全日本鍼灸学会雑誌
Online ISSN : 1882-661X
Print ISSN : 0285-9955
ISSN-L : 0285-9955
64 巻, 1 号
全日本鍼灸学会雑誌
選択された号の論文の6件中1~6を表示しています
巻頭言
シンポジウム
  • 篠原 昭二, 原口 勝, 福田 文彦, 岩崎 瑞枝
    原稿種別: シンポジウム
    2014 年 64 巻 1 号 p. 2-17
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/23
    ジャーナル フリー
     世界的な長寿を誇る我が国において、 死因の第 1 位を占めるのががんであるが、 時に耐えがたい苦痛を伴う場合がある。 そういった苦痛を緩和するための専門的な施設として緩和ケア病棟や拠点病院における緩和ケアチームの設置などが積極的に行われている。 一方、 疼痛緩和の手段として WHO 方式による麻薬を使った方法も確立されているが、 それでもターミナルの中期から後期にかけての患者さんでは十分なペインコントロールが出来ていないケースが少なくない。 そんな愁訴に対して、 徐々に鍼灸治療やハウトケア始め、 種々の代替療法が行われているが、 その実態や効果等、 不明な点が多い。 そこで今回、 緩和ケアの実態を理解するとともに、 鍼灸治療のエビデンスや疼痛緩和手段の一つとしてのハウトケアを取り上げ、 討論することとした。
セミナー
  • 橋本 洋一郎, 鳥海 春樹, 菊池 友和, 篠原 昭二, 粕谷 大智
    原稿種別: セミナー
    2014 年 64 巻 1 号 p. 18-36
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/23
    ジャーナル フリー
     頭痛に対する鍼灸の効果と現状を総合テーマとして、 当該領域のレビューを行った。 はじめに、 西洋医学的な立場から一次性頭痛や二次性頭痛の鑑別や治療効果を中心に紹介した。 次に、 鍼灸治療の治効機序に関して、 基礎研究の成果を文献に基づき紹介した。 最後に、 頭痛に対する鍼灸治療の臨床効果を文献に基づき解説し、 緊張型頭痛や片頭痛に効果が示されていることを紹介した。 以上の結果から、 鍼灸治療は一次性頭痛に対して臨床効果が報告されており特に、 episodic な頭痛に対して有効である可能性が示唆された。
原著
  • -日本で実施されたRCT のシステマティックレビュー-
    下市 善紀, 春木 淳二, 若山 育郎
    原稿種別: 原著
    2014 年 64 巻 1 号 p. 37-53
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/23
    ジャーナル フリー
    【目的】日本で実施された腰痛に対する鍼の randomized controlled trial (RCT) をレビューし、 「日本の鍼治療」 が 「日本人の腰痛」 に対して有効であるかどうかを検証する。
    【方法】医学中央雑誌、 PubMed などのデータベース検索およびデータベース掲載のない論文については日本鍼灸治療学会誌、 日本東洋医学会誌などの雑誌のハンドサーチを行い、 論文を抽出した。 収集した論文は、 Modified Jadad Quality Score と改編 Chalmers Score (Chalmers Score を一部鍼灸用に改編したもの) を用いて質を評価し、 Cochrane Review Manager 5 を用いて meta-analysis (MA)を行った。
    【結果】19 編の研究論文が抽出された。 Modified Jadad Quality Score は、 最高 5 点で最低 1 点、 平均 3.5 点であった。 改編 Chalmers Score は、 50 点以上が 2 編、 平均 34 点であった。 19 編の研究論文から 2 つのサブグループを作り 3 つの MA を行った。 (1)マニュアル (置鍼) と偽鍼を比較した 5 編で、 Visual analogue scale (VAS) を評価項目としたものは、 VAS の standardized mean difference (SMD) が-1.79 (95%信頼区間-2.89~-0.69) となり、 マニュアル刺激に置鍼を加えた治療は、 偽鍼と比較し有意な腰痛軽減効果が確認された(P =0.001)。 (2)マニュアル (置鍼) と偽鍼を比較した 3 編で、 Roland Morris Disability Questionnaire (RDQ) を評価項目としたものは、 RDQ の SMD が-1.23 (95%信頼区間-2.07~-0.38) となり、 マニュアル刺激に置鍼を加えた治療は、 偽鍼と比較し有意な腰痛軽減効果が確認された(P =0.004)。 (3)マニュアル (雀啄術) と偽鍼を比較した 3 編で、 VAS を評価項目としたものは、 VAS の SMD が-0.49(95%信頼区間-0.98~-0.00) となり、 マニュアル (雀啄術) 刺激は、 偽鍼と比較し有意な腰痛軽減効果が確認された (P =0.05)。
