全日本鍼灸学会雑誌
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56 巻, 5 号
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  • 鈴木 信孝
    2006 年 56 巻 5 号 p. 693-702
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    補完代替医療は近年脚光をあびており、Complementary and Alternative Medicine (CAM) と呼ばれている。CAMとは具体的には、サプリメント (健康補助食品) 、ハーブ療法 (ハーブティー、アロマセラピー) 、鍼灸、指圧、気功、伝統医学、温泉療法、音楽療法、抗加齢医学等々を包含している。米国では国立補完代替医療センター (NCCAM) が設立され、全米の少なくとも60%医学校で代替医療の講義が行われている。また、米国の健康保険組合はCAMのうちカイロプラクティックと鍼灸治療を給付の対象にし始めた。我が国のCAMの種類は、サプリメント42.0%、マッサージ31.2%、リフレクソロジー20.2%、アロマセラピー14.6%、指圧13.2%、ハーブ12.3%であり、サプリメントを使っている患者が圧倒的に多いことが注目されている。そこで、本稿ではCAMの中でも特にサプリメントについて概説した。
  • 山下 仁
    2006 年 56 巻 5 号 p. 703-712
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    欧米における鍼の利用状況と臨床研究の傾向を概観し、そこから見えてくる日本鍼灸の課題について述べる。
    欧米先進諸国における鍼受療経験者は増えつつあるが、国民に占める割合としては日本のほうが圧倒的に多い。鍼施術に関する法的な規制は国によって様々であるが、EU諸国では医師でなければ施術してはならない国が多い。欧米における鍼治療の方式や基礎としている理論は中医学が圧倒的に優勢である。
    近年ではevidence-based medicine (EBM) の考え方が医療界に浸透するのにともない、鍼のランダム化比較試験 (RCT) が盛んに実施されるようになった。RCT実施数や研究助成額の面から見れば、欧米のほうが日本よりも鍼の研究体制が進んでいるといえる。しかしRCTにおける偽鍼群の設定には大きな問題があり、今後はより臨床に近い設定であるpragmatic trialがもっと実施されるべきである。
    鍼灸が国際化してきた今、要素還元主義の強い研究手法ばかりを模倣していると、再び明治維新で日本政府が東洋医学を捨てたときのように伝承医術の大切な精神を失うことになりかねない。EBMの概念を尊重することは重要だが、同時に、日本鍼灸とは何か、鍼灸臨床におけるArtの側面をどうやって評価するのか、といったことについて深く議論してゆくことが日本の鍼灸の重要な課題であると考える。
  • 山田 勝弘
    2006 年 56 巻 5 号 p. 713-726
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    平成15年1月23日に代田文彦先生は63年の生涯を全うされた。それ以後の私共は、まるで主を失った迷える小羊のような3年間であった。このたび、今学術大会において先生の足跡を辿る機会を得て、先生が示された数々の教えを「鍼灸臨床の真価」として報告する。
    この演題を頂いた時、偉大な先生をわたくし独りの思いで語るにはあまりに-面的であると考え、26年間にわたり日産厚生会玉川病院東洋医学研修センターで先生に学んだ方々にもご協力を頂き今回の内容になった。
    この講演内容は、かつて日産厚生会玉川病院東洋医学研修センターに所属し先生に学んだ18名の方々の報告、先生のご著書、学会報告など基にした先生の思い、私が演題に沿うように構成した。本大会のような公の場で先生が言い切れなかった思い、臨床の場で何気なく研修生に語りかけた先生の真実の思い、そして2000年の神戸大会の先生の遺言ともいえるような講演の一部を取り上げ纏め.上げたものである。
  • 尾崎 昭弘, 高田 外司, 浦山 久嗣, 熊本 賢三, 榎原 智美, 坂口 俊二
    2006 年 56 巻 5 号 p. 727-741
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    背部の経穴位置決定の基準とされ、歴史的にも論議が繰り返されてきた「大椎」の経穴位置に焦点を絞りシンポジウムを行った。
    シンポジストからは、 (1) 経穴の位置は、時代や文化と共に治療対象・治療目的・治療用具によって変化していることから、「大椎」の位置が第2頸椎棘突起上部、第6・7頸椎棘突起間、第7頸椎・第1胸椎棘突起間と変遷してきたのも例外ではないとする見解、 (2) 背部取穴法の基準点である「大椎」の位置が異なると、臨床的価値が無意味なものになるので第6・7頸椎棘突起間に統一すべきであるとする見解、 (3) 頸椎のなかで体表臨床学的に重要なのは第6頸椎であり、運動性と脊椎の区分という点では第7頸椎であるが、鍼灸の発達してきた過程を考えると「大椎」の位置は臨床的効果から決めるのが合理的であるとする見解、 (4) 第7頸椎・第1胸椎棘突起間を国際標準化案として作成しているが、この位置については中国・韓国共に異論がないので現行のままで良いとする見解、が寄せられた。
