日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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ISSN-L : 1345-2843
77 巻 , 9 号
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綜説
  • 斉田 芳久
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2123-2137
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    大腸悪性狭窄に対する大腸ステント(SEMS:self-expandable metallic stent)治療が世界に遅れて本邦でも2012年から保険収載の上で導入された.本稿では文献的な考察を中心に現状と展望を示した.現在の本邦での適応は,悪性狭窄の緩和治療および外科手術前の処置BTS:bridge to surgeryである.緩和治療では短い入院期間での狭窄の解除と人工肛門の回避が,またBTSでは緊急手術に比較して入院期間の短さ,合併症率や人工肛門造設率,死亡率の低下などが期待できると広く報告されているが,長期予後に関してのエビデンスが不足している.また,本手技は一定の確率での穿孔や逸脱などの偶発症も発生するため十分な準備とICが不可欠である.安全な留置のためには幾つかの注意点があり,遵守することで偶発症の発生を最小限にすることができる.大腸ステント安全手技研究会では,そのための注意点をWebを通して情報発信している.
臨床経験
  • 良田 大典, 松島 英之, 中村 有佑, 佐藤 元彦, 小松 優治, 權 雅憲
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2138-2142
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    医療技術の発達による平均寿命の延長,および化学療法の進歩に伴い,皮下埋没型中心静脈カテーテルの必要性が増加してきている.留置法は鎖骨下静脈穿刺法による留置法が一般的であるが,気胸やpinch off syndromeなどの重篤な合併症が報告されている.当科では鎖骨下静脈穿刺法に橈側皮静脈カットダウン法を併用しており,両群で手術時間や術後合併症などに関して比較検討を行った.
    2013年4月から2015年8月の間に当科で施行した224例を対象とした.開始アプローチは橈側皮静脈カットダウン法190例,鎖骨下静脈穿刺法34例,平均手術時間は25.0分であった.全合併症率は9.8%,気胸は3例(1.3%)であり,全例が鎖骨下静脈穿刺で発症し,感染も有意に高率であった(P=0.0478).皮下埋没型中心静脈カテーテル留置術では橈側皮静脈カットダウン法が,安全な手技と考えられた.
  • 山下 剛史, 村上 雅彦, 大塚 耕司, 五藤 哲, 有吉 朋丈, 青木 武士
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2143-2147
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    目的:食道癌手術後における胸腔ドレーンは胸腔内合併症の治療対策として挿入されるが,術後創痛・早期離床の妨げの原因の一つでもある.教室ではその対策としてドレーンの細径化と早期抜去を行ってきたので検討した.方法:胸腔鏡下食道癌根治術終了時に15Frシリコンドレーンと8Frカテーテルを胸腔内に留置.手術翌日に胸部X線上での肺虚脱とエアリークがなければ前者を抜去し,後者を閉鎖式リザーバーバッグに接続し管理.排液量が200ml以下/日で抜去.成績:2010年より2014年までの286例に本ドレーン管理を行った.術後歩行開始は平均1.0日目,平均ドレーン留置期間は5.7日,術後合併症は縫合不全3例(1.0%),肺炎18例(6.3%),ドレーン抜去後の胸水貯留12例(4.2%),乳糜胸6例(2.1%)に認められた.結論:細径ドレーン管理は,術後合併症に影響せず早期離床をより促進できる手段の一つとなりうる.
  • 佐々木 愼, 金子 学, 中山 洋, 渡辺 俊之
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2148-2152
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    進行再発大腸癌に対する初回化学療法時のCEA値推移が全生存期間を予測し得るか検討した.進行再発大腸癌症例のうち,CEA高値かつ初回化学療法にてオキザリプラチンベースのレジメを施行した40例を対象とした.初回化学療法施行時のCEA値の推移を増加症例と低下症例に分類し,さらに低下症例はCEA値低下の割合をその半減期間によって速やかな低下症例とゆるやかな低下症例に分類し,この3群間で生存期間および3rdライン以降の化学療法導入率について比較した.その結果,初回化学療法時にCEA値が速やかに低下した群は他の群に比べて有意に生存期間が長く,また3rdライン以降の化学療法導入率が高い結果であった.CEA値そのものは生存期間と関連がなかった.以上より,進行再発大腸癌に対する初回化学療法時のCEA値推移は生存期間の予測因子となる可能性が示された.
