全日本鍼灸学会雑誌
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56 巻, 2 号
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  • 慢性疼痛に対する鍼灸の効果と機序
    樫葉 均, 石丸 圭荘, 伊藤 和憲, 今井 賢治, 渡邊 一平, 川喜田 健司
    2006 年 56 巻 2 号 p. 108-126
    発行日: 2006/05/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    慢性疼痛に対する鍼灸の効果と現状を総合テーマとして、当該領域のレビューを行った。基礎実験から得られた末梢および中枢における慢性疼痛の発症機序を中心に紹介した。ヒトを対象とした慢性疼痛における鍼鎮痛の生理学的機序を、神経因性疼痛および術後疼痛を中心に紹介した。また、慢性疼痛に対する鍼灸の臨床効果については、おもに侵害受容性疼痛に関する文献を総括し、腰痛、頚部痛、頭痛における鍼灸治療の有効性について総括した。
  • 高橋 則人, 角谷 英治, 李 相勲, 金 星〓, 津谷 喜一郎, 金 容〓, 川喜田 健司
    2006 年 56 巻 2 号 p. 127-139
    発行日: 2006/05/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    本ワークショップの目的は、2004年の千葉大会において始まった『日韓鍼とEBMワークショップ』をふまえ、日韓共同研究の実施に向けたプロ口とコール作りの一環として、個別化した鍼灸治療を用いた臨床試験の可能性についての検討を行うことであった。今回のワークショップでは、全日本鍼灸学会、研究部EBMワーキンググループが検討してきた、単一被験者ランダム化研究法 (ランダム化n-of-1 trial) の実験デザインとその解析方法としてのランダマイゼーションテスト (R検定) についての紹介が高橋から、その実験デザインに基づいてパイロット試験として実施してきた花粉症に対する鍼治療の予防・治療効果について、角谷からその概要の紹介があった。また、大韓鍼灸学会の李からは、鍼治療における個別化された治療の重要性を考える上で重要な文献的検討を、これまでの個別化された治療法を用いた文献を網羅的に検討した結果が紹介された。また、金から、韓国における月経前症候群 (premenstrual syndrome : PMS) に対する鍼治療における診断にもとづく取穴法並びに補瀉の手技の使い分け、ならびに、対照群として適切ではない経穴部位への刺激を用いた臨床研究の成果の報告があった。
    その後、個別化した鍼灸治療に適した臨床試験の方法論として、今回報告のあったn-of-1 RCTデザインの妥当性、花粉症の症状の季節変動の考慮の必要性、花粉症の問題点についてさまざまな観点から議論が行われた。また、実用的臨床試験の有用性についても検討が行われた。なお、学会場でのワークショップの後にも日韓両国の実務的な研究者による活発な議論が行われた。JSAMから山下仁 (安全性委員会) 、井上悦子 (適応症委員会) 両委員長より貴重な報告をいただいたが、本報告ではその内容は割愛させていただいた。
    第一回のワークショップにおける検討課題や内容は、すでに本誌 (全日本鍼灸学会誌54 (5) : 717-727, 2004) ならびにオンラインジャーナル (JAM, vol. 1, 2005) に掲載されているので参照されたい。
  • 偽鍼を対照群に用いた多施設ランダム化比較試験
    河瀬 美之, 石神 龍代, 中村 弘典, 服部 輝男, 皆川 宗徳, 甲田 久士, 井島 晴彦, 加納 俊弘, 絹田 章, 校條 由紀, 黒 ...