    本シンポジウムでは、統一見解をみるには至らなかったが、「大椎」は臨床的にも重要な意義を有しており、今後に検討が必要である。
  • 八瀬 善郎, 若山 育郎, 形井 秀一, 向野 義人, 山岡 傳一郎, カサノヴァ エマヌエラ
    2006 年 56 巻 5 号 p. 742-754
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    本シンポジウムは、多留会長の長いご経験からその悲願とも言うべき鍼灸への熱い思いとして、日本の鍼灸の未来への期待をこめられた極めて重要な命題である。昨年の福岡学会の卒後教育シンポジウム1) では、鍼灸に関心のある医師や活躍中の鍼灸師、卒後研修中の鍼灸師などによる現況が報告されたが、今回は、昨年とは趣を変えて、グローバル化の中の鍼灸を含めた伝統医学、即ち、地域風土に根ざした伝統文化の一つとして、日本の鍼灸という独自性を取り上げた。
    それぞれにこの原点に立ち戻って、日本という独自の風土に根ざす鍼灸について語って頂いた。病める人の立場から、病める人の背景を探り、そしてこの国の独自の発展が、どのように外国のひとびとに映っているかを探りたいと考えたからである。
    これまでの鍼灸教育2) では、生体全体の流れは掴めても、現代医学的素養が乏しいために、局所病変と他の臓器や生体全体に与える影響などの理解が不十分で、さらに、現代医療の現場に接触できる卒後研修施設の不備がかさなり、鍼灸教育の視野を狭めているように思える。こうした限界を打ち破るにはという思いで、経験深いシンポジストの先生方に、お話を伺った。
  • 形井 秀一, 篠原 昭二, 坂口 俊二, 浦山 久嗣, 河原 保裕, 香取 俊光, 小林 健二
    2006 年 56 巻 5 号 p. 755-766
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    経穴部位の標準化は、1989年にジュネーブ会議で経絡経穴名 (奇穴八脈、奇穴も含む) が国際標準化されて以来、永年の懸案であり困難な課題とされてきた。それ以来、14年の時を経て2003年、WHO西太平洋地域事務局 (WPRO) 主導の下、日本、中国、韓国による経穴部位の国際標準化に関する非公式諮問会議が始まった。この会議は特別会議を含めると3年で9回を数え、標準化達成に向けて大きく前進した。そしてその目標は、2006年秋、日本 (つくば市) で開催される経穴部位標準化公式会議で結実する。
    これまでの経緯と今後の課題をまとめたので報告する。
  • 東家 一雄, 深澤 洋滋, 笠原 由紀, 奥田 学, 田原 壮平, 栗林 恒一
    2006 年 56 巻 5 号 p. 767-778
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    平成16年度に発足した免疫研究委員会では、過去に国内外で発表された鍼灸と免疫に関する全ての基礎研究論文の記載内容を精査する目的でWeb上のデーターベースからキーワード検索により724論文を選び、そこから実験動物対象の原著論文52編とヒト対象の原著論文42編 (そのうち英文論文72編、邦文論文22編) を抽出した。それら94論文に記載された鍼灸刺激方法や実験対象、測定された免疫学的パラメーターなどについて詳細な検討を加えた結果、本領域の報告は極めて多様な実験条件設定の下で実施されていることが明らかとなり、今後のこの領域の基礎研究では相互に比較検討が可能な再現性の高いデータを蓄積しなければならないことが示唆された
  • ここまでわかった鍼灸医学 : 基礎と臨床の交流
    尾崎 昭弘, 今井 賢治, 伊藤 和憲, 向野 義人, 白石 武昌, 石崎 直人, 竹田 太郎
    2006 年 56 巻 5 号 p. 779-792
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    「耳鍼に関するこれまでの研究の展開」を主テーマとしてセミナーを行った。セミナーでは、近年の国内外の耳鍼の展開、作用機序や臨床効果のレビューを行い、知見を総括した。
    耳鍼による肥満の基礎研究では、耳介と視床下部-自律神経系の関連、耳鍼を受ける側の状態の違いに起因する個人差などが紹介された。さらに、作用機序では耳介の鍼刺激により白色脂肪組織 (WAT) に発現したレプチンが、末梢と中枢の両者に存在するレプチン受容体 (Ob-R) に結合して、摂食を抑制することなどが紹介された。
    耳鍼の臨床効果については、肥満に関する欧米の知見を中心に紹介された。しかし、欧米の論文のレビューでは共通した治療方法、評価指標などが乏しかったため、総合的な結論を下すには至らなかった。鎮痛効果や薬物依存では、臨床効果が期待されたが、禁煙では否定的であった。
  • 石神 龍代, 皆川 宗徳, 福田 裕康, 井島 晴彦, 近藤 利夫, 黒野 保三
    2006 年 56 巻 5 号 p. 793-801
