全日本鍼灸学会雑誌
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55 巻, 5 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 向野 義人, 若山 育郎, 馬場 道敬, 長戸 文明, 有馬 澄雄
    2005 年 55 巻 5 号 p. 660-669
    発行日: 2005/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    研究・教育者の立場、鍼灸師の立場、開業医師の立場から「鍼灸の真髄」についての見解が述べられたが、その発言を以下に要約した。鍼灸は心身一如の立場から病者を把握する特徴があり、「気」を動かすことで心身のバランスを調整する。その診断治療には日本で発達した「経絡治療」を始めとして、さまざまなシステムがある。共通する特徴は、初心者は初心者なりに、名人は名人なりに治療効果をあげることのできるソフトを持った治療概念および手段となっていることである。しかしながら、名人芸よりも丁寧に問診・所見をとり、総合的判断に従って治療する「見立てと技術」がより重要である。現代医療における鍼灸の役割は広範囲にわたり、鍼灸師がgeneral physicianとしての役割を担う可能性がある。その実現には、伝統や経験を尊重しながら、鍼灸の「見立てと技術」に、もっと西洋医学を取り入れた新たな鍼灸を開発し、それを世界へ、また後世へと伝えていく事が必要となる。
  • 鍼灸師急増の時代をむかえて
    小川 卓良, 形井 秀一, 坂井 友実, 伊藤 公代, 小山 進, 木村 研一, 岡田 安代, 原口 明子, 公文 絵美子
    2005 年 55 巻 5 号 p. 670-683
    発行日: 2005/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    鍼灸師急増時代を迎えて、鍼灸師の活躍の場が狭くなりつつある。このような時に職域を拡大すべく、それぞれの分野で活躍している鍼灸師により現状と将来性、必要な要件、活躍の場を拡大するためにはいかにするか、などを検討する目的で本シンポジウムが開催された。司会により鍼灸師急増の実態、卒業生の就職動向、医道の日本誌アンケートからの業態の変化などが報告された。病院勤務の経験があるパネリストは病医院内における鍼灸の果たす役割と特徴、医師、看護師など医療スタッフとの関り方、そして鍼灸師として身につけておかなければならないこと及び将来展望などを報告した。鍼灸学校卒業後、有益な鍼灸師の研修機関がないことからやむを得ず往診開業を行い、その後店舗開業に踏み切ったパネリストは、往診開業では知名度がなく苦労し、TV局への売り込みや印象に残るような努力を重ねて店舗開業に至った経験のついて述べ、今後は学術面と臨床面の知識技術の修練が必要と報告した。開業の差別化としてスポーツ鍼灸に取り込むパネリストは、スポーツ鍼灸を行うことのメリットとその備えるべき要件としてスポーツ鍼灸とアスレティックリハビリテーションの知識と技術を身につけ臨床実践できることが必須であると報告した。大学教員の道を歩んだパネリストは、今後は高い教育目標と全学的なFD活動が必須であり、個人としては教育能力向上と研究活動を通じて鍼灸の社会的需要の喚起、職域の拡大のためには時代の趨勢に関わらず、人材となる優秀な鍼灸師の育成が重要と報告した。その他、学校卒業2年目の病院勤務鍼灸師、母親になった鍼灸学校2年生、教員養成施設の学生などが、将来への不安や夢などを発言した。
  • 後藤 修司, 山田 勝弘, 北小路 博司, 小川 卓良, 山岡 傳一郎
    2005 年 55 巻 5 号 p. 684-696
    発行日: 2005/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    まず後藤より、鍼灸師が国民医療の担い手として機能する条件を満たしていくための卒後教育、そして卒前教育も同時に考える必要があるという視点からの提言と、社会へのアピールとしても免許更新性を考えたらどうかと提案した。山田は、鍼灸治療の本質は「不定愁訴の治療」であり、「家庭鍼灸師」になるべきと提案があり、卒後教育は、学校、業界、学会が一体で具現化することが必要と発言した。北小路は、明治鍼灸大学附属病院と鍼灸センターの有機的連携により構築された、卒後教育システムの紹介をした。内容は、医療との連携にても通用する卒後研修であった。小川は、自身の治療院でのスタッフ教育と、教員養成施設での経験から、開業免許などの新しい制度を考えるべきと提案した。山岡は、愛媛県立中央病院東洋医学研究所での卒後研修プログラムについて、お灸によるケア技術、全人的病人把握法としての時系列分析法等の紹介があった。フロアからは、卒後研修の内容や、卒前教育における改善等についての発言があった。
  • その1 鍼灸治療の利用状況について
    石崎 直人, 岩 昌宏, 矢野 忠, 小野 直哉, 西村 周三, 川喜田 健司, 丹沢 章八
    2005 年 55 巻 5 号 p. 697-705
    発行日: 2005/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】本邦における鍼灸治療の利用状況、利用目的などを明確にする目的で調査を行った。
    【方法】2003年3月に、全国20歳以上の男女からのランダムサンプル2,000名を対象とした面接調査を実施した。
    【結果】2,000名の対象のうち、1,420名 (71.0%) から回答を得た。調査時点から過去1年以内に鍼灸治療を受診した者は6.5%、自宅で利用した者を含めると全体の7.5%が、1年間で鍼灸治療を利用していた。過去に経験がある者は、全体の26.4%であった。鍼灸治療を受けた目的は筋・骨格系の愁訴が大半を占めていた (81.6%) 。鍼灸治療を受けるきっかけは、家族や知人の紹介が多かった (58.7%) 。
    【考察】鍼灸治療利用率は、欧米諸国より高く、古くから民間に親しまれてきたことを反映していると考えられた。受診の動機として家族や知人の勧めが多かったのは、直接身体に触れる機会が多い治療の特質も関与していると考えられた。
  • 高橋 則人, 鶴 浩幸, 江川 雅人, 松本 勅, 川喜田 健司
    2005 年 55 巻 5 号 p. 706-715
