日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
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78 巻 , 5 号
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綜説
  • 執行 友成
    2017 年 78 巻 5 号 p. 893-904
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    鼠径ヘルニアは良性疾患外科治療では最も多く行われる手術である.日帰り手術により医療費削減へ大きな効果が立証されている.日帰り手術では合併症や再発を起こさない術式選択と麻酔法が重要であり,準備とスタッフ教育が必要である.
    外科医離れの原因は過酷・低賃金・やり甲斐と言われるが,日帰り手術にはこれらを払拭できる可能性があり,若き医師,特に女性医師の外科医への道導となり得る.鼠径ヘルニア手術は日帰り手術に限らず,誰でも,何処でも,何時でも可能で,合併症や再発率の少ない鼠径部切開法を第一選択とすべきである.
原著
  • 細井 敬泰, 湯浅 典博, 竹内 英司, 後藤 康友, 三宅 秀夫, 永井 英雅, 吉岡 裕一郎, 宮田 完志
    2017 年 78 巻 5 号 p. 905-915
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    目的:Stage II,III大腸癌治癒切除例において術前血液検査の中から,無再発生存率(RFS)と関連する因子を明らかにする.対象:当科で治癒切除が行われ病理組織学的にStage II,IIIと診断された907例.方法:年齢,性別,腫瘍の占居部位,組織型,Stage,術後補助化学療法,術前血液検査について検討した.結果:多変量解析でRFSと有意な関連を認めた因子はStage(p<0.0001),平均赤血球容積(MCV)(p<0.0057)であった.MCV 80-100flを基準とすると,MCV<80flのハザード比は0.49(p=0.0014)であった.RFSをStage別に検討すると,Stage IIではMCV<80flで有意に良好で(p=0.002),Stage IIIではMCV<80flで良好な傾向にあった(p=0.103).結論:MCVはStage II大腸癌治癒切除例における予後予測因子であった.
  • 山田 元彦, 稲葉 基高, 三村 哲重
    2017 年 78 巻 5 号 p. 916-920
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    目的:近年,慢性腎臓病(chronic kidney disease,以下CKD)は周術期合併症の危険因子として注目されている.肝細胞癌根治術の経過にCKDが及ぼす影響を検討した.
    方法:2011年から2015年に施行した肝切除術240例を対象とした.推定糸球体濾過量(eGFR)60mL/min/1.73m2未満をCKD群(63人)として患者背景,手術関連因子,周術期合併症についてeGFR 60以上のコントロール群(177人)と比較した.
    結果:Clavien-Dindo分類Grade III以上の合併症はCKD群で11.1%,コントロール群で13.0%に発生し,有意差はなかった.周術期死亡率,心血管合併症,術後急性腎障害,創部感染の発生率にも差はなかった.
    結語:CKD患者のHCCに対する肝切除術は非CKD患者との比較で合併症発生率の有意な上昇なく施行されていた.
症例
  • 丸岡 慎平, 岩橋 誠, 山本 基, 寺澤 宏, 福田 直城, 小林 康人
    2017 年 78 巻 5 号 p. 921-925
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    横紋筋融解症を起こす原因に,様々な薬剤が報告されている.この度,大腸癌患者に対する化学療法が原因と考えられる薬剤性横紋筋融解症を経験したため報告する.症例は73歳の男性.横行結腸癌とS状結腸癌,また,その転移性肝癌に対し手術を施行した.術後補助化学療法としてcapeOX療法を施行したところ,Oxaliplatinの投与数時間後より四肢近位側に疼痛および倦怠感が出現し,採血検査にてCK 8,632U/lと高値を認めた.薬剤性横紋筋融解症の診断にて入院,点滴加療を開始した.筋崩壊に伴うADLの著明な低下や,嚥下機能障害,喉頭浮腫による呼吸障害をきたした.筋崩壊が終息するまでには発症後112日の期間を要し,大腸癌に対する治療は中止せざるを得ず,大腸癌の多発腹腔内再発により永眠された.Oxaliplatinによる横紋筋融解症の報告は,国内にて自験例を含め8例が報告されているのみであり,併せて報告する.
  • 金泉 博文, 濱田 未佳, 新崎 亘, 安積 達也, 橋本 幸彦, 菰池 佳史
    2017 年 78 巻 5 号 p. 926-930
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    乳房部分切除術後の放射線照射野に発生する血管肉腫は,頻度は低いが重要である.われわれは転帰の異なる2例を経験したため報告する.症例1は77歳の女性.右乳癌に対し乳房部分切除術を行い,術後に放射線療法を施行した.術後6年目,照射野に血管肉腫を発症し,化学療法を施行した.効果は得られず,広範囲皮膚合併乳房切除術を施行したが,多発肝転移により再発術後19カ月で永眠した.症例2は53歳の女性.左乳癌に対し乳房部分切除術を行い,術後に放射線療法を施行した.術後4年2カ月目,照射野に血管肉腫を発症し,広範囲皮膚合併乳房切除術を施行した.乳癌に対する内分泌療法のみ継続しているが,再発術後50カ月間再発徴候を認めていない.
  • 瀬沼 幸司, 佐藤 浩一, 和田 了
    2017 年 78 巻 5 号 p. 931-934
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例:75歳,女性.主訴:右乳房腫瘤.既往歴:子宮筋腫,大腸癌,両側白内障.現病歴:平成24年5月頃より右乳房腫瘤を自覚し,急速に増大.平成25年6月に当院受診.初診時所見:右乳房に20×20cmの腫瘤を触知,リンパ節は触知しなかった.超音波検査で充実性腫瘤を疑い針生検を施行.針生検:全て壊死性から血腫様組織で,viableな乳腺組織は認めず.CT/MRI検査:右乳房に嚢胞性腫瘤を認め,一部嚢胞壁の肥厚と造影効果を認めた.二度目の針生検:乳頭状増生を呈する上皮性腫瘍で明らかな悪性所見は認めなかったが,臨床的に悪性の可能性も否定できず同年7月乳房切除術を施行.病理診断で乳腺嚢胞性腫瘤,嚢胞壁の一部に乳頭腺管癌様組織あり,ER/PgR陽性,HER2 1+.術後ホルモン療法を施行し再発所見は認めていない.
