日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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78 巻, 3 号
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原著
  • 石塚 満, 小山 裕介, 阿部 暁人, 田中 元樹, 青木 琢, 窪田 敬一
    2017 年 78 巻 3 号 p. 427-433
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:Carcinoembryonic antigen(CEA)正常進行胃癌患者において,小野寺インデックス(Onodera's Prognostic Nutritional Index;O-PNI)の有用性を検討すること.
    方法:2000年4月から2010年9月までの間に当科で予定手術を施行した,術前CEA正常(≤5.0ng/ml)進行胃癌患者160人を対象とした.O-PNIのcut-off値45を設定しグループ分けを行い,予後との関連については単,多変量解析そしてKaplan-Meier法による生存解析を行った.
    結果:多変量解析を行った結果O-PNI(>45/≤45)は年齢,肉眼型とともに予後関連因子であり,平均生存期間はO-PNI≤45群で有意に短かかった(P>0.001).
    結論:CEA正常進行胃癌患者においてO-PNIは重要な予後関連因子であった.
  • 齋藤 健太郎, 三澤 一仁, 大島 由佳, 沢田 尭史, 上坂 貴洋, 寺崎 康展, 皆川 のぞみ, 奥田 耕司, 大島 隆宏, 大川 由美
    2017 年 78 巻 3 号 p. 434-441
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:遺伝子組み換えトロンボモジュリン(以下,rTM)は消化管穿孔による敗血症性DICの治療薬として合理的な薬理作用を有しているが,腹部緊急手術後の使用報告はまだ少ない.そこで,下部消化管穿孔術後の敗血症性DICに対する本剤の有効性を検証した.
    対象・方法:2011年5月~2016年7月までに手術を行った下部消化管穿孔症例のうち,術後にDIC scoreが4点以上だった21例を対象とし,rTMの有効性の検討を行った.rTM群が15例,非rTM群が6例である.
    結果:DIC離脱率はrTM群で有意に改善した.rTM群ではDIC score,SOFA scoreともに5日目で改善しており,非rTM群と比較し改善が速やかだった.
    結語:下部消化管穿孔術後に発症した敗血症性DICに対し,rTMは治療戦略として有効である可能性が示唆された.
臨床経験
  • 柳沼 裕嗣, 吉川 真生, 西江 尚貴, 水谷 尚雄
    2017 年 78 巻 3 号 p. 442-446
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    高齢者の急性膿胸に対する線維素溶解療法の報告は少数であり,その治療効果は明らかではない.平成23年以降に当院で線維素溶解療法を受けた75歳以上の急性膿胸10例について,後ろ向きに検討を行った.男性8例,女性2例であり,年齢の中央値は84歳であった.全例で何らかの既往疾患を有し,6例はperformance status(PS)が3以上であった.9例で膿胸の治癒が得られ,重篤な有害事象は認めなかった.治療後のドレーン留置期間と入院期間の中央値はそれぞれ6日と29日であった.PS良好群(PS0-2)とPS不良群(PS3-4)に分けた検討では,PS良好群の方が有意にドレーン留置期間(p=0.018)と入院期間(P=0.019)が短縮していた.高齢者の急性膿胸に対し線維素溶解療法は重篤な合併症も無く安全な治療といえる.治療効果も概ね良好であったが,PS不良な症例ではその効果が限定される可能性もある.
  • 澤崎 翔, 玉川 洋, 井上 広英, 大島 貴, 利野 靖, 益田 宗孝
    2017 年 78 巻 3 号 p. 447-451
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    目的:癌性腹膜炎に伴う腹水は難治性で,腹部膨満感などの症状により患者のQOLを著しく低下させる.癌性腹水の症状緩和目的に挿入した腹腔-静脈シャント(デンバーシャント)の安全性および有用性を明らかにする.
    対象と方法:デンバーシャントを造設した癌性腹水患者29例について,後方視的に臨床的因子を検討した.
    結果:原疾患は膵癌15例,胆管癌6例,胆嚢癌5例,乳癌2例,腹膜悪性中皮腫1例であった.腹部膨満感は24例(85.7%)で改善した.Clavien-Dindo分類Grade2以上の術後合併症は12例(41.4%),在院死は3例(10.3%),術後の生存期間中央値は47日(0-291日,術後急死1例含む)であった.
    結語:デンバーシャントは癌性腹水による症状の改善に有用であったが,周術期死亡例や生存期間が1カ月未満の症例もあり,適応を慎重に考える必要がある.
