日本臨床麻酔学会誌
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15 巻 , 4 号
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  • 吉田 啓子, 野村 実, 近藤 泉, 長沢 千奈美, 芦刈 英理, 鈴木 英弘
    1995 年 15 巻 4 号 p. 279-285
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    冠血行再建術患者の人工心肺前後の左室拡張能を測定するために経食道心エコー法による左室流入血流波形を描出し,左室急速流入期血流最大速度(E)と心房収縮期血流最大速度(A)を求め,人工心肺前後におけるE/A比と血行動態の変化を比較検討した。気管内挿管後のE/A比によりE/A≧1(A群:左室拡張能良好群13名)とE/A<1(B群:左室拡張能障害群9名)に分けた。人工心肺離脱時に両群ともほぼ同量のドパミン,ノルアドレナリンを使用したが,A群では人工心肺前後の血行動態に挿管後と比較して有意な変化はなかったが,B群では挿管後の心係数2.4±0.4l/min/m2が,人工心肺離脱後3.3±0.9l/min/m2と有意に上昇した。一方,両群とも僧帽弁血流波形は,E波,A波とも軽度の増加傾向を示したが,E/A比は変化しなかった。以上より,冠血行再建術の人工心肺離脱直後は,カテコラミン使用により左室収縮能が改善しても,左室拡張機能の改善はみられないことがわかった。
  • 仲田 房蔵, 何 珮琳, 岡田 まゆみ, 南保 友行, 吉川 秀康
    1995 年 15 巻 4 号 p. 286-291
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    ニトログリセリン(TNG)低血圧麻酔にジルチアゼム(DZ)を併用した場合の心血管系に及ぼす効果を,エンフルラン麻酔下の17名の婦人科手術患者を対象に検討した。収縮期血圧は,TNG単独投与のA群では目標とする90mmHgに到達するのに15分以上を要したが,DZを2μg/kg/min (B群),5μg/kg/min (C群)で併用すると5分後に目標値となり,中止後の復圧も容易であった。C群の心拍数は投与60分でA群に比較し有意に低値となり,中止15分後も低下した。中心静脈圧,肺動脈圧,肺動脈楔入圧は3群とも有意に低下したが,心拍出量はC群で低血圧開始前に比べ有意に減少した。収縮期血圧を90mmHg前後に維持させるTNGの投与量は,DZの併用により量依存性に減少した。DZを2μg/kg/minで同時投与すれば,調節性に優れ心血管系を抑制することなくTNGの投与量を節減できる。
  • 伊藤 立志, 浅原 廣澄, 三井 弘
    1995 年 15 巻 4 号 p. 292-297
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    慢性関節リウマチ(RA)による頸椎亜脱臼に対する頸椎後方固定術患者60例を対象として,最大の問題点である挿管困難の頻度と,全身性疾患であるRAの患者背景,また術中の麻酔管理にっいてretrospectiveに検討した。挿管困難と判断した症例は35.0%,そのうちファイバースコープを用いて挿管した例は全体の11.7%であった。挿管困難への対策として術前の画像診断(意識下脱臼位でのMRI)による頸椎可動域の把握,診察,問診から挿管困難の程度を予測するが,最終的には麻酔導入時にミダゾラム0.02mg/kg,フェンタニール2μg/kgを基準量として投与し,半意識下で喉頭展開を試み喉頭蓋を直視できるかどうかで急速導入の可否を判断した。
  • 中山 雅康, 川名 信, 藤田 智, 金谷 憲明, 並木 昭義
    1995 年 15 巻 4 号 p. 298-302
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    エピネフリンの局所注入時には,血圧や心拍数が急激に上昇する危険性がある。今回,脊椎麻酔下に婦人科の経腟的手術を施行した患者24名を対象に,子宮頸部周辺へのエピネフリン局所注入前に,ジルチアゼム0.2mg/kgを静注し循環動態変動に対する効果を検討した。その結果,エピネフリン注入後の血圧の上昇が,ジルチアゼム前処置により有意に抑制された。心拍数,心拍出量の変動に対する影響は認められなかった。以上より,婦人科手術時の子宮へのエピネフリン局所注入による循環動態変動に対する,ジルチアゼム0.2mg/kgの前投与の有用性が示された。
