日本臨床外科学会雑誌
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78 巻 , 8 号
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臨床経験
  • 河北 一誠, 橋口 仁喜, 佐々木 昭彦
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1699-1703
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    目的:他科精査で原因が特定できなかった慢性骨盤痛に加え,CTで卵巣静脈の拡張や骨盤内静脈瘤を認め,骨盤内鬱滞症候群(pelvic congestion syndrome;PCS)が疑われた症例について,静脈造影による診断および血管内治療効果を検討した.対象と方法:2014年1月~2016年12月の間に他科にて原因が特定できず当科を受診した慢性骨盤痛に加え,CTで卵巣静脈の拡張や骨盤内静脈瘤を認めた12例を対象に,両側卵巣静脈・両側内腸骨静脈を選択的に造影.PCSの診断基準を満たす症例には責任静脈本幹の血管内治療を施行した.結果:静脈造影所見から10例をPCSと診断し,血管内治療(コイル塞栓術)を施行.全例で術前症状が消失し再増悪を認めなかった.結論:慢性骨盤痛に加え,CTで卵巣静脈の拡張や骨盤内静脈瘤を認める場合はPCSを疑い,静脈造影による診断および血管内治療を積極的に行うべきである.
症例
  • 小松 紗綾, 田口 加奈, 村上 朱里, 山下 美智子, 亀井 義明, 北澤 理子
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1704-1709
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    妊娠中に急速な増大を認め,術式選択や手術時期決定に苦慮した境界悪性葉状腫瘍を経験した.症例は33歳の女性.20歳台より左乳房内側に腫瘤を自覚しており,2.5cm大の線維腺腫として経過観察されていた.第一子を自然妊娠し,妊娠24週に左乳房腫瘤の増大を自覚し,妊娠28週に前医を受診.腫瘍径は7×5cm,針生検で葉状腫瘍境界悪性と診断され,妊娠31週に精査加療目的に当科を受診した.左A領域に8×8cmの腫瘤を触知し,超音波検査ではスリットを伴う境界明瞭低エコー腫瘤を認めた.妊娠期に急速増大する境界悪性もしくは悪性葉状腫瘍が疑われるため早期に手術が必要と考え,妊娠を継続しながら妊娠33週3日に全身麻酔下に左乳房切除術を施行.最終病理結果は境界悪性葉状腫瘍であった.妊娠40週に自然分娩で女児を出産した.妊娠中に急速増大した葉状腫瘍の報告は少なく稀な病態であると考えられ,文献的考察を加え報告する.
  • 吉田 龍一, 金淵 佐和, 進藤 晴彦, 加藤 伸史, 今野 文博, 並木 健二
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1710-1714
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.左前胸部の無痛性腫脹を主訴に来院.左乳房上部が右に比して明らかに膨隆していた.左腋窩に硬い可動性のない左腋窩リンパ節を触知した.腫瘍マーカー正常,画像検査所見では乳房内に異常所見を認めず,多数の著明に腫大した腋窩リンパ節と大胸筋および小胸筋の肥厚を認めた.左腋窩リンパ節生検を施行したところ乳癌の転移と診断され,画像所見と合わせ潜在性乳癌と診断した.ホルモン受容体陽性であったためレトロゾールを投与したところ,大胸筋の膨隆は徐々に縮小,腋窩リンパ節も縮小し,治療開始後1年たった今も増悪傾向を認めず治療継続中である.
    潜在性乳癌は稀であり,治療法もcontroversialで手術や放射線治療が推奨されているが,リンパ節転移があれば,サブタイプに則して術前化学療法や内分泌療法から開始する選択肢もあると考える.
  • 大山 宗士, 中村 清吾, 沢田 晃暢, 片山 敦, 小澤 幸彦, 明石 定子
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1715-1720
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は42歳,女性.近医にて乳癌が疑われ当院を紹介受診.マンモグラフィにて左乳房上外側に構築の乱れあり,超音波検査では左乳房1時方向に3cmの不整形腫瘤像,また左右乳房内に低エコー領域が散在していた.針生検にて腫瘤は浸潤癌,低エコー領域の細胞診は全て正常または良性と診断された.患者より温存術の強い希望あり,乳房造影MRI・造影マンモグラフィにて更なる切除範囲評価を試みるも背景乳腺造影効果のため困難であった.乳腺特異的PETであるPEM(positron emission mammography)の結果,左乳房外側のみに集積がみられた.本結果より乳房部分切除,センチネルリンパ節生検を施行.術後放射線治療,ホルモン療法を施行し4年経過している現在まで再発は認めていない.PEMは感度特異度共にMRIと同等とされ,特に今回のように乳腺症が混在する症例の術式選択に有用な画像診断法として,今後期待される.
  • 金 敬徳, 藤原 みわ, 吉村 友里, 梶原 友紀子, 伊藤 充矢, 大谷 彰一郎, 守都 敏晃, 高田 晋一
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1721-1725
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は53歳,女性.9カ月前から頸部違和感を自覚して近医整形外科を受診.頸椎X線写真撮影にて転移性骨腫瘍を認め,当院紹介となった.造影CT・PET-CTでは多発骨・肝転移を認めたが,原発巣は不明であった.上部消化管内視鏡検査では胃にびらんが多発,十二指腸に発赤・白斑を認め,生検の結果,低分化腺癌を認め,既存の腺管が残存していることから,転移性腫瘍が疑われた.追加の免疫組織化学染色でGCDFP-15が一部陽性であったため,乳癌が疑われ,MRIにて右C・D領域にそれぞれ0.6cm・0.8cmの腫瘤を認めた.MRIガイド下生検の結果,浸潤性小葉癌の診断であった.確定診断後weekly PTX,FEC,Eribulinを投与し,肝転移は消失,腫瘍マーカーも低下傾向である.GCDFP-15は乳癌において特異度95%とされ,原発不明癌の場合,陽性であれば乳癌からの転移を疑う必要があると考えられる.