  • 竹田 奈保子, 渕上 ひろみ, 井上 裕子, 佐藤 一彦
    2017 年 78 巻 5 号 p. 935-941
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    炎症性乳癌は腫瘤を認めず,画像による描出もできないことが多いため,その他の症状や臨床所見が重要となる.今回われわれは,定期的な任意型検診期間中の中間期乳癌として急激に進行した炎症性乳癌を経験したので報告する.症例は41歳,閉経前女性.マンモグラフィおよび乳房超音波を用いた乳癌検診を毎年施行しており,異常所見は認めていなかった.最終の検診から6カ月後,左乳房痛を主訴に来院し,左乳房全体に硬結を伴う腫脹および皮膚の発赤と浮腫を生じていた.画像検査,乳腺および皮膚に対する組織診より炎症性乳癌と診断され,術前化学療法施行後に左胸筋温存乳房切除術を施行した.術後4カ月で再発を認め,化学療法を施行するも病勢は進行し,発症から1年6カ月後に永眠した.急激な経過を辿った炎症性乳癌について,文献的考察を加えて報告する.
  • 上野 健太郎, 黒澤 弘二, 百川 文健, 脇山 茂樹, 増渕 正隆, 渡部 通章
    2017 年 78 巻 5 号 p. 942-945
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    膵頭部癌再発巣の腫瘍浸潤に起因する腹部大動脈仮性瘤を経験したので報告する.症例は47歳の女性.膵頭部癌に対して膵頭十二指腸切除術を施行した.術後補助化学療法(TS-1)施行後,残膵再発を認め初回手術から1年後に残膵全摘,脾摘を施行した.その後,腹膜播種を認めGEM+NabPTXの投与を行っていたが,3クール後から全身倦怠感,発熱,腹痛が出現し救急部を受診した.腹部に圧痛を認め,血液検査にて白血球数増多とCRP上昇を認めた.造影CT検査で腹部大動脈および右総腸骨動脈に腫瘍浸潤による仮性瘤を認めた.以上より腹部大動脈仮性瘤切迫破裂と診断し,腹部ステントグラフト内挿術(endovascular aneurysm repair,以下EVAR)を施行した.動脈瘤破裂は回避でき,術後経過は良好で12日目に独歩で退院した.
  • 清水 大, 河内 順, ブランチ ジョエル, 池谷 佑樹, 荻野 秀光, 渡部 和巨
    2017 年 78 巻 5 号 p. 946-950
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は62歳,男性.既往に慢性腎不全に対する腎移植があり,現在,移植腎不全のため血液透析を導入されている.抗血小板薬を内服中であった.予定入院後,狭心症の疑いに対して経皮的冠動脈形成術を施行された.術後血圧低下あり,造影CTにて造影剤の漏出を伴う巨大な後腹膜血腫を認めた.緊急で腹部血管造影を行ったところ上位腰動脈からの出血が疑われたが,マイクロカテーテルの選択的挿入に難渋したため,急遽ステントグラフト内挿術に方針を変更した.上腸間膜動脈直下から総腸骨動脈分岐部直上までステントグラフトを留置し,止血を得た.術後容態は安定し,第8病日に退院となった.後腹膜出血はカテーテル操作の合併症や外傷性,または特発性のものとして生じるが,いずれの原因であっても致死率の高い疾患である.治療の第一選択はカテーテル塞栓術であるが,選択的挿入が難しい場合にはステントグラフト内挿術も有用であると考える.
  • 木下 正彦, 田中 肖吾, 竹村 茂一, 濱野 玄弥, 田中 さやか, 久保 正二
    2017 年 78 巻 5 号 p. 951-957
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    47歳,女性.背部痛と下腿浮腫を主訴に受診され,腹部造影CT像上,左腎静脈合流部から肝静脈合流部までの下大静脈を取り囲み,肝と右腎を圧排する最大径26cmの腫瘍が認められた.腫瘍により下大静脈は閉塞し,下肢血流は腰静脈を介し右心房へ還流していた.副腎動脈から腫瘍へ血流が供給されていたことと血中NSE高値より副腎癌や神経芽腫が疑われたが,確定診断は困難であった.多臓器合併切除が必要であり,術中出血制御目的に動脈塞栓術を先行したが,側副血行路からの出血が多く止血に難渋した.広範囲下大静脈および肝右葉,右腎,右副腎合併切除により腫瘍を摘出した.主たる側副血行路である腰静脈を温存し,下大静脈は再建しなかった.腫瘍は病理組織学的に下大静脈原発平滑筋肉腫と診断された.術9カ月後に腹膜播種再発をきたし,gemcitabine+docetaxel併用療法により一時縮小するもその後再増悪し,術16カ月後に死亡した.
  • 壺井 貴朗, 濱本 篤, 中川 知己, 河野 光智, 増田 良太, 岩崎 正之
    2017 年 78 巻 5 号 p. 958-961
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は69歳,男性.脳出血の既往があり,左片麻痺があった.歯科治療中に歯冠の誤嚥を疑われたが,精査を拒否していた.約1カ月後に咳嗽と喀痰,発熱を認めたため前医を受診し,気管支異物による閉塞性肺炎と診断され,当院へ搬送された.胸部CTスキャンで異物は右B5に陥入しており,中葉全体に含気がなく閉塞性肺炎となっていた.気管支鏡ではB5の著明な肉芽のために異物を視認することができなかった.X線透視を頼りに鉗子などを用いて摘出を試みたができなかったため,手術を行った.中葉は分泌物で緊満しており,咳嗽反射が減弱した患者では術後に痰の喀出が不十分となる危険性があると考え,右中葉を切除して歯冠を摘出した.気管支鏡下に摘出できない場合には患者ごとに適切な術式の選択をする必要がある.また,これまで中葉気管支の異物は報告が少ない.