症例
  • 和久 利彦, 園部 宏
    2017 年 78 巻 3 号 p. 452-457
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は63歳の男性.2カ月前から出現した左頸部リンパ節腫脹のため他院で頸部リンパ節生検を行ったが診断できず,確定診断および治療目的で他院より紹介となった.CT・PET検査では,甲状腺左葉の5cm大の腫瘤と左頸部から上縦隔にかけての複数のリンパ節腫大のみを認めた.甲状腺左葉腫瘤の穿刺細胞診は鑑別困難であった.低悪性度甲状腺悪性リンパ腫および左頸部~上縦隔リンパ節浸潤との術前診断で,確定診断と一期的な治療を兼ねて甲状腺全摘およびリンパ節郭清を施行した.リンパ節浸潤を伴うgrade1相当のBCL2陰性限局期甲状腺濾胞性リンパ腫と診断され,追加治療は行うことなく良好な経過が得られている.予後の良いBCL2陰性限局期甲状腺濾胞性リンパ腫では,甲状腺全摘術単独治療も治療選択肢の一つになる可能性があると考えられた.
  • 後藤 與四成, 崎山 香奈, 吉田 崇
    2017 年 78 巻 3 号 p. 458-461
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は29歳,女性.左乳房乳頭部の腫瘤と血性分泌を自覚し,当科を受診.左乳頭部に2cm大の腫瘤が認められ,生検の結果,乳頭部腺腫の診断となった.生検後に妊娠6週であることが判明したが,良性腫瘍であり出産してから切除の方針となった.出産までは6週毎に超音波により大きさを計測し経過観察した.妊娠中は増大を認めず,妊娠41週で出産し1カ月後,腫瘤摘出術を施行した.
    乳頭部腺腫は臨床像がPaget病に類似し,組織学的にも浸潤癌と誤認される可能性がある疾患である.40歳台に好発するが,出産が多い30歳前後での発生も多数報告されている.乳頭部の腫瘤を認めた場合は,妊娠中であっても,本疾患の可能性を考慮し過剰な治療を行わないように対応することが重要と考えられた.
  • 藤島 則明, 松岡 永, 甫喜本 憲弘, 山井 礼道, 谷田 信行, 浜口 伸正, 頼田 顕辞, 黒田 直人
    2017 年 78 巻 3 号 p. 462-466
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.左乳癌,胃癌術後の経過観察中にCA19-9が4,339U/mlと急上昇した.自覚症状はなかった.CTにて前縦隔に20mmの嚢胞性腫瘤を認めた.内部に隆起性病変はみられなかった.FDG-PETにては集積を認めず良性胸腺嚢胞が疑われた.他には明らかな病変はみられなかった.胸骨縦切開により摘出術を行った.大きさ40mmの多房性の嚢胞で周囲への癒着,浸潤はなかった.内容液は淡黄色,清でCEA 73,400ng/ml,CA19-9 17,020,000U/mlと異常高値であった.病理組織学的検査では胸腺嚢胞の診断で悪性所見はなかった.免疫組織学的検査では嚢胞上皮はCA19-9に陽性,CEAに陰性であった.術後,速やかに腫瘍マーカーは基準値以内に低下し,再上昇はみられていない.胸腺嚢胞液中の腫瘍マーカーは高値のことが多いが,血清中の腫瘍マーカーが上昇することは極めて稀であり興味深い症例と思われた.
  • 佐藤 健一郎, 白杉 岳洋
    2017 年 78 巻 3 号 p. 467-469
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.54歳時から血液透析を行っていた.労作時呼吸困難を主訴に受診し,超音波検査で重症大動脈弁狭窄症と診断されたため,生体弁による大動脈弁置換術を行った.術後9カ月目より超音波上大動脈弁位圧較差が大きくなり,労作時呼吸困難が増悪.再弁置換術を予定し入院中に心肺停止となり死亡した.剖検所見で生体弁は高度な石灰化で開放制限を認めていた.術後10カ月で急激に進行した生体弁機能不全の1例を経験したので報告する.
  • 池田 宜孝, 郷良 秀典, 斉藤 聰, 小林 俊郎
    2017 年 78 巻 3 号 p. 470-475
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤術後,腰動脈からの出血のために人工血管を被覆した瘤壁が拡大し,術後10年目に再手術を施行した稀な1例を経験したので報告する.症例は78歳の男性,68歳時に90mmの腎動脈下腹部大動脈瘤に対し人工血管置換術が施行された.術後1カ月目のCTで少量の血腫が人工血管周囲に認められていたが,6年目の腹部CTでも血腫は消失せず,術後10年目には62mmに拡大したため再手術を施行した.被覆した瘤壁を切開すると,壁内に多量の赤色血栓が認められた.出血源は前回手術で処置されていたと思われる腰動脈であった.今回の原因として,一旦止血されていた腰動脈から術後比較的早期に再出血し,被覆瘤壁が拡大したと思われた.また,腹部大動脈瘤術後に7年後に頸動脈血栓内膜摘除を施行され,その後,抗血小板剤を投与されたことは瘤壁拡大に拍車をかけたと思われた.
