日本臨床麻酔学会誌
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14 巻, 2 号
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  • 飯田 靖彦, 又吉 康俊, 清水 清美, 宮脇 宏, 岡 英男, 山崎 隆史, 小野 弘子
    1994 年 14 巻 2 号 p. 103-108
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    術前2週間以内のかぜ既往,および,術直前のかぜ症状の有無が術中・術後の合併症に与える影響を検討した。7歳以下の小児306例を,里吉らのかぜスコアを用いて,Ia群:かぜ既往があり,術直前のかぜスコアが3点以上,Ib群:かぜ既往があり,術直前のかぜスコアが2点以下,II群:かぜ既往がなく,かぜスコアが2点以下の3群に分類した。対象手術は主に外科の鼠径ヘルニア,形成外科の体表の手術であった。
    Ia, Ib群はII群より術中呼吸器系合併症が多かった。術後合併症はIa群で他の2群より有意に発生頻度が高かったが,Ib, II群間に有意差はなかった。以上の結果より,術前にかぜ既往がある場合,術直前のかぜ症状が顕著であれば予定手術は延期すべきである。しかし,かぜ既往があっても,かぜ症状がないか,軽度である場合は,必ずしも延期する必要はなく,総合的な判断が望ましい。
  • 梅山 孝江, 釘宮 豊城, 吉田 智子, 若杉 文吉, 花岡 一雄
    1994 年 14 巻 2 号 p. 109-114
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    頭痛等を主訴とする患者で視床下部性無月経症を合併した症例に対し,星状神経節ブロックが月経再開をもたらすのに有効であった。ブロック後の血流および温度の変化が視床下部になんらかの作用を及ぼし,内分泌系のアンバランスを是正したために起こった効果であると考えられる。しかしながら,ブロックが頭痛,肩こり等を起こしているなんらかの背景因子を除去し,全身状態が良好となったために月経周期が規則的になった可能性も考えられる。ブロックにより頭痛等の治療目的のほかに,視床下部性無月経が改善し,月経が再開するとすればその相加効果は大きいと思われる。特に,妊娠を希望していない無排卵性無月経症に対してのブロック療法はホルモン投与療法と異なり,その効果に持続性,永続性があるという点で優れている可能性がある。
  • 池崎 弘之, 高木 治, 大西 佳彦, 井上 敏, 畔 政和
    1994 年 14 巻 2 号 p. 115-121
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    腹部大動脈遮断時の末梢血管抵抗の上昇による心機能の抑制に対し,一般的に末梢血管拡張薬の使用が推奨されている。われわれは予定腹部大動脈瘤手術患者10名を対象として血管拡張薬としてニトログリセリン,プロスタグランジンを使用し腎動脈下大動脈遮断時の血行動態の変化を右室駆出率測定用カテーテルを用い比較検討した。プロスタグランジンは末梢血管抵抗を減少させ,大動脈遮断時の血管抵抗の増加,心拍出量の減少を抑え,ニトログリセリンは静脈環流を減少させ,右室の容量を減少させた。大動脈遮断時のモニターとして右室測定用カテーテルは有用と考えられた。
  • 荒川 真之, 永井 一成, 加藤 清司, 後藤 文夫
    1994 年 14 巻 2 号 p. 122-129
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    高位胸部硬膜外麻酔が自律神経系に及ぼす影響について,心拍変動と収縮期血圧変動を高速フーリエ解析(FFT)を用いて解析した。心拍変動のパワースペクトラムのLow Frequency ComponentRR (LFCRR)とHigh Frequency ComponentRR (HFCRR)の二つの成分を検討すると,硬膜外麻酔により交感神経の指標となるLFCRR/HFCRRが有意に低下し,副交感神経の活動性を表わすHFCRRが有意に上昇した。また,収縮期血圧変動のパワースペクトラムのLow Frequency Componentsys (LFCsys)とHigh Frequency Componentsys (HFCsys)の二つの成分を検討すると,硬膜外麻酔によりLFCsysが有意に低下した。これは血管運動性交感神経活動の低下を意味する。母指温,第1趾温を麻酔前後で比較すると母指温が麻酔後有意に上昇した。これは胸部交感神経活動の低下を意味する。心拍変動,収縮期血圧変動の双方を同時解析する方法により,高位胸部硬膜外麻酔が副交感神経の活動性を亢進させ,交感神経の活動性を抑制することを改めて証明した。
  • 第2報
    中原 俊之, 鳥海 信一, 郷 律子, 赤澤 多賀子, 近藤 明男, 増田 貴子
    1994 年 14 巻 2 号 p. 130-136
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    開腹手術患者25名(56~80歳)を対象として,クロニジン1.5~3.0μg/kg経口前投薬投与によるイソフルラン最小肺胞濃度(MAC)および前投薬投与前から麻酔中の血行動態に及ぼす影響を検討した。イソフルランのMACはクロニジン前投与によって0.74±0.03%で,同年齢群でのクロニジン4.0~5.5μg/kg投与で得られた前研究の値(0.70±0.01%)と比較して大きい違いは認めなかった。皮切前,麻酔維持中の収縮期血圧80mmHgをきる低血圧は7名(28%)にみられたが,輸液負荷で5名は血圧が回復した。腹腔内操作に伴う40/分をきる徐脈は1名(4%)にみられた。高齢者では,クロニジンは1.5~3.0μg/kg投与量が5μg/kg投与量に比較して合併症が少なく,同程度の麻酔必要量減少効果が期待できる。
