全日本鍼灸学会雑誌
Online ISSN : 1882-661X
Print ISSN : 0285-9955
ISSN-L : 0285-9955
58 巻 , 5 号
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
巻頭言
教育講演
  • 山口 創
    原稿種別: 教育講演
    2008 年 58 巻 5 号 p. 732-741
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/10
    ジャーナル フリー
    本稿では第1に、 身体心理学の立場から、 自己と環境との境界としての皮膚感覚について論じられた。
     第2に、 身体接触が心に与える影響に関する実験について紹介した。実験では、 触れる側、 触れられる側、 自己接触の3群の不安低減効果について検討した結果、触れられる側にのみ心理的変化があることを紹介した。 次いで幼少期の両親との身体接触は、 成人後にも対人関係に影響を与えている事実を紹介し、 皮膚自体が記憶をもつ可能性について示唆し最後に、 鍼灸治療における皮膚の機能や役割について論じた。鍼灸は皮膚へ介入する治療であり、 それが内臓や筋肉などに変化を及ぼし、 さらにその変化が皮膚に反映される。 つまり皮膚は入力と出力の界面である。 そのような視点から皮膚を観ることや、 皮膚に直接接触することの重要性について論じた。
原著
  • 小杉 純子
    原稿種別: 原著
    2008 年 58 巻 5 号 p. 742-748
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/10
    ジャーナル フリー
    【目的】鍼灸治療が不定愁訴を持つ患者の自律神経機能にどのような影響をもたらしているかを明らかにすることを目的とし、 治療前後の患者の自律神経系機能について調べた。
    【方法】肩こりなどで鍼灸院に通院する11名の患者を対象とし、 皮膚電気抵抗、 皮膚温、 脈拍数、 血圧、 体温を3月~8月までの間、 治療前後に連続して測定し、 比較した。 【結果】鍼灸によって皮膚電気抵抗や皮膚温等に変化が認められた。 3月~5月には皮膚電気抵抗は有意に減少 (電流量が増加) し、 皮膚温の有意な上昇が認められた。 8月には皮膚電気抵抗は有意に増加 (電流量が減少) し、 皮膚温の下降傾向が認められた。 脈拍数は減少傾向を示した。 血圧、 体温には一定の傾向が認められなかった。
    【結論】鍼灸治療は皮膚交感神経系の機能を季節に応じて変化させる事により、 患者の自覚症状の改善に役立っていることが示唆された。
  • 久下 浩史, 宮嵜 潤二, 一井 綾乃, 森 英俊
    原稿種別: 原著
    2008 年 58 巻 5 号 p. 749-757
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/10
    ジャーナル フリー
    【目的】介護支援専門員の居宅介護サービス計画 (介護計画) の中で、 療養費 (鍼灸治療、 柔道整復治療、 マッサージ治療) の利用状況について調査した。
    【方法】対象は老年化指数27.7%の1市町村 (以下、 B市) に登録されている事業所75か所であり、 その事業所に郵送法で鍼灸治療を含めた療養費の介護計画での利用実績や、 介護支援専門員自身の鍼灸治療経験等について調査した。 調査期間は2006年7月10日から7月31日までとした。 回収率は57.3% (43/75事業所) であった。 解析方法は単純集計、 Kruskal Wallis検定、 因子分析 (主因子法)、 パス解析を行った。
    【結果】総支援受給者数は、 3,535人であり、 B市の老年総人口の11.5%であった。 また、 介護計画において実際に鍼灸治療を受療した割合は、 総支援受給者数の2.5%であった。 しかし、 経済状況により鍼灸治療を受療できなかったものが10人おり、 また保険施設による同意書の拒否によって、 受療しない利用者を経験した事業所が22.0% (9/41事業所) であった。 因子分析 (主因子法) では 「鍼灸治療を含めた療養費の利用経験、 認識」 が第1成分として抽出された。 パス解析では、 介護計画の中で鍼灸治療を療養費として利用した介護支援専門員は、 利用者のADL・QOL維持のために鍼灸治療が有用であることを認識していたことが間接的に影響していた。