症例
  • 渡邊 学, 森岡 淳, 加藤 健宏, 高木 健裕, 酒徳 弥生, 堀 明洋
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2153-2158
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,女性.職場健診で右甲状腺腫瘤を指摘され精査となった.超音波検査で右甲状腺上極に20mm大の腫瘤を認め,穿刺吸引細胞診が施行された.細胞診の結果は濾胞性腫瘍,鑑別困難であった.穿刺後30分程度経過してから前頸部の腫大および頸部から両耳後部にかけての疼痛,嚥下時の咽頭痛が急激に出現した.呼吸困難,嗄声は認めなかった.超音波検査で甲状腺両葉の著明な浮腫状の腫大を認め,内部にひび割れ状の間隙を認めた.また,胸鎖乳突筋・前頸筋群などの甲状腺前面の組織の腫大も認めた.ソルメドロール125mgを点滴し,経過観察したところ6時間後に咽頭痛が改善し,18時間後には頸部の腫脹は消失した.嚥下時のつかえ感は72時間後まで残存した.プレドニゾロン15mgを3日間,その後10mgに減量して3日間内服した.甲状腺穿刺吸引細胞診後の一過性甲状腺腫大は稀な合併症である.文献的考察を踏まえて報告する.
  • 村嶋 信尚, 仁科 拓也, 元井 信
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2159-2164
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    乳腺筋線維芽細胞腫は,間葉系細胞由来の良性腫瘍で,比較的稀な疾患であり今回経験した症例を報告する.症例は66歳の女性.左乳房腫瘤に気づき翌日来院した.左ECD領域に3.0×2.5cm弾性硬の腫瘤を触知し,軽度乳頭陥凹を認めた.MMGで左ECD領域に2.3×2.0cm分葉状の腫瘤を認め,充実腺管癌を疑った.エコーでは左ECD領域に2.3×2.7×2.5cm分葉状,境界明瞭,粗糙,低エコー,不均質腫瘤を認め悪性を疑った.穿刺吸引細胞診では検体不適正だが,紡錘形細胞がみられた.針生検では,紡錘形の間質細胞が束状に交錯し葉状腫瘍を強く疑った.悪性腫瘍も否定できず生検を行った.病理組織診は紡錘形の腫瘍細胞が束状にみられ,免疫染色でサイトケラチン・S-100蛋白が陰性で,ビメンチン・アクチン・α-SMAが陽性のことより,筋線維芽細胞腫と診断した.
  • 吉澤 隆裕, 竹田 哲, 菅谷 慎祐, 牧野 安良能, 花村 徹, 小山 洋
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2165-2169
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,女性.乳癌術後15年で癌性胸膜炎,多発肝転移で再発した.内分泌療法,化学療法を順次施行されたが,病状は増悪し肝不全となった.Performance status(PS) 4であったが治療継続を希望されたため,副作用を回避すべくethinyl estradiol(EE2)0.5mg/日と超低用量で開始した.7日目より減黄,全身状態の改善が得られ,1カ月後の腫瘍マーカーは低下した.その後6カ月間PRが得られた.EE2は有害事象が比較的高頻度に報告されているが,本症例では有害事象は認めなかった.検索しえた限りではEE2 1.0mg/日以下の投与が有効であったとする報告はなく,今回,示唆に富む症例と考えられたため報告する.
  • 芝木 泰一郎, 池上 淳, 赤羽 弘充, ●田 尚之, 稲垣 光裕, 中野 詩朗
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2170-2174
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は45歳,重症心身障害者女性.右乳癌に対しBt+Axを施行.術後診断はアポクリン癌,Stage IIB,ER(0%),PgR(0%),HER 2(3+).術後2年目に右腋窩~鎖骨上リンパ節転移が出現.3週毎トラスツズマブ療法を開始し,3カ月後の評価ではPRで以後効果を維持している.CLEOPATRA試験の結果を受けた我が国の乳癌診療ガイドラインでは,HER 2陽性再発乳癌に対し,ペルツズマブ・トラスツズマブ・ドセタキセルの3剤併用療法が推奨されているが,本症例では3剤併用に対する忍容性の評価が困難であったため,トラスツズマブ単剤療法からの開始とした.重症者乳癌診療においては診断から治療に至るまで,様々な制限や障壁が現実に存在する.このため,健常者向けの診療ガイドラインに沿っての方針決定は難しく,症例個々の背景を含めて熟慮したうえでの方針決定が必要である.
  • 佐藤 英昭, 森川 孝則, 林 洋毅, 元井 冬彦, 内藤 剛, 海野 倫明
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2175-2179
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    巨大肝細胞癌の70代の男性に対し肝右葉切除術を施行したが,術翌日に腹腔内出血を認めたため,緊急開腹止血術の方針となった.全身麻酔導入時に,たこつぼ型心筋症に由来する心停止をきたしたが,即座にpercutaneous cardiopulmonary support (PCPS)を導入することで蘇生し,血管造影下での塞栓術で止血が得られた.その後,後遺症はなく第36病日に転院となった.たこつぼ型心筋症は,左室心尖部を中心とした広範囲の壁運動異常を呈する疾患であり,多くは1カ月以内に左室壁運動がほぼ正常化する,予後良好な疾患とされている.しかし,近年,たこつぼ型心筋症による心停止から不幸な転帰を辿った報告も見受けられ,今後の高齢者手術の増加に伴い,類似症例の増加が懸念される.本症例は,たこつぼ型心筋症による心停止に対しPCPSを導入することで救命できた本邦初の貴重な症例である.
