全日本鍼灸学会雑誌
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58 巻 , 4 号
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巻頭言
会長講演
原著
  • 水上 まゆみ, 矢野 忠, 山田 潤
    原稿種別: 原著
    2008 年 58 巻 4 号 p. 616-625
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    【目的】眼症状に用いる遠隔部経穴の眼循環に及ぼす影響について検討した。 【方法】非喫煙健常者を対象とした。 安静時の経時的変化を観察し (実験1、 対照群n=65)、 次に鍼刺激による眼循環への影響を観察した (実験2、 刺激群n=118)。 刺激群は風池群、 合谷群、 肝兪群、 光明群、 曲池群に割り付けた。 網膜中心動脈の血流速と血管抵抗指数 (以下、 PI) を、 超音波カラードプラ診断装置で測定した。 鍼刺激は15分間置鍼とした。 安静坐位姿勢で7分30秒毎に計7回、 45分間にわたって測定した。 【結果】対照群では、 血流速およびPIに有意な経時的変化は認められなかった。 刺激群では、 血流速の有意な増加とPIの有意な低下が認められた。 2群とも血圧・心拍数はほとんど変化しなかった。 【結論】遠隔部経穴への鍼で眼循環動態が変化することが示唆された。 効果は光明、 合谷への鍼刺激で大きく、 風池では比較的小さいことが示唆された。
  • 呉 孟達, Huang LAWRENCE C-L
    原稿種別: 原著
    2008 年 58 巻 4 号 p. 626-641
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    今回われわれは西洋医学的に"迷路性耳鳴"と診断された65例の耳鳴症例に対して、 中医学的虚実弁証の理論を導入することによって、 新たに耳鳴を三つの、 西洋医学と中医学両方法論を加味した類型、 すなわち実証型迷路性耳鳴、 虚証型迷路性耳鳴および中間証型迷路性耳鳴に分類した。 次いで、 これらのそれぞれの病態証候に応じて、 中医学的"治病求本"の原則に基づき、 鍼治療を行った。
     耳鳴治療効果の判定は主に治療前後の自覚的な 「耳鳴表現スコア」 と他覚的な 「耳鳴ラウドネス」 という二つの耳鳴パラメータの変化を用いて比較検討した。 治療後の 「耳鳴表現スコア」 もしくは 「耳鳴ラウドネス」 が有効を示した65症例全体の「粗有効率 (GER)」は72.3%、 両者がともに有効を示した 「自他覚的有効率 (BER)」、 つまりより厳密な有効率としては47.7%であった。 三つの中医学的病証型のうち、 実証型の有効率が最も高く、 そのBERは66.7%を示していた。 次は虚証型で、 そのBERは48.7%であった。 中間証型は最も悪く、 そのBERはわずか10%であった。 各病証型のBERに対し、 相互間の統計学的有意差はなかった。
     一方、 治療終了2ヶ月後の効果判定では、 全体のGERは55.4%、 BERは38.5%にまで低下し、 治療効果の減少傾向が見られた。 特に虚証型のGERは統計学的有意な低下を示した。
     結論として迷路性耳鳴に対する鍼治療を行うにあたって、 中医学的虚実弁証論の応用は大変重要であると考えられる。 65症例の臨床治療分析を通して、 虚証型や中間証型に比べて、 実証型耳鳴は鍼治療に最も高い反応を示すことが判明した。
  • 宮崎 彰吾, 向野 義人, 萩原 明人
    原稿種別: 原著
    2008 年 58 巻 4 号 p. 642-653
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    【目的】鍼灸治療に関する施術者-患者間でのリスク・コミュニケーションの実態を解明することである。
    【方法】福岡市鍼灸師会会員250名とその患者1,250名を対象とし、 施術者と患者をペアにして、 施術者-患者コミュニケーションに関する同一の質問項目を含んだ自記式調査票による調査を行った。
    【結果】施術者91名 (36%)、 患者407名 (33%) から回答を得た。 鍼灸治療を行う施術者の説明に関して、 患者は不十分だと認識し、 施術者は十分だと認識した場合、 施術に対する患者の評価が低く、 その要因は施術者の経験年数 (OR=1.05) と治療従事者数 (OR=1.30) であった。 施術について医師から尋ねられた患者は27%、 医師に伝えた患者は48%であった。 副作用の発生率は4%で、 発生の有無による施術者および患者の特性に差はなかった。
    【考察】得られた知見は、 今後のより良い施術者-患者関係の構築に有用であると考えられる。
  • 渡邉 勝之, 篠原 昭二
    原稿種別: 原著
    2008 年 58 巻 4 号 p. 654-664
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    【緒言】鍼刺激では動的経穴にイオン化傾向の異なる銅鍼と亜鉛鍼を刺鍼した時のみ、 表皮表面局所における酸化還元電位 (ORP:Oxidation-Reduction Potential) が有意に低下することを明らかにしてきた。 本実験では、 直接灸および灸頭鍼刺激前後におけるORPおよび水素イオン濃度 (pH) に及ぼす影響について検討した。
    【方法】ボランティアの非経穴および独歩可能な患者の動的経穴に直接灸・灸頭鍼 (輻射熱遮断あり・なし) および燔鍼を行い、 刺激前後の測定を行った。
    【結果】ORPは非経穴への全ての灸刺激で変化を示さなかったが、 動的経穴では有意(p<0.01)に低下を示した。 一方、 pHでは非経穴または動的経穴に関係なく、 直接灸では有意(p<0.01)に低下し、 灸頭鍼輻射熱遮断では逆に有意(p<0.01)に上昇する変化が認められた。
