日本臨床外科学会雑誌
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第80回総会会長講演
  • 窪田 敬一
    2019 年 80 巻 3 号 p. 457-465
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    「安全な外科手術手技の確立」には多くの手術をこなすだけではなく,5つの心構えが必要である.第一に上手い人の手術を良く見る.上手い人の手術を一生懸命見るのみではなく,批判的な眼で改良点を見つける努力も重要である.第二に術前準備を万端に行う.術前画像を十分評価し,門脈塞栓術等の適応を見定めることが安全性向上に繋がる.第三に術後経過を慎重に評価する.新知見を得ることもできる可能性がある.第四に他施設に学ぶ.学会等で他施設の工夫を勉強し,取り入れることは重要である.第五に世界を見て,世界に問う.さらに,視野を広げるため,海外の施設と共同研究し,情報発信することで自分の世界でのレベルが良く分かると思う.これらの五つの姿勢は外科医の知識,度量を広げる上で重要である.多くの手術を経験した上に,以上の5つの姿勢を備えて手術に臨めば,「安全な外科手術手技の確立」は達成されるものと確信している.

平成30年度学会賞記念講演
  • 前場 隆志
    2019 年 80 巻 3 号 p. 466-473
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    35年間,主に携わってきた肝胆膵外科手術に関わるいくつかの工夫と試みを紹介する.この領域の手術には血管(脈管)外科手術手技の習得が重要である.肝臓では肝静脈と下大静脈(IVC),胆道では肝門部胆管,膵では門脈と上腸間膜動脈および主膵管への取り扱いが,手術後の患者経過を左右する一つの要因になると考えている.

    本稿では,今までに行ってきたIVC進展癌に対する手術補助手段としての体外循環併用法とIVC単純遮断法,右肝切除兼膵頭十二指腸切除に代表される超拡大手術の問題点,脈管外膜に沿った過不足のないskeletonizationの意味,地方一般病院での手術的trial(膵尾側切除術の膵断端隔離法56症例・膵頭十二指腸切除術のno stent膵腸再建法連続137症例・長時間手術における術中Pause 350症例),以上について,私への教訓と反省を含めて報告する.

原著
  • 中尾 英一郎, 所 為然, 下池 典広, 赤川 進, 八木 大介, 金谷 誠一郎
    2019 年 80 巻 3 号 p. 474-479
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    目的:高齢者胃癌に対する腹腔鏡下胃切除術(Laparoscopic Gastrectomy ; 以下LG)の成績を後方視的に検討し,安全性,有効性を評価した.方法:2011年4月から2015年12月までにLGを施行した胃癌患者535例を対象に,80歳以上をO群(81例),80歳未満をY群(454例)として,患者背景因子,手術関連成績に関して比較検討を行った.結果:術前併存疾患罹患率はO群で有意に高く,D2郭清割合はO群で有意に低かったが,手術時間,出血量,リンパ節郭清個数,合併症率(Clavien-Dindo分類Grade II以上)で2群間に有意差を認めなかった.多変量解析の結果,手術時間が術後合併症の独立予測因子であった.3年生存率はO群で83.6%,Y群で89.0%であり,2群間で有意差はなかった.結語:高齢者胃癌に対するLGは安全かつ妥当な術式であると考えられる.

臨床経験
  • 土田 寧恵, 林 直輝, 利川 千絵, 山下 祐司, 鈴木 高祐, 山内 英子
    2019 年 80 巻 3 号 p. 480-485
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    目的:転移再発乳癌の根治はほぼ不可能と言われてきたが,HER2陽性転移再発乳癌に対しては化学療法とペルツズマブ,トラスツズマブ併用療法(PER+HER併用療法)により完全消失例が認められるようになった.当院での経験を報告する.

    方法:2014年3月から2017年8月に当院でPER+HER併用療法により臨床的完全消失(cCR)を認めたHER2陽性転移再発乳癌症例について,治療効果と効果,臨床病理学的因子を検討した.

    結果:PER+HER併用療法を施行した93例中10例(10.8%)でcCRを認めた.10例中,乳房手術を施行した3例はいずれも病理学的完全消失を認めた.手術未施行7例中5例は中間観察期間12カ月でcCRを維持していたが,2例では脳転移が出現した.