  • 吉中 平次, 永田 彩子, 溝口 資夫, 野元 優貴, 末吉 和宣, 喜島 祐子
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1726-1732
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    髄様癌は全乳癌の1~2%と稀で,辺縁は比較的明瞭で限局し,核小体の明瞭な幼弱で大型の癌細胞が腺腔を作らず髄様に増殖し,ER・PgR・Her2陰性のtriple negativeを示すことが多く,乳管内癌成分が不明瞭で間質に著明なリンパ球浸潤を伴うことを特徴とする.このような髄様癌が腋窩部に発生したことで転移性リンパ節悪性腫瘍との鑑別が困難な症例を経験した.症例は63歳の女性で,右腋窩部の3cm大の腫瘤を主訴に受診した.画像所見では右腋窩脂肪織内に3cm大の腫瘤と胸筋間に1.4cm大のリンパ節腫大を認めた.細胞診や針生検では原発不明のリンパ節転移が最も疑われた.診断と治療を兼ねて腫瘤を含めた右乳房外上側の部分切除と胸筋間~腋窩のリンパ節郭清をen blocに行った.最終診断は外上部乳腺組織辺縁から発生した原発性乳腺髄様癌(p-T2N1aM0;Stage IIB)であった.
  • 恒川 昭二, 小倉 信子, 河合 潤
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1733-1737
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,女性.検診PETで左腋窩リンパ節に陽性所見があり,その後の精査で左乳房に6mmの乳癌が発見された.超音波検査では左腋窩リンパ節は3個腫大しており,穿刺吸引細胞診は判定困難であった.腫大リンパ節が乳癌の転移であるのかどうかを調べるためCT lymphographyを行った.センチネルリンパ節に連なる3個のリンパ節が造影され,その大きさと位置からそれらはPET陽性のリンパ節と考えられた.術前診断はN1としたが,センチネルリンパ節生検を行って一連の腫大リンパ節の病理診断を確認することとした.術中センチネルリンパ節に連なる3個のリンパ節を調べたところ,乳癌の転移はなく,術後Castleman病と病理診断された.PETなどで腋窩リンパ節に陽性所見があると,乳癌からの転移が最も考えられるが,たとえ乳癌が併存したとしても,乳癌の転移以外の可能性があることを考慮する必要がある.
  • 杤久保 順平, 小倉 廣之, 浅井 はるか, 淺野 祐子, 細川 優子, 椎谷 紀彦
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1738-1742
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    妊娠期乳癌はまれであり,妊娠期における乳癌治療の母体および胎児に対する安全性は十分に確立されていない.われわれは,妊娠期乳癌に対して集学的治療を行った4例を報告する.患者の年齢はそれぞれ44歳,34歳,27歳,39歳で,初診時の妊娠週数はそれぞれ14週,27週,11週,13週であった.乳癌のサブタイプはluminal Aが1例,luminal Bが2例,luminal-HER2陽性が1例であった.治療は全例で妊娠中期または後期に手術が行われ,そのうちの1例で妊娠17週から術前化学療法(ドキソルビシン,シクロホスファミド)が行われた.術前化学療法施行例に胎児発育遅延を認めたが,出生後経過に問題を認めなかった.他,周術期に母体および胎児の経過に問題を認めなかった.術後療法は全例で産後2カ月以内に開始された.妊娠期乳癌に対して標準的な集学的乳癌治療を安全に施行することができた.
  • 佐々木 章史, 三井 幾東, 竹内 靖夫
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1743-1747
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    高度な肺高血圧症を合併した僧帽弁疾患の弁置換術後に急激な肺動脈圧の上昇する症例があり,重症化すると治療困難となり,死の転帰をたどることも少なくない.症例は68歳の男性.高度な肺高血圧を伴った僧帽弁狭窄症に対し,僧帽弁置換術+三尖弁輪形成術を施行.手術翌日の抜管後より肺動脈圧は上昇を続け,術後2日目にPAsが100-110mmHgへ上昇し(体血圧130/53mmHg),乏尿となったため持続的血液濾過透析(CHDF)を開始した.また,プロスタグランジンE1製剤を経静脈的に投与開始し,術後4日目にPAsは50mmHgまで低下が認められた.肺血管拡張剤やプロスタグランジンE1製剤の積極的使用とCHDF導入で除水による前負荷の軽減に努めたことが右心不全,肺高血圧の悪化に至らなかった要因であったと予測された.適切な手術と術後の肺高血圧に対する早期の治療により,比較的予後は良好である.
  • 北條 禎久, 三好 麻衣子, 井村 真里
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1748-1753
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈瘤ステントグラフト内挿術後に見られるtypeIIエンドリークのような腰動脈からの出血による合併症は,腹部大動脈瘤人工血管置換術後には稀である.われわれの経験した症例は破裂性腹部大動脈瘤で人工血管置換術施行されていた84歳の男性である.術後9年目に撮影したCTでは,左内腸骨動脈瘤以外は人工血管置換部付近の異常は指摘されていなかった.術後9年2カ月後突然の左側腹痛を主訴に救急外来受診した.左内腸骨動脈瘤の破裂を疑い造影CT施行したところ,置換した人工血管をラッピングした瘤壁内に流入する腰動脈よりの出血が原因の後腹膜出血と診断された.出血の原因となっている腰動脈と内腸骨動脈瘤をコイル塞栓し,人工血管左脚から外腸骨動脈にステントグラフトの脚を留置し救命したので,文献的考察を加え報告する.
  • 宮本 光, 井上 清俊, 永野 晃史, 原 幹太朗, 西山 典利
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1754-1758
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,男性.健診で胸部単純X線上異常陰影を指摘され,当院呼吸器内科を受診.胸部CTで両側多発肺結節と前縦隔腫瘍を指摘され,確定診断目的に当科へ紹介された.
    胸腔鏡補助下に右肺3カ所部分切除術+前縦隔腫瘍摘出術を施行した.
    病理診断で前縦隔腫瘍は胸腺腫(TypeB3)であり,右肺結節3カ所は全て胸腺腫の転移と診断された.左肺2カ所の結節に関しても初回手術57日後に摘出切除を施行.組織診断は前縦隔腫瘍・右肺腫瘍と同様,胸腺腫の両側多発肺転移と診断された.
    胸腺腫の遠隔転移は比較的稀であり,全ての転移巣が切除可能な症例は極めて稀である.胸腺腫は完全切除が不可能でも可能な限り切除することで生存期間延長に寄与するとされているため,肺転移を疑っても切除可能であれば積極的に切除してよいと考える.本症例も切除後補助放射線化学療法を行わず,9カ月無再発生存を得ている.
