日本臨床外科学会雑誌
Online ISSN : 1882-5133
Print ISSN : 1345-2843
ISSN-L : 1345-2843
80 巻 , 12 号
選択された号の論文の35件中1~35を表示しています
臨床経験
  • 上村 豪, 青木 雅也, 大塚 綱志, 柳 正和, 佐藤 雅美
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2125-2131
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    呼吸器外科領域で手術部位感染:surgical site infection(SSI)は重篤な合併症の一つである.スキンシーラントは皮膚用微生物密封材で,消毒後も残存した皮膚菌叢を物理的に封じ込め,菌の移動と発現を阻止し手術部位感染を防ぐ効果がある.既に心臓血管外科などの他領域では有効性が確認されているが,呼吸器外科領域においては不明である.われわれは前期(2012年9月から2013年3月)に標準的消毒方法で開胸手術146例(SSI発症リスク症例:107例)を行い,手術部位感染を7例発症した.そこで,後期(2013年4月から2013年9月)の開胸手術120例からSSI発症リスク群30例を選定しスキンシーラントを使用した.その30例は107例と同様にSSI発症高リスク症例であったが,SSI発症を認めなかった.スキンシーラントは呼吸器外科領域においてもSSI発症を減少させる可能性が示唆された.

  • 浜田 和也, 大西 啓祐, 佐藤 多未笑, 二瓶 義博, 五十嵐 幸夫, 長谷川 繁生
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2132-2135
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    下部消化管穿孔による急性汎発性腹膜炎の症例では,術後手術部位感染症(SSI)の発生率が非常に高く,発生すると創治癒までに長時間を要する.当院では2014年より,創部SSIの予防のため一期的な皮膚縫合閉鎖を行わず,開放創として創部に対して局所陰圧閉鎖療法(NPWT)を行い,その後遅延一次縫合を施行している.2014年2月~2018年12月に当院で下部消化管穿孔による急性汎発性腹膜炎に対する緊急手術を行った53例のうち,術後よりNPWTを施行した群27例(A群)と皮膚を一期的一次縫合した26例(B群)に分けて比較検討した.B群では一期的に二層縫合を行った.A群では4例(14.8%),B群では9例(34.6%)に創部SSIを認めた.A群では遅延一次縫合までの平均日数は9.0日であった.当院での使用経験上,NPWTは創部SSIの発生予防に有用と思われ,報告する.

  • 柳 健, 柏原 元
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2136-2141
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    ONSTEP法は鼠径部ヘルニアに対する前方到達法による修復術で,内側を腹膜前腔に外側を内腹斜筋上に展開する層を跨ぐ新たな術式として2016年11月から本邦でも行われている.当院でも日帰り手術として同法を2017年より導入し2年間で345例,367病変を経験した.再発は1例(0.27%)のみで合併症は皮下出血8例,血腫3例,漿液腫4例,創感染2例,メッシュ感染1例で,術後腸閉塞や慢性疼痛および膀胱損傷などの重篤なものは認めなかった.手術時間は26±7分であり,同法は外側の腹膜前腔を剥離する手技を必要としないため,他の腹膜前修復法(TIPP:transinguinal preperitoneal repair)に比較して短縮された.以上のことから,ONSTEP法は簡便で安全性の高い日帰り手術が可能な修復法と言える.長期成績はまだ結果を待つ必要があるが,短中期成績としては良好な結果であった.

症例
  • 小松 紗綾, 山下 美智子, 田口 加奈, 村上 朱里, 北澤 理子, 亀井 義明
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2142-2147
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    腋窩部副乳癌に対する術式は局所広範囲切除術+腋窩リンパ節郭清が標準とされるが,その半数以上は腋窩リンパ節転移を認めないという報告がある.センチネルリンパ節生検の結果を元に腋窩リンパ節郭清を省略できれば,リンパ浮腫を含めた上肢・肩関節障害の発生リスクを低減でき患者のQOL維持に繋がる.

