全日本鍼灸学会雑誌
Online ISSN : 1882-661X
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61 巻 , 3 号
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巻頭言
原著
  • 藤本 幸子, 井上 基浩, 中島 美和, 糸井 恵
    原稿種別: 原著
    2011 年 61 巻 3 号 p. 208-217
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/09
    ジャーナル フリー
    【目的】腰痛に対する、 より効果的な鍼治療方法の検索を目的に、 同一部位における鍼の刺入深度の違いによる治療効果の相違をランダム化比較試験により検討した。
    【方法】対象:罹病期間が3ヵ月以上の腰痛を有する患者32名をコンピュータープログラム (Sample Size 2.0) を用いてランダムに、 鍼を表在へのみ刺入する浅刺群と深部まで刺入する深刺群の2群に割り付けた。 介入:施術部位は両群ともに腰部の自覚的最大痛み部位3~12ヵ所を選択した。 浅刺群 (n=16) は切皮のみ (約5mm)、 深刺群 (n=16) は約20mm刺入し、 両群とも約1mm幅での雀啄術を20秒間行い、 その後に抜鍼した。 これらの治療を計4回 (1回/週) 行った。 評価:初回治療前後、 各回の治療前、 治療終了4週経過後に痛みのVisual Analogue Scale (VAS) を記録し、 併せて、 初回治療前、 治療終了時、 治療終了4週経過後にはRoland-Morris Disability Questionnaire (RDQ)、 Pain Disability Assessment Scale (PDAS) を用いて評価した。 なお、 評価は治療内容を知らない鍼灸師が行った。
    【結果】VAS、 RDQ、 PDASの経時的変化パターンに関して両群間に交互作用を認め、 深刺群で有意に良好な結果を示した (VAS:p<0.05、 RDQ:p<0.001、 PDAS:p<0.05)。 また、 初回直後、 治療終了時、 治療終了4週経過後の各時点における初回治療前に対する変化量においても、 全ての評価項目において、 深刺群は浅刺群と比較して良好な結果を示した 「(初回直後 VAS:p<0.01)、 (治療終了時 VAS:p=0.13、 RDQ:p<0.05、 PDAS:p<0.01)、 (治療終了4週経過後 VAS:p<0.05、 RDQ:p<0.01、 PDAS:p<0.05)」。
    【考察】全ての評価項目において、 浅刺群と比較して深刺群では良好な結果を示した。 このことから、 腰痛に対する自覚的痛み部位への鍼治療は、 筋の存在する深部まで刺入した方がより有効性が高いと考えた。 効果の相違が出現した理由に関しては、 浅刺群と深刺群それぞれの刺激を受容する組織の違いが関与し、 局所における痛覚閾値や筋血流、 あるいは筋緊張緩和に異なった影響を与えた可能性を考えた。
報告
  • 坂本 裕和, 藤井 亮輔, 光岡 裕一, 坂井 友実, 秋田 恵一
    原稿種別: 報告
    2011 年 61 巻 3 号 p. 218-225
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/09
    ジャーナル フリー
    【目的】経絡経穴とその周囲構造物との位置関係を形態学的に明らかにする一環として、 下肢後面における経穴について検討した。
    【方法】東京医科歯科大学解剖学実習体3体6側を使用した。 下肢後面における足の太陽膀胱経に刺鍼を施し、 その部位を中心とした局所解剖を行った。
    【結果】1. 承扶・殷門は、 大腿二頭筋の表層を走行する後大腿皮神経および深層を走る坐骨神経より内側に位置した。
    2.浮ゲキ・委陽は、 大腿二頭筋停止腱の内側縁に沿って総腓骨神経の走路に位置した。
    3.委中・合陽・承筋・承山・飛揚・フ陽・崑崙・申脈は、 内側腓腹皮神経、 腓腹神経およびは小伏在静脈に沿って位置した。
    4. 委中・合陽・承筋・承山は、 深層では脛骨神経および膝窩動脈、 後脛骨動脈に沿って位置した。
    【結論】1.後大腿皮神経および坐骨神経は承扶・殷門より外側を走行する傾向が強く、 これら神経への刺鍼は承扶・殷門より外側に施す必要性が示唆された。
    2. 下腿後面の腓腹神経および小伏在静脈は、 末梢に向かうにつれて経穴に沿う傾向が強くなる。
    3.下腿後面の深層を走る脛骨神経への刺鍼は、 委中・合陽・承筋・承山が効果的であることが示唆された。
  • 菅原 正秋, 小林 寛伊, 大久保 憲, 坂井 友実
    原稿種別: 報告
    2011 年 61 巻 3 号 p. 226-237
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/09
    ジャーナル フリー
    【目的】全国のはり師・きゅう師養成学校 (鍼灸学校) の鍼実技実習における感染対策教育の現状を把握し、 教育上の問題点を明確にする目的で、 鍼灸学校に対してアンケートを実施した。