  • 伊志嶺 徹, 谷口 直樹, 安元 浩, 天願 俊穂, 本竹 秀光
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1759-1763
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は73歳,女性.両側副腎腫瘍に対し腹腔鏡下両側副腎摘出術を施行し,術後2日目に離床した際に呼吸苦を訴え心肺停止となった.臨床経過,検査所見から急性肺塞栓症を疑い,経皮的心肺補助装置(percutaneous cardiopulmonary support;PCPS)導入後に肺動脈造影を施行し,右肺動脈に巨大塞栓による完全閉塞,左肺動脈にも塞栓を認め,急性肺塞栓症の診断となった.副腎摘出術後2日目であり,出血性合併症を回避するために人工心肺は用いず,PCPS補助下に外科的肺動脈塞栓除去術を施行した.術後に副腎不全,肺炎等を合併し入院期間が長期化したが,神経学的後遺症は認めず,術後100日目に療養型病院へ転院となった.出血性合併症のリスクの高い症例においては,PCPS補助下の外科的肺動脈塞栓除去術は有効な手段となり得ると考えられた.
  • 久米田 浩孝, 椎名 隆之, 中村 大輔, 梅咲 徹也, 吾妻 寛之, 砥石 政幸
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1764-1768
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.検診の胸部CT検査にて右下葉に異常結節を指摘され,当科に紹介受診した.肺癌(cT1bN0M0,stage IA2)が疑われた.右第5肋間に2孔,右第7肋間に2孔の胸腔鏡下右下葉切除,リンパ節郭清術を施行した.術後経過は概ね良好だったが,第9病日に突然右胸部の違和感と血痰の増悪,第5肋間創部直下に手拳大の膨隆を認めた.胸部CTでは右第5肋間をヘルニア門として中葉の一部が嵌頓していた.肺実質は用手的に還納でき,胸帯での持続圧迫と咳嗽時にはヘルニア門の圧迫を指導した.その後,肋間肺ヘルニアの再発は認めず,再手術することなく退院となった.術後2年経過するが,肋間肺ヘルニアの再発は認めていない.
  • 中野 隆之, 大岩 加奈, 中川 知己, 河野 光智, 増田 良太, 岩崎 正之
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1769-1773
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は63歳,男性.40カ月前に指摘された右上葉肺結節の増大と右下葉に新たな肺腫瘤の出現を認めた.喫煙者であったため禁煙後に気管支鏡を施行し,右下葉肺腫瘤が扁平上皮癌と診断された.この間,2カ月の経過で右上葉肺結節に著変はなかったが,右下葉肺腫瘤はさらに増大していた.右上葉肺過誤腫疑い+右下葉扁平上皮癌cT2bN0M0の術前診断で右上葉部分切除+右下葉切除+ND2a-1を施行した.病理組織学的に右上葉病変は肺過誤腫,右下葉病変は扁平上皮癌と軟骨肉腫の混在からなる肺癌肉腫pT3N2M0と診断された.肺癌肉腫は癌腫と肉腫の混在からなる稀な肺悪性腫瘍である.肺過誤腫は最も頻度の高い肺良性腫瘍で,しばしば肺癌との共存が報告されている.しかし,本症例のように肺癌肉腫と共存した報告は検索しえた限りでは他に認められなかった.稀な症例を経験したので報告する.
  • 柿本 忠俊, 三浦 修, 竹尾 幸子, 椎原 正尋, 豊島 幸憲
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1774-1779
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は77歳,男性.7年前に心窩部痛で来院,上部消化管内視鏡検査で下部食道から食道胃接合部(esophagogastric junction,以下EGJ)に至る全周性の白色調小顆粒状隆起を認めた.H2 blocker内服で症状が改善したため,その後外来受診されなかった.9カ月前に同主訴で来院,EGJに全周性潰瘍を認めた.また,その口側の下部食道に前回同様の全周性の白色隆起を認め,一部は疣状に盛り上がっていた.内服治療で一時改善したが1カ月前に症状が再燃したため再検したところ,EGJに全周性の不整なびらんが出現し狭窄をきたしていた.狭窄部の生検結果は扁平上皮癌であり下部食道切除術・胃管再建術を施行した.術後の病理診断結果,EGJに外膜に達する高分化扁平上皮癌を認めた.さらに,口側の白色隆起は角化を含む乳頭状増殖を伴い,ごく軽度の異型を認めた.両者は連続した病変であったため食道verrucous carcinoma(以下VC)と診断した.食道に発生し長期間の経過の後に急激に進行したVCの1例を経験したので報告する.
  • 田中 貴子, 有上 貴明, 石神 純也, 上之園 芳一, 大久保 啓史, 夏越 祥次
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1780-1784
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は50歳,女性.胃十二指腸潰瘍に対する保存的治療の既往があり,上部消化管内視鏡検査で胃粘膜下腫瘍を指摘された.腹部造影CT検査では転移性肝腫瘍を指摘された.肝転移を伴う胃原発ガストリノーマの診断となり,幽門側胃切除術(D2リンパ節郭清,肝外側区域切除術)を施行した.手術直後,ガストリン値は著明に低下したが,術後4カ月から再上昇を認め,肝転移再発の診断となり,分子標的薬治療を施行した.
    ガストリノーマはガストリノーマトライアングル内に多く発生することが知られているが,異所性ガストリノーマの報告は少なく,胃原発ガストリノーマの報告は極めて稀である.肝転移を伴うガストリノーマの予後は極めて悪く,外科切除以外にも分子標的薬あるいは肝転移巣に対する局所療法として選択的肝動脈塞栓術などが有用という報告もある.当科で経験した肝転移を伴う胃原発ガストリノーマについて,文献的考察を加えて報告する.
