日本臨床麻酔学会誌
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19 巻, 10 号
選択された号の論文の8件中1~8を表示しています
  • 鈴木 久人, 下 弘一, 竹内 健二, 長谷川 公一, 杉浦 良啓, 後藤 幸生
    1999 年 19 巻 10 号 p. 597-600
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    本研究の目的は,挿管操作時における合併症としての口唇裂傷を予防する方法を検討することである.好発部位•発生機序の調査で,口唇裂傷のおよそ9割が上口唇に発生していた.上口唇にマウスピースと簡易開口器の両器具を装着した挿管法を考案し,この器具装着群(100名)と非装着群(100名)で挿管時に口唇裂傷を起こす頻度を比較した.結果は,器具装着群が非装着群に比べ有意に口唇裂傷の頻度が低いことが示された.マウスピースならびに簡易開口器装着挿管は安価かっ容易に挿管時口唇裂傷を予防できる方法である.
  • パンクロニウム,ベクロニウム,ロクロニウムの比較
    矢島 直, 津高 省三, 長田 理, 田上 恵, 花岡 一雄
    1999 年 19 巻 10 号 p. 601-608
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    要旨 3種類の非脱分極性筋弛緩薬:パンクロニウム,ベクロニウム及びロクロニウムについて,投与速度をPID制御により変化させて,一定の筋弛緩率(90%, 99%)を維持し,任意の時間(投与持続時間)で中止した後の作用回復時間をシミュレーションにより求めた.シミュレーションに用いたPharmacokinetic parametersは既存のものを使用したが,Pharmacodynamic parametersは,1MAC以下の揮発性麻酔薬を用いた自験例のデータを用いて求めたものを使用した.ロクロニウムのcontext-sensitive half-timeはパンクロニウムよりベクロニウムのそれに近いが,持続時間を変化させたときの99~50%回復時間の曲線はベクロニウムよりパンクロニウムに近い傾向を示していた.パンクロニウム,ベクロニウム,ロクロニウムのすべてで投与持続時間360分後の99~50%回復時間はなお増加傾向を示していた.90~50%回復時間及び90~75%回復時間は,ベクロニウムとロクロニウムでは,投与持続時間が120分以後に一定になったが,パンクロニウムは240分まで増加傾向にあった.E%の筋弛緩率を維持して定常状態になったときの持続投与速度をkss(E)とすると,パンクロニウムとベクロニウムではkss(99)/kss(90)=1.5, kss(90)/kss(75)=1.2であったのに対してロクロニウムではkss(99)/kss(90)=2.0, kss(90)/kss(75)=1.4となった.より深い筋弛緩状態を維持するにはパンクロニウムやペクロニウムに比して,ロクロニウムではより大きく投与速度を増加させる必要があることがわかった.非脱分極性筋弛緩薬(パンクロニウム,ベクロニウム,ロクロニウム)では,持続投与後の回復時間を推定するのにcontext-sensitivehalf-timeは役立たないことが判明した.非脱分極性筋弛緩薬ではPharmacodynamicの非線形性が強いこと,いいかえると用量反応曲線の接線の傾きが大きく変化することがその主因である.
  • 菊池 幸恵, 樋口 比登実, 増田 豊, 橋本 誠, 岡本 健一郎, 八代 亮, 細山田 明義
    1999 年 19 巻 10 号 p. 609-612
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    要旨 レーベル遺伝性視神経症(以下Leber病)の診断にて眼科的治療を受けるも回復せず,星状神経節ブロック(以下SGB)を施行し,両眼視力回復が認められた症例を経験した.症例は20歳男性.当科初診時視力(以下すべて矯正視力)は右眼0.07,左眼0.02,視野上大きな中心暗点を認めた.急性期の右眼に対し,1日2回のSGBによる治療を開始し,治療開始7ヵ月後(左右SGB合計約200回),視力右0.6,左0.2,視野上も中心暗点が縮小し,中心視力も出現,週1回の外来通院となっている.眼疾患に対するSGBの作用機序は未知の部分も多いが,副作用なく長期にわたって治療可能なSGBは,治療法の一つとして選択されうると考えられた
  • 湯浅 晴之, 河田 圭司, 梶川 竜治, 大家 宗和, 古賀 義久
    1999 年 19 巻 10 号 p. 613-616
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    要旨 術前検査において,プロトロンビン(PT)活性低下を示す患者の麻酔管理を2例経験した.活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)は正常値を示し,ヘパプラスチンテスト(HPT)は低下していたため,ビタミンK依存性凝固因子であるVII因子の低下が明らかになり,ビタミンK欠乏を疑った.ビタミンK1 10mg投与によるPT活性及びHPTの正常化,さらにPIVKA (protein induced by vitamin K absence or antagonist)-IIの高値を確認し,これら2症例はビタミンK欠乏であると結論した.原因は,術前の絶飲絶食とセフェム系抗生物質の投与が考えられた.出血傾向を呈する症例には,その病態を理解した周術期管理を行なうことが肝要である.
