全日本鍼灸学会雑誌
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70 巻 , 3 号
全日本鍼灸学会雑誌
選択された号の論文の7件中1~7を表示しています
巻頭言
京都大会 一般演題抄録
原著
  • 池田 朋子, 田口 玲奈, 北小路 博司
    原稿種別: 原著
    2020 年 70 巻 3 号 p. 230-241
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル フリー
    【目的】全国の不妊クリニックを対象に、不妊治療における鍼灸の認識やその導入の実態を明らかにし、今後の不妊鍼灸における問題点を考察する。 【対象と方法】2015年9月現在、(公社)日本産科婦人科学会ホームページ上で「体外受精・胚移植の臨床実施に関する登録施設」、「ヒト胚および卵子の凍結保存と移植に関する登録施設」、「顕微授精に関する登録施設」の全てに該当する547施設を対象に、郵送による無記名のアンケート調査を行った。 【結果】有効回収率は28.5% (156/547通) で、回答者の82.7%を医師が占めた。不妊治療における鍼灸は55.1%で認知されていた。しかし、実際に鍼灸を導入している施設は8.3%で、72.0%では今後も導入予定はなかった。鍼灸を導入している施設は婦人科医院が最も多く、鍼灸導入状況と病院形態に関連性がみられた(p=0.037)。また、鍼灸導入と情報源の有無には関連性がみられた(p=0.0009)。鍼灸の導入目的には、「精神的ストレスの緩和」が75.9%と最多であったが、導入しない理由としては、「鍼灸治療に十分なエビデンスがあると感じられないため」が59.3%と多かった。 【結論】現在、鍼灸を導入しているクリニックは少数であるが、今後、比較研究などエビデンスに基づいた、医師や患者にも分かりやすい鍼灸治療の有効性を示す必要があると考えられた。また、鍼灸師が他の医療従事者と同等のレベルで不妊治療について意見・情報交換ができるようになれば、クリニック内での導入や、クリニックと提携して治療を行う鍼灸院が増える可能性があり、鍼灸師のレベル向上が求められる。
  • 玉木 奈美, 久下 浩史, 辻 涼太
    原稿種別: 原著
    2020 年 70 巻 3 号 p. 242-249
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル フリー
    【目的】エステティックサロンでは、フェイシャルケアと顔面部を中心とした鍼灸施術併用・単独施術が行われている。そこで、フェイシャルケアに顔面部を中心とした鍼灸併用施術と鍼灸単独施術に対する自覚的満足度を検討した。 【方法】対象は、本調査に同意したフェイシャルケアの施術受療者44名、年齢44.1± 10.1 歳とした。本研究は、森ノ宮医療大学の倫理審査会承認後に行った。フェイシャルケアと鍼灸併用施術は、フェイシャルパックやゴマージュなどのケア(約30分)をエステシャンが行った後、顔面部を中心とした鍼灸施術 (約30分)を鍼灸師が行った群13名と鍼灸単独施術(約30分)を行った群31名とした。評価は、演者らが作成した顔検査票(facial check sheet: FCS)「1.目じりのしわ、2.眉間のしわ、3.おでこのしわ、4.ホウレイ線、5.ゴルゴライン、6.マリオネットライン、7.目元のたるみ、8.頬のたるみ、9.口元のたるみ、10.フェイスライン、11.血色(くすみ)、12.しみ」を用いた。FCSの配点は、順序尺度「1.全く気にならない、2.少し気になる、3.どちらかと言えば気になる、4.気になる、5.かなり気になる」の5段階とし、鏡を見ながら自己で施術前(Pre)・後(Post)で行った。解析は、併用群と単独群におけるFCSの経過の比較を混合モデルによる二元配置分散分析で行った。各群の施術前後はWelch検定した。 【結果】FCS値は、併用群がPre4.24±0.2点からPost2.55±0.2点、単独群がPre3.47±0.2点からPost2.48±0.1点と顔の気になる状態が軽減した。2群間の施術前後の間に交互作用を示した。 【結語】フェイシャルケアと鍼灸施術併用は、顔面部を中心とした鍼灸単独施術よりも顔状態に対する自覚的評価による満足度が高かった。
報告
  • -欧州 (英国、 ドイツ、 フランス) -
    安藤 文紀, 鶴 浩幸, 北小路 博司
    原稿種別: 報告
    2020 年 70 巻 3 号 p. 250-258
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル フリー
