全日本鍼灸学会雑誌
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56 巻, 4 号
選択された号の論文の10件中1~10を表示しています
  • 久保 千春
    2006 年 56 巻 4 号 p. 572-584
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    全人的医療とは、身体・心理・社会・実存的側面から患者をみることである。心身医学は19世紀にヨーロッパで起こり、西洋医学の中から出発しているが、全人的医療の核となっている。ところで、東洋医学は漢方, 鍼灸, マッサージなどがあるが、身をととのえ、心を調える身心療法である。心身両面からみる点では心身医学と同じような考え方である。
    ところで、心身医学的治療においては、漢方, 鍼灸、絶食療法, 内観療法などが取り入れられている。本講演では、1) ストレスと心身相関、2) 癌とストレス性格、3) 心身医学的治療、4) 心身医学的治療における東洋医学的治療についてのべる。
  • 多留 淳文
    2006 年 56 巻 4 号 p. 585-595
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    現在の日本で鍼灸に対する保険同意の適応症は、神経痛・リウマチである。鍼灸は痛み以外の内科疾患に関しても有益である。WHO草案やNIH同意声明に見るとおりである。
    鍼灸の歴史を辿ると鍼灸発祥の地、中国古代、黄帝内経の時代から各種内科疾患に施用されてきた。過去最大の鍼灸治験録は恩師代田文誌が出版した。
    近代欧米では、偉大な内科学者W.Oslerが教科書に鍼療法を採用した。日本では東大内科三浦謹之助教授が第2回日本医学会で鍼治に就いて特別講演を行い、鍼の麻酔作用を指摘した。近年、東大物療内科大島良雄教授が本学会で鍼灸の基礎的研究を特別講演し、バリの臨床的研究を日本医師会雑誌に発表した。
    今後の課題は、1) RCTおよびゲノム解析による鍼灸効果の検定を各種内科疾患に行うと共に施術部位とその性状並びに施術方法の明示が必要である。2) 対象患者の体表所見の計器による客観的表現が望ましい。その他。
  • 松井 繁
    2006 年 56 巻 4 号 p. 596-604
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    17世紀に管鍼法を考案した先覚者杉山和一以来、鍼灸と視覚障害者とは密接な関係がある。鍼灸を研究し、貢献した視覚障害者5氏について調べた。奥村三策は19世紀文部省が禁止した鍼灸教育を復活させた。20世紀、平方龍男はリンパ鍼療法を開発し、木下和三郎は灸の研究、影山儀之助は鍼灸師初、鍼の研究をそれぞれ行なった!芹澤勝助は太平洋戦争後鍼灸存亡の危機を勝利に導き、世界初コンピューターによる東洋医学自動診断機を開発するなど多数の研究を行ない、鍼灸大学創立の道を開いた。視覚障害者は何度も鍼灸存亡の危機を乗り越え、鍼灸の科学化と取り組み、時代のニーズに応える専門書を執筆するなど、鍼灸医学を確立発展させて不滅の功績を残した。
  • 真柳 誠
    2006 年 56 巻 4 号 p. 605-615
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    日本は中国で失われた多くの佚存古医籍や善本を保存し、現代に伝えている。それらに基づき江戸末期まで高度な古典研究がなされ、明治以降は近代医学を導入して鍼灸の研究と教育方法が体系化されてきた。一方、鍼灸療法は清朝後期に廃絶政策が実施され、中国の鍼灸は中華民国初期にほとんど壊滅状態にいたっていた。さらに民国政府は中国医学を廃止しようとした。しかし中国伝統医師達は日本の研究成果も援用した反対運動を行い、中国医学は存続された。また承淡安が日本から導入した鍼灸医学と教育方法は、新中国以降に中国鍼灸学が復興する礎となった。このような背景により形成された新たな中国医学が、いま日本に再び渡来している。過去の歴史は今後の歴史に連なるのである。
  • 鈴木 雅雄, 苗村 健治, 江川 雅人, 矢野 忠
    2006 年 56 巻 4 号 p. 616-627
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】副腎皮質ステロイド薬を含む薬物治療の使用においてもコントロール不良であった気管支喘息患者6症例に対して鍼治療を行い、一事例研究法である条件反転法を用いて鍼治療の効果を検討した。
    【方法】研究デザイン : 条件反転法は、鍼治療期間 (A期間) と鍼治療休止期間 (B期間) を交互に繰り返した。A期間は10週間とし、葉週間に書回の鍼治療を行った。実施場所 : 明治鍼灸大学附属病院内科および附属鍼灸センター。対象 : 気管支喘息の標準的な薬物治療を行っても、喘息発作が十分に改善しなかった、中等症から重症の喘息患者6症例を対象とした。評価 : 気管支喘息に対する鍼治療の効果を以下の項目を用いて評価した、 (1) 発作状態を喘息日誌にて評価、 (2) 呼吸困難感をVAS (Visual AnalogueScale) にて評価、 (3) 呼吸機能検査、 (4) 末梢血好酸球数 (5) ステロイド薬の投薬量 (6) 重症度.
    【結果】A期間に一致して全例で喘息発作や呼吸困難感の改善が認められた。一方、B期間では6例中5例において喘息発作の再燃が認められた。また、喘息発作の改善に伴い、全例で重症度の改善も認められ、6例中4例でステロイド薬の減量が可能となった。
    【結語】薬物治療でコントロール不良であった気管支喘息患者に対して、鍼治療を行った結果、患者の喘息発作、自覚症状、呼吸機能の改蓄に有効であったと考えられた.