  • 稲垣 公太, 加藤 公一, 森 憲彦, 中山 裕史, 片岡 政人, 竹田 伸
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1785-1789
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は64歳,男性.心窩部痛,黒色便を主訴に当院救急外来を受診.上部消化管内視鏡検査にて,胃体中下部後壁に3型腫瘍を認め,生検の結果,低分化型腺癌と診断し胃全摘術を施行した.切除標本では,胃体部後壁に二つの異なる中心を有する潰瘍性病変がみられた.病理組織学的に,低分化型腺癌と神経内分泌癌の所見を認め,両者の間には直接の連続性や移行像はみられず,衝突癌と診断した.また,背景胃の組織にびまん性胃粘膜下異所腺の所見が認められた.びまん性胃粘膜下異所腺を伴った胃腺癌と神経内分泌癌の衝突癌の報告例はなく,本症例は極めて稀であると考えられた.
  • 藏田 能裕, 羽成 直行, 早野 康一, 加野 将之, 林 秀樹, 松原 久裕
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1790-1795
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は75歳の男性.前医で早期胃癌に対してESDを施行され,追加切除目的に当科に紹介となった.術前の造影CTで門脈の走行異常を認めた.門脈本幹の他に,左胃静脈が右胃静脈を介してもう一本の門脈を形成し,これが尾状葉・左葉・後区域に流入していた.肝動脈は動脈硬化による狭小化を認めたため,この門脈を温存して手術を行う方針とした.
    全身麻酔下に腹腔鏡下胃全摘術を施行した.右胃静脈から左胃静脈に向けて剥離を進め,全長にわたって温存した.
    術後は肝胆道系酵素の上昇を認めたが,術後第10病日に退院となった.
    門脈の走行異常は過去に若干の文献的報告を認めるのみで,非常に稀である.自験例のような門脈走行異常の報告例は過去には見られず,術前のMulti Detector-row CT (MDCT)による画像診断が血管の走行を把握する上で有用であった.
  • 浅井 宗一郎, 水野 伸一, 平田 明裕, 金森 明, 中倉 晴香, 玉内 登志雄
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1796-1801
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    45歳の男性,バイク走行中に転倒して心窩部を強打し,受傷約9時間後に腹痛が出現したため当院を受診.上腹部に腫瘤を触知し,同部位に最強点を有する圧痛を認めた.腹部造影CT検査で十二指腸下行脚から水平脚の壁内に127×67mm大の血腫を認め,血腫により十二指腸は圧排され内腔は閉塞していた.バイタルサインは安定しており,血液検査で軽度の貧血を認めるのみであったので胃管を留置し,安静,絶飲食で経過観察とした.第10病日のCT検査で血腫の増大を認めず離床開始.第17病日のCT検査で75×60mm大に血腫の縮小がみられ,上部消化管ガストログラフィン造影検査でも十二指腸から小腸へ造影剤の流出が良好であったため,胃管を抜去して経口摂取を開始した.第30病日のCT検査で血腫の消失を確認し,第33病日に退院とした.今回,われわれは保存的に治癒しえた外傷性十二指腸壁内巨大血腫の1例を経験したので報告する.
  • 市川 善章, 溝尻 岳, 檀 信浩, 西原 政好, 丸山 憲太郎, 阪口 正博, 前田 環, 岡 博史
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1802-1807
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は74歳,男性.下血とふらつきで当院に救急搬送された.Hb 5.7g/dlで,入院時に造影CTや上下部消化管内視鏡検査を施行したが,出血源は同定できなかった.輸血を行い,保存加療を行ったが,2日後に再び鮮血便を認め,大腸内視鏡にて再検すると回腸末端に鮮血を認め,小腸出血が疑われ,カプセル内視鏡(video capsule endoscopy;以下,VCE)を施行した.VCEではTreitz靱帯のやや肛門側に鮮血を認めたため,経口的ダブルバルーン小腸内視鏡(double-balloon endoscopy;以下,DBE)を施行した.Treitz靱帯から25cmから50cm肛門側の空腸に3カ所の憩室を認め,そのうち最も肛門側の長径約4.5cmの憩室内に露出血管がみられた.手術適応と判断し,憩室を含めた小腸切除を施行した.空腸憩室出血は頻度が低く診断が困難である.今回われわれは,VCEとDBEを組み合わせることで小腸憩室出血を術前診断することができた症例を経験したので,文献的考察を含めて報告する.
  • 得丸 重夫, 吉村 昌記, 北原 弘恵, 唐澤 幸彦, 織井 崇
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1808-1813
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例1は79歳,女性.3日間持続する腹痛で外来を受診した.腹部CT所見より単純性イレウスと診断し入院したが,入院翌日に腹水が増加したため,手術を施行した.腹水は漿液性で,小腸は時計回りに270°回転していた.症例2は69歳,男性.繰り返す腹痛が改善せず,救急外来を受診した.腹部CT所見より絞扼性イレウスを疑い,緊急手術を施行した.腹水は乳糜性で,小腸は時計回りに540°回転していた.2症例とも腹腔内には明らかな原因を確認されず,原発性小腸軸捻と診断した.いずれも小腸壊死には至っておらず,捻転解除のみで手術を終了した.本邦では原発性小腸軸捻は比較的まれな疾患であり,検索した範囲では自験例を含め59例の報告があった.その約半数が腸管切除を必要としたが,捻転解除のみで治療しえた症例と臨床的特徴を比較検討し,考察した.
  • 小出 史彦, 河合 徹, 落合 洋介, 豊田 良鎬, 京兼 隆典, 馬場 聡
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1814-1820
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は51歳の女性.黒色便を主訴に来院.造影CT検査ではTreitz靱帯やや肛門側の上部空腸内に造影増強効果を示す3cm大の腫瘤を認めた.上部消化管内視鏡検査ではTreitz靱帯の約10cm肛門側に粘膜下腫瘍を認め,超音波内視鏡検査では第3層に等~低輝度の腫瘍として認めたが,生検では腫瘍細胞を採取できなかった.PET-CT検査では同腫瘤に異常集積を認めたが,近傍リンパ節や遠隔臓器に異常を認めなかった.小腸粘膜下腫瘍の診断にて用手補助腹腔鏡下腫瘍切除術を行い,病理組織学的にgangliocytic paragangliomaと診断された.術後1年3カ月,再発を認めていない.Gangliocytic paragangliomaは大部分が十二指腸に発生する非常に稀な腫瘍であり,多くは良性と考えられている.空腸発生は極めて稀で,国際的には過去4例報告されているのみであり,自験例は本邦初の報告であった.
