【背景】2019年末から2020年に新型コロナウイルスパンデミックが発生し、医療機関では従来の対策に加えて新たな感染予防策が求められた。日本国内のあん摩マッサージ指圧・鍼・灸(以下、あはき)施術所でも各種情報を基に対策を実施していたと推測されるが、実態は明らかでない。本調査は、今後の感染対策の基礎資料を作成することを目的とし、パンデミック下におけるあはき施術所の感染対策の状況を明らかにする。【方法】2023年7月~9月に全国のあはき師を対象にオンラインアンケートを実施した。【結果】入力された343件の回答のうち、回答に同意し、かつ、重複回答を除く328件の回答を解析した。感染対策の情報源としては「厚生労働省の情報」が最も多く(277件)、次いで「職能団体によるガイドライン」(191件)が回答された。換気対策 (320件)、施術者のマスク着用 (320件)、患者同士の距離確保(284件)、手指衛生(手洗いの頻度増加187件、手指消毒の頻度増加214件) などの感染対策が実施されていた。勤務施設で新型コロナウイルス感染が起こったと思われる事例の経験があったという回答は38件であった。二項ロジスティクス分析の結果、患者から施術者の感染に関しては、遮蔽物の設置で感染リスクが高くなる傾向が示された。【考察】回答した多くのあはき師は公的機関や職能団体が発信する情報を重視し、必要な感染対策を実施していたことが考えられる。一方、各種の指針やガイドラインに沿わないような、適切性に欠ける行動を選択したあはき師も少数ながら認められ、卒後教育も重要であると思われる。【結語】多くのあはき師が信頼できる情報に基づき必要な感染対策を実施していたことが示された。一方、各種の指針やガイドラインに沿わないような、適切性に欠ける行動を選択したあはき師も少数ながら認められた。
【目的】妊娠中から産後にかけて遷延していた仙腸関節部の痛みが悪化し、日常生活に支障をきたしていた女性に対して鍼灸治療を行ったので報告する。【症例】40歳代の女性。主訴は仙腸関節部の痛み。X-7ヶ月に第2子を出産。産後半年を待たずに職場復帰をした。X-1ヶ月、第2子妊娠中から抱えていた仙腸関節部の痛みが悪化し、育児・家事がままならない状態が続いている。A病院を受診し仙腸関節障害と診断され、処方された鎮痛薬や湿布等で経過観察するも改善がみられないため、B大学附属鍼灸センターを受診した。坐位姿勢や前傾姿勢の保持が最もつらく、最大圧痛部は仙腸関節部に限局していた。ペインスケール(Pain Scale: PS)は7、仙腸関節障害スコアは7点、指床間距離(Finger-Floor Distance: FFD)は+51cmであった。鎮痛と腰殿部の筋緊張緩和を目的に鍼灸治療を開始した。患者は鍼灸治療の経験者であったが、鍼特有の感覚が苦手であるとの申告を受け、使用鍼はより細い鍼を選択、刺入深度は切皮程度、強刺激や切皮痛を避けて局所のみに施術するなどの治療計画を共有し同意を得た。【経過】2診目に「筋が緩んだ感覚がしてかなり楽になった」とのコメントが得られ、5診目には服薬や湿布薬が必要なくなり良好な経過を辿ったが、9診目に週末の育児による症状の増悪がみられた。しかしその後は快方に向かい、15診目にはPSが1、仙腸関節障害スコアが2点、FFDが+6cmとなった。当初あった仙腸関節周囲の痛みはほぼなくなり、日常生活にも支障がなくなったため治療終了となった。【考察・結語】妊娠中から遷延していた仙腸関節部の痛みを訴える症例に対して鍼灸治療を行なったところ、速やかに痛みの軽減が認められた。このことから、産後の仙腸関節障害に対して鍼灸治療は有用であることが示唆された。
韓国の大韓鍼灸医学会の仲介により2024年11月から全日本鍼灸学会と台湾の中華針灸醫學會との学術交流がはじまった。その一環として、2026年2月1日に開催された台中市での中華針灸醫學會学術総会に招聘され、本会国際部の若山、鶴、増山の3名が参加した。台湾の鍼灸研究者とは、これまで国際東洋医学会(ICOM)や世界鍼灸学会連合会(WFAS)の年次大会において若干の交流はあったものの、学会単位での公式の交流は始まったばかりである。本稿では、台湾での学術総会における日韓台の代表による講演の概要と今後の3学会学術交流の展望について解説する。本会としては、韓国に加えて台湾を含めた3者間の連携を今後も重視し、東アジアにおける鍼灸学術交流を発展させていきたいと考えている。