  • 福野 梓, 鶴 浩幸, 生島 美紀, 山田 潤
    2006 年 56 巻 4 号 p. 628-635
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】置鍼刺激は仮性近視や眼精疲労の改善に有用であり、毛様体筋緊張低下、縮瞳、脈絡膜血流増加などの作用を有する。今回、置鍼刺激が網膜感度閾値に及ぼす影響について検討した。
    【方法】屈折異常以外に眼科的疾患を有しない健康成人11例11眼 (平均年齢27.8歳±7.1、平均±標準偏差) を対象とした。鍼刺激は仰臥位にて両側の合谷、太陽、上晴明穴に10分間の置鍼術を行った。鍼刺激前後における網膜感度閾値をハンフリー視野計のBlue on Yellow視野プログラムを用いて測定し、感度低下の際に指標となるMean deviation (MD) 値と中心窩閾値とについて比較検討した。また、視野測定時間の変化を評価した。同一症例における10分間の安静仰臥位を対照とし同検討を行った。
    【結果】鍼刺激前後、安静前後におけるMD値や中心窩閾値に変化はなく、両群間にも有意な差は検出できなかった。しかし、安静仰臥位後の視野測定時間は有意に延長したが (14.9±20.1秒, p<0.05) 、鍼刺激後では有意な変化がみられず、逆に3.6±56.9秒短縮した。測定時間が5秒以上短縮した被験者は鍼刺激群に有意に多かった (p<0.05) 。
    【考察】健康成人に対する鍼刺激ではハンフリー視野計で検出できる程度の網膜感度閾値変化はみられなかった。測定時間延長には感度測定時のばらつきに対する閾値再測定や固視不良が密接に関連しており、鍼刺激による網膜感度の維持、眼精疲労の減少、集中力の持続などが示唆された。
  • 櫻庭 陽, 沢崎 健太, 森山 朝正
    2006 年 56 巻 4 号 p. 636-643
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】臨床において、治療法ではなく検査法および評価法の目的で用いた経絡テストの有用性について調査する。
    【方法】対象者は鍼灸治療施設の運動器疾患を訴える患者と治療者である。治療前後に経絡テストを実施して、その所要時間や感想に関するアンケート調査を行った。
    【結果と考察】患者、治療者にとって経絡テストの所要時間は適当であった。また、経絡テストによって全身から自覚していない不調を検出し、治療後の身体変化を自覚していない患者に対して経絡テスト陽性数を用いてその変化を示すことができた。さらに、患者と治療者から経絡テストに対して肯定的な回答が得られた。以上の結果から、臨床において検査法および評価法の目的で用いた経絡テストの有用性が示された。
  • 特にその創立期に着目して
    箕輪 政博, 形井 秀一
    2006 年 56 巻 4 号 p. 644-655
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】2004年時点の日本のあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゆう師を教育する学校養成施設141校の明治期以降の変遷と現状を分析する。
    【方法】 (財) 東洋療法研修試験財団の学校養成施設名簿、全国盲学校実態調査、 (社) 東洋療法学校協会創立10周年記念誌および郵送により入手した学校案内などから、基礎になるデータを作成・分析して考察した。
    【結果】141校の内訳は大学5校 (短期大学を含む) 、盲学校61校、専門・専修学校 (各種学校を含む) が66校、視力障害センターなどの養成施設が9施設であった。視覚障害者の学校養成施設はその殆どが国公立であり、晴眼者の学校はすべて私立であった。創立について、1920年代までに盲学校の創立が集中する1900年代前後、戦後のあはき法の施行に伴い比較的古い専門学校の創立が集中する1950年代前後、憩98年の福岡地裁判決以降から現在に至る新設校の創立集中時期の3期にわけることができ、それぞれについて検証した。
    【まとめ】141校についての創立から現在に至る変遷及び現状が明らかになった。鍼灸専門学校の急増は、現在の鍼灸界にとってかつて経験のない大変革である。鍼灸医療市場が伸び悩む現状で、今後の日本のあはき教育が問われ、新たな局面を迎えようとしている。
  • カサノヴァ エマヌエラ
    2006 年 56 巻 4 号 p. 656-661
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    イタリアでは第二次世界大戦後以来、特に1990年代において鍼治療や漢方などの東洋医学は他の代替医療と同様に次第にポピュラーなものになってきた。毎年4%のイタリア人が鍼灸治療を受けており、そしておよそ15,000人の医師が鍼治療に携わっている。法律的には医師のみが鍼治療に従事できる。医師の為の鍼灸教育は医学部卒業後4年のコースで行われる。13箇所の鍼灸学校がイタリアの主要都市に存在する。しかし、公的な専門職業組織としての鍼灸師会は未だ存在していない。
    122の国立慢性疼痛センターが国民健康保険を適応できる療法として鍼治療を行っており、鍼治療の対象となる疾患は主にリウマチそして筋骨格系の障害である。
    研究に関しては、数人の著名な研究者や治療者がいるが、ヨーロッパの平均的な水準には達していない。
  • 京都国際シンポジウムの予備資料として
    山下 仁, 川喜田 健司, 矢野 忠
    2006 年 56 巻 4 号 p. 662-667
    発行日: 2006/08/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
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