日本臨床麻酔学会誌
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20 巻 , 4 号
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  • 大村 昭人
    2000 年 20 巻 4 号 p. 201-208
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    20世紀後半に起こった人口の急速な高齢化に伴う医療費の高騰で,健康保険財政が急速に悪化し,国民皆保険制度が今,破綻の危機に瀕している.国が進めてきたさまざまな医療費抑制政策もこの傾向を大きく変えることはできず,健康保険制度の抜本改革の必要性が叫ばれ,2000年の抜本改革を目指して医療保険福祉審議会,中央社会保険医療協議会等の場で審議が続けられている.しかし,関連組織団体間の合意がなかなか得られず,このまま進めばタイムリミットを超えて制度崩壊が進む可能性も出てきている.しかし,制度の仕組み,問題点が複雑なこと,複数の改革案が出ていること,外に出てくる情報も各団体,組織に都合のよい断片的なものが多いこと等から,医療従事者でさえ全体像がつかみにくい.一方,医療の先進国であるはずのアメリカも同様の深刻な問題が生じており,急速に増加する老人医療費に対する公的保険の抜本改革案に加えて,多くの民間医療保険がさまざまな問題点を指摘されるなかで,次々と改良を加えて急成長するなど壮大な社会実験が進行中である.この実験は世界の注目を集めており,先のみえない日本の医療制度の方向を探るうえで大いに参考になる可能性がある.医療制度の変貌とともに,われわれ麻酔科医を取り巻く環境も急速に厳しくなっていくのは確実である.しかし,この変化のなかで,日本麻酔学会及び個々の麻酔科医の役割も新しい可能性を秘めながら変化していくことが予想され,このような動きに注目し,理解を深める必要がある.
  • 祖父江 和哉, 津田 喬子, 永田 健充, 竹内 昭憲, 中川 隆, 勝屋 弘忠
    2000 年 20 巻 4 号 p. 209-215
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    手術室で使用中のETCO2モニタ機器の汚染状況を調査したところ,細菌が高頻度に検出された.そこで,手術室において1ヵ月間あるいは2ヵ月間の期間別に複数患者に使用したところ,ETCO2モニタ機器の使用期間が長くなるにつれて細菌汚染がより高頻度となる傾向にあった.さらに,気道感染を有するICU長期入室患者1名に対してETCO2モニタの経時的汚染状況を調査したところ,24時間で患者からモニタへの細菌の移行が生じた.つまり,患者からモニタへの細菌汚染は比較的短時間に,高頻度に生じることが示唆され,単一ETCO2モニタ回路の複数患者への使用は問題があると考えられた.複数患者への使用には,細菌除去フィルタの使用等の対策が必要である.
  • 三溝 慎次, 中島 幹夫, 十時 忠秀
    2000 年 20 巻 4 号 p. 216-220
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    フェンタニル麻酔による冠動脈バイパス術患者の麻酔から覚醒するまでの時間と,患者背景及び術中要因との関係について検討を行なった.対象は,待期的冠動脈バイパス術50症例とした.麻酔は中等量から大量のフェンタニル(38~80μg•kg-1)にて行なった.覚醒時間は,患者が高齢になるほど有意に延長し,手術終了直後の心係数が大きいほど短縮した.また,完全人工心肺時間が長いほど有意に延長した.しかし,フェンタニルあるいはミダゾラムの総使用量と覚醒時間との間には相関を認めなかった.以上より,冠動脈バイパス術からの早期覚醒には,患者の年齢,術直後の心係数や完全人工心肺時間が関与し,術中使用した麻酔薬の影響は少ないことがわかった.
  • 田尻 治, 舘田 武志, 原 康治, 堀口 哲男, 野田 宗慶, 青木 正
    2000 年 20 巻 4 号 p. 221-224
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    手術室入室時,頻拍性の上室性不整脈を認め,全身麻酔導入後に心不全となり,術後の精査により拡張型心筋症が疑われた緊急手術症例を経験した.術前心電図や胸部X線写真に異常を認めたが,十分な検索を行なわなかったため器質的心疾患の合併を見落としたと思われた.循環器系に異常が疑われる症例での,術前心エコー等による詳細な心機能評価の重要性を再認識した.
