全日本鍼灸学会雑誌
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63 巻, 2 号
全日本鍼灸学会雑誌
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巻頭言
特別講演
  • アンケート調査からみえてきた医療・鍼灸への要望
    石崎 直人, 矢野 忠
    原稿種別: 特別講演
    2013 年 63 巻 2 号 p. 80-89
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
    「患者満足度」 という概念は、 今や医療界の必須要件であるといえる。 鍼灸治療は、 患者と直接接する時間が長く、 病院の検査で明確に捉えられにくい症状や心理的な状態などに対処しようとするもので、 治療行為そのものに対して満足が得られやすい医療と考えられるが、 利用者を含めた一般市民が鍼灸治療に対してどのように感じているかという情報は十分に知られていない。 鍼灸治療に興味を持つ人はどのくらいいるのか? どのような人たちが鍼灸治療を受けているのか? 鍼灸治療に何を期待しているのか? 鍼灸師が心地よいだろうと思って施す治療を患者はどのように感じているのか? 診療費用や診療時間は適切か? どのような治療をすれば満足が得られるのか? これらの疑問に答えるために我々は東洋療法研修試験財団の研究助成を受けて一般市民を対象とした全国規模の調査を実施してきた。 2003年3月から計6回にわたって実施した調査の結果には、 様々な情報が含まれている。 今回はこれらのデータを基に、 鍼灸治療の継続的な利用者や、 鍼灸治療に興味を持ちながらも受療経験を持たない者、 あるいは鍼灸治療についての関心が少ない者など、 様々な立場から見た鍼灸治療の実態についてまとめた結果を報告する。
パネルディスカッション
  • 我々が進むべき患者の医学とは
    吉村 治美, 高橋 大希, 伊藤 和憲, 奥田 一道, 津田 昌樹
    原稿種別: パネルディスカッション
    2013 年 63 巻 2 号 p. 90-99
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
     近年、 社会構造の急速な変化の中で求められる医療の形も変わりつつあり、 鍼灸業界においても今後の方向性を模索する必要がある。 そこで医療の中心である 「患者」 をキーワードとし、 「患者のための鍼灸学とは何か?」 という視点から議論を行った。
     その結果、 日本鍼灸の長い歴史の中で行われてきた数多くの臨床・教育・研究は、 すべて 「患者のため」 であることは事実だが、 その検証方法や各領域の連携については改善の余地があり、 本当の意味で患者の視点に立った鍼灸学を構築する必要性があることが確認された。
総説
  • 古瀬 暢達, 山下 仁, 増山 祥子, 江川 雅人, 楳田 高士
    原稿種別: 総説
    2013 年 63 巻 2 号 p. 100-114
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
    【目的】2007年から2011年にかけて医学雑誌に掲載された鍼灸臨床における有害事象症例を把握するため。
    【方法】医中誌Web及びPubMedを用いて、 国内及び海外において発表された鍼灸に関連する有害事象の論文を検索した。 検索に際しては、 鍼灸と各種有害事象のキーワードを用いた。
    【結果】国内は39文献39症例が収集され、 感染症7件・臓器損傷11件・伏鍼・異物8件・神経損傷6件・皮膚疾患1件・灸による事象4件・その他2件であった。 海外は60文献が収集され、 感染19件 (うち、 集団発生例2件)・臓器損傷13件・伏鍼・異物5件・神経損傷9件・皮膚疾患5件・灸による事象2件・その他7件であった。
    【結論】因果関係が不明な症例もあるが、 感染・臓器損傷・伏鍼の有害事象に占める割合は依然高かった。 安全性に関する情報を収集して鍼灸師にフィードバックする作業を継続的に行う必要性が示唆された。
臨床体験レポート
  • 古田 大河, 鈴木 雅雄, 竹田 太郎, 福田 文彦, 石崎 直人, 苗村 健治
    原稿種別: 臨床体験レポート
    2013 年 63 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
    【緒言】薬物性肝障害発症のため薬剤中止と入院加療を余儀なくされ、 それに伴い不眠、 不安感などのうつ症状の再燃を認めたうつ病患者に対して鍼治療の介入を試みたところ、 これらの症状の改善を認めた症例を報告する。
