全日本鍼灸学会雑誌
Online ISSN : 1882-661X
Print ISSN : 0285-9955
ISSN-L : 0285-9955
58 巻, 2 号
全日本鍼灸学会雑誌
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
巻頭言
会長講演
教育講演
  • 江戸の養生書 『病家須知』 が告げるもの
    松田 博公
    原稿種別: 教育講演
    2008 年 58 巻 2 号 p. 156-165
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    内外の情勢は、 日本の鍼灸界に日本鍼灸学の構築を要求しています。 日本鍼灸の特色の一つを、 自然治癒力思想を根幹とすることだと考え、 そのルーツを探るのが本発表の課題です。 現在われわれが口にする自然治癒力思想を顧みると、 それは、 中国伝統医学を継承したものではなく、 江戸中期に輸入された蘭学由来のものであるという仮説が浮かび上がります。 幕末に刊行された江戸期最大の養生書 『病家須知』 に記された<自然作用力>というキーワードに着目し、 和田啓十郎の漢方復興運動の論拠となった<自然良能>の思想などを振り返りながら、 日本の鍼灸家が親しんできた自然治癒力思想が、 西洋のヒポクラテス医学のものであることに迫ります。 そして、 江戸期の日本人がヒポクラテス医学の自然治癒力思想を受け入れた背景には、 <邪正一如>という日本独自の治癒力思想があったという仮説も提出して、 検討に供したいと思います。
シンポジウム
  • 宮本 俊和, 古屋 英治, 森山 朝正
    原稿種別: シンポジウム
    2008 年 58 巻 2 号 p. 166-178
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
     近年、 子供から高齢者まで多くの人がスポーツをするようになってきた。 そのため、 競技スポーツはもとより、 レクリエーションスポーツにおいても安全で快適なスポーツ環境が社会に求められている。
     スポーツ分野の鍼灸のテーマも、 (1)スポーツ外傷・障害の治療(2)スポーツ選手の体調管理(3)生活習慣病の予防(4)競技パフォーマンスの向上など多岐にわたっている。 本シンポジウムでは、 スポーツ鍼灸の研究の現状を報告する。 以下はその概要である。
    1)円皮鍼は長期合宿中に起きる筋疲労を軽減する。
    2)鍼治療は、 高強度の運動によってもたらされる免疫機能の低下を抑制する。
    3)低周波鍼通電は、 マウスの廃用性筋萎縮の進行を抑制する。
    4)円皮鍼は運動後の急性筋疲労や遅発性筋痛に有効である。
    5)M-テストは、 スポーツ外傷の予防とパフォーマンス向上を評価するのに有効である。
ワークショップ
  • 有害事象報告論文 (2003-2006) および指サック・グローブ装着に関する議論
    山下 仁, 楳田 高士, 形井 秀一, 石崎 直人, 江川 雅人, 箕輪 政博, 畠山 博式, 古屋 英治, 半田 美香子, 宮本 俊和
    原稿種別: ワークショップ
    2008 年 58 巻 2 号 p. 179-194
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
     昨年に引き続き、 より安全な鍼灸臨床を目指すために情報とアイデアの提供、 募集、 および討論を行った。
      1. 2003~2006年に発表された鍼灸の有害事象に関する論文
       1) 国内の文献
       2) 海外の文献
      2. 指サック・グローブ装着の是非に関する議論
       1) 鍼灸施術における指サック装着の現状
       2) 指サック装着による鍼灸施術・臨床教育の実際
       3) 指サック装着による鍼灸施術の課題
     今後も学会内外で情報提供とそれにもとづく議論を継続することにより、 少しでも共通の認識と手法に近づけていきたい。
原著
  • 福野 梓, 鶴 浩幸, 片岡 佳介, 山田 潤
    原稿種別: 原著
    2008 年 58 巻 2 号 p. 195-202
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
     鍼治療による視力向上には近視度数軽減を伴わないことが多く、 機序が不明である。 そこで、 水晶体屈折度変化のない被験者に対する鍼刺激効果について検討した。 当附属病院眼科にて白内障手術を施行された患者30例 (平均年齢73歳) を対象とした。 鍼刺激は合谷・太陽・上睛明穴 (経穴群)、 もしくは上記経穴の外方 (又は上方) 1cmに置鍼を10分間行い (シャム群)、 鍼刺激前後の裸眼/矯正視力を測定した。 また、 縮瞳の影響を除去するため、 散瞳剤点眼後に鍼刺激前後の視力を測定した (n=4)。 両群において裸眼/矯正視力とも鍼刺激後に有意に向上したが、 群間に有意差はなかった。 散瞳下では視力向上がみられず、 矯正視力の変化量において散瞳群と無散瞳群の間に有意差が認められた。 鍼刺激の縮瞳作用により屈折調節不可能な高齢者においても視力向上することが示唆された。
  • 藤本 英樹, 片山 憲史, 林 知也, 木村 啓作, 矢野 忠
    原稿種別: 原著
    2008 年 58 巻 2 号 p. 203-212
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    (目的)酸化ストレスの評価は、スポーツ選手のコンディショニングに重要である。そこで、運動誘発性の酸化ストレスに対する鍼通電刺激の影響について検討した。
    (方法)対象は健常成人男性10名で、鍼通電(EA)群と無刺激対照(CONT)群を設け、低周波鍼通電を両内側広筋へ行った。漸増運動負荷はエルゴメーターを用い、負荷中の呼吸代謝を記録した。酸化ストレスの評価はFRAS4により行った。
    (結果)CONT群に比し、EA群ではRCポイントの有意な延長を認めた。CONT群で酸化ストレス度は負荷前と比し運動により有意に上昇したが、抗酸化力ではその上昇は認められなかった。EA群で酸化ストレス度は運動により有意な上昇を認めず、抗酸化力では有意に上昇した。
    (結論)鍼通電刺激は呼吸代謝に影響を与え、酸化ストレス度を抑制し、抗酸化力を高める可能性が示唆され、鍼通電刺激はスポーツ選手のコンディショニングに有用であると考えた。
報告
  • 山崎 翼, 福田 文彦, 竹田 太郎, 石崎 直人, 山村 義治
    原稿種別: 報告
    2008 年 58 巻 2 号 p. 213-220
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/09/02
    ジャーナル フリー
    【症例】64歳、 女性。 主訴:全身倦怠感、 便通異常、 腰下肢の痛みとだるさ。 現病歴:X-6年に肝細胞癌と診断され、 経過観察を行っていたが、 X年8月に入院となった。 腰下肢の痛みとだるさ、 便通異常 (残便感)、 全身倦怠感に対して鍼灸治療を開始した。 病態は、 加齢に伴う変形性腰椎症に長期臥床が加わったことによる筋々膜性腰痛、 肝機能障害による全身状態の悪化に伴う全身倦怠感、 便通異常と考えた。
    【治療・評価】鍼灸治療は筋緊張緩和、 血流改善、 腸運動調整を目的に行った。 全身状態は6段階のFace Scale (FS)、 腰下肢の痛みとだるさはNumerical Scale (NS)、 便通は問診にて評価した。
    【経過・考察】鍼灸治療を併用したことにより、 腰下肢の痛みとだるさは、 NSにて7から4へ、 全身状態もFSにて3から1へと改善し、 残便感も消失した。 これらのことにより、 患者のQuality of lifeは高められた。 肝細胞癌の経過に伴う愁訴に対して鍼灸治療の併用は有効な方法になりえることが示唆された。
feedback
Top