  • 福田 智, 奈良原 裕, 尾頭 厚, 村田 升
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2180-2183
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は結腸癌術後の64歳,女性.上記疾患の経過中に大動脈弁狭窄症および胸部大動脈瘤を指摘され手術療法の方針となり,大動脈弁置換術および上行大動脈置換術を施行した.術中所見としては大動脈弁尖の癒合を認め一尖弁の形態であった.術後経過は良好で,翌日抜管となったが抜管後呼吸不全および再挿管の経過を繰り返した.CTにて気管の圧排を認め気管軟化症の診断となった.抜管困難となり気管開存目的で気管ステント留置術施行,気管切開術施行となった.ステント留置に伴い喀痰増加を認めたが経過は良好で,現在は外来にて経過観察中である.
  • 平原 正隆, 井上 啓爾, 野田 和雅, 渡海 大隆, 伊藤 信一郎, 原口 正史
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2184-2190
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    特発性血気胸は出血性ショックを呈するため迅速な診断と治療が必要である.今回われわれは,胸腔鏡下手術を施行した特発性血気胸の2例を経験したので報告する.症例1:37歳の男性.胸痛を主訴に救急外来受診.トロッカー挿入後に1,100mlの暗赤色血液を流出.3時間後,胸腔より300mlの新鮮血流出があり,ショック状態となったため緊急胸腔鏡下止血術を施行.肺尖部壁側胸膜からの索状物より出血を認め,これをクリッピングにて止血.経過良好にて術後8日目に自宅退院とした.症例2:44歳の男性.胸痛を主訴に救急外来受診.トロッカー挿入後に870mlの暗赤色血液を流出.緊急胸腔鏡下止血・肺嚢胞切除術施行.肺尖部壁側胸膜からの出血を認め,ソフト凝固にて止血.経過良好にて術後5日目に自宅退院とした.特発性血気胸は出血性ショックのリスクが高く,入院後厳重なモニタリングと早期の手術介入が必要と考えられた.
  • 田中 希世, 高見 康二, 福田 泰也, 大宮 英泰, 宮本 敦史, 関本 貢嗣
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2191-2196
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.肺癌に対し右下葉切除術を施行した.術後9日目に発熱・膿性胸水を認め,胸水培養からMRSA膿胸と診断した.胸腔ドレナージおよび抗生剤投与が奏効せず,保存的治療では改善困難と判断し,術後52日目に開窓術を施行した.以後速やかな感染制御が得られ,開窓術後5日目に菌陰性化が確認された.部位的に筋弁充填等での創閉鎖が困難であったため,陰圧閉鎖療法(Negative Pressure Wound Therapy:NPWT)を追加した.陰圧による肺障害を予防すべく,V. A. C. ®グラニューフォーム®(KCI社)に非固着性シリコンガーゼを二重に被覆したうえで創部に充填し,比較的低圧(-50mmHg)で開始した.臓器・血流障害および疼痛がないことを確認しながら,以後72時間毎に交換し,NPWT開始100日目には完全な上皮化が得られた.
  • 大川 広, 淺海 信也, 金澤 卓, 大野 聡, 高倉 範尚
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2197-2200
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は44歳,男性.2014年9月,特発性食道破裂に対し左開胸で食道穿孔部縫合閉鎖,胃穹隆部によるfundic patchを施行した.術後経過良好で術後18日目に退院.その後,大きな合併症なく経過していたが,術後約7カ月後に嘔吐を主訴に入院.CTで横隔膜ヘルニアに伴う胃捻転を認め,内視鏡的整復後に手術となった.特発性食道破裂術後の横隔膜ヘルニア発生の報告は比較的少なく,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 宮村 径, 久留宮 康浩, 水野 敬輔, 世古口 英, 小林 聡, 湯浅 典博
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2201-2205
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は57歳,男性で,胃癌(pT2,pN0)に対し胃全摘,Roux-en-Y再建を施行した.術直後より強い胸焼けのため経口摂取が不良となり,上部消化管内視鏡検査ではGrade D(ロサンゼルス分類)の逆流性食道炎を認め,24時間食道内ビリルビンモニタリングでは測定時間の72.6%に仰臥位優位の胆汁逆流を認めた.上部消化管造影検査では食道空腸吻合部と空腸空腸吻合部との距離が30cmと計測され,これが短いことが十二指腸液逆流の原因と考え,胃全摘術後の1年半後に再手術を施行した.空腸空腸吻合部を切離し,食道空腸吻合部から90cm肛門側の空腸に空腸を再吻合した.術後,胸やけは消失し,24時間食道内ビリルビンモニタリングでも胆汁逆流を認めなかった.再手術後3カ月目に行った上部消化管内視鏡検査では逆流性食道炎は治癒していた.胃全摘術後逆流性食道炎の病態把握,手術適応の決定,効果判定に食道内ビリルビンモニタリングが有効であった.