    今回われわれは,腋窩部副乳癌に対し局所広範囲切除術+センチネルリンパ節生検を施行した1例を経験した.文献的考察を加え,副乳癌に対するセンチネルリンパ節生検の適応について検討する.

    74歳,女性.右腋窩に1.5cm大の硬い腫瘤を認め,精査の結果,右腋窩部副乳癌と診断し,局所広範囲切除術+センチネルリンパ節生検を施行した.センチネルリンパ節生検において色素法とradioisotope法(RI法)を併用し,RI法にて術前にセンチネルリンパ節が腋窩に存在することを確認した上で手術を施行した.センチネルリンパ節生検の結果,リンパ節転移を認めず腋窩リンパ節郭清は省略した.

  • 島﨑 亜希子, 河野 博, 大城戸 政行, 本下 潤一, 深水 康吉
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2148-2152
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は53歳,女性.皮膚浸潤・壊死潰瘍を伴う20cmの右乳癌の精査加療目的で受診した.遠隔転移はなかったが腋窩リンパ節転移を伴っていた.血液検査ではWBC 47,200/μLと異常高値を認めたが,炎症所見に乏しかったため血清G-CSFを測定したところ,異常高値であった.局所進行乳癌のため化学療法を開始したが,腫瘍からの出血,蛋白漏出のため継続困難となり,局所制御およびQOLの改善目的に原発巣切除およびリンパ節郭清を行った.病理所見ではHER2蛋白過剰発現と抗G-CSF抗体染色陽性の骨・軟骨化生を伴う乳癌であった.G-CSF産生乳癌は生物学的悪性度が高く予後不良である.HER2が過剰発現し骨・軟骨化生を伴うG-CSF産生乳癌は,本症例が初めての報告である.

  • 高田 晃次, 宮下 晶恵, 川尻 成美
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2153-2156
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    今回われわれは,結核性リンパ節炎を併発したことでリンパ節転移評価に難渋した乳癌の2例を経験したので,文献的考察を踏まえ報告する.症例1は63歳の女性で,左鎖骨上の腫瘤を主訴に当院を受診し,胸腹部CTにて左鎖骨上窩リンパ節腫大と左乳腺腫瘍が認められたので,左乳腺腫瘍と左鎖骨上窩リンパ節に対してそれぞれ針生検を行い,浸潤性乳管癌と結核性リンパ節炎が疑われた.乳癌の術前診断は,cT1N0M0,cStage Iと診断し,抗結核薬内服治療を進めつつ左乳房全摘術とセンチネルリンパ節生検を施行した.症例2は77歳の女性で,他院にて右鎖骨上窩リンパ節腫大を認めたため,左乳癌cT4N3M1(LYM),cStage IVと診断され,内分泌療法を開始し,その後の継続加療目的に当院へ紹介となった.次第に内分泌療法抵抗性が認められ,また他臓器に転移を疑わす所見もなかったため,左乳房全摘術+右鎖骨上リンパ節摘出術を施行した.リンパ節に転移は認められず,結核性リンパ節炎の所見を認めた.

  • 押野 智博, 萩尾 加奈子, 髙﨑 恵美, 鈴木 はる菜, 守谷 結美, 山下 啓子
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2157-2163
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例1は64歳,女性.右乳癌,ER陰性,HER2陽性と診断された.CTで横行結腸転移が疑われ,下部消化管内視鏡で高度の内腔狭窄を認めた.閉塞予防のため腹腔鏡下結腸部分切除術(横行結腸)を施行,乳癌の結腸転移と診断された.術後は薬物療法を施行中で,3年1カ月経過した現在,消化器症状なく生存している.症例2は初診時68歳,女性.左乳癌 Stage Iに対し左乳房全切除術+腋窩郭清を施行した(ER 陽性,HER2陰性).術後10年2カ月,CTで下行結腸転移が疑われ,下部消化管内視鏡で高度の内腔狭窄を認めた.閉塞予防のため腹腔鏡下結腸部分切除術(下行結腸)を施行,左乳癌の結腸転移と診断された.術後は内分泌療法を施行中で,2年経過した現在,消化器症状なく生存している.孤立性の乳癌結腸転移は局所切除と薬物療法で,消化器症状を予防し長期に生存できる可能性がある.