  • 山仲 一輝, 白石 龍二, 谷 和行, 菅野 健児, 益田 宗孝
    2017 年 78 巻 3 号 p. 476-481
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,女性.胸部X線写真で左中肺野に増大傾向を示す腫瘤陰影を指摘され当院紹介受診.CT検査で左第4肋骨を軽度破壊し,その内側面から胸腔方向に突出する最大径7cmの腫瘤を認め,MRI検査ではT1強調像で低信号,T2強調像で高信号を示した.肋骨あるいは胸膜原発の腫瘍を疑い,診断・治療目的で手術を施行した.術中迅速病理で軟骨腫が疑われたが,低悪性度の軟骨肉腫の可能性も考慮し,3cmの切除縁を確保し腫瘍を含む広範切除術を施行した.最終的な病理組織学的診断はGrade Iの軟骨肉腫であった.術後は無再発で外来経過観察としていたが,手術より2年8カ月経過後に他病死(脳出血)された.軟骨肉腫の治療は化学療法や放射線療法に抵抗性で,外科的切除が適応となるが,術前に確定診断を得ることは難しく,その手術に際しては悪性の可能性を常に念頭に置き,十分な切除縁を確保した広範切除を行うことが重要である.
  • 加藤 文彦, 山本 聖一郎, 金井 歳雄, 亀山 香織, 中川 基人
    2017 年 78 巻 3 号 p. 482-488
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は78歳,女性.胸焼け・嚥下時つかえ感を主訴に受診.上部消化管内視鏡では,切歯25-29cm右壁に大きな粘膜下腫瘍を認めた.胸部造影CTでは,気管分岐直下の後縦隔に食道内腔を右側から閉塞させる44mm大の腫瘤を認めた.食道粘膜下腫瘍と診断し手術を実施した.右開胸をおくと,奇静脈弓尾側に食道右壁から連続する腫瘍を認めた.腫瘍を核出すると,食道筋層に長軸方向55mm,1/2周性の欠損を生じた.右第4-5肋間から有茎の肋間筋弁を作成,筋層欠損部を被覆し手術を終了した.検体は40mmの淡黄色充実性腫瘍であり,病理にて食道神経鞘腫と診断した.術後経過は良好であり,通過障害は完治した.腫瘍核出後の食道壁欠損に対し,肋間筋弁被覆をおいて食道切除を回避した報告は散見される.本症例の55mm大の筋層欠損はその中で最も大きく,本術式の適応を考えるうえで貴重な経験と考えられた.
  • 臼井 弘明, 鈴木 正彦, 浅羽 雄太郎, 三宅 隆史, 鶴岡 琢也, 水上 泰延
    2017 年 78 巻 3 号 p. 489-493
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は70代,女性.主訴はつかえ感.上部消化管検査で下部食道の扁平上皮癌と診断した.CTでは胸部下部食道に腫瘤を形成する5cm大の腫瘤で,左胸腔に突出し胸膜浸潤を疑った.治療方針決定のため,治療前審査胸腔鏡を行った.検査所見では食道癌に相当する壁側胸膜には癌浸潤を認めなかったが,横隔膜の一部に白色変化と胸膜肥厚を認めた.胸膜播種の可能性を否定するため,同部位の壁側胸膜と胸水の採取を行った.病理検査では双方に悪性所見を認めず,cT3N0M0と診断した.根治切除可能と判断し,術前化学療法(FP:CDDP 80mg/m2×1日+5-FU 800mg/m2×5日)を2回行い,効果判定はPRであった.術前化学療法終了3週後,右開胸開腹食道亜全摘2領域郭清を行った.最終病理診断はSCCypT3N0M0で根治的治療を行うことができた.術後20カ月経過した現在,無再発生存中である.
  • 國友 知義, 青木 秀樹, 田中屋 宏爾, 竹内 仁司, 杉本 龍士郎, 山崎 理恵
    2017 年 78 巻 3 号 p. 494-499
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    食道類基底細胞癌はまれな疾患で,予後は不良とされている.さらに肝転移巣を切除後,長期生存を得られた症例はまれである.今回,われわれは原発巣切除後に肝転移を2度切除し,長期生存を得られた症例を経験したので報告する.症例は59歳の男性.嚥下時つかえ感を主訴に来院し,精査を行った結果,胸部下部食道に2型腫瘍を認めた.食道亜全摘術を施行し,二期的再建前に肝S7に転移性肝腫瘍の出現を認めた.再建と同時に肝部分切除術を施行し,食道類基底細胞癌の肝転移と診断した.経過観察中に再度肝S7に腫瘤性病変が出現したため,化学療法を施行後に肝S7亜区域切除術を行った.術後化学療法は施行せず経過観察を行っているが,原発巣切除後5年2カ月(転移性肝腫瘍切除後4年3カ月)経過した現在も無再発生存中である.