  • 竹林 克士, 坪佐 恭宏, 新原 正大, 島田 理子, 坊岡 英祐
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2206-2211
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    われわれは頸部食道癌術後外側咽頭後リンパ節(Rouviere)転移症例4例を経験した.頸部食道癌に対する初回治療は手術が3例,化学放射線療法が1例であった.症例1:術後2カ月目にRouviere転移を認め化学放射線療法を行ったが,奏効せず術後7カ月目に死亡した.症例2:術後2カ月目にRouviere単独再発をきたし,化学療法にて完全奏効が得られ術後5年生存中である.症例3:術後43カ月目に右Rouviere単独再発をきたしCRTを行い,完全奏効が得られ術後5年生存中である.症例4:初回治療のCRT後8カ月目に両側Rouviere再発をきたしサルベージ手術を施行したが,切除困難であり初回CRT後19カ月目に死亡した.頸部食道癌においてRouviereは領域リンパ節として選定されてはおらず遠隔転移として考慮される病変であるが,自験例4例中2例は治療が奏効し,長期予後が得られており,早期の再発診断,治療を行うことが重要であると考えられた.
  • 亀山 亨, 田内 克典, 岸本 浩史, 高 賢樹, 宇根 範和, 樋口 佳代子
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2212-2218
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は61歳,女性.検診の上部消化管内視鏡検査にて前庭部後壁に20mm程度の粘膜下腫瘍を指摘された.超音波内視鏡検査では,大きさ20mm大でほぼ均一な低エコー性腫瘤として認めた.CTでは胃壁外発育を示す20mm程度の軟部陰影として描出された.粘膜切開直視下生検を行い,胃神経鞘腫と診断し,腹腔鏡下胃局所切除を施行した.腫瘍は紡錘形の腫瘍細胞が不規則に交錯しつつ増殖する像から成り,一部柵状に配列する所見も認められた.免疫染色で生検と同様にc-kit陰性,S-100蛋白陽性,α-SMA陰性,CD34陰性であり,核分裂像はみられず良性胃神経鞘腫の診断となった.胃神経鞘腫は,存在診断は上部消化管内視鏡検査や消化管造影で容易であるが,確定診断は困難である.今回われわれは,術前に粘膜切開直視下生検を用いて胃神経鞘腫と診断し,腹腔鏡下胃局所切除を行った症例を経験したため,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 中山 洋, 三村 太亮, 石川 亘, 立花 光夫, 宗友 良憲, 石田 康彦
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2219-2223
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の男性で,主訴はタール便.近医にて上部消化管内視鏡を施行されたが,出血原因がなく紹介となった.2日後に大量下血があり出血性ショック状態で救急搬送となった.腹部造影CT検査にて上部小腸に消化管内への造影剤の漏出を認めた.内視鏡的処置では救命し得ないと判断し,緊急手術・術中内視鏡を施行した.Treitz靱帯より約200cm肛門側に約10mm大の硬結を触れ,硬結部位を含めて空腸を約10cm切除した.病理所見は,主に粘膜下層に嚢状に拡張した血管を認め,血管壁には形成異常があり中~内膜形成不全で平滑筋が欠損しており,angiodysplasiaとして矛盾しない所見であった.
  • 盧 尚志, 高橋 里奈, 岡澤 裕, 高橋 玄, 小島 豊, 坂本 一博
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2224-2228
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.腹痛・腹満が出現し,イレウスの診断で入院となった.下部消化管内視鏡検査では回腸末端部に全周性狭窄を認め,生検結果は腺癌であった.CT検査では回盲部に30mm大の腫瘤陰影と右水腎症が認められ,右外腸骨動脈を圧排していた.以上より,尿管に浸潤した盲腸癌または小腸癌の診断で手術を施行した.腫瘍は回腸末端から口側10cmの回腸に存在する小腸癌で,右尿管および右外腸骨動脈へ直接浸潤していた.右尿管は部分切除・吻合した.右外腸骨動脈は,左大伏在静脈を用いてバイパスした後に,浸潤部血管を合併切除した.病理所見では大腸癌取扱い規約に準じて,T4bN1M0 pStage IIIaの小腸癌で尿管と外腸骨動脈へ直接浸潤が認められた.外腸骨動脈と尿管へ直接浸潤した小腸癌に対し,血管バイパスを用いて根治手術を施行した症例を経験したので報告する.