  • 今村 史人, 間瀬 憲多朗, 角 勇作, 檜山 和寛, 中野 順隆, 神賀 正博
    2017 年 78 巻 5 号 p. 962-965
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.検診で胸部異常陰影を指摘され,外来を受診した.胸部CTで右肺下葉に結節影を認め,肺癌を疑い,画像上,遠隔転移を認めず,手術の方針となった.胸腔鏡下右肺下葉切除術,縦隔リンパ節郭清(ND2a-1)を施行した.病理診断は,印環細胞成分を60%含む,腺癌であった.上部消化管内視鏡で胃癌を認めず,免疫染色ではTTF-1陽性,CK-7陽性,CK-20陰性であり,原発性肺癌と診断した.また,ALK遺伝子変異を認めた.印環細胞成分を含む,原発性肺癌は比較的稀であるが,高率にALK遺伝子変異陽性であることが知られ,ALK阻害剤が有効である点で臨床的に極めて重要であり,報告する.
  • 滝沢 昌也, 田中 雄亮, 小林 弘明, 俵 広樹, 和田 崇志, 高橋 智彦
    2017 年 78 巻 5 号 p. 966-970
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    67歳,男性.胸部単純X線写真にて増大傾向のある腫瘤性陰影を指摘され,当院へ紹介となった.胸部CTでは,左前側胸壁に胸腔内へ突出する13×6cm大の辺縁平滑な脂肪濃度腫瘤を認めた.MRIでは,腫瘤は皮下脂肪と同等な信号域を呈し,造影効果はなく内部は一部不均一であった.画像上は良性の胸腔内脂肪腫と診断したが,脂肪肉腫の可能性が否定できないため,診断治療目的に胸腔鏡補助下腫瘍摘出術を行った.腫瘍は壁側胸膜を発生母地とする有茎性腫瘍であり,摘出標本の病理組織診断により脂肪腫と診断した.胸腔内脂肪腫はまれな腫瘍であり,臨床的には脂肪肉腫との鑑別が問題となり,切除によって確定診断されることが多い.今回,増大傾向を示した胸腔内脂肪腫の1切除例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 橋田 和樹, 大目 祐介, 横田 満, 長久 吉雄, 岡部 道雄, 河本 和幸
    2017 年 78 巻 5 号 p. 971-976
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は腹痛・嘔吐が主訴の78歳,女性.画像診断にてMorgagni孔ヘルニア,絞扼性イレウスと診断した.腹腔鏡観察では胸骨後面右寄りに横5cm×縦3cmのヘルニア門を認め,回盲部から横行結腸までの腸管がヘルニア嚢内に嵌入しており,虫垂と右付属器の癒着により成る索状物により20cm長の回腸がヘルニア嚢内で絞扼されていた.臍窩4cm縦切開し,Alexis® WOUND RETRACTOR size Sを装着してグローブ法を行い,臍左5cmの位置に12mmポートを挿入し2孔式手術を行った.ヘルニア内容を腹腔内に還納し,絞扼腸管を直視下に観察し,腸切除は不要と判断した.また,索状物とともに虫垂切除を行った.ヘルニア門後縁と前腹壁を縫合し,腹壁外結紮法でヘルニア門を閉鎖した.術後2年3カ月で再発を認めない.本法は絞扼性イレウスを伴うMorgagni孔ヘルニアに対する手術として有用な方法である.
  • 淺井 聖子, 竹内 俊介, 中西 陽一, 鈴木 隆文
    2017 年 78 巻 5 号 p. 977-982
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.11年前に胃癌に対し幽門側胃切除術およびB-I再建術を受けていた.6日前より腹痛・嘔吐を認め当院受診,腸閉塞の診断にて入院となった.腹部CT検査・上部消化管内視鏡検査にて胃石による腸閉塞と診断,内視鏡的破砕とコーラを用いた溶解療法を行った.治療5日目の腹部CT検査にて,結石の回腸への落下嵌頓を認めイレウス管を用いた溶解療法を継続したが,効果不十分と判断し治療開始10日目に単孔式腹腔鏡下に胃石摘出術を行った.
    本邦での胃石の約70%は柿胃石であり,胃切除後などの胃排出遅延をきたす患者背景も発生の因子となる.内視鏡的破砕や溶解療法,外科治療が行われるが,治療中に落下をきたし穿孔により緊急手術となることや,複数の結石の存在で再手術となった報告もあり,各治療法を十分に理解し選択することが重要と考える.
  • 坂部 龍太郎, 山口 拓朗, 長谷 諭, 田原 浩, 布袋 裕士, 前田 佳之
    2017 年 78 巻 5 号 p. 983-987
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    GISTを疑い切除した寄生虫による胃好酸球性肉芽腫の1例を報告する.症例は65歳の女性で,Helicobacter pylori菌に対する除菌治療を受けていた.上部消化管内視鏡検査で胃体中部大彎に潰瘍を伴う粘膜下腫瘍を指摘された.造影CT検査では,胃壁外へ突出する15mm大の腫瘍を認めた.超音波内視鏡検査では,腫瘍は筋層と連続していた.超音波内視鏡下穿刺吸引細胞診では十分な組織が採取できず,確定診断できなかった.GISTを疑い腹腔鏡下胃局所切除術を施行した.病理組織学的検査では,粘膜下層に変性した虫体を認め,その周囲に肉芽腫を形成する好酸球性肉芽腫であった.寄生虫による胃好酸球性肉芽腫は稀な疾患であるが,胃粘膜下腫瘍の鑑別診断として認識しておく必要がある.
  • 大西 敏雄, 木南 伸一, 富田 泰斗, 藤田 秀人, 上田 順彦, 小坂 健夫
    2017 年 78 巻 5 号 p. 988-993
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は75歳,女性.胃GIST(gastrointestinal stromal tumor)の診断でLECS(laparoscopic endoscopic co-operative surgery)が行われた.GISTは28×25×22mmで,偽被膜損傷なく切除され,moderate riskであった.外来通院経過観察のX-CTで胃小彎側にmassが発見された.Follow up CTで腫瘍径は増大し,GIST再発と診断.初回手術の1年後に再手術を施行した.胃角小彎の小網内に腹膜に包まれた腫瘍を確認し,腫瘍切除を施行した.切除標本は20×14×12mmで灰白色を呈し,境界明瞭な腫瘍であった.組織学的には線維芽細胞様紡錘形細胞の不規則な錯綜配列と炎症細胞浸潤を伴い,免疫染色でβ-cateninが陽性を示しdesmid typeのfibromatosisと診断した.また,中心に腺房細胞とLangerhans島細胞からなる膵細胞を認め,迷入膵と診断した.本症例は手術を契機に発生した腹膜内デスモイド腫瘍であるが,胃GIST切除後に発生したデスモイド腫瘍の報告例は少なく,また,中心に迷入膵を伴ったデスモイド腫瘍の文献は見当たらない.稀な形態を示した腸間膜デスモイド腫瘍を経験したので報告する.