  • 庫本 達, 野村 栄治, 町田 隆志, 茅野 新, 平岩 真一郎, 田尻 琢磨
    2017 年 78 巻 3 号 p. 500-507
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は66歳,男性.4年前に心窩部痛のため,上部消化管内視鏡検査を施行され胃体上部大弯にびらんと小隆起を指摘されたが,生検でGroup2であったため経過観察されていた.また,2年前よりMikulicz病と診断されステロイド内服にて通院加療中であった.経過観察のための上部消化管内視鏡検査で粘膜不正の明瞭化,隆起が増大し,生検で高分化腺癌が認められたため当科紹介となった.CT検査で病変部の著明な壁肥厚と腫大したリンパ節を認めたため,スキルス胃癌を疑い審査腹腔鏡を施行した.病変近傍に異型性を有する小結節を認めたため術前化学療法(S-1+CDDP療法:2クール)を施行後に胃全摘術および脾臓合併切除術,D2郭清を施行した.病理組織検査では,腫大硬化したリンパ節はIgG4関連リンパ節症と診断された.IgG4関連疾患に合併した胃癌では,その進行度診断が困難であるため,IgG4関連疾患に伴う胃壁の肥厚とリンパ節の腫大を考慮に入れて治療方針を決定する必要がある.
  • 松三 雄騎, 小橋 研太, 羽田野 雅英, 石井 博, 黒河 達雄, 常光 謙輔
    2017 年 78 巻 3 号 p. 508-514
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    十二指腸動静脈奇形(arteriovenous malformation;AVM)はまれな疾患であるが,難治性潰瘍や消化管出血などをきたし治療に難渋することがある.今回,AVMの流入動脈と範囲を同定し術前に動脈塞栓術(transcatheter arterial embolization;TAE)することで,安全に十二指腸部分切除を施行することができた症例を経験した.症例は45歳の男性.吐血を主訴に救急搬送され,緊急内視鏡にて十二指腸水平脚に露出血管を伴う潰瘍を認めた.造影CTと血管造影にて十二指腸AVMと診断した.AVMからの術中多量出血が危惧されたため,手術2日前に流入動脈のTAEを施行した.十二指腸AVMに対し術中出血コントロール目的の術前TAEを施行した報告はなく,文献的考察を加え報告する.
  • 岡田 拓久, 荒川 和久, 榎田 泰明, 富澤 直樹, 安東 立正, 井出 宗則
    2017 年 78 巻 3 号 p. 515-520
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    良性線維性組織球腫(benign fibrous histiocytoma;以下,BFH)が腸管に原発することは非常に稀であるが,今回,十二指腸原発BFHに対して手術を行った1例を経験した.症例は60歳,男性.主訴は腹痛であった.上部消化管内視鏡検査・CT検査で十二指腸球部に粘膜下腫瘍を認めた.超音波内視鏡下穿刺吸引術で組織球系腫瘍が疑われた.有症状であり悪性も否定できず,幽門側胃切除,リンパ節郭清,Roux-en-Y再建を施行した.病理組織学的所見では腫瘍細胞には明らかな悪性を示唆する所見はなく,組織球の集蔟を認め,様々な免疫染色検査の結果,CD68/CD163/CD31がびまん性に陽性でありBFHと診断した.術後18カ月を経過したが,再発所見は認めていない.腸管に発生したBFHの報告はほとんどなく非常に稀な症例であるため,文献的考察を含めて報告する.
  • 安藤 拓也, 谷 達夫, 内藤 哲也, 皆川 昌広, 長谷川 潤, 薄田 浩幸, 島影 尚弘
    2017 年 78 巻 3 号 p. 521-526
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,男性.嘔気と嘔吐を主訴に近医を受診し,貧血がみられたため当院紹介となった.腹部骨盤造影CTで上部空腸の小腸腫瘍を認め,小腸内視鏡では表層粘膜が発赤乳頭状で頂部に粘膜欠損を伴う隆起性病変を認めた.経過中に腫瘍出血による急速な貧血進行を認めたため,緊急で腹腔鏡補助下小腸部分切除術を施行した.病理組織学的所見では,核分裂像の目立つ腫瘍細胞が上皮のようにシート状に配列し,一部で管腔様構造の形成を認めた.免疫組織化学染色ではCD31とvimentinが陽性であり,小腸原発の類上皮血管肉腫と診断した.術後補助化学療法は施行せず経過観察していたが,腹膜播種の急速増大,多発肺転移を認め,術後約4カ月目に死亡した.
    類上皮血管肉腫は皮膚や軟部組織に好発する血管内皮細胞由来の悪性腫瘍であり,消化管を原発とする症例は極めて稀である.本症例は小腸を原発とする貴重な症例と考えられたため報告する.
