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吉村 吾郎, 伊達 恵美, 飯塚 徳重
2023 年 84 巻 11 号 p.
1707-1713
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
フリー
症例は51歳,女性.右乳房C域に腫瘤を触知し,マンモグラフィと超音波検査で同部位に管状陰影を認めたが,穿刺吸引細胞診にて確定診断が得られず,経過観察とした.1年後,腫瘤は右乳房A域に移動していた.針生検にて寄生虫疾患を疑い,外科的切除を実施,Spirometra属裂頭条虫のプレロセルコイドを確認して乳房弧虫症と確定診断した.初回切除から3年後,2回目切除から1年6カ月後に,同側乳房内に再発をきたした.再発の原因として,初診から外科的切除まで1年間を要し,その間にプレロセルコイドが遊走したことが推察された.乳房弧虫症の本邦報告は自験例を含めて17例と稀である.弧虫症では,時間経過とともにプレロセルコイドの遊走をきたし,虫体の完全切除が困難となる可能性があるため,画像診断で弧虫症を疑った場合は,直ちに外科的切除を考慮すべきである.
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金谷 瑛美, 松井 恒志, 長澤 志保, 荒木 美聡, 関根 慎一, 高木 康司, 藤井 努
2023 年 84 巻 11 号 p.
1714-1719
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
フリー
乳腺葉状腫瘍は乳腺腫瘍の1%未満と比較的稀な上皮性混合腫瘍の一つであり,若年性は極めて稀である.線維腺腫との鑑別が難しく,特に若年性線維腺腫との鑑別が困難である.そのため,手術時の適切な切除範囲の決定に苦慮する場合が多い.
今回,13歳の女児,針生検検査で線維腺腫の診断であったが,術後病理検査で境界悪性葉状腫瘍と診断された1例を経験したので報告する.症例:右乳房しこりを自覚し受診.針生検検査では線維腺腫の診断であったが,経過観察中に増大傾向を認めたため,葉状腫瘍の可能性を考慮し腫瘍摘出術を施行した.術後病理検査では境界悪性葉状腫瘍と診断された.術後2年で再発なく経過している.
葉状腫瘍の切除範囲については一定の見解がなく切除マージンと再発率は相関しないとの報告も多いため,結果的に葉状腫瘍の診断でも追加切除は不要と思われる.若年者の手術に際しては根治性だけでなく整容性や将来の授乳機能温存への配慮も重要である.
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加治 つくし, 黒瀨 絢子, 大久保 雄一郎, 石黒 清介, 池部 大, 鈴木 瞳
2023 年 84 巻 11 号 p.
1720-1725
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
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葉状腫瘍内に発生する乳癌は比較的稀である.今回,境界悪性葉状腫瘍の上皮に非浸潤性乳管癌を合併した症例を経験したため報告する.症例は39歳,女性.左乳房に急速増大する7cmの腫瘤を認めた.術前診断は境界悪性葉状腫瘍であった.根治性・整容性の観点と本人の希望で,乳房全切除術を施行した.切除検体の病理組織学的検査において,葉状腫瘍内に最大径12mmの非浸潤性乳管癌(DCIS)を認めた.切除断端は陰性であり,無治療で経過観察中である.術後1年時点で再発は認めていない.国内外における同様の症例について調査し,文献的考察を加え報告する.
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佐野 直樹, 川嶋 久恵, 鈴木 宇, 原田 智之, 高垣 俊郎, 小田 竜也
2023 年 84 巻 11 号 p.
1726-1730
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
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症例は76歳,男性.4年前に他院で食道癌に対して食道亜全摘,後縦隔経路頸部胃管吻合術を施行した.大腸腺腫の経過観察目的に当院を紹介受診し,下部消化管内視鏡検査を施行したところ,帰宅後に腹痛が出現した.CTでは横行結腸をヘルニア内容とする左横隔膜ヘルニアを認めた.脱出腸管に明らかな虚血所見はなく,緊急入院として保存的に経過観察した.通過障害が軽度であったため,経口摂取を開始して一時退院したが,その後も横行結腸は自然還納されず,間欠的な腹痛が残存したため,待機的に開腹横隔膜ヘルニア修復術を施行した.手術では横行結腸を腹腔内へ用手的に還納し,メッシュを用いてヘルニア門を修復した.術後経過は良好であり,術後8日目に退院して現在まで8カ月間再発なく経過している.食道癌術後に下部消化管内視鏡検査を契機として,左横隔膜ヘルニアを発症した症例を経験したため,文献的考察を加えて報告する.