    【方法】2008年12月~2009年3月に全国の鍼灸学校に調査用紙を郵送し、 回答を求めた。 質問項目は、 実習時の手指衛生 (手洗い) の方法、 実習で使用している鍼の種類、 鍼の取扱い方法の質問などから構成され、 回答は選択形式とした。
    【結果】回収率は69.9%であった (107/153施設)。 手指衛生の方法について調査したところ、 「石けんと流水による洗浄と擦式消毒用アルコール製剤によるラビング法」 が65%と最も多かった。 また、 流水による手洗い後、 手を拭く (乾かす) 方法は、 「ペーパータオル」 が63%、 「エアータオル」 が21%であった。 実習で使用している鍼の種類について調査したところ、 「単回使用毫鍼のみ使用している」 が58%、 「単回使用毫鍼と再使用可能な毫鍼を併用して使用している」 が40%、 「再使用可能な毫鍼のみ使用している」 が2%であった。 しかし、 単回使用毫鍼を使用していても、 本来の使用目的どおり、 単回使用を指導している割合は25%であった。 また、 施術する際、 鍼を直接手指で触れないために指サックやゴム手袋等を使用しているかを調査した。 「常に使用するように指導している」 が17%、 「使用するかどうかは各教員に任せている」 が35%、 「使用するようには指導していない」 が48%であった。
    【考察および結語】以上の結果から、 単回使用毫鍼の適正な使用法が指導されていない場合があること、 指サックやゴム手袋等の補助用具を用いた刺鍼法の実施率が低いなどの問題点が明らかとなった。 施術時の感染対策の重要性はガイドラインで示されていても、 適切な感染対策教育が実践されていない場合があり、 今後は教育の標準化をいかにして推し進めるかが課題となると考えられた。
短報
  • 古瀬 暢達, 坂本 好昭, 山本 哲也, 丸谷 賢司, 山下 仁
    原稿種別: 短報
    2011 年 61 巻 3 号 p. 238-246
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/09
    ジャーナル フリー
    【目的】鍼操作時の感染防止対策として、 抜鍼時にアルコール綿を隔てて押手を行う方法が提案されている。 しかし、 アルコール綿を使用しなければどれくらい血液汚染が広がり、 使用すればどのくらい汚染が抑えられるのかを直接観察した研究はこれまで行われていない。 そこで、 アルコール綿で鍼体を覆いながら抜鍼することによる感染リスク低減効果を検討するため、 血液に見立てた蛍光剤の付着状況を観察する実験を行った。
    【方法】施術者役は、 全盲の理療科学生2名及び全盲の鍼師有資格者2名の計4名に依頼した。 施術者役に患者役の身体3ヶ所への単刺術、 5ヶ所への置鍼術を行うよう指示し、 置鍼した部位のうち1ヶ所に蛍光剤を塗布した。 このことは施術者役に告げず、 抜鍼時にアルコール綿で鍼体を覆うセッションAと覆わないセッションBを実施させ、 患者役の体表面及び施術者役の手掌に付着した蛍光剤をデジタルカメラで撮影して観察・評価した。
    【結果】(1) 患者役の左前腕部において、 4名中3名がセッションAのみ蛍光剤の付着が見られなかった。 (2) 施術者役の押手における蛍光剤付着面積は4名中2名でセッションAの方が小さかった。 他の2名では両セッション間にほとんど差はみられなかった。 (3) 施術者役の刺手における蛍光剤付着面積は4名中3名でセッションAの方が小さかった。 他の1名では両セッション間にほとんど差はみられなかった。
    【結論】抜鍼時に鍼体をアルコール綿で覆う操作は、 刺鍼部から出血した場合の血液汚染の広がりを抑える可能性が示唆された。
(社)全日本鍼灸学会第60回学術大会 共催 日本伝統鍼灸学会第39回学術大会 一般演題抄録
国際部報告
  • 金子 泰久
    原稿種別: 国際部報告
    2011 年 61 巻 3 号 p. 349-356
    発行日: 2011年
    公開日: 2011/12/09
    ジャーナル フリー
    2011年5月7日~9日、 中国・成都のソフィテルワンダホテルにて第6回International Congress on Complementary Medicine Research(ICCMR)が開催された。 6日にはプレ・カンファレンスワークショップが成都大学で開催された。 主催はThe International Society for Complementary Medicine Research (ISCMR)。 ワークショップ4演題、 全体セッション12演題、 一般口演134演題、 ポスター発表287演題が発表され、 400名の参加があった。 演題は中国からの発表が半数を占め、 また韓国からの発表も多く見られた。 伝統医療・統合医療(Complementary and Alternative Medicine :CAM)の医学的根拠 (Evidence Based Medicine :EBM)を構築するためのランダム化比較試験 (Randomized Controlled Trial :RCT)やシステマティックレビュー(Systematic Review :SR)を行うための方法論が活発に検討され、 それらを用いた研究成果が数多く報告された。 なお、 この大会には全日本鍼灸学会国際部の依頼を受けて参加した。
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