  • 永吉 盛司, 仲里 秀次, 豊見山 健, 友利 健彦, 大嶺 靖, 知花 朝美
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2229-2234
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は38歳,男性.1週間前からの発熱・腹痛・下痢を主訴に近医を受診し,急性虫垂炎を疑われ当院救急外来へ紹介となった.来院時の体温は39.0℃,腹部は平坦・軟で右下腹部に圧痛のある鶏卵大の腫瘤を触知した.血液検査では白血球とCRPの上昇を認め,腹部CTでは腫大した虫垂に接して後腹膜膿瘍を認めた.穿孔性虫垂炎を疑い虫垂切除術を施行した.切除した虫垂の炎症所見は軽度で,中央部に壁肥厚を認めた.病理診断は虫垂印環細胞癌だった.術後の下部消化管検査では大腸に腫瘍性病変は認めず,上行結腸に多発性に憩室を認めた.上行結腸憩室の1箇所に浮腫状の発赤を認め憩室穿孔による後腹膜膿瘍を疑った.術後19日目に再入院し,21日目に腹腔鏡補助下にD3郭清を伴う右半結腸切除術を行った.リンパ節転移はなく,最終の病理組織学的診断はpSS,pN0でfStage IIの虫垂印環細胞癌であった.術後4年経った現在,無再発生存中である.
  • 島袋 鮎美, 金城 達也, 佐村 博範, 西垣 大志, 伊禮 靖苗, 西巻 正
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2235-2240
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.2013年に他院にて盲腸癌に対して腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行(T3N1H0P0 Stage IIIa).術後補助化学療法終了後,同院にて経過観察となった.術後7カ月頃より不正性器出血を認めたため,近医産婦人科を受診.精査の結果,子宮体癌IIIB期,子宮頸部浸潤が疑われ,当院産婦人科へ紹介された.CTおよびMRI検査にて子宮頸部後壁に腫瘤性病変を認め,直腸との境界が一部不明瞭であった.また,子宮頸部生検では腺癌の診断で,免疫組織化学染色ではCK7陰性,CK20陽性であったため,盲腸癌の子宮転移が疑われた.婦人科と合同で広汎子宮全摘術,直腸部分切除術を施行した.術後経過は良好で第12病日に退院.術後病理組織学的検査にて高分化~中分化管状腺癌であり,盲腸癌の子宮頸部転移の診断となった.現在,無再発生存中である.大腸癌の子宮頸部転移は非常に稀であるため報告する.
  • 岡山 卓史, 吉田 順一, 奥村 幹夫, 宮竹 英志, 中原 千尋, 大谷 和広
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2241-2246
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    後天性血友病とは出血歴や家族歴がない非血友病者に凝固因子に対するインヒビターが出現することにより,出血症状を呈する疾患である.近年報告が増加しているが,まれな疾患である.症例は83歳の女性.上行結腸癌に対して腹腔鏡下右半結腸切除を施行していた.術後は特に問題なく自宅退院していた.術後1カ月以上経過して右上腕血腫,activated partial thromboplastin time(APTT)が延長する凝固系の異常から後天性血友病と診断し,適切な治療により完解へ至った.死亡率が高率であるため,本疾患が疑われる際には,場合により確定診断を待たずに治療を開始する必要があるといわれている.また高齢者に多く,自己免疫疾患や悪性腫瘍等の基礎疾患のある患者が半数以上を占めるとされている.原因不明の出血症状,APTTの延長を認めた際には後天性血友病も念頭に置く必要がある.
  • 木村 有希, 森本 光昭, 堀江 久永, 巷野 佳彦, 鯉沼 広治, 佐田 尚宏
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2247-2252
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の女性.近親者の大腸癌罹患による不安から近医を受診した.大腸内視鏡検査は挿入困難であった.注腸検査で上行結腸癌を疑われ精査加療目的に当院へ紹介となった.ダブルバルーン内視鏡検査で上行結腸癌と診断された.3D-CT angiographyではSMV rotation signを認め,腸回転異常症を伴う上行結腸癌の診断で開腹回盲部切除術を施行した.手術所見では,上行結腸は後腹膜に固定されておらず,小腸は十二指腸尾側より肝下面に内ヘルニアをきたし,paraduodenal hernia typeの腸回転異常症と診断された.郭清は回結腸動脈を根部で切離してD3とした.内ヘルニアの小腸は右上腹部で後腹膜に強固に癒着しており,これまで無症状であったことから整復は行わなかった.内ヘルニアを伴う腸回転異常症に併存する大腸癌は稀であり,文献的考察を含めて報告する.
