全日本鍼灸学会雑誌
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62 巻 , 3 号
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巻頭言
教育講演
  • 山本 哲朗
    原稿種別: 教育講演
    2012 年 62 巻 3 号 p. 194-204
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/10
    ジャーナル フリー
     本稿では、 鍼灸医学の危機を救った石川日出鶴丸の足跡を辿り、 彼の目指した科学的基盤に基づいた鍼灸医学についての考察を行います。
     石川先生は、 富山県の出身で、 東京帝国大学を卒業後、 京都帝国大学の天谷教授の下で研究生活に入り、 1908年から4年間、 最先端科学が花開くヨーロッパに留学されます。 主にゲッチンゲン大学のフェルボルン教授の下で研究しますが、 短期間ながら、 ぺテルスブルグ大学のパブロフ教授や英国のスターリング教授、 シェリントン教授なども訪れています。 このヨーロッパでの経験が、 後年の研究発展へとつながるのです。 帰国後は、 京都帝国大学の教授として、 日本の生理学研究を大きく発展させ、 同時に、 鍼灸医学や心理生理学にも生理科学的手法による解析を試みられました。
    石川先生は、 神経生理学領域では、 加藤元一教授との論争で有名です。 この論争は、 神経の活動電流が、 麻酔部位で、 減衰して伝導するか(減衰論)、 減衰せずに伝導するか(不減衰論)というもので、 加藤教授が石川先生の愛弟子の一人であったことにより非常な注目を集めました。
    京都帝国大学を退官後、 1944年に三重大学医学部の前身である三重県立医学専門学校長として津市に来られ、 翌年には、 大学病院に鍼灸療法科を開設されます。 終戦後、 GHQは、 当時の鍼灸などの伝統医学が、 西洋医学の水準からすると、 科学的根拠に乏しいことから、 「鍼灸禁止令」を考えていました。 先生は、 御自身の研究結果をもとに、 GHQ関係者に鍼灸医学の科学性を説明され、 実際に鍼灸を施術してその効果も体験させ、 鍼灸の存続に貢献されます。 しかし、 この間の過労のためか、 1949年に教授会の席で脳卒中を発症し亡くなられます。
    石川先生の遺志は、 弟子の笹川久吾京都大学教授に引き継がれ、 日本鍼灸学会が結成されます。 第1回日本鍼灸学会が1954年に京都大学で開催され、 現在の隆盛へと繋がるわけです。
解説
  • 坂口 俊二, 香取 俊光, 小林 健二, 河原 保裕, 浦山 久嗣, 天野 陽介, 荒川 緑, 高橋 大希, 篠原 昭二, 形井 秀一
    原稿種別: 解説
    2012 年 62 巻 3 号 p. 205-215
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/10
    ジャーナル フリー
    【目的】経穴部位国際標準化に基づく新教科書使用から1年が経過した2010年度に、 経穴の考え方をはじめ、 国際標準化の評価、 WHO/WPRO標準経穴部位の問題点などについてアンケート調査を実施し、 経穴部位標準化が日本国内でどのように受け止められ、 実践されているかを検討した。
    【対象と方法】対象は、 あはき師養成施設の教員、 研究者、 臨床家および鍼灸関係団体とした。 2010年10月~2011年2月に、 対象施設・団体の長宛に、 第二次日本経穴委員会の作業部会が作成した調査票を郵送し、 回答を郵送、 またはFAX、 e-メールの何れかで返信してもらった。
    【結果と考察】93施設の149名から回答が得られた。 経絡経穴の考えは多様性があり、 経穴部位の標準化を評価したのは50%位であったが、 鍼灸のグローバル化にとって良いと認識されていた。 また、 骨度法に対する意見が多く、 各経穴については、 体表指標、 取穴の難しさ、 表記などに詳細な意見があった。
原著
  • 岩元 英輔, 村瀬 健太郎, 谷之口 真知子, 本石 希美
    原稿種別: 原著
    2012 年 62 巻 3 号 p. 216-225
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/10
    ジャーナル フリー
    【目的】高齢化社会が進む本邦において、 動脈硬化性疾患に対する鍼灸治療の位置付けを模索することは重要な意義があると思われる。 今回われわれは、 動脈硬化指標である脈波伝播速度 (Pulse Wave Velocity: PWV) を用いて、 薬剤とリハビリテーション、 鍼通電療法の併用が脳血栓、 脳塞栓、 脳出血患者の血管弾性に与える影響を検討したので報告する。
    【方法】対象は同意の得られた初発脳卒中患者210症例を、 病型ごとに薬物療法のみ実施する薬剤群、 薬物療法とリハビリテーションを実施するリハ群、 薬物療法、 リハビリテーションと麻痺側の手三里穴 (LI10) と合谷穴 (LI4)、 足三里穴 (ST36) と三陰交穴 (SP6) への鍼通電療法を実施する鍼通電群に無作為に割付けた。 内訳は脳血栓患者81例 (薬剤群25例、 リハ群28例、 鍼通電群28例)、 脳塞栓患者68例 (薬剤群24例、 リハ群20例、 鍼通電群24例)、 脳出血患者61例 (薬剤群20例、 リハ群21例、 鍼通電群20例)であった。 評価方法は発症2ヵ月時、 4ヵ月時、 6ヵ月時に血管弾性値、 血管狭窄度、 血圧、 心拍数を血圧脈波検査装置にて計測した。
