全日本鍼灸学会雑誌
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59 巻, 4 号
全日本鍼灸学会雑誌
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巻頭言
シンポジウム
  • 鍼灸医学における皮膚とは何か、皮膚症状に対する鍼灸治療の有効性から考える
    江川 雅人, 校條 由紀, 粕谷 大智, 加川 大治
    原稿種別: シンポジウム
    2009 年 59 巻 4 号 p. 334-352
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
     鍼灸医学において、 皮膚は特別な意味を有する。 鍼灸医学における皮膚は診察と治療の場でもあると共に外界との情報交流を行う場でもある。 体表に現れる種々の所見は、 単なる皮膚の所見とは捉えず、 体内や外界、 心の状況を映し出すと捉えている。 こうした視点により、 鍼灸治療は鍼と灸というシンプルな刺激手段ながらも、 体表上の特定部位を刺激することによって治療効果を引き出し、 心身全体の機能をも調整することができる。
     本シンポジウムでは 「皮膚と鍼灸」 を、 具体的な皮膚疾患の鍼灸治療とその臨床的効果を通して見つめ直し、 鍼灸師として鍼灸と皮膚の関連性を再認識した。
     江川からはアトピー性皮膚炎について、 校條先生からは爪白癬について、 粕谷先生からは膠原病の皮膚症状に対する鍼灸治療の方法とその臨床効果を紹介した。 また、 加川先生からは、 鍼刺激の皮膚性状に対する影響に関する研究結果についても呈示した。 これらの研究成果から、 広く皮膚科領域、 美容領域、 アンチエイジングへの鍼灸医学の効果や可能性について討論した。 また、 鍼灸医学における皮膚 (体表) の考え方として、 皮膚が各内臓器官や心の現れであること、 皮膚を診ることを通して心身全体が関連していることを再確認した。 さらには、 体表を診察と治療の場とし、 皮膚と全身の機能を関連させる鍼灸医学の有効性・発展性、 その視点の意味するものについて検討した。
ワークショップ
  • 山田 鑑照, 尾崎 朋文, 松岡 憲二, 坂口 俊二, 王 財源, 森川 和宥, 松下 美穂, 吉田 篤
    原稿種別: ワークショップ経穴研究委員会
    2009 年 59 巻 4 号 p. 353-374
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
     経穴研究委員会として3回目のワークショップを第57回全日本鍼灸学会学術大会 (京都) において開催し、 2つのテーマについて検討し報告した。

    第1テーマ (日中における循経感伝現象の研究)
    1) 中国における循経感伝現象の文献調査 (王):1979年以降の中国において行われた循経感伝現象の主要な研究についての文献調査。 経絡現象並びに循経感伝現象の定義、 循経感伝現象の特徴とその発現機序について報告する。
    2) 良導絡よりみる循経感伝現象 (森川):腎透析患者並びに胃全摘患者における反応良導点出現及び特定部位刺激による反応良導点の出現と針響の出現例を報告し、 反応良導点と循経感伝現象の関係について検討した。
    3) 循経感伝現象の発現機序 (山田):鍼灸刺激により知覚神経終末から神経伝達物質が放出される。 この神経伝達物質がリンパ管に吸収されリンパ管平滑筋を刺激して循経感伝現象が起こる。 その伝搬速度、 阻害因子などを踏まえて発現機序について検討した。
    第2テーマ (経穴の部位と主治)
    1) 環跳穴の解剖学的部位 (尾崎・松岡):環跳穴はWHO主導による経穴部位国際標準化において中国案並びに日本案の両案併記となった。 この両部位において体表に対して垂直方向に刺鍼したときの皮下構造から考えられる臨床効果について比較検討した。
    2) 環跳穴の部位・主治の変遷 (坂口):WHO主導による経穴部位国際標準化において両案併記となった 「環跳穴」 について、 中国と日本の古典を引用し部位と主治の変遷について比較検討した。
原著
  • shamを用いた比較試験
    古屋 英治, 金子 泰久, 上原 明仁, 上原 一郎, 副島 和彦, 坂本 歩
    原稿種別: 原著
    2009 年 59 巻 4 号 p. 375-383
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    【目的】筋疲労の回復に及ぼす円皮鍼の効果をランダム化比較試験で調査し、 リハビリテーションで用いる運動療法の補助的手段としての有用性を検討した。
    【方法】対象は健康成人男性29名とした。 上腕屈筋群の最大筋出力10%を加重した等張性肘関節運動を休憩を挟んで連続して2回行い、 休憩前後の運動回数から求めた減少率を円皮鍼とshamのクロスオーバー試験で比較した。 介入はダブルマスキングで後頚部に行い、 介入時の両者の判別はκ統計量を用いた。 運動で生じる局所疲労感はvisual analog scale (VAS) 値で評価した。
    【結果】κ統計量は0.17であった。 運動回数の減少率は円皮鍼群35.4±20.1%、 sham群45.1±11.1% (p<0.01) で円皮鍼群が小さかった。 局所疲労感は両群間で差がなかった。
    【結論】リハビリテーションにおける運動療法に円皮鍼を補助的手段として用いることは患者の機能回復を促進し、 QOLの向上に寄与できる。