  • 武田 正, 田中屋 宏爾, 金谷 信彦, 青木 秀樹, 竹内 仁司
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2253-2258
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    Lynch症候群はミスマッチ修復遺伝子の生殖細胞系列変異を原因とし,大腸癌などの様々な関連腫瘍を好発する常染色体優性遺伝性疾患である.癌家族歴は乏しいものの臨床・病理学的特徴を契機に診断しえたLynch症候群の1例を経験したので,若干の考察を加えて報告する.自験例は40歳の男性.健診の便潜血陽性を契機に盲腸および横行結腸癌と診断され,拡大結腸右半切除術D3を施行した.第1度近親者に癌家族歴を認めなかったが,若年の同時性多発結腸癌で,腫瘍内リンパ球浸潤などの高頻度マイクロサテライト不安定性(MSI-H)大腸癌に特徴的な組織学的所見を有していたことからLynch症候群を疑った.MSI検査でMSI-Hを呈し,ミスマッチ修復タンパクの免疫染色にてMLH1とPMS2の欠失を認めた.遺伝カウンセリング後の遺伝学的検査で,MLH1の生殖細胞系列変異を認め,Lynch症候群と診断した.
  • 中山 真緒, 吉松 和彦, 横溝 肇, 矢野 有紀, 岡山 幸代, 成高 義彦
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2259-2263
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    抗EGFR抗体併用療法が無効と考えられたKRAS exon 2野生型・exon 4変異型大腸癌の1例を経験したので報告する.症例は29歳,女性.発熱と腹痛を主訴に受診し,膀胱,腹壁浸潤,および腹壁膿瘍を伴う9cm大のS状結腸癌と診断した.根治切除は困難でKRAS(従来のKRAS測定対象)野生型であったため,一次治療にmFOLFOX6 + Cetuximab 4コース,二次治療にFOLFIRI + Cetuximab 2コースを行ったがいずれも増悪を認めた.三次治療でFOLFIRI + Bevacizumabを行ったところ奏効し原発巣は7コース後,5cm大に縮小し根治切除を行った.後にALL RASの追加測定でKRAS exon 4変異を認めたことから,KRAS変異のためCetuximabの腫瘍縮小効果が得られなかった可能性が考えられた.
  • 福井 雄大, 進藤 潤一, 富沢 賢治, 的場 周一郎, 黒柳 洋弥
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2264-2269
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は47歳,女性.S状結腸癌および肝両葉に最大径9cmまでの転移を30個以上認め,切除不能と考えられた.FOLFOX + cetuximabを7コース施行したところ肝転移巣の著明な縮小を認めたものの,化学療法に伴う肝障害の出現と予定残肝容積が29.6%と過少であることから,一期的切除は困難と考えられた.マージナルな切除の可能性がかろうじて得られた状況において門脈塞栓術を行い一定期間無治療で待機することのリスクを考え,本症例は二期的肝切除(ALPPS)を選択した.初回手術にて腹腔鏡下S状結腸切除術,S2・S4部分切除術,右門脈結紮,in situ splittingを施行.15PODに拡大右肝切除術を施行した.術後は特に合併症を認めなかった.術前に転移を否定できない肺結節が認められていたため5-FU/LV + bevacizumabにて化学療法を継続しているが,術後1年時点で無再発生存中である.
  • 関根 隆一, 櫻庭 一馬, 木川 岳, 小山 英之, 塩澤 敏光, 大池 信之, 田中 淳一
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2270-2275
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は88歳,男性.他院の腹部超音波検査で上行結腸癌を指摘されていたが,急な肛門部痛があり当院を受診した.注腸検査で直腸に全周性狭窄を認め,大腸内視鏡検査はスコープ通過困難,狭窄部の生検はGroup1だった.各種検査を行うも確定診断できなかった.術中経肛門的粘膜下生検の迅速病理で低分化型腺癌または神経内分泌細胞癌と診断し,併存する上行結腸癌と共に腹腔鏡下直腸切断術,右半結腸切除術を施行した.病理診断はA,type2,75×65mm,tub1+muc,pT3(SS),pN0,pStage II,Rb,type4,45×35mm,neuroendocrine carcinoma,pT3(A),pN1,pStage IIIa,免疫組織化学染色で比較的特異性の高いproGRP陽性であり,神経内分泌細胞癌と診断した.びまん浸潤型,神経内分泌細胞癌と共に稀な病態の大腸癌症例を経験したので報告する.