    発行日: 2005/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】施設入所高齢者の風邪症状に及ぼす間接灸の効果を、少数例においても臨床試験が可能な単一被験者研究法 (n-of-1 デザイン) を用いて検討した。
    【方法】老人保健施設入所中の高齢者2名に対し、16週間にわたって試験を行なった。試験は介入期間8週と対照期間8週をランダムに割付けるn-of-1無作為化比較試験 (n-of-1RCT) デザインで行なった。介入期間の間接灸は週3回、大椎穴と左右風門穴に各3壮ずつ行なった。評価は風邪の有無および風邪症状に関する項目を4ないし5段階評価にて行なった。
    【結果】風邪の有無に関する項目では介入期間と対照期間との間に有意な差を認めなかった。また風邪症状に関する項目においても、介入期間と対照期間との間に有意な差を認めなかった。
    【考察・結語】今回の試験では間接灸の風邪症状に対する効果は認められなかった。その要因としては、治療 (刺激) 部位や刺激量の不足、および被験者の生活環境の影響、さらに今回のような風邪症状等の研究に対するn-of-1 RCTデザインの適性の問題などが考えられた。
  • 李 相勲, 徐 炳寛, 徐 廷徹, 李 昇徳, 崔 善美, 金 容〓
    2005 年 55 巻 5 号 p. 716-722
    発行日: 2005/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【背景】鍼の臨床効果に関して、今日まで30年以上にわたって行われてきた研究の多くは説明的 (explanatory) 、または実験的 (experimental) ランダム化比較試験であった。しかし、その臨床試験においてみられる鍼の効果 (benefit) については、いまだに議論のあるところであり、ほとんどの研究はさらなる対照比較試験が必要であるとの結論に終わっている。また、過去のさまざまな研究が、標準化された配穴 (standard combinations of acupuncture points) をすべての被験者に対して用いていることに対して、現に日常行われている臨床治療を反映していないと批判されている。
    【目的】本論文の目的は、鍼治療の効果に関する実用的 (pragmatic) 臨床試験をレビューすることによって、鍼に関する理想的な臨床研究の方法論を開発することにある。
    【方法】鍼の臨床研究の中から、実用的あるいは個別化された (individualized) 臨床試験に関連する論文を、主にPubmedおよびScience Direct databaseから検索した。研究者はすべての論文を十分に精査し、標準化された書式にしたがってデータを評価した。
    【結果および提言】実用的な鍼の研究はさまざまな症状に対して試みられている (例えば、腰痛、高血圧、妊娠期間中の抑うつ、HIV病における睡眠の質、脳卒中慢性期の下肢痙縮、頭痛など) 。東洋医学の疾病パターン診断 (Oriental disease pattern diagnosis) に基づいて個別化された鍼治療は、実際に日常行われている治療を反映したものであり、まったく東洋医学哲学の理論に基づくことなく、均一かつ固定化された治療法よりも効果がある。
    【結論】これまで行われてきた説明的鍼臨床試験に関する論争や限界を克服するためには、東洋医学の診断理論に基づいて、より個別に、患者の病態に合わせた鍼の試験を行うことが強く求められる。同時に、鍼の臨床研究やその応用をさらに進めるには、パターンの同定法 (identification) について明確な定義と類別法 (categorization) が必要である。
  • 小田 博久
    2005 年 55 巻 5 号 p. 723-735
    発行日: 2005/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    アメリカ合衆国における一般義務教育制度は、小学校6年、中学校3年、高校3年となっていると信じている日本人が多いが、これは事実ではない。各種の変形方式が存在しており、連邦政府は子供が16才まで教育を受けることを義務づけている。伝統的な学校教育に代わるものも存在しており、それは「在宅学習」と称される。私立大学は、通常、州政府より認可され、その後、絶対必要条件でないが大学基準認定の過程を経る。認定された学校と大学が、学生ローンを提供し、学生ビザのための書類を発行することができる大学基準協会の認定は、事実上社会的に必要である。「大学基準協会の認定」の目的は、「自己評価過程」を実行し、組織の発展に関するための第三者からのアドバイスを受けることにある。合衆国における学校および大学の運営システムは、日本と同じではない。特に、公民により所有される非営利法人 (NPO) は理事会によって、公益のために管理されなければならない。この理由により、理事長は法的にCEOやCFOを兼ねることはできない。理事は公民から公正に選ばれなければならないので、鍼灸の学校の理事が、単に鍼灸師のみで構成されてはならない。さらに、性や人種差別があってはならない。学校や大学の使命と目的は、客観的かつ明確に、詳細に描写されているべきである。学生が他の学校に移る場合をも考慮して、講義細目 (syllabus) は客観的に記述されていなければならない。大学基準協会は、大学の発展を助長するために大学の短所を詳細に示唆する。自己評価および大学基準協会による認定過程の主要点は、運営方式、教育システム、大学の財政状態である。「大学基準協会による認定」は望ましいシステムではあるが、相当な労力と時間、財源を必要とする。同時に、各々の過程におけるフィードバック・システム、または組織における問題の捉え方は、極めて重要である。しかし、合衆国の教育制度が、必ずしも日本の学校組織より優れているとは言えない。学生が組織 (教員を含む) の評価を実行するシステムである「学生評価システム」に関して、「大学認定協会による認定」は、時には人気の要素によって影響を受け得る。
  • 2005 年 55 巻 5 号 p. 762
    発行日: 2005年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
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