  • 小野 仁, 野村 克, 佐々木 彩実, 田中 伸哉, 大森 一吉
    2017 年 78 巻 5 号 p. 994-998
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,男性.上部消化管内視鏡検査で胃体中部に2型病変を認め,生検では低分化腺癌と診断された.明らかなリンパ節転移や遠隔転移を認めなかった.幽門側胃切除およびリンパ節郭清を行った.腫瘍は3×3cmの2型腫瘍であった.免疫染色にてchromogranin Aが腫瘍細胞の約70%に陽性であり,neuron specific enolaseが腫瘍細胞全体に弱陽性であり,腺癌成分のない純粋大細胞型胃内分泌細胞癌と診断した.深達度はpT3(SS),ly2,v2,pN2のStage IIIAであった.胃癌取扱い規約第14版において,胃内分泌細胞癌が大細胞型と小細胞型にはじめて分類され,大細胞型胃内分泌細胞癌の症例報告は未だ僅かである.病型別の適切な治療法の確立と予後の改善のため,更なる症例の蓄積,検討が必要である.純粋大細胞型胃内分泌細胞癌の1例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告する.
  • 大林 樹真, 眞鍋 周太郎, 大山 慧, 脇坂 宗親, 藤野 節, 北川 博昭
    2017 年 78 巻 5 号 p. 999-1003
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は14歳,女児.腹痛と下血を認め,他院を受診した.腹部CT検査で小腸出血が疑われ当院へ転送された.来院時に出血性ショックを認め,貧血の進行を認めた.小腸内視鏡を施行したが,出血源を同定できなかった.大量輸血にも関わらず貧血の進行を認め,小腸内視鏡を併用した試験開腹術を施行した.しかし出血源は同定できず,空腸内出血を認めた空腸30cmを切除した.初回術後も下血は継続し,血管造影を併用した再開腹術を施行した.血管造影で,初回吻合部より30cm肛門側に血管漏出像を同定した.同部には3mm大の腫瘤性病変を認め,同部を含む空腸を切除した.病理組織学的にはangiodysplasiaであった.本症例を通して,小児小腸出血における治療戦略を文献的に考察する.
  • 簑原 沙和, 池永 直樹, 許斐 裕之, 大城戸 政行, 一宮 仁
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1004-1007
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    消化管異物の多くは自然排泄されるが,時に穿孔をきたし外科的治療が必要となる.今回われわれは,腹腔鏡手術が有用だった鶏骨による小腸穿孔,汎発性腹膜炎の1例を経験した.症例は50歳の女性.前日に手羽先を食べ,腹痛が出現した.CTで小腸を貫く線状高吸収物を認め,鶏骨による穿孔性腹膜炎と診断し緊急手術を行った.腹腔鏡で観察すると腹腔内は広範に腸液で汚染されており,汎発性腹膜炎の所見であった.回腸に膿苔の付着と回腸同士の癒着を認め鶏骨による穿孔部と思われたが,穿孔部は既に自然閉鎖していた.4cmの小開腹をおき回腸を体外に挙上し鶏骨を探索すると,穿孔部より肛門側50cmの位置に鶏骨を認めた.同部から鶏骨を用手的に直接摘出し,摘出孔をZ縫合で閉鎖した.骨片による小腸穿孔,腹膜炎は腸切除せずに治癒しうる症例もあり,腹腔鏡手術は低侵襲で効果的な治療法である.
  • 佐藤 龍一郎, 安藤 敏典, 蝦名 宣男
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1008-1013
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,女性.身長148cm,体重35kg,BMI 16.2kg/m2.体重減少なし.胃潰瘍にて幽門側胃切除術の既往あり.盲腸癌に対し,腹腔鏡補助下回盲部切除術を施行.5ポート,10mmHgで気腹開始後約15分で,呼気終末二酸化炭素濃度は上昇を始めた.呼吸数,一回換気量の増加では是正しきれず,全身観察で頸部から大腿に広がる皮下気腫を認めた.血液ガス分析値はpH 7.19,PaCO2 93mmHgと高二酸化炭素血症による呼吸性アシドーシスを示した.経皮的動脈血酸素飽和度は100%を維持しており,気道内圧の上昇は見られなかった.手術中断,過換気により高二酸化炭素血症は改善した.20分後に4mmHgの低圧気腹で手術を再開.視野展開・手術操作に問題はなく,高二酸化炭素血症・皮下気腫の再増悪もなく手術を終了した.
  • 佐々木 亨, 田守 登茂治, 浦野 尚美, 村上 雅一, 三方 彰喜, 水谷 伸
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1014-1018
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    患者は76歳,女性.夜間就寝中に突然臍周囲痛が出現し,当院に救急搬送された.腹部全体に圧痛・筋性防御を認め,腹部造影CT検査では上下腸間膜動静脈の閉塞は認めなかったが横行結腸壁の造影効果が不良であったため,壊死型虚血性大腸炎を疑い緊急手術を施行した.開腹時,盲腸からS状結腸まで全結腸の漿膜が斑状に暗紫色を呈し,全結腸型壊死型虚血性大腸炎と診断し,全結腸切除および回腸瘻造設術を施行した.病理検査では全結腸に及ぶ粘膜・筋層の壊死を認めた.全結腸型壊死型虚血性大腸炎は極めて稀であるが致死率が高く,救命のためには本疾患を積極的に疑い,早期診断・早期手術を行うことが肝要である.