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長谷川 健太, 長谷川 毅, 櫻井 克宣, 久保 尚士, 井上 透, 西口 幸雄
2023 年 84 巻 11 号 p.
1731-1736
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
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79歳,男性.胃体上部後壁の3型進行胃癌に対して腹腔鏡下胃全摘術を施行した.食道周囲の剥離時に左背側の胸膜に10mm大の損傷を生じたが修復は行わなかった.術後3日目に酸素化低下,腹痛の増強を認め,胸部X線・胸腹部CTで小腸の胸腔内への脱出像を認め,食道裂孔ヘルニア嵌頓と診断した.画像上,Y脚吻合部を含む挙上空腸が大きく嵌入しており,緊急開腹手術を施行した.食道裂孔左側より挙上空腸が胸腔内へ嵌入し嵌頓しており,左側の横隔膜を鋭的に切開し嵌入腸管を腹腔内に還納した.腸管壊死は認めず,切開した横隔膜と食道裂孔を縫縮し,食道空腸吻合部を食道裂孔前壁,横隔膜閉鎖部に縫合固定し,手術を終了した.術後に食道空腸吻合部の縫合不全を認めたが,保存的加療で軽快し,再手術後54日目に退院した.術後1年の現在,胃癌・食道裂孔ヘルニアともに再発は認めていない.術中胸膜損傷が疑われた場合は,修復や腸管固定の追加を考慮すべきである.
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大関 瑛, 内藤 哲也, 大竹 紘子, 皆川 昌広, 谷 達夫
2023 年 84 巻 11 号 p.
1737-1742
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
フリー
症例は58歳,男性.食事の際のつかえ感を契機に,胸部中部食道癌cT3N1M0 Stage III(食道癌取扱い規約第11版)と診断された.術前CTでは腫大リンパ節(106recR)に近接し,気管右後壁に含気のある嚢胞状腫瘤を認め,気管憩室の合併が疑われた.術前補助化学療法2コース後,胸腔鏡下食道切除,2領域リンパ節郭清,後縦隔経路胃管再建,気管憩室切除を行った.術中106recRリンパ節と近接した気管右壁に,気管内腔と交通する嚢胞状の気管憩室を認め,リンパ節郭清施行時に,交通部をクリッピングし安全に切除しえた.術中,術後と合併症なく経過し,第10病日に退院した.食道癌では縦隔内リンパ節郭清が不可欠である.一方,気管憩室の穿孔は重大な合併症を引き起こす可能性があるため,本症例のように気管憩室とリンパ節が近接する場合には,気管憩室の切除を考慮する必要がある.
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熊谷 知子, 櫻井 嘉彦, 伊吹 省, 中山 祐次郎, 茂垣 雅俊
2023 年 84 巻 11 号 p.
1743-1749
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
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症例は71歳,男性.前医でHb 6.9mg/dlの貧血を指摘され,当院を受診した.CT・上部消化管内視鏡検査で胃前庭部に肝浸潤を伴った3型腫瘍を認め,cT4b(HEP)N0M0,cStage IVAの高度進行胃癌と診断した.化学療法を行う方針とし,一次治療でFOLFOX療法を6コース施行し,二次治療でramucirumab+nab-PTX療法を7コース施行したが,治療効果は進行(progressive disease : PD)だった.三次治療でnivolumab を11コース投与したところ,局所の腫瘍と肝浸潤が著明に縮小し,生検結果でも腫瘍細胞を指摘されなかった.根治術可能であると判断し,初診から20カ月目に手術を施行した.最終病理組織診でも腫瘍細胞を指摘されず,病理学的完全奏効(pathological complete response : pCR)と判断した.本症例は術後14カ月経過した現在も再発なく経過しており,非常に有用な経過を辿った1例として,文献的考察を加えて報告する.