  • 佐藤 公淑, 熊野 健一, 久場 良也
    1999 年 19 巻 10 号 p. 617-621
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    要旨 術前検査において,プロトロンビン(PT)活性低下を示す患者の麻酔管理を2例経験した.活性化部分トロンボプラスチン時間(aPTT)は正常値を示し,ヘパプラスチンテスト(HPT)は低下していたため,ビタミンK依存性凝固因子であるVII因子の低下が明らかになり,ビタミンK欠乏を疑った.ビタミンK1 10mg投与によるPT活性及びHPTの正常化,さらにPIVKA (protein induced by vitamin K absence or antagonist)-IIの高値を確認し,これら2症例はビタミンK欠乏であると結論した.原因は,術前の絶飲絶食とセフェム系抗生物質の投与が考えられた.出血傾向を呈する症例には,その病態を理解した周術期管理を行なうことが肝要である.
  • 赤塚 正文, 田中 源重, 緒方 佳代子, 大中 仁彦, 稲森 耕平, 森 秀麿
    1999 年 19 巻 10 号 p. 622-625
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    脊椎へのがん転移による脊髄損傷が原因で生じた幻肢痛に対し,ケタミン持続投与で疼痛を長期にわたりコントロールできた症例を経験した.本例は,当初モルヒネ徐放剤でがん性疼痛管理を行なっていたが,脊髄損傷後に発現した幻肢痛はモルヒネ抵抗性であり,ケタミン持続皮下注を併用しすみやかな除痛を得ることができた.ケタミン投与開始約1ヵ月後に留置針刺入部の発赤,疼痛が顕著となったため,ケタミンの投与を経静脈的に変更し,死亡時まで痛みを自制内にコントロールすることができた.この結果より,がんの脊椎転移による難治性の幻肢痛の治療においてケタミン療法は試みる価値があると考える.
  • 桜井 康良, 岡田 智志穂
    1999 年 19 巻 10 号 p. 626-629
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    要旨 うっ血性心不全を呈する心アミロイドーシス患者の上腹部緊急手術の麻酔を経験した.症例は62歳の男性で,主訴は上腹部痛であった.全身に著明な浮腫があり,心エコーではアミロイドの沈着による心筋輝度の上昇が認められ,拡張不全型の心不全と診断された.フロセミド投与,デスラノシドの急速飽和の後,入眠量のチオペンタールとケタミンで導入し,酸素-亜酸化窒素-ケタミン-フェンタニルで麻酔を維持した.手術室で抜管し,術後はフロセミド及びデスラノシドを中心とした循環管理で心不全は改善したが,約2ヵ月後,突然の心停止により死亡した.心アミロイドーシスを合併する症例では,慎重な循環管理が必要である.
  • 鈴木 昭広, 間宮 敬子, 国澤 卓之, 高畑 治, 岩崎 寛
    1999 年 19 巻 10 号 p. 630-633
    発行日: 1999/12/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    肥大型心筋症を合併した生後5ヵ月のNoonan症候群患者に対する開心術の麻酔を経験した.本症例では,心機能を悪化させている肥大心筋は心内修復後も存在するため,手術により必ずしも心機能が改善することは期待できなかった.しかも循環動態の変化により,左室流出路の閉塞症状と左室心筋の拡張障害が混在し,相反する治療目標が要求される病態をきたした.今回,術中経過は良好であったが,心室の拡張障害によると考えられる心不全が術後において遷延した.経食道心エコー図または両心房圧の測定による心臓への前負荷の詳細な評価に加え,Ca拮抗薬等の適切な使用が周術期管理において重要と考えられた.
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