  • 北口 大地, 久倉 勝治, 佐藤 泰樹, 倉田 昌直, 小田 竜也, 大河内 信弘
    2017 年 78 巻 3 号 p. 527-531
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    57歳,女性.眼瞼下垂・複視・構音障害・歩行障害を主訴に当院を受診し,重症筋無力症と診断された.腰椎評価目的のMRIで小腸間膜腫瘤を指摘され,診断的治療目的で腫瘍摘出術,小腸部分切除術を施行された.
    腫瘍はCD21陽性の紡錘形細胞の増殖からなり,背景に高度のリンパ球浸潤を伴うことから,炎症性偽腫瘍型濾胞樹状細胞肉腫と診断された.
    炎症性偽腫瘍型濾胞樹状細胞肉腫は極めて稀な腫瘍であり,多くは肝臓ないし脾臓に発生し,小腸間膜リンパ節に発生した症例は過去に報告されていない.また近年,腫瘍随伴症候群として,重症筋無力症との関連性が示唆されており,本症例においても両疾患が合併していることは,両疾患の関連を強く支持するものと考えられる.
    重症筋無力症に合併した小腸間膜リンパ節発生の炎症性偽腫瘍型濾胞樹状細胞肉腫の1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 林 憲吾, 羽田 匡宏, 大島 正寛, 加藤 洋介, 小竹 優範, 原 拓央
    2017 年 78 巻 3 号 p. 532-535
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は7歳,女児.前日より増悪する腹痛と発熱を主訴に当院小児科を受診し,急性虫垂炎の診断で当科に紹介となった.腹部CTでは,腫大した虫垂内に歯牙様の形態をした石灰化を伴う構造物を認め,歯牙迷入による急性虫垂炎を疑い同日単孔式腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.虫垂に穿孔はなく蜂窩織炎性虫垂炎の所見であり,型通りの虫垂切除術を施行した.摘出標本を開放すると9mm程度の歯牙を内部に認め,病理学的には壊疽性虫垂炎の所見であった.術後経過は問題なく,術後4日目で退院となった.異物による急性虫垂炎は比較的稀であり,その頻度は0.2~0.75%と報告されている.異物としては魚骨や義歯,種子などが多く,乳歯が誘因となった報告は検索した範囲では認めなかった.義歯や歯牙による異物性虫垂炎は穿孔しやすいという報告もあり,本症のように誤飲した歯牙が原因と思われる小児虫垂炎症例は速やかな手術が望ましいと考えられた.
  • 小寺澤 康文, 衣笠 章一, 門馬 浩行, 堀 宏成, 岸 真示, 中村 毅
    2017 年 78 巻 3 号 p. 536-541
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    68歳,男性.15年前に両側鼠径ヘルニアに対して前方アプローチによる手術を施行されている.右下腹部痛と右鼠径部腫瘤を主訴に当科外来を受診した.腹部CTにて,腫大した虫垂と腹壁へ連続した膿瘍を認めた.急性虫垂炎と右鼠径ヘルニアの再発による嵌頓を疑い緊急手術を行った.審査腹腔鏡を施行したところ,腫大した虫垂が中央部でプラグと穿通し,腹壁へ膿瘍を形成していた.プラグは周囲の組織と強固に癒着していた.腹腔鏡下に可及的にプラグを除去し,虫垂を切除した上で,鼠径部より経皮的に膿瘍をドレナージした.術後6カ月経過した現在も膿瘍の再燃は認めない.CTのみではメッシュの同定や鼠径部の詳細な診断は困難であり,腹腔鏡によるアプローチを先行したことで正確な診断を行い得た.治療では,原則としてメッシュを完全に除去すべきである.自験例では,完全には除去できなかったが,原因となる感染をコントロールすることによって治癒しえた.
  • 佐々木 愼, 寺井 恵美, 森園 剛樹, 中山 洋, 渡辺 俊之, 坂本 穆彦
    2017 年 78 巻 3 号 p. 542-547
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は97歳,男性.腹痛,発熱を主訴として救急搬送となった.来院時,CT検査にて急性虫垂炎と診断されたが,WBC 5,000/μl,CRP 0.38mg/dlで腹部症状も軽度であったため保存的加療となった.しかし翌日,症状が増悪したため虫垂切除術を施行した.術後の病理組織検査にて虫垂杯細胞カルチノイドと診断された.深達度T3であったが,切除断端陰性,脈管侵襲陰性,画像上転移を疑う腫大リンパ節を認めないこと,また超高齢であることから,追加切除や補助化学療法は行わずに経過をみることとした.現在術後1年3カ月,無再発生存中である.虫垂杯細胞カルチノイドは稀な疾患であるが,虫垂炎に対する虫垂切除後の病理検査で診断される場合が多い.その生物学的悪性度から追加腸切除の適応が検討されるが,特に高齢者においてはその対応に苦慮することも多い.高齢者に焦点をあてた文献的考察を加えて報告する.