  • 井口 まり, 森本 文子, 秦 恒彦
    1995 年 15 巻 4 号 p. 303-308
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    持続仙骨麻酔・腰部硬膜外麻酔において,初回投与量1%メピバカイン0.8ml/kg,追加量0.4ml/kgとして血中濃度を測定し,その推移を調べた。両群の血中濃度に有意差はなく,最高9回まで追加投与したが中毒域値以下に抑えられていた。
    この結果は会陰部・下肢の手術に対しては仙骨麻酔を,下腹部の手術に対しては腰部硬膜外麻酔を選択すれば,この投与量で必要な麻酔域を得ることができ,長時間安全に使用できることを示している。体格・術式・手術時間などを考慮して手技と薬剤量を使い分ければ小児の仙骨・腰部硬膜外麻酔は安全に行なえると考える。
  • 岡 龍弘, 井出 徹, 大和田 哲郎, 水口 公信
    1995 年 15 巻 4 号 p. 309-314
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    慢性肺塞栓摘出術の麻酔を2例計3回経験し,術中の右室機能の変化につき検討した。麻酔法は症例1では,酸素-フェンタニールにて,症例2では酸素-ハロタンにて行ない,手術は,開胸,片肺換気下に,肺動脈を閉塞して塞栓の摘出を行なった。また片肺換気下で,プロスタグランディンE1 (PGE1)を投与し,その前後での循環動態の変化を測定した。術側肺動脈遮断により血圧,心拍出量の低下する症例がみられ,その原因として肺血管抵抗上昇による右室後負荷の上昇と右室収縮機能の低下が考えられた。肺動脈カテーテルよりのPGE1投与は,肺血管抵抗には変化を与えず,体血管抵抗を低下させ,血圧の低下を招く可能性がある。
  • 松山 尚弘, 広木 公一, 藤原 孝憲, 窪田 達也, 大竹 一栄
    1995 年 15 巻 4 号 p. 315-319
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    喉頭気管食道裂type 3の根治術の麻酔を経験した。この疾患の頻度は,まれではあるが,放置すれば呼吸器合併症を併発し,致死的転帰をたどる。症例は,3,000gの女児で,生後8日に腹部食道結紮術および空腸瘻を造設し,生後30日に一期的根治手術を行なった。麻酔導入後,気管内挿管を行ない,内頸動静脈より膜型人工肺(ECMO)を導入した。ECMO使用により,非換気下に食道気管切開後,術野より特注のY型の気管支用チューブを左右両気管支に挿入し,逆行性に経鼻気管内挿管とした。術後は筋弛緩剤投与下に人工呼吸により呼吸管理を行ない,術中,術後とも経過良好であった。
  • 原野 清, 大石 浩隆, 戸野 保, 増田 和久, 永澤 一郎, 十時 忠秀
    1995 年 15 巻 4 号 p. 320-325
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    頸動脈狭窄症に対する頸動脈内膜切除術は,手術操作による脳虚血に起因する中枢神経障害が手術合併症として最も危惧される。
    われわれは本症5症例に中枢神経障害を術中,確実に把握する目的で頸部硬膜外麻酔に少量の鎮痛薬と鎮静薬を併用し,さらに気管内挿管による酸素-笑気麻酔を試みた。
    頸動脈クランプ直前からクランプ解除まで笑気の投与を一時中止して患者を覚醒させ,意識レベルや四肢の運動能の検査を頻回に行なった。
    内シャントの造設はテストクランプ中に神経学的異常を認めた2例に行なった。その結果全例において中枢神経系の術後合併症は認めなかった。この麻酔法は局所麻酔法と全身麻酔法のそれぞれの欠点を補い,利点を生かした方法ではないかと思われる。
  • 小林 裕子, 白鳥 倫治, 金子 義郎, 石津 泰彦, 北澤 実, 佐野 博美
    1995 年 15 巻 4 号 p. 326-329
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    良性疾患による妊娠後期の疼痛の管理では母体と胎児の双方への薬物の影響を考慮する必要がある。妊娠中に発症した仙骨部硬膜外〓腫による慢性疼痛の管理を経験した。妊娠26週より10日間はブプレノルフィン,メピバカインの硬膜外持続投与,28週より35週まではブプレノルフィン坐剤の投与でコントロールした。妊娠36週に持続硬膜外麻酔により帝王切開を施行し,出産1ヵ月後に〓腫切除術を施行した。ブプレノルフィンの長期投与によると思われる症状は母子ともにみられず安全に使用できたと考えられる。