  • 前田 裕介, 大倉 遊, 宇田川 晴司, 田中 毅, 春田 周宇介, 井下 尚子, 上野 正紀
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2164-2169
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    56歳,女性.食道癌ESD後非治癒切除の判定にて食道亜全摘,胸骨後経路回結腸間置術を施行(pT1bN0M0 Stage I)し,フォロー中に造影CTで経時的に増大する前縦隔腫瘤を認めた.再建回腸よりEUS-FNA施行するも診断に至らず,増大傾向にあり再発も否定できないため,診断的治療目的に切除の方針とした.病理結果は,desmoid腫瘍であった.Desmoid腫瘍は,遠隔転移はないものの局所再発の多い腫瘍で良性に分類される.腹部手術術後に腸間膜desmoid腫瘍の報告はあるが,食道癌術後再建の回腸間膜にできたという報告はない.挙上腸管にもdesmoid腫瘍の可能性があることを念頭に置かなければならない.若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 須田 健, 星野 澄人, 永川 裕一, 瀬下 明良, 勝又 健次, 土田 明彦
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2170-2174
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    TS-1の有害事象として横紋筋融解症の報告がある.今回,TS-1が原因の一つと考えられる横紋筋融解症を経験したので報告する.症例は74歳,男性.既往歴に糖尿病と高血圧で内服加療歴があるが,現在は服薬していない.18カ月前に胃癌に対して胃全摘術,D2郭清,Roux-en-Y再建を施行されている.病理結果はT3(SS)N0(0/52)H0P0CY0M0,Stage II Aであった.術後補助化学療法として,術後42日目より2週内服1週休薬のスケジュールでTS-1を開始した.明らかな有害事象なく内服可能であった.本人の希望で継続していた15カ月目に全身筋力の低下,下肢の脱力感を自覚した.歩行困難となり,症状発症2日後に受診した.血液検査上,白血球23,600/ul,LDH 544U/l,CK 20,052U/l,CRP 26.7mg/dlと異常高値を呈し,血中ミオグロビン360ng/ml,尿中ミオグロビン2,800ng/mlとともに異常高値を示していた.以上より横紋筋融解症と診断した.入院後点滴加療にて改善し,第11病日に軽快退院となった.TS-1の内服中に横紋筋融解症を発症した症例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 松本 拓朗, 大木 進司, 門馬 智之, 喜古 雄一郎, 田﨑 和洋, 河野 浩二
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2175-2182
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    (症例1)76歳,男性.前立腺癌に対しホルモン療法で治療中,造影CTで胃小彎側に胃壁との境界を有する内部不均一な腫瘤を認めた.FDG-PET/CTでSUVmax 3.7のFDG集積を認めた.同時に直腸S状部に内視鏡的に切除困難な腺腫を認めたため,同時手術方針となった.腫瘍は60mm大で左胃動脈より栄養されていたが胃壁との連続性はなく完全に摘出され,小網原発GISTと診断した.(症例2)65歳,女性.人間ドックでCA19-9の高値を指摘された.造影CTで胃体部腹側に,不整形で内部不均一な巨大腫瘤を認め,FDG-PETでSUVmax 4.9のFDG集積を認めた.EUS-FNAでc-kitが弱陽性,CD34が陽性のGISTの診断であり,腫瘍径が大きいため,開腹による腫瘍摘出術を施行した.腫瘍は150mm大,小網に局在し胃や大網と癒着していたが連続性は認めず,小網原発GISTと診断した.損傷なく完全摘出し得た.

    いずれの症例も高リスクの小網GISTの診断であったが,術後補助化学療法は希望により施行せず,それぞれ術後31カ月,109カ月再発なく経過している.

