全日本鍼灸学会雑誌
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43 巻, 3 号
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
  • 北小路 博司, 工藤 大作, 形井 秀一, 左海 隆生, 鈴木 由紀子, 津田 昌樹, 大沢 秀雄, 辻本 考司, 本城 久司, 松山 朋恵 ...
    1993 年 43 巻 3 号 p. 99-108
    発行日: 1993/09/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    鍼灸施術所に来院する患者の泌尿器系愁訴の保有率を調査した。男性188人, 女性339人の合計527人 (平均年齢59.2±14.9歳) を対象とした。高齢化が進むに伴い泌尿器系の愁訴が多くみられることが確認された。発現頻度の高い愁訴は, 夜間頻尿 (25.8%), 尿意切迫 (17.7%), 腹圧性尿失禁 (16.3%), 残尿感 (15.2%), 苒延性排尿 (12%) および遷延性排尿 (11.3%) の6愁訴であった。これらの愁訴の多くは夜間頻尿を伴う事が多く問診の key word となる事が示唆された。
  • 北小路 博司, 本城 久司, 辻本 考司, 小田原 良誠, 川喜田 健司, 寺崎 豊博
    1993 年 43 巻 3 号 p. 109-114
    発行日: 1993/09/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    前立腺肥大症にともなう排尿障害に対する鍼治療の有用性について検討した。症例は, 前立腺肥大症I期と診断した70歳男性で, 治療は中〓穴に60mm24号ディスポーザブル鍼にて10分間の捻鍼を行った。治療回数は一週間に1回合計5回施行した。評価は, 尿流量測定 (Uroflowmetry: UFM) によって得られる平均尿流量率 (Average flow rate: AFR), 最大尿流量率 (Maximum flow rate: MFR) および尿流曲線 (Flow curve: FC), を鍼治療前, 終了後および鍼治療終了後1年時に観察した。AFRは, 鍼治療前3.2ml/s, 鍼治療終了時11.4ml/s, 鍼治療終了後12カ月時2ml/sであった。MFRは同様に10ml/s, 20ml/S, 10ml/Sであった。FCは, 治療中のみ正常パターンを示し, 治療前と12ケ月後は閉塞パターンを示した。前立腺肥大症の排尿障害に対する中〓穴の鍼刺激は排尿障害を改善させるが, 治療を中止すると排尿動態は治療前に復する傾向が観察された。
  • 本城 久司, 北小路 博司, 辻本 考司, 小田原 良誠, 寺崎 豊博
    1993 年 43 巻 3 号 p. 115-119
    発行日: 1993/09/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    第11胸椎から第1腰椎椎弓切除後に排尿障害をきたしたと考えられた, 排尿筋・外尿道括約筋協調不全 (Detrusor sphincter dyssnergia 以下DSD) をともなう過活動型膀胱患者1例に対し鍼治療を行い, 鍼治療前後の排尿日誌, 排尿記録, 尿流動態検査 (Urodynamic study 以下UDS) を指標に鍼治療の効果について検討した。鍼治療後は排尿日誌, 排尿記録より, 頻尿, 尿意切迫, 切迫性尿失禁, 残尿感の改善がみられた。またUDS所見より, 膀胱容量の増大, 残尿量の減少, DSDの消失がみられた。以上より過活動型膀胱とDSDに対する鍼治療の有用性が示唆された。しかしながら, 神経因性膀胱は長期にわたる経過観察が必要なため, 長期的な鍼治療の有用性を検討する必要があると考えられた。
  • 両近視性乱視に対する鍼治療の効果について
    前田 見太郎, 清川 朝栄, 小林 章子, 西口 理恵, 矢野 忠, 大山 良樹