  • 石川 佳孝, 船水 尚武, 岡本 友好, 矢永 勝彦
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1821-1826
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は74歳の男性で,甲状腺癌多発肺転移による癌性胸膜炎の疼痛緩和治療のため,当院耳鼻咽喉科に入院していた.入院4日目より腹痛・嘔吐を認め,精査が行われた.腹部造影CTで腫瘍性病変による小腸の腸重積と著明な拡張を認めた.また,上部消化管内視鏡検査では,早期胃癌を認めた.上記により,小腸腫瘍による腸重積の疑いで外科紹介となり,手術を施行した.回腸末端から100cm口側の部位で腫瘍を先進部とした腸重積を認めた.腸管に壊死所見を認めず,還納後に小腸部分切除術を施行した.病理組織学的に粘膜内から粘膜下層に,類円形から多辺形細胞のびまん性増殖を認め,小腸肉腫の診断が得られたものの,分類の特定には至らなかった.術後経過は良好で経口摂取可能となったが,甲状腺癌の進行により術後28日に呼吸不全で死亡退院した.本症例は甲状腺癌,胃癌に稀な小腸肉腫を伴う同時性3重複がん症例であったため報告した.
  • 渡辺 基信, 市村 由佳子, 高垣 俊郎, 飯塚 育士
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1827-1831
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は84歳,男性.腹部手術既往なし.3日前からの腹部膨満,嘔吐を主訴に近医を受診し,腸閉塞の診断で本院紹介受診した.腹部膨満を認めるものの腹痛は軽度であり,腹部CT検査では終末回腸の拡張およびcaliber changeを,またループ状に走行する虫垂を認めた.腸閉塞の診断で保存的治療施行したが症状改善せず,入院4日目に手術を施行した.腹腔鏡下に観察するに,虫垂は先端が腫脹しその末端が回腸間膜に癒着しており,回腸末端から約50cm口側部位の回腸が虫垂および回腸間膜の間隙に嵌まり込み絞扼されていた.絞扼を解除し虫垂切除施行,絞扼部回腸は絞扼解除後に色調改善したため腸管切除は施行せず手術を終了した.虫垂の病理組織学的所見は慢性虫垂炎の報告であった.虫垂炎の合併症として癒着性腸閉塞はよく経験されるところであるが,虫垂自体による絞扼性腸閉塞を合併した症例は稀であり,文献的考察を加えて報告する.
  • 松本 弥生, 植田 剛, 中川 正, 中本 貴透, 小山 文一, 中島 祥介
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1832-1837
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    患者は71歳の女性で,受診2カ月前より腹痛が出現し,精査加療目的に当科を紹介受診.腹部CTで膿瘍形成性虫垂炎と診断.前医と比較して,腹痛・炎症反応ともに改善傾向であったため待機的手術の方針となった.一旦は膿瘍腔の縮小を認めたが,再増大を認めたため,腫瘍性病変を強く疑い手術を行った.開腹すると,回腸,上行結腸,S状結腸,膀胱,右卵巣が一塊となっており,周囲臓器を含めて回盲部,S状結腸・膀胱の一部,右附属器をen blocに切除した.病理診断はpT4b((S状結腸,膀胱,右卵管),pPM0,pDM0,pRM0) pN2,pM0:pStage IIIbの虫垂粘液癌であった.
    腹腔内膿瘍の様相を呈した虫垂癌は膿瘍形成性虫垂炎との鑑別は困難であり,待機的手術が可能で,膿瘍が消失しない症例に関しては,悪性腫瘍を念頭に置いた診断・術式選択を行うことが肝要と考えられる.
  • 八木 直樹, 富沢 直樹, 安東 立正, 荒川 和久, 本多 良哉, 山川 隼輝
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1838-1843
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    15歳,男児.腹痛で救急外来を受診した.幼少時よりWilliams症候群と診断され,妖精様顔貌,発達遅滞,心臓弁膜症を認めていた.腹部CT検査で消化管穿孔を疑い緊急手術を施行した.腹腔鏡下で観察すると,汎発性腹膜炎の所見でありS状結腸憩室と小腸が穿通・瘻孔形成し,同部位の穿孔を認めた.開腹移行し,小腸を部分切除し,穿孔部を挙上し人工肛門を造設した.半年後,人工肛門閉鎖術を予定した.憩室は人工肛門を中心にS状結腸・下行結腸移行部にあり,人工肛門部を含めた憩室部分の結腸切除術を腹腔鏡下に施行した.Williams症候群は,染色体7q11,23領域の欠失が原因であるとされ,エラスチンをコードするELN遺伝子が含まれている.Williams症候群はエラスチンの異常に伴い憩室症・憩室炎を発症しやすい.本邦での報告は非常に珍しいがWilliams症候群の腹痛では憩室炎を念頭に置くことが重要である.
  • 与儀 憲和, 片岡 雅章, 海保 隆, 柳澤 真司, 西村 真樹, 小林 壮一
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1844-1847
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は81歳,女性.半年前からの寝汗を主訴に受診し,血液検査で白血球36,000/mm3と著明な増加を認め,腹部造影CT検査で上行結腸に7cm大の造影効果を伴う腫瘤を認めた.下部消化管内視鏡検査で上行結腸に全周性の2型腫瘍を認め,生検で低分化型腺癌の診断となった.感染徴候に乏しく,血液疾患を疑う所見もないことから,granulocyte-colony stimulating factor(以下,G-CSFと略記)産生大腸癌を疑い,回盲部切除を施行した.病理組織学的には強い好中球浸潤を伴う低分化型腺癌で,腫瘍細胞は抗G-CSF抗体を用いた免疫染色で陽性を示し,G-CSF産生大腸癌と診断した.G-CSF産生腫瘍は肺癌を中心に報告例が増えているが,大腸癌における報告は比較的まれであり,文献的考察を加え報告する.
