全日本鍼灸学会雑誌
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59 巻 , 5 号
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巻頭言
特別講演
  • 山村 義治
    原稿種別: 特別講演
    2009 年 59 巻 5 号 p. 452-463
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    我々は、 明治国際医療大学附属病院開院当時の1987年より病院各科で鍼灸治療を取り入れ、 それぞれの分野における鍼灸治療を実践してきた。 とくに内科では、 外来及び病棟においてさまざまな疾患や愁訴に対して積極的に鍼灸治療を試み、 多くの症例を集積してきた。 今回は我々が本学附属病院内科で実践している鍼灸治療について紹介するとともに、 これまで集積してきたデータのうち特に有用であると思われるものについて紹介し、 内科領域における鍼灸治療の意義と今後の可能性について述べる。
     呼吸器系の症状ではCOPD (慢性閉塞性肺疾患) に対して比較対象試験を行い、 主症状である労作時呼吸困難に及ぼす影響を検討した。 鍼治療を受けた群では受けてない群と比較して労作時呼吸困難の改善が認められ、 さらに呼吸機能の改善も認められた。 COPDの重症例では在宅酸素療法などによりADLが低下する場合も多いが、 そのような症例でも鍼治療の効果が得られる場合もあり、 現行の内科診療に積極的に取り入れるべき有益な手法として期待している。 一方消化器系の領域では、 IBS (過敏性腸症候群) に対して鍼灸治療を試みてきた。 n of 1研究デザインを用いた症例集積では、 鍼灸治療期間中に明らかな愁訴の軽減が認められ投薬量も減少した。 IBSは消化器症状で外来を受診する患者の約3割を占めるとも言われており、 鍼灸治療の積極的な適用が望まれる。 また糖尿病では末梢神経障害による四肢の痺れに対して鍼治療を試みて良好な成績を得ているほか、 糖尿病性胃症に対しても対照群を設けて鍼灸治療効果を検討し有用性を確認した。 さらに、 特殊な鍼の応用として胃内視鏡検査時の蠕動抑制にも薬物の代替として利用している。
     以上のように内科領域における鍼灸治療の有益性を示すデータは着実に集積されてきており、 今後鍼灸治療の一領域として確立されることが望まれる。
原著
  • 新原 寿志, 角谷 英治, 谷口 博志, 北出 利勝
    原稿種別: 原著
    2009 年 59 巻 5 号 p. 464-476
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    【目的】国内の鍼灸臨床における感染防止対策の現状と問題点を明らかにし、 その方策について検討するためにアンケート調査を行った。
    【方法】対象は、 iタウンページに登録された近畿地方の開業鍼灸院1,000件とした。 アンケート項目は (1) 回答者プロフィール、 (2) 手洗い、 (3) 手指および施術野の消毒、 (4) 鍼具の滅菌・保管およびディスポ製品、 (5) ディスポーザブル鍼の使用状況と感染性廃棄物の処理、 (6) 押手、 (7) 感染防止対策の自己評価とした (平成19年10月実施)。
    【結果】アンケート回収率は31.8%であり、 高圧蒸気滅菌器の使用率は63.2%、 ディスポーザブル鍼単独使用率は56.9%、 素手による押手は82.3%等であった。
    【まとめ】ディスポーザブル鍼の使用率が増加するなど、 いくつかの対策は改善されている一方で、 鍼具の滅菌や感染性廃棄物の処理など、 基本的な感染防止対策が疎かにされてきていることが示唆された。
  • 中島 美和, 井上 基浩, 糸井 恵
    原稿種別: 原著
    2009 年 59 巻 5 号 p. 477-485
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    【目的】鍼通電刺激の骨癒合能に対する影響を調査する目的で、 ラット脛骨の骨折モデルを用いて、 X線学的、 肉眼的、 および生体力学的に検討した。
    【方法】Wistar系ラット (雄性、 12週齢) 30匹を用いて、 片側の脛骨骨幹部に開放的横骨折モデルを作成し、 無作為に鍼通電刺激群 (EA群)、 鍼群 (Sham群)、 無処置群 (Control群) の3群に分けた。 EA群は鍼を骨折部、 および骨折部より近位15mmの脛骨骨膜まで刺入し、 骨折部を陰極、 他方を陽極とした間欠的直流鍼通電刺激 (刺激条件:刺激幅5ms、 50Hz、 20μA、 20分間) を骨折作成日の翌日から3週間連日行った。 Sham群はEA群と同一部位・同一深度まで鍼の刺入のみ行い、 電気刺激は行わなかった。 Control群はモデル作成後、 処置を行わなかった。 評価は、 モデル作成後1、 3、 4、 6週に軟X線画像を用いて仮骨・骨面積の定量を行った。 併せて、 モデル作成後6週には脛骨を摘出し、 仮骨部の前後径、 左右径の計測を行った後、 3点曲げ試験を行い、 破断点試験力を測定した。
