【目的】鍼灸治療において、 温筒灸は簡便に用いられているが、 灸を途中で取り除くタイミングは施術者により異なっている。 そこで、 灸の刺激時間が局所の循環改善に及ぼす影響について、 近赤外線分光法 (NIRS:Near Infrared Spectroscopy) を用いて筋組織の血液酸素化動態の変化により比較検討した。
【方法】インフォームドコンセントを行った健康成人 12 名を対象とし、 右肩上部に温筒灸を 1 壮行い、 組織血液酸素化動態 (ΔOxy-Hb,ΔTotal-Hb) を 0.5 秒毎に測定した。 実験は、 まず control (対照) が介入なしで 15 分間測定し、 施灸群は、 測定開始 2 分後に施灸し、 熱痛を感じてから 30 秒後に取り除く (除去 30)、 熱痛を感じてから 45 秒後に取り除く (除去 45)、 取り除かない (継続) の 4 通りを比較した。 あわせて灸の燃焼温度ならびに施灸部位の皮膚温、 熱痛感覚の強さを測定した。
【結果】対照に対し、 除去 30、 除去 45、 継続はΔOxy-Hb、 ΔTotal-Hb、 皮膚温において有意な増加がみられ、 施灸群の間に有意差はみられなかった。 熱痛感覚の強さについても施灸群の間で有意差はなかった。 施灸群ともに、 熱痛を感じ始める前後からΔ Total -Hb、 ΔOxy-Hb ともに急激に増加を始めていることから、 熱痛の侵害刺激による軸索反射が血液量と動脈血を増加させていると考えられた。
【結論】温筒灸施術において、 熱痛を感じてから 30 秒以上付け続けることによって筋組織の血流が改善されることが示唆された。
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