  • 佐藤 正規, 井本 博文, 武者 宏昭, 元井 冬彦, 内藤 剛, 海野 倫明
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1848-1854
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は80歳,男性.発熱・腹痛のため近医を受診し超音波検査で腹水を認め,精査目的に当院内科紹介となった.採血で炎症反応高値で,CT上大量の腹水を認めた.腹水穿刺で細胞診・結核検査・抗酸菌培養検査に異常を認めず,腹水の原因は不明であったがステロイドの内服を開始し,約1カ月間で腹水は消失した.腹水の原因精査のため施行した下部内視鏡検査で横行結腸癌の診断となり,手術目的に紹介となった.腹腔鏡下に観察したところ,腹腔内全体に白色の小結節が多数認められた.同結節の迅速診断は肉芽腫の診断で悪性所見を認めず,予定通り腹腔鏡補助下右半結腸切除術を施行.術後に組織の培養検査で結核菌が検出され,病理組織診断も合わせ結核性腹膜炎の診断となった.本疾患は悪性腫瘍に合併した場合,癌性腹膜炎と鑑別が困難であるため,鑑別診断の一つとして念頭に置いて診療にあたる必要があると考えられた.
  • 西垣 大志, 金城 達也, 伊禮 靖苗, 西巻 正
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1855-1858
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    63歳,男性.前医にてS状結腸癌穿孔,腹膜播種の診断でS状結腸切除,小腸部分切除,横行結腸人工肛門造設術を施行.化学療法目的に当院紹介となり,外来化学療法中であった.傍ストマヘルニアを伴うストマ脱を認め,腹痛を繰り返すようになったため,ストマ修復およびヘルニア修復術を施行した.
    術前まで血清CEA値は504ng/mlと高値を示していたが,術後に10ng/mlと著明な低下を認めた.また,精査では約4.5cm大の播種巣1箇所のみであったため,ストマ脱手術の3カ月後に播種巣切除術を施行した.術後再発なく経過している.
    本症例のCEA高値の機序はストマ脱腸炎による可能性が示唆された.
    今回,腹膜播種を伴う進行下行結腸癌術後に発症した傍ストマヘルニアおよびストマ脱に対する手術後,著明なCEA値の低下を認めたため,播種に対する根治術が可能であった症例を経験したので,若干の文献的考察を加え報告した.
  • 松浦 正徒, 伊丹 淳, 牧野 健太, 堀江 和正, 姜 貴嗣, 京極 高久
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1859-1865
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は32歳,女性.腹部膨満感を主訴に当院を受診した.腹部CT,MRI検査で胸腹水貯留と両側卵巣に巨大多房性嚢胞と充実性部分が混在する腫瘤と,大腸内視鏡検査でS状結腸に2型の腫瘍を認めた.癌性腹膜炎を伴うS状結腸癌と卵巣癌の重複癌と診断し,症状緩和目的で試験開腹術を行った.術中迅速腹水細胞診は陰性で腹膜播種は認めなかった.そのため,根治切除が可能と判断し,S状結腸切除術,人工肛門造設術と子宮両側付属器摘出術を施行した.免疫組織化学検査でCDX2が陽性と術後胸腹水が速やかに消失したため,pseudo-Meigs症候群をきたしたS状結腸癌の両側卵巣転移と診断した.術後化学療法を6カ月間投与した後に人工肛門を閉鎖し,術後1年6カ月経過した現在,再発は認めていない.
    過去の症例報告では比較的稀とされているが,化学療法も含めた検討の報告は少なく,文献的考察を加え報告する.
  • 山口 哲司, 山崎 一麿, 新井 英樹, 福田 卓真, 長田 拓哉
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1866-1870
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    結腸憩室炎は頻繁に遭遇する疾患であるが,直腸肛門周囲膿瘍を形成することは非常にまれである.S状結腸憩室穿通による直腸肛門周囲膿瘍の1例を経験した.症例は47歳の男性で,突然発症した会陰部痛を主訴に当院を受診した.肛門周囲に圧痛を伴う腫脹と39.5℃の発熱を認め,骨盤部CT検査で直腸肛門周囲膿瘍と診断し切開排膿術を行った.排膿後に行った瘻孔造影・注腸造影で膿瘍腔とS状結腸との交通を認め,瘻孔周囲結腸に憩室が多発していた.S状結腸憩室穿通による直腸肛門周囲膿瘍と診断した.絶飲食,中心静脈栄養管理を行い,切開排膿後に留置したチューブから間歇的洗浄を行った.切開排膿後4週目,膿瘍腔の消失,周囲腸管壁の浮腫状肥厚の改善を確認し,開腹S状結腸切除術を行った.術後は吻合不全や腹腔内膿瘍を認めず14日目に退院した.直腸肛門周囲膿瘍では,憩室穿通も原因となりうることを念頭に診療にあたるべきだと考えられた.
  • 小林 照貴, 宗友 良憲, 大山 直雄, 山田 隆年, 立花 光夫, 石田 康彦
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1871-1875
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は14歳の男児で,粘血便を主訴に近医を受診し,炎症性腸疾患の疑いで紹介となった.初診時の下部消化管内視鏡では,直腸に易出血性の壁肥厚と粘膜硬化を認め,生検で印環細胞癌と診断された.第3病日に腹水増量を認め,緊急開腹術を施行した.多量の血性腹水があり,術中迅速細胞診でClass Vであった.腹腔内の広範囲に米粒大の播種性結節を認め,特に大網は粟粒状の腹膜播種で覆われておりoozingによる出血が持続していた.直腸主病変は骨盤壁と膀胱に強固に浸潤していた.大網切除および回腸人肛門造設術を施行した.術後化学療法は,SOX+Bevacizumab療法を3クール施行したが,術後82日目に癌死した.小児直腸癌は非常に稀で,本邦では18例のみである.小児大腸癌を念頭に置いた早期発見や早期治療が重要である.
  • 阿部 紘大, 櫻川 忠之, 内 雄介, 丸山 正太郎, 島津 元秀
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1876-1881
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は59歳,女性.検診の腹部超音波検査で肝腫瘍を指摘され,当科を受診した.2カ月後の超音波検査およびCT検査では,肝S4に長径13mm大の小嚢胞が集簇した腫瘍を認めた.さらに,3カ月後の超音波検査およびCT検査では長径26mmと増大を認め,形態も内部隔壁を伴う多房性嚢胞に変化していた.肝粘液性嚢胞性腫瘍(以下,肝MCN)を疑い,肝左葉切除術を施行した.病理組織学的検査では,腫瘍は粘液産生性上皮に覆われ卵巣間質様形態を呈する部分を認め,肝MCNと診断した.本疾患は,2010年WHO分類で胆管との交通を持たない粘液産生性嚢胞性腫瘍と定義され,近年報告が相次いでいるが,その発育形態は明らかではない.本症例は発症早期に検診で偶然発見され,増大経過を確認できた稀な症例であった.