    結語:HER2陽性転移再発乳癌においてPER+HER併用療法により完全消失,および長期CRを得る可能性が示された.

症例
  • 和久 利彦
    2019 年 80 巻 3 号 p. 486-490
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    症例1は49歳,女性.近医でBasedow病の診断でMMI投与を開始.投与1カ月で多関節炎を呈し投与を中止したが,症状悪化のため当院紹介.炎症反応・MPO-ANCA(144EU)の高値を認めたが,入院1週間後に関節炎が改善し,当院受診1カ月後には関節炎の消失とMPO-ANCAの低下をみた.当院受診2カ月後にMPO-ANCAは正常化し,MMI誘発AAVと診断した.当院受診3カ月後に甲状腺全摘術を行ったが,術後に関節症状の発現はない.症例2は64歳,女性.10年前Basedow病の診断でPTU投与を開始.PTUを400mg/dayまで増量した後,炎症反応,紫斑,関節痛,腎機能障害,MPO-ANCA (67.6U/ml)高値を呈したことから薬剤誘発AAVが疑われた.APTTの延長,LAC陽性も認めaaPLキャリアも疑われた.PTU中止後甲状腺全摘術を行い,術後1カ月で臨床症状が消失し,術後16カ月でMPO-ANCA改善・LAC正常化したことより,PTU誘発AAV・aaPLキャリアと考えられた.

  • 上田 晃志郎, 松並 展輝, 林 雅規, 井上 隆, 瀬山 厚司, 守田 知明
    2019 年 80 巻 3 号 p. 491-498
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    乳腺腺筋上皮腫は稀な乳腺腫瘍である.基本的には良性腫瘍に分類されるが,摘出標本が良性の腺筋上皮腫と診断されても局所再発や遠隔転移を発症した症例が報告されている.今回,乳頭および皮膚浸潤が疑われた乳腺腺筋上皮腫の1例を経験したので報告する.症例は80歳,女性.右乳腺腫瘤および右異常乳頭分泌を主訴に当科を受診した.右乳腺BDE領域に最大径5.2cmの腫瘤を触知し,乳頭陥凹と皮膚の発赤・浮腫を認めた.マンモグラフィでは境界明瞭平滑な分葉形の高濃度腫瘤を認め,皮膚の肥厚と乳頭陥凹を伴っていた.超音波検査では境界明瞭粗造で内部に嚢胞様構造を伴う分葉状の低エコー腫瘤を認めた.針生検では乳腺腺筋上皮腫と診断されたが,皮膚や乳頭への浸潤が否定できず乳房全切除術を施行した.摘出標本の病理組織診断では,皮膚への腫瘍細胞や炎症細胞の浸潤はなく,嚢胞様構造内の出血や皮下血腫を伴った良性の腺筋上皮腫であった.

  • 長塚 美樹, 松嵜 正實, 片方 直人, 佐久間 威之, 二瓶 光博, 野水 整
    2019 年 80 巻 3 号 p. 499-502
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    BRCA2関連乳癌3症例にリスク低減卵管卵巣切除術を施行した,遺伝性乳癌卵巣癌症候群(hereditary breast and ovarian cancer syndrome:HBOC)家系を経験したので報告する.発端者を含めた3姉妹中2名に乳癌,1名に大腸癌,父方いとこにも異時性両側乳癌が発症した.両側乳癌のいとこの父(父方おじ)は前立腺癌,その妹(父方おば)は卵巣癌であった.発端者が乳癌を発症した時に,既にHBOCを疑わせる濃厚な家族歴があったためBRCA遺伝学的検査を行い,BRCA2に病的胚細胞変異を認めた.乳癌患者である妹といとこにも同じ変異を確認した.3症例ともluminal typeで,乳房全切除後,ホルモン療法を受けていた.3症例は遺伝学的にHBOCの診断がついており,子宮良性病変に対する外科療法や外科的内分泌療法としてリスク低減手術を念頭に置き,両側卵管卵巣切除を施行した.