  • 垣花 泰之, 山口 俊一郎, 小田 利通
    1994 年 14 巻 2 号 p. 137-142
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    低酸素や肝血流低下は肝不全を引き起こすため,その発生を早期に検出する必要がある。今回われわれは,肝臓切除術が行なわれた患者11名の肝静脈血酸素飽和度(ShVO2)を連続的に測定し,ShVO2の有用性を検討した。肝動脈,門脈遮断に際し,体循環に変動はなかったが,ShVO2は有意に低下し(8症例),それに伴い乳酸値は上昇し(R=0.66, p<0.01),術後GOT, GPTは増加した。一方,他3症例は肝血流遮断に際しShVO2は変動せず,カテーテル先端が肝の非切除側へ留置されているためと思われた。ShVO2は肝の酸素代謝をモニターする有効な方法であるが,カテーテル先端の留置位置を常に考慮し,測定結果の解析を行なう必要があると思われた。
  • 酒匂 伸一郎, 水口 公信, 高地 哲夫, 井出 徹
    1994 年 14 巻 2 号 p. 143-150
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    重症筋無力症(MG)患者と対照患者に,エンフルラン終末呼気濃度2.5%麻酔下で手術を行ない,神経筋伝達反応を経時的に比較検討した。MG患者8例中6例では吸入開始直後から単収縮反応,四連反応比(TR)の低下がともに著明に進行し,シナプス後抑制のみならず,シナプス前抑制効果も初期から強力に発現する可能性が示唆された。しかしうち1例はTR低下の反応までの時間に遅れがみられ,1例は変化しなかった。対照患者7例の筋弛緩はすべてごくわずかであった。神経筋伝達抑制効果と抗アセチルコリン受容体抗体価,OssermanとGenkinsの臨床分類,大島の重症度評価基準,病悩期間,術前プレドニゾロン投与量などとの間に相関はなく,胸腺組織型とも特に関連はなかった。
  • 藤野 能久, 北村 惠津子, 上川 禎則, 岩井 謙二, 野坂 修一, 天方 義邦
    1994 年 14 巻 2 号 p. 151-157
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    高血圧症状がまったくなく,耐糖能異常で薬物治療中の患者の無症候性褐色細胞腫摘出術の麻酔を経験した。その腫瘍は腹部超音波検査で偶然発見されたものであった。
    症候性に準じた術前・術中管理を行ない,安定した循環動態が得られた。また,術後耐糖能が改善した。
    本症例および他症例の考察から無症候性であっても,術前循環管理の施行が望ましい。
    また,麻酔管理上有用と思われる褐色細胞腫の分類を示した。さらに,血漿中カテコラミンの種類と濃度が術中管理の困難さを示唆すると考えられた。
  • 佐藤 祐子, 水谷 太郎, 水山 和之, 田中 誠, 大久保 直光, 土肥 修司
    1994 年 14 巻 2 号 p. 158-161
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    Kabuki make-up syndromeは歌舞伎役者のような特異な顔貌をした先天性の奇形症候群である。2症例5回の麻酔を経験し,うち1症例1回の麻酔において,患者は術中術後に低酸素血症を示した。本症の麻酔管理上の問題点として挿管困難,低酸素血症,硬膜外穿刺等困難,各種臓器障害,易感染性などがあげられるので注意が必要である。
  • 中山 雅康, 藤田 智, 金谷 憲明, 伊藤 徹雄, 並木 昭義
    1994 年 14 巻 2 号 p. 162-165
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    局所温熱療法の一法である胸腔内温水灌流法の麻酔管理を経験した。患者は71歳の女性で,肺癌による右中葉切除後に胸腔内への病変の播種を認めたため胸腔内温水灌流を2時間施行した。麻酔は,胸部硬膜外麻酔に浅い全身麻酔(GOI)を併用した。初めに胸腔内への灌流液を2l注入したところ,血圧が75/45mmHgへ急激に低下したため注入量を1.5lに減じた。灌流中は,体温上昇(39℃)に伴い心拍数,心拍出量の増加(68, 54%),とSVRの低下(44%)を認め,循環系の負荷が増大していることが示唆された。
  • 湖城 均, 大熊 康裕, 木村 重雄, 長櫓 巧, 新井 達潤
    1994 年 14 巻 2 号 p. 166-169
    発行日: 1994/03/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    症例44歳男性,クモ膜下出血に対し緊急クリッピング術を行なった。前投薬はアトロピンのみとし,フェンタニルとベクロニウムにより挿管した。この時直腸温37.8℃だった。GOとイソフルラン0.2~0.4%で麻酔を維持した。導入1時間30分後より,25分間でETCO2は40より66mmHg,直腸温は39.1より40.0℃まで急激に上昇した。MHと診断し治療を開始した。ダントロレン投与が有効で,ETCO2は80mmHgを最高に15分間で34mmHgまで低下した。体温のピークはETCO2よりも15分遅れ41.7℃を最高に低下していった。MHの原因はイソフルランと推察した。またETCO2の変化は体温よりも先行し,診断および治療効果の判定に有用であった。
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