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畑田 奈津実, 安宅 亮, 中山 雄介, 北口 和彦, 多賀 亮, 廣瀬 哲朗
2023 年 84 巻 11 号 p.
1750-1757
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
フリー
71歳,男性.胸焼けを主訴に受診し,上部消化管内視鏡検査で3型胃癌を指摘された.画像検査にて,腹腔動脈から左右総腸骨動脈周囲にかけて複数の大動脈周囲リンパ節転移を疑う所見を認め,胃体部癌cT4,N+,M1(LYM),cStage IVBと診断した.S-1+CDDP療法を4コース施行後,治療効果を認め,手術の方針とした.術式は,胃全摘術,大動脈周囲リンパ節郭清,胆嚢摘出術を施行した.郭清は腹腔動脈から左右総腸骨動脈周囲のうち,初診時に転移と判断した箇所までの拡大郭清を行った.病理検査結果では,中分化型管状腺癌,ypT1b2,N0,M0,ypStage IAであった.大動脈周囲リンパ節は完全奏効の状態であり,治療効果判定Grade 2aであった.術後はS-1での補助化学療法を施行し,現在術後15カ月経過し,無再発生存中である.
広範な大動脈周囲リンパ節転移例も,化学療法後の外科的切除の対象となり,R0切除によって長期生存を目指せる可能性が示唆された.
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高橋 雅哉, 久島 昭浩, 若田 光男, 戸田 匠, 宮澤 可奈子, 松本 麻衣, 布村 眞季, 藤林 真理子
2023 年 84 巻 11 号 p.
1758-1765
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
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80歳以下で,併存症が軽度であり,かつ薬剤で除痛が得られる上部消化管穿孔に対して保存的治療を行い,穿孔部閉鎖後に胃癌の確定診断を得た症例を7例経験した.1991年から2011年の間に当院に入院した胃癌穿孔症例13例中,7例(53.8%)に保存的治療を行った.全例,保存的に穿孔部は閉鎖して,待機的に開腹した.6例に根治術を施行し,うち5例に5年生存を見た(Stage IIA1例,IIB1例,IIIA4例,以下,胃癌取扱い規約第15版に準拠).1例は局所進行のため非切除であり(Stage IVA),1年以内に癌死した.すなわち,保存的治療を選択した胃癌穿孔症例は,全例保存的に穿孔部閉鎖し,待機的に根治術を行って,比較的良好な予後が得られた.胃癌穿孔症例に対しても,一定の条件の下で初期治療として保存的治療は選択肢となると思われる.
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原田 哲嗣, 伊禮 俊充, 宇都宮 貴史, 本成 永, 亀山 眞一郎, 伊志嶺 朝成
2023 年 84 巻 11 号 p.
1766-1770
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
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症例は69歳,女性.8年前に他院にて子宮体癌に対し開腹手術が行われていた.今回,来院当日緩徐発症の腹痛を主訴に当院救急外来を受診した.腹部造影CTにて右外腸骨動脈がバンドとなって遠位回腸がclosed loopを形成しており,絞扼性腸閉塞の診断で緊急手術を施行した.腹腔鏡下に観察したところ,血性腹水および右下腹部に暗赤色に変化した回腸を認めた.腸管の愛護的な術野展開が困難であることから,開腹移行とした.開腹所見では過去の手術によって右外腸骨動脈が遊離しており,後腹膜との間隙に回腸が嵌入,絞扼し,右外腸骨動脈は高度伸展されていた.腸管切離を先行することで絞扼を解除し,右外腸骨動脈を温存した.回腸部分切除再建した後,間隙は後腹膜をフラップ状に形成することで被覆し再発を予防した.血管が原因となった絞扼性腸閉塞は稀である.今回,子宮体癌開腹術後8年経過後に外腸骨動脈が原因となった絞扼性腸閉塞を経験したため報告する.