    【結論】鍼灸臨床において、 我々は動的経穴の灸点[+点]には直接灸、 禁灸点[-点]には灸頭鍼を使い分けているが、 本実験により、 直接灸と灸頭鍼刺激では生体に及ぼす作用が逆であることが明らかとなった。
報告
  • 有働 幸紘, 本城 久司, 日野 こころ, 杉本 佳史, 岡田 晃一, 北小路 博司, 中尾 昌宏
    原稿種別: 報告
    2008 年 58 巻 4 号 p. 665-670
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    【目的】根治的前立腺摘除術後に持続する難治性の尿意切迫感・尿失禁に対する中リョウ穴鍼治療を試みた。
    【症例】根治的前立腺摘除術から4ヵ月以上経過しても持続する尿意切迫感・尿失禁を訴え、 薬物療法が奏功しなかった前立腺がん患者3名に対し、 中リョウ穴への刺鍼を週に1回・計4回行った。 評価は治療後の主訴の変化に加え、 症状の自覚的な評価には国際前立腺症状スコア (International Prostate Symptom Score; IPSS) を用い、 客観的な評価には排尿記録を用いた。
    【結果】治療後尿意切迫感と切迫性尿失禁は改善したが、 腹圧性尿失禁は残存したままであった。 IPSSの点数は改善を示した。 排尿記録からは1回排尿量の増加と排尿回数の減少が認められた。
    【結語】中リョウ穴鍼治療は根治的前立腺摘除術後の尿意切迫感・切迫性尿失禁に対して有効な治療法の1つになり得ると考えられた。
教育
  • 斉藤 隆夫, 渡邊 淑子, 林 信治, 小川 裕雄, 石川 慎太郎
    原稿種別: 教育
    2008 年 58 巻 4 号 p. 671-679
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    【目的】学校教育において深刺による医療事故を防ぐ実技練習は重要で、 安全な刺鍼には個人の皮下の構造を理解し、 鍼先の位置を随時認識できることが大切である。 筋パルスを利用し、 学生が鍼先位置を認識できる実習を行い学生の技術向上を目指した。
    【方法】実技授業における胸郭部刺鍼練習は教員の目が学生全員に届かず危険を伴うため、 上肢、 下肢の32の筋肉に対し筋パルスを行った。 授業終了後、 筋パルス実習の感想をアンケート調査した。
    【結果】学生は鍼先の位置、 深さにより動く筋肉が変わったり、 電気が流れる感覚に違いがあることに気が付いた。 学生は刺鍼技術の重要性と難しさに気が付いた。
    【考察】学生が個体差を考慮せず、 鍼先位置の認識が不十分なまま、 未熟な刺鍼技術で刺鍼練習を行えば、 鍼先の方向や深さが不適切となり、 目標筋肉到達しなかったり、 目標を通過してしまう等、 背部刺鍼ならば胸腔内に到達してしまう危険性が充分考えられる。 学生が鍼実技授業にて多くの筋肉に対し筋パルスを行うことで個体差を認識し、 安全な刺鍼が出来るようになるものと考える。
    【結語】筋パルスを用いた刺鍼練習は鍼先位置の認識を高め刺鍼技術向上に有効であった。 鍼先位置の認識と正確に目標に鍼先を到達させる技術は医療事故予防の一方法と思われる。
講演会報告
  • 形井 秀一, 篠原 昭二, 坂口 俊二, 浦山 久嗣, 河原 保裕, 香取 俊光, 小林 健二
    原稿種別: 講演会報告
    2008 年 58 巻 4 号 p. 680-683
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
    1965年 (第一次) 日本経穴委員会が発足し、 委員会の努力のお陰で1989年のジュネーブ会議において、 経絡経穴名が国際標準化された。 その後、 長い空白の時期を経て2003年にWPRO (西太平洋地域事務局) の主導の下、 経穴部位の国際標準化を目指す第1回の非公式諮問会議が開催された。 2004年4月には日本においても第二次日本経穴委員会が発足し、 日本、 中国、 韓国の3カ国により経穴部位標準化の部位検討や資料作成が行われた。 3カ国案を基に2006年経穴部位国際標準化公式会議 (つくば会議) が開催され経穴部位国際標準化が決定された。 これを受け、 2008年5月16日にWHO/WPROから 「WHO Standard Acupuncture Point Locations in the Western Pacific Region」 が発刊され、 その発刊記念講演会が開催されたので報告する。
報告
  • 妻木 充法
    原稿種別: 報告
    2008 年 58 巻 4 号 p. 684-689
    発行日: 2008年
    公開日: 2008/11/21
    ジャーナル フリー
     クラブワールドカップは、 6大陸のクラブ王者が世界一を決める大会であり、 その審判もアジア、 アフリカ、 南米、 北中米カリブ、 オセアニア、 ヨーロッパより選出される。 今回、 世界サッカー連盟 (FIFA)、 日本サッカー協会より依頼を受け、 鍼灸師が審判団のメディカルサポートを行った。 業務は、 練習及びフィットネステスト時のトレーナー活動、 試合帯同、 トリートメント業務 (鍼治療、 マッサージなど) であった。 16日間で59回の鍼治療、 63回のマッサージを行った。 大会期間中の外傷はハムストリングス肉離れ2名、 障害は、 腰痛、 アキレス腱周囲炎、 頚部痛などがあり鍼治療を行い改善した。 しかし2度の肉離れを起こした1名は、 帰国した。 鍼を知らない審判もいて、 日本の鍼治療を理解してもらう工夫が必要であった。 今後は、 感染防止の対策、 鍼の効果や傷害についての英語での説明法、 各国の食事やサプリメントの正確な知識を持つことの必要性を痛感した。
国際部報告
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