【目的】国内の鍼灸に関連した有害事象の現状を明らかにするために、 整形外科医を対象としたアンケート調査を実施した。
【方法】対象は、 i タウンページ (http://itp.ne.jp) の 「整形外科」 に登録された全国の病院・医院・診療所 13,225 件のうち無作為に抽出した 6,000 件とした。 アンケート用紙は、 2011 年 10 月初旬 (3,500 件) と 2012 年7月初旬 (2,500 件) の2回に分けて郵送した。 アンケート項目は、 1) 回答者のプロフィール (免許取得後年数)、 2) 自院内での鍼灸施術の有無、 3) 2006~2011 年における鍼灸に関連した有害事象患者の診療経験 (鍼灸の区分、 有害事象、 特記事項)、 4) 鍼灸の安全性に対する意見とした。 なお、 アンケートは無記名式とした。
【結果】回収率は 10.7% (639/6,000 件) であった。 1) 回答者の免許取得後年数は 30±11 年 (平均±標準偏差) であった。 2) 自院内で鍼灸を行っているとの回答は有効回答数の 18.6% (118/636 件) であった。 3) 鍼あるいは鍼通電に関連した有害事象では、 伏鍼・折鍼 (148 件以上)、 出血 (64 件以上)、 感染 (40 件以上)、 臓器損傷 (28 件) が上位を占めた。 伏鍼・折鍼では伏鍼 (145 件以上) が、 出血では皮下出血 (63 件) が、 感染では関節炎 (17 件) が、 臓器損傷では気胸 (27 件) が最も多かった。 灸に関連した有害事象では、 熱傷 (121 件以上)、 感染 (16 件)、 その他 (2件) であった。 熱傷ではⅠ度熱傷およびⅡ度熱傷 (102 件以上) が、 感染では化膿 (11 件) が最も多かった。 鍼灸に関連した有害事象のほとんどは既知のものであった。 4) 鍼灸の安全性に対する意見では、 感染対策 (27 件)、 教育・技術レベル (13 件)、 伏鍼・折鍼 (13 件) に関するものが多かった。
【結論】鍼灸に関連した重大な有害事象は、 過去の調査や症例報告から予想されるよりも多く発生していることが示唆された。 鍼灸の安全性の向上のためには、 教育・啓発活動を通じて既存の安全対策を周知徹底することが重要であり、 さらには新たな安全対策の考案、 継続的な調査およびフィードバックが必要であると考えられた。
抄録全体を表示