化や血栓が認められた.肝細胞癌が自然壊死したと考えられた.血管造影などを契機に自然退縮した肝細胞癌の報告は散見されるが,本例のごとく血管造影検査や前治療なしに自然壊死した報告例は稀であり,貴重な症例と考え報告した.
  • 畑 太悟, 野尻 卓也, 柴 浩明, 吉田 和彦, 矢永 勝彦
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1979-1982
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は70歳台,男性.2008年7月より,C型肝炎に伴う肝細胞癌の診断にて当院内科でTACE・RFAを繰り返していた.その治療中に約1年間で直径11mmから37mmに増大する後腹膜腫瘍を指摘され,当科紹介となった.CTでは腫瘍は膵体部背面に位置し,左腎動静脈に接していたが,副腎との関係を認めず,造影効果を認めた.肝S4に直径10mm大の肝細胞癌を認めた.腫瘍マーカーCEA・CA19-9・AFPは正常範囲内であったが,PIVKA-IIは腫瘍の増大に伴い約1年で62から816mAU/mlに増加していた.肝細胞癌の転移が最も疑われ,確定診断および治療を目的に開腹手術を施行した.左肋骨弓下切開で開腹し,膵体尾部・脾臓を脱転後に,腫瘍を摘出した.術後病理組織学的に肝細胞癌の後腹膜転移と診断された.PIVKA-IIは術後1カ月後で正常化した.肝細胞癌の後腹膜転移は比較的まれであり,文献的考察を加えて報告する.
  • 小山田 尚, 小泉 雅典, 寺島 徹, 小林 仁存, 植木 浜一, 大谷 明夫
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1983-1988
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.2003年に門脈肝静脈短絡症の診断.2007年に肝S6に肝細胞癌が出現,肝部分切除を行っている.4年後に撮影したCTにて肝内側区域に腫瘍性病変が出現した.既往歴では輸血,肝炎の既往,代謝異常なし.入院時の所見では意識障害,全身倦怠などの症状ないが,T-Bil 1.7mg/dl,NH3 122μg/dl,ICG15分値34%と異常値を認めた.CTにて肝内側区域足側に早期濃染,washoutする3cm大の腫瘍を認め,同時に,門脈前区域枝から中肝静脈に繋がる,太さ17mmのPVシャントを認めた.手術はS4足側区域切除を行い,中肝静脈を末梢側にて縫合,PV-シャントを閉塞させた.病理診断で高分化型肝細胞癌.経過は良好で13術日退院.肝機能検査値は正常化した.肝癌リスクファクターのない症例に,2度にわたり発生した肝細胞癌を発症した症例を経験したので報告する.
  • 三浦 光太郎, 堀 武治, 天道 正成, 中尾 重富, 仲田 文造, 石川 哲郎
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1989-1993
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は20代の女性.心窩部痛を主訴に,当院を受診し,腹部CT検査などで,完全内臓逆位を伴う胆石症と診断した.整容性を考慮して単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.開脚位で術者と助手の位置を通常と逆にして,手術を開始した.上腹部の臓器解剖が通常と左右対称で,完全内臓逆位であった.正位とほぼ同様に両手を操作することができ,定型的に手術を遂行した.術前の画像検査によって,脈管系をはじめとする解剖学的な評価を行い,単孔式でも安全に施行できた.また,内臓逆位を伴う胆石症症例において,単孔式腹腔鏡下胆嚢摘出術は整容性の他に,手術手技の面でも有用な可能性が示唆された.