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豊後 雅史, 酒井 健司, 後藤 邦仁, 大﨑 真央, 加藤 健志, 平尾 素宏
2023 年 84 巻 11 号 p.
1771-1775
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
フリー
広範囲の腸管嚢胞様気腫症に対して保存的加療にて軽快した3例を経験した.症例1:73歳,女性.リウマチ性多発筋痛症に対してステロイド内服中.嘔吐・腹痛を主訴に来院し,乳酸値,炎症反応上昇とCTで腹水および十二指腸・小腸に気腫像を認めたため,腸管虚血の疑いで審査腹腔鏡を施行した.虚血変化はなく,腸管切除を行わず保存的加療で改善した.症例2:84歳,男性.前立腺癌に対してホルモン療法施行中.腹痛を主訴に来院し,炎症反応上昇とCTで小腸気腫像,腹腔内遊離ガス,腹水を認めたため,腸管虚血を疑い審査腹腔鏡を施行した.虚血変化はなく,保存的加療で軽快した.症例3:49歳,男性.舌癌に対して化学療法とステロイド投与中.CTで結腸に気腫像,腹腔内遊離ガス,腹水を認めたが,腹部に特記所見はなく,全身状態良好であったため,保存的加療の方針とし,酸素療法で改善した.本疾患の臨床判断における診療アルゴリズムを作成したので報告する.
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甲斐 巧也, 青山 広希, 高山 祐一, 高橋 崇真, 細井 敬泰, 前田 敦行
2023 年 84 巻 11 号 p.
1776-1781
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
フリー
症例は49歳の男性で,特記すべき既往はなし.繰り返す右上腹部痛を主訴に近医を受診し,CT・下部消化管内視鏡検査で腸管嚢腫様気腫症を認めたため,当院を紹介受診した.当院でのCTで肝弯曲に腸重積を認め,下部消化管内視鏡検査による送気で整復を施行した.右上腹部痛を繰り返していることから,腸重積を繰り返している可能性があり,腹腔鏡下結腸右半切除術を施行した.
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今井 稔, 土居 桃子, 外山 和隆, 中川 朋, 戸口 景介, 山口 拓也
2023 年 84 巻 11 号 p.
1782-1786
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
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今回われわれは,Leriche症候群を合併した直腸癌に対して腹腔鏡下低位前方切除術を施行した1例を経験したので,文献的考察を加えて報告する.症例は74歳,女性.主訴は便潜血陽性.下部消化管内視鏡検査にて直腸癌を指摘され,精査の結果,cT3cN1bM0,cStage IIIbと診断された.術前造影CT,3D-angiographyでLeriche症候群の合併を認めたが無症状であり,画像上も側副血行路から下肢,腹腔内臓器への供血が予測された.腸腰動脈から内腸骨動脈領域への側副血行路も確認することができたため,上直腸動脈・S1動脈を切離し直腸切除術を施行したのち,吻合再建することとした.術中にindocyanine green(ICG)蛍光法による血流評価を行った.周術期合併症なく経過し,術後13日目に退院した.術前・術中に血流評価を行いつつ手術操作を進めることで,血行再建せず安全に手術を施行しえた.
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佐藤 彩香, 曽山 明彦, 原 貴信, 松島 肇, 足立 智彦, 江口 晋
2023 年 84 巻 11 号 p.
1787-1792
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
フリー
症例は80歳,女性.悪寒戦慄を伴う発熱を主訴に前医を受診し,小網から肝内部に達する20mm大の線状異物を認め,魚骨の迷入が疑われた.抗菌薬治療が開始され,並行してドレナージを要するとの判断で当院に紹介された.炎症の鎮静化を図り,待機的にドレナージを行う方針とした.抗菌薬をde-escalationしたところ炎症が再燃し,造影CTで膿瘍の主座は小網内にあり,肝膿瘍を合併していた.膿瘍内部に魚骨を示唆する線状影を認めた.異物除去・外科的ドレナージが必要と判断し,内視鏡を併用した腹腔鏡下膿瘍ドレナージ,腹腔内異物除去を施行し,30mm大の魚骨を摘出した.内視鏡で消化管粘膜面が保たれていることを確認し,手術を終了した.術後経過良好で,膿瘍も消失した.術中の局在診断が難しい魚骨による腹腔内膿瘍でも,内視鏡を併用した腹腔鏡下手術により,消化管粘膜面と膿瘍・異物との関係を確認しながら安全に異物除去,ドレナージを実施することが可能であった.