  • 鍼の刺入深度の違いによる治療効果の検討
    宮本 直, 伊藤 和憲, 越智 秀樹, 山田 充彦, 大橋 鈴世, 糸井 恵
    原稿種別: 原著
    2009 年 59 巻 4 号 p. 384-394
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    【目的】変形性膝関節症 (以下、 膝OA) に伴う運動機能と痛みに対し、 鍼刺入深度の違いが及ぼす効果を検討した。
    【対象】膝OAと診断された患者のうち研究条件に適合した患者26名。
    【方法】コンピュータによりA) 浅刺群 (3mm前後の刺入)、 B) 深刺群 (10~20mm刺入) の2群に分類し、 下肢の圧痛点10ケ所に対して10分間の置鍼を行った。
    【評価】膝痛の主観的な評価としてvisual analogue scale (VAS) を、 運動機能の客観的な評価としてTimed Up & Go test、 20m歩行時間、 階段昇降時間を、 膝OAのQOL評価としてWestern Ontario and MacMaster Universities osteoarthritis index (WOMAC) をそれぞれ4週ごとに計4回記録した。
    【結果】痛みの程度は両群ともに治療前と比較して有意に改善したが (p<0.05)、 客観的な運動機能はすべての測定項目において、 治療前と比較して浅刺群のみ有意に改善した (p<0.05)。
    【結語】浅刺は痛みと運動機能を改善しQOL向上に寄与したことから、 膝OAの症状に対する、 より効果的な治療方法である可能性が示唆された。
  • 戸村 多郎, 宮下 和久
    原稿種別: 原著
    2009 年 59 巻 4 号 p. 395-405
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    【目的】鍼灸専門学校に在籍する勤労学生に対し適切な学習指導を行うため、 探索的質問紙調査により学習関連尺度を作成し、 学習意欲と平均成績及び欠席回数との関連性において検討した。
    【方法】対象は鍼灸専門学校に在籍する勤労学生234人とした。 尺度の構成概念妥当性ならびに外的変数との検証的妥当性を、 探索的因子分析及び構造方程式モデリングを用いて検討した。
    【結果】探索的因子分析の結果、 学習に影響を与える主な要因は 「疲労感」 「学習意欲」 「進路一致感」 「クラス環境」 の4因子が適切と判断された。 検証的妥当性では 「欠席回数」 を中心に仮定したモデルがデータに適合することが示された(GFI=0.959, AGFI=0.929, RMSEA=0.057, CFI=0.912)。
    【結語】適切な学習指導には、 「学習意欲」 の影響を受け平均成績に影響を与える 「欠席回数」 を指標に行うことの妥当性が示唆された。
  • 円皮鍼を用いた検討
    吉元 授, 田口 玲奈, 今井 賢治, 北小路 博司
    原稿種別: 原著
    2009 年 59 巻 4 号 p. 406-415
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    【目的】三陰交穴への円皮鍼治療が月経痛に及ぼす影響について検討した。 また、治療効果に影響を及ぼす背景因子についても検討を行った。【方法】対象は月経痛を有する女子大学生51名とした。 研究期間は9ヶ月間とし、無治療期間(a)、治療期間、無治療期間(b) の各々3ヶ月間を設定した。治療効果は月経痛重症度分類と服薬錠数の変化、治療期間終了時の痛み評価 (軽減、不変、増悪) で判定した。 さらに、治療効果に影響を及ぼす背景因子については神経症傾向(Cornel medical index: CMI)及び月経随伴症状 (Menstrual distress questionnaire: MDQ) 等との関連性を調査した。
    【考察】本治療は月経痛の緩和に有効であると考えられたが、その効果は精神的な要因や月経痛以外の痛みに影響されやすい可能性が示唆された。
短報
  • 多施設によるアンケート調査
    角村 幸治, 石神 龍代, 井島 晴彦, 中村 弘典, 河瀬 義之, 甲田 久士, 狩野 義広, 皆川 宗徳, 黒野 保三
    原稿種別: 短報
    2009 年 59 巻 4 号 p. 416-420
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/01/20
    ジャーナル フリー
    【目的】鍼治療によるかぜ症候群の予防効果について調査した。
    【方法】東洋医学研究所®グループに来院した患者215名にアンケートを行った。 内容は鍼治療を始めてから 「かぜをひきにくくなった」「変わらない」 「かぜをひきやすくなった」 とした。
    【結果】 「かぜをひきにくくなった」 と回答した人の割合は63.4%、 継続期間別では2年以下が45.9%、2年以上4年未満は63.3%、 4年以上で82.8%であった。
    【結論】鍼治療はかぜ症候群の予防に対する有効な一手段である可能性が示唆された。 また、 鍼治療を長期に継続するほど「かぜをひきにくくなった」 と回答した人の割合が増加したことから鍼治療を長期に継続することで予防効果が高まることが認められた。
編集者への手紙
文献紹介
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