  • 林 俊治, 森田 恒彦, 中村 貴久
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1019-1023
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は83歳,男性.67歳時に前立腺癌を発症し内分泌治療を施行されていたが,骨転移を伴い去勢抵抗性となっていた.1カ月前に血尿・血便を認めたため,施行された膀胱鏡検査で前立腺癌の膀胱浸潤が判明していた.下部消化管内視鏡検査では横行結腸に全周性2型病変による狭窄を認め,生検で低分化型腺癌と診断した.CTでは膀胱の腫瘤像と横行結腸の限局した壁肥厚像を認めたが,肺肝転移やリンパ節の腫脹は認めなかった.前立腺癌膀胱浸潤と横行結腸癌の併発との診断で横行結腸部分切除術を施行した.摘出標本の病理組織検査では,病巣の主座は粘膜下にある低分化型腺癌で前立腺癌と類似した所見で,免疫染色の結果CK7+/CK20-/CDX2-で原発大腸癌としては典型的ではなく,前立腺癌の横行結腸転移が疑われた.しかし,臨床的には結腸転移としての説明が困難であることから免疫組織検査を追加検討し,最終的に原発性横行結腸癌と診断した.
  • 宮坂 衛, 村上 慶洋, 阿部 紘丈, 武山 聡, 子野日 政昭, 平野 聡
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1024-1029
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は82歳,男性.2年前に総胆管結石に対して内視鏡的胆道ステント留置術(endoscopic biliary stenting:EBS)を施行していた.腹痛で救急外来へ搬送され,CT検査にて胆管ステントのS状結腸への逸脱とfree airを認めた.胆管ステントによるS状結腸穿孔を疑い,緊急手術を施行した.術中所見では,S状結腸に胆管ステントが穿孔していた.腹水や便汁の流出,腹膜炎の所見は認めず,穿孔部の楔状切除を行った.
    EBSは胆道閉塞疾患に対する内瘻術として用いられる.合併症としてステントの逸脱はしばしば経験されるが,ステントによる大腸穿孔は比較的稀である.穿孔の原因となりやすい憩室多発例や逸脱ステントが停滞している場合,早期の内視鏡的摘出なども考慮すべきである.また,穿孔した場合も腹膜炎に至らない場合も多く,穿孔部の楔状切除や縫合など,縮小・低侵襲な手術も考慮して良いと考えられる.
  • 原田 幸志朗, 春木 伸裕, 呉原 裕樹, 溝口 公士, 伊藤 直, 辻 秀樹
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1030-1034
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    患者は68歳,男性.便潜血陽性で下部消化管内視鏡検査にて0-Is型のS状結腸癌を認めた.CT・注腸造影検査にて上行結腸の左方偏位と上腸間膜静脈(SMV)rotation signを認め,non-rotation typeの腸回転異常を伴うS状結腸癌と診断し,腹腔鏡下に手術を施行した.下腸間膜動脈(IMA)腹側に上行結腸は位置し,S状結腸間膜右側と癒着しており,脾彎曲は結腸が複雑に屈曲し腹壁への大網の癒着を認めた,上行結腸・盲腸をS状結腸間膜より剥離した後に,通常通り,内側アプローチで手術を行った.脾彎曲の複雑な癒着を剥離することに難渋したが,腸回転異常を伴う自験例に対して腹腔鏡手術は有用であると考えられた.
  • 中村 豪, 清水 ゆかり, 日高 秀樹, 土井 篤, 下薗 孝司, 上田 祐滋, 島尾 義也, 丸塚 浩助
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1035-1040
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    明細胞腺癌は淡明な細胞質を持つ腫瘍細胞の増殖が特徴で,大腸ではまれに腸管子宮内膜から発生するが,大腸原発の明細胞腺癌は極めてまれである.症例は62歳の女性で,腹痛・発熱・高い炎症反応のため当科を紹介受診した.造影CT検査で子宮や左卵巣,左尿管を巻き込んだ巨大なS状結腸腫瘍を認め,膿瘍形成が疑われたため抗菌薬治療後にすべてを一塊として切除した.腫瘍細胞は病理組織学的に淡明な細胞質を持ち,免疫組織化学染色でCK20・CDX2が陽性,CK7・CD10が一部陽性,ER・PgR・NapsinAは陰性であり,画像上も他臓器癌を認めなかったことから大腸原発明細胞腺癌と診断した.術後経過は良好で,術後1年経過した現在も無再発生存中である.本腫瘍の手術例は本例を含め20例の報告にすぎず,悪性度が高く外科的完全切除が最も有効な治療法であることが示唆された.本腫瘍の臨床的特徴などを踏まえて報告する.
  • 大川 尚臣, 古田 斗志也, 金川 泰一朗, 小畑 卓司, 野上 浩實
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1041-1049
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例1は63歳,男性.虚血性腸炎で入院加療中に排便困難のため,グリセリン浣腸(glycerin enema:以下GE)を施行した.直後から肛門痛と下血および血尿を認めた.肛門鏡にて歯状線近傍に裂傷と,腹部CTにて直腸周囲の脂肪織濃度上昇と遊離ガス像を認め,直腸穿孔と診断した.絶食と輸液・抗生剤投与を行い,血尿に対し強制利尿とハプトグロビンを投与した.腎不全には至らず,保存的に軽快した.症例2は78歳,男性.頸椎損傷で施設療養中,便秘に対しGEを施行した.粘血便が出現し,下部消化管内視鏡で直腸壁損傷を,腹部CTにて直腸壁肥厚,壁内気腫と直腸周囲遊離ガスを認め,直腸穿孔と診断した.血尿や溶血はなく,絶食と輸液・抗生剤投与のみで軽快した.GEの誤注入による直腸壁の損傷は急性腎不全や腹膜炎等の重篤な合併症をきたすことがある.今回,われわれはGEによる直腸穿孔の2例を経験したので考察を加え報告する.
  • 鳥谷 建一郎, 中嶌 雅之, 藤原 大樹, 小野 秀高, 馬場 裕之, 杉田 光隆
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1050-1054
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は56歳,女性.下痢と排便困難を主訴に来院し,下部消化管内視鏡検査で肛門縁から6cmの下部直腸に側方発育型腫瘍を認め,生検の結果,腺癌が検出され直腸癌と診断した.MRIで左側方領域に7.1×6.2mmのリンパ節を認め転移陽性と診断した.直腸癌 Rb ant-lt cT1b,cN3,cH0,cP0,cM0 cStage IIIbの術前診断で腹腔鏡下超低位前方切除術,両側側方リンパ節郭清(以下側方郭清),回腸人工肛門造設術を行った.術後13日目に退院となった.病理診断は直腸癌Rb ant,I sp+0-IIa,pT1b(11mm),ly0,v2(MP),pN3(2/38[#251(1/25) #283-lt(1/3)]),cM0,pStage IIIbであった.現在無再発生存中である.直腸SM癌でも側方リンパ節転移陽性を疑う所見があれば側方郭清をする意義はあると思われる.