  • 細川 慎一, 上村 良, 米永 吉邦, 伊東 大輔, 山下 好人, 宇山 志朗
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1882-1886
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は70歳の男性.右季肋部痛を主訴に受診した.CTにて肝右葉に径14cmの内部に出血を伴う嚢胞性腫瘍を認めた.当初は経過観察されていたが,腫瘍の増大と貧血の進行を認めたため,開腹手術を施行.肝右葉を占拠する巨大腫瘍であった.病理組織学的には,紡錘形細胞・多核巨細胞を認め,肝未分化肉腫と診断された.術後経過は良好であり,第15病日に退院したが,第263病日に再発により永眠した.今回,われわれは成人発症が極めて稀な肝未分化肉腫を経験したので報告する.
  • 西牟田 雅人, 山口 広之, 小松 英明, 福岡 秀敏, 内田 史武, 吉元 崇文, 関根 一郎, 筒井 伸
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1887-1892
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は23歳,男性.出生時,先天性食道閉鎖症と鎖肛に対する手術歴を有する.その後,健康に成長しているが,腹痛・嘔吐を主訴に前医を受診したところ,閉塞性黄疸と胆嚢炎の所見を認め,当院に入院となった.経皮経肝的胆嚢ドレナージ(PTGBD)を施行し,黄疸と胆嚢炎は軽快したが,PTGBDをクランプすると黄疸が再燃することを繰り返した.PTGBD造影では胆嚢,胆嚢管,総胆管および肝内胆管は全て良好に描出されるが,総肝管の描出が不良であったため,Mirizzi症候群と診断した.内科的治療の効果なく,開腹胆嚢摘出術を施行した.術中胆道造影で胆嚢肝管の存在と総肝管の欠損が判明した.最終的には胆嚢摘出術と肝管空腸吻合を施行した.現在は黄疸の出現もなく,社会復帰している.胆道は奇形の多い部分であるが,総肝管欠損症は胆道奇形の中でも最も稀な奇形の一つである.本症例は,術前の胆道奇形の予測と術中胆道造影の有用性を実感した1例であった.
  • 小田切 理, 木村 憲央, 石戸 圭之輔, 工藤 大輔, 豊木 嘉一, 袴田 健一
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1893-1899
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は54歳の女性で,胆嚢癌に対し当科で拡大胆嚢摘出術,幽門輪温存膵頭十二指腸切除術を施行した.pT3N0M0 fStage IIIであり,gemcitabine(GEM)による術後補助化学療法を開始した.術後5カ月で肝S5,S7に再発腫瘍が出現し,GEM+S-1併用(GS)療法に変更した.GS療法11コース施行後に肝再発は消失した.合計19コース施行後,流涙のためS-1を中止しbiweekly GEM療法に変更した.14コース施行後も再発を認めず,GS療法開始から2年が経過していたためGEMの投与を中止した.術後6年6カ月,化学療法終了後4年1カ月経過の時点で無再発生存中である.胆嚢癌術後再発が全身化学療法によって完全奏効に至り長期生存が得られた症例の報告は稀少であり,再発例に対するGS療法の有用性が示唆された.
  • 岡本 暢之, 嶋田 徳光, 矢野 雷太, 渡谷 祐介, 大毛 宏喜, 末田 泰二郎
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1900-1903
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    19歳,男性.既往症は自閉症と精神発達遅滞あり.尿道に鉛筆を自己挿入し,全身麻酔下で抜去された既往がある.その1年後に尿道口から長さ22 cmの菜箸を自己挿入し,当院救急外来を受診した.肛門観察,造影CT検査により直腸尿道瘻(RUF:rectourethral fistula)と診断.全身麻酔下で異物抜去,瘻孔直接縫合閉鎖,人工肛門造設を行った.瘻孔閉鎖確認後,術後6カ月に人工肛門閉鎖,術後10カ月,瘻孔再発は無い.外傷性RUFは稀な疾患であり,遭遇した際の診断や治療方針の決定に難渋する.自験例では直腸診,肛門観察,造影CT検査による画像評価が診断に有用であった.異物が長く,固いものであれば瘻孔形成の可能性を念頭に置き,必要に応じて直腸の観察を行うことが重要と考える.
  • 蓮井 宣宏, 清水 篤志, 麻生 喜祥, 山口 浩和, 杉山 政則, 上西 紀夫
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1904-1910
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    溶連菌感染に起因する原発性腹膜炎を経験したので報告する.症例1は50歳の女性.発熱・腹痛にて受診,腹部所見およびCT検査から原因不明の急性汎発性腹膜炎と診断し,試験開腹術を施行した.手術所見は混濁腹水を認めたが,腹部内臓臓器に肉眼的な異常所見を認めなかった.腹水および膣培養の結果,劇症型溶連菌感染による原発性腹膜炎と術後診断した.集中治療により敗血症性ショックは改善し,13病日に退院した.症例2は19歳の女性.腹痛・下痢で受診,急性腸炎と診断し,絶食・抗菌薬治療を開始した.血液培養の結果および,軽度の腹膜刺激症状の存在から溶連菌感染症による原発性腹膜炎と診断した.抗菌薬および腹水穿刺ドレナージでは改善が得られず,11病日に腹腔鏡下ドレナージ術を施行し,19病日に退院した.溶連菌による原発性腹膜炎は稀な疾患であるが,病態に応じた治療により改善したので文献的考察を交えて報告する.
  • 赤澤 直也, 本多 博, 大石 英和, 小山 淳, 岡田 恭穂, 土屋 誉
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1911-1914
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は48歳,男性.突然の上腹部痛を主訴に前医を受診し,当院へ紹介となった.CTで下大静脈腹側と門脈の背側との間に小腸腸間膜脂肪層の集簇を認め,胃小弯側から右側腹部に向かって腸管が嵌入しているのが描出された.Winslow孔ヘルニア嵌頓と診断し緊急手術を施行した.開腹したところ, Winslow孔ヘルニアに小腸が嵌入し,虚血性変化を認めたため小腸切除を行った.術後16日目に軽快退院となった.内ヘルニアの一つであるWinslow孔ヘルニアは比較的稀な疾患であり,本邦での報告例は少ない.今回,Heller-Dor手術による小網解放の影響で通常のWinslow孔ヘルニアとは対側から小腸が嵌入した非常に稀な症例を経験したので文献的考察を加え報告する.