    【結果】脳血栓の血管弾性値を、 薬剤群、 リハ群、 鍼通電群の3群間で比較した結果、 発症2ヵ月時、 4ヵ月時に有意差を認めなかったが、 6ヵ月時は薬剤群に対し、 リハ群 (p<0.05) と鍼通電群 (p<0.01) に有意な低値を認めた。 しかし血管狭窄度、 血圧、 心拍数は有意差を認めなかった。 脳塞栓と脳出血では、 いずれの期間も4項目に有意差を認めなかった。
    【結語】脳血栓、 脳塞栓、 脳出血の患者を対象に、 薬剤、 リハビリテーションに鍼通電療法を併用した影響をPWVにて検討した。 その結果、 脳血栓患者に対する鍼通電療法の併用がより有意に血管弾性値を低下させた。 これより鍼通電療法の併用は、 脳血栓の発症や再発リスクを軽減させることが示唆された。
報告
  • 宮崎 彰吾, 萩原 明人
    原稿種別: 報告
    2012 年 62 巻 3 号 p. 226-234
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/10
    ジャーナル フリー
    【目的】人々の健康増進に用いられている鍼灸療法の費用をカバーする助成金額と健康指標との関連について検討するため、 国民健康保険の保険者である各自治体が独自に設定している鍼灸療法の公的な助成金額と集団の健康状態の指標とされる平均寿命および疾病分類別の医療費との関連について検討した。
    【方法】福岡県内の85市町村を対象に、 国民健康保険の保険者である各市町村が独自にその範囲を設定している助成制度から 「鍼灸療法に対する1年間当りの助成金額の上限値」 を算出し、 「健康指標 (平均寿命、 標準化死亡比)」 及び 「医療費 (疾病分類別における入院及び入院外の1人当り実績医療費)」 との関連を検討した。
    【結果】鍼灸療法の公的な助成金額と平均寿命との間には有意かつ正の相関 (男性:r=0.53, P<0.001、 女性:r=0.44, P<0.001) が見られ、 標準化死亡比との間には有意かつ負の相関 (男性:r=-0.48, P<0.001、 女性:r=-0.34, P<0.005) が見られた。 更に、 鍼灸療法の公的な助成金額と医療費との間には有意かつ負の相関 (入院:r=-0.26, P<0.05、 入院外:r=-0.30, P<0.05) が見られた。
    【考察及び結論】鍼灸療法を利用する多くの患者は、 主に筋骨格系の症状に対する治療目的で受診している。 助成金額が高い場合ほど平均寿命が延伸するのは、 鍼灸療法によって筋骨格系疾患が改善することにより、 日常生活動作 (ADL) や身体活動量の向上につながり、 致命的な疾患 (例えば癌、 虚血性心疾患と脳血管障害) のリスクを減少したためであると考えられる。 また、 鍼灸療法が致命的な疾患あるいはその原因となる状態に直接影響している可能性も示唆された。
国際部報告
  • 金子 泰久
    原稿種別: 国際部報告
    2012 年 62 巻 3 号 p. 235-244
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/10
    ジャーナル フリー
     2012年5月15日~18日に米国オレゴン州ポートランドで2012 International Research Congress on Integrative Medicine and Health (IRCIMH) が開催された。 主催はThe International Society for Complementary Medicine Research (ISCMR) およびConsortium of Academic Health Centers for Integrative Medicine (CAHCIM) であった。 7つのワークショップ、 8つの全体セッション、 30のシンポジウム、 65の一般口演、 433のポスター発表が行われ、 参加者は約1000名であった。 NIH、 NCCAMからの研究費を受けた伝統医療・統合医療(Complementary and Alternative Medicine :CAM)の研究が数多く発表され、 その分野は鍼灸のみならずCAM全般に渡っていた。 なお本学会への参加は (社) 全日本鍼灸学会国際部からの予算で行った。
  • 関 隆志
    原稿種別: 国際部報告
    2012 年 62 巻 3 号 p. 245-256
    発行日: 2012年
    公開日: 2012/12/10
    ジャーナル フリー
     "the point where all different ideas meet" と題して、 2012年5月25日から27日まで、 ギリシャ・アテネにおいてICMARTの第15回国際会議が開催された。 参加者210名、 個々の一般演題の他に、 8つのセッションでテーマ掘り下げ、 10のワークショップを開催した。 全体的に質の高い発表だったと思われる。 同じ時間帯に行われたために聴講できなかった来場者のため、 すべての講演の内容を要約して説明する時間を毎日設けたり、 来場者に来場の動機や各国の鍼治療の現状に関するアンケートをとりその集計結果に基づいてディスカッションしたりと、 会の運営もよく工夫がなされたものになっていた。 本年から、 医師でなければ参加できないことになったとのことで、 (社) 全日本鍼灸学会国際部からの取材の要請により参加した。 小生は東日本大震災被災者の伝統医学的診断結果と治療穴について報告した。
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