  • 井口 詔一, 播本 憲史, 池上 徹, 副島 雄二, 吉住 朋晴, 前原 喜彦
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1055-1059
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は37歳,女性.39℃を超える発熱を主訴に当科紹介受診となった.血液検査所見ではWBC 8,820/μl,Neut 73.4%,CRP 13mg/dlと炎症反応上昇を認めた.腫瘍マーカー陰性.造影CT,造影MRIでは内部に出血を伴う血管腫の所見であった.PET-CT,ガリウムシンチにて異常集積は認めなかった.感染症内科,血液内科にコンサルトしたところ,血液疾患や膠原病はいずれも否定的で,熱源は肝血管腫以外認めなかった.2週間以上持続する発熱を伴い,腫瘍内部に出血もみられたため,本人と家族に十分なICを行った上,手術を行う方針となった.肝機能温存を考慮し,術式は拡大肝後区域切除術を選択した.術後は4日目に解熱が得られ,術後9日目に自宅退院となった.肉眼所見は海綿状血管腫であった.肝血管腫の手術適応として,破裂の危険のあるものや随伴症状があるものとされているが,発熱のみを主訴とする報告は稀であり手術適応決定に苦慮したが,良好な結果を得たため報告する.
  • 橋本 将志, 松本 祐介, 浜野 郁美, 遠藤 芳克, 甲斐 恭平, 佐藤 四三, 堀田 真智子
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1060-1067
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は41歳,女性.心窩部痛を主訴に近医を受診し,上部消化管内視鏡検査を行ったところ胃角部に胃癌を指摘された.精査の結果,肝に5-15mm大の肝腫瘤を複数指摘された.肝腫瘤は腹部CTや造影MRIで周囲の造影効果が淡く,また超音波でも典型的な転移性肝癌の所見とは判断できなかった.サイズが小さいという点を考えても,画像だけで胃癌肝転移の確定診断に至らないと判断し針生検行った.生検の結果ではリンパ球の集簇という結果となり,肝reactive lymphoid hyperplasia(以下,肝RLH)を強く疑い,原発巣切除と診断的肝部分切除を行った.切除後の病理所見で胃癌と肝RLHと診断された.現在術後1年無再発生存中である.肝RLHは診断が難しく,特に悪性疾患との併存の場合は画像所見だけで転移性肝癌と鑑別することは難しい.今回,生検をきっかけにして胃癌に併存する肝RLHを診断,切除できた症例を経験したので報告する.
  • 濱田 由紀, 又木 雄弘, 迫田 雅彦, 飯野 聡, 上野 真一, 夏越 祥次
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1068-1072
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は64歳の女性で,腹部CTで偶然発見された径10cm大の肝嚢胞性腫瘍の精査・治療目的で当科に紹介された.画像検査により,肝粘液性嚢胞腫瘍(mucinous cystic neoplasm of the liver;以下,肝MCN)と診断され,根治手術を予定した.手術待機中に腫瘍破裂をきたし,軽度腹痛と炎症反応・腹水を認めたが,バイタルに著変なく,保存的に経過観察を行った.破裂日から14日目に拡大肝左葉切除を行った.腹水はなく,明らかな腹膜播種巣は認めなかった.最終病理診断にて,mucinous cystadenocarcinoma of the liverの診断であった.現在術後1年経過し,再発転移の所見なく経過良好である.肝MCNの破裂の報告は本症例を含め5例報告があるが,腫瘍径は10cm以上であり,根治切除が行われていた.腹膜播種再発の報告は認めなかった.
  • 関根 隆一, 加藤 貴史, 田中 淳一, 小山 英之, 横溝 和晃, 水上 博喜
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1073-1076
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は39歳,男性.2日前より心窩部痛が出現し,症状が増悪したため来院.血液検査で炎症所見を認め,腹部CT検査で急性有石性胆嚢炎と診断し,緊急腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.通常通り4ポートで手術を開始したが,右側肝円索を伴い視野展開が不良で,肝円索を超音波凝固切開装置で切除することが有効であった.また,胆嚢が通常よりも左側に位置しており,Calot三角部の剥離操作が困難であり,胆嚢底部からの胆嚢床剥離を先行し胆嚢を摘出した.結石は胆嚢頸部に嵌頓し,落石の恐れはないと判断し術中胆道造影は行わなかった.術後は合併症なく7PODに退院した.右側肝円索は注意深い術前画像診断で読影可能である.術前から同様な解剖形態の存在を念頭に置き,さらに手術手技の工夫を加えることで右側肝円索を伴った急性胆嚢炎であっても腹腔鏡下胆嚢摘出術を安全に行うことができると考えられる.
  • 牧田 智, 平松 聖史, 狩野 陽子
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1077-1083
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    小児胆嚢結石は比較的まれな疾患であるが,食生活の欧米化と腹部超音波検査の普及に伴い報告例が増加している.今回,われわれは無症状の小児特発性胆嚢結石の3例を経験したので報告する.症例1:12歳,女児.腰痛精査のCTで指摘された.症例2:9歳,男児.生後2カ月時に尿路感染症に罹患し,精査で施行された腹部超音波検査で指摘された.以後,長期間経過観察されていた.症例3:13歳,女児.12歳時に施行した腹部超音波検査で指摘された.いずれの症例も胆嚢結石に関連する症状は認めず,基礎疾患を伴わない無症状の特発性胆嚢結石と診断した.一定期間経過観察したが消失しなかったので手術適応と判断し,multi-channel portを用いたreduced port surgeryで腹腔鏡下胆嚢摘出術を施行した.小児胆嚢結石は無症状であっても,成人と異なり有症状化のリスクが高く,一定期間経過観察して消失しなければ手術療法を検討すべきである.