  • 鶴田 成昭, 三宅 秀夫, 永井 英雅, 吉岡 裕一郎, 湯浅 典博, 伊藤 藍
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2183-2189
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は68歳の男性で,2004年,早期胃癌に対し幽門側胃切除,D2郭清を施行した.病理組織学的にT1b(SM),N2(7個,#4d,5,6,8a),ly0,v0,stage II(胃癌取扱い規約,第13版)と診断された.その12年後,背部痛のため近医を受診し,血液検査でアルカリフォスファターゼが高値であったため当院を紹介された.CTで脊椎,骨盤骨に造骨性変化を認め,FDG-PETにて全身の骨にFDGの高集積を認めた.骨生検で腺癌と診断され,胃癌原発巣の組織像と類似していること,human gastric mucin陽性,prostate specific antigen陰性であることから,胃癌の転移と診断された.早期胃癌は切除後10年以上経過して骨に再発することがある.

  • 小松﨑 修平, 倉田 昌直, 榎本 剛史, 宮﨑 貴寛, 高橋 一広, 小田 竜也
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2190-2195
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    患者は62歳,男性.多発性骨髄腫に対して化学療法中に発熱を認めた.造影CTで,回盲部周囲膿瘍と,その内部に断裂した虫垂を認め,穿孔性虫垂炎と診断し,緊急で回盲部切除を施行した.術後創傷治癒は良好であったが,発熱と下痢が遷延した.術直前に提出したサイトメガロウイルス(以下,CMVと略記)アンチゲネミアが高値であることが判明したため,CMV腸炎と診断しバルガンシクロビルを投与した.翌日には解熱し下痢も軽快した.摘出検体では,回腸末端に膿瘍と交通する深い潰瘍を認め,病理組織学的には潰瘍周囲にCMV感染細胞を認めた.臨床経過・病理結果から,CMV腸炎による回腸穿孔を契機に,虫垂は二次的に断裂したと考えられた.

    本症例は術前に穿孔性虫垂炎と鑑別することは困難だった.免疫不全患者の消化管穿孔では,頻度は少ないがCMV腸炎も鑑別に挙げ,診断,治療につなげる必要がある.

  • 村尾 直樹, 大毛 宏喜, 渡谷 祐介, 上村 健一郎, 村上 義昭, 末田 泰二郎
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2196-2200
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    局所陰圧閉鎖療法は創傷治癒を促進する有効な治療法であるが,腸管と交通のある創では禁忌とされてきた.今回われわれは,腸管皮膚瘻を伴う開放創に対して,ドレナージによる瘻孔閉鎖後に非固着性ガーゼで露出腸管を保護して本療法を行い,著明な創縮小を得た2症例を経験した.症例1は67歳の女性.S状結腸憩室穿孔に対しHartmann手術を施行したが,術後結腸断端破綻に伴い正中創が離開した.症例2は65歳の女性.放射線性腸炎・骨盤内臓全摘術後で,小腸損傷に伴い正中創が離開した.それぞれドレナージによる腸管皮膚廔の閉鎖後,非固着性ガーゼで露出腸管を保護して本療法を開始した.開始当初は低圧での吸引を行い交換も頻回に行ったが,段階的に吸引圧を上げ,合併症なく創縮小が得られた.腸管皮膚瘻を伴う開放創でも,瘻孔閉鎖後に適切に腸管を保護すれば本療法は安全に施行できると考えられた.