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大坪 出, 菊地 拓也, 草野 俊亮, 福田 善之, 林 太郎, 鷲尾 哲郎, 豊川 晃弘
2023 年 84 巻 11 号 p.
1793-1798
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
フリー
急性上腸管膜動脈(SMA)塞栓症は致死率が高く,治療に難渋することも多い.今回,われわれはSMA塞栓症に対して開腹操作下に血栓除去を行い,血流障害の有無を判断するためopen abdominal management(OAM)を行い,翌日に腸管色調が良好であることを確認した後に閉腹する,というアプローチで2例の連続した救命成功例を経験したので報告する.
症例1は90歳,女性.急激な腹痛を自覚し,救急要請して当院へ搬送となった.心電図上,心房細動を認めた.苦悶様顔貌と腹痛を認め,造影CTでSMA閉塞を認めた.腹部血管造影を行い,血栓回収を試みたが,困難であった.腹痛持続,乳酸値の上昇が見られ,3Fr. Fogartyカテーテルを使用して開腹血栓除去を行った.手術時間は3時間31分,OAMを行い翌日に閉腹し,術後20日に施設退院した.
症例2は85歳,女性.急激な腹痛で他院に搬送され,SMA塞栓症の診断で当院を紹介受診.開腹血栓除去術・OAMを行った.手術時間1時間35分で術後11日に自宅退院した.
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蛭川 浩史, 平井 基晴, 水戸 正人, 多田 哲也
2023 年 84 巻 11 号 p.
1799-1804
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
ジャーナル
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症例は69歳,男性.神経線維腫症1型,慢性閉塞性肺疾患を有し,消化管穿孔,多発小腸腫瘍などに対する手術既往があった.他院で腹壁瘢痕ヘルニアと診断されたが,低肺機能から手術適応外と判断された.しかし,強く手術を希望し当院を受診した.理学所見ではヘルニアは成人頭大で,CT所見からloss of domain(LOD)ヘルニアと診断された.術前にprogressive preoperative pneumoperitoneum:PPPを行い,ヘルニア修復術を行った.術式は開腹で,両側transversus abdominis muscle release:TAR,部分的前方component separation法およびメッシュによる筋層背側修復術とした.術後は1週間の人工呼吸器管理を要したが,良好に経過し32病日に退院した.LODヘルニアに対するPPPは考慮すべき有効な方法と考えられた.
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近森 健太郎, 岡本 佳樹, 藤原 理朗, 石川 順英
2023 年 84 巻 11 号 p.
1805-1809
発行日: 2023年
公開日: 2024/05/31
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坐骨孔より脱出するヘルニアは坐骨ヘルニアと呼ばれ,骨盤部のヘルニアの中でも稀とされている.症例は83歳,女性.胃癌術後の経過観察目的に施行されたCTで偶発的に右大坐骨孔ヘルニアを指摘されたが,無症状であり,患者自身が手術を希望しなかったため,18カ月間経過観察していた.高齢であり腸管嵌頓した場合のリスクを考慮し,改めて手術を提案したところ,希望したため待機的手術を施行した.腹腔鏡で観察すると,大坐骨孔に約2cm大のヘルニア門を認め,大坐骨孔ヘルニアと術中診断し,腹膜前腔を剥離しメッシュを留置した.術後経過は良好で,術後2日目に退院となった.腹腔鏡下に待機的なヘルニア修復術を行った報告例は少なく,文献的考察を加えて報告する.
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