  • 野口 大介, 小松原 春菜, 河埜 道夫, 近藤 昭信, 田中 穣, 長沼 達史, 中野 洋
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1084-1090
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.来院5日前より黄疸を認め当院内科受診,閉塞性黄疸の診断で入院となった.CT・MRI検査にて胆嚢結石による肝門部胆管の圧排所見を認め,Mirizzi症候群と考えられた.経鼻胆道チューブを挿入し黄疸改善後に手術施行した.胆嚢を切開し胆石を摘出したが,さらに肝床部に嵌まり込む胆石を認めた.摘出すると胆汁の噴出があり,胆嚢と右主肝管の瘻孔を認めた.遺残胆嚢壁に加えて胆嚢板を用いた瘻孔閉鎖を行い,総胆管にTチューブを挿入した.術後,合併症なく経過した.胆嚢と総肝管より上流に位置する胆管との内胆汁瘻に対して,自験例では低侵襲かつ簡便な術式で良好な結果を得ることができた.
  • 中村 広太, 池田 直也, 金村 哲宏, 上野 正闘, 榎本 浩士
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1091-1096
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は65歳,女性.25歳時に急性胆嚢炎,総胆管結石症に対して胆嚢摘出術,総胆管切石術,T-tubeドレナージ術を施行された.65歳時に心窩部不快感を主訴に近医を受診し,施行された腹部超音波検査で遺残胆嚢管と胆嚢管結石が疑われたため当科紹介となった.腹部造影CTで胆嚢管腫瘍を指摘され,術前ERCPでの胆汁細胞診,擦過細胞診では悪性所見を認めなかったが画像上悪性所見が疑われたため,手術を施行した.総胆管断端の術中迅速病理検査で胆管断端の悪性所見陰性を確認し,胆管切除術リンパ節郭清,肝管空腸吻合術を施行した.術後は良好に経過し,術後9病日に退院した.病理検査の結果,adenosquamous carcinomaを検出しpT2(SS)N0M0 Stage IIと診断した.遺残胆嚢管癌は非常に稀な疾患であり,文献的考察を加え報告する.
  • 渡部 かをり, 北上 英彦, 北山 陽介, 安田 顕, 山本 稔, 田中 守嗣
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1097-1101
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    副脾は日常臨床でもしばしば遭遇するが,副脾茎捻転は非常に稀な疾患である.今回われわれは,術前に副脾茎捻転と診断し腹腔鏡下に手術しえた1例を経験したので報告する.症例は22歳の男性.左側腹部痛を主訴に受診し,腹部造影CTで脾臓頭側に7mm大の腫瘤と周囲脂肪織の濃度上昇を認めた.脾動脈から分枝した栄養血管は腫瘤近傍で不明瞭化し,腫瘤は造影されなかった.以上より,副脾茎捻転と診断し緊急手術を施行した.手術所見で脾臓頭側に大網と連続した暗赤色の腫瘤を認め,腹腔鏡下に腫瘤を切除した.切除標本では変色した脂肪の内部に1cm大の充実部分を認め,病理検査は副脾茎捻転に矛盾しない所見であった.術後経過は良好であった.副脾茎捻転は特徴的な画像所見がなく術前診断が困難である.しかし,破裂などで重篤となり得るため有症状例では緊急手術を考慮すべきで,本疾患に対しては術中確定診断と低侵襲な治療を行える腹腔鏡手術が有用と考える.
  • 森 拓哉, 山添 定明, 大平 豪, 木村 健二郎, 天野 良亮, 大平 雅一
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1102-1106
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は49歳,女性.右進行乳癌の診断で化学療法を施行されていた.同時に脾腫瘍も指摘されており,明らかにはサイズ変化はないもののPETにて集積亢進を認めたため,乳癌の脾転移を含め悪性疾患の可能性が否定できず,診断・治療目的に腹腔鏡下脾臓摘出術を施行した.免疫組織化学検査所見でsclerosing angiomatoid nodular transformationと診断された.本疾患は2004年に報告された脾腫瘤形成性良性疾患の一つと考えられており,報告例が少ない稀な疾患である.今回われわれは腹腔鏡下脾摘出術を施行し,診断しえた症例を経験したので報告する.
  • 堀 佑太郎, 徳家 敦夫, 永嶺 彩奈, 森岡 三智奈, 岡本 三智夫, 原田 敦
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1107-1111
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    副腎出血は種々の原因で起こりうるが,特発性副腎出血は稀な疾患である.今回,重篤なたこつぼ型心筋症を伴う特発性副腎出血を経験したので報告する.
    47歳の女性.頭痛,動悸を主訴に受診.検査にてカテコラミン過剰によるたこつぼ型心筋症と診断.呼吸循環動態が不安定で第2病日には挿管人工呼吸管理,大動脈内バルーンパンピング,経皮的心肺補助装置導入が必要な状態にまで悪化した.造影CTで右副腎出血と右副腎腫瘤を認め,内分泌学的精査で尿中・血中カテコラミン高値であり褐色細胞腫が疑われ,手術目的に当科紹介となり,第19病日に右副腎摘出術を施行した.術後呼吸・循環動態は安定して経過し,約1カ月で退院となった.病理学的検討では正常副腎組織内の出血のみで褐色細胞腫などの副腎腫瘍は認めず,特発性副腎出血と診断した.特発性副腎出血により重篤な心筋症を発症し手術で救命しえた本症例に関して,文献的考察を加えて報告する.
  • 上村 良, 上野 剛平, 宇山 志朗, 加藤 博明, 小野 一雄
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1112-1116
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は20歳,女性.腹部腫瘤を主訴に近医を受診し,腹部CTで径14cmの骨盤内腫瘤を指摘された.画像検索の結果,胃大網動脈から分枝した動脈が流入する粘液成分を含有する充実性腫瘤とされた.大網由来の間葉系腫瘍と診断し,診断・治療目的で摘出手術を施行した.術中所見では,大網からの血管流入を認める被膜に覆われた弾性軟の腫瘤を認め,流入血管結紮切離後に摘出を施行した.肉眼所見では白色被膜に包まれたspongy myxoid tumorであった.病理組織学検査では核異型の乏しいspindle nucleusの間葉系細胞が主体の腫瘍であり,免疫染色でGISTや神経原性腫瘍は否定的とされた.文献検索の結果,omental-mesenteric myxoid hamartoma(OMMH)と診断された.OMMHは報告例の極めて少ない稀な疾患であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 高橋 毅, 吉田 優子, 籾山 卓哉, 金 英植, 長谷川 恭久
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1117-1121
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は72歳の女性で,胃通過障害を伴う進行胃癌に対し胃全摘術を行った.術後6日目より発熱が続いたが,器質的な合併症は認めず,中心静脈カテーテルの先端培養と血液培養では菌陰性であった.9日目のCTで腹水の増加を認めたため腹水穿刺を行った.腹水培養でCandida glabrataが検出され,カンジダ性腹膜炎と診断した.β―Dグルカンは39pg/mlと上昇を認めた.Micafunginを100mg/日で投与開始し300mg/日まで漸増した.同時に腹水のドレナージを行ったところ,速やかに解熱傾向が得られた.胃通過障害を伴う胃癌に対して手術を行う際には,胃内容の漏出により真菌性腹腔内感染を生じる可能性のあることに留意する必要がある.術後にカンジダ性腹膜炎を発症した場合には,抗真菌薬投与に加え,感染源コントロールとして腹水をドレナージすることが早期に回復を得る上で重要と考えられた.