  • 米盛 圭一, 前田 真一, 塗木 健介, 原口 優清, 山元 紀子, 夏越 祥次
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2201-2206
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は70歳,女性.発熱・腹痛・食欲不振で近医を受診し,腹部CTで腹腔内の巨大嚢胞性腫瘍を指摘された.また,血液検査で炎症反応が高値であり,精査加療目的に当科へ紹介された.腹部CTで右側の結腸間膜内に最大径25cmの多房性嚢胞性腫瘍を認めた.内部には充実性成分を認めず,腸間膜嚢胞と診断した.抗菌薬投与を行い炎症反応は低下したが,腹痛が持続したため手術を行った.開腹すると術前に認めていた嚢胞は認めず,結腸間膜内に6cm大,暗赤色で弾性硬の腫瘤性病変を認めた.悪性腫瘍の可能性が否定できず,隣接する横行結腸を含め腫瘤を切除した.病理組織学的には,炎症性細胞の著明な浸潤が認められたが,明らかな腫瘍性病変はなく,炎症性偽腫瘍と診断された.外来で経過観察中であるが,再発の所見は認めていない.腸間膜嚢胞の破裂後に炎症性偽腫瘍を形成した報告は非常に稀であり,文献的考察を加えて報告する.

  • 榎本 将也, 立花 慎吾, 木口 英子, 永川 裕一, 勝又 健次, 土田 明彦
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2207-2212
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    78歳,男性.意識障害のため救急搬送され,精査加療目的に入院となった.腹部CTおよび小腸内視鏡検査によって小腸腫瘍と診断し,腹腔鏡下小腸部分切除術を施行した.腫瘍は95×50×35mmの充実性腫瘤で,c-kit・CD34・DOG1・S-100・desmin・calponinが陰性,α-SMAが部分的陽性,Ki-67は80%であり,分化の低い平滑筋肉腫の診断となった.術後約50日で再発の診断となり再度腫瘍切除を施行したが,初回手術後約3カ月で腹壁再発をきたし,約4カ月で現病死した.消化管間葉系腫瘍の診断基準の確立により,消化管平滑筋肉腫の診断がつく症例は比較的稀となった.Ki-67が高値であり,小腸平滑筋肉腫と診断され非常に進行の早い症例を経験したため報告する.

  • 赤嶺 健吏, 長濱 正吉, 知念 順樹, 金城 泉, 宮里 浩, 友利 寛文, 吉長 正富, 新垣 京子
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2213-2220
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    悪性黒色腫の多発小腸転移による消化管出血に対する治療法は確立していない.今回われわれは,同疾患に対し小腸切除術を行い,速やかに後治療に移行しえた症例を経験したので報告する.症例は70歳の男性で,動悸とふらつきの精査目的の腹部造影CTで,小腸多発腫瘤と腹腔内リンパ節腫脹,胆嚢胆石症を認めた.診断も兼ね,腹腔鏡下小腸間膜リンパ節切除および腹腔鏡下胆嚢摘出術を行った.同手術の際,背部に多発する黒色結節を認めた.切除したリンパ節は悪性黒色腫で,悪性黒色腫の多発皮膚転移・多発小腸転移と診断された.その後も頻回に輸血が必要な状態が持続したため小腸腫瘍からの出血を確認し,消化管出血の制御目的に小腸切除術を行った.術後,貧血は改善し,がん薬物療法が可能となった.悪性黒色腫の多発小腸転移による消化管出血の制御において,小腸切除術が有用であった.

  • 土屋 博, 杉山 保幸, 櫻谷 卓司, 山田 誠
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2221-2227
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は65歳の女性で,C型肝炎のfollow-up中の腹部エコーにて多発肝腫瘤と小腸腫瘤を指摘された.肝生検の病理結果はAE1/AE3,CD56,chromogranin A,synaptophysinが陽性,Ki-67 indexは 66%であり,小腸原発の神経内分泌癌および同時性多発肝・リンパ節転移,多発腹膜播種,胸膜転移と臨床診断した.腸閉塞症状が出現したため開腹手術を実施したが,原発巣は切除不能で,回腸・横行結腸バイパス手術を施行した.術中にサンプリングした腹膜播種巣の病理組織検索でも神経内分泌癌と診断され,回腸が原発と判断した.術後に一次治療としてCDDP+VP-16併用療法を施行したが,治療効果はPRであった.小腸神経内分泌癌は稀少疾患であるため標準治療は確立されていないが,CDDPとVP-16が有効な治療法になる可能性がある.