  • 児玉 渉, 松岡 佑樹, 大田 里香子, 浜崎 尚文, 吹野 俊介
    2019 年 80 巻 3 号 p. 503-507
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    10年間肺炎を繰り返した肺粘表皮癌に対して,気管支形成を伴う肺葉切除術を行い,良好な経過を辿った1例を経験した.症例:44歳,女性.2006年に左肺炎と左上葉無気肺にて治療した.当時のCTで左上葉気管支内に0.8cmの結節影があり,その後も肺炎を繰り返したが,気管支鏡検査を拒否していた.2016年に精査を了承し,結節はCTで1.8cmに増大し,左上葉は無気肺だった.気管支鏡検査で,左上葉支口は腫瘍で閉塞していた.生検で悪性所見は検出しなかったが,臨床的にカルチノイド等を疑い手術を行った.術中病理検査で低悪性度肺粘表皮癌と診断し,左上葉切除とリンパ節郭清,気管支形成を行った.術後経過は良好で,術後2年再発は無い.低悪性度肺粘表皮癌の予後は比較的良好で,肺機能温存手術を積極的に選択することが望ましい.自験例は10年前に気管支鏡で診断されれば,気管支形成は不要であったと考えられた.

  • 中西 保貴, 小澤 りえ, 倉橋 康典, 仁和 浩貴, 石田 善敬, 篠原 尚
    2019 年 80 巻 3 号 p. 508-512
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    乳児期に診断された有症状の横隔膜弛緩症は縫縮術の適応となり,一般にその長期成績は良好である.症例は19歳,男性.乳児期に左横隔膜弛緩症のため開胸縫縮術を施行されている.柔道練習中に突然の左上腹部痛をきたし来院した.CT検査にて左横隔膜外側より横行結腸の胸腔側への脱出を認めたため横隔膜ヘルニアと診断し,腹腔鏡下横隔膜修復術を実施.横行結腸と大網を腹腔側に還納すると,横隔膜縫縮部に一致しヘルニア門が確認され,創に沿うように脆弱箇所を複数認めた.腹圧上昇による横隔膜瘢痕ヘルニアの嵌頓と判断し,ヘルニア門の縫合閉鎖後に周囲脆弱部を含めメッシュにて修復を実施した.特記すべき合併症なく術後第8病日に退院し,術後1年8カ月の時点で再発を認めていない.乳児期に横隔膜縫縮術を施行された場合,成人期においても腹圧上昇に伴うヘルニア発症を考慮する必要がある.

  • 比嘉 花絵, 宮田 剛彰, 吉松 隆, 蒲池 健一, 秋元 寿文, 志田 晴彦
    2019 年 80 巻 3 号 p. 513-517
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    Klinefelter症候群に併存したヘルニア嚢を有さないLarrey孔ヘルニアの症例に対し,腹腔鏡下修復術を行った.症例は36歳の男性,検診の胸部X線写真で胸部異常陰影を指摘され,当院受診.32歳の時に不妊精査の染色体検査でKlinefelter症候群の診断.胸腹部CTで,右の心臓横隔膜角に腹腔内から連続する微小な血管構造を含む脂肪織を認め,横隔膜ヘルニアと診断.腹腔鏡下に観察すると,肝鎌状間膜左側に約6×4cm大のヘルニア門があり,Larrey孔ヘルニアであった.肝鎌状間膜から連続する脂肪織を摘出し,ヘルニア門をComposix Mesh®で閉鎖し手術終了.約3週間後の胸部CTではヘルニアの再発は認めなかった.Klinefelter症候群に併存するヘルニア嚢を有さない非常に稀なLarrey孔ヘルニアの症例を経験したため報告する.

  • 渡邊 勇人, 國崎 主税, 佐藤 涉, 佐藤 圭, 湯川 寛夫, 益田 宗孝
    2019 年 80 巻 3 号 p. 518-524
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は57歳,男性.数年前より夜間のむせこみが出現し,健診の胸部X線写真で食道憩室を疑われ,当院紹介となった.上部消化管内視鏡検査で切歯列35cm,胸部中部食道右壁に巨大食道憩室を認め,また憩室内にヨード不染を呈する0-IIc様病変を認め,生検にてsquamous intraepithelial neoplasiaであった.食道造影検査で同部位に88×50mm大の嚢状の造影剤貯留を認め,基部は22mmであった.CTでは憩室は心外膜,右肺下葉,肺静脈と接していた.症状があり,内腔に上皮内腫瘍の併存を認めたため,手術の方針となった.手術は腹臥位,胸腔鏡下にて施行した.憩室腹側と肺実質との癒着を剥離した後,内視鏡で内腔を確認しながら憩室を自動縫合器で縫合切離した.病理結果は真性食道憩室で,悪性像は認めなかった.巨大胸部中部食道は稀であるため,若干の文献的考察を加えて報告する.