    2006 年 56 巻 2 号 p. 140-149
    発行日: 2006/05/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【はじめに】腰痛に対する筆者らの通常行っている鍼治療法の効果の有無を確かめる目的で、同じ治療法を行っている11施設 (愛知県・岐阜県) でインターネットを用いた無作為化割付プログラムによるランダム化比較試験を行った。
    【方法】ランダム割付群をA群 : 太極療法+低周波通電置鍼療法、B群 : 太極療法のみ、C群 : 低周波通電置鍼療法のみ、D群 : 偽鍼とし、1回の割付治療を行った後に評価をし、その後に最終的に太極療法+低周波通電置鍼療法を行って再評価を行い終了とした。評価方法は腰痛に対するVAS (Visual Analogue Scale) と日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準 (JOAスコア) に基づいた患者による腰痛評価表を使用した。
    【結果】VAS、JOAスコア共にA・B・C群では1回の鍼治療前後で有意な改善 (p<0.05) が認められたが、D群では有意な改善が認められなかった。また、治療法別の改善に関しては有意差が認められなかった。
    【考察・結論】筆者らが通常行っている鍼治療の有効性が認められ、偽鍼の有効性は認められなかった。偽鍼の定義がなく、鍼治療が偽鍼より効果的であることの証明は明確にされておらず、今後の研究課題である。
  • 肩こりに関するアンケート調査と鍼治療の効果に関する臨床試験
    伊藤 和憲, 南波 利宗, 西田 麗代, 河本 真, 越智 秀樹, 北小路 博司
    2006 年 56 巻 2 号 p. 150-157
    発行日: 2006/05/01
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    【目的】肩こりは性別や年齢を問わず有訴者の多い疾患の1つであるが、大学生を対象とした報告は少ない。そこで、大学生を対象に肩こりに関するアンケート調査を実施するとともに、鍼治療の効果を検討した。
    【方法】明治鍼灸大学の学生509名を対象に (1) 肩こりの有無、 (2) 肩こりの発症時期、 (2) 肩こり以外の愁訴、 (4) 肩こりによる医療機関受診の有無など7項目に対して、アンケート調査を無記名の用紙項目法で実施した。また、アンケート調査で肩こりが存在すると答えたものの中でインフォームドコンセントの得られた30名を、 (1) トリガーポイント群、 (2) 経穴群、 (3) Sham群の3群に群分けし、週1回間隔で4回の鍼治療を行った。効果の判定は主観的な肩こりの強さをvisual analogue scale (VAS) にて評価した。
    【結果】アンケートの有効回答率は64.6%、回答者の年齢は18-33歳であった。肩こりを自覚していたのは全体の61.9%であり、その25.8%が高校生から肩こりを自覚していた。また、肩こり以外の随伴症状としては眼精疲労や頭痛が多いが、医療機関を受診しているものはごく僅かであった。一方、肩こりに対する鍼治療の効果に関しては、治療前に比べて治療終了後にトリガーポイント治療群のみ痛みが軽減する傾向にあった。
    【考察】肩こりを自覚している者の多くは高校生から大学生にかけて症状を自覚し、その半数以上は肩こりのみならず眼精疲労や頭痛などの不定愁訴を訴える傾向にあった。一方、鍼治療に関しては、トリガーポイント治療が肩こりの軽減に有用であると考えられた。
  • プラセボを用いた比較試験
    金子 泰久, 古屋 英治, 坂本 歩
    2006 年 56 巻 2 号 p. 158-165
    発行日: 2006/05/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】トライアスロン競技後の筋肉痛に及ぼす円皮鍼 (PTN) の効果をプラセボ (P) を対照群として検討した。
    【対象及び方法】トライアスロン競技に参加した選手男女合計149名を対象とした。PTNもしくはPによる刺激部位はL2-S1棘突起間外方2cmおよび第2後仙骨孔で、レース中のみの留置とした。評価はレース前、直後、翌日の腰下肢6部位 (大腿前面、大腿後面、下腿前面、下腿後面、腰部、臀部) の筋肉痛のVAS値とした。
    【結果】レース直後の筋肉痛は、レース前と比較して両群の全ての部位で増加しこれらは有意 (p<0.01) であった。PTN群では翌日の筋肉痛が直後と比べ臀部を除く全ての部位で減少し (p<0.Ol, p<0.05) 、レース前の状態に回復した。P群では翌日の筋肉痛は大腿後面が直後と比べて減少 (p<0.05) した。
    【結論】レース中の円皮鍼によって遅発性筋肉痛の発生が抑制されることが示唆された。
  • 古屋 英治, 金子 泰久, 小川 裕雄, 石川 慎太郎, 坂本 歩
    2006 年 56 巻 2 号 p. 166-174
    発行日: 2006/05/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】国体セーリング競技会場に設置したコンディショニングルームでセーリング選手の身体愁訴に対する鍼治療の直後効果を検討したので報告する。