  • 浅田 祐介, 馬場 秀雄, 工藤 裕実, 岡本 信彦, 竹島 薫, 山藤 和夫
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2228-2232
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は41歳,男性.発熱・腹痛で受診し,膿瘍形成を伴う穿孔性急性虫垂炎と同部に金属異物を認めた.拡大手術の回避を念頭に,待機的虫垂切除(interval appendectomy,以下IA)の方針とし,待機的に腹腔鏡下虫垂切除術を施行した.確実な異物回収と根部処理のため,虫垂根部処理・切離は回盲部を授動して腹腔外で直視下に行った.約7mmの金属異物を回収した.経過は良好であった.

    異物による虫垂炎の報告は散見されるが,腹腔鏡手術の報告は少なく,特にIAに成功した報告は検索し得る限り本邦では初例である.

    昨今,本症例のような局所の炎症が強い急性虫垂炎に対してはIAの様々な利点が提唱され,有力な治療戦略の一つである.しかし,異物による急性虫垂炎に対するIAの適応については,報告が稀であり不明である.本症例は,異物による急性虫垂炎におけるIAの適応,有用性を示唆する重要な症例と考え,報告する.

  • 中上 勝一朗, 金 浩敏, 野中 亮児, 梶原 淳, 今北 正美, 位藤 俊一, 種村 匡弘
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2233-2237
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は23歳,女性.心窩部痛と右下腹部痛を主訴に来院した.来院時血液検査では,軽度の炎症反応上昇を認めた.腹部超音波検査では,虫垂根部の回盲部側の粘膜下に15×10mmの低エコー腫瘤を認め,腹部造影CT検査では,回盲部に14×14mmの低吸収域と周囲の濃染があり,また回結腸動脈領域に短径10mm以上のリンパ節腫大が散見された.大腸内視鏡検査では,回盲弁の盲腸側に壁外からの圧排と考えられる約20mm大の隆起を認め,生検を実施したが悪性所見は検出されなかった.画像所見を総括し虫垂粘液嚢腫と診断したが,周囲リンパ節の腫大も認め虫垂粘液癌を完全に否定できず,D3郭清を伴う腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.切除標本では虫垂内腔に約10×10×3mm大の黄色結節があり,病理検査で黄色肉芽腫性虫垂炎の確定診断を得た.黄色肉芽腫性炎症は胆嚢や腎臓に好発するが,虫垂原発は極めてまれであり,文献的考察を加えて報告する.

  • 中川 朋, 林 覚史, 波多 豪, 道浦 俊哉, 山邉 和生
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2238-2242
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は88歳の女性で,2日来の腹痛と嘔気を主訴に外来を受診した.CTで右下腹部に浮腫状に肥厚した小腸を認めた.拡張小腸と肥厚腸管の移行部にくびれを認め,絞扼性イレウスを疑い,腹腔鏡下に緊急手術を行った.腹腔内を観察するに,上行結腸間膜の欠損孔から背側に嵌入する小腸を認め,上行結腸間膜裂孔ヘルニアと診断した.牽引では嵌入小腸を還納できなかったため,裂孔を切開して欠損孔を開大し,Bauhen弁から70cmから100cmの回腸を腹腔内に還納した.嵌入小腸に虚血性変化は認めず,切除は行わなかった.非常に稀な上行結腸間膜裂孔ヘルニアに対して腹腔鏡下に診断し,嵌頓解除と裂孔閉鎖を行った1例を経験したので報告する.