  • 水野 宏論, 湯浅 典博, 永井 英雅, 三宅 秀夫, 竹内 英司, 宮田 完志, 伊藤 茂樹
    2019 年 80 巻 3 号 p. 525-532
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は65歳,男性.食道胃接合部癌の診断で,食道亜全摘,胃全摘,胸壁前経路有茎空腸挙上,頸部食道空腸吻合,supercharge/drainage(左頸横動脈-第2空腸動脈吻合,第2空腸静脈-左上甲状腺静脈吻合)を施行した.術後7日目に肺炎を発症し,その翌日に胸壁皮下の空腸の膨隆,血液検査で炎症反応上昇,造影CTでの挙上空腸の壁肥厚と造影不良,周囲脂肪織濃度上昇を認めた.消化管内視鏡検査で挙上空腸に発赤,浮腫と多発びらんを認めた.3D-CT angiographyにて挙上空腸の辺縁動脈に閉塞を認めなかったことから,肺炎を契機とした挙上空腸の直動脈の攣縮による非閉塞性腸管虚血症(NOMI)と診断した.保存的治療により,術後13日目には腸管虚血は改善した.食道切除後の再建空腸にNOMIによる虚血性腸炎を合併することがあるが,早期に診断できれば保存的治療で改善することがある.

  • 杉山 朋大, 牧野 健太, 福井 由紀子, 木下 裕光, 三木 明, 坪野 充彦, 足立 靖
    2019 年 80 巻 3 号 p. 533-538
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は79歳,男性.4年前に胃穹窿部に発生した28×27×23mmのGIST(c-kit陽性,CD34陽性,低リスク群)に対し開腹胃局所切除が施行された.術後は外来にて経過観察となっていた.術後2年4カ月のCT画像にて,胃切除部位に近接した大網内に28×27×23mmの腫瘤が指摘された.GIST局所再発の疑いで開腹切除が施行され,fibromatosis(デスモイド腫瘍)の診断であった.

    近年,gastrointestinal stromal tumor(以下GIST)切除後の二次発がんの報告が散見されている.デスモイド腫瘍はGIST二次発がんの稀な例と考えられ,本邦では同様の報告はわずかに6例を認めるのみであった.最近の知見等,文献的な考察を加えてこれを報告する.

  • 三島 江平, 尾曲 健司, 服部 俊昭, 橋本 健夫, 松井 芳夫, 田村 明彦
    2019 年 80 巻 3 号 p. 539-544
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    胃癌の同時性単独脳転移の症例を経験したので報告する.症例は81歳の男性で,突然の意識消失と痙攣のため救急搬送となった.頭部CT検査で右前頭葉に周囲浮腫を伴う1cm大の腫瘍性病変を認め,脳腫瘍に伴う症候性てんかんの診断で緊急入院となった.痙攣症状が薬物治療に不応のため,準緊急で開頭脳腫瘍摘出術を施行した.病理診断は腺癌であった.原発巣診断目的で施行した上部消化管内視鏡検査および腹部造影CT検査の結果,体下部小弯に周囲リンパ節の腫大を伴う3型の進行胃癌を認めた.画像上,腹膜播種や肝転移を含むその他の非切除因子は認められず,D2郭清を伴う幽門側胃切除術を施行した.病理診断はT3(SS),N3aであった.術後経過は良好で4年間の無再発生存が得られた.胃癌の同時性単独脳転移の報告は少なく,外科的切除により長期生存が得られた稀な症例と考えられた.