  • 加籐 透, 青笹 季文, 野呂 拓史, 緒方 衝, 上野 秀樹, 山本 順司
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2276-2282
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は59歳の男性.体重減少を主訴に近医を受診,肝左葉全体を占める腫瘤を指摘された.HBs抗原陽性,HCV抗体陰性,肝機能はICG R15 5.3%,Child-Pugh分類でGrade Bであった.腹部CTで肝左葉に18×10×13cmの全肝の60%以上を占める多血性腫瘤を認め,門脈左枝の完全閉塞および右枝から後区域枝,前区域枝までの腫瘍栓(Vp4)を認めた.肝動注化学療法および腫瘍栓に対して肝動脈化学塞栓療法を施行後に,腫瘍栓に対し強度変調放射線治療を施行.約1カ月後の画像では縮小効果を認めず腫瘍栓の造影効果減弱のみであったが,拡大左肝切除術,門脈腫瘍栓摘出術を施行.術後5カ月目にS7残存肝内転移巣に対しTACEを施行.現在術後2年7カ月無再発生存中である.直径10cmを超え門脈内腫瘍栓を伴う肝細胞癌の予後は不良であるが,術前放射線治療を含む集学的治療が有効であった症例を経験したので報告する.
  • 中島 啓吾, 筒井 信浩, 大平 寛典, 山内 栄五郎, 鈴木 裕
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2283-2286
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は86歳,男性.進行胃癌に対して腹腔鏡下幽門側胃切除,Roux-en Y再建を施行後6年目に胆石性胆嚢炎,総胆管結石による閉塞性化膿性胆管炎を発症した.CT上,胆嚢の腫大も認めたため,胆嚢からのドレナージで胆管炎のコントロール可能と判断し,第1病日に経皮経肝胆嚢ドレナージ(PTGBD)を施行した.本症例はRoux-en Y再建後であり,内視鏡的に総胆管結石を除石することは困難であるため,第13病日にPTGBD経由で除石を試みたが,ガイドワイヤーを胆嚢管に通すことができずに断念した.第25病日に腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った際に,胆嚢管を直線化することによりPTGBD経由で術中除石を行うことができた.
    今回,腹腔鏡下胆嚢摘出術を行う際に胆嚢管を直線化することによりPTGBD経由で総胆管結石除石を行った症例を経験したため,文献的考察を加え報告する.
  • 松木 裕輝, 森 隆太郎, 松山 隆生, 熊本 宜文, 武田 和永, 遠藤 格
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2287-2293
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は88歳の男性.間欠的な上腹部痛を主訴に前医を受診した.腹部超音波および造影CT検査で膵尾部に35mm大の腫瘤を指摘され,精査加療目的に当院を紹介受診した.EUS-FNAを行い,class Vであったため膵尾部癌と診断した.膵体尾部切除術(以下,DP)の方針としたが,胃癌に対する幽門側胃切除術+D2郭清(以下,DG)後であり,脾動脈切離に伴う残胃の虚血が危惧された.術中脾動脈遮断後にindocyanie green(以下,ICG)蛍光静注法を用いて残胃の血流が保たれていることを確認し,残胃を温存して手術を終了した.術後9日目から食事を開始し,以後,合併症なく経過し術後16日目に退院した.胃癌に対するDG後には残胃への血流は脾動脈とその分枝からのみとなり,DPを施行した場合,残胃に虚血性合併症のリスクを伴うと言われる.本症例はICG蛍光法を用いた血流評価により安全に残胃を温存することができた.
  • 谷口 竜太, 松村 勝, 楠田 慎一, 坂本 吉隆
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2294-2298
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は90歳,男性.下部直腸癌に対して腹腔鏡下腹会陰式直腸切断術を施行した.最終病期はpT2,N0,H0,P0,M0のfstage IIであった.合併症なく経過し,術後18日目に退院した.外来で経過観察中,術後半年が経過した頃より会陰部の膨隆を自覚された.長時間の歩行によって不快感を伴う疼痛が出現したため,骨盤MRIを施行した.骨盤底部から会陰皮下に脱出する小腸を認め,続発性会陰ヘルニアと診断し,経会陰アプローチでComposix meshを用いた修復術を施行した.現在術後6カ月経過しているが,再発は認めていない.続発性会陰ヘルニアは稀な疾患であり,本邦では会議録を除くと23例の報告がされている.自験例も含め臨床的特徴について報告する.
  • 菅野 裕樹, 貝羽 義浩, 渡辺 徹雄, 関口 悟, 菊池 寛
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2299-2302
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は58歳,男性.交通外傷による腹部臓器損傷から約2年後,右側腹部の膨隆が出現したため近医を受診し,腹壁ヘルニアの診断で手術目的に当科紹介となった.初診時,右側腹部に筋膜欠損を伴う約10cmの柔らかい膨隆を触知し,腹部造影CTを施行したところ右腸骨稜に沿って腹横筋・腹斜筋の断裂を認め,同部位より上行結腸が脱出していた.以上より,遅発性に発症した外傷性腹壁ヘルニアの診断にて腹腔鏡下腹壁ヘルニア修復術を施行した.術後は合併症なく経過し第3病日に退院した.外傷性腹壁ヘルニアに対する腹腔鏡下修復術はこれまで報告が少ないが,自験例では術後入院日数が短く,現在まで再発を認めておらず,同疾患に対して有用な方法と考えられた.