  • 綿貫 瑠璃奈, 玉川 英史, 藤村 知賢, 大山 隆史, 中村 威, 有澤 淑人
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1915-1920
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は開腹歴のない74歳の女性で,1週間前から継続する嘔気・嘔吐を主訴に当院救急外来を受診した.来院4,5日前には右下腹部痛を認めていたが,受診時には心窩部に軽度の圧痛を訴えるのみであった.腹部単純X線写真で小腸の拡張およびガス像を認めた.腹部CT検査では上行結腸の腹側に小腸の突出を認め,それより口側の小腸の拡張,液体貯留が認められた.腸閉塞の診断で入院となったが,保存的加療で軽快せず,内ヘルニア嵌頓を疑い開腹手術を施行した.術中所見では上行結腸外側の傍上行結腸窩に小腸が嵌頓していた.ヘルニア門を形成している腹膜を切開し嵌頓を解除すると,嵌入した小腸は壊死に至っておらず,ヘルニア門の縫合閉鎖のみで手術終了とした.術後経過は良好で,術後7日目に退院となった.傍上行結腸窩に起こる内ヘルニアは非常に稀であり,若干の文献的考察を加えて報告する.
  • 堀澤 七恵, 林 英司, 澤崎 直規, 谷村 葉子, 河原 健夫, 塚原 哲夫
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1921-1926
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    腹壁瘢痕ヘルニア修復手術では,消化管吻合を伴う場合には人工物は感染リスクが高く使用が困難である.今回,われわれは巨大腹壁瘢痕ヘルニアを伴った消化管悪性腫瘍手術において,腹直筋鞘前葉反転法を用いて修復した.症例は83歳,男性.二度の腹部手術後の創感染と創離開歴があり,ヘルニア門が12×17cmの巨大腹壁瘢痕ヘルニアを認めた.その後,横行結腸癌の内視鏡的粘膜切除後瘢痕から局所再発を認めた.さらに,幽門狭窄症状を伴う胃癌を診断され,幽門側胃切除術および横行結腸切除術に加え,巨大腹壁瘢痕ヘルニア修復術を施行した.腹壁欠損部が大きく,直接縫合が不可能で人工物を使用しない場合の腹壁瘢痕ヘルニア修復術に用いられるcomponents separation法でも腹壁の閉鎖困難と判断し,腹直筋鞘前葉反転法での修復を行った.人工物使用を避けたい腹壁瘢痕ヘルニア修復術において有用な選択肢の一つと考えられた.
  • 野々山 敬介, 早川 哲史, 高嶋 伸宏, 山本 稔, 北上 英彦, 田中 守嗣
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1927-1931
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は70歳,女性.食後に急激な右上腹部痛を認め,当院を受診した.右上腹部に手拳大の圧痛を伴う膨隆を認めた.腹部造影CTで上腹部正中の白線に直径2.5cmの裂孔を認め,同部より胃と大網が脱出しており,白線ヘルニア嵌頓と診断した.用手的に整復できたため,待期的に腹腔鏡下手術を施行した.上腹部正中に15×25mmのヘルニア門を認め,transabdominal preperitoneal approach (以下,TAPP法)に準じてメッシュを腹膜前腔に留置し,修復した.白線ヘルニアに対する腹腔鏡下手術の報告例の多くが腹腔内にメッシュを留置している.しかし,腹腔内へのメッシュ留置に関しては,腸管穿通や腸閉塞などの合併症が報告され始めており,安全性については議論がある.今回われわれは,TAPP法に準じて腹腔鏡下に修復しえた白線ヘルニアの1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.
  • 中尾 詠一, 中嶌 雅之, 前橋 学, 柿添 学, 小野 秀高, 杉田 光隆
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1932-1936
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は43歳,男性.腹痛を自覚後,3日間症状が改善しないため,他院を受診した.腸間膜脂肪織炎の診断で入院し,抗菌薬投与による保存的治療を受けた.2週間で炎症反応の改善を認め退院したが,腹痛が改善しないため,退院3週間後に当院を受診した.CTの所見より大網捻転と診断し,また右鼠径ヘルニアを同時に認めていた.症状発生から約2カ月後,腹腔鏡下大網切除術・腹腔鏡下鼠径ヘルニア修復術(TAPP法)を同時に施行した.術後3日で合併症なく退院した.大網捻転に鼠径ヘルニアを併発している症例は多いが,TAPP法で同時に治療した症例の報告はなく,文献的考察を加え報告する.
  • 田中 裕美子, 木村 豊, 松本 正孝, 加藤 寛章, 竹山 宜典, 安田 卓司
    2017 年 78 巻 8 号 p. 1937-1944
    発行日: 2017年
    公開日: 2018/02/28
    ジャーナル フリー
    症例は71歳,女性.黄疸を指摘され近医を受診した.MRCP検査では総胆管の拡張と乳頭部に腫瘤像を認め,上部消化管内視鏡検査で食道胃接合部の円柱上皮側にI p型病変,乳頭部に隆起性病変を認めた.生検では両者とも腺癌の診断で紹介受診となった.造影CT検査で食道裂孔ヘルニア,下部食道と乳頭部に濃染される腫瘤像を認めた.食道胃接合部癌と乳頭部癌の重複癌の診断で経腹的なヘルニア整復後に下部食道切除,胃全摘,膵頭十二指腸切除術を予定した.手術は経腹的にヘルニア整復を試みるが,食道腫瘍の上端は下肺静脈レベルで経裂孔アプローチは難しく,右開胸で下部食道切除と胃全摘,膵頭十二指腸切除術を行った.病理組織診断はBarrett食道腺癌(fT1bN0M0 Stage I)と乳頭部癌(fT2N0M0 Stage II)であった.Barrett食道腺癌と乳頭部癌の同時性重複癌は稀で,一期的根治切除をしえた症例を経験したので報告する.
編集後記
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