【背景】鍼の臨床効果に関して、今日まで30年以上にわたって行われてきた研究の多くは説明的 (explanatory) 、または実験的 (experimental) ランダム化比較試験であった。しかし、その臨床試験においてみられる鍼の効果 (benefit) については、いまだに議論のあるところであり、ほとんどの研究はさらなる対照比較試験が必要であるとの結論に終わっている。また、過去のさまざまな研究が、標準化された配穴 (standard combinations of acupuncture points) をすべての被験者に対して用いていることに対して、現に日常行われている臨床治療を反映していないと批判されている。
【目的】本論文の目的は、鍼治療の効果に関する実用的 (pragmatic) 臨床試験をレビューすることによって、鍼に関する理想的な臨床研究の方法論を開発することにある。
【方法】鍼の臨床研究の中から、実用的あるいは個別化された (individualized) 臨床試験に関連する論文を、主にPubmedおよびScience Direct databaseから検索した。研究者はすべての論文を十分に精査し、標準化された書式にしたがってデータを評価した。
【結果および提言】実用的な鍼の研究はさまざまな症状に対して試みられている (例えば、腰痛、高血圧、妊娠期間中の抑うつ、HIV病における睡眠の質、脳卒中慢性期の下肢痙縮、頭痛など) 。東洋医学の疾病パターン診断 (Oriental disease pattern diagnosis) に基づいて個別化された鍼治療は、実際に日常行われている治療を反映したものであり、まったく東洋医学哲学の理論に基づくことなく、均一かつ固定化された治療法よりも効果がある。
【結論】これまで行われてきた説明的鍼臨床試験に関する論争や限界を克服するためには、東洋医学の診断理論に基づいて、より個別に、患者の病態に合わせた鍼の試験を行うことが強く求められる。同時に、鍼の臨床研究やその応用をさらに進めるには、パターンの同定法 (identification) について明確な定義と類別法 (categorization) が必要である。
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