  • 吾妻 祐哉, 中川 暢彦, 佐藤 敏, 石山 聡治, 森 俊明, 横井 一樹
    2017 年 78 巻 3 号 p. 548-551
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は72歳,女性.もともと直腸脱を指摘されていたが放置.排便後に温水洗浄便座を使用した.ノズルの先端が直腸内に入ったため立ち上がったところ,いつもと違う感覚があった.その後,経肛門的に小腸の脱出があり当院救急外来を受診した.来院時所見でも経肛門的に小腸の脱出を認めた.脱出した小腸は徒手整復困難であり緊急手術の方針となった.直腸前壁に3cm長の全層性裂傷を認め,外傷性直腸穿孔とそれに伴う経肛門的小腸脱出と考えられた.腹腔内の汚染は軽度.小腸の還納と直腸低位前方切除を施行.術後経過は良好で術後10日目に独歩で退院した.肛門からの小腸脱出は,直腸脱や子宮脱などの既往がある場合が多い.今回はさらに温水洗浄便座のノズルが原因と考えられる症例であり,直腸脱患者の温水洗浄便座使用に対しては注意喚起が必要である.
  • 安井 七々子, 岩川 和秀, 磯田 健太, 常光 洋輔, 稲垣 優, 岩垣 博巳
    2017 年 78 巻 3 号 p. 552-557
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は50歳台,女性.血便と体重減少を認め,当院受診.下部消化管内視鏡検査で直腸癌を認めCTで仙骨浸潤(S4以下)・側方リンパ節腫大を認めた.根治術は困難と考え,化学放射線療法(以下CRT)を行い,治癒切除を試みる方針とした.局所への放射線療法(4,500cGy/25回)とTS-1 100mg/dayを2投1休で2クール施行した.CRT終了約1カ月後のCTで腫瘍は縮小し,CRT終了約2カ月後に腹仙骨式直腸切断術・仙骨合併切除術を施行した.病理組織では高分化腺癌・粘液癌が少量残存していたが,大半は瘢痕による線維化であり,組織学的CRT効果はGrade2で剥離断端も陰性であった.治癒切除が困難な仙骨浸潤を有する進行直腸癌に対する術前CRTは,腫瘍縮小,down staging,根治切除率の向上,局所再発制御,周囲臓器の機能温存等の点から有用であり,選択すべき治療オプションの一つとなり得る.
  • 福田 雄三, 諸藤 教彰, 清水 一起, 菊一 雅弘
    2017 年 78 巻 3 号 p. 558-563
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    腸閉塞を契機に発見される直腸癌はしばしば見られる.今回,経肛門腸管減圧後に根治切除を行った閉塞性直腸癌にサイトメガロウイルス(以下CMV)腸炎が合併していた1例を経験したため報告する.症例は68歳の男性で,便秘・腹部膨満を主訴に受診,直腸癌による腸閉塞の診断となった.経肛門的に2週間の減圧後,直腸前方切除(D3郭清)による根治術を施行した.十分な腸管減圧により安全な手術が可能であった.摘出標本では,腫瘍口側に広範な直腸潰瘍を認め,同部位の病理結果でCMV腸炎の合併を認めた.術後黒色便のため施行した上部消化管内視鏡検査で,逆流性食道炎,多発十二指腸潰瘍を認めたが,こちらの生検ではCMV感染は確認できなかった.PPI投与のみで症状・所見ともに改善し,退院となった.大腸・直腸癌にCMV腸炎が合併した症例は極めて稀であり報告する.
  • 寺田 卓郎, 三井 毅, 天谷 奨, 高嶋 吉浩, 宗本 義則, 宮山 士朗
    2017 年 78 巻 3 号 p. 564-570
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    7歳女児の限局性結節性過形成に対して,腹腔鏡下肝切除を施行した1例を経験した.患者はインフルエンザによる発熱で受診したが,腹部に腫瘤を触知し精査を行った.造影CTでは肝S 5,6より連続して尾側に突出する75×70mmの多血性腫瘤を認めた.腫瘤内部は不均一で中心瘢痕を有し,肝動脈枝(A5)が中心瘢痕から末梢に放射状に走行していた.造影MRIおよびソナゾイド造影超音波検査所見からも限局性結節性過形成(focal nodular hyperplasia;FNH)が第一に考えられた.腫瘤は肝弯部結腸を圧排しており,また出血,梗塞,感染の合併などの危険性を考え切除の方針とした.手術は腹腔鏡下肝部分切除を施行した.病理組織学的に腫瘤は肝細胞の増生からなり中心瘢痕部に細胆管増生や筋性の異常動脈を認め,FNHと診断した.術後は第6病日に退院し,術後2年9カ月現在,再発は認めていない.