    【結果】EA群ではSham群・Control群と比較して早期に仮骨形成が見られた (モデル作成後3週の仮骨・骨面積の比較;p<0.05)。 経過とともに全ての群で仮骨量の増大を認めたが、 モデル作成後6週経過時において、 EA群では他の実験群と比較して、 仮骨量の有意な増大を認めた (仮骨・骨面積;p<0.05、 仮骨部の前後径、 および左右径;各々p<0.01、 p<0.05)。 さらに、 EA群では、 モデル作成後6週において、 力学的にも高い仮骨強度を示した (p<0.001)。 全ての評価においてSham群とControl群の間には有意差を認めなかった。
    【考察・結語】EA群で良好な結果が得られた理由として、 直流鍼通電刺激が陰極周囲、 骨折部局所の環境変化を引き起こし、 細胞活性に有利に働いた可能性が考えられ、 それにより仮骨形成の促進・増大を引き起こしたことが示唆された。 さらには、 仮骨の石灰化を促進・誘導した可能性が考えられた。
報告
  • 石井 香, 山口 智, 小俣 浩, 菊池 友和, 大野 修嗣, 中村 裕一
    原稿種別: 報告
    2009 年 59 巻 5 号 p. 486-494
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    【目的】POEMS症候群は末梢神経障害がほぼ全例にみられ、 多臓器疾患を伴う極めて稀な疾患であり、 鍼治療に関する報告は見当たらない。 今回、 鍼治療を施行し症状の改善とADLの向上が認められた症例を経験したので報告する。
    【症例】60歳代、 男性。 POEMS症候群と診断され、 末梢血幹細胞移植を施行後、 リハビリテーションを行ったが、 安静時の下腿のしびれと歩行後の同部のしびれ・つり感が残存し歩行困難を訴えた症例に対し、 感覚閾値の上昇と下肢筋群の過緊張緩和を目的に週1~2回の頻度で鍼治療を行った。
    【結果】鍼治療により、 安静時の足底のしびれと下腿のつり感が軽減し、 歩行後のしびれが改善すると共に歩行距離も延長した。
    【考察と結語】POEMS症候群患者に対し鍼治療を行い、 症状の改善とADLが向上し重篤な副作用も認められなかった。 以上より、 鍼治療は現代医療に併用する有用な治療法の一つと考える。
臨床体験レポート
  • 明井 哲也, 若狭 基見, 鶴 浩幸
    原稿種別: 臨床体験レポート
    2010 年 59 巻 5 号 p. 495-502
    発行日: 2010年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
    脳出血後のリハビリテーションが目的で入院した患者 (83歳、 女性) の仙骨部に褥瘡が確認された。 褥瘡に対する診療計画が作成され、 約2ヶ月間にわたり薬物療法が実施されたが、 改善が全くみられなかった。 そこで、 薬物療法に電気刺激療法を併用した結果、 計7回 (治療期間11日) の電気刺激治療後に劇的な改善がみられ、 褥瘡が治癒した。 この結果から、 仙骨部の褥瘡に対する電気刺激療法の有効性が示唆された。 褥瘡の改善には電気刺激による皮膚血流の改善が関与している可能性が考えられた。
編集者への手紙
その他(論考)
  • 孫 基然, 山口 大輔, 戴 昭宇
    原稿種別: その他(論考)
    2009 年 59 巻 5 号 p. 505-516
    発行日: 2009年
    公開日: 2010/12/27
    ジャーナル フリー
     本論文は 『黄帝内経』 にある任脈に関する記載文献を基に、 医学原理、 文字学及び歴史学の新知見を踏まえて任脈の由来を検討し、 以下の見解を得た。 『黄帝内経霊枢』 五音五味篇にある 「任衝盛んならず」 による 「天宦」 及び 『黄帝内経素問』 骨空論篇にある 「任脈の病たる、 男子は内に結して七疝たり、 女子は帯下・カ聚たり」 という記載があることから、 任脈は考案された当初から男女ともに存在していることが明らかになった。 また、 任脈の走行は出産胎児に繋がっている臍帯の痕である臍と経血の排出口である陰道口、 精液の排出口である尿道口、 胎児を蔵す場所である女子胞 (子宮) とがすべて人体の正中線上に位置することに加え、 古代宇宙観念における子午線の知識を取り入れて形成されたのではないかと考えられる。 任脈の起点は主に人体生命誕生のメカニズムを解明していく過程の中で、 男子の 「精気溢写す」 と女子の 「月事時を以て下る」 という二つの事柄に注目し、 生殖器の構造上の相違を避けながら、 腎気・天癸・任脈・衝脈という捉え方で解釈しているから、 両者にとって共通なルーツを持つ、 人体の正中線上にある胞 (膀胱) に発するのではないかと考えるようになったと思われる。
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