  • 藤田 昌久, 石川 文彦, 新田 宙, 釜田 茂幸, 伊藤 博
    2019 年 80 巻 3 号 p. 545-550
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    症例1は61歳の女性,腹痛で受診した.CT検査でS状結腸は子宮と近接し,S状結腸憩室と子宮内ガスを認め,S状結腸憩室炎による結腸子宮瘻と診断し,S状結腸切除を行った.症例2は81歳の女性,膿性帯下で前医を受診.子宮留膿腫の診断で経膣ドレナージを行った後,貧血精査目的に紹介となった.CT検査で子宮内にガスを含む液体貯留を,注腸でS状結腸憩室と造影剤の腸管外流出を認め,S状結腸憩室炎による結腸子宮瘻から生じた子宮留膿腫と診断し,S状結腸切除と瘻孔縫合閉鎖を行った.症例3は85歳の女性,腹痛で受診した.CT検査で遊離ガス・S状結腸憩室・骨盤内膿瘍を認め,S状結腸憩室穿孔と診断したが,手術所見はS状結腸憩室炎による結腸子宮瘻から生じた子宮留膿腫穿孔であり,S状結腸切除と子宮両側付属器切除を行った.大腸憩室炎による結腸子宮瘻は極めてまれであり,大腸憩室炎による結腸子宮瘻から生じた子宮留膿腫の報告は本邦で初めてである.

  • 高木 哲彦, 大場 範行, 京田 有介, 金本 秀行, 鈴木 誠, 高木 正和
    2019 年 80 巻 3 号 p. 551-557
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    下大静脈腫瘍栓を伴う肝細胞癌(Vv3 HCC)の切除成績は不良であるが,切除が求められるoncological emergencyな病態である.今回,腹水を有する肝機能不良なVv3HCCに対して肝動注化学療法(HAIC)およびtolvaptanによる腹水治療を行い,腹水消失後に根治切除し,良好な予後を得た1例を報告する.

    症例は56歳,男性.肝硬変の治療中にVv3HCCと診断され,肝動脈化学塞栓療法(TACE)を受けたが,治療効果に乏しく,当科紹介となった.切除予定であったが,術直前に腹水出現を認め,手術を中止しHAICおよびtolvaptanによる腹水治療を行った.1カ月後に腹水消失,新規病変や腫瘍栓伸展を認めず,切除可能と判断し,肝右葉切除,下大静脈腫瘍栓摘出術を施行した.術後肝・肺転移再発を認めたがHAICおよびTACE,放射線治療を施行し,2年6カ月経過現在,生存中である.

  • 籠浦 正彬, 門田 一晃, 重西 邦浩, 黒瀬 洋平, 日置 勝義, 貞森 裕, 大野 聡
    2019 年 80 巻 3 号 p. 558-563
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は73歳の男性.2015年11月にS状結腸癌に対してS状結腸切除術を施行し,病理診断はpT3N0M0,pStage IIであった.2017年2月に異時性肝転移を認め,同年5月に肝拡大後区域切除および6箇所の肝部分切除を施行した.病理検査ではS状結腸癌の肝転移であり,転移巣周囲に組織学的胆管侵襲を認めた.同年11月にCEA上昇があり,造影CTで三管合流部の総胆管に14mm大の結節影を認めた.ERCPとIDUSでは,腫瘍が胆管壁から胆管内に発育する所見を認めた.胆管擦過細胞診の免疫組織染色はCK7(-),CK20(+),CDX2(+)で,S状結腸癌の胆管転移と診断し,肝外胆管切除および総肝管空腸吻合を施行した.摘出標本では,胆管壁を主座とし内腔に突出する腫瘤を認め,H.E.・免疫染色共に原発巣と肝転移巣の病理所見と類似しており,大腸癌の肝外胆管転移と診断した.

  • 佐藤 拓, 中村 典明, 桑原 博, 五関 謹秀, 一柳 暢孝
    2019 年 80 巻 3 号 p. 564-568
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は80歳,女性.7年前,胆嚢癌に対して拡大右葉尾状葉合併切除,肝外胆管切除を施行.病理診断はtub1>2,CGnB,結節浸潤型,3.0×2.5×2.5cm,ss,pHinf0,pPV0,pA0,pN1,pDm2,pHm1,pEm1,fStage IIIb.術後,TS-1による補助療法を1年間行った.初回手術から5年後,造影CTで膵頭部に境界不明瞭な腫瘤を認め,内視鏡的逆行性胆管造影にて膵内胆管に占拠性病変を認めたため,膵内胆管再発と診断して亜全胃温存膵頭十二指腸切除を施行.腫瘍は2.5×2.0×1.8cm大で,前回と類似した組織型であった.2年後,右腎に2.5cm大の乏血性,辺縁不整な腫瘤性病変が出現した.DUPAN2高値のため転移再発を疑い,経腰的右腎摘を施行して病理組織学的に胆嚢癌腎転移と診断した.胆嚢癌の腎転移再発は稀であるため,文献的考察を加えて報告する.