  • 安中 寛, 沢田 圭介, 下起 明
    1995 年 15 巻 4 号 p. 330-335
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    出生直後より心不全と肝・腎機能低下を併発したGalen動静脈奇形新生児の麻酔を経験した。術中は循環血液量を正常に維持し,1回目手術は笑気-酸素-セボフルラン麻酔下に右側の流入動脈2本を,2回目手術は笑気-酸素-イソフルラン麻酔下に左側の流入動脈4本を,心・頭部エコーでモニターしながらクリッピングした。術後も心不全を起こすことなく,肝・腎機能も次第に改善し,ほぼ順調な経過をたどった。
  • 佐藤 えり子, 竹内 一雄, 田中 和夫, 西川 慶一郎, 伊藤 周二, 中島 良一
    1995 年 15 巻 4 号 p. 336-340
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    血清カテコラミンの異常高値を示す両側副腎褐色細胞腫と甲状腺髄様癌を術前に診断された多内分泌腺腫瘍症第2A型の周術期管理を経験した。甲状腺髄様癌摘出術に先立ち両側副腎褐色細胞腫摘出術を施行し,ホルモンの補充療法のもとに甲状腺全摘術を行ない良好な経過を得た。術後の家族内調査の結果にて,患者の長男に本症が発見され,追跡検索後に副腎褐色細胞腫摘出術および甲状腺髄様癌による甲状腺全摘出術が施行された。多内分泌腺腫瘍症第2A型の診断は腫瘍マーカーにより容易に行なえるようになったが,治療は甲状腺手術に先立ち副腎褐色細胞腫摘出術を施行し,さらに家族スクリーニングにて家族内発生の有無を検索することが重要と考える。
  • 小林 康夫, 関 純彦, 山崎 裕, 其田 一, 川名 信, 並木 昭義
    1995 年 15 巻 4 号 p. 341-345
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    腹腔鏡下褐色細胞腫摘出術の麻酔を経験した。症例は47歳の男性で,術前よりα,βブロッカーにより血圧をコントロールした。麻酔はGOS,フェンタニールおよび持続硬膜外麻酔で維持し,ニカルジピン,ニトログリセリンを持続的に,プロプラノロールを間欠的に投与した。手術時間は6時間を超え血中カテコラミン,心係数は増加したが,硬膜外麻酔および血管拡張薬の使用により血圧上昇を低く抑えることができた。合併症もなく患者は術後9日目に退院し,今回選択した麻酔法は,本術式に対して適していると思われた。
  • 小西 晃生, 浅原 広澄
    1995 年 15 巻 4 号 p. 346-350
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    症例はいずれも側臥位で行なわれたJannetta手術8例と聴神経腫瘍2例の10例で,年齢は35~67歳,手術時間はJannetta手術では3~5時間,聴神経腫瘍は11時間であった。手術時の体位は側臥位で,かつ,頸部屈曲,病側伸展位(頭頂低位)をとって行なわれた。気道狭窄症状は術後1日より,対側頸部から咽頭部の腫脹とともに出現した。そのなかの4例は気管内挿管を必要としたが,他は保存的治療で改善した。気管内挿管は4~6日間を要し,1例は不幸な転帰をとった。
    術後気道狭窄の原因は,側臥位での頸部の過屈曲という無理な体位による頸部の圧迫,うっ血による上気道の浮腫と考えられた。術者側はどうしても手術優先で体位をとる傾向にあるが,手術中の体位によっても重篤な合併症を起こす危険性があることを念頭におくべきである。
  • 多淵 八千代, 北川 裕利, 桑原 一志, 重盛 紫乃, 野坂 修一, 天方 義邦
    1995 年 15 巻 4 号 p. 351-354
    発行日: 1995/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    透析症例は抗凝固薬使用などから硬膜下血腫を合併しやすい。今回,出血傾向のある長期透析患者の両側性硬膜下血腫に対する緊急開頭下血腫除去術の麻酔管理を経験した。出血傾向は,術前透析および輸血・凍結血漿で改善した。麻酔は笑気・酸素・イソフルランにベクロニウムを併用した。術中は,中心静脈圧・観血的動脈圧を指標とし,持続血液濾過併用で,容量のコントロールを図った。術前透析時のグリセロール投与と除水,および術中はステロイド投与で,脳腫脹制御は容易であった。出血傾向は,術前透析時の凍結血漿・輸血および血小板輸血で制御が可能であった。
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