  • 武山 大輔, 中野 徹, 安本 明浩, 澤田 健太郎, 片寄 友, 柴田 近
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2243-2249
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は43歳,女性.嘔吐,下痢,腹痛の症状のため受診した.37.8度の発熱,上腹部に圧痛を認め,CRPが22mg/dLに上昇していた.腹部CT検査所見では右横隔膜と肝臓との間に著明に拡張した結腸を認め,さらに左上腹部にwhirl徴候を認め,結腸軸捻が疑われた.緊急下部消化管内視鏡検査を行ったところ,拡張結腸において壊死所見を認めた.Chilaiditi症候群を伴った結腸軸捻を疑い緊急開腹術を行った.下行結腸が後腹膜に固定されていない下行結腸固定異常と診断した.拡張結腸を含めて結腸左半切除を行い,術後経過は良好で退院となった.退院後に小腸が右横隔膜下に嵌入し,小腸腸間膜と横行結腸に近位空腸が挟まれる腸閉塞を発症し,保存的加療を行った.下行結腸固定異常に起因する結腸軸捻,大腸型Chilaiditi症候群に対して手術を施行し,さらに術後に小腸型Chilaiditi症候群を呈した稀な症例を報告する.

  • 安岡 康夫, 田中 仁, 小坂 芳和, 上野 義智
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2250-2256
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は60歳,女性.所属リンパ節転移を伴うStage III aの上行結腸腺癌に対して結腸右半切除術を施行.術後7カ月目,経過観察目的の大腸内視鏡検査にてS状結腸に6mmのI p型ポリープを認め,内視鏡的粘膜切除を施行した.病理組織学的検査結果はIgGλ型の髄外性形質細胞腫と診断された.切除断端陽性であったため,所属リンパ節郭清を伴うS状結腸切除術施行した.病理組織学的には腫瘍の局所遺残やリンパ節転移は認めなかった.術後112カ月経過,無再発生存中である.大腸髄外性形質細胞腫は稀で,本邦では自験例で10例目である.また,自験例は大腸癌と大腸髄外性形質細胞腫の同時性重複癌症例であり,極めて稀なケースであると考えられた.

    髄外性形質細胞腫は放射線治療に感受性が高いことが知られているが,大腸原発の髄外性形質細胞腫の治療方針は外科的切除が第一選択で可能な限り完全切除が必要であると考えられる.若干の文献的検討を加えて報告する.

  • 麻生 喜祥, 森 俊幸, 小暮 正晴, 横山 政明, 阪本 良弘, 阿部 展次
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2257-2263
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は69歳の女性で,7年前にCT検査で肝右葉に25×18×12cmの巨大肝嚢胞の診断を受けた.無症状のため経過観察していたが,転倒後に出現した左肩痛と腹痛を主訴に,転倒から2日後に当院を受診した.CT検査で肝嚢胞破裂と診断したが,腹膜刺激症状は認めなかった.本人の希望もあり外来経過観察としたが,転倒から5日後に腹痛が増悪して再受診した.CT検査では腹水の増加を認めた.嚢胞内容の血球成分により腹膜刺激症状をきたしていると考えたが,持続性の出血の可能性もあり,手術の適応とした.腹腔鏡での観察を行い,肝嚢胞破裂と診断し,活動性の出血や胆汁の漏出が見られないことを確認し,腹腔鏡下天蓋切除と洗浄ドレナージを行った.術後経過は良好であり,術後8日目に退院した.術後2年目に肝嚢胞遺残再発と嚢胞感染を疑い,経皮ドレナージ行った.腹腔鏡下手術後に残存嚢胞がみられたが,破裂肝嚢胞に対する一期的治療として低侵襲な腹腔鏡下手術は治療の一つと考えられた.