  • 若林 俊樹, 佐藤 勤, 新保 知規, 藤田 正太, 太田 栄, 伊藤 誠司, 提嶋 眞人
    2014 年 75 巻 7 号 p. 1994-2000
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.黄疸,全身倦怠感を主訴に近医を受診した.腹部CT検査で上部・下部胆管に腫瘤を認め,MRCPでは左右肝管分岐部から上部・下部胆管の陰影欠損を認めた.下部胆管の擦過細胞診でGroup V,腺癌であった.以上から肝門部ならびに下部胆管癌の診断で,経皮経肝門脈塞栓術を施行の上,肝右2区域切除+膵頭十二指腸切除術を施行した.切除標本で,乳頭状に発育する肝門部腫瘍と下部胆管の結節浸潤型の腫瘍は連続していた.病理組織学的には,肝門部腫瘍は,神経内分泌癌の診断であり,下部胆管腫瘍・胆管表層は腺癌の診断であった.以上より,組織学的に広範囲胆管癌に発生した混合型腺神経内分泌癌(胆道癌取扱い規約第5版では腺内分泌細胞癌)と診断された.術後3カ月後の腹部CT検査で多発肝転移再発を認め,術後5カ月目に死亡した.病理解剖では,転移再発巣の腫瘍成分は神経内分泌癌成分であり腺癌の成分は確認されなかった.
  • 正司 政寿, 高村 博之, 林 泰寛, 中沼 伸一, 北川 裕久, 太田 哲生
    2014 年 75 巻 7 号 p. 2001-2007
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    75歳,男性.72歳時からS8を中心とした多発肝細胞癌の診断でTACEとRFAを繰り返した.画像上,横隔膜浸潤を伴う局所再発像を認め,肝中央二区域切除・横隔膜合併切除術を施行した.病理組織学的に一部に紡錘状細胞を認め,免疫染色ではCK19陽性,hepatocyte陰性,AFP陰性であったことから,肉腫様変化を伴う肝内胆管癌再発と診断した.術後12カ月後に横隔膜切除断端からの再発を認め,横隔膜・右肺部分切除術を施行した.さらに,再手術後6カ月で縦隔リンパ節転移再発を認めた.病変が小さい場合,肝細胞癌と肝内胆管癌の鑑別に難渋する場合がある.本症例のように1病変に対して局所療法を繰り返すことにより,肉腫様変化をきたす可能性も報告されている.臨床的に肉腫様変化の診断は容易ではなく,局所制御に難渋する肝腫瘍症例においては,根治を期待できる切除を積極的に考慮することが望ましいと考えられた.
  • 若林 正和, 河野 悟, 保刈 岳雄, 相崎 一雄, 高橋 知秀, 高野 靖悟
    2014 年 75 巻 7 号 p. 2008-2013
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    膵頭十二指腸切除術(pancreatoduodenectomy;以下,PDと略記)後の門脈狭窄により発達した側副血行路に伴う静脈瘤からの消化管出血に対し,経皮的門脈ステント留置が有効であった2例を経験したので報告する.症例1は69歳の男性.Vater乳頭部癌にてPD後再発なく経過していたが,術後3年で吐下血を認めた.術後炎症性変化による門脈狭窄を認め,ステント留置により血流は再開し,症状改善した.その後5年4カ月経過したが,症状なく門脈血流も良好である.症例2は75歳の女性.膵頭部癌にてPD後1年6カ月で大量下血を認めた.膵癌局所再発による門脈狭窄を認め,ステント留置により改善した.その後1年6カ月間は症状なく経過し,ステント留置後1年8カ月で癌死した.疾患の良悪性を問わず,術後門脈狭窄による消化管出血に対し経皮的門脈ステント留置は有効であると考えられた.
  • 齋藤 敬太, 坂田 純, 廣瀬 雄己, 小林 隆, 皆川 昌広, 若井 俊文
    2014 年 75 巻 7 号 p. 2014-2018
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    近年,先天性胆道拡張症に対する分流手術後の晩期合併症として遺残胆管癌の発生が問題となっている.今回,先天性胆道拡張症に対する分流手術後23年目に膵内遺残胆管癌を発症した1例を経験したので報告する.症例は69歳の女性.46歳時に先天性胆道拡張症に対して,分流手術が施行された.検診の腹部超音波検査で膵頭部に腫瘤を指摘された.腹部CT検査で膵頭部に径28mm大の嚢胞性腫瘤が認められ,その内部に遅延濃染される結節が存在した.内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査で主膵管を介して遺残胆管が描出され,胆管内には腫瘤と粘液による造影欠損像が認められた.分流手術後の膵内遺残胆管癌の診断で,亜全胃温存膵頭十二指腸切除術が施行された.術後6カ月が経過し,無再発で外来通院中である.本症例の経験および文献的考察から,分流手術後は遺残胆管の発癌を念頭に置いた長期の経過観察が必要であることが示唆される.