  • 鈴木 崇史, 市川 伸樹, 柏倉 さゆり, 石川 倫啓, 辻 健志, 上泉 洋
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2303-2310
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,男性.平成19年に右鼠径ヘルニアに対し,当科でヘルニア根治術(Kugel法)を施行した.平成25年より右下腹部に硬結が出現したが,経過観察していた.平成27年8月に膿尿を主訴に当院泌尿器を受診した.CTの結果,腹膜前腔膿瘍の診断となり,同年10月に当科紹介となった.膿瘍に対する経皮的ドレナージ・膿瘍造影を施行すると,腹膜前腔膿瘍は虫垂および膀胱と連続しており,遅発性メッシュ感染が虫垂・膀胱と瘻孔形成していると判明した.このためメッシュ除去術,虫垂切除術,膀胱部分切除術を施行した.術後に創部感染および膀胱瘻の再開通を認めたが,保存的に改善した.以後,感染の再燃はないが,軽度の腹壁瘢痕ヘルニアを認めている.鼠径ヘルニア術後の遅発性メッシュ感染に関しては,本邦でも報告例が散見される.しかし自験例のように,膿瘍が虫垂・膀胱と同時に瘻孔形成した症例は稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 梶岡 裕紀, 岩川 和秀, 磯田 健太, 稲垣 優, 岩垣 博巳
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2311-2314
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.2014年6月に両側鼠径ヘルニア(日本ヘルニア学会分類 右:IV(I-2,II-2),左:II-2)に対してtransabdominal preperitneal hernia repair(以下TAPP)を施行し,外来にて経過観察中であった.同年7月下旬より腹部膨満感を主訴に来院した.CTにて膀胱前腔に小腸の嵌入およびその嵌入部にて腸管の狭窄と口側腸管の拡張が認められた.イレウス管を挿入し,1週間の保存的加療を行うも改善しないため手術の方針とした.腹腔鏡で腹腔内を観察した際に左鼠径ヘルニア部の閉鎖した腹膜が離解し,膀胱前腔に小腸が嵌り込み,さらにメッシュと小腸の強固な癒着を認めた.腹腔鏡での手術継続は困難と考え,開腹手術へ移行した.癒着剥離術を施行し,膀胱前腔への欠損孔を閉鎖した.TAPPでは閉鎖した腹膜の離解による腸閉塞を生じる可能性があり,注意が必要である.
  • 榎田 泰明, 富澤 直樹, 岡田 拓久, 黒崎 亮, 荒川 和久, 安東 立正
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2315-2319
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,男性.既往歴:12年前に直腸癌に対して骨盤内臓全摘術施行.8年前より右の鼠径ヘルニアと傍尿路ストマヘルニアを認め,増大傾向にあったが術中の癒着剥離による腸管損傷・メッシュ感染などを危惧して経過観察としていた.2週前からの左側腹痛と嘔吐を主訴に外来を受診し,S状結腸憩室炎に伴う狭窄・腸閉塞を認めた.人工肛門に減圧チューブを挿入し,抗生剤投与を行うも結腸の通過障害が改善ないため,結腸狭窄と2箇所のヘルニアに対して手術を行った.結腸狭窄に対してはS状結腸切除と人工肛門造設を行い,傍ストマヘルニアは腹直筋鞘の直接縫合を行い修復した.右鼠径ヘルニアに対しては,自家組織(外側大腿筋膜張筋弁)を用いたヘルニア修復を行った.術後経過は,大腿創部の小範囲の皮膚壊死を認めたが重大な合併症をなく経過した.現在,術後9カ月経過し再発を認めていない.
  • 渡部 嘉文, 中場 寛行, 谷口 英治, 吉川 浩之, 玉川 浩司, 佐々木 優, 有馬 良一
    2016 年 77 巻 9 号 p. 2320-2324
    発行日: 2016年
    公開日: 2017/03/31
    ジャーナル フリー
    症例は76歳,男性.体動時に下腹部痛を認め,近医で左腹直筋内の腫瘤を指摘されたため当院紹介.CTで左腹直筋内に辺縁造影効果を伴う23×23×52mmの低信号域を認めた.腫瘤はMRIのT1/T2強調画像で低信号,拡散強調画像で高信号を示した.画像所見では鑑別診断を行うことは困難であり,超音波下針生検を追加施行した.針生検の結果で紡錘形細胞肉腫が疑われたため,腫瘍摘出術を施行した.摘出標本の病理組織学的検査でzonal patternと呼ばれる腫瘤辺縁部の骨梁形成を認め,骨化性筋炎と診断した.術後に再発を疑う所見は認めていない.
    骨化性筋炎が腹直筋内に発生することは極めて稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
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編集後記
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