  • 上岡 祐人, 佐伯 博行, 中園 真聡, 松川 博史
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2264-2268
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,女性.右季肋部痛と発熱を主訴に当院を受診した.腹部は平坦・軟で,右季肋部に圧痛を認めた.血液検査で炎症反応の上昇を認め,造影CTで肝内側区域に10cm大の多房性病変を認めた.感染性肝嚢胞を疑い内科的治療を開始したが改善は乏しく,外科的切除の方針となった.手術は病変を含む肝左葉切除を行った.切除標本は,65×70×70mmの多房性嚢胞性腫瘍であり,内容は粘液であった.病理組織学的検査では,悪性所見は認めず卵巣様間質を有しており,肝粘液性嚢胞性腫瘍(mucinous cystic neoplasm of the liver:以下,肝MCN)と診断した.今回,肝膿瘍との鑑別が困難であった肝MCNを経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 白濵 靖久, 緒方 俊郎, 青柳 武史, 爲廣 一仁, 谷口 雅彦
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2269-2276
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は38歳.男性.自動車事故で腹部を打撲し当院へ救急搬入された.腹部造影CTで後上膵十二指腸動脈から出血を認めたためIVR(interventional radiology)で止血を施行後に,膵頭部損傷に対して膵頭十二指腸切除術(pancreaticoduodectomy:PD)を施行した.術後,腹部コンパートメント症候群,膵管チューブの逸脱によりそれぞれ再手術を施行し,膵外瘻としたが,受傷後188日目に膵胃吻合を行い軽快退院した.膵頭部の高度な損傷に対してはPDが必要になるが,膵外傷に対するPDは死亡率15%を超え,合併症の頻度も高く適応には慎重な判断を要し,合併症回避のために二期的なPDも考慮が必要である.術後も外傷手術後は大量輸液となり,ACS発症のリスクは高く,手術時にopen abdominal managementなど,予防的な処置も検討が必要である.

  • 星川 真有美, 青笹 季文, 緒方 衝, 新本 弘, 辻本 広紀, 上野 秀樹, 山本 順司
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2277-2283
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    64歳,女性.易疲労感,腹部膨隆の精査で,貧血と血小板,PT活性低下に加え,CTで右腎を下方に,右肝を上方に圧排する25cm大の境界明瞭な腫瘤性病変を認めた.腫瘍は分葉状で内部は斑状の低吸収を示し,大部分は造影不良で一部漸増性の造影効果を示し,MRIでは腫瘤内部にT2WIで著明な低信号~高信号域が斑状に混在し,時相の異なる出血が疑われた.PET-CTで悪性所見を認めず,後腹膜chronic expanding hematoma (CEH)と診断し,腫瘤切除術を施行した.周囲組織に明らかな浸潤は無く,腫瘤切除後の止血に難渋し,約4Lの出血を伴い輸血を要した.術後は速やかに血液凝固機能が正常化し,第13病日に退院となった.術後18カ月現在,再発は認めていない.術後病理診断では巨大血腫をきたした背景病変として腎外性angiomyolipoma (AML)を指摘された.文献的考察を加えて報告する.

  • 前橋 学, 渡部 顕, 小野 秀高, 馬場 裕之, 杉田 光隆, 熊谷 二朗
    2019 年 80 巻 12 号 p. 2284-2289
    発行日: 2019年
    公開日: 2020/06/30
    ジャーナル フリー

    症例は41歳,女性.腹部膨満感で前医を受診.下腹部腫瘤の診断で当科に紹介となった.CTとMRIで肝下面から骨盤内に至る巨大な腫瘍を認め,liposarcomaが疑われた.初回手術で腫瘍の可及的切除を行い,400×290×170mm,7,108gの腫瘍を摘出した.後腹膜原発の悪性線維性組織球腫(現在では未分化多型肉腫)の診断で術後フォローを行っていたが,術後30カ月目に右側腹部に105×65×105mm大の腫瘤再発を認めた.以後,腫瘍の再発を認める毎に手術を施行し,初発から11年間で計12回の手術を施行した.その後数カ月で腫瘍の急速な増大を認め,初回手術から134カ月後に永眠した.未分化多型肉腫は四肢軟部組織に好発する肉腫で,根治切除が困難で予後不良な疾患である.再発が多く症状緩和目的の減量手術の意義は不明であるが,計12回の手術で11年間の長期生存を得た1例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.

国内外科研修報告
支部・集談会記事
編集後記
第81回日本臨床外科学会総会演題:取下げ,訂正,変更,追加
feedback
Top