奇静脈食道陥凹(azygoesophageal recess:AER)とは,右胸腔内において椎体腹側の縦隔が左胸腔寄りに位置する食道まで偏位することにより起こる陥凹領域のことであり,奇静脈から横隔膜までの範囲で認められる.同部位に嵌まり込むようにブラが発生することがあり,気胸の原因となることが知られている.
当院ではAERのブラが原因となった気胸に対して近年7例の手術を行った.年齢の中央値は75歳で,全例,右続発性自然気胸であり,背景肺には中等度の気腫性変化を認めた.術前胸腔ドレナージを行うも,改善傾向になく手術となっている.AERのブラは白色で薄いものが多かった.自動縫合器で切除した後に切離ラインを中心にポリグリコール酸シートで被覆しフィブリン糊で固定した.術後の再発は認めていない.AERのブラは肺門部背側に位置するため,十分な視野展開をしないと見逃しやすい状況にあった.また,ブラ切離においては肺の可動制限のため,自動縫合器の自由度が少なく感じられた.AERのブラが原因である気胸は適切な対応により治癒する可能性が高い.右続発性気胸ではAERのブラを認識することが重要と思われた.
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