    【目的】欧州先進国である英国・ドイツ・フランスの鍼の制度や状況を調査し、我が国で鍼が更に発展する課題を検討する。 【方法】2019年に英国・ドイツ・フランスについて、PubMed.gov、scholar.google.com、google.comでacupuncture、regulation、license、education、health insurance、surveyなどのキーワードを用いて英語文献を検索した。 【結果】3国とも医師など医療専門職が医療施設で鍼を行い、条件を満たした医療専門職の鍼は医療保障制度の対象となっていた。英国・ドイツでは非医療専門職が医療制度外で鍼施術をおこなっていた。英国の医療専門職は専門職団体で鍼の教育を受け、非医療専門職は大学などで鍼の専門教育を受け、卒業後は自主規制機関に所属し毎年生涯研修を受けていた。医師は卒後研修としてドイツでは2年、フランスでは3年の鍼教育を受け修了後は資格認定やディプロマ授与がされていた。英国・フランスの医師の教育では、西洋医学として鍼の臨床教育が行われていた。英国医師の鍼の使用率が約60%、ドイツ家庭医の約30%が鍼の認定資格を保有、フランスの医師の2%~34%が鍼を実施する等の報告があった。慢性疼痛保有者の鍼受療経験は、英国・フランスでは12%、ドイツでは16%との報告があり、英国の鍼受療者の約24%、ドイツの鍼・指圧の受療者の約62%は医師から推奨されて受療していた。 【結論】日本の鍼が更に発展するために、欧州で行われている次の4つを検討することは有意義と考えられる。1. 鍼の独自性に十分留意し、医療施設で公的医療保険の対象となる鍼の実施。2. 鍼とはり師に対する医師の認識・理解の促進。3. 医師に対する西洋医学としての鍼の教育。4. はり師が毎年生涯研修を実施するための自主規制機関への所属
臨床体験レポート
  • 単一事例研究法による検討
    佐々木 治子, 中村 真通
    原稿種別: 臨床体験レポート
    2020 年 70 巻 3 号 p. 259-266
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル フリー
    【目的】成人の脂漏性皮膚炎は難治とされており、頭皮の落屑といった外見上の問題による精神的な苦痛は大きい。本研究では、脂漏性皮膚炎と診断され、薬剤、食事、サプリメント、シャンプーなどあらゆる方法を4年間試すも、頭皮の落屑に効果が出なかったという患者を対象に鍼治療を行い、その有効性について検討を行った。 【方法】四診により陽明実熱証とみなした40代男性患者に対し、治法を清熱生津・安神寧心として中医学的に治療を行った。使用経穴は、通導利水清熱を目的に陰陵泉・尺沢・肺兪・脾兪、泄湿熱を目的に曲池・陽陵泉・三陰交、疏肝理気を目的に太衝・合谷・膈兪、安神寧心を目的に内関・百会とした。刺入方向は腹部の緊張が緩む向きとし、置鍼は仰臥位30分、腹臥位10分とした。治療期間はX年 3月~8月の 6ヶ月間とし、介入期1、非介入期、介入期 2を各2ヶ月間とするABA方式で、施術は週 2回行った。落屑量については、就寝時肩より上の範囲に黒いタオルを敷いてもらい、翌朝タオルの写真撮影と落屑の形状の変化を記録した。合わせてデジタルスケールを用いて、落屑量を毎日計測した。そして、介入期と非介入期の落屑量の変化と 1ヶ月の平均値を算出し、結果を検討した。 【結果】落屑量は、介入期1:3月0.379g、4月0.047g、非介入期:5月0.050g、6月0.135g、介入期2:7月0.031g、8月0.026gとなった。介入期1では治療 2ヶ月で減少し、非介入期 2ヶ月目には 2倍以上に増えた。介入期2では再び減り、最終月は最も少なくなった。 【考察】弁証論治、刺鍼の方法、置鍼時間が落屑量の減少に作用したと考えた。 【結語】定期的な鍼治療は、脂漏性皮膚炎に効果のある方法の一つとして示唆された。
国際部報告
  • 鶴 浩幸
    原稿種別: 国際部報告
    2020 年 70 巻 3 号 p. 267-276
    発行日: 2020年
    公開日: 2021/10/28
    ジャーナル フリー
     本稿では、ポルトガルにおけるA.P.A.E.Medical Doctors Group、Federacao Portuguesa de Medicina IntegrativaおよびClinica Tsuchiyaなどで教育、実践されている主要な鍼診療法の1つである土屋式鍼治療について紹介する。A.P.A.E.Medical Doctors Groupはポルトガルにおける医師を中心とした主要な鍼医学の協会である。土屋式鍼治療は麻酔科医である土屋光春 教授が主にポルトガルを中心に40年以上にわたって行った診療の臨床実績およびSaint Louis病院などにおける研究から導き出された一連の実践的鍼治療法である。土屋式鍼治療において頻繁に使用されるのは「Pica-Pau(ピカパウ)」とよばれる独特の断続的高頻度鍼通電療法 (100-200Hz) であり、Pica-Pauと低頻度鍼通電療法 (1-10Hz) などを組み合わせて行う(狭義の)コンビネーション治療が特徴的である。また、併用治療として通常の鍼、灸、ホットパックまたはアイシング、ホットパック/アイシングなどによる同時刺激法または交換刺激法のほか、指圧、皮内鍼、円皮鍼、テーピング、刺絡などを用いることも(広義の)コンビネーション治療として重要である。Clinica Tsuchiyaなどでは種々の疾病、症状の患者が鍼治療を受けており、その効果が長期間におよぶことも珍しくはない。多くの患者が鍼治療に大きな希望を見出していると感じられる。筆者は土屋式鍼治療の治療実績も含めて鍼の広範囲かつ長期間におよぶ効果を説明するためには、仮説として、①局所と全身との関係性(主訴に対する直接的作用と間接的作用)、②人体各部の相互作用、相互影響、③長期効果(複合的効果)、などの視点から鍼医学に関する研究や考察を行う必要があると考えている。最後に、鍼治療がその真価を世界中で正当に評価され、かつ、西洋医学とも手を携えて、患者や社会の利益のために充分に活用されることを願って止まない。
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