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2011/08/17
    ジャーナル フリー
    【目的】睡眠障害を訴えて来院した患者6名に対して、 (社) 全日本鍼灸学会研究委員会不定愁訴班黒野保三班長作成の不定愁訴カルテを使用して、睡眠障害に伴う不定愁訴に対する鍼治療の有効性を客観的に検討した。
    【デザイン】記述的研究である症例集積研究。
    【方法】6症例に対して、生体の総合的統御機構の活性化を目的とした太極療法として黒野式全身調整基本穴13穴と、症状に対する局所療法として腫中、足三里を選穴し、30mm18号ステンレス鍼を用いて、単刺術にて、14回~21回の鍼治療を行った。
    【結果】6症例の不定愁訴指数の推移は有意に減少し、不定愁訴指数カルテによる効果判定は、著効1例、有効5例であった。また、睡眠障害も全症例において改善された。
    【結論】睡眠障害および睡眠障害に伴う不定愁訴に対する鍼治療の有効性が示唆された。
  • 中島 美和, 井上 基浩, 片山 憲史, 勝見 泰和, 糸井 恵, 小嶋 晃義
    2006 年 56 巻 5 号 p. 802-808
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】運動時痛を有する外反母趾に対して施灸を行い、運動能力に及ぼす影響について検討した。
    【方法】外反母趾による疼痛を有する被験者5名を対象とし、疼痛緩和を目的に自覚的最大痛み部位に1日1回の割合で2週間、合計14回の温灸を行った。評価は施灸前、2週間の施灸後に反復横跳びを行い、その回数と痛みの程度 (Numerical Rating Scale) を記録した。
    【結果】施灸により全例に痛みの軽減、又は消失を認めた。また、5例中4例において反復横跳びの回数の増加を認めた。繰り返しの測定による反復運動効果、即ち学習効果の有無については施灸前後ともに有意差を認めなかった。
    【考察・結語】外反母趾による痛みは一定期間の施灸によって軽減し、同時に反復横跳びによる運動能力も改善される事が明確になった。今回の結果から、外反母趾による痛みは一定期間継続して施灸を行うことによりコントロールが可能であり、少なくとも施灸終了直後は痛みの軽減による運動能力の向上に有用と考えた。
  • 橋本 辰幸, 熊澤 孝朗
    2006 年 56 巻 5 号 p. 809-814
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【はじめに】われわれが開発を試みた筋障害性慢性痛症モデル動物が示す痛み行動を精査し、モデルとしての妥当性を行動学的に検討した。
    【方法】一側のラット腓腹筋に、lipopolysaccharideと高張食塩水による複合刺激によって筋障害を作製し、誘発される痛み行動の指標として、筋障害部位ではプッシュプルゲージによる筋圧痛閾値を、障害部以外の足底ではvon Frey filamentに対する足あげ反応回数を記録した。
    【結果と考察】筋障害部位の痛み行動は処置後1週目までに消失した。足底の痛み行動も同様に減弱を示したが、2週目の時点から再び亢進した。2週目以降に出現した痛み行動は、中枢における可塑的変容によると考えられ、ヒトにおける慢性痛症に相当するものであることが示唆された。本研究で示したモデル動物は軟部組織障害性モデルとして有用であると思われ、慢性痛症に対する治療法確立のための基礎研究に利用できると考えられた。
  • 鍼治療を中心にした報告
    泉 重樹, 宮本 俊和, 原 賢二, 池宗 佐知子, 堀 雅史, 西村 博志, 宮川 俊平
    2006 年 56 巻 5 号 p. 815-820
    発行日: 2006/11/01
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
    【目的】これまでの鍼灸師によるトレーナー活動報告は多いが、一定期間の活動を行ったトレーナー活動報告は少ない。そこで1年間の大学ボクシング部のトレーナー活動報告を鍼治療の内容を中心に行った。
    【方法】大学ボクシング部員27名を対象に2004年4月から2005年3月までの1年間、鍼灸師資格を持つアスレティックトレーナーがトレーナー活動を行った。
    【結果】トレーナー活動日数は合計32日であった。1回のトレーナー活動あたり平均2.2名に治療を行った。トレーナー活動は延べ71名に実施し、全体では鍼治療28名 (39.4%) 、マッサージ24名 (33.8%) 、テーピング4名 (5.6%) 、パートナーストレッチ3名 (4.2%) などが行われていた。鍼治療部位では手部に主訴を持つものが15名 (50%) で最も多かった。
    【考察】ボクシング競技においても鍼治療は多く希望されていた。今後もボクシング競技でトレーナー活動を継続することが必要である。
  • 2006 年 56 巻 5 号 p. 846
    発行日: 2006年
    公開日: 2011/03/18
    ジャーナル フリー
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