    1993 年 43 巻 3 号 p. 120-124
    発行日: 1993/09/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    これまで視力回復に対する鍼治療の効果については近視の分類上, 軽度近視に対する治療が多く, 中等度ならび強度近視に対しての鍼治療の効果に関する報告は少ない。
    筆者らは中等度及び強度近視に対して裸眼視力回復を目的に置鍼術による鍼治療を行った。裸眼視力の回復を認めた3症例については, 治療を一時中断し, 鍼治療後の持続効果を観察した。また, 裸眼視力の回復が認められなかった3症例については, 置鍼術を鍼通電治療に変更し, 治療効果について観察を継続した。
    その結果, 置鍼術治療で裸眼視力の回復を認めた3症例は治療を中断してもなお, 初診時裸眼視力よりも高い視力を維持し, 鍼治療の持続効果を示した。一方, 視力の回復の認められなかった3症例に対しては鍼通電治療に変更してからは徐々に回復を示し, 初診時裸眼視力よりも高くなり, 鍼通電治療による効果を認めた。
  • 椎野 瑞穂, 沢井 勝三, 木村 明彦, 五味 敏昭, 岸 清
    1993 年 43 巻 3 号 p. 125-134
    発行日: 1993/09/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    刺鍼の深度とその周囲の臓器および組織の関係を調べるため, 足の太陽膀胱経を基準とした人体横断解剖標本を作成して, 体表から何mmでどの臓器, 組織に鍼先が到達するかを検索した。前回の大椎穴 (督脈) から蕨陰兪穴 (足の太陽膀胱経) までの5横断面にひき続いて, 今回は心兪穴 (足の太陽膀胱経) から胆兪穴 (足の太陽膀胱経) までの5横断面について検索した。心兪穴を基準とした横断面では, 体表より鍼を刺入させると皮膚を5mmで貫き, 皮下組織を2mmで貫き, 僧帽筋を3mmで貫き, 固有背筋群を17mmで貫いて第6肋骨に鍼先が達する。体表より第6肋骨まで27mmを計測した。督兪穴を基準とした横断面では, 皮膚を5mmで貫き, 皮下組織を3mmで貫き, 僧帽筋を3mmで貫き, さらに固有背筋群を17mmで貫いて第7肋骨に鍼先が達する。体表より第7肋骨まで28mmを計測した。隔兪穴を基準とした横断面では, 皮膚を4mmで貫き, 皮下組織を2mmで貫き, 僧帽筋を3mmで貫き, 広背筋を1mmで貫き, さらに固有背筋群を20mmで貫いて第8肋骨に鍼先が達する。体表より第8肋骨まで30mmを計測した。肝兪穴を基準とした横断面では, 皮膚を5mmで貫き, 皮下組織を6mmで貫き, 固有背筋群を32mmで貫いて第10肋骨に鍼先が達する。体表より第10肋骨まで43mmを計測した。胆兪穴を基準とした横断面では, 皮膚を4mmで貫き, 皮下組織を7mmで貫き, 固有背筋群を32mmで貫いて第11肋骨に鍼先が達する。体表より第11肋骨まで43mmを計測した。
    以上の結果を鍼灸医学臨床における深さの立場から考察した。
  • 石臼について
    織田 隆三
    1993 年 43 巻 3 号 p. 135-141
    発行日: 1993/09/01
    公開日: 2011/05/30
    ジャーナル フリー
    モグサの製造に用いる石臼について調査し, 実態の概要を知ることが出来た。
    すべての工場は「ひき臼」を用いている。この臼の大きさは直径約70cm, 厚さは上臼下臼とも各20cm前後である。臼の面は6分画とし各分画に6~7本の溝を刻んでいるものが多い。回転は1分間30~50回である。下級モグサの製造には1回, 高級品では2回又は3回反覆して石臼にかて粉砕後次の工程 (筋過) に移る。
    モグサ用石臼の原石は新潟県糸魚川市の早川から産出する角閃石安山岩又は紫蘇輝石角閃石安山岩である。
    なお文献にもない特殊な形態の石臼を使っている工場があったので併せて報告する。
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