日本臨床麻酔学会誌
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15 巻, 10 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 平林 由広, 光畑 裕正, 清水 禮壽, 斎藤 和彦, 福田 博一
    1995 年 15 巻 10 号 p. 673-677
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    開腹手術後の疹痛に対して用いたブピバカインとブプレノルフィンの混合液の硬膜外持続注入法の投与注入速度(1ml・h-1と2ml・h-1)が鎮痛効果に影響するかを検討した.注入速度1ml群(n=40)では0.25%ブピバカインで希釈した18μg・ml-1ブプレノルフィン液を,注入速度2ml群(n=40)では0.25%ブピバカインで希釈した9μg・ml-1ブプレノルフィン液をそれぞれ1ml・h-1,2ml・h-1で術後48時間持続投与した.補助的に追加投与された鎮;痛薬の処方回数,痙痛スコアの分布,安静時ならびに体動時のVASは,両群間に統計学的有意差を認めなかった.
  • 大槻 学, 荻野 英樹, 赤津 賢彦, 田勢 長一郎, 奥秋 晟
    1995 年 15 巻 10 号 p. 678-684
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    硬膜外持続鎮痛法を用いた上腹部術後患者26名を,術後3日間深呼吸だけを1日10回行なった群(DB群),トリフローIITMを1日5回行なった1群(TF I群)および1日10回行なった群(TF II群)の3群に分け,incentive spirometerを用いた術後早期の呼吸訓練が,術後の呼吸機能改善に有効かどうかを検討した.鎮痛効果は3群間に差はなく,深呼吸でも痛みを訴えない程度に維持された.呼吸機能について,肺活量,1秒率,最大呼気流速は,それぞれ3群間に有意差はなく,術後1日に術前値の50%に低下し,その後回復し術後10日で術前値の80%程度となった.PaO2は術前値に比べ術後3日間は低いままで推移し,DB群とTF II群で低い傾向がみられたが群間に有意差はなかった.Incentive spirometerによる術後早期呼吸訓練の呼吸機能改善効果は,硬膜外持続鎮痛法による十分な鎮痛状態下では,定期的な深呼吸法と同程度と考えられた.
  • 齊藤 勇人, 後藤 隆久, 新見 能成, 福家 伸夫, 森田 茂穂
    1995 年 15 巻 10 号 p. 685-689
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    従来,閉鎖循環式麻酔法の吸入麻酔薬投与は,麻酔回路内の呼気側に直接液体を注入する方法で行なわれてきた.この際,吸入麻酔薬はプラスチックを腐蝕するため金属性の注入口が必要となることや,液体をbolusで投与することによる麻酔薬濃度の急激な変化が問題であった.今回,このような点を改善すべくアコマ医科工業株式会社の協力を得て,注入型気化器IVM-200を試作した.臨床試用の結果,本機により閉鎖循環式麻酔法がより簡便に行なえるものと評価された.
  • 當房 和己, 門田 善民, 川崎 孝一, 具志堅 隆, 大納 哲也, 吉村 望
    1995 年 15 巻 10 号 p. 690-693
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    扁桃摘出術の抜管後,術後出血を認め,緊急止血術の挿管時(ネオスチグミン投与後30分経過時)にサクシニルコリン(SCC)を投与し,SCCによる作用発現は通常どおりであったが,作用時間が遷延した症例を経験した.患者は59歳女性で,術前検査などで特に異常は認めなかった.再手術前に筋弛緩モニターを装着し,ネオスチグミン投与によりベクロニウムの筋弛緩作用を拮抗した後の十分な筋力回復を確認した後,SCC 60mgを投与した.モニター上,作用発現は約90秒と正常どおりであったが,T1値がコントロールの25%および75%まで回復する時間はそれぞれ20分および25分でSCCの作用遷延が認められた.筋弛緩作用遷延の主因として,ネオスチグミンの血漿コリンエステラーゼ抑制が考えられた.
  • 冨岡 俊也, 粕谷 正史, 菊谷 武, 浅利 遥
    1995 年 15 巻 10 号 p. 694-698
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    希釈式自己血輸血の有用性を調べるため,対象に出血量が多量で,かつ高齢の患者が多い前立腺癌に対する根治的前立腺全摘術を選び,希釈式自己血輸血が周術期をとおして有益であるかどうかを検討した.10症例を対象とし,術直前に800mlの自己血を希釈式自己血輸血により採取し術中に返血した5症例と,希釈式自己血輸血を施行する以前の5症例に分けた.血液検査上では周術期をとおして大きな差は二群問にみられず,また両群とも重大な合併症はきたさなかった.希釈式自己血輸血は対象症例が出血量が多量で,かつ高齢であっても有用に行ないうると考えられた.
  • 佐藤 清貴, 最首 俊夫, 橋本 保彦
    1995 年 15 巻 10 号 p. 699-702
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    運動麻痺患者15例に対する四肢運動機能再建を目的とする,機能的電気刺激電極植え込み術の麻酔を経験した.原因疾患は脳梗塞6例,脳出血3例,脊髄損傷4例,筋萎縮性側索硬化症2例であった.原因疾患を問わず脱分極性筋弛緩薬の使用は避け,さらに下位運動ニューロンの障害を伴う場合は,非脱分極性筋弛緩薬の使用も慎重でなければならない.また,それぞれの原因疾患に対応した全身管理に注意が必要である.
  • 塩谷 聡, 吉山 俊幸, 中馬 理一郎
    1995 年 15 巻 10 号 p. 703-705
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    麻酔導入後喉頭展開を試みたが肥大した舌扁桃のために声門,喉頭蓋を確認できず挿管困難となった症例を経験した.患者は回盲部切除術の予定された75歳の男性で術前気道系に症状はなく,口腔内検索時にも異常はみられなかった.ファイバースコープを用いても声門を確認できず,ラリンジアルマスク(LMA)換気下で逆行性に挿管した.舌扁桃肥大は麻酔導入後初めて気づかれることがあり注意を要する疾患である.
  • 辻本 三郎, 楠 真二, 盛永 直樹, 加藤 浩子
    1995 年 15 巻 10 号 p. 706-711
    発行日: 1995/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    術後stunned myocardiumが疑われた開腹術3症例を経験した.3症例とも60代女性で,それぞれ直腸切断術,回盲部切除術,および結腸切除術と肝部分切除術が行なわれた.主に血行動態,心電図および心エコー図の経時的変化より本病態が疑われた.誘因として術中の血圧変動,麻酔覚醒時のシバリングが考えられた.原因は1例で冠スパスムが考えられたが,他の2例では不明であった.Stunned myocardiumは基本的には可逆性の病態であるが,治療の良否によっては不可逆的な心筋虚血に進行するかもしれない.周術期心筋梗塞との関連性は不明であり今後さらなる検討が必要であろう.
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