    【結論】今回収集した研究論文の質については、 簡便な評価法である Modified Jadad Quality Score は比較的得点が高い傾向にあったが、 より詳細な質の評価を行う改編 Chalmers Score では得点が低く今後の改善が期待される。 MA では、 鍼治療は偽鍼に比べ有効性が示唆されるという結果であったが、 研究者に偏りがあった。 日本における腰痛に対する鍼治療の効果を確定するには、 今後同様の手法を用いた複数の研究者による再現性の確認とさらに大規模な臨床試験が必要と考えられた。
報告
  • 新原 寿志, 長岡 里美, 小笠原 千絵, 日野 こころ, 谷口 博志, 角谷 英治
    原稿種別: 報告
    2014 年 64 巻 1 号 p. 54-64
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/23
    ジャーナル フリー
    【目的】国内の鍼灸に関連した有害事象の現状を明らかにするために、 整形外科医を対象としたアンケート調査を実施した。
    【方法】対象は、 i タウンページ (http://itp.ne.jp) の 「整形外科」 に登録された全国の病院・医院・診療所 13,225 件のうち無作為に抽出した 6,000 件とした。 アンケート用紙は、 2011 年 10 月初旬 (3,500 件) と 2012 年7月初旬 (2,500 件) の2回に分けて郵送した。 アンケート項目は、 1) 回答者のプロフィール (免許取得後年数)、 2) 自院内での鍼灸施術の有無、 3) 2006~2011 年における鍼灸に関連した有害事象患者の診療経験 (鍼灸の区分、 有害事象、 特記事項)、 4) 鍼灸の安全性に対する意見とした。 なお、 アンケートは無記名式とした。
    【結果】回収率は 10.7% (639/6,000 件) であった。 1) 回答者の免許取得後年数は 30±11 年 (平均±標準偏差) であった。 2) 自院内で鍼灸を行っているとの回答は有効回答数の 18.6% (118/636 件) であった。 3) 鍼あるいは鍼通電に関連した有害事象では、 伏鍼・折鍼 (148 件以上)、 出血 (64 件以上)、 感染 (40 件以上)、 臓器損傷 (28 件) が上位を占めた。 伏鍼・折鍼では伏鍼 (145 件以上) が、 出血では皮下出血 (63 件) が、 感染では関節炎 (17 件) が、 臓器損傷では気胸 (27 件) が最も多かった。 灸に関連した有害事象では、 熱傷 (121 件以上)、 感染 (16 件)、 その他 (2件) であった。 熱傷ではⅠ度熱傷およびⅡ度熱傷 (102 件以上) が、 感染では化膿 (11 件) が最も多かった。 鍼灸に関連した有害事象のほとんどは既知のものであった。 4) 鍼灸の安全性に対する意見では、 感染対策 (27 件)、 教育・技術レベル (13 件)、 伏鍼・折鍼 (13 件) に関するものが多かった。
    【結論】鍼灸に関連した重大な有害事象は、 過去の調査や症例報告から予想されるよりも多く発生していることが示唆された。 鍼灸の安全性の向上のためには、 教育・啓発活動を通じて既存の安全対策を周知徹底することが重要であり、 さらには新たな安全対策の考案、 継続的な調査およびフィードバックが必要であると考えられた。
国際部報告
  • -2013WFAS オーストラリア・シドニー総会・学術大会参加報告
    若山 育郎, 石崎 直人, 斉藤 宗則, 鶴 浩幸, 深澤 洋滋
    原稿種別: 国際部報告
    2014 年 64 巻 1 号 p. 65-75
    発行日: 2014年
    公開日: 2014/04/23
    ジャーナル フリー
     世界鍼灸学会連合会 (WFAS) では、 4年に1度開催される総会で会長以下執行理事の改選と向後4年間の大会開催地が決定される。 我が国は 1993 年の京都における第3回世界鍼灸学会学術大会を開催して以来、 20 年間 WFAS の大会を開催して来なかったが、 今回 2013 年 11 月1日 (金) にオーストラリア・シドニー (Sydney Convention Centre Darling Harbour) で開催された第8回 WFAS 総会において、 全日本鍼灸学会と日本伝統鍼灸学会の共催により 23 年ぶりに WFAS 年次大会を東京に招致することが承認された。
     また、 執行理事の改選で日本からは、 副会長として形井秀一 (日本伝統鍼灸学会会長・筑波技術大学)、 執行理事として若山育郎 (全日本鍼灸学会国際部長・関西医療大学)、 石崎直人 (全日本鍼灸学会国際部・明治国際医療大学) が選任された。 任期は4年である。 さらに津谷喜一郎 WFAS 副会長の退任に伴う名誉副会長への就任、 黒須幸男 WFAS 名誉副会長の顧問への就任も併せて承認された。
     学術大会は 11 月2日 (土) から3日間にわたって開催された。 西洋圏での開催らしく中国語での発表よりも英語での発表が圧倒的に多かった。 日本からの演題は、 招待講演 1 題、 一般発表 13 題であった。
feedback
Top