肝,胆道,膵臓手術例で,全身麻酔覚醒時の呼吸,循環諸量の変動につき,ドロペリドール,ペンタゾシンを用いたNLA変法とGOE麻酔を比較した.その結果,鎮痛薬を主体としたNLA変法麻酔においても,覚醒時の血漿カテコラミン,酸素消費量は,GOE麻酔と同様に増加した.エピネフリンと酸素消費量のあいだには,正の相関関係が認められた(r=0.641,p<0.05).また酸素運搬能の増加にもかかわらず,混合静脈血酸素飽和度の低下,酸素摂取率の増加が認められた.血漿カテコラミン,血清アルドステロン値は手術開始とともに増加し,GOE群より高値を維持した.したがって,本NLA変法麻酔では,肝,胆道,膵臓系の広範囲にわたる開腹手術侵襲に対し,Stress freeの状態にあるとは考えにくく,術後の鎮痛効果も弱いことが推定され,麻酔覚醒から術後にかけての呼吸,循環,代謝の安定維持には,麻酔法として不十分であると推測した.
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