  • 橋田 真輔, 大橋 龍一郎, 中村 聡子, 大谷 弘樹, 田中 則光, 矢野 匡亮
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1122-1126
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は36歳の女性.スクリーニング目的のCT検査にて,左腎門部近傍に8.5cm大の腫瘤を発見され,当院を紹介された.貧血,軽度の炎症,脾腫,腹水を伴っていた.腫瘍周辺には複数のリンパ節腫大を認めた.CTガイド下針生検の結果,Castleman病(CD)が疑われたが確定診断には至らず,診断と治療目的に開腹腫瘤摘出術を行った.腫瘍周辺には高度の線維化が見られた.病理組織診断結果はHyaline vascular型のCDであった.結節周囲の3個のリンパ節においてもCD様の所見がみられたが,1領域に限局していたため単中心性CDと診断した.術後10カ月のCTでは腹水は消失し,貧血と脾腫は改善した.単中心性のCDにおいても全身症状を呈することがあり,手術により症状が改善する可能性が示唆された1例であった.
  • 河毛 利顕, 大森 一郎, 向田 秀則, 小橋 俊彦, 檜原 淳, 平林 直樹
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1127-1133
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    Composix Kugel Patch®(CKP)による腹壁瘢痕ヘルニア修復術後の遅発性メッシュ感染の1例を経験したので報告する.症例は70歳の男性で,2005年,腹壁瘢痕ヘルニアに対しCKPによる修復術を施行した.2016年,遅発性メッシュ感染から腸管皮膚瘻を形成し手術を施行した.Expanded polytetrafluoroethyleneシートが腹腔側に折れ返り,polypropyleneメッシュが腹腔内に露出し,小腸瘻を形成していた.CKPと腸管皮膚瘻を切除し,component separation technique (CST)で腹壁再建した.CSTはメッシュを必要とせず,感染手術にも対応可能である.筋膜欠損が大きく,感染を伴う腹壁再建の選択肢の一つとして検討すべき有用な術式であると考えられた.
  • 藤井 渉, 三毛 牧夫, 山田 成寿, 草薙 洋
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1134-1137
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    症例は83歳の男性で,4週前より頻回に出現する腹痛を認めていた.力んだ際に右鼠径部膨隆を認めたため自己還納したが,その後も腹痛の増強と嘔吐を認めたため当院救急外来を受診された.US検査とCT検査画像所見で鼠径ヘルニア偽還納の診断となり,鼠径部切開で緊急手術を施行した.腹膜前腔にヘルニア嚢が存在し,小腸の陥入を認めた.小腸を還納し,Lichtenstein法で修復した.鼠径部ヘルニア偽還納本邦報告27例に自験例を含め報告する.
  • 田崎 達也, 佐々木 秀, 香山 茂平, 杉山 陽一, 上神 慎之介, 中光 篤志
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1138-1143
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    3例の巨大鼠径ヘルニアを経験し,いずれもtransabdominal preperitoneal repair (TAPP法)で修復したので報告する.症例1は85歳,男性.左巨大鼠径ヘルニア,日本ヘルニア学会分類I-3型.症例2は84歳,男性.COPDと下肢閉塞性動脈硬化症の既往あり.左側II-3型.症例3は65歳,男性.左側I-3型.いずれもヘルニア内容は小腸で,ヘルニア嚢との癒着はなかったため,気腹後,体外圧迫を加えることにより,容易に還納は可能であり,長径15cmのメッシュで修復した.いずれも経過は良好で,術翌日あるいは翌々日に退院した.巨大鼠径ヘルニアに対するTAPP法は,鼠径部切開法に比べ,ヘルニア嚢とヘルニア内容との癒着が軽ければ還納がより容易である点,大きなヘルニア門を視認しながら確実にゆとりをもって腹膜前腔にメッシュを留置できる点で有用と考えられた.
  • 杉山 昂, 本間 重紀, 吉田 雅, 市川 伸樹, 川村 秀樹, 武冨 紹信
    2017 年 78 巻 5 号 p. 1144-1149
    発行日: 2017年
    公開日: 2017/11/30
    ジャーナル フリー
    腸骨動脈が原因となって絞扼性イレウスを生じた3例を経験したので報告する.症例1,53歳の女性.子宮体癌肉腫に対して広汎子宮全摘術施行.術後73日目に絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行.右外腸骨動脈と腸腰筋間に小腸が嵌頓し,壊死小腸を切除.間隙を回盲部で被覆し固定した.症例2,37歳の女性.妊娠合併子宮頸癌に対して帝王切開,広汎子宮全摘術を施行.術後33日目に絞扼性イレウスの診断で緊急手術を施行.右総腸骨動脈と腸腰筋間に小腸が嵌頓.小腸部分切除を施行し,間隙をS状結腸間膜で被覆し固定した.症例3,37歳の女性.子宮体癌,子宮頸癌合併に対して腹腔鏡下広汎子宮全摘・両側付属器切除術施行.術後56日目に絞扼性イレウスの診断で緊急手術施行.右外腸骨動脈と腸腰筋間に小腸の嵌頓あり,イレウス解除術施行.広汎子宮全摘術後に発生したイレウスでは,血管が原因となる機序を鑑別として考慮するべきである.
国内外科研修報告
支部委員会報告
編集後記
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