  • 松本 亮, 橋本 敏章, 北島 正親, 長置 健司, 伊藤 裕司, 古井 純一郎
    2017 年 78 巻 3 号 p. 571-577
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,男性.健康診断の腹部超音波で肝腫瘍を指摘された.血液生化学検査で,肝機能異常は認めず,ウイルスマーカーは陰性,腫瘍マーカーは基準値内であった.肝S6に足側に突出する36mmの腫瘤は,造影CTで動脈相から門脈相にかけて淡く造影され,その後wash outをされた.鑑別診断として,肝細胞癌や孤立性線維性腫瘍や限局性結節性過形成,肝細胞線種などの良性腫瘍が考えられたが,経皮経肝的腫瘍生検は播種の危険性があるため,肝部分切除術を施行した.摘出標本は表面平滑,弾性・軟で境界やや不明瞭,黄白色調充実性の単結節腫瘍であった.病理組織学的所見では,門脈領域にリンパ濾胞を伴い小型から中型の著明なリンパ球浸潤が認められた.免疫染色ではCD3(+),CD20(++),CD10(-),bcl-2(+)を示し,MALTリンパ腫と診断された.肝原発MALTリンパ腫は比較的まれな疾患であるが,非特異的な画像所見を呈する肝腫瘤では鑑別にあげる必要があると考えられた.
  • 山本 隆嗣, 渡辺 千絵, 宮崎 徹, 金田 和久, 大河 昌人, 上西 崇弘, 白石 友邦, 若狭 研一
    2017 年 78 巻 3 号 p. 578-584
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は68歳,女性.胆嚢内腫瘍を指摘されて来院した.血液生化学検査ではCEAとCA19-9は正常で,WBC 23,920/μL,CRP 9.14mg/dLであった.MRCPで胆嚢内に径2cmの腫瘤を認め,dynamic CTでは加えて門脈本幹から肝内門脈左枝の塞栓が見られ,PET-CTで胆嚢内腫瘍・門脈塞栓・傍大動脈リンパ節に高度集積を認めた.急性胆嚢炎を併発した進行胆嚢癌と診断し開腹胆嚢摘出術を施行したが,病理検査では腫瘤はフィブリン・凝血塊であった.無石性胆嚢炎より生じた反応性リンパ節炎と門脈内血栓と診断訂正した.Heparin/edoxaban投与で門脈血栓は縮小,外来で経過観察中である.胆嚢炎のみによる門脈血栓症はまれで,内外で20例の報告があるのみである.PETで高SUVを呈する血栓もあり,こういった病態もあることを念頭に置いて診療に臨むことも肝要であると考えられた.
  • 萩野 茂太, 中山 啓, 坂本 浩也, 佐々木 素子
    2017 年 78 巻 3 号 p. 585-590
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は73歳の女性で,28年前に関節リウマチを指摘され,プレドニゾロン5mg/日を内服中であった.今回,腹痛と嘔吐を主訴に救急外来を受診し緊急入院したが,翌朝に血圧が低下し腹痛も増悪した.血液検査で肝胆道系酵素や炎症反応の上昇,血小板数の低下や血中FDPの高値を認め,腹部CTでは胆嚢の腫大と胆嚢壁の肥厚を指摘された.急性胆嚢炎に伴う敗血症性ショックおよびDICと診断し,緊急開腹胆嚢摘出術を施行した.切除標本の肉眼所見では,胆嚢粘膜の壊死と胆嚢壁の肥厚を認めたが,胆嚢内に結石は認めなかった.病理組織学的診断では,全層性に胆嚢壁の壊死と血管壁を中心としたAA型アミロイドの沈着を認めた.壊疽性胆嚢炎の原因として,関節リウマチに続発したAAアミロイドーシスが示唆された.術後は呼吸状態や循環動態が安定せず,敗血症やDICの治療を継続したが治療反応性に乏しく術後42病日に永眠した.
  • 雄谷 慎吾, 湯浅 典博, 竹内 英司, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 宮田 完志
    2017 年 78 巻 3 号 p. 591-595
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は69歳の女性で,既往に針治療歴があり,数年前より腹部金属片異物を指摘されていたが放置していた.平成18年4月,腹痛を主訴に近医を受診したところ,金属片異物の位置が腹部の深部に移動していたため,手術を勧められ当院を受診した.腹部単純X線写真では左側腹部に幅約1mm,合計約34mm長の4個の断片となった金属片異物を認めた.腹部CT検査では胆石と左傍結腸溝に異物を認めた.腹腔鏡下胆嚢摘出術を行い,同一のポートを使用してX線透視下に腹腔内の金属片異物を摘出した.異物は把持にて容易に折れたが,計7個の断片として摘出した.針治療歴があることからこの腹腔内異物は伏針と考えられた.伏針は移動による臓器損傷や伏針自体の腐食の可能性があるため,発見されれば早期に摘出すべきである.