    【方法】腰部の筋痛 (n=108) 、頚肩背部の筋痛 (n=72) に鍼治療を単独で行った。鍼治療は局所治療とした。調査項目は主訴およびその程度を示すVAS値とした。VAS値の有意差検定は対応のあるt検定とした。
    【結果】主訴は腰痛、頚肩背痛、その他の順に多かった。鍼治療は腰部の筋痛 (n=108) のVAS値を治療前53.2±21.5mmから後21.5±16.4mmに減少 (p<0.01) させた。また頚肩背部の筋痛 (n=72) のVAS値は治療前48.0±18.7mmが治療後18.5±15.2mmに減少 (p<0.01) した。
    【考察】国体セーリング選手の腰部、頚肩背部の筋痛に対して鍼治療は有効であり、競技現場で行うコンディション調整の一手法として、鍼治療の有効性が示唆された。
  • 美根 大介, 小糸 康治, 粕谷 大智, 杉田 正道, 江藤 文夫
    2006 年 56 巻 2 号 p. 175-181
    発行日: 2006/05/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    五十肩と同様の所見を呈していた腱板不全断裂の症例を経験し、治療効果と臨床所見について検討した。不全断裂では腱板断裂特有の所見が乏しく、ベッドサイドの検査のみでは五十肩との鑑別は困難であると思われた。しかし、器質的な障害があることにより治療に反応しにくい場合が多く、経過を観察することで両者の違いを推察することも可能と考えられた。今回の症例では、関節可動域は全方向に改善され、疼痛も初診時を10としたペインスコアで10→5と軽減は得られたが、治療経過中に症状の増悪と軽減が頻繁に繰り返され、スムーズに軽快したとは言えなかった。肩関節周囲炎は、我々の日常臨床において遭遇する機会が多い疾患であり、治療効果も期待出来ると考えられているが、多彩な病態を含んでいる危険性をふまえ、詳細に経過を観察しながら治療を行う必要があると考えた。
  • 河井 正隆
    2006 年 56 巻 2 号 p. 182-189
    発行日: 2006/05/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    近年にみる生命科学諸分野の著しい進歩により、医療関係者に対する教育は大きく変化している。このような背景を踏まえ、鍼灸教育においても、社会のニーズや鍼灸医学に関連する現代医学的知識の獲得など、一定水準の臨床能力を習得した鍼灸師の育成として、その教育内容の見直しと統一が、今日的な課題と思われる。
    そこで本稿では、その教育内容の見直しと統一性を図るための抜本的な取り組みをカリキュラム改革と位置づけ、そのカリキュラム改革としてのコア・カリキュラムに焦点化し論及する。医学系教育におけるコア・カリキュラムはいわゆるミニマム・リクワイアメントである。しかし、重要なのはそれを支える教養教育でありその中に教育理念が表現されることになる。つまり、教育理念こそがカリキュラム上のコアといえる。
  • 楊 應吟
    2006 年 56 巻 2 号 p. 191-195
    発行日: 2006/05/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    過去、台湾の鍼灸術は「師徒伝承」の個別伝授法だったが、1955年に台北市鍼灸学会が政府機関の認可を獲得した後, 研修会を介した体系的な習得法にかわった。20年のうちに鍼灸学を学習する者も増えて、一般民衆にも鍼灸に対する効果を認められ、徐々に鍼灸治療を受ける患者さんも増えてきた。
    1975年やっと鍼灸療法が受け入れられるようになってきた矢先に、「新医師法」が実施され、今までの鍼灸師は無資格となり、数多くの鍼灸師は台湾から国外へ流出してしまった。
    国外では資格試験の制度があるが、台湾には鍼灸に関する資格制度が無く「中医師」の試験に合格した者は、 “漢方薬の処方も、鍼灸師の資格と開業を許される” と言う摩詞不思議な制度が出来てしまったのである。
    中医師の試験に鍼灸の科目が加わったのは1989年になってからで、筆記試験だけで実技試験はない。だからこの間、中医病院の鍼灸治療はバリ専門の実技研修を受けたベテラン達が担当していて中医師ではない。
    この様にこの道に精通しない者が指導的な役割を担っていることは、鍼灸界の発展はおろか阻害となり、台湾における鍼灸に対する研究の遅れは、この不当な制度の為である。
    過去30年間も、「鍼針灸の合法化」の抗議運動を起こしてきたが、衛生署と中医師公会の反対に逢い、いまだに混沌たる時代にいる。
    日本に於いては、電子顕微鏡、コンピュータ等のハイテクを駆使して針灸に取り組んでいるのである。政府はいち早くこの事に目覚めて、早急に針灸の発展に切り替える政策こそが衛生署主管の急務だと思う。
    いまや鍼灸術は国際的になり、WFASは毎年国を変えて学術大会を行っている。
    もし先進国の日本に、世界各国から鍼灸の勉強が出来る環境をもつ国際的な鍼灸大学が出来れば、鍼灸を通して国際交流が出来, 若き未来の医師たちに切れ掛かった親日の絆を挽回してもらえると思う。
  • 2006 年 56 巻 2 号 p. 250
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
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