日本航空医療学会雑誌
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最新号
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原著
  • 山川 泰明, 浅羽 直, 釣井 採香, 津野 龍太郎, 畠中 茉莉子, 盛實 篤史, 齋坂 雄一
    原稿種別: 原著
    2025 年26 巻3 号 p. 3-6
    発行日: 2025/12/15
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

     ドクターヘリの安全な運用・運航のための基準において切断指肢はドクターヘリの要請対象とされているが、切断指症例はドクターヘリ搬送とすべきかを検討した。

     2014年~2023年にドクターヘリ搬送要請された手指切断ならびにそれに準ずる開放骨折症例61例を対象とした。年齢平均52歳、男性49例、女性12例、受傷機転は回転体20例、挟まれ19例、巻き込まれ13例などであった。ヘリ要請タイミングは覚知要請が34例、現着後要請が18例、転院搬送が9例であり、ヘリ要請理由は「切断」が46例(75%)と最多だった。搬送時間は中央値66分であり、ドクターヘリによる搬送短縮時間は中央値56分であった。当院搬送35例のうち切断指が13例18指、開放骨折が22例であり、再接着に至ったものは6例8指(17.1%)であった。再接着例における覚知から手術開始までの時間は中央値217分であった。

     切断指におけるドクターヘリ搬送の大きなメリットは搬送時間の短縮だが、近年では切断指の待機的手術も選択されるようになり、そのメリットも薄らいでいる。再接着にいたらない症例も多く、切断指症例に対するドクターヘリ搬送は再考されてもよいと考えられた。

  • 河野 伶奈, 金田 浩太郎, 綾田 亮, 井上 智顕, 八木 雄史, 戸谷 昌樹, 藤田 基, 鶴田 良介
    原稿種別: 原著
    2025 年26 巻3 号 p. 7-15
    発行日: 2025/12/15
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    【背景】ドクターヘリ出動における現場滞在時間の延長要因に関する報告は限られている。本研究では、日本航空医療学会ドクターヘリ全国症例登録システム(JSAS-R)のデータを用い、延長要因を検討した。

    【方法】2020年4月1日~2022年3月31日にJSAS-Rへ登録されたドクターヘリ出動データを解析し、現場出動ミッションを対象とした。現場滞在時間の中央値を基準として長期滞在群と短期滞在群に分類し、単変量解析および多変量解析を実施した。

    【結果】対象は長期滞在群21,516件、短期滞在群22,213件であり、現場滞在時間の中央値は15分であった。多変量解析の結果、外傷、緊急度、バイタルサイン、重症度、多数傷病者、現場進出、ドクターヘリ搬送、搭乗医師数の少なさ、各種検査・処置の実施が延長と関連していた。

    【結語】現場滞在時間の短縮には、複数医師の投入や検査・処置の最小化が有効である可能性が示唆された。

  • -救急隊員の視点から家族対応を検討する-
    寺内 浩美, 菱沼 秀一, 村岡 智美, 須永 準里, 金谷 美希, 野口 真司, 中田 哲也
    原稿種別: 原著
    2025 年26 巻3 号 p. 16-24
    発行日: 2025/12/15
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    【目的】ドクターヘリ現場活動における救急隊員による家族対応の実態を明らかにする。

    【方法】ドクターヘリとの協働活動を10回以上経験したことのある救急隊員11名に半構成的面接法を実施し、質的帰納的に分析した。

    【結果・考察】救急隊員の家族対応として210コードが得られ、そこから35サブカテゴリー、最終的に【家族の安全・安心を確保する】【ドクターヘリで対応する上で必要な情報を提供する】【治療に必要となる情報を収集する】【家族の移動手段を確保する】【フライトスタッフに家族を引き継ぐ】【家族と連絡が取れる状況を整える】の6カテゴリーに分類された。救急隊員による家族対応は、プレホスピタルにおける家族対応で重要な役割を果たしており、救急隊員とフライトナースとの連携を強化することで、より効果的な家族対応の実現が期待される。

調査報告
  • 加藤 航平, 上村 修二, 吉田 一英, 吉山 暉人, 加藤 史人, 和田 健志郎, 大野 耕一
    原稿種別: 調査報告
    2025 年26 巻3 号 p. 25-31
    発行日: 2025/12/15
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    【はじめに】十勝は面積10,800km2で、人口はおよそ35万人である。直近のドクターヘリ基地病院は97km離れており、十勝には搬送に長時間を要する傷病者が多数存在する。今回我々は、帯広市にドクターヘリを配備した場合の要請対象を検討した。

    【対象と方法】2018年~2020年の全救急要請からドクターヘリが接触した症例、陸別町の症例を除外した。このうち重症もしくは死亡とされた症例で、帯広市に搬送された症例について調査した。

    【結果】対象症例は39,262件で、重症または死亡とされた日中の搬送件数は2,670件だった。搬送時間が30分以上は617件で、搬送時間が30分未満でも病院収容時間が36分以上要したものは488件で、総計1,097件(366件/年)だった。

    【結語】帯広市にドクターヘリを設置した場合に有効と考えられる傷病者数は、既存の北海道内のドクターヘリの対応件数と同等であることがわかった。

  • 金田 浩太郎, 井上 智顕, 八木 雄史, 戸谷 昌樹, 中原 貴志, 藤田 基, 鶴田 良介
    原稿種別: 調査報告
    2025 年26 巻3 号 p. 32-38
    発行日: 2025/12/15
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    【背景】ドクターヘリの離島現場出動の特徴についての情報は限られている。