  • 武藤 孝夫, 曽我部 豊, 荻原 幸彦, 近江 明文, 一色 淳
    2000 年 20 巻 4 号 p. 225-228
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    右肺低形成を合併した肺癌患者の,気管支ステント挿入術の麻酔を経験した.腫瘍は右主気管支を完全閉塞しており,左主気管支も90%以上の狭窄を呈し,気管支鏡の通過は不可能であった.麻酔はペンタゾシンとプロポフォールを用い,術中の酸素化維持に対して経皮的心肺補助法(PCPS: percutaneous cardiopulmonary support)を使用した.腫瘍をレーザーで焼灼後,左主気管支にステントを留置し,手術は無事終了した.完全気道閉塞の危険性を伴う症例に対し,PCPSは人工肺としても使用可能であり,安全に手術を施行できることが示唆された.
  • 田村 仁孝, 中村 久美, 荻野 行正, 佐久間 泰司, 加藤 裕彦, 上田 裕
    2000 年 20 巻 4 号 p. 229-232
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    ダウン症で精神発育遅延を認める52歳女性の白内障手術を,全身麻酔下に施行した.手術室入室時よりSpO2が93%とやや低値だった.気管挿管は容易であったが,挿管後気管内から血液を混じた喀痰が吸引された.術中は,気道内圧の上昇,皮下の異常膨隆,循環変動,チアノーゼの発現等は認めず,術後覚醒も良好であった.患者は手術終了210分後より胸部痛を訴え,約6時間後に,頸部から前胸部にかけての腫脹を呈した.単純胸部X線撮影で,縦隔気腫及び皮下気腫と診断された.縦隔気腫が生じた機序は不明であるが,高齢のダウン症患者は組織の脆弱性を有し,これが発症に関係した可能性が示唆された.
  • 佐藤 公淑, 熊野 健一, 久場 良也
    2000 年 20 巻 4 号 p. 233-236
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    腰椎麻酔後にMRSA感染が疑われた化膿性腰椎炎の1例を経験した.症例は63歳の女性.急性虫垂炎の診断の下,腰椎麻酔下に虫垂切除術が行なわれた.術後3日目より腰痛,5日目より39°C台の発熱が出現し,術後10日目には下肢痛も出現した.MRIにてL3-4椎体及び椎間板に浮腫像がみられ,急性化膿性腰椎炎と診断した.広域スペクトルの抗生物質の投与によっても症状は改善せず,術後26日目に硬膜外膿瘍による神経圧迫所見がみられるようになり,椎弓切除術を行なった.術後,再度発熱と下肢痛の増悪があり,MRSAによる感染を疑い,バンコマイシンの使用を開始した.以後,発熱,炎症反応,腰下肢痛は徐々に消退した.
  • 鈴木 隆雄, 木下 達之
    2000 年 20 巻 4 号 p. 237-240
    発行日: 2000/05/15
    公開日: 2008/12/11
    ジャーナル フリー
    紛争,災害地での麻酔の問題点は,医療用酸素の入手が困難なことである.その解決方法として,酸素濃縮器とエア・コンプレッサを麻酔器に接続することが考えられる.今回,日本で入手可能な酸素濃縮器とエア・コンプレッサを3機種の麻酔器に接続し,どの程度の酸素濃度及び流量が確保できるかを調べた.
    酸素濃縮器のみでは,高流量のガスが得られないが,エア・コンプレッサの利用で6l・min-1以上の流量が得られ,かつ,どの麻酔器でも酸素濃度を45%以上に維持できた.酸素濃縮器とエァ・コンプレッサを麻酔器に接続する方法は,紛争,災害地での麻酔に実用可能と思われる.
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