    【症例】症例:37歳男性。 主訴は不眠、 不安感。 平成23年6月に精神科 (クリニック) にてうつ病と診断され不眠や不安感などのうつ症状に対して内服治療が開始されたが、 3ヵ月後に薬物性肝障害を発症したため、 本学附属病院内科へ入院し服薬を中止した。 その結果、 不眠や不安感などのうつ症状の再燃が認められたが、 薬剤が使用できないため主治医の指示により鍼治療を開始した。 方法:鍼治療は不眠や不安感などのうつ症状に対して弁証論治を行なった。 睡眠状態の評価として、 睡眠時間を記録し、 熟睡感については 「ある」、 「ない」 の2段階スケールで評価した。 うつ症状についてはベックうつ病評価尺度 (Beck Depression Inventory:BDI) を入院時、 鍼治療5回目、 退院時の3回評価した。
    【経過】入院時の睡眠時間は2~3時間程度であり、 熟睡感も得られていなかったが、 鍼治療2回目後の睡眠時間は9時間と大幅に改善し熟睡感も得られた。 治療4回目には5時間の睡眠時間と熟睡感が得られ、 退院まで同程度の睡眠状態が維持された。 BDIスコアについても、 入院時24点と 「中程度のうつ状態」 であったものが、 鍼治療継続により退院時には8点と 「正常範囲」 となり、 改善が認められた。 また、 薬物性肝障害の状態も徐々に改善を認め入院19病日に退院となった。
    【結語】薬物性肝障害発症により抗うつ薬の中断を余儀なくされた結果、 不眠、 不安感などのうつ症状が再燃した患者に対して鍼治療を行った結果、 不眠や不安感の改善が認められた。 鍼治療は本症例における薬物性肝障害の原因となった薬物の代替的役割を担うことができたと考えられた。
その他(論考)
  • 中国哲学を基盤とした「美」
    王 財源, 大形 徹
    原稿種別: その他(論考)
    2013 年 63 巻 2 号 p. 123-131
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
    目的】鍼灸による 「美」 がここ数年話題になっている。 しかしながら、 東洋思想を根幹とした、 本質的な 「美」 については論じられていない。 そこで東洋の思想哲学より 「美」 に対する概念を考察し、 鍼灸美容教育の構築に還元する。
    【方法】 「美」 意識を医書 『黄帝内経』 や哲学書 『論語』 『淮南子』 等々より検討した。
    【結果】内部(徳・善)と外部の調和(形神の合一)に 「美」 を保つポイントがある。 このことが書誌学上において、 「美」 意識の代名詞となる考え方として深く潜んでいた。
    【結論】古典書にみる共通した内外表裏の関係により、 内面(徳・善)の変革こそが外表の 「美」 を創出する。 即ち、 本来の 「美」 とは心(内)身(外)にみえる内なる輝きにこ
    そ 「美の実像」 (人間力の内実)があることが示唆された。
国際部報告
  • 若山 育郎, 石崎 直人, 斉藤 宗則, 鶴 浩幸, 深澤 洋滋
    原稿種別: 国際部報告
    2013 年 63 巻 2 号 p. 132-140
    発行日: 2013年
    公開日: 2013/10/08
    ジャーナル フリー
     2012年度世界鍼灸学会連合会 (WFAS) 国際シンポジウムは、 2012年11月16日 (金) ~18日 (日) の3日間、 インドネシア・ジャワ島の首都ジャカルタから車で西へ約3時間のところにあるバンドン市内のMason Pines Hotelで開催された。 インドネシアにおける開催は2006年にバリ島で開催されて以来である。 前回と同じくPAKSI (The National Acupuncture Union of Indonesia) が主催し、 会頭も同じくDr. Tomi Hardjatnoであった。
     学会は2部構成で、 16日 (金) にワークショップ、 17日 (土) と18日 (日) にWFASシンポジウムが開催された。 参加者はワークショップ109名、 シンポジウム260名で、 24か国から鍼灸研究者が集まった。 WFASシンポジウムでは、 基調講演が7題、 一般演題は51題で、 日本からは5題の発表があった。
     また、 WFAS第7次執行理事会第4セッションが16日 (金) の午前10時~午後6時にかけて開催され、 定款の改定を含め種々検討された。
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