  • 今神 透, 松尾 洋一, 柴田 孝弥, 岡田 祐二, 木村 昌弘, 竹山 廣光
    2014 年 75 巻 7 号 p. 2019-2023
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    近年,腎癌膵転移に対する外科治療の報告が散見されるが,症例の蓄積はいまだ少なく,その治療方針には一定の見解を得ていない.今回われわれは,腎癌膵転移に対して膵体尾部切除術を施行した後,残膵に腎癌の再発を発症したため残膵全摘を施行した症例を経験したため報告する.症例は59歳男性.右腎癌術後4年に膵転移を発症し,膵体尾部切除術を施行した.術後は化学療法を施行せず経過観察とした.術後1年で残膵に腎癌の再発を発症したため残膵全摘を施行した.術後1年で腎癌の多発肝転移および後腹膜転移を発症したため化学療法を開始し,残膵全摘より術後4年生存中である.腎癌膵転移は,残膵に再発した症例に対しても積極的な外科治療を含めた集学的治療により良好な予後が得られると考えられた.
  • 家出 清継, 永田 二郎, 佐藤 成憲, 森岡 祐貴, 阪井 満, 橋本 昌司
    2014 年 75 巻 7 号 p. 2024-2027
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は36歳女性で,急激な腹痛を主訴に救急外来を受診された.CTにて脾臓に140mmの多房性嚢胞と腹水貯留を認め,脾嚢胞破裂による腹膜炎と診断した.血液検査にて貧血を認めず,症状も軽微であったことから,待機的手術予定とした.嚢胞が巨大であり,脾動脈の発達も著しいことから,脾動脈塞栓術後に腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.術前の血液検査にても,嚢胞内容液の生化学検査にても,CA19-9は高値を示し,免疫染色では嚢胞内の扁平上皮の表面に付着した液体成分および扁平上皮にCA19-9陽性所見を認めた.術後経過は良好で,血液検査にてCA19-9は正常化し,CA19-9産生巨大脾嚢胞破裂と診断した.CA19-9産生脾嚢胞は本邦報告では約50例とまれである.破裂例の報告は検索しえた範囲では自験例を含めて6例のみであり,文献的考察を加えて報告する.
  • 富家 由美, 野村 尚弘, 田邊 裕, 高瀬 恒信, 三輪 高也, 矢口 豊久
    2014 年 75 巻 7 号 p. 2028-2031
    発行日: 2014年
    公開日: 2015/01/31
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,女性.子宮頸癌にて腹腔鏡下子宮全摘術の既往あり.腹痛,嘔吐にて当院受診.右下腹部に腹膜刺激症状を認め,腹部造影CTにて小腸の拡張,closed loopの形成を認めた.また,右尿管が拡張し右下腹部で途絶していた.絞扼性イレウスと診断し,緊急手術を施行.右側骨盤内に索状物により絞扼された小腸を認めた.索状物が右尿管である可能性も疑ったが,絞扼は強く,解除するためには索状物を切離せざるを得ないと判断.絞扼を解除したが小腸は壊死しており,小腸部分切除術を施行.索状物は右尿管であることが判明し,尿管再建術も施行した.子宮全摘術の際に剥離された右尿管の背側に小腸が陥入し,絞扼性イレウスをきたしたと考えられた.婦人科術後に剥離された尿管が原因となって絞扼性イレウスを発症した,極めて稀な症例であり文献的考察を加えて報告する.
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