    【方法】日本航空医療学会ドクターヘリ全国症例登録システム(JSAS-R)に登録された2020/4/1から2022/3/31の全出動データを対象とした。無効データ、不応需、ミッション中止、転院搬送、データ欠損例は除外した。離島出動群と対照群の二群で比較検討した。

    【結果】45,711ミッション、46,686例が対象となり、離島出動群は161ミッション、163例、対照群は45,550ミッション、46,523例であった。患者背景は離島出動群で外傷が少なく、その他の内因性疾患が多く、接触時CPAが多かった。搬送状況は離島出動群でドクターヘリ搬送と不搬送が多かった。また、離島出動群で実飛行時間、現場滞在時間が長かった。

    【結語】離島への現場出動を改善するためにこれらの情報が有用と考える。

  • ~一施設におけるコーディネート・マネジメントの現状と課題~
    越高 庸平, 佐藤 一美, 酒井 志保
    2025 年26 巻3 号 p. 39-46
    発行日: 2025/12/15
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

    目的:秋田県ドクターヘリフライトナースのコーディネート・マネジメントの現状と課題を明らかにする。

    方法:秋田県で唯一ドクターヘリを設置する基地病院のフライトナース2名、フライトナースの経験がある看護師3名に半構造面接を実施し、M-GTAに則り分析した。

    結果:【ミッション達成に向けたチームパフォーマンスを向上させるための積極的な関わり】、【県内の医療体制に関連した搬送先病院をめぐるフライトナースのジレンマ】、【家族の情報収集や精神的サポート】、【フライトナースの教育】の4つのカテゴリーに分類された。

    結論:多職種の役割を尊重し、状況に応じて主体性を持ちながらコーディネートしていた。患者の状態と関わる全ての事象を継続的にマネジメントすることで患者の全身状態の安定化や患者家族のニーズ充足を図るよう活動していた。秋田県の医療現状を把握し、普段の業務から予測力、即応力、主体性の向上に向け随時アップデートし続けることが求められる。

症例・事例報告
  • -ツール・ド・おきなわモデルから-
    出口 宝, 米盛 輝武
    2025 年26 巻3 号 p. 47-53
    発行日: 2025/12/15
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

     自転車ロードレースは公道で行われることが多く、最高速度は時速100km以上に達することもある。落車が発生すると重症外傷となることは稀ではなく死亡事故も発生している。さらに、集団落車では多数傷病者が発生する。著者らは約3,000名が参加する国内最大規模の自転車ロードレースであるツール・ド・おきなわにおいて、Mass Gathering Medicineの考え方を導入した医療救護体制であるツール・ド・おきなわモデル(TDOモデル)を構築し、医療救護本部の下で救護車輌と連携した医療用ヘリコプターの運用を行っている。そして、傷病者発生から医療機関までの所用時間を短縮し、重症者を直接域外へ搬出することで地域医療の負担軽減にも寄与している。一方、これらには医療救護本部による情報の一元化と統合調整体制のもと、地上(救護チーム)と空(医療用ヘリコプター)の連携が不可欠である。

短報
  • 石川 雅彦
    原稿種別: 短報
    2025 年26 巻3 号 p. 54-58
    発行日: 2025/12/15
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

     ドクターヘリ活動の各搬送プロセスにおけるインシデント・アクシデント事例を検討し、ドクターヘリ活動に関連した医療機関内の医療安全管理体制整備の在り方について検討した。

     日本医療機能評価機構の医療事故情報収集等事業の「事例検索」にて検索された、ドクターヘリ活動に関わる26件の医療事故とヒヤリ・ハット事例を、ドクターヘリによる搬送前(出動要請からドクターヘリの運航開始まで)、ドクターヘリの現場到着時(現場、および現場待機中の救急車内)、ドクターヘリにて搬送中(ドクターヘリ内)、ドクターヘリにて搬送後(ドクターヘリが医療機関ヘリポートに到着時から、院内への搬送まで)、患者を医療機関内に搬送後(医療機関内)などのプロセスで検討した。搬送された患者を受け入れる医療機関内で良質で安全な医療を提供するために、院内規程や医療機器の整備、および医療機関内の各部門の連携による院内システムの整備の重要性が示唆された。

その他
  • 岩﨑 安博, 國立 晃成, 柴田 尚明, 有井 菜都乃, 米満 尚史, 上田 健太郎, 井上 茂亮
    2025 年26 巻3 号 p. 59-66
    発行日: 2025/12/15
    公開日: 2026/01/30
    ジャーナル フリー

     南海トラフ巨大地震発生時には、和歌山県では西日本最大の人的被害が予測されている。和歌山県は紀伊半島に位置し、大部分が山地で市町や道路は沿岸部に集中している。南海トラフ巨大地震が発生した場合、県南部各地が孤立し航空搬送体制が必要となる。そのため、和歌山県は南北に複数の航空搬送拠点設置を計画している。ドクターヘリは重要な役割を担うが、全国が被災地となり和歌山県へ派遣される機数は限られ、ドクターヘリの効率的な運用とドクターヘリ以外の航空機の活用も必要である。またドクターヘリで重傷外傷患者を搬送する際には安定化処置としてREBOAやターニケット等の使用も考えられるが、これらには搬送時間を考慮した使用が必要となる。また既存のガイドラインがない対応に迫られる場合がありえる。以上のことは半島における災害医療に共通の課題でもあり、半島の多い本邦の航空医療従事者全員が認識しておく必要がある。

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