    【結論】介護支援専門員が利用者のADL及びQOL維持のために鍼灸治療を療養費で用いた場合は、 介護支援専門員が鍼灸治療によるADL及びQOL維持に対する有用性を認識していたことが要因となっていた。
  • 寺田 和史
    原稿種別: 原 著
    2008 年 58 巻 5 号 p. 758-765
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/10
    ジャーナル フリー
    【目的】スポーツ競技者の個人的な特性が、 鍼治療の受療態度に及ぼす影響を検討した。 【方法】T大学で体育学を専攻する学生422人を対象に、 鍼治療に関する知識の量、 鍼治療に対する不安、 および受療態度をそれぞれ知識得点、 不安得点、 態度得点として定量化できる無記名の自記式質問紙による調査を行った。 【結果】対象者の標本特性から、 団体競技(団体群)と個人競技(個人群)、 および、 対人競技(対人群)と競争(競争群)に分類し、 態度得点を比較したところ、 対人群と競争群の間に有意な差がみられた。 また、 態度得点を従属変数、 標本特性や各得点を独立変数としたステップワイズ法による重回帰分析を行ったところ、 不安得点、 知識得点、 家族の鍼治療の経験の有無、 対人競技と競争による分類が説明変数としてモデルに採択された。 【結語】種目特性を含む競技者の持つパーソナリティは、 鍼治療の受療態度を形成するひとつの要因となっていることが示唆された。
報告
  • 粕谷 大智
    原稿種別: 報告
    2008 年 58 巻 5 号 p. 766-774
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/10
    ジャーナル フリー
    [目的]当院の血液内科で治療されていた血友病A患者が, 鍼灸院にて鍼治療を受け腸腰筋の血腫を起し, 日常生活を著しく支障をきたした症例を報告する。
    [症例]年齢は20歳代の男性。病名は血友病Aで自己注射にてVIII因子補充療法を継続中。腰部に鍼治療を受け腰下肢痛が徐々に増悪, 電気の走るような痛みが出現し, 安静時痛も強く救急車にて病院へ搬送される。以後, 自宅にて安静に。当院にてリハビリ開始。MRIにて腸腰筋に紡錘状の血腫を認めた。このような先天性の出血性疾患に対しては, 問診, 視診, 触診, 徒手検査法にて情報を収集し, 病態や重症度を把握し対応するべきである。
  • 泉 重樹, 宮本 俊和, 小堀 孝浩, 青木 謙介, 池宗 佐知子, 原 賢二, 片山 証子, 宮川 俊平
    原稿種別: 報告
    2008 年 58 巻 5 号 p. 775-784
    発行日: 2008年
    公開日: 2009/03/10
    ジャーナル フリー
    【目的】スポーツ選手の腰痛に対する低周波鍼通電療法の効果を痛みおよび練習状況のVisual Analogue Scale (VAS)、 練習状況の5段階評価、 体幹動作時痛、 Roland-Morris Disability Questionnaire (RDQ)、 日本整形外科学会腰痛疾患治療成績判定基準 (JOAスコア) により検討した。
    【方法】T大学で腰痛を主訴に鍼治療をした選手のうち初療時および最終治療時に上記項目を比較できた28名を対象とした。 治療方法は診断名別に低周波鍼通電療法を行い、 初療時と最終治療時で各項目を比較した。 同時に各評価項目の相関関係を検討した。
    【結果】主訴は腰痛・腰背部痛27名、 腰下肢痛1名であり、 診断名は腰痛症16名 (57%)、 腰椎椎間板症5名 (18%)、 腰椎椎間板ヘルニア3名 (11%) 等であった。 鍼治療の結果、 練習状態のVAS、 練習状況の5段階評価、 JOAスコアは有意に改善したが、 痛みのVAS、 体幹動作時痛、 RDQは有意差がみられなかった。 相関関係では特に練習状況のVASが初療時に動作時痛の合計、 RDQ、 JOAスコアと、 最終治療時にRDQ、 JOAスコアと有意な相関を認めた。
    【結語】スポーツ選手に対する鍼治療では選手の痛みに対する評価項目とともに、 練習状況に関する項目を評価することの重要性が示された。
feedback
Top