  • 吉川 弘太, 濵田 信男, 本髙 浩徐, 中村 登
    2019 年 80 巻 3 号 p. 569-574
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    Parasitic leiomyomaは,子宮から完全に分離した状態で発育する異所性平滑筋腫である.有茎性漿膜下筋腫が周囲臓器や腹膜,腹壁と癒着して栄養血管を獲得した後に子宮から茎部で離断される場合や,自然脱落あるいは医原性に腹腔内に生着する場合がある.今回,稀な自然発生性parasitic leiomyomaの2例を経験した.(症例1)46歳,女性.稽留流産手術を契機に可動性のある骨盤内腫瘤を指摘された.大網からの栄養血管を有する腫瘤に対し,腹腔鏡下腫瘤摘出術を施行した.(症例2)78歳,女性.小腸壁に固着した石灰化を伴う腫瘤を機転とした絞扼性イレウスに対し,緊急手術を施行した.2例ともに画像および病理組織検査により,parasitic leiomyomaと診断された.成人女性,特に子宮筋腫やその手術既往がある場合は,腹腔内腫瘤の鑑別診断として本疾患も考慮すべきである.

  • 岡本 和浩, 金岡 祐次, 前田 敦行, 高山 祐一, 深見 保之, 高橋 崇真
    2019 年 80 巻 3 号 p. 575-580
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    67歳,男性.主訴は右鼠径部膨隆.1年前に他院にてKugel法による両側鼠径ヘルニア手術が施行された.術後は右側で皮下血種を認めたが保存的に軽快した.右鼠径部膨隆を主訴に当院を受診した.血液検査所見では炎症反応や腫瘍マーカーの上昇は認めなかった.造影CT検査では虫垂先端が腹壁に接して腫大し周囲の軟部陰影増強を認め,FDG-PET検査では同部位に異常集積を認めた.虫垂腫瘍の診断で腹腔鏡下回盲部切除術を施行した.腫大した虫垂は腹壁およびメッシュと一体化していた.感染ではなく悪性腫瘍と判断したため,メッシュは可及的切除に留まった.病理組織所見では虫垂は組織構造が保たれており,悪性所見や炎症所見を認めずメッシュ周囲には高度な好中球浸潤を認め,遅発性メッシュ感染による膿瘍形成と診断した.本症例は遅発性メッシュ感染により炎症が虫垂に波及し,FDG-PETで高集積を示したと思われた.

  • 吉野 将平, 林 英司, 河原 健夫, 塚原 哲夫, 青山 広希, 澤崎 直規
    2019 年 80 巻 3 号 p. 581-585
    発行日: 2019年
    公開日: 2019/09/30
    ジャーナル フリー

    症例は75歳,女性.既往歴はC型肝炎,クモ膜下出血.急激な腹痛を主訴に近医を受診し,大腿ヘルニアを疑われたため4時間後に当院へ搬送となった.圧痛は軽度で腹膜刺激症状は認めなかった.CTを施行し,右閉鎖孔ヘルニアRichter型嵌頓と診断した.血液検査では腸管虚血を示唆する所見はなかった.発症から早期であり腸管壊死には至っていないと考え,非観血的用手整復を超音波検査下に行った.整復後にCT撮影し腸管の還納を確認した.整復3日後に待機的に鏡視下腹膜外経由ヘルニア根治術(TEP法)を施行した.腹膜外経由で右閉鎖孔のヘルニア嚢を反転し,円靱帯を結紮切離してメッシュを展開しヘルニアを修復した.術後経過は良好で術後3日目に退院した.閉鎖孔ヘルニア嵌頓に対して非観血的用手整復後に待機的TEP法で治療し良好な結果を得られたため,考察を加えて報告する.

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