  • 池庄司 浩臣, 尾関 豊, 今井 直基, 坂下 文夫, 山本 淳史, 小久保 健太郎
    2017 年 78 巻 3 号 p. 596-601
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    遠位胆管に原発した低分化型の粘液癌を経験した.症例は67歳,男性.近医で施行された血液検査で肝胆道系酵素の上昇を指摘された.自覚症状はなく,CT検査で胆管の拡張と遠位胆管内に腫瘤が描出された.内視鏡下の経十二指腸乳頭的胆管生検で腺癌が検出され,遠位胆管癌と診断した.cT2,cN0,cM0の術前診断で亜全胃温存膵頭十二指腸切除術を施行した.病理診断は低分化型の粘液癌で,多発リンパ節転移があり,pT3a,pN1,M0,Stage IIB(胆道癌取扱い規約第6版)であった.術後経過は順調であったが,術後10カ月で再発死亡した.遠位胆管粘液癌の報告はまれであり,報告した.
  • 眞鍋 恵理子, 金沢 義一, 藤田 逸郎, 新井 洋紀, 柿沼 大輔, 功刀 しのぶ, 内藤 善哉, 内田 英二
    2017 年 78 巻 3 号 p. 602-608
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は40歳,女性.嘔気のため近医を受診し,CTで腹腔内腫瘤を指摘され,精査加療目的に当科紹介.腹部造影CTで胃大彎に接して大網に32mm大および12mm大の連続する腫瘤を認めた.EUSでは内部が均一で血流豊富な低エコー腫瘤を認め,EUS-FNAでリンパ濾胞由来と思われるリンパ球を認めた.GISTまたはリンパ腫が疑われ,腫瘤の確定診断および治療目的にて腹腔鏡下大網腫瘍摘出術を行った.術中所見から腫瘤は胃と連続性はなく,腫瘤とその近傍の腫脹したリンパ節を摘出した.病理組織学的検査でCastleman病と診断され,術後約2年,再発なく経過良好である.Castleman病は腹腔内に発生するのは3.2%といわれ,その中でも大網発生は稀である.今回,われわれは大網腫瘤に対して診断的治療として腹腔鏡手術を行ったCastleman病の1例を経験したので報告する.
  • 露木 肇, 落合 秀人, 神藤 修, 深澤 貴子, 大井 諭, 谷岡 書彦, 鈴木 昌八
    2017 年 78 巻 3 号 p. 609-614
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    後腹膜未分化多形肉腫は稀な疾患で,転移再発をきたした場合,予後は不良であり,化学療法や放射線療法の有効性も明らかでない.今回,異時性肺転移巣切除後に長期無再発生存を得ている1例を経験したため報告する.症例は66歳の女性.食欲不振・体重減少を主訴に受診し,腹部造影CT検査で右後腹膜に最大径11cmの腫瘤を認めた.右副腎癌を疑い腫瘍切除術を施行した.病理組織診断は未分化多形肉腫であり,由来臓器の同定は困難であった.術後補助療法は施行せず,2年間再発徴候はなかったが,術後2年10カ月目のCT検査で右肺尖部に直径18mmの腫瘍を認めた.経気管支鏡的肺生検で未分化肉腫の肺転移と診断し,他に病変を認めなかったため右肺上葉切除術を施行した.切除標本の病理組織所見は,後腹膜腫瘍の転移として矛盾しない像であった.原発巣切除後8年2カ月,肺転移巣切除後5年2カ月の現在,補助療法なく経過観察し再発徴候を認めていない.
  • 横田 和子, 中村 隆俊, 佐藤 武郎, 樋口 格, 山下 継史, 渡邊 昌彦
    2017 年 78 巻 3 号 p. 615-619
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/09/30
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.人間ドックの腹部超音波検査にて,右腎腹側に6cm大の腫瘤を認め,精査目的に当院紹介となった.腹部造影CTでは,右腹横筋に接して6cm大の境界明瞭で内部均一な腫瘤性病変を認め,腹部MRIでは,T1脂肪抑制画像で内部均一な低信号を認めた.注腸造影検査では,横行結腸肝弯曲中心に壁外性の圧排像を認めた.以上より腹横筋脂肪腫が疑われ,悪性腫瘍が否定できないため手術の方針となった.画像上,腫瘍は腹腔内に突出していたため腹腔鏡下手術の方針とした.右肋骨弓下に突出する腫瘍を認め,周囲臓器への浸潤はなく腹膜および腹膜前脂肪織・腹横筋の一部とともに合併切除した.病理組織学的所見は,被膜を有し異型に乏しい脂肪組織の増生を認め,辺縁に全周性に筋組織が付着するintermuscular lipomaと診断した.腹壁由来脂肪腫を腹腔鏡下に切除しえた症例は非常に稀であるため,文献的